特許第5872303号(P5872303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5872303水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872303
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造および方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 15/10 20060101AFI20160216BHJP
   A01K 61/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   E02D15/10
   A01K61/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-11678(P2012-11678)
(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公開番号】特開2013-151787(P2013-151787A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107467
【弁理士】
【氏名又は名称】員見 正文
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 直
(72)【発明者】
【氏名】樋野 和俊
(72)【発明者】
【氏名】福間 晴美
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−336128(JP,A)
【文献】 特開2004−124467(JP,A)
【文献】 特開2005−144371(JP,A)
【文献】 特開平05−123076(JP,A)
【文献】 特開2006−262796(JP,A)
【文献】 特開2004−105129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 15/00〜 15/10
A01K 61/00
E02B 1/00〜 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物の沈降量が多い閉鎖性水域の水底に形成して環境修復効果および水産資源環境回復を図るための水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造であって、
浮泥流入部に潜堤マウンドを浮泥流入方向に沿ってベルト状に配置することにより浮泥(3)の覆砂エリア内への流入防止を図るためのベルト状の第1の覆砂構造(10)と、
該第1の覆砂構造を越えて前記覆砂エリア内に流入した前記浮泥に対する対策用として該第1の覆砂構造の浮泥流入側と反対側に該第1の覆砂構造と隣接して配置された第2の覆砂構造(20)とを具備し、
前記第1の覆砂構造が、前記閉鎖性水域の水底に堆積した底泥(1)の上に水酸化カルシウム含有粒状物を覆砂材として使用した覆砂施工により所定の厚さに形成された基礎部(11)の上に、前記水酸化カルシウム含有粒状物を覆砂材として使用した覆砂施工により所定の勾配の斜面(13R,13L)前記浮泥流入側および該浮泥流入側と反対側に有するように形成された第1のマウンド部を備え、
前記第2の覆砂構造が、前記基礎部の上に、前記水酸化カルシウム含有粒状物を覆砂材として使用した覆砂施工により前記浮泥流入方向に沿って所定の間隔で直線状に並ぶように形成された複数個の第2のマウンド部を備える、
ことを特徴とする、水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造。
【請求項2】
前記第1のマウンド部が、
平坦部(12)と、
所定の勾配の斜面を有するように前記平坦部を挟んで形成された第1および第2の斜面部(13L,13R)と、
を備えることを特徴とする、請求項1記載の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造。
【請求項3】
前記第2のマウンド部が、所定の勾配の斜面を有する円錐状部(22)を備えることを特徴とする、請求項1または2記載の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造。
【請求項4】
前記水酸化カルシウム含有粒状物が、石炭灰造粒物であることを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造。
【請求項5】
