特許第5872280号(P5872280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872280
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】力ベクトル伝達装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   B25J3/00 A
【請求項の数】22
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-279643(P2011-279643)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2012-131024(P2012-131024A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2014年5月19日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0131339
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】李 亨 圭
(72)【発明者】
【氏名】朴 浚 我
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−270886(JP,A)
【文献】 特開2004−029999(JP,A)
【文献】 特開2004−182007(JP,A)
【文献】 特開2010−240285(JP,A)
【文献】 特開平07−113703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入されたオブジェクトによって伸縮されて前記オブジェクトに密着するように構成される内壁と、
前記内壁で前記オブジェクトに直接接触する部分に形成される突起と、
前記内壁を取り囲む外形と、
前記内壁と前記外形との間に位置し、前記内壁を介して前記オブジェクトに力を伝達するアクチュエータと、
を備える力ベクトル伝達装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは膨張および収縮可能な構造である請求項1に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項3】
前記アクチュエータはゴム材質から形成されたバルーンである請求項2に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記バルーンに流体を供給する導管をさらに備える請求項3に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは前記力ベクトル伝達装置の底面に配置し、前記導管に供給される流体を制御する制御モジュールをさらに備える請求項4に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは複数に構成され、複数の方向に加えられる力を前記オブジェクトに伝達する請求項1に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは、活性高分子または圧電素子から構成される請求項1に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項8】
前記内壁は突起を含む請求項1に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項9】
オブジェクトが挿入される内部空間を含む外形と、
前記内部空間に設けられ、挿入された前記オブジェクトにより拡張されて前記オブジェクトに密着するように構成される内壁と、
前記内壁で前記オブジェクトに直接接触する部分に形成される突起と、
前記外形内部に形成されて前記オブジェクトに複数方向の力を伝達する複数のアクチュエータと、
を備える力ベクトル伝達装置。
【請求項10】
前記アクチュエータは、活性高分子または圧電素子から構成される請求9に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項11】
前記アクチュエータは、相異なる方向にそれぞれ伝達される力の大きさに応じて伸縮する請求項9に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項12】
前記アクチュエータは、導管を介して一定の圧力に流体が供給され、前記供給された流体の圧力を用いて前記力を伝達する請求項9に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項13】
前記複数のアクチュエータは、導管に供給された流体を制御する力ベクトル伝達装置の底面に位置する制御モジュールをさらに備える請求項12に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項14】
挿入される指の先端により伸縮され、前記指の先端に密着するように構成される内壁と、
前記内壁で前記指の先端に直接接触する部分に形成される突起と、
前記内壁を取り囲み、前記指の先端が挿入されるオープニングを含む外形と、
前記外形内部に形成されて前記指の先端に力を伝達するアクチュエータと、
を備える力ベクトル伝達装置。
【請求項15】
前記アクチュエータを複数備える請求項14に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項16】
少なくとも5個の前記アクチュエータを備える請求項15に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項17】
前記複数のアクチュエータはそれぞれ異なる方向の力を伝達する請求項15に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項18】
前記異なる方向は前記指の先端の上、下、左、右、前方向である請求項17に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項19】
前記アクチュエータは、前記アクチュエータに供給された流体を制御する力ベクトル伝達装置の底面に位置する制御モジュールをさらに備える請求項17に記載の力ベクトル伝達装置。
