(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、特許文献1の構成では、切欠き部を深く、すなわち、幅狭部の幅を狭くするほど、振動腕部の振動が基部に伝わってしまうルートを狭くできるので、振動腕部側に振動を閉じ込め易くなり、振動漏れの抑制効果が高まると考えられる。
しかしながら、幅狭部を狭くするにつれ、外部衝撃等に対する剛性が低下するという問題がある。一方で、幅狭部を広くすると、上述した十分な振動漏れの抑制効果を得られない。
【0010】
また、切り欠き部を、振動腕部の長さ方向に沿って大きく形成することも考えられるが、これでは、圧電振動片が大型化してしまう。
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、振動漏れを効果的に抑制できる圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
即ち、本発明は、互いに平行に配置された一対の振動腕部と、前記一対の振動腕部の長さ方向における基端側を一体的に固定する基部と、を備えた圧電振動片において、前記基部は、前記振動腕部の基端側が固定された接続部と、前記基部をマウントするためのマウント部と、前記接続部と前記マウント部との間に位置し、前記長さ方向に直交する幅方向の両外側から内側に向けてそれぞれ切り欠かれた一対の切欠き部により、前記幅方向の長さが前記接続部及び前記マウント部の前記幅方向の長さよりも狭い幅狭部と、を有し、前記接続部には、前記幅狭部側に向けて前記幅方向に沿う長さが漸次縮小する幅縮小部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
このように、接続部に、幅狭部に向けてその幅方向が漸次縮小する幅縮小部を形成することで、振動腕部によって励起された振動がマウント部に伝わってしまうルートを狭くできるので、振動腕部側に振動を閉じ込めて、マウント部側に漏れるのを抑制できる。これにより、振動漏れを効果的に抑制でき、CI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることができる。
【0014】
また、幅縮小部として、接続部における幅狭部側の幅方向の角部に、角面取り部が形成されていることを特徴とする。
ここで、幅縮小部が角面取り部である場合、角面取り部における、長さ方向に対する角面取り角度が60°とされているのが好ましい。このような角度で面取り部を形成すると、圧電板をエッチングして圧電振動片の外形を形成する際に、圧電材料の結晶方位に起因するエッチング残りが発生し難くなり、面取り部のテーパ形状を精度良く形成することができる。その結果、圧電振動片の振動漏れ特性のばらつきを抑制することができる。
また、角面取り部が形成されている部分の幅方向寸法をNCとし、切欠き部の幅方向寸法をNWとした場合、NC≧0.5×NWの関係が成立しているとよい。この関係を満たすことで、振動漏れの効果をさらに好適に得ることができる。
【0015】
また、上記本発明に係る圧電振動子において、上記本発明の圧電振動片がパッケージに気密封止されてなることを特徴とする。
【0016】
この場合には、上記本発明の圧電振動片を備えているため、小型化を図るとともに、十分な剛性を維持した上で、振動漏れを効果的に抑制できる信頼性の高い高品質な圧電振動子を提供できる。
【0017】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明に係る圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明に係る圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明に係る圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、上記本発明の圧電振動子を備えているので、小型化を図るとともに、十分な剛性を維持した上で、信頼性の高い高品質な発振器、電子機器、電波時計を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の圧電振動片によれば、大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、振動漏れを効果的に抑制できる。
また、本発明の圧電振動子によれば、上記本発明の圧電振動片を備えているため、大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、振動漏れを効果的に抑制できる信頼性の高い高品質な圧電振動子を提供できる。
また、本発明の発振器、電子機器、電波時計によれば、大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、信頼性の高い高品質な発振器、電子機器、電波時計を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
(圧電振動片)
図1に示すように、圧電振動片1は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、互いに平行に延びるよう配置された一対の振動腕部10,11と、一対の振動腕部10,11の長さ方向における基端側を一体的に固定するプレート状の基部12とを有している。なお、以下の説明では、圧電振動片1の延在方向(振動腕部10,11の長さ方向)をX方向、圧電振動片1の主面上において、X方向に直交する幅方向(振動腕部10,11が並んでいる方向)をY方向とし、X方向及びY方向に直交する厚さ方向をZ方向として説明する。
【0022】
一対の振動腕部10,11には、その外表面上に、一対の振動腕部10,11を振動させる図示しない励振電極が形成されている。また、基部12の外表面には図示しないマウント電極が形成され、図示しない引き回し電極により、マウント電極と励振電極とが電気的接続されている。
これらの電極に所定の電圧が印加されると、振動腕部10,11の双方の励振電極同士の相互作用により、振動腕部10,11が互いに接近または離間する方向(Y方向)に所定の共振周波数で振動する。
