(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動モータの回転が太陽ギアに伝達され、前記太陽ギアに噛み合う複数の遊星ギアを自転可能に備えたケージの回転を出力として取り出し、リングギアが非回転状態において、前記リングギアの内歯に噛み合う前記複数の遊星ギアが自転しながら公転し前記ケージを回転させるプラネタリ型駆動を可能とする遊星歯車機構と、
前記駆動モータの回転を前記ケージに対して伝達するオン状態と、前記ケージに対する前記駆動モータの回転の伝達を遮断するオフ状態とを切り換える第1クラッチと、
非回転の変速部材と前記リングギアとを非連結状態とし、前記リングギアを自由回転させるオフ状態と、前記変速部材と前記リングギアとを連結可能なニュートラル状態に待機させ、所定のタイミングで前記変速部材と前記リングギアとを連結して前記リングギアを非回転状態にさせるオン状態とを切り換える第2クラッチと、
前記ケージの回転で駆動される駆動対象の負荷に基づく、前記駆動モータ側と前記駆動対象側の回転軸の相対的捩れにより、クラッチ操作部を低トルク状態である第1位置から高トルク状態である第2位置へ軸方向に沿って移動させ、前記第1クラッチおよび前記第2クラッチを切り換え操作するクラッチ切換部と、
を有し、
前記クラッチ操作部が前記第1位置に位置した状態において、前記第1クラッチをオン状態にすると共に前記第2クラッチをオフ状態にすることにより、前記リングギア及び前記遊星歯車機構を一体的に回転させ、
前記クラッチ操作部が前記第2位置に位置した状態において、前記第1クラッチをオフ状態にすると共に前記第2クラッチをオン状態にすることにより、非回転状態の前記リングギアに対して前記遊星歯車機構を回転させ、
前記クラッチ切換部は、
前記駆動モータからの第1の回転軸により回転し、軸方向移動不能とした固定回転体と、
前記固定回転体に対して軸方向で対向配置され、前記遊星歯車機構の太陽ギアに固定される第2の回転軸に対し一体に回転し軸方向に移動可能とする可動回転体と、
前記可動回転体を前記固定回転体に向けて付勢する変速トルク設定用ばねと、
前記変速トルク設定用ばねの付勢力に抗して、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との相対的捩れ動作を軸方向動作に変換し、前記可動回転体を軸方向に移動させて前記クラッチ操作部を前記第1位置から前記第2位置へ移動させる移動変換手段と、
を有することを特徴とする自動変速装置。
前記第2クラッチが前記オン状態で前記変速部材と前記リングギアとを連結させる前記所定のタイミングは、前記リングギアが前記太陽ギアの回転方向と反対方向に回転することで、前記リングギアと一体に回転する前記連結切り換え部材の前記嵌合凹部の位相と前記変速部材の前記嵌合凸部の位相が一致するタイミングであることを特徴とする請求項2又は6に記載の自動変速装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0015】
図1A〜
図1Cは、自動変速装置の一実施形態を説明する概略構成図で、
図1Aは高速回転状態、
図1Bはニュートラル状態、
図1Cは低速回転状態を示す。
【0016】
図1において、自動変速装置Aは、電動モータを駆動源とする駆動部Bからの回転動力が伝達される遊星歯車機構Cと、反力受け部Dと、負荷検知部Eと、負荷検知部Eの負荷検知に基づく軸方向の操作力によりクラッチの切り換えが行われるクラッチ部Fとを有し、遊星歯車機構Cの出力により駆動対象Gを駆動する。
【0017】
駆動部Bは、電動モータ、エアモータあるいは油圧モータ等のモータを駆動源として用いることがで、例えばモータ出力を1段又は複数段の遊星歯車機構からなる減速装置により減速し、回転軸B1を回転する。本実施形態では電動モータを例にして説明する。駆動部Bは、不図示の駆動制御回路により、電動モータの回転方向を制御し、回転軸B1を正方向及び逆方向
に回転させる。
【0018】
遊星歯車機構Cは、入力軸CIに連結された太陽ギアC1と、太陽ギアC1と噛み合い、太陽ギアC1の回りに配置した複数の遊星ギアC2と、複数の遊星ギアC2を回転自在に支持するキャリア(ケージ)C3と、複数の遊星ギアC2と噛み合
う内歯を
内周面に形成したリングギアC4を有し、ケージC3に出力軸COが接続される。回転軸B1と入力軸CIと出力軸COは同一軸線(以下、回転中心軸と称す)上に位置し、回転軸B1と入力軸CIとは非結合状態とし、出力軸COは、駆動対象Gに駆動力を伝達する。
【0019】
反力受け部Dは、反力アームD1を備えた変速部材D2を有する。変速部材D2は、回転中心軸を中心に回転可能としている。
【0020】
負荷検知部Eは、
駆動部(電動モータ
