特許第5872317号(P5872317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872317
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】水道水貯水装置、及び水道水給水方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/02 20060101AFI20160216BHJP
   E03B 11/02 20060101ALI20160216BHJP
   B65D 90/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   E03C1/02
   E03B11/02 Z
   B65D90/00 K
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-35436(P2012-35436)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-170401(P2013-170401A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502308527
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良輔
(72)【発明者】
【氏名】星山 文基
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−168958(JP,A)
【文献】 特開2010−185272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00−1/10
E03B 11/02、11/06
B65D 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管を通じて供給される水道水を、給水栓より上流側にて貯水する水道水貯水装置であって、
貯水タンクと、
前記貯水タンクの壁面を通じて設けられた流入口に接続されて、水道管を通じて供給される水道水を前記貯水タンク内に導入する一次側給水管と、
前記貯水タンクの壁面を通じて設けられた第一流出口に接続されて、前記貯水タンク内に導入された水道水を前記給水栓まで導く二次側第一給水管と、
前記一次側給水管に備えられた、水道水の逆流を防止するための逆止弁と、
一端が前記貯水タンクの壁面を通じて設けられた第二流出口に接続され、且つ、他端が前記二次側第一給水管の管路に接続された二次側第二給水管と、
を具備してなり、
更に、前記二次側第二給水管、又は、前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管との接続箇所には、前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管との接続関係につき、
前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管とが連通されている第一の状態、
および、前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管との連通が遮断されており、且つ、前記二次側第二給水管が当該二次側第二給水管を通じて前記貯水タンク内に空気を導入可能とされている第二の状態、
のいずれかの状態に切り替える切替弁が取り付けられており、
常時は前記第一の状態とした上で、前記給水栓から水道水を取水する一方、非常時は前記第二の状態とした上で、前記二次側第二給水管を通じて前記貯水タンク内に空気を導入することによって、前記給水栓から水道水を取水するように構成されてなることを特徴とする水道水貯水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水道水貯水装置において、
前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管の接続箇所が前記給水栓の近辺となされ、且つ、前記二次側第二給水管に対する前記切替弁の取り付け位置が、前記接続箇所の近辺となされた水道水貯水装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水道水貯水装置において、
前記切替弁は、前記二次側第二給水管の上流側と接続される第一口部と、前記二次側第二給水管の下流側と接続される第二口部と、前記第二の状態で前記二次側第二給水管を通じて前記貯水タンク内に空気を導入可能な第三口部と、を有する三方弁である水道水貯水装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水道水貯水装置において、
前記第一流出口が、前記貯水タンクの底部、又は底部近辺に設けられており、
前記第二流出口が、前記貯水タンクの頂部、又は頂部近辺に設けられてなる水道水貯水装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水道水貯水装置において、
前記貯水タンクの複数個と、
前記一次側給水管における前記逆止弁が備えられた位置より下流側に備えられた、前記一次側給水管を複数に分枝させるヘッダーと、
を具備してなり、