【0023】
ここで、本変形例の圧電振動片1には、振動腕部10,11の両主面上にZ方向に窪んだ溝部35,36を形成することもできる。これら溝部35,36は、平面視において、X方向を長さ方向とする長方形状に形成され、振動腕部10,11の基端側から略中間付近まで形成されている。これにより、振動腕部10,11は、その軸線方向に直交する面内での断面形状が、略H字状をなしている。
【0024】
この構成によれば、溝部35,36を形成することで、溝部35,36の側壁の両側で、振動腕部10,11において対となる励振電極同士が対向するので、その対向方向に電界を効率良く作用させることができる。これにより、振動腕部10,11のY方向に沿う幅を狭くしても、電界効率を高めることができ、品質を高めながら小型化を図ることが可能となっている。
【0025】
上述した基部12は、X方向を長さ方向とする平面視長方形状に形成されている。基部12は、X方向に沿う先端側(振動腕部10,11側)に位置し、振動腕部10,11の基端側が固定された接続部21と、接続部21に対してX方向に沿う基端側に位置するマウント部22と、接続部21及びマウント部22間に位置し、Y方向の長さが接続部21及びマウント部22よりも狭い幅狭部23と、を有している。
【0026】
マウント部22は、基部12を後述するパッケージ等にマウントするための部分であって、その外表面に上述したマウント電極が形成されている。
【0027】
ここで、上述した幅狭部23は、基部12のうちX方向に沿う中間部分において、Y方向両外側からY方向内側に向けてそれぞれ切り欠かれた一対の切欠き部24間に形成され、接続部21とマウント部22とを一体的に連結している。
【0028】
ところで、構成された圧電振動片1を製造するには、まず、フォトリソグラフィ技術によって図示しないウエハの両面に、振動腕部10,11及び基部12を有する圧電振動片1の外形パターンの保護膜を形成する。このとき、基部12において、切欠き部24の形成領域が開口するように外形パターンの保護膜を形成する。なお、この際、ウエハ上に複数の外形パターンの保護膜を形成する。
次いで、外形パターンの保護膜をマスクとして、ウエハの両面をそれぞれエッチング加工する。これにより、外形パターンの保護膜でマスクされていない領域を選択的に除去して、圧電振動片1の外形形状を形作ることができる。なお、この状態で各圧電振動片1は、図示しない連結部を介してウエハに連結された状態となっている。
【0029】
その後は、公知の方法により、圧電振動片1の外表面上に電極膜をパターニングして、励振電極、引き出し電極、及びマウント電極を形成する。
そして、最後にウエハと圧電振動片1とを連結していた連結部を切断して、複数の圧電振動片1をウエハから切り離して個片化する切断工程を行う。これにより、1枚のウエハから、音叉型の圧電振動片1を一度に複数製造することができる。
【0030】
(面取り部)
図1、
図2に示すように、接続部21の幅方向(Y方向)両側において、幅狭部23側の角部には、面取り部(幅縮小部)25が形成されている。この面取り部25により、接続部21は、先端側(振動腕部10,11側)から幅狭部23に向けて、その断面積(幅寸法)が漸次小さくなるようになっている。面取り部25は、圧電振動片1の外形形状の一部として上述したエッチングにより形成される。
面取り部25は、例えば、接続部21の両側の側面21a、21aに対するテーパ角度θが、θ=45°、60°等となるよう形成することができる。特に好ましい面取り部25のテーパ角度θは、θ=60°である。面取り部25のテーパ角度θをθ=60°に設定すれば、圧電板をエッチングして圧電振動片1の外形を形成する際に、圧電材料の結晶方位に起因するエッチング(QE)残りが発生し難くなり、面取り部25のテーパ形状を精度良く形成することができる。これにより、振動漏れ特性のばらつきを低減することができる。
【0031】
このように、本実施形態では、基部12のうち、接続部21において、幅狭部23側の両側角部に面取り部25を形成することで、接続部21の断面積を幅狭部23に向けて漸次小さくなる構成とした。
この構成によれば、振動腕部10,11によって励起された振動がマウント部22に伝わってしまうルートを狭くできるので、振動腕部10,11側に振動を閉じ込めて、マウント部22側に漏れるのを抑制できる。これにより、振動漏れを効果的に抑制でき、CI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることができる。
また、圧電振動片1の剛性(強度)は幅狭部23の断面積(Y−Z方向の断面積)によって決まるので、接続部21における幅狭部23側の両側角部に面取り部25を形成しても、圧電振動片1の剛性に特に影響は生じない。
すなわち従来では、振動漏れを低減させために幅狭部23の断面積を狭くする手法が採用されていたが、本実施形態の構成によれば、幅狭部23の断面積を変えることなく、振動漏れをより低減することができるので、剛性が低下する虞がない。
したがって、圧電振動片1を大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、振動漏れを効果的に抑制できる。
【0032】
ここで、上記したような圧電振動片1に形成した面取り部25の面取り寸法NCの大きさによる、振動漏れ特性の変化について、シミュレーションしたのでその結果を示す。
接続部21の側面21aから切り欠き部24の底面までの切り欠き寸法NWを80μmとしたとき、θ=45°の面取り部25の面取り寸法NCを、0〜75μmに変化させ、振動漏れ特性として圧電振動片1の振動周波数変化量ΔFを求めた。
ここで、振動周波数変化量ΔFは、圧電振動片1単体での振動周波数をf1、圧電振動片1をパッケージ上に実装した状態での振動周波数をf2としたとき、
ΔF=(f2−f1)/f1
である。
その結果、
図3に示すように、面取り部25の面取り寸法NCを40μm以上とすることで、振動漏れ量を抑えることができることが確認された。これは、面取り寸法NCを40μm以上とすることで、振動腕部10,11によって励起された振動がマウント部22に伝わってしまうルートを十分に狭くできるからであると考えられる。