)Bの正回転及び逆回転の両回転方向において、駆動対象Gを駆動する負荷、例えば設定した締め付けトルク値に達したことを検知すると、クラッチ部Fの切り換えのために、回転動力の伝達を維持しつつ軸方向に沿ったクラッチ操作力を生じさせる。この負荷検知部Eは、回転中心軸に沿った軸方向(以下、軸方向と略す)に対向する一対の円盤形状の部材E1、E2との対向面間に複数の鋼球E3を配置し、一方の部材(固定回転体)E1は回転軸B1に軸方向
移動不能に連結されて回転する。また、他方の部材(可動回転体)E2は入力軸CIに対して軸方向(駆動対象G側)に沿って移動可能とすると共に、一体に回転する。
【0021】
固定回転体E1には、鋼球E3が一部分嵌まり込み、鋼球E3を転動可能とするカム穴E4が形成されている。カム穴E4には軸方向に対して斜めに第1カム面E4aと第2カム面E4bが対向して形成されている。なお、カム穴E4を可動回転体E2側に設けてもよい。
【0022】
遊星歯車機構C側の可動回転体E2は、入力軸CIに対して軸方向移動可能で、且つ一体に回転する。可動回転体E2には、入力軸CIに外装され、軸方向に沿って移動可能な第1クラッ
チF1の切り換え操作を行う第1クラッチ作動部E5が遊星歯車機構Cに向かって固定(一体形成)されている。可動回転体E2には、カム穴E4に対向して鋼球E3が一部分嵌まり込み、鋼球E3を回転自在とする遊嵌穴E6が形成されている。
【0023】
可動回転体E2には、トルク値を設定するコイルスプリングで構成されるトルク値設定ばねE7を自動変速装置の本体部A1との間に配置している。またトルク値設定ばねE7よりも内側に、クラッチ部Fの第2クラッチF2を操作する第2クラッチ操作ばねE8を配置している。
【0024】
負荷検知部Eは、固定回転体E1の回転を複数の鋼球E3を介して可動回転体E2に伝達する。負荷検知部Eは、回転軸B1が例えば正方向回転すると、鋼球E3が第1カム面E4aに当接し、駆動対象Gの負荷に応じて鋼球E3に分力が発生する。設定トルク値に達すると、鋼球E3が第1カム面E4aを転動しながら分力によりトルク値設定ばねE7のばね力に抗して可動回転体E2が遊星歯車機構Cに向け軸方向に移動し、第1クラッチ作動部E5が軸方向に移動すると共に、第2クラッチ操作ばねE8が遊星歯車機構C側に向けて移動する。また、回転軸B1を逆方向回転すると、鋼球E3が第2カム面E4bに当接し、同様の動作を行う。これにより、負荷検知部Eは、
駆動部(電動モータ
)Bの正方向および逆方向回転における負荷を検知する。
【0025】
負荷検知の設定値(設定トルク値)は、トルク値設定ばねE7のばね力により設定される。設定トルク値に到達後、固定回転体E1と可動回転体E2との相対的回転はストッパー等によって停止され、一体的に回転する。
【0026】
ここで、
図1Aは負荷検知部Eが設定負荷(設定トルク値)を検知していない第1検知状態であって、クラッチ部Fの第1クラッチF1がONし、第2クラッチF2がOFFの高速回転状態を示す。
図1Bは負荷検知部Eが設定負荷(設定トルク値)を検知した第2検知状態であって、クラッチ部Fの第1クラッチF1がOFFで、第2クラッチF2がON待機状態のニュートラル状態を示す。
図1Cは負荷検知部Eが設定負荷(設定トルク値)を検知した第2検知状態であって、クラッチ部Fの第1クラッチF1がOFFで、第2クラッチF2がONの低速回転状態を示す。また、
図1Aに示す第1検知状態における可動回転体E2および第1クラッチ作動部E5の位置を第1位置とし、
図1Bに示す第2検知状態における可動回転体E2および第1クラッチ作動部E5の位置を第2位置とし、また連結切り換え部材F3が変速部材D2と連結可能とするニュートラル状態を第2位置とし、
図1Cに示す第2クラッチF2がON状態となる連結切り換え部材F3の位置を第3位置とする。
【0027】
クラッチ部Fは、第1クラッチF1と第2クラッチF2を有し、第1クラッチF1は第1クラッチ作動部E5によりON,OFF操作される。第1クラッチF1は、入力軸CIと遊星歯車機構CのケージC3とを連結させるON状態と、入力軸CIと遊星歯車機構CのケージC3との連結を解除するOFF状態とに切り換える。具体的には、第1クラッチ作動部E5が第1位置の状態で入力軸CIとケージC3とを連結させるON状態となり、第1クラッチ作動部E5が第1位置から第2位置に移動すると入力軸CIとケージC3との連結が解除されるOFF状態となる。
【0028】
第2クラッチF2は、遊星歯車機構CのリングギアC4と常時連結していて、第2クラッチ操作ばねE8により軸方向前方(
図1中左側)に向けて押動される連結切り換え部材F3を有し、連結切り換え部材F3は第1クラッチ作動部E5に対し、軸方向移動自在かつ回転方向移動自在とする。
【0029】