【請求項20】
挿入されたオブジェクトによって伸縮されて前記オブジェクトに密着するように構成される内壁を提供するステップと、
前記内壁で前記オブジェクトに直接接触する部分に突起を形成するステップと、
外形を用いて前記内壁を取り囲むステップと、
複数のアクチュエータを用いて前記内壁を介して前記挿入されたオブジェクトに力を伝達するステップと、
を含む力ベクトル伝達方法。
【請求項21】
前記力を伝達するステップは、前記アクチュエータを膨張又は収縮させるステップをさらに含む請求項20に記載の力ベクトル伝達方法。
【請求項22】
前記力を伝達するステップは、制御モジュールを用いて前記アクチュエータに供給された流体を制御するステップをさらに含む請求項21に記載の力ベクトル伝達方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は力ベクトルを人に伝達するための装置および方法に関し、より詳しくは、複数の方向から装置内に挿入されたオブジェクトに力を伝達するためのアクチュエータを備えた装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠距離でロボットを操作したり、または仮想空間内で物体を直観的に操作するために人の手や腕に物体を実際に操作するとき感じられる感覚を人為的に生成して人に伝達する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ロボットの指の先端に作用する様々な方向の力を人の指の先端にそのまま伝達することにある。
【0004】
本発明の目的は、手術ロボットのように敏感な組織や物体を取り扱うロボットの先端が組織と接触する力を操作者に伝達することによって、ロボットを用いる作業の効率性および安全性を向上させることにある。
【0005】
本発明の目的は、突起に形成された内壁を介して指に力を伝達することによって、触覚の敏感度を向上させることにある。
【0006】
本発明の目的は、一定の圧力で流体をアクチュエータに供給し、供給された流体の圧力によってアクチュエータが伸縮されることで、指に力の大きさを直接に伝達することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る力ベクトル伝達装置は、挿入されたオブジェクトによって伸縮される内壁と、前記内壁を取り囲む外形と、前記内壁と前記外形との間に位置し、前記内壁を介して前記オブジェクトに力を伝達するアクチュエータと、を備える。
【0008】
他の一実施形態に係る力ベクトル伝達装置は、オブジェクトが挿入される内部空間を含む外形と、前記外形内部に形成されて前記オブジェクトに複数方向の力を伝達する複数のアクチュエータとを備える。
【0009】
他の一実施形態に係る力ベクトル伝達装置は、指の先端が挿入されるオープニングを含む外形と、前記外形内部に形成されて前記指の先端に力を伝達するアクチュエータとを備える。
【発明の効果】
【0010】
一側面によると、ロボットの指の先端に作用する様々な方向の力を人の指の先端にそのまま伝達することができる。
【0011】
一側面によると、手術ロボットのように敏感な組織や物体を取り扱うロボットの先端が組織と接触する力を操作者に伝達することによって、ロボットを用いる作業の効率性および安全性を向上させることができる。
【0012】
一側面によると、突起に形成された内壁を介して指に力を伝達することによって、触覚の敏感度を向上させることができる。
【0013】
一側面によると、一定の圧力で流体をアクチュエータに供給し、供給された流体の圧力によってアクチュエータが伸縮されることで、指に力の大きさを直接に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ロボットの指に作用する複数の力の一例を示す図である。
図2】力ベクトル伝達装置の一例を示す図である。
図3】力ベクトル伝達装置に含まれたアクチュエータの一例を示す図である。
図4】力ベクトル伝達装置の横断面を示す側面図である。
図5】力ベクトル伝達装置の縦断面を示す側面図である。
図6】力ベクトル伝達方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面および添付の図面に記載された内容を参照して実施形態を詳説するが、実施形態によって制限されたり限定されることはない。
【0016】
遠距離でロボットを操作したり、または仮想空間内で物体を直観的に操作するためには、人の手や腕に実際に物体を操作するとき感じられる感覚を人に伝達する必要がある。
【0017】
図1は、ロボットの指100に作用する複数の力の一例を示す図である。図1を参考すると、ロボットが物体を操作するとき、ロボットの指100の先端には様々な方向の力が作用する。例えば、正面150、上面110、下面130、左面140、または右面120の方向等である。
【0018】
図2は、力ベクトル伝達装置の一例を示す図である。図2を参考すると、力ベクトル伝達装置200はオブジェクト210を挿入し、挿入されたオブジェクト210によって伸縮される内壁、該内壁を指ぬき状に取り囲む硬化材質の外形、および内壁と外形との間に位置し、内壁を介してオブジェクト210に力を伝達するアクチュエータ(actuator)で構成しもよい。ここで、オブジェクト210は人の指であってもよい。
【0019】
力ベクトル伝達装置200は、人の指の先端210に取付けて用いてもよい。また、力ベクトル伝達装置200は、図1に示す様々な方向の力を伝達する指ぬき状であってもよい。
【0020】
図3は、力ベクトル伝達装置200に含まれたアクチュエータの一例を示す図である。図3を参照すると、アクチュエータ310は、図1に示す各方向の力をオブジェクトに伝達する。アクチュエータ310は膨張および収縮可能な構造で形成し、一例として、柔軟なゴム材質から構成された流体を入れるバルーンのような袋の構造であってもよい。バルーンの膨張および収縮はバルーンに供給される流体の量に応じて制御モジュールによって調整され、流体を供給するための導管320を形成することができる。例えば、導管320に空気のような流体を一定の圧力で注入すると、バルーンが圧力によって膨張されて空気を抜けば収縮される。