前記ヘッダーによって分枝された複数の一次側給水管の各々に対し、複数個の前記貯水タンクがそれぞれ個別に接続されてなる水道水貯水装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水道水貯水装置を用いて水道水を取水する水道水給水方法であって、
前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管との接続関係を前記第一の状態とした上で、前記給水栓から水道水を取水する常時取水工程、
および、前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管との接続関係を前記第二の状態とした上で、前記二次側第二給水管を通じて前記貯水タンク内に空気を導入し、もって、前記給水栓から水道水を取水する非常時取水工程、
のいずれかの工程を実行することによって水道水を取水することを特徴とする水道水給水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管を通じて供給される水道水を、給水栓より上流側にて貯水する水道水貯水装置、及びこの水道水貯水装置を用いた水道水給水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道管を通じて供給される水道水を貯水し、断水などの非常時において、貯水した水道水を取水して利用する手段が開発されている(例えば、下記特許文献1、及び2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の非常用貯水装置は、埋設された水道管路の途中に設けられる非常用貯水装置であって、両端に前記水道管路が接続された貯水槽と、前記貯水槽より上流側の水道管路に上流への逆流を防ぐように設けられた逆止弁とを有してなり、断水等の非常時において、前記貯水槽に連通された空気供給管を通じて、貯水槽に空気を導入することによって、前記貯水槽に貯水された水道水を給水栓に向かって送り出し、もって水道水を取水するものである。
【0004】
一方、特許文献2に記載の給水システムは、住宅内の給水系管路に適用される給水システムであって、前記住宅内に供給される水道水の逆流を防止する第一逆止弁、前記第一逆止弁よりも下流側の水道水を第一給水栓に供給する第一配水管、前記第一逆止弁よりも下流側の水道水を第二給水栓に供給する第二配水管、前記第一配水管及び前記第二水管の少なくともいずれか一方に設けられる貯水手段、及び前記第二給水栓の少なくとも一つに形成され、前記貯水手段を加圧する加圧装置を接続するための接続口を備え、前記第一給水栓が、給水圧が作用しない非常時には非常取水栓として兼用されることを特徴とするものであり、断水等の非常時において、一の室内に存する第二給水栓から前記貯水槽に向かって空気を導入し、別の室内に存する第一給水栓にて水道水を取水するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3138147号公報
【特許文献2】特開2010‐185272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の非常用貯水装置においては、前記貯水槽に空気を導入するための空気供給管の管内に滞留水が残存したり、多湿の雰囲気となったりするため、前記空気供給管の管内がカビや雑菌の繁殖を促す温床となる場合がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載の給水システムは、一の室内に存する第二給水栓から前記貯水槽に向かって空気を導入し、別の室内に存する第一給水栓にて水道水を取水する仕組みを基本構成とするものであり、空気の導入位置と取水位置とが遠隔となることから、取水作業が煩雑なものとなる。
【0008】
ここで、特許文献2に記載の給水システムにおいては、空気の導入位置と取水位置とを近接させるべく、更に、前記第一給水栓と同室内にコンセント部を備え、係るコンセント部から前記貯水槽に向かって空気を導入する実施形態も開示されているが、このような構成の給水システムにおいては、前記コンセント部内に滞留水が残存したり、多湿の雰囲気となったりするため、前記コンセント部内にカビや雑菌が繁殖することになる。
【0009】
本発明は、前記技術的課題を解決するために開発されたものであり、貯水タンク内に貯水された水道水を、衛生的、且つ、簡単な作業にて取水することができる水道水貯水装置、及びこの水道水貯水装置を用いた水道水給水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水道水貯水装置は、水道管を通じて供給される水道水を、給水栓より上流側にて貯水する水道水貯水装置であって、貯水タンクと、前記貯水タンクの壁面を通じて設けられた流入口に接続されて、水道管を通じて供給される水道水を前記貯水タンク内に導入する一次側給水管と、前記貯水タンクの壁面を通じて設けられた第一流出口に接続されて、前記貯水タンク内に導入された水道水を前記給水栓まで導く二次側第一給水管と、前記一次側給水管に備えられた、水道水の逆流を防止するための逆止弁と、一端が前記貯水タンクの壁面を通じて設けられた第二流出口に接続され、且つ、他端が前記二次側第一給水管の管路に接続された二次側第二給水管と、を具備してなり、更に、前記二次側第二給水管、又は、前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管との接続箇所には、前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