第2クラッチF2は、連結切り換え部材F3と変速部材D2とを非連結状態に保持するOFF状態と、連結切り換え部材F3と変速部材D2とを連結可能な状態であって、いつでも連結できる待機状態とするニュートラル状態と、連結切り換え部材F3と変速部材D2とを連結したON状態に切り換える。連結切り換え部材F3は、第2クラッチ操作ばねE8の押し力が発生していないと前記OFF状態に保持され(第1位置)、可動回転体E2が第2位置に移動することにより第2クラッチ操作ばねE8により押動されニュートラル状態となる。このニュートラル状態において、連結切り換え部材F3は第2クラッチ操作ばねE8により軸方向前方に向けて付勢される。連結切り換え部材F3と変速部材D2とは回転方向における所定の嵌合位相位置において、互いに嵌合して連結する嵌合構造を有する。そして、前記所定の嵌合位相位置に達するまでは待機状態に保持され、前記所定の嵌合位相位置に達すると、連結切り換え部材F3が第2クラッチ操作ばねE8の付勢力により軸方向前方に押し込まれ、連結切り換え部材F3と変速部材D2が嵌合し、リングギアC4と変速部材D2を一体化する(第3位置)。
【0030】
本実施形態において、連結切り換え部材F3をON状態からOFF状態に戻すために、第1クラッチ作動部E5に設けた戻し部材F4を連結切り換え部材F3に当接させ、第2位置に向けて移動する第1クラッチ作動部E5の移動力により可動回転体E2側に向けて連結切り換え部材F3を移動させている。また、可動回転体E2および第1クラッチ作動部E5が第1位置に位置した状態で、連結切り換え部材F3は戻し部材F4により軸方向前方への移動が阻止され、OFF状態が保持される。
【0031】
上記した構成の自動変速装置Aの自動変速動作を
図2A,
図2Bを参照して以下に説明する。なお、連結切り換え部材F3は、例えば円盤形状とし、リングギアC4と変速部材D2の軸方向後端側に配置され、リングギアC4に対して常時連結されて軸回り方向に一体化され、軸方向に沿って移動可能としている。また、変速部材D2の後端には、軸方向後方に向けて複数の嵌合凸部38が周方向に沿って一定ピッチで形成され、連結切り換え部材F3には、嵌合凸部38が嵌合する嵌合凹部42が複数の嵌合凸部38に対応して等ピッチで形成されているものとし、
図1Aにおいて、嵌合凸部38の後端は嵌合凹部42とは離隔した非嵌合状態とし(第1位置)、
図1Bのニュートラル状態では嵌合凸部38の後端に連結切り換え部材F3の前端面が当接し(第2位置)、
図1Cにおいて嵌合凸部38に連結切り換え部材F3の嵌合凹部42が嵌合するものとする(第3位置)。
【0032】
図2Aは、連結切り換え部材F3と変速部材D2との嵌合関係と、遊星歯車機構Cの出力状態を示し、
図2Bは
図2Aの動作のタイミングチャートを示す。
【0033】
駆動対象
Gを例えばナット等の締結部材とすると、駆動開始時は、低負荷であるため、
図1Aに示す第1検知状態で駆動が行われる。負荷検知部Eは、
図2Bの(a)(d)に示すように、
回転軸B1のトルクが0Nmから増加し始め、設定トルク値に達すると、カム穴E4と遊嵌穴E6との相対ねじれ角が所定値まで達し、固定回転体E1と可動回転体E2との軸方向距離が拡がり、第1クラッチ作動部E5が完全に押し出される。また、連結切り換え部材F3は変速部材D2の嵌合凸部38の端面に当接して嵌合位置と同期する待ち状態に一旦停止し、嵌合位置と同期して嵌合が終了する位置まで移動する。
【0034】
先ず、回転軸B1の正方向回転により右ねじの締め付けを行う場合、固定回転体E1および鋼球E3を介して可動回転体E2が第1位置で回転する。この第1位置での締め付けは、第1クラッチF1がON状態で第2クラッチF2がOFF状態にある。第1クラッチF1がON状態で第1クラッチ作動部E5とケージC3と太陽ギアC1が連結し、第2クラッチF2がOFF状態でリングギアC4と変速部材D2が非連結状態にある。このため、
図2Aの(1)に示すように、遊星歯車機構Cは、太陽ギアC1と遊星ギアC2とケージC3とリングギアC4が一つの塊となり、一体となって回転する。
【0035】
すなわち、遊星歯車機構Cは減速機能が働かず、入力軸CIの回転数で出力軸COが回転する高速回転状態となる(
図2Bの(c)参照)。
【0036】
次に、ナット(ボルト)の締め付けトルクが増し、負荷検知部Eが負荷の増加を検知(設定トルク値に達したこと)すると、可動回転体E2と第1クラッチ作動部E5が第1位置から第2位置に向けて軸方向前方に移動する。このとき、高速回転・低トルクでのねじの締め付けが限界に達するので、出力軸COの回転は停止することになる。
【0037】
第1クラッチ作動部E5が第2位置に移動すると、第1クラッチF1がOFF状態となり、第2クラッチF2はOFF状態から嵌合同期待ちのニュートラル状態(
図2Aの(b)(c)に示す変速遷移状態(第2位置))を経て、ON状態が始まる嵌合開始状態となり(
図2Aの(d))、嵌合が完了(第3位置)する(
図2Aの(e))。
【0038】
