(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872300
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】グリース組成物及び軸受
(51)【国際特許分類】
C10M 141/08 20060101AFI20160216BHJP
C10M 169/00 20060101ALI20160216BHJP
F16C 19/02 20060101ALI20160216BHJP
F16C 19/22 20060101ALI20160216BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20160216BHJP
C10M 135/18 20060101ALN20160216BHJP
C10M 129/10 20060101ALN20160216BHJP
C10M 133/16 20060101ALN20160216BHJP
C10M 105/38 20060101ALN20160216BHJP
C10M 105/18 20060101ALN20160216BHJP
C10M 117/00 20060101ALN20160216BHJP
C10N 10/02 20060101ALN20160216BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20160216BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20160216BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20160216BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
C10M141/08
C10M169/00
F16C19/02
F16C19/22
F16C33/66 Z
!C10M135/18
!C10M129/10
!C10M133/16
!C10M105/38
!C10M105/18
!C10M117/00
C10N10:02
C10N30:00 Z
C10N30:08
C10N40:02
C10N50:10
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-8027(P2012-8027)
(22)【出願日】2012年1月18日
(65)【公開番号】特開2013-147548(P2013-147548A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162423
【氏名又は名称】協同油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】齊田 理
(72)【発明者】
【氏名】大貫 裕次
(72)【発明者】
【氏名】山本 正道
【審査官】
▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−238755(JP,A)
【文献】
特開2007−099856(JP,A)
【文献】
特開平05−086392(JP,A)
【文献】
特開平08−188790(JP,A)
【文献】
米国特許第04880551(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M,C10N,F16C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基油、(b)増ちょう剤、(c)式(1)で表されるアルキルチオカルバモイル基を有する化合物、(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及び(e)金属不活性化剤を含有することを特徴とする
、全閉型モータ用軸受に用いるためのグリース組成物
であって、
(
d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、2, 6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールである前記グリース組成物。
(1)
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4は独立して炭素数1〜20のアルキル基を示し、Xは、S、S−S、S−CH
2−S、S−CH
2CH
2−S又はS−CH
2CH
2CH
2−Sを示す。)
【請求項2】
(e)金属不活性化剤が、デカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドである請求項1記載のグリース組成物。
【請求項3】
(a)基油が、ポリオールエステル油とアルキルジフェニルエーテル油との混合油である請求項1又は2記載のグリース組成物。
【請求項4】
(b)増ちょう剤が、リチウム石けん及び複合リチウム石けんからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載のグリース組成物。
【請求項5】