【0033】
したがって、
図2に示すように、面取り部25のテーパ角度をθ=45°としたとき、面取り部25の面取り寸法NCは、接続部21の側面21aから切り欠き部24までの切り欠き寸法NWに対し、
NC≧0.5×NW
となるように形成するのが好ましいといえる。
即ち、角面取り部が形成されている部分の前記幅方向寸法をNCとし、切欠き部の前記幅方向寸法をNWとした場合、NC≧0.5×NWの関係が成立している、といえる。
なお、テーパ角度をθ=60°とした場合も、同様の結果が得られた。また、ここではNWを80μmとした場合の結果を示しているが、NWを60μm、100μm、120μmとした場合も、同様の結果を得ることができた。よって、面取り寸法NCをNC≧0.5×NWとなるようにすれば、顕著な振動漏れ低減の効果を得ることができる。
【0034】
(第1変形例)
図4に示すように、本変形例の圧電振動片1には、基部12のうち、マウント部22に一対のサイドアーム37が一体的に形成されている(いわゆる、サイドアームタイプ)。具体的に、本変形例のマウント部22は、幅狭部23を間に挟んでX方向に沿う接続部21の反対側に配置されたマウント部本体38と、マウント部本体38のY方向両側で、X方向に沿って延在する一対のサイドアーム37と、を備えている。
各サイドアーム37は、マウント部本体38からY方向の両側に向けてそれぞれ延在するとともに、その外側端部からX方向に沿う振動腕部10,11側に向けて延在する平面視L字状に形成されている。すなわち、各サイドアーム37は、基部12、及び振動腕部10,11の基端部のY方向両側に位置するとともに、その先端部がX方向における振動腕部10,11の中間部分に位置している。
この場合、サイドアーム37の先端部を介して例えばパッケージ等に実装できる。
【0035】
そして、接続部21の幅方向(Y方向)両側において、幅狭部23側の角部に、上記実施形態と同様の面取り部25が形成されている。
【0036】
この構成によれば、面取り部25および幅狭部23により、振動腕部10,11によって励起された振動が基部12に伝わってしまうルートを狭くできるので、振動腕部10,11側に振動を閉じ込めて、基部12側に漏れるのを抑制できる。これにより、振動漏れを効果的に抑制でき、CI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることができる。
したがって、圧電振動片1を大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、振動漏れを効果的に抑制できる。
【0037】
特に、本変形例のサイドアームタイプの圧電振動片1では、基部12において、振動腕部10,11との接続部21と、マウント部(サイドアーム37の先端部)と、の距離を長く確保することができる。その結果、圧電振動片1の全長を増大させることなく、振動漏れを抑制してCI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることが可能となる。
【0038】
(第2変形例)
図5に示すように、本変形例の圧電振動片1には、振動腕部10,11が、幅方向(Y方向)に間隔を隔てて配置され、これら振動腕部10,11の基部どうしが、Y方向に延びる連結部39によって連結されている。
そして、振動腕部10,11の間において、接続部21が、連結部39に対して振動腕部10,11が延びているのと同じ方向に延びて形成されている。この接続部21に、連結部39側から、幅狭部23、マウント部22がX方向に沿って連続して形成されている(いわゆるセンターアームタイプ)。
【0039】
このような接続部21の幅方向(Y方向)両側において、幅狭部23側の角部に、上記実施形態と同様の面取り部25が形成されている。
【0040】
この構成によれば、面取り部25および幅狭部23により、振動腕部10,11によって励起された振動が基部12に伝わってしまうルートを狭くできるので、振動腕部10,11側に振動を閉じ込めて、基部12側に漏れるのを抑制できる。これにより、振動漏れを効果的に抑制でき、CI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることができる。
したがって、圧電振動片1を大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、振動漏れを効果的に抑制できる。
【0041】
特に、本変形例のセンターアームタイプの圧電振動片1では、振動腕部10,11とマウント部22との距離を長く確保することができる。その結果、圧電振動片1の全長を増大させることなく、振動漏れを抑制してCI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることが可能となる。
【0042】
以下に、上記実施形態、および第1、第2変形例に備えた面取り部25に代えて採用することのできる幅縮小部の複数の変形例を示す。
(第3変形例)
図6(a)に示すように、本変形例の圧電振動片1は、基部12のうち、接続部21において、幅狭部23側の両側角部に段部(幅縮小部)26を形成することで、接続部21の断面積を幅狭部23に向けて段階的に小さくなる構成とした。ここで段部26は、圧電振動片1の厚さ方向から見て、底角が90°のV型の凹形状をなしている。
この構成によれば、段部26および幅狭部23により、振動腕部10,11によって励起された振動がマウント部22に伝わってしまうルートを狭くできるので、振動腕部10,11側に振動を閉じ込めて、マウント部22側に漏れるのを抑制できる。これにより、振動漏れを効果的に抑制でき、CI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることができる。
したがって、圧電振動片1を大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、振動漏れを効果的に抑制できる。
【0043】
(第4変形例)