有機物の沈降量が多い閉鎖性水域の水底に請求項1記載の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造を形成して環境修復効果および水産資源環境回復を図るための水酸化カルシウム含有粒状物覆砂方法であって、
水酸化カルシウム含有粒状物を覆砂材として使用して覆砂施工を行って、前記閉鎖性水域の水底に堆積した底泥(1)の上に前記基礎部(11)を所定の厚さに形成する第1のステップと、
前記水酸化カルシウム含有粒状物を覆砂材として使用して覆砂施工を行って、前記第1の覆砂構造(10)の前記第1のマウンド部および前記第2の覆砂構造(20)の前記複数個の第2のマウンド部を前記基礎部の上に形成する第2のステップと、
を具備することを特徴とする、水酸化カルシウム含有粒状物覆砂方法。
【請求項6】
請求項2記載の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造を用い、
前記第2のステップにおいて、前記第1のマウンド部として、前記平坦部(12)および前記第1および第2の斜面部(13L,13R)を備えた台形状マウンド部を、該第1の斜面部(13L)が前記浮泥流入側に位置するとともに該第2の斜面部(13R)が該浮泥流入側と反対側に位置するように、前記基礎部の上に形成する
ことを特徴とする、請求項5記載の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂方法。
【請求項7】
請求項3記載の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造を用い、
前記第2のステップにおいて、前記複数個の第2のマウンド部の前記円錐状部(22)を、該複数個の第2のマウンド部のうちの1個の第2のマウンド部の該円錐状部が前記第1のマウンド部の前記台形状マウンド部の前記第2の斜面部と前記浮泥流入方向に沿って隣接するとともに該複数個の第2のマウンド部の該円錐状部浮泥流入方向に沿って直線状に並ぶように、前記基礎部の上に形成する
ことを特徴とする、請求項6記載の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂方法。
【請求項8】
前記水酸化カルシウム含有粒状物が、石炭灰造粒物であることを特徴とする、請求項5乃至7いずれかに記載の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物の沈降量が多い閉鎖性水域の水底に形成して環境修復効果および水産資源環境回復を図るのに好適な水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内湾、入江およびダム湖などの閉鎖性水域の底泥は有機物の堆積が顕著であり、その有機物の酸化的分解によって溶存酸素が消費されることにより一般的に還元的な場合が多い。このような還元的な環境下では、硫酸還元菌によって硫酸イオンが還元されるため、硫化水素が発生する。硫化水素は水中で酸化されるため、青潮や貧酸素水塊の発生など底質および水質悪化をもたらす。たとえば、昭和54年〜平成15年において東京湾や伊勢湾では毎年2〜25件の青潮が確認されている。
【0003】
このような富栄養化や貧酸素化は生物多様性や漁業生産性の低下に繋がるため、有機物の分解・減容化および安定化は、閉鎖性水域の水質および底質の改善や生物多様性および漁業生産性の維持の観点から、重要な課題である。
【0004】
このような課題を解決するために、従来では、図5に示すように、覆砂材として石炭灰造粒物(水酸化カルシウムを含む粒状物の一種)を使用して、厚さが200mm程度と一定の石炭灰造粒物覆砂2を閉鎖性水域の底泥1の上に敷設することが行われている(たとえば、下記の特許文献1参照)。
【0005】
なお、下記の特許文献2には、石炭灰造粒物からなる浸透柱を有機泥が堆積した河床と干潟に貫入する際に、貫入穴を開けるときに掘削した掘削土を石炭灰造粒物に混合して親水性土構造材を生成し、これを覆砂材として干潟に敷き詰めるようにした、汚泥が堆積する河川干潟の親水性向上方法が開示されている。
また、下記の特許文献3には、下段埋立土層の上層に石炭灰造粒物を敷設して石炭灰造粒物層を形成するとともに、上段埋立土層に石炭灰造粒物を略柱状に形成して、千鳥状または格子状になるように複数本差し込み配置し、埋立土層の表面全体に覆砂を所定の厚みになるように被せるようにした、人工干潟の造成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−124467号公報
【特許文献2】特開2009−001961号公報