第1クラッチF1がOFF状態となると、第1クラッチ作動部E5とケージC3との連結が解除され、可動回転体E2と一体に回転する入力軸CIの回転により太陽ギアC1が回転し、複数の遊星ギアC2が太陽ギアC1と逆回転方向に自転する(
図2Aの(b)(c)参照)。また、第2クラッチF2の連結切り換え部材F3の嵌合凹部42は変速部材D2の嵌合凸部38と非嵌合状態にあり、リングギアC4は自由回転可能な状態にある。このため、リングギアC4の内歯が太陽ギアC1と逆回転方向に自転する複数の遊星ギアC2と噛み合い、リングギアC4は太陽ギアC1の逆回転方向(高速回転状態の時とは逆の方向に(
図2Bの(b)参照))に回転駆動される。
【0039】
つまり、このとき、ケージC3は出力軸COの非回転により回転が停止しているので、ケージC3に取り付けられた複数の遊星ギアC2が自転し、リングギアC4が遊星ギアC2の自転により、太陽ギアC1の回転方向とは逆方向に回転することになる。この状態で、リングギアC4は自由回転をしている状態にあり、遊星ギアC2のトルク反力を受けることができない。このため、出力軸COにはトルクが発生しない。
【0040】
すなわち、ケージC3が高速回転し、駆動対象Gであるナット(ボルト)を高速で締め付け、ナットを短時間で着座させる。ナット(ボルト)が着座すると、ナット(ボルト)の締め付けトルクが増し、高負荷状態となる。
【0041】
ここで、第1クラッチF1がOFFへ移行すると、第1クラッチ作動部E5が第2位置に移動し、第1クラッチ作動部E5とケージC3との連結を解除し、遊星歯車機構Cは太陽ギアC1の回転を入力とする。この場合、リングギアC4を固定すれば、ケージC3から減速回転した出力を取り出せるプラネタリ型駆動が可能な状態となる。
【0042】
ここで、可動回転体E2が第1位置から第2位置へ移動することにより、第2クラッチ操作ばねE8を介して連結切り換え部材F3に軸方向前方への押動力が付与され、先ず第2クラッチF2がOFFからニュートラル状態へ移行する。
【0043】
可動回転体E2の第2位置への移動により、リングギアC4との連結状態を常時維持している連結切り換え部材F3は、変速部材D2の後端面に付勢されて当接する。この状態で、連結切り換え部材F3は太陽ギアC1と逆回転方向に自由回転するリングギアC4と一体に回転し、連結切り換え部材F3の嵌合凹部42の位相と変速部材D2の嵌合凸部38の位相が一致するまで連結切り換え部材F3が回転する(
図2Aの(b)(c)参照)。そして、位相が一致すると、連結切り換え部材F3が第2クラッチ操作ばねE8のばね力に押されて嵌合を開始し(
図2Aの(d)参照)、嵌合を終了し(
図2Aの(e)、第3位置)、連結切り換え部材F3を介してリングギアC4と変速部材D2が回転方向において一体化し、リングギアC4と変速部材D2が一体に回転を開始する。
【0044】
変速部材D2がリングギアC4と一体に回転を開始すると、変速部材D2に取り付けた反力アームD1が駆動対象Gである例えばナットにより締め付けられる被締結部材に当接し、反力アームD1の回転が阻止される。このため、リングギアC4は回転が阻止された固定状態となり、遊星歯車機構Cの上記したプラネタリ型駆動に自動的に切り換わり、低速回転・高トルクでナット(ボルト)の締め付けを再開する。
【0045】
遊星歯車機構Cがプラネタリ型駆動に切り換わると、正方向回転する太陽ギアC1と噛み合う複数の遊星ギアC2は、回転不能な固定状態にあるリングギアC4の内歯と噛み合いながら正方向に公転するので、複数の遊星ギアC2を備えたケージC3が正方向に減速し、高トルクで回転し、駆動対象Gである着座状態のナットをさらに締め付ける。
【0046】
駆動対象Gの駆動が終了すると、負荷が零となるので、負荷検知部Eは、
可動回転体E2がトルク値設定ばねE7のばね力により元の第1位置に戻され、
図1に示す状態となる。その際、第1クラッチ作動部E5が第1位置に戻るのに伴い、戻り部材F4により連結切り換え部材F3が
図1Aに示す位置に戻される。
【0047】
次に自動変速装置の具体的構成を
図3〜
図10に示すナットランナーを例にして説明する。なお、角ドライブ軸2側を前側、反対側を後側あるいは背面側として説明する。
【0048】
図3A、
図3B、
図3Cは
図1A,
図1B、
図1Cにそれぞれ対応するナットランナーの縦断面図を示す。
図4は負荷検知部の固定回転体を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)の上面図である。
図5は負荷検知部の可動部を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の左側面図、(d)は上面図を示す。
図6はケージを示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の左側面図を示す。
