【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の擁壁形成物(以下、「本形成物」という)は、表面と裏面との両主表面を有する壁部が設置面から立ち上がるように設置された後、未硬化のコンクリートが設置面に打設され該壁部の下部が未硬化コンクリートに覆われコンクリートが硬化することで、該下部の表面及び裏面に硬化済みコンクリートが当接して固定されてトンネル内部に擁壁を形成する該壁部を備えてなる擁壁形成物であって、該壁部の下縁又は下面が、該壁部が連続する方向に沿って仮想上の平面である基準面に面する該壁部の最下端を形成する隣接部と、隣接部が片側又は両側に存するよう上方に向けて切り欠かれるように形成された離隔部と、を含んでなる、擁壁形成物である。
【0007】
本形成物は壁部を備えてなる。
壁部は、表面と裏面との両主表面を有し、裏面がトンネル内側面側に配置される(裏面と反対の表面は、通常、トンネル中心側に面する。)。壁部が、本形成物を設置する設置面(通常は、均しコンクリートの上面)から立ち上がるように設置された後、(特許文献1のトンネル通路構築用壁面板と同様に)未硬化のコンクリートを打設することにより、壁部の下部が未硬化コンクリートに覆われコンクリートが硬化することにより、設置面に対して本形成物(壁部)が固定されトンネル内部に壁部により擁壁が形成される。壁部の下縁又は下面は、壁部が連続する方向(擁壁が続く方向であり、壁部の設置面への正投影の長手方向である。通常はトンネルの通行方向に沿う。)に沿って基準面(仮想上の平面である。通常、設置面と一致又は平行な平面である。)に面する壁部の最下端を形成する隣接部と、隣接部が片側又は両側に存するよう上方に向けて切り欠かれるように形成された離隔部と、を含む(即ち、設置面と隣接部との間の距離は、設置面と離隔部との間の距離よりも小さい。)。
かかる本形成物によれば、壁部の裏面がトンネル内側面に面するよう設置面に本形成物を配置した後、裏面側及び表面側の一方側に未硬化のコンクリートを打設することで、打設された未硬化のコンクリートが離隔部と設置面との間を一方側から他方側へ円滑に流動することで、壁部の下部を裏面側及び表面側の両側から未硬化コンクリートによって覆うことができる。この壁部の下部を裏面側及び表面側の両側から覆った未硬化コンクリートが硬化することで、壁部の下部の表面及び裏面が硬化済みコンクリートにより当接(接着を含む)されることで本形成物を設置面に対し確実かつ強固に固定することができる(固定された本形成物の壁部により擁壁が形成される)。即ち、本形成物は、その裏面側及び表面側の一方側のみにコンクリートを打設しても、本形成物の裏面側及び表面側の他方側にもコンクリートを十分に存在させることができる。
【0008】
本形成物においては、離隔部が、隣接部が両側に存するように形成された入り江状離隔部を含んでなるものであってもよい。
離隔部は、隣接部が片側又は両側に存するよう上方に向けて切り欠かれるように形成されるが、隣接部が両側に存するよう上方に向けて切り欠かれるように形成された入り江状離隔部を含んでもよい。このように隣接部が両側に存するように形成された入り江状離隔部を含むことで、打設された未硬化のコンクリートが一方側から他方側へ容易に流動する離隔部が隣接部同士の間に形成されるので、未硬化のコンクリートが隣接部同士の間を他方側へ円滑に流動でき、壁部の下部を未硬化のコンクリートにより壁部が連続する方向に沿ってうまく覆うことができる。
【0009】
本形成物においては、離隔部が、隣接部が片側のみに存するように形成された端部離隔部を含んでなるものであってもよい。
離隔部は、隣接部が片側又は両側に存するよう上方に向けて切り欠かれるように形成されるが、隣接部が片側のみに存するように形成された端部離隔部を含んでもよい。このように隣接部が片側のみに存するように形成された端部離隔部とすることで、離隔部を設けることによる壁部の強度低下を減少させることができる。
【0010】
本形成物においては、離隔部が2以上存し、離隔部と基準面との間に形成される空間の高さが第1高さである第1離隔部と、第1高さよりも大きな第2高さである第2離隔部と、を含んでなるもの(以下、「異高離隔部本形成物」という)であってもよい。