【特許文献3】特開2007−170041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、所定の厚さ(=200mm程度)の石炭灰造粒物覆砂2を閉鎖性水域の底泥1の上に敷設する方法では、水底に変化が無く、沈降する有機物がほぼ一様に堆積する結果、有機物を含む浮泥3が石炭灰造粒物覆砂2の効果が発揮できる許容を超えて厚く堆積すると、有機物の分解・減容化および安定化が十分に図れなくなるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、水酸化カルシウム含有粒状物を閉鎖性水域の底泥上に敷設して有機物の分解・減容化および安定化を十分に図ることができる水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造は、有機物の沈降量が多い閉鎖性水域の水底に形成して環境修復効果および水産資源環境回復を図るための水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造であって、浮泥流入部に潜堤マウンドを浮泥流入方向に沿ってベルト状に配置することにより浮泥(3)の覆砂エリア内への流入防止を図るためのベルト状の第1の覆砂構造(10)と、該第1の覆砂構造を越えて前記覆砂エリア内に流入した前記浮泥に対する対策用として該第1の覆砂構造の浮泥流入側と反対側に該第1の覆砂構造と隣接して配置された第2の覆砂構造(20)とを具備し、前記第1の覆砂構造が、前記閉鎖性水域の水底に堆積した底泥(1)の上に水酸化カルシウム含有粒状物を覆砂材として使用した覆砂施工により所定の厚さに形成された基礎部(11)の上に、前記水酸化カルシウム含有粒状物を覆砂材として使用した覆砂施工により所定の勾配の斜面(13R,13L)前記浮泥流入側および該浮泥流入側と反対側に有するように形成された第1のマウンド部を備え、前記第2の覆砂構造が、前記基礎部の上に、前記水酸化カルシウム含有粒状物を覆砂材として使用した覆砂施工により前記浮泥流入方向に沿って所定の間隔で直線状に並ぶように形成された複数個の第2のマウンド部を備えることを特徴とする。
ここで、前記第1のマウンド部が、平坦部(12)と、所定の勾配の斜面を有するように前記平坦部を挟んで形成された第1および第2の斜面部(13L,13R)とを備えてもよい。
前記第2のマウンド部が、所定の勾配の斜面を有する円錐状部(22)を備えてもよい。
前記水酸化カルシウム含有粒状物が、石炭灰造粒物であってもよい。
【0010】
本発明の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂方法は、有機物の沈降量が多い閉鎖性水域の水底に本発明の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造を形成して環境修復効果および水産資源環境回復を図るための水酸化カルシウム含有粒状物覆砂方法であって、水酸化カルシウム含有粒状物を覆砂材として使用して覆砂施工を行って、前記閉鎖性水域の水底に堆積した底泥(1)の上に前記基礎部(11)を所定の厚さに形成する第1のステップと、前記水酸化カルシウム含有粒状物を覆砂材として使用して覆砂施工を行って、前記第1の覆砂構造(10)の前記第1のマウンド部および前記第2の覆砂構造(20)の前記複数個の第2のマウンド部を前記基礎部の上に形成する第2のステップとを具備することを特徴とする。
ここで、前記第2のステップにおいて、前記第1のマウンド部として、前記平坦部(12)および前記第1および第2の斜面部(13L,13R)を備えた台形状マウンド部を、該第1の斜面部(13L)が前記浮泥流入側に位置するとともに該第2の斜面部(13R)が該浮泥流入側と反対側に位置するように前記基礎部の上に形成してもよい。
前記第2のステップにおいて、前記複数個の第2のマウンド部の前記円錐状部(22)を、該複数個の第2のマウンド部のうちの1個の第2のマウンド部の該円錐状部が前記第1のマウンド部の前記台形状マウンド部の前記第2の斜面部と前記浮泥流入方向に沿って隣接するとともに該複数個の第2のマウンド部の該円錐状部浮泥流入方向に沿って直線状に並ぶように、前記基礎部の上に形成してもよい。
前記水酸化カルシウム含有粒状物が、石炭灰造粒物であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造および方法は、以下に示す効果を奏する。
(1)所定の厚さの基礎部の上に水酸化カルシウム含有粒状物を覆砂材として所定の勾配の斜面を有するようにマウンド部を形成することにより、有機物を含む浮泥が一様に堆積することを防止できるため、水酸化カルシウム含有粒状物を閉鎖性水域の底泥上に敷設して有機物の分解・減容化および安定化を十分に図ることができる。