図7はリングギアを示し、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の縦断面図を示す。
図8は変速部材を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の左側面図、(d)は縦断面図を示す。
図9は第2クラッチ部の連結切り換え部材を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(b)のA-A線に沿った断面図。
図10は第1クラッチ部におけるケージ側構成部材を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の左側面図、(d)は(a)の正面図。なお、
図3から
図10において、
図1および
図2に示す部材と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図3A〜
図3Cに示すナットランナー1は、不図示の電動モータを駆動源とする駆動部からの回転が回転軸B1に伝達され、第1段から第3段の3つの遊星歯車機構CA〜CCを前記駆動部側から順に直列に接続した動力伝達部3の出力を最終段の角ドライブ軸2に伝達する。ここで、
図1A〜
図1Cおよび
図2A、
図2Bに示す遊星歯車機構Cは
図3の第1段遊星歯車機構CAに相当する。また、前記駆動部を覆う外装ケースの端部に作業者がナットランナーを保持する握り部が形成されている。
【0050】
動力伝達部3の自動変速のために変速トルク値を設定する負荷検知部Eを筒状の外装ケース10内の後端部に配置している。
【0051】
負荷検知部Eは、
図4に示す円筒状に形成した支持軸部21aの先端部に固定円盤部21bを一体に形成し、支持軸部21a内に回転軸B1の先端部を回転不能に結合した固定回転体E1と、
図5に示す円筒軸
部50に形成した第1クラッチ作動部E5の後端部に一体に形成した可動円盤部23aを有する可動回転体E2とを備えている。第1クラッチ作動部E5の軸部内には、入力軸CIがスプライン結合して可動回転体E2と第1クラッチ作動部E5が一体に軸方向に移動自在とする。すなわち、第1クラッチ作動部E5と可動回転体E2は、入力軸CIと一体に回転しつつ、軸方向に移動する。支持軸部21aはローラベアリング4により外装ケース10に対して回転自在に支持される。
【0052】
固定円盤部21bの表面には、周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では3)のカム穴E4が形成され、各カム穴E4に鋼球E3が一部分嵌まり込む。カム穴E4は、周方向に線対称に正方向回転カム面E4aと逆方向回転カム面E4bが形成されている。カム穴E4は周方向の中央部分のカム面が軸方向において最も低く(深く)、周方向に沿って中央部から離れるに従って軸方向に沿ったカム面の高さが高く(浅く)なる。
【0053】
固定円盤部21bの表面には、カム穴E4の間にストッパー突起22が軸方向前方に向けて突出し、可動円盤部23aに形成した周方向に長いストッパー穴部23bに係合する。可動円盤部23aと固定円盤部21bとが正逆方向に相対的に回転した際、ストッパー穴部23bの周方向両内端面にストッパー突起22が当接し、可動回転体E2と固定回転体E1との相対回転が規制される。
【0054】
固定円盤部21bの各カム穴E4と可動円盤部23aの表面に形成した遊嵌穴E6に鋼球E3を嵌め込んだ状態で、回転軸B1の回転により固定回転体E1が回転すると、回転方向に対応した正方向回転カム面E4a又は逆方向回転カム面E4bに対して当接する鋼球E3の周方向に沿った駆動力が可動円盤部23aの遊嵌穴E6の内表面に加わり、可動回転体E2を回転させる。可動回転体E2の回転により第1クラッチ作動部E5も一体に回転する。
【0055】
動力伝達部3は、クラッチ部Fの前方に配置されている。第1段遊星歯車機構CAと第2段遊星歯車機構CBのリングギアC4は共通化して使用している。
図7に示すように、リングギアC4は、円筒形状に形成したリングギア本体30の内周面に、第1段遊星歯車機構CA用の内歯31と、第2段遊星歯車機構CB用の内歯32を形成している。
【0056】
リングギアC4と外装ケース10との間に、円筒形状の変速部材D2を配置している。
図8に示すように、変速部材D2は、円筒形状に形成した変速部材本体33の外周面に周方向に突設した平行する2本の突条34a、34bとの間にガイド溝35を形成し、外装ケース10にねじ込んだガイドピン36の先端部をガイド溝35に差し込み、変速部材D2の自由回転を許容しつつ軸方向への移動を規制している。
【0057】
変速部材D2にリングギアC4は回転自在に内装され、リングギアC4の後端部を変速部材D2の後端部よりも後方に配置している。
【0058】