図6(b)に示すように、本変形例の圧電振動片1は、基部12のうち、接続部21において、幅狭部23側の両側角部に、凹部(幅縮小部)27を形成することで、接続部21の断面積を幅狭部23に向けて漸次小さくなる構成とした。ここで、凹部27は、圧電振動片1の厚さ方向から見て略円弧状の凹形状をなしている。
この構成によれば、凹部27および幅狭部23により、振動腕部10,11によって励起された振動がマウント部22に伝わってしまうルートを狭くできるので、振動腕部10,11側に振動を閉じ込めて、マウント部22側に漏れるのを抑制できる。これにより、振動漏れを効果的に抑制でき、CI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることができる。
したがって、圧電振動片1を大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、振動漏れを効果的に抑制できる。
【0044】
(第5変形例)
図6(c)に示すように、本変形例の圧電振動片1は、基部12のうち、接続部21において、幅狭部23側の両側角部に、円弧状部(幅縮小部、丸面取り部)28を形成することで、接続部21の断面積を幅狭部23に向けて漸次小さくなる構成とした。ここで、円弧状部28は、圧電振動片1の厚さ方向から見て略円弧状の凸形状をなしている。
この構成によれば、円弧状部28および幅狭部23により、振動腕部10,11によって励起された振動がマウント部22に伝わってしまうルートを狭くできるので、振動腕部10,11側に振動を閉じ込めて、マウント部22側に漏れるのを抑制できる。これにより、振動漏れを効果的に抑制でき、CI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることができる。
したがって、圧電振動片1を大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、振動漏れを効果的に抑制できる。
【0045】
(圧電振動子)
次に、本実施形態の圧電振動片1を用いた圧電振動子50について説明する。ここで、圧電振動片1としては、
図4に示した構成を採用しており、上述した実施形態および変形例と同様の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。また、圧電振動片1としては、上述した実施形態や各変形例の構成を有したものを採用しても良いのは言うまでもない。
図7〜
図10に示すように、本実施形態の圧電振動子50は、ベース基板51とリッド基板52とが例えば陽極接合や図示しない接合膜等を介して接合された箱状のパッケージ53と、パッケージ53の内部に形成されたキャビティC内に収納され、ベース基板51上にマウントされた圧電振動片1と、を備えた表面実装型の振動子とされている。
【0046】
図7、
図8に示すように、ベース基板51及びリッド基板52は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、略板状に形成されている。リッド基板52には、ベース基板51が接合される接合面側に圧電振動片1が収まる矩形状の凹部52aが形成されている。この凹部52aは、ベース基板51及びリッド基板52が対向して重ね合わされたときに、圧電振動片1を収容するキャビティCを画成する凹部として機能する。
【0047】
図8に示すように、ベース基板51には、ベース基板51をZ方向に貫通する一対の貫通孔54,55が形成されている。この貫通孔54,55は、キャビティC内に収まる位置に形成されている。より詳しく説明すると、本実施形態の貫通孔54,55は、マウントされた圧電振動片1の基部12側(サイドアーム37の基端側)に対応した位置に一方の貫通孔54が形成され、振動腕部10,11の先端側に対応した位置に他方の貫通孔55が形成されている。
【0048】
そして、これら一対の貫通孔54,55には、これら貫通孔54,55を埋めるように形成された一対の貫通電極56,57が形成されている。これら貫通電極56,57は、例えば貫通孔54,55に対して一体的に固定された導電性の芯材であり、両端が平坦で、かつベース基板51の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。これにより、キャビティC内の気密を維持しつつ、ベース基板51の両面で電気導通性を確保している。
【0049】
なお、貫通電極56,57としては、上述した構成に限定されるものではなく、例えば貫通孔54,55に図示しない金属ピンを挿入した後、貫通孔54,55と金属ピンとの間にガラスフリットを充填して焼成することで形成しても構わない。さらには、貫通孔54,55内に埋設された導電性接着剤であっても構わない。
【0050】
図9、
図10に示すように、ベース基板51の上面側(リッド基板52が接合される接合面側)には、一対の引き回し電極58,59がパターニングされている。一対の引き回し電極58,59のうち、一方の引き回し電極58は、ベース基板51のY方向一端側において、X方向に沿って延在している。具体的に、引き回し電極58は、X方向一端側で貫通電極56を覆う一方、X方向他端側がベース基板51におけるX方向中間部分に配置されている。
【0051】
また、他方の引き回し電極59は、ベース基板51のY方向他端側において、X方向に沿って延在している。具体的に、引き回し電極59は、X方向一端側がベース基板51におけるX方向中間部分に配置される一方、X方向他端側で貫通電極57を覆っている。したがって、各引き回し電極58のX方向他端側と、引き回し電極59のX方向一端側と、はベース基板51におけるX方向の同じ位置、具体的には圧電振動片1におけるサイドアーム37の先端部と平面視で重なる位置に配置されている。
【0052】
そして、これら一対の引き回し電極58,59の他端側にそれぞれ金等からなるバンプBが形成されている。これらバンプBに、基部12のマウント部22に形成されたマウント電極が接触した状態でマウントされている。これにより、圧電振動片1は、ベース基板51から浮いた状態で支持されるとともに、引き回し電極58,59にそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
