特許第5872326号(P5872326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872326
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒の遮光構造
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20160216BHJP
   G02B 7/04 20060101ALI20160216BHJP
   G03B 17/04 20060101ALI20160216BHJP
   G03B 5/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   G02B7/02 D
   G02B7/02 E
   G02B7/04 D
   G02B7/02 Z
   G03B17/04
   G03B5/00 E
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-41926(P2012-41926)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-178366(P2013-178366A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】大山 達哉
【審査官】 登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−022305(JP,A)
【文献】 特開2006−003458(JP,A)
【文献】 実開昭63−180823(JP,U)
【文献】 特開平07−072363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 7/04
G03B 5/00
G03B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状部材と、
外周面にFPC挿入溝を有し、上記環状部材の内側で相対回動しながら進退する合成樹脂の成形品からなる進退筒と、
上記FPC挿入溝に挿入されたFPCと、
を有するレンズ鏡筒において、
上記進退筒には、上記FPC挿入溝の前端部に位置させて、光軸方向から見たとき該FPC挿入溝の前方に位置する遮光リブが一体に形成されていることを特徴とするレンズ鏡筒の遮光構造。
【請求項2】
請求項1記載のレンズ鏡筒の遮光構造において、上記遮光リブは周方向の一端部が上記進退筒に一体に結合された片持ち梁形式の片持ち遮光リブであり、その後面とFPC挿入溝の前方端面との間に、FPC導入スリットを形成しているレンズ鏡筒の遮光構造。
【請求項3】
請求項2記載のレンズ鏡筒の遮光構造において、上記進退筒の前端部には、上記片持ち遮光リブの自由端側に位置させて、光軸方向から見たとき上記FPC挿入溝の前方に位置する遮光サブ突起が形成されているレンズ鏡筒の遮光構造。
【請求項4】
請求項1記載のレンズ鏡筒の遮光構造において、上記遮光リブは、両端部が上記進退筒と一体に形成された両持ち遮光リブであり、該両持ち遮光リブの後面と上記FPC挿入溝の前端部との間には、上記進退筒を径方向に貫通したFPC導入穴が形成されているレンズ鏡筒の遮光構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載のレンズ鏡筒の遮光構造において、上記遮光リブの進退筒の径方向の最大径は、上記進退筒の最大径と同一径以下であり、上記FPC挿入溝の底壁の径より大径であるレンズ鏡筒の遮光構造。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載のレンズ鏡筒の遮光構造において、上記環状部材は内周面にカム溝を有するカム環であり、このカム環の回転により、上記カム溝の軌跡に従って上記進退筒が光軸方向に移動されるレンズ鏡筒の遮光構造。
【請求項7】
請求項6記載のレンズ鏡筒の遮光構造において、上記遮光リブは、上記カム環のカム溝と周方向位置が一致したときに、迷光がこのカム溝に進入するのを防止するレンズ鏡筒の遮光構造。
【請求項8】
請求項3記載のレンズ鏡筒の遮光構造において、上記環状部材は内周面にカム溝を有するカム環であり、このカム環の回転により、上記カム溝の軌跡に従って上記進退筒が光軸方向に移動され、上記遮光サブ突起は、上記カム環のカム溝と周方向位置が一致したときに、迷光がこのカム溝に進入するのを防止するレンズ鏡筒の遮光構造。
【請求項9】
請求項7または8記載のレンズ鏡筒の遮光構造において、上記遮光リブまたは遮光サブ突起は、上記レンズ鏡筒がワイド端撮影状態のときに、上記カム環のカム溝と周方向位置が一致するレンズ鏡筒の遮光構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その外周面にFPC挿入溝を有し、環状部材の内側で相対回動しながら進退する進退筒を備えたレンズ鏡筒の遮光構造に関する。