こうすることで設置面に本形成物を配置した後、未硬化のコンクリートを裏面側及び表面側の一方側に打設し(打設された未硬化のコンクリートの一部は一方側から他方側へ流動する)、第1高さより高く第2高さよりも低い位置まで未硬化のコンクリートを打設すれば、壁部の裏面側と表面側との間で第1離隔部はコンクリートにより封鎖されるが、第2離隔部には連通空間(コンクリートの上面と第2離隔部の上面との間に形成される、壁部の裏面側と表面側とを連通させる空間)が形成される。このため第1離隔部がコンクリートにより充填されることでコンクリートにより本形成物(壁部)が確実に固定されると共に、第2離隔部の上部に形成される連通空間により壁部の裏面側及び表面側の一方側に存する水(例えば、雨水や地下水等)を他方側に排水することができる(とりわけ壁部の裏面側に溜まりやすい雨水や地下水等の水を表面側にうまく排水できる)。
なお、離隔部と基準面との間に形成される空間の高さとは、壁部の表面から裏面に至るまでの離隔部の基準面からの最低の高さをいう(壁部が連続する方向に平行かつ基準面に垂直な平面によって離隔部と基準面との間に形成される空間を切断した際の断面に現れる基準面からの該空間の断面の最大高さのうち、該平面を無限に考え、それら該平面それぞれについて与えられる該最大高さのうち最小のものをここにいう空間の高さとする。)。
【0011】
異高離隔部本形成物の場合、第2離隔部が、隣接部が片側のみに存するように形成された端部離隔部として形成されるものであってもよい。
第2離隔部は、第1離隔部よりも高い位置(第2高さ>第1高さ)まで下方から上方に向けて切り欠かれるように形成されるので、隣接部が両側に存するように形成された入り江状離隔部として形成されるよりも、隣接部が片側のみに存するように形成された端部離隔部として形成される方が壁部の強度低下を小さく留めることができる。
【0012】
本形成物においては、少なくとも1の離隔部と基準面との間に形成される空間の断面積が、トンネル内側面側に位置する裏面側及び表面側の一方側から他方側に向かうにつれて単調増加するものであってもよい。
こうすることで離隔部と基準面との間に形成される空間の断面積が、壁部の裏面側及び表面側の一方側から他方側に向かうにつれて単調増加するので、該一方側に打設された未硬化のコンクリートが該一方側から他方側へ円滑に流動することができる(一方側から他方側に向けてコンクリートが流動する流路の断面積が単調増加するため、コンクリートの詰まり等の発生を防止又は減少させることができる。)。
【0013】
本形成物においては、前記壁部のトンネル内側面側に位置する裏面から突出する裏面側突出部材をさらに備えてなるもの(以下、「裏面側突出部材具備本形成物」という)であってもよい。
壁部が設置面から立ち上がるように設置された後、未硬化のコンクリートが設置面に打設されることで、壁部の下部を未硬化コンクリートが覆い、その後、コンクリートが硬化することで、壁部が固定され擁壁が形成される。このため壁部は、コンクリートが硬化するまでは設置面から立ち上がる状態にて支持され、そして硬化後のコンクリートと十分な強度で結合する必要がある。このように壁部が設置面から立ち上がる状態にて支持されたり、壁部が硬化コンクリートと十分な強度で結合するようにするために、壁部の裏面から突出する裏面側突出部材を備えるようにしてもよい。
【0014】
裏面側突出部材具備本形成物の場合、裏面側突出部材が、前記壁部を支持する脚部を含むものであってもよい。
こうすることでコンクリートが硬化するまで、脚部により壁部が設置面から立ち上がる状態にて支持されるので、壁部を設置面から立ち上がる状態にて支持する格別の手段(例えば、仮設の支持スタンド、支持ロープ、支持ジャッキ等)を要することなく、壁部を設置面から立ち上がる状態にて確実に支持しうまく擁壁を形成することができる。
【0015】
裏面側突出部材具備本形成物の場合、裏面側突出部材が、前記壁部の前記下部が覆われるコンクリートを補強する鉄筋を含むものであってもよい。
こうすることで鉄筋は壁部の下部を覆うコンクリート中に埋設され、硬化後のコンクリートを補強すると共に高い強度で結合する。これによって壁部が硬化後のコンクリートと十分な強度で結合することができる。
【0016】
本形成物においては、壁部の側端面に上下方向に沿って配設されたパッキンをさらに備えてなるものであってもよい。
こうすることで本形成物同士を壁部の側端面(表面と裏面とをつなぐ面のうち上下方向に沿った面)が互いに面するように配設すると、互いに面する側端面の一方に上下方向に沿って配設されたパッキン(例えば、ゴム又は柔軟プラスチック製)と、他方の側端面自体又はそれに上下方向に沿って配設されたパッキンと、が当接することで、本形成物同士の壁部の側端面の破損を防止又は減少させたり、本形成物同士の壁部の側端面間の水密性を向上させることができる。