管との接続関係につき、前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管とが連通されている第一の状態、および、前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管との連通が遮断されており、且つ、前記二次側第二給水管が当該二次側第二給水管を通じて前記貯水タンク内に空気を導入可能とされている第二の状態、のいずれかの状態に切り替える切替弁が取り付けられており、常時は前記第一の状態とした上で、前記給水栓から水道水を取水する一方、非常時は前記第二の状態とした上で、前記二次側第二給水管を通じて前記貯水タンク内に空気を導入することによって、前記給水栓から水道水を取水するように構成されてなることを特徴とする(以下、本発明装置と称する。)。
【0011】
本発明装置においては、前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管の接続箇所が前記給水栓の近辺となされ、且つ、前記二次側第二給水管に対する前記切替弁の取り付け位置が、前記接続箇所の近辺となされたものが好ましい態様となる。
【0012】
本発明装置においては、前記切替弁は、前記二次側第二給水管の上流側と接続される第一口部と、前記二次側第二給水管の下流側と接続される第二口部と、前記第二の状態で前記二次側第二給水管を通じて前記貯水タンク内に空気を導入可能な第三口部と、を有する三方弁であることが好ましい態様となる。
【0013】
本発明装置においては、前記第一流出口が、前記貯水タンクの底部、又は底部近辺に設けられており、前記第二流出口が、前記貯水タンクの頂部、又は頂部近辺に設けられてなるものが好ましい態様となる。
【0014】
本発明装置においては、前記貯水タンクの複数個と、前記一次側給水管における前記逆止弁が備えられた位置より下流側に備えられた、前記一次側給水管を複数に分枝させるヘッダーと、を具備してなり、前記ヘッダーによって分枝された複数の一次側給水管の各々に対し、複数個の前記貯水タンクがそれぞれ個別に接続されてなるものが好ましい態様となる。
【0015】
本発明の水道水給水方法は、前記本発明装置を用いて水道水を取水する水道水給水方法であって、前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管との接続関係を前記第一の状態とした上で、前記給水栓から水道水を取水する常時取水工程、および、前記二次側第二給水管と前記二次側第一給水管との接続関係を前記第二の状態とした上で、前記二次側第二給水管を通じて前記貯水タンク内に空気を導入し、もって、前記給水栓から水道水を取水する非常時取水工程、のいずれかの工程を実行することによって水道水を取水することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、貯水タンク内に貯水された水道水を、衛生的、且つ、簡単な作業にて取水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態1に係る本発明装置を家屋の給水管路に適用した状態を示す断面図である。
図2図2は、本発明装置における切替弁を拡大して示す断面図であり、図2(a)は第一の状態、図2(b)は第二の状態をそれぞれ示す。
図3図3(a)〜(c)は、本発明装置を用いた貯水工程、常時取水工程、及び非常時取水工程をそれぞれ示す模式図である。
図4図4は、本発明装置の別の例を示す模式図である。
図5図5は、切替弁の別の取り付け状態を示す断面図であり、図5(a)は第一の状態、図5(b)は第二の状態をそれぞれ示す。
図6図6は、実施形態2に係る本発明装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0019】
<実施形態1>
図1に、本発明装置1の一実施形態を示す。本実施形態に係る本発明装置1は、水道管100を通じて供給される水道水を、給水栓10より上流側にて貯水するものであり、貯水タンク2と、前記貯水タンク2に水道水を導入するための一次側給水管3と、前記一次側給水管3に取り付けられた逆止弁4と、前記貯水タンク2から前記給水栓10まで水道水を導くための二次側第一給水管5と、二次側第二給水管6と、前記二次側第二給水管6に取り付けられた切替弁7とを具備する。
【0020】
前記貯水タンク2は、硬質塩化ビニル製の円筒状の中空体であり、その長さ方向を地面に沿わせた状態にて家屋の床下に配されている。前記貯水タンク2には、その壁面を通じて貫通孔が三箇所(流入口21、第一流出口22、第二流出口23)形成されている。更に詳しくは、前記流入口21は、前記貯水タンク2の前記水道管100側寄りの一端面(上流側の端面)に設けられており、前記第一流出口22及び前記第二流出口23は、前記貯水タンク2の他端面(下流側の端面)に設けられている。特に、前記第一流出口22は、前記貯水タンク2の底部側に近接して設けられており、前記第二流出口23は、前記貯水タンク2の頂部側に近接して設けられている。
【0021】
前記一次側給水管3は、硬質塩化ビニル製の管状体(パイプ)であり、その一端が前記水道管100に接続され、他端が前記貯水タンク2に設けられた前記流入口21に接続されている。前記一次側給水管3の管路(前記水道管100と前記貯水タンク2との間)には、前記逆止弁4が取り付けられている。前記逆止弁4は、チャッキやチェックバルブとも称されるものであり、水道水の逆流を防止するものである。