【0021】
このような、アクチュエータ310は力ベクトル伝達装置200に正面150、上面110、下面130、左面140、または右面120の少なくとも1つの方向にそれぞれ対応するよう複数構成してもよい。例えば、アクチュエータ310は、図1に示す正面150、上面110、下面130、左面140、または右面120の方向にそれぞれ対応するよう、「5個」に構成してもよい。
【0022】
以下、図4は、図2に示す力ベクトル伝達装置を「B」の中心に沿って切った横断面を示す側面図である。図4を参照すると、力ベクトル伝達装置200は、外形230、オブジェクト210を取り囲む内壁220、複数のアクチュエータ410,420,430,440,450を備える。
【0023】
外形230は指ぬき状を有して堅固な硬化材質から形成してもよい。外形230にはオブジェクト210の人の指の先端が挿入され得る大きさのオープニング240を有している。オープニング240と連結された内部空間は指の先端を受容することのできる大きさで形成し、前述したように、内壁220で取り囲まれた空間であってもよい。外形230を指ぬき状に形成することはオブジェクト210である人の指に取付けることを容易にするためである。
【0024】
内壁220は挿入されるオブジェクト210によって伸縮される。内壁220はオブジェクト210と直接に接触する部分であり、力ベクトル伝達装置200がオブジェクト210との密着を容易にするために伸縮性のある材質に形成してもよい。
【0025】
アクチュエータ410〜450は外形230と内壁220との間に位置し、内壁220を介してオブジェクト210に力を伝達する。前述したように、アクチュエータ410〜450は、正面150、上面110、下面130、左面140、または右面120の方向にそれぞれ対応するよう、「5個」に構成してもよい。
【0026】
一例として、ロボットの指100の下面130方向の力に対応するアクチュエータ430は人の指の下方に位置してもよい。アクチュエータ430に流体を供給する導管431は、外形230と内壁220との間の空いた空間を介して力ベクトル伝達装置200の下方に連結される。または、ロボットの指100の正面150方向の力に対応するアクチュエータ450は人の指の前面に位置してもよい。また、アクチュエータ450に流体を供給する導管(図5の451)は外形230と内壁220との間の空いた空間を介して力ベクトル伝達装置200の下方に連結される。
【0027】
以下、図5図2に示す力ベクトル伝達装置を「A」の中心に沿って切った縦断面を示す側面図である。図5を参照すると、基本的な構成は図4に示す横断面の通りである。
【0028】
アクチュエータ410〜450のそれぞれに対応する導管411〜451は、力ベクトル伝達装置200の底面を介して流体を制御する制御モジュール500に連結される。
【0029】
オブジェクト210を力ベクトル伝達装置200の内壁220に挿入すると、内壁220はオブジェクト210と密着され、制御モジュール500は各方向を担当するアクチュエータ410〜450に導管411〜451を介して流体を供給する。流体がアクチュエータ410〜450に供給されると、アクチュエータ410〜450に圧力が加えられ、アクチュエータ410〜450はオブジェクト210の該当部分に各方向の力を伝達することになる。
【0030】
実施形態において、力ベクトル伝達装置200は、内壁220とアクチュエータ410〜450の伸縮性に応じて多様な大きさおよび形を有する指に対応することが可能である。
【0031】
または、力ベクトル伝達装置200の内壁220にオブジェクト210と直接に接触する部分に突起を形成すると、オブジェクト210、すなわち、指の触覚に対する敏感度を向上させることができる。
【0032】
アクチュエータ410〜450は流体を用いたバルーン型のアクチュエータ以外に他の実施形態を用いたが、活性高分子(Electro Active Polymer;EAP)または圧電素子(Piezo−electric Element)を用いたアクチュエータを用いてもよい。
【0033】
図6は、力ベクトル伝達方法の一例を示すフローチャートである。ステップS610において、力ベクトル伝達装置200は挿入されるオブジェクトによって伸縮される内壁を提供する。内壁220はオブジェクト210と直接に接触する部分であり、力ベクトル伝達装置200がオブジェクト210との密着を容易にするために伸縮性のある材質に形成してもよい。
【0034】
ステップS620において、力ベクトル伝達装置200は硬化材質の外形230’で内壁220を取り囲む。
【0035】
ステップS630において、力ベクトル伝達装置200は、内壁220と外形230との間に位置したアクチュエータ410〜450を用いてオブジェクト210に力を伝達する。上記で説明したように、アクチュエータ410〜450は正面150、上面110、下面130、左面140、または右面120のいずれか1つの方向にそれぞれ対応するよう複数に構成してもよい。
【0036】
例えば、オブジェクト210が人の指である場合、指を力ベクトル伝達装置200の内壁220に挿入すると、内壁220は指に密着されて、制御モジュール500は各方向を担当するアクチュエータ410〜450に流体を供給する。流体がアクチュエータ410〜450に供給されると、アクチュエータ410〜450に圧力が加えられ、アクチュエータ410〜450は指の該当部分に各方向の力を伝達することができる。
【0037】
または、内壁220にオブジェクト210と直接に接触する部分に突起を形成することで、指触覚の敏感度を向上させることができる。
【0038】
上述したように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような実施形態から多様な修正及び変形が可能である。したがって、本発明の範囲は、開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲だけではなく特許請求の範囲と均等なものなどによって定められるものである。
【符号の説明】
【0039】
200 力ベクトル伝達装置
210 オブジェクト
220 内壁
230 外形
410〜450 アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6