本実施形態では、マウント電極がサイドアーム37の先端部まで形成されており、このマウント電極が引き回し電極58,39にバンプBを介して接続されている。
【0053】
また、ベース基板51の下面には、
図7〜
図10に示すように、一対の貫通電極56,57に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極60,61が形成されている。
【0054】
このように構成された圧電振動子50を作動させる場合には、ベース基板51に形成された外部電極60,61に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片1の励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部10,11を、互いに接近・離間する方向(Y方向)に所定の共振周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10,11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として圧電振動子50を利用することができる。
【0055】
そして、本実施形態の圧電振動子50によれば、上述した圧電振動片1を備えているので、このような圧電振動片1をキャビティC内にマウントした場合に、大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、振動漏れを効果的に抑制できる信頼性の高い高品質な圧電振動子50を提供できる。
【0056】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、
図11を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器110は、
図11に示すように、圧電振動子50を、集積回路111に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器110は、コンデンサ等の電子素子部品112が実装された基板113を備えている。基板113には、発振器用の前記集積回路111が実装されており、この集積回路111の近傍に、圧電振動子50の圧電振動片が実装されている。これら電子素子部品112、集積回路111および圧電振動子50は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0057】
このように構成された発振器110において、圧電振動子50に電圧を印加すると、圧電振動子50内の圧電振動片1が振動する。この振動は、圧電振動片1が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路111に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路111によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。
これにより、圧電振動子50が発振子として機能する。
また、集積回路111の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加できる。
【0058】
本実施形態の発振器110によれば、上述した圧電振動子50を備えているので、大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、信頼性の高い高品質な発振器110を提供できる。
【0059】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、
図12を参照して説明する。なお電子機器として、前述した圧電振動子50を有する携帯情報機器120を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器120は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカおよびマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化および軽量化されている。
【0060】
次に、本実施形態の携帯情報機器120の構成について説明する。この携帯情報機器120は、
図12に示すように、圧電振動子50と、電力を供給するための電源部121とを備えている。電源部121は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部121には、各種制御を行う制御部122と、時刻等のカウントを行う計時部123と、外部との通信を行う通信部124と、各種情報を表示する表示部125と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部126とが並列に接続されている。そして、電源部121によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0061】
制御部122は、各機能部を制御して音声データの送信や受信、現在時刻の計測、表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部122は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0062】
計時部123は、発振回路やレジスタ回路、カウンタ回路、インターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子50とを備えている。圧電振動子50に電圧を印加すると圧電振動片が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部122と信号の送受信が行われ、表示部125に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0063】
通信部124は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部127、音声処理部128、切替部129、増幅部130、音声入出力部131、電話番号入力部132、着信音発生部133および呼制御メモリ部134を備えている。