グリース組成物全体に対して、(a)基油50質量%以上、(b)増ちょう剤1〜30質量%、(c)式(1)で表されるアルキルチオカルバモイル基を有する化合物0.1〜10質量%、(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1〜10質量%、(e)金属不活性0.1〜10質量%を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載のグリース組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のグリース組成物を封入した全閉型モータ用軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基油、増ちょう剤、特定の酸化防止剤及び金属不活性化剤を含有するグリース組成物に関する。詳しくは、高温条件にある転がり軸受に使用するのに好適な、潤滑寿命を向上したグリース組成物、及びこれを封入した軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両、自動車、電機、各種産業機械などに使用されるモータは、近年の高速化や省エネ化、低騒音化、省保守化の要望により、小型・軽量化、高回転化、高効率化、長寿命化が進められている。小型・軽量化に伴い、潤滑剤の使用量は減少し、また高回転化による使用温度の上昇など、潤滑剤の使用環境は厳しくなってきている。特に鉄道車両用主電動機では、騒音問題や保守周期延長の要求から、モータの全閉化が進められているが、従来の開放型に比べ冷却効率が悪くなることから、更なる耐熱・長寿命グリースが必要とされている。
【0003】
これまでに、グリース組成物の性能向上に関する種々の提案がされている。
基油、増ちょう剤にアルキルチオカルバモイル基を有する化合物、およびアミン−ケトン縮合物系酸化防止剤を含有することにより、高温条件での転がり軸受の潤滑寿命を向上させたグリースが提案されている(特許文献1)。
潤滑基材に、アルキルチオカルバモイル基を有する化合物及びモリブデン化合物を添加し、あるいはさらにエステル化合物を添加することにより疲労寿命を改良した疲労寿命改良潤滑剤が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、(a)メチレンビス(ジ‐n‐ブチルジチオカルバメート)及び(b)トルトリアゾール又はベンゾトリアゾールのジフェニルアミン誘導体から成り、(a):(b)質量%比が約4:1〜約50:1の範囲である改良された抗酸化性の抗磨耗性極圧組成物及びそれを含む潤滑剤が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、(a)潤滑油、(b)少なくとも1個のヒドロキシル基を含む炭素数12〜24の脂肪族モノカルボン酸のリチウム塩、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸の二リチウム塩、及び炭素数12〜24の脂肪族モノカルボン酸のリチウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、及び(c)3‐(N‐サリチロイル)アミノ‐1,2,4‐トリアゾール及びデカメチレン‐ジカルボキシリックアシッド‐ジサリチロイルヒドラジドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有するリチウムグリース組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
しかし、これらの添加剤を使用したグリース組成物を高温条件にある転がり軸受に利用しても、熱酸化安定性及び潤滑寿命が不十分であり、ユーザーの満足するものは未だ得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−238755号公報
【特許文献2】特公平03−31760号公報
【特許文献3】特表2005−509732号公報
【特許文献4】特許第2936084号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱酸化安定性に優れるグリースとしては、分子内に金属を含まないウレア化合物を増ちょう剤とし、合成油を基油としたグリースが、深溝玉軸受を主に使用する自動車の電装補機に一般的に使用されているが、円筒ころ軸受を必須とする鉄道車両用主電動機に適用した場合は、十分な潤滑寿命を得ることが出来ない。
本発明の目的は、高温条件にある転がり軸受に好適であり、また安定した潤滑性を長期間示すグリース組成物を提供することである。即ち、熱酸化安定性及び潤滑寿命に優れているグリース組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、上記グリース組成物を封入した軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究の結果、基油、増ちょう剤、特定の酸化防止剤、さらに金属不活性化剤を用いることにより、熱酸化安定性及び潤滑寿命を改善し、高温下にある転がり軸受に好適であり、また安定した潤滑性を長期間示すグリース組成物を完成させた。
【0007】
本発明は以下に示すグリース組成物及び軸受を提供するものである。
〔1〕(a)基油、(b)増ちょう剤、(c)式(1)で表されるアルキルチオカルバモイル基を有する化合物、(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及び(e)金属不活性化剤を含有することを特徴とするグリース組成物。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4は独立して炭素数1〜20のアルキル基を示し、Xは、S、S−S、S−CH