【0022】
前記二次側第一給水管5は、硬質塩化ビニル製の管状体(パイプ)であり、その一端が前記貯水タンク2に設けられた前記第一流出口22に接続され、他端が前記給水栓10に接続されている。
【0023】
前記二次側第二給水管6は、硬質塩化ビニル製の管状体(パイプ)であり、その一端が前記貯水タンク2に設けられた第二流出口23に接続され、他端が前記二次側第一給水管5の管路に接続されている。前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5との接続箇所は、前記給水栓10の近辺(本実施形態においては、シンク下の空間内)となされている。
【0024】
前記二次側第二給水管6の管路には、前記切替弁7が取り付けられている。前記二次側第二給水管6に対する前記切替弁7の取り付け位置は、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5との接続箇所の近辺、且つ、前記貯水タンク2の頂部より上側の位置(本実施形態においては、シンク下の空間内)となされている。
【0025】
図2に示すように前記切替弁7は三方弁であり、弁本体71内に内蔵された、L字状の管路を有するボール72が回転させられることにより、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5との接続関係につき、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5とを連通させる第一の状態(図2(a)参照)と、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5との連通を遮断させ、且つ、前記二次側第二給水管6を開放させる第二の状態(図2(b)参照)とに切り替えることができる仕組みとなっている。以下、前記切替弁7における前記二次側第二給水管6の上流側(前記貯水タンク2側)と接続された口部を第一口部711、下流側(前記二次側第一給水管5側)と接続された口部を第二口部712、前記第二の状態となされた際に、前記二次側第二給水管6を大気開放させる口部を第三口部713と称する。
【0026】
なお、本実施形態においては、前記貯水タンク2として、硬質塩化ビニル製のものを用いたが、前記貯水タンク2を形成する素材としては、特に限定されるものではなく、硬質塩化ビニルの他、ポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂、或いはステンレス等の金属にて成形することができる。又、前記貯水タンク2の容量としては特に限定されるものではないが、4人家族が2〜5日の間、飲料水として使用できる程度の量を貯水できる容量(具体的には、20〜50リットル)とすることが好ましい。
【0027】
又、本実施形態においては、前記一次側給水管3、前記二次側第一給水管5、前記二次側第二給水管6として、硬質塩化ビニル製の樹脂管を用いたが、前記各管を形成する素材としては、特に限定されるものではなく、硬質塩化ビニルの他、ポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂からなる樹脂管や、ステンレス等の金属管、或いは、金属強化樹脂管等を用いることができる。特に、本発明においては、配管系路の簡略化、及び配管スペースの減少の観点から、前記二次側第一給水管5、及び前記二次側第二給水管6をペアチューブにて形成することが好ましい。
【0028】
以下、前記構成を有する本発明装置1を用いた本発明の水道水給水方法を説明する。
【0029】
‐貯水工程‐
本発明の水道水給水方法を実行するに先立ち、前記貯水タンク2内には水道水が貯水される。前記貯水タンク2内に水道水を貯水するにあたっては、まず、前記切替弁7を操作することによって、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5との接続関係を前記第二の状態となるようにし、前記貯水タンク2内に水道水を導入する(図3(a)参照)。貯水タンク2内に存在していた空気は、水道水の導入に伴って、前記二次側第二給水管6を通じて前記切替弁7まで送り出され、前記切替弁7における前記第三口部713を介して大気中に排出される。この際、前記給水栓10を開放すれば、前記給水栓10からも空気を排出することができ、その結果、貯水タンク2内に存在していた空気の排出がより迅速となり、貯水工程に要する時間が短くなる。その後、前記第三口部713から水道水が漏出してきた時点で前記貯水タンク2が満水になったものとみなし、前記切替弁7を操作することによって、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5との接続関係を前記第一の状態となるようにする。なお、本実施形態においては、前記二次側第二給水管6が接続される前記第二流出口23を、前記貯水タンク2の頂部側に近接して設けているから、基本的に前記貯水タンク2内に存する空気を全て排出することが可能となっている。
【0030】
前記貯水タンク2内に水道水を貯水する貯水工程を実行した後、本発明の水道水給水方法においては、後述する常時取水工程、および非常時取水工程のいずれかを選択することによって、水道水を取水する。
【0031】
‐常時取水工程‐