図7に示すように、リングギアC4の後端部には、後端面から軸方向後方に向けて、複数(本実施形態では3)の嵌合片37が周方向に沿って等間隔に形成され、第2クラッチF2の連結切り換え部材F3が嵌合片37に常時嵌合する。
【0059】
図8に示すように、変速部材D2の後端部には、後端面から軸方向後方に向けて、複数(本実施形態では24)の嵌合凸部38が周方向に沿って等間隔に形成され、
図9に示す連結切り換え部材F3の嵌合凹部42が嵌合凸部38に嵌合可能としている。
【0060】
連結切り換え部材F3は、
図9に示すように、円盤形状に形成された円盤部40の外周部に、リングギアC4に形成した複数の嵌合片37の周方向間隔と合致して切り欠かれた切欠嵌合部41と、切欠嵌合部41の間に、変速部材D2の嵌合凸部38の周方向間隔と合致して凹設された嵌合凹部42が形成されている。
【0061】
リングギアC4の嵌合片37は、変速部材D2の嵌合凸部38よりも軸方向後方まで延び、
図3Aに示すように、第2クラッチF2がOFFの状態で、円盤部40の切欠嵌合部41が嵌合片37に係合するが、嵌合凹部42は嵌合凸部38には係合していない。したがって、変速部材D2はリングギアC4とは一体的に連結されていない非連結状態にある。
【0062】
また、
図3Bに示すように、第2クラッチF2がOFFからニュートラル状態へ移行する際、第2クラッチ操作ばねE8を介して連結切り換え部材F3が前方に移動すると、切欠嵌合部41と嵌合片37との嵌合状態を維持して、連結切り換え部材F3の
円盤部40の前面が変速部材D2の後端面に当接する。ここで、前述のように、リングギアC4と一体に回転する連結切り換え部材F3の
円盤部40に形成した嵌合凹部42の位相が変速部材D2の嵌合凸部38の位相に一致すると、
図3Cに示すように、嵌合凹部42が嵌合凸部38に嵌合し、リングギアC4と変速部材D2が連結切り換え部材F3を介して一体的に連結された連結状態となる。
【0063】
連結切り換え部材F3は、背面側に円盤状のバネシート部43を形成し、弾性部材としての第2クラッチ操作ばねE8の先端が当接する。
【0064】
固定回転体E1の固定円盤部21bと可動回転体E2の可動円盤部23aは、外装ケース10の内周面に回転自在に内装された筒形状のガイドスリーブ45内に収容されている。ガイドスリーブ45の先端部と可動円盤部23aの間に、トルク値設定ばねE7を配置している。なお、ガイドスリーブ45の先端部の内周にC型止め輪47を装着し、トルク値設定ばねE7の先端を当接させている。また、連結切り換え部材F3の
円盤部40の中心に形成した軸孔48内に、第1クラッチ作動部E5が回転自在に装入されている。なお、第1クラッチ作動部E5の外周に、円盤状の戻し部材F4を固定し、連結切り換え部材F3の前方への移動を規制すると共に、第1クラッチ作動部E5が第2位置から第1位置に戻る際に、戻し部材F4が連結切り換え部材F3と当接して第1位置に戻す。
【0065】
ドッグクラッチ構成の第1クラッチF1は、
図5に示すように第1クラッチ作動部E5の先端部に形成した雄継手部51と、ケージC3の背面側に取り付けられ、雄継手部51の軸方向移動により、軸回りに一体的に係合する係合状態と、該係合状態を脱して空転する空転状態を作り出す
図10に示す雌継手部F5を有する。
【0066】
図5において、第1クラッチ作動部E5は、円筒軸部50の先端部に、雄継手部51が形成されている。円筒軸部50の内周面に入力軸CIの後端部とスプライン結合するスプライン溝52が形成されている。雄継手部51は、くびれ部53の前方に、径方向に突出する一対のクラッチ爪54を軸心対称に形成し、クラッチ爪54の両端面を正逆両回転時における雌継手
部F5の後述するクラッチ爪継脱部56との係合面としている。ここでクラッチ爪54の外径端までの長さを半径r1とする。
【0067】
図10に示すように、雌継手部F5は、円盤形状の第1クラッチ本体部55と、第1クラッチ本体部55の背面側に設けたクラッチ爪継脱部56とを有し、第1クラッチ本体部55が第1段遊星歯車機構CAのケージC3と回転方向に一体的に連結される。第1クラッチ本体部55には、入力軸CIが回転自在に貫通する軸孔57が軸中心部に形成されている。また、
図7に示すように、リングギアC4の内周面に形成したC型輪止め用の周溝58に係合するC型輪止め59が、第1クラッチ本体部55の背面側に当接し、第1クラッチ本体部55の軸方向後方への移動が規制される。
【0068】
第1クラッチ本体部55の背面側に形成したクラッチ爪継脱部56は、一対のクラッチ爪54が回転自在に嵌まり込むクラッチ脱用孔部60と、クラッチ脱用孔部60の軸方向後方に、正逆回転方向に対して所定のクラッチギャップを有してクラッチ爪54が当接する一対のクラッチ爪当接部61が軸中心を中心に対称に形成されている。
【0069】