2−S、S−CH
2CH
2−S又はS−CH
2CH
2CH
2−Sを示す。)
〔2〕(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、2, 6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールである〔1〕記載のグリース組成物。
〔3〕(e)金属不活性化剤が、デカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドである〔1〕又は〔2〕に記載のグリース組成物。
〔4〕(a)基油が、ポリオールエステル油とアルキルジフェニルエーテル油との混合油である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のグリース組成物。
〔5〕(b)増ちょう剤が、リチウム石けん及び複合リチウム石けんからなる群から選ばれる少なくとも1種である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のグリース組成物。
〔6〕グリース組成物全体に対して、(a)基油50質量%以上、(b)増ちょう剤1〜30質量%、(c)式(1)で表されるアルキルチオカルバモイル基を有する化合物0.1〜10質量%、(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1〜10質量%、(e)金属不活性0.1〜10質量%を含有する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のグリース組成物。
〔7〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のグリース組成物を封入した軸受。
【発明の効果】
【0010】
本発明のグリース組成物は、改善された熱酸化安定性及び潤滑寿命を有し、高温条件にある転がり軸受に使用するのに好適であり、また安定した潤滑性を長期間示すため、非常に有用である。本発明のグリース組成物はまた、高温で使用しても長期間にわたって一定のちょう度を保ち、著しく硬化したり軟化したりすることがない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(a)基油
本発明のグリース組成物の基油としては、鉱油、合成油及びこれらの混合油を使用することができる。合成油としては、ジエステル、ポリオールエステルに代表されるエステル系合成油、ポリ−α−オレフィン、ポリブテンに代表される合成炭化水素油、アルキルジフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールに代表されるエーテル系合成油、シリコーン油、フッ素化油などがあげられる。
本発明では、混合油を使用するのが好ましく、2種以上の合成油の混合油がより好ましく、エステル系合成油の混合油が更に好ましく、特に耐熱性に優れるポリオールエステル系合成油とアルキルジフェニルエーテル系合成油との混合油であることが好ましい。
基油の40℃における動粘度が、30〜300mm
2/sであるのが好ましい。40℃の動粘度が30mm
2/sを下回ると、蒸発量の増加及び油膜厚さの減少による潤滑性の低下により長寿命が望めないので好ましくない。一方、40℃の動粘度が300mm
2/sを上回ると、粘性抵抗が増大し、トルク上昇を引き起こすので好ましくない。
本発明のグリース組成物は、グリース組成物全体に対して、(a)基油を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上含有する。
【0012】
(b)増ちょう剤
本発明のグリース組成物の増ちょう剤としては、全ての増ちょう剤が使用可能である。具体的には、リチウム石けんや複合リチウム石けんに代表される石けん系増ちょう剤、ジウレアに代表されるウレア系増ちょう剤、有機化クレイやシリカに代表される無機系増ちょう剤、PTFEに代表される有機系増ちょう剤などがあげられる。
本発明において使用可能な複合リチウム石けんとしては、1個以上のヒドロキシル基を有する炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸と、炭素数2〜12の脂肪酸ジカルボン酸のリチウム塩とから構成されるものが好ましい。前記ヒドロキシ脂肪酸としては、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシラウリン酸、16−ヒドロキシパルミチン酸等が挙げられる。このうち、12−ヒドロキシステアリン酸が好ましい。前記脂肪族ジカルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸が挙げられる。アゼライン酸が最も好ましい。
【0013】
本発明で使用する増ちょう剤としては、石けん系増ちょう剤が好ましく、リチウム石けん及び複合リチウム石けんが耐熱性に優れるためより好ましい。複合リチウム石けんの中でも、12−ヒドロキシステアリン酸と、アゼライン酸のリチウム塩が最も好ましい。リチウム石けん及び複合リチウム石けんは、円筒ころ軸受を必須とする主電動機へ適用した場合にも、ウレア化合物よりも長い潤滑寿命を得ることが出来るため好ましい。
本発明のグリース組成物は、グリース組成物全体に対して、(b)増ちょう剤を、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%を含有する。増ちょう剤量が多すぎると、グリースが硬くなり撹拌抵抗が大きくなる可能性がある。逆に増ちょう剤量が少なすぎると、グリースが軟化し漏洩する可能性がある。