【0017】
本発明は、さらに本形成物を用いたトンネル内部に擁壁を製造する擁壁製造方法(以下、「本方法」という)を提供する。
本方法は、本形成物を使用して、トンネル内部に擁壁を製造する擁壁製造方法であって、前記壁部の裏面がトンネル内側面に面するよう設置面に擁壁形成物(本形成物)を配置する配置ステップと、配置ステップにより配置された擁壁形成物(本形成物)の離隔部と設置面との間を未硬化のコンクリートが裏面側及び表面側の一方側から他方側へ流動するよう設置面の該一方側に未硬化のコンクリートを打設し、前記壁部の下部を未硬化コンクリートによって覆う打設ステップと、打設ステップにより打設されたコンクリートが硬化することで、前記壁部の下部の表面及び裏面に硬化済みコンクリートが当接し擁壁形成物(本形成物)が固定される硬化ステップと、を含んでなる、擁壁製造方法である。
【0018】
本方法は、本形成物を使用してトンネル内部に擁壁を製造する擁壁製造方法であり、配置ステップと、打設ステップと、硬化ステップと、を含んでなる。
配置ステップは、本形成物の壁部の裏面がトンネル内側面に面するよう設置面に本形成物を配置する。
打設ステップは、配置ステップにより配置された本形成物の壁部の裏面側及び表面側の一方側に未硬化のコンクリートを打設する。これにより打設されたコンクリートは、本形成物の離隔部と設置面との間を一方側から他方側へ流動する。これによって本形成物の壁部の下部を裏面側及び表面側の両側から未硬化コンクリートによって覆う。
硬化ステップは、打設ステップにより打設された未硬化コンクリートが硬化することで、本形成物の壁部の下部の表面及び裏面に硬化済みコンクリートが当接(接着を含む)し本形成物が固定される。
以上のようにして、本形成物を使用してトンネル内部に擁壁(本形成物の壁部が構成する)が形成される。
【0019】
本方法においては、少なくとも1の離隔部と、打設ステップにて打設される未硬化のコンクリートの上面と、の間に前記壁部の裏面側と表面側とを連通させる連通空間が形成されるもの(以下、「連通空間形成本方法」という)であってもよい。
こうすることで打設ステップにて打設される未硬化のコンクリートの上面と少なくとも1の離隔部との間に形成される連通空間(壁部の裏面側と表面側とを連通させる)により壁部の裏面側及び表面側の一方側に存する水(例えば、雨水や地下水等)を他方側に排水することができる(とりわけ壁部の裏面側に溜まりやすい雨水や地下水等の水を表面側にうまく排水できる)。
【0020】
連通空間形成本方法の場合、異高離隔部本形成物を使用するものであり、前記壁部の裏面側と表面側との間で第1離隔部はコンクリートにより封鎖され、第2離隔部に連通空間が形成されるものであってもよい。
打設ステップにて第1高さより高く第2高さよりも低い位置まで未硬化のコンクリートを打設すれば、壁部の裏面側と表面側との間で第1離隔部はコンクリートにより封鎖されるが、第2離隔部には連通空間(コンクリートの上面と第2離隔部の上面との間に形成される)が形成される。このため第1離隔部がコンクリートにより充填されることでコンクリートにより本形成物(壁部)が確実に固定されると共に、第2離隔部の上部に形成される連通空間により壁部の裏面側及び表面側の一方側に存する水(例えば、雨水や地下水等)を他方側に排水することができる(とりわけ壁部の裏面側に溜まりやすい雨水や地下水等の水を表面側にうまく排水できる)。
【0021】
本発明は、加えて、本方法により製造される擁壁(以下、「本擁壁」という)を提供する。
本擁壁は、本形成物の壁部の裏面側及び表面側の一方側に未硬化のコンクリートを打設することで、打設された未硬化のコンクリートが離隔部と設置面との間を一方側から他方側へ円滑に流動することで、壁部の下部を裏面側及び表面側の両側から未硬化コンクリートによって覆うことができる。この壁部の下部を裏面側及び表面側の両側から覆った未硬化コンクリートが硬化することで、壁部の下部の表面及び裏面の両面を硬化済みコンクリートが覆い当接(接着を含む)することで本形成物を確実かつ強固に固定し、堅牢な擁壁を形成できる。また、壁部の下部の表面及び裏面の両面を硬化済みコンクリートが覆うことで、擁壁の他方側に隙間を生じる問題を防止又は減少できる。