一対のクラッチ爪当接部61は、互いに離隔対向する端面間に、クラッチ爪54が入り込むクラッチ係合部62をクラッチ爪54のサイズよりも大きなサイズに形成し、クラッチ爪54が回転方向に対して余裕(ギャップ)を有してクラッチ係合部62とクラッチ脱用孔部60との間を移動可能としている。また、一対のクラッチ爪当接部61の内径(r2)を一対のクラッチ爪54の外径(r1)よりも小さく設定する(r2<r1)。したがって、クラッチ脱用孔部60内に嵌まり込んだ一対のクラッチ爪54は、クラッチ係合部62との回転方向の位相が合致したときに、戻しばね46のばね力でクラッチ係合部62に係合する。
【0070】
第1クラッチ作動部E5が第1位置に位置する状態では、一対のクラッチ爪54がクラッチ爪当接部61と係合状態にあり、第1クラッチ作動部E5の回転が直接ケージC3に伝達される。また、第1クラッチ作動部E5が第2位置に位置すると、一対のクラッチ爪54がクラッチ脱用孔部60内で回転し、クラッチ爪継脱部56とは非係合の状態にあり、ケージC3には第1クラッチ作動部E5からの回転伝達が断たれる。
【0071】
第1クラッ
チF1は、一対のクラッチ爪54およびクラッチ係合部62が正回転方向と逆回転方向の両方向に対して対称に形成しているので、正回転と逆回転の両回転方向に対して、第1クラッチ作動部E5の回転をケージC3に直接伝達させることができる。
【0072】
第1段遊星歯車機構CAのケージC3は、
図3A、
図3B、
図3Cおよび
図6に示すように、軸方向前後に枠体71a、71bを隔設したケージ本体70を有し、後枠体71bの中央部に形成した孔部72を通して装入された太陽ギアC1に入力軸CIが固定されている。前枠体71aと後枠体71bとの間に3つの遊星ギアC2を等間隔に配置するために、前枠体71aと後枠体71bには、軸方向に沿って遊星支持ピン73が配置され、各遊星支持ピン73に遊星ギアC2が回転自在に装着され、太陽ギアC1と3つの遊星ギアC2とが噛み合っている。
【0073】
本実施形態において、各遊星支持ピン73は、後枠体71bから後方に延出されている。各遊星支持ピン73の後方延出部は、
図10に示す第1クラッチ本体部55に形成した取り付け孔74に装入される。したがって、第1クラッチ本体部55は、第1
段遊星歯車機構CAの3本の遊星支持ピン73によりケージC3に一体的に固定される。各遊星ギアC
2は、リングギアC4の内歯31に噛み合っている。
【0074】
前枠体71aの前部には、第2段遊星歯車機構CBの太陽ギア75が一体に形成されている。第2段遊星歯車機構CBは、ケージ76に3つの遊星ギア77が太陽ギア75と噛み合って配置され、各遊星ギア77はリングギアC4の内歯32に噛み合っている。
【0075】
第2段遊星歯車機構CBのケージ76の前部には、第2段入力軸78がスプライン結合し、第3段遊星歯車機構CCの太陽ギア79に固定されている。
第3段遊星歯車機構CCのケージ80には、3つの遊星ギア81が太陽ギア79と噛み合って配置され、ケージ80の前部に角ドライブ軸2が一体に形成されている。角ドライブ軸2およびケージ80の回りには、第2リングギア82が外装ケース10に対して回転自在に配置され、各遊星ギア81が第2リングギア82の内歯83と噛み合っている。第2リングギア82の後端部は、変速部材D2と回転不能に連結され、回転方向に一体化している。
【0076】
また、第2リングギア82は、外装ケース10の先端よりも突出した部分に、反力アームD1を固定している。
【0077】
上記した構成の動力伝達部3において、第3段遊星歯車機構CCは、第1段遊星歯車
機構CAと第2段遊星歯車機構CBとは異なり、常時プラネタリ型駆動で駆動され、反力アームD1が締結部材の近傍に当接するまで第2リングギア82と共に変速部材D2が回転する。第2段遊星歯車機構CBは、リングギアC4が変速部材D2と非連結状態では、ケージC3の回転をそのまま第1段遊星歯車機構CCに伝達する。
【0078】
したがって、
図3Aに示すように、第1クラッチ作動部E5が第1位置にある場合、第1段遊星歯車機構CAは、第1クラッチF1によりケージC3が直接回転され、第2クラッチF2はリングギアC4と変速部材D2との連結を断っている。このため、前述のように、太陽ギアC1と遊星ギアC2とケージC3とリングギアC4とが一体化されているので、第1クラッチ作動部E5の回転によりケージC3が回転駆動される。
【0079】
また、第1段遊星歯車機構CAのリングギアC4は第2段遊星歯車機構CBのリングギアを兼用しているので、第2段遊星歯車機構CBは、太陽ギア75と遊星ギア77とケージ76とリングギアC4とが一体化して回転するため、第1クラッチ作動部E5の回転により第2段遊星歯車機構CBのケージ76を減速することなく同方向に高速回転させる。ケージ76の回転は、第2段入力軸78を介して第3段遊星歯車機構CCの太陽ギア79に伝達される。第3段遊星歯車機構CCは、太陽ギア79の回転により、遊星ギア81が自転しながら公転し、ケージ80を太陽ギア79の回転方向と同方向に回転させる。