【0014】
添加剤
本発明のグリース組成物は、酸化防止剤として、(c)式(1)で表されるアルキルチオカルバモイル基を有する化合物(ATC)及び(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有する。本発明のグリース組成物は更に(e)金属不活性化剤を含有する。
【0015】
(c)本発明で使用するアルキルチオカルバモイル基を有する化合物は、下記式(1)で表される。
【0017】
式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4は独立して炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基、好ましくは炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキル基を示す。R
1〜R
4が全て同じ基であるのが好ましい。
Xは、S、S−S、S−CH
2−S、S−CH
2CH
2−S又はS−CH
2CH
2CH
2−Sを示す。このうち、S−CH
2−Sが好ましい。
式(1)で表される化合物としては、ビス(ジメチルチオカルバモイル)モノスルフィド、ビス(ジメチルカルバモイル)ジスルフィド、メチレンビス(ジメチルジチオカーバメート)、メチレンビス(ジーn−ブチルジチオカーバメート)等があげられる。このうち、メチレンビス(ジーn−ブチルジチオカーバメート)が好ましい。
本発明のグリース組成物は、グリース組成物全体に対して、(c)式(1)で表されるアルキルチオカルバモイル基を有する化合物を、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%含有する。(c)の量が10質量%を超えると、酸化劣化防止効果が飽和し、(c)の量が0.1質量%未満であると、添加の効果が得られない。
【0018】
(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2, 6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3, 5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ベンゼンプロパン酸, 3, 5-ビス(1, 1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシC7-C9側鎖アルキルエステル、及びオクタデシル-3-(3, 5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートからなる群から選ばれる1種以上などがあげられる。このうち、2, 6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールが好ましい。
本発明のグリース組成物は、グリース組成物全体に対して、(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%含有する。(d)の量が10質量%を超えると、酸化劣化防止が飽和し、(d)の量が0.1質量%未満であると、添加の効果が得られない。
【0019】
(e)金属不活性化剤としては、シュウ酸誘導体,サリチル酸誘導体,ヒドラジン誘導体などが挙げられ、具体的には、式(2)で表される3‐(N‐サリチロイル)アミノ‐1,2,4‐トリアゾール、式(3)で表されるデカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド(MCSH)、式(4)で表されるN,N‐ビス[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、イソフタル酸ビス(2‐フェノキシプロピオニルヒドラジド)、N‐ホルミル‐N'‐サリシロイルヒドラジン、2,2‐オキザミドビス‐[エチル‐3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ハイドロオキシフェニル)プロピオネート]、オギザリル−ビス−ベンジリデン−ヒドラジドなどが挙げられる。このうち、式(3)で表されるデカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド(MCSH)が好ましい。
【0020】
3‐(N‐サリチロイル)アミノ‐1,2,4‐トリアゾール
【0022】
MCSH:デカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド
【0024】
N,N‐ビス[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン
【0026】
本発明のグリース組成物は、グリース組成物全体に対して、(e)金属不活性化剤を、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%を含有する。(e)の量が10質量%を超えると、金属不活性化の効果が飽和し、(e)の量が0.1質量%未満であると、添加の効果が得られない。
【0027】
その他必要に応じて全ての添加剤が使用可能である。具体的には、本発明の必須成分である酸化防止剤以外の酸化防止剤、例えば、キノリン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤;錆止め剤;金属腐食防止剤;油性剤;耐摩耗剤;極圧剤;及び固体潤滑剤などがあげられる。