常時取水工程は、通常、水道水の水圧(供給圧)が所定値以上を維持している常時において実行される。この常時取水工程によって、水道水を前記給水栓10から取水するにあたっては、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5との接続関係を前記第一の状態としたまま、前記給水栓10を開く。この際、一定の水圧にて前記水道管100を通じて供給される水道水は、前記一次側給水管3を通じて前記貯水タンク2に導入され、前記二次側第一給水管5及び前記二次側第二給水管6を通じて、前記給水栓10まで至り、前記給水栓10から取水される(図3(b)参照)。
【0032】
即ち、常時取水工程時、前記貯水タンク2内に導入された水道水は、前記二次側第一給水管5を通じて送り出されるルート、および、前記二次側第二給水管6を通じて送り出されるルートのいずれかを経由し、前記給水栓10の上流側にて合流される。
【0033】
従って、常時取水工程時、前記二次側第一給水管5、及び前記二次側第二給水管6のいずれの管路においても水道水が通水されることになる。これにより、前記二次側第一給水管5、及び前記二次側第二給水管6のいずれの管路においても、長期間にわたって水道水が滞留することがなくなり、管路内におけるカビや雑菌の繁殖を防止することができる。
【0034】
又、前記貯水タンク2内の水道水は、取水の度に順次新たな水道水と交換されていくため、前記貯水タンク2内の水道水は常時、その鮮度を維持する。
【0035】
‐非常時取水工程‐
非常時取水工程は、通常、断水時などの水道水の水圧が低下し、安定して水道水の供給を得ることができなくなった非常時において実行される。非常時取水工程によって、水道水を前記給水栓10から取水するにあたっては、まず、前記切替弁7を操作し、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5との接続関係を前記第二の状態とする。
【0036】
更に、前記切替弁7における第三口部713にエアコンプレッサーや手動ポンプなどの空気導入手段(図示せず)を接続し、前記二次側第二給水管6を通じて空気を前記貯水タンク2内に導入する(図3(c)参照)。
【0037】
この作業によって、前記貯水タンク2内の内圧が上がり、貯水タンク2内に貯水されていた水道水には、前記二次側第一給水管5を通じて前記給水栓10に向かう水圧が付与される。なお、本発明装置1においては、前記一次側給水管3の管路に前記逆止弁4を取り付けているから、前記貯水タンク2内に空気を導入して、前記貯水タンク2内の内圧を上げても、前記貯水タンク2内の水道水が、前記水道管100側に向かって逆流することが好適に防止されている。
【0038】
そして、前記貯水タンク2内の内圧が上がった状態にて、前記給水栓10を開けば、前記貯水タンク2の内圧に押し出されて、前記二次側第一給水管5を通じて送り出された水道水を取水することができる。なお、本実施形態においては、前記二次側第一給水管5が接続される前記第一流出口22を、前記貯水タンク2の底部側に近接して設けているから、前記貯水タンク2内に貯水された水道水をほぼ余すことなく取水することができる。
【0039】
その後、水道水の供給が安定したなら、前記貯水工程を再度行うことによって、前記貯水タンク2内に水道水を貯水する。
【0040】
前記構成を有する本発明装置1は、常時取水工程時に、前記切替弁によって、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5との接続関係が前記第一の状態となされて、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5のいずれの管にも水道水が通水されるから、前記二次側第二給水管6内にカビや雑菌が殆ど繁殖し得ない。これより、常時取水工程、及び非常時取水工程のいずれにおいても、衛生的な水道水を取水することができる。
【0041】
又、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5の接続箇所が前記給水栓10の近辺となされ、且つ、前記二次側第二給水管6に対する前記切替弁7の取り付け位置が、前記接続箇所の近辺となされていることから、非常時取水工程において、前記切替弁7から空気を導入する作業と、前記給水栓10から取水する作業とを、同一人が同一場所において行うことも可能となる。なお、本発明装置1においては、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5の接続箇所を前記給水栓10から1m以内(好ましくは、50cm以内)の位置とし、更に、前記二次側第二給水管6に対する前記切替弁7の取り付け位置を、前記接続箇所から50cm以内(好ましくは30cm以内)の位置とすることが好ましい。
【0042】
特に、前記切替弁7の取り付け位置は、図5に示すように、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5の接続箇所とすることが好ましい。前記切替弁7の取り付け位置を、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5の接続箇所とすれば(言い換えれば、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5を前記切替弁7を介して接続すれば)、前記二次側第一給水管5に枝管を設ける必要がなくなり、配管構造が簡略化される。なお、図5(a)は、前記切替弁7を前記第一の状態とした場合を示した図であり、図5(b)は、前記切替弁7を前記第二の状態とした場合を示した図である。
【0043】