【0080】
また、第
2リングギア82は、
この内
歯と噛み合う遊星ギア81の回転の反力により、太陽ギア79の回転とは逆方向に回転し、反力アームD1が締結部材の近傍に当接すると回転が停止し、プラネタリ型駆動が開始される。この状態で、第2リングギア82と共に変速部材D2の回転が停止する。このように、第3段遊星歯車機構CCで減速されるものの、角ドライブ軸2を高速で回転させ、角ドライブ軸2に装着される不図示のソケットに係合する締結部材であるナットを高速で締め付ける(
図3A参照)。
【0081】
ナットが着座すると、負荷が大きくなり、入力軸CIに伝わるトルクが大きくなり、負荷検知部Eに設定した変速トルク値に達すると、
図3Bに示すように、可動回転体E2および第1クラッチ作動部E5が第1位置から軸方向前方の第2位置に移動し、第1クラッチF1をOFF、第2クラッチF2がOFFからニュートラル状態を経て、
図3Cに示す第2クラッチF2がONとなり、リングギアC4と変速部材D2とを連結切り換え部材F3を介して連結する。
【0082】
可動回転体E2が第1位置から第2位置に移動する際、変速部材D2は第2リングギア82と共に回転が停止した状態にある。このため、リングギアC4と一体に回転する連結切り換え部材F3の
円盤部40の嵌合凹部42と、変速部材D2の嵌合凸部38との位相が一致すると、第2クラッチ操作ばねE8に付勢されている連結切り換え部材F3が軸方向前方に移動し、
円盤部40の嵌合凹部42が変速部材D2の嵌合凸部38に嵌合する(第3位置、
図3C参照)。リングギアC4が変速部材D2に連結されると、リングギアC4が反力アームD1に連結された状態となり、第1段遊星歯車機構CAはプラネタリ型駆動となり、同様に、第2段遊星歯車機構CBもプラネタリ型駆動となる。このため、角ドライブ軸2には、3段で減速された高トルクの出力が伝達されることになる。
【0083】
なお、ナットの締め付けが終了して電動モータの駆動を停止し、モータを逆転させると、反力アームD1がフリーの状態となり、負荷が零状態となるので、第1クラッチF1における雌継手部F5のクラッチ爪当接部
61と第1クラッチ作動部E5のクラッチ爪54の位相が合った時、変速トルク値であるトルク値設定ばねのばね力で第1クラッチ作動部E5が第2位置から第1位置に自動的に戻り、第1クラッチF1がON、第2クラッチF2がOFFとなる(
図3A参照)。
【0084】
本実施形態によれば、ナットの締付け開始時では高速回転でナットを着座状態まで締め付け(
図3A参照)、変速トルク値に達すると、回転軸B1と入力軸CIとの捩れトルクを検知し、トルクに応じて可動回転体E2と第1クラッチ作動部E5を軸方向に機械的に自動的に移動させ、可動回転体E2の移動により第2クラッチ操作ばねE8を押動し第2クラッチF2の連結切り換え部材F3を軸方向に移動させ(
図3B、
図3C参照)、第1クラッチF1と第2クラッチF2のON、OFF操作を機械的に行っているので、電気的なセンサーや電気的なアクチュエータを用いて変速操作を行うことなく機械的に自動変速が行える。
【0085】
また、正回転方向と逆回転方向の両方向に対応することができ、右ねじ、左ねじの締め付けが行える。
【0086】
なお、本実施形態は電動モータを例にして説明したが、エアモータ、油圧モータ等のモータを駆動源としてもよい。
【0087】
また、上記した実施形態の第2クラッチF2は、リングギアC4と変速部材D2とを、連結切り換え部材F3により連結および連結解除の切り換えを行っており、連結切り換え部材F3の嵌合凹部42に変速部材D2の嵌合凸部38を嵌合させるようにしているが、本発明はこの形式に限定されるものではない。例えば第1クラッチF1と同様に第2クラッチをドッグクラッチ構造としてもよい。この場合、例えば連結切り換え部材F3を第1クラッチ作動部E5に外装される円筒形状に形成し、リングギアC4と連結切り換え部材F3とスプライン結合を行い、連結切り換え部材F3とリングギアCとを一体に回転させながら連結切り換え部材F3をリングギアC4に対して軸方向移動自在とする。また、変速部材D2には前記雌継手部F5と同様の雌継手を設け、連結切り換え部材F3には、前記第1クラッチ作動部E5のクラッチ爪54と同様のクラッチ爪を設け、第1位置ではクラッチ爪を空転させ、第2位置では前記雌継手と係合可能な状態にばね付勢され、第3位置でクラッチ爪が雌継手に係合する、といった構成を例示することができる。
【0088】
さらに、前記負荷検知部は、上記した鋼球を用いた構成に限定されることはなく、トルクリミッターとしての機能に加え、トルクリミッターの動作時に、軸方向に沿って移動する部材がクラッチをON、OFF動作させるために機能すればどのような構成であってもよく、この場合モータ軸が時計回り方向および反時計回り方向に回転しても、上述の各機能を実行できればよい。