(2)水酸化カルシウム含有粒状物の一種である石炭灰造粒物は、既に環境規制元素の含有量試験などの安全性が確かめられており、製品化され安定的に供給させる体制は整っている。製造工程も、石炭火力発電所から産生するフライアッシュに高炉セメントを用いて造粒したものであり、火力発電に伴う副生物でありコストが安い。
(3)水酸化カルシウム含有粒状物として転炉スラグの粒状物などを使用しても同様の効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例による水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造である石炭灰造粒物覆砂構造10の構成について説明するための図であり、(a)は石炭灰造粒物覆砂構造10の上面図であり、(b)は石炭灰造粒物覆砂構造10の横断面図(図1(a)の紙面下側から紙面に沿って石炭灰造粒物覆砂構造10を見たときの断面図)である。
図2】本発明の一実施例による水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造である石炭灰造粒物覆砂構造20の構成について説明するための図であり、(a)は石炭灰造粒物覆砂構造20の上面図であり、(b)は石炭灰造粒物覆砂構造20の横断面図(図2(a)の紙面下側から紙面に沿って石炭灰造粒物覆砂構造20を見たときの断面図)である。
図3図1(a),(b)に示した石炭灰造粒物覆砂構造10および図2(a),(b)に示した石炭灰造粒物覆砂構造20を閉鎖性水域の水底に堆積した底泥1の上に形成したときの効果を確認するための現場実証試験に用いた石炭灰造粒物覆砂構造30の構成について説明するための横断面図である。
図4図3に示した石炭灰造粒物覆砂構造30を用いた現場実証試験の結果を示すグラフであり、(a)はサルボウの生息確認を示すグラフであり、(b)はアサリの生息確認を示すグラフである。
図5】所定の厚さの石炭灰造粒物覆砂を閉鎖性水域の底泥上に敷設する従来の方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記の目的を、閉鎖性水域の水底に堆積した底泥の上に石炭灰造粒物を覆砂材として所定の厚さに形成された基礎部の上に、石炭灰造粒物を覆砂材として所定の勾配の斜面を有するようにマウンド部を形成することにより実現した。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造および方法の実施例について図面を参照して説明する。
本発明の一実施例による水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造は、フライアッシュを高炉セメントで造粒固化した粒子径40mm以下の石炭灰造粒物(エネルギア・エコ・マテリア社製のHiビーズ)を水酸化カルシウム含有粒状物として使用したものであり、有機物を含む浮泥3が一様に堆積することを防止するために、所定の厚さの基礎部の上に台形状または円錐状のマウンド部(すなわち、所定の勾配の斜面を有するマウンド部)を形成した構成を備えることを特徴とする。
【0015】
具体的には、本実施例による水酸化カルシウム含有粒状物覆砂構造は、図1(a),(b)に示すベルト状の石炭灰造粒物覆砂構造10と、図2(a),(b)に示す石炭灰造粒物覆砂構造20とを含む。
【0016】
石炭灰造粒物覆砂構造10は、浮泥流入部に潜堤マウンドを浮泥流入方向に沿ってベルト状に配置することにより浮泥の覆砂エリア内への流入防止を図るためのものであり、高さ200mmの基礎部11と、基礎部11の上に形成されたマウンド部(平坦部12、左側斜面部13Lおよび右側斜面部13Rを備える。)とからなる。
【0017】
基礎部11は、閉鎖性水域の水底に堆積された底泥1の上に石炭灰造粒物を覆砂材として使用して覆砂施工を行うことによって、厚さが200mm(20cm)となるように形成されている(図1(b)参照)。
【0018】
マウンド部を構成する平坦部12は、長さ(浮泥流入方向に沿った長さ。以下、同様。)=1,000mmおよび高さ=500〜1,000mm(50cm〜1m)となるように、石炭灰造粒物を覆砂材として使用して覆砂施工を行うことによって基礎部11の上に形成されている。
なお、平坦部12の高さは、最浅部の水深が漁船などの航行可能な水深以上となるように、かつ、左側斜面部13Lおよび右側斜面部13Rの裾の部分に堆積される浮泥3(有機物)の厚さ(以下、「有機物堆積厚」と称する。)=(沈降堆積厚−分解厚)×耐用年数が最大で200mm程度確保できるように、500〜1,000mmの間で決められる。