又、本実施形態においては、前記二次側第二給水管6が接続される前記第二流出口23を、前記貯水タンク2の他端面(下流側の端面)、且つ、前記貯水タンク2の頂部側に近接した位置に設けている。即ち、前記第二流出口23を、前記貯水タンク2の頂部近辺に設けている。
【0044】
前述の如く、本発明装置1において、前記第二流出口23を前記貯水タンク2の頂部近辺に設ければ、貯水工程終了時点における前記貯水タンク2内に残存される空気が非常に少なくなり、もって、前記貯水タンク2の有効容積を向上させることができる。従って、本発明装置1においては、前記第二流出口23を、前記貯水タンク2の頂部、又は、頂部近辺(具体的には、底部から頂部に向かって10cm以内(好ましくは5cm以内)の位置)に設けることが好ましい。なお、前記第二流出口23を前記貯水タンク2の頂部に設けた状態とは、図4に示すような状態(前記貯水タンク2の頂部壁面を貫通させて前記第二流出口23を設けた状態)を意味する。
【0045】
又、本実施形態においては、前記二次側第一給水管5が接続される前記第一流出口22を、前記貯水タンク2の水道管100側寄りの一端面(上流側の端面)、且つ。前記貯水タンク2の底部側に近接した位置に設けている。即ち、前記第一流出口22を、前記貯水タンク2の底部近辺に設けている。
【0046】
前述の如く、本発明装置1において、前記第一流出口22を前記貯水タンク2の底部近辺に設ければ、非常時における取水工程時に、前記貯水タンク2内に貯水された水道水をほぼ余すことなく取水することができる。従って、本発明装置1においては、前記第一流出口22を、前記貯水タンク2の底部、又は底部近辺(具体的には、頂部から底部に向かって10cm以内(好ましくは5cm以内)の位置)に設けることが好ましい。なお、前記第一流出口22を前記貯水タンク2の底部に設けた状態とは、図4に示すような状態(前記貯水タンク2の底部壁面を貫通させて前記第一流出口22を設けた状態)を意味する。
【0047】
なお、本実施形態においては、前記貯水工程において、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5との接続関係を前記第二の状態となるようにし、もって、前記貯水タンク2内に積極的に水道水を貯水させているが、前記貯水タンク2に水道水を貯水する方法としては、この方法に限られない。例えば、前記切替弁7にて、前記二次側第二給水管6と前記二次側第一給水管5との接続関係を前記第一の状態となるようにし、前記給水栓10から取水しながら、徐々に前記貯水タンク2内に水道水が貯水されるようにしても良い。この際、前記貯水タンク2内に存在していた空気は、前記二次側第二給水管6を通じて、前記給水栓10から水道水と共に排出される。
【0048】
又、本実施形態においては、前記非常時取水工程において、前記貯水タンク2内の内圧を上げた後、前記給水栓10を開くことによって水道水を取水しているが、前記貯水タンク2内に空気を導入する作業と平行して、前記給水栓10から水道水を取水しても良い。
【0049】
<実施形態2>
図6に、本発明装置1の他の実施形態を示す。本実施形態に係る本発明装置1は、水道管100を通じて供給される水道水を、複数の貯水タンク2にて貯水し、各貯水タンク2それぞれに貯水された水道水を個別の給水栓10にて取水するものである。
【0050】
即ち、本実施形態に係る本発明装置1が、前記実施形態1に係る本発明装置1と異なる点は、前記貯水タンク2が複数個存在し、前記一次側給水管3における前記逆止弁4が備えられた位置より下流側において、前記一次側給水管3を複数に分枝させるヘッダー8が備えられてなり、しかも、前記ヘッダー8によって分枝された複数の一次側給水管3の各々に対し、複数個の前記貯水タンク2がそれぞれ個別に接続されてなるところにある。
【0051】
このような構造にて、水道管100を通じて供給される水道水を、複数の貯水タンク2にて貯水し、各貯水タンク2それぞれに貯水された水道水を個別の給水栓10にて取水し得る仕組みとすれば、例えば、地震などによって断水状態となった際に、一の給水栓10が使用不可能となったとしても、他の給水栓10を使用して取水することが可能となる利点が生じる。
【0052】
又、前記ヘッダー8にて、前記一次側給水管3を分枝させれば、前記ヘッダー8を点検口付近に配置させることが可能となり、漏水補修等のメンテナンス性が向上する。
【0053】
更に、前記ヘッダー8を、前記一次側給水管3における前記逆止弁4が備えられた位置より下流側に設けることによって、前記逆止弁4が前記ヘッダー8一個あたり一個しか必要なくなり、部品点数を減少させ、もって、製品コストを下げることが可能となる。
【0054】
その余は、前記実施形態1と同様であることから、繰り返しを避けるべくここでは説明を省略する。
【0055】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明構造は、断水時における飲料水を確保する手段として、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 水道水貯水装置(本発明装置)
2 貯水タンク
21 流入口
22 第一流出口
23 第二流出口
3 一次側給水管
4 逆止弁
5 二次側第一給水管
6 二次側第二給水管
7 切替弁
71 弁本体
711 第一口部
712 第二口部
713 第三口部
72 ボール
8 ヘッダー
10 給水栓
100 水道管
図1
図2
図3
図4
図5
図6