【0028】
本発明のグリース組成物は、グリース組成物全体に対して、(a)基油50質量%以上、好ましくは60質量%以上、(b)増ちょう剤1〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、(c)式(1)で表されるアルキルチオカルバモイル基を有する化合物0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%、(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%、(e)金属不活性化剤0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%を含有するのが特に好ましい。
【0029】
〔混和ちょう度〕
本発明のグリース組成物の混和ちょう度は、好ましくは200〜400、より好ましくは250〜350である。混和ちょう度が400を上回ると、漏洩しやすい。一方、混和ちょう度が200を下回ると、撹拌抵抗が大きくなる。
【0030】
本発明のグリース組成物を封入する軸受としては、転がり軸受、特にころ軸受、なかでも円筒ころ軸受が好適である。全閉型のモータに使用される軸受、特に全閉型の鉄道車両用主電動機に使用される軸受が好ましい。軸受の材質は特に制限されないが、銅であるのが好ましい。
【実施例】
【0031】
1.試験用グリース
表1及び表2に示した配合処方により、実施例1〜7、比較例1〜6のグリース組成物を調製した。各成分の量は、グリース組成物の全質量を基準とした質量%である。
【0032】
2.グリースの製造方法
基油467.5gの中に12−ヒドロキシステアリン酸82.5gを加え、完全に透明な液体状態になる温度(80〜90℃)に加熱した。これに予め水60gに水酸化リチウム1水塩11.9gを添加して加熱溶解したものを加え、激しく攪拌しながら12−ヒドロキシステアリン酸のけん化反応を行って12−ヒドロキシステアリン酸のリチウム塩を形成した。次に、アゼライン酸26gを加えて均一な状態になるまで攪拌を継続した。これに予め水60gに水酸化リチウム1水塩11.9gを添加して加熱溶解したものを加え、激しく攪拌しながらアゼライン酸のけん化反応を行った。約60分後赤外分光分析で未反応脂肪酸の吸収が見られないことを確認してけん化反応を終了させた。次に、加熱工程に入り内容物を200℃まで徐々に加熱した。200℃になった時点で残りの基油400.2gを添加しそのまま室温まで冷却し、三段ロールを2回通して、リチウムコンプレックスグリースを得た。最終の内容物の量は1000gとした。
基油としては、エーテル油(アルキルジフェニルエーテル:動粘度 40℃ 100mm
2/s, 100℃ 12.5mm
2/s)と、エステル油(ペンタエリスリトールエステル:動粘度 40℃ 102mm
2/s, 100℃ 12.9mm
2/s)との1:1混合物(質量比)を使用した(動粘度 40℃ 101mm
2/s)。
【0033】
3.分析方法及び評価試験方法
(1)ちょう度 (JIS K2220 7)
ちょう度は、280に統一した。
(2)高温薄膜試験
60×80×1mmのSPCC鋼板にグリースを厚さ2mmで塗布し、試験前後の全酸価を測定した。試験後の全酸価は、規定温度(160℃)、規定時間(500h)後に測定した。全酸価は、JIS K2501 5.により測定した。
(3)軸受潤滑寿命試験
試験グリース(5.6g)を充填した軸受を試験機にセットした。軸受に対しラジアル荷重(100kgf)を負荷し、ヒータで軸受外輪温度を120℃一定に制御し、8000rpmの速度で回転させた。軸受外輪温度が130℃に達した時間を寿命時間とした。
[試験条件]
軸受 :円筒ころ軸受(型番:NU214、内径70mm、外径125mm)
荷重 :ラジアル荷重:100kgf
回転数 :8000rpm
グリース封入量:5.6g
温度 :120℃コントロール
【0034】
評価基準
全酸価の変化(mgKOH/g) ○:0.20以下、×:0.20超
軸受潤滑寿命 ○:合格1000h超、×:不合格1000以下
総合評価 ○:全酸価変化及び軸受潤滑寿命の両方が合格
×:全酸価変化又は/及び軸受潤滑寿命が不合格
4.評価試験の結果
表1及び表2に実施例1〜7、比較例1〜6のグリース組成物の試験結果を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
成分(a)〜(e)を含有する実施例1〜7は全酸価の変化が少なく熱酸化安定性に優れ、軸受潤滑寿命も全て基準を達成し、総合評価において合格であった。
一方、実施例1の(d)、(c)、(e)をそれぞれ含有しない比較例1、2、3は、全酸価の変化が大きく、熱酸化安定性に劣り、軸受潤滑寿命も短かかった。
また、実施例1の(d)の代わりに、キノリン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤をそれぞれ含有させた比較例4、5も全酸価の変化が大きく、熱酸化安定性に劣り、軸受潤滑寿命も短かかった。
実施例1の(d)の代わりに、キノリン系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤とを含有させた比較例6についても同様に全酸価の変化が大きく、熱酸化安定性に劣り、軸受潤滑寿命も短かかった。