【0019】
マウンド部を構成する左側斜面部13Lは、浮泥流入側(図1(a)図示左側)において平坦部12と隣接し、かつ、長さ=1,500mm(1.5m)および勾配(垂直距離:水平距離)=1:1〜1:5となるように、石炭灰造粒物を覆砂材として使用して覆砂施工を行うことによって基礎部11の上に形成されている。
また、マウンド部を構成する右側斜面部13Rは、浮泥流入側と反対側(同図図示右側)において平坦部12と隣接し、かつ、長さ=1,500mm(1.5m)および勾配=1:1〜1:5となるように、石炭灰造粒物を覆砂材として使用して覆砂施工を行うことによって基礎部11の上に形成されている。
【0020】
石炭灰造粒物覆砂構造20は、石炭灰造粒物覆砂構造10を越えて覆砂エリア内に流入した浮泥3に対する対策用のものであり、浮泥流入方向に沿って間隔=0〜100,000mm(0〜100m)で直線状に並ぶように基礎部11の上に形成された複数個のマウンド部(円錐状部22)からなる(図2(b)参照)。
【0021】
マウンド部を構成する円錐状部22は、底面の径=10,000mm(10m)、高さ=500〜1,000mm(50cm〜1m)および勾配=1:5〜1:10となるように、石炭灰造粒物を覆砂材として使用して覆砂施工を行うことによって基礎部11の上に形成されている。
なお、円錐状部22の高さは、上述した平坦部12と同様に、最浅部の水深が漁船などの航行可能な水深以上となるように、かつ、円錐状部22の周囲に堆積される浮泥3(有機物)の厚さ(有機物堆積厚)=(沈降堆積厚−分解厚)×耐用年数が最大で200mm(20cm)程度確保できるように、500~1,000mmの間で決められる。
【0022】
次に、石炭灰造粒物覆砂構造10および石炭灰造粒物覆砂構造20を閉鎖性水域の水底に堆積した底泥1の上に形成したときの効果を確認するために、図3に示すような石炭灰造粒物覆砂構造30を用いて現場実証試験を行った結果について説明する。
【0023】
微粉炭燃焼式の火力発電により製造された石炭灰造粒物を中海下意東沖水深3.0〜4.0mの海底に広さ110m×140mおよび厚さ約20cmで敷設して石炭灰造粒物覆砂構造30の基礎部31を構成して、試験区とした。
また、当該海域に約1:3の勾配で高さ50cmの石炭灰造粒物覆砂構造30の台形状のマウンド部32を水深3.7〜3.2mで基礎部31の上に複数個ほど所定の間隔をもって並べて形成した。
【0024】
5年経過後に、石炭灰造粒物覆砂構造30に沈降する有機浮泥の堆積状態を把握するとともに、石炭灰造粒物覆砂構造30の基礎部31(隣接するマウンド部32間の浮泥3の堆積ポケット部)およびマウンド部32の斜面上のレベルに応じた二枚貝の育成状況の確認を行った。対象の二枚貝は、当該水域に生息する有用水産資源であるサルボウおよびアサリを対象とし、50cm×50cmの枠内に生息する該当種の数を計量した。
【0025】
調査の結果、有機浮泥は水深3.5m付近では基礎部31の上に0.15mの堆積が見られたが、マウンド部32の斜面には0〜1.0cm程度の浮泥が薄く堆積するだけで圧密の進行も無かった。
また、基礎部31にはサルボウおよびアサリの生息は確認できなかったが、マウンド部32の上部斜面には水深3.3m付近に帯状にサルボウの生息および水深3.1m付近に帯状にアサリの生息(すなわち、多年生の生貝の生息)が確認された(図4(a),(b)参照)。
【0026】
その結果、石炭灰造粒物覆砂構造10の右側斜面部13Rに隣接して石炭灰造粒物覆砂構造20(周囲360°に斜面を有する円錐状のマウンド部を備える。)を基礎部11の上に複数個並べて形成することにより、有機物を含む浮泥3が石炭灰造粒物覆砂構造10,20上に一様に堆積することを防止して、石炭灰造粒物の有機物分解機能を十分に発揮させて水産資源の回復を図れることが確認できた。
【0027】
以上の説明では、石炭灰造粒物覆砂構造10および石炭灰造粒物覆砂構造20を一列しか形成しなかったが、覆砂エリアが広い場合には、石炭灰造粒物覆砂構造10および石炭灰造粒物覆砂構造20を複数列形成するようにしてもよい。
【0028】
また、石炭灰造粒物覆砂構造20のマウンド部を円錐状部22としたが、高さおよび勾配が同じであれば、底面の形状が楕円形状の楕円形状部や、底面の形状が矩形状の矩形状部としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 底泥
2 石炭灰造粒物覆砂
3 浮泥
10,20,30 石炭灰造粒物覆砂構造
11,31 基礎部
12 平坦部
13L 左側斜面部
13R 右側斜面部
22 円錐状部
32 マウンド部
図1
図2
図3
図4
図5