無線部127は、音声データ等の各種データを、アンテナ135を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部128は、無線部127又は増幅部130から入力された音声信号を符号化および複号化する。増幅部130は、音声処理部128又は音声入出力部131から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部131は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0064】
また、着信音発生部133は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部129は、着信時に限って、音声処理部128に接続されている増幅部130を着信音発生部133に切り替えることによって、着信音発生部133において生成された着信音が増幅部130を介して音声入出力部131に出力される。
なお、呼制御メモリ部134は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部132は、例えば、0から9の番号キーおよびその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0065】
電圧検出部126は、電源部121によって制御部122等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部122に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部124を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部126から電圧降下の通知を受けた制御部122は、無線部127、音声処理部128、切替部129および着信音発生部133の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部127の動作停止は、必須となる。更に、表示部125に、通信部124が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0066】
すなわち、電圧検出部126と制御部122とによって、通信部124の動作を禁止し、その旨を表示部125に表示できる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部125の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部124の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断できる電源遮断部136を備えることで、通信部124の機能をより確実に停止できる。
【0067】
本実施形態の携帯情報機器120によれば、上述した圧電振動子50を備えているので、大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、信頼性の高い高品質な携帯情報機器120を提供できる。
【0068】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、
図13を参照して説明する。
本実施形態の電波時計140は、
図13に示すように、フィルタ部141に電気的に接続された圧電振動子50を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、前述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0069】
以下、電波時計140の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ142は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ143によって増幅され、複数の圧電振動子50を有するフィルタ部141によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子50は、前記搬送周波数と同一の40kHzおよび60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部148、149をそれぞれ備えている。
【0070】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路144により検波復調される。
続いて、波形整形回路145を介してタイムコードが取り出され、CPU146でカウントされる。CPU146では、現在の年や積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC147に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部148、149は、前述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0071】
なお、前述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計140を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子50を必要とする。
【0072】
本実施形態の電波時計140によれば、上述した圧電振動子50を備えているので、大型化することなく、十分な剛性を維持した上で、信頼性の高い高品質な電波時計140を提供できる。
【0073】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、表面実装型の圧電振動子50に本発明の圧電振動片1を採用しているが、これに限らず、シリンダパッケージタイプの圧電動子に本発明の圧電振動片1を採用しても良い。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。