【0002】
レンズ鏡筒では、環状部材の内側に、該環状部材と相対回動しながら光軸方向に進退する進退筒を位置させ、この進退筒の外周面に、光軸と平行な方向のFPC挿入(ガイド)溝を形成することが行われている。FPC挿入溝には、例えば進退筒に支持したシャッタ、絞り等の電気部品と進退筒とは別部材に設けられた制御基板を接続するFPCの一部が挿入される。
【0003】
このFPC挿入溝は、その機能上、進退筒の前後端部に達するのが普通である。つまり、進退筒に搭載される電気部品と制御基板とを接続するFPCは、その両端部に接続部を有し、中間を進退筒の外周面に這わせているため、FPC挿入溝は進退筒の全長に渡って光軸方向と平行に形成されている。しかし、進退筒の外周面に光軸と平行なFPC挿入溝を形成すると、その挿入溝が迷光の光路となる可能性がある。特に、環状部材がその内周面にカム溝を有するカム環の場合、カム環と進退筒の特定の回転方向及び特定の光軸方向の位置関係において、カム溝からFPC挿入溝へ、あるいはFPC挿入溝からカム溝へ至る迷光光路が完成しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-4227号公報
【特許文献2】特開平7-218799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FPC挿入溝からの迷光進入の問題は、従来から認識されており、例えば、FPC挿入溝の前端部に、別部材としての遮光部材(シート)を貼付することが提案されている(特許文献1)。しかしながら、別部材としての遮光部材は、部品コスト、部品管理コスト、組立コストのいずれをとっても不利である。
【0006】
本発明は従って、その外周面にFPC挿入溝を有し、環状部材の内側で進退する進退筒を備えたレンズ鏡筒において、別部材を要することなく、そのFPC挿入溝からの迷光の進入を防止できるレンズ鏡筒の遮光構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレンズ鏡筒の遮光構造は、環状部材と、外周面にFPC挿入溝を有し、上記環状部材の内側で相対回動しながら進退する合成樹脂の成形品からなる進退筒と、上記FPC挿入溝に挿入されたFPCと、を有するレンズ鏡筒において、上記進退筒には、上記FPC挿入溝の前端部に位置させて、光軸方向から見たとき該FPC挿入溝の前方に位置する遮光リブが一体に形成されていることを特徴としている。
【0008】
上記遮光リブは、一実施形態では、周方向の一端部が上記進退筒に一体に結合された片持ち梁形式の片持ち遮光リブから構成することができ、この片持ち遮光リブの後面とFPC挿入溝の前方端面の前方端面との間に、FPC導入スリットを形成する。上記進退筒の前端部には、上記片持ち遮光リブの自由端側に位置させて、光軸方向から見たとき上記FPC挿入溝の前方に位置する遮光サブ突起を形成することが好ましい。
【0009】
上記遮光リブは、別の実施形態では、両端部が上記進退筒と一体に形成された両持ち遮光リブから構成することができ、この両持ち遮光リブの後面と上記FPC挿入溝の前端部との間には、上記進退筒を径方向に貫通したFPC導入穴を形成する。
【0010】
上記遮光リブの進退筒の径方向の最大径は、上記進退筒の最大径と同一径以下であり、上記FPC挿入溝の底壁の径より大径である。
【0011】
上記環状部材は内周面にカム溝を有するカム環であり、このカム環の回転により、上記カム溝の軌跡に従って上記進退筒が光軸方向に移動される。
【0012】
上記遮光リブまたは遮光サブ突起は、上記環状部材のカム溝と周方向位置が一致したときに、迷光がこのカム溝に進入するのを防止する。
【0013】
上記遮光リブまたは遮光サブ突起は、上記レンズ鏡筒がワイド端撮影状態のときに、上記環状部材のカム溝と周方向位置が一致する
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、その外周面にFPC挿入溝を有し、環状部材の内側で相対回動しながら進退する進退筒を備えたレンズ鏡筒において、進退筒に一体に、FPC挿入溝の前端部に位置させて、光軸方向から見たとき該FPC挿入溝の前方に位置する遮光リブを一体に形成したから別部材としての遮光部材を要することなく、FPC挿入溝からの迷光の進入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を適用したズームレンズ鏡筒の収納(沈胴)状態の縦断面図である。
図2】同ズームレンズ鏡筒のワイド端撮影状態を上半に、テレ端撮影状態を下半に描いた縦断面図である。
図3】同ズームレンズ鏡筒の分解斜視図である。
図4】(A)は同ズームレンズ鏡筒の別の部分の分解斜視図、(B)はFPC基板の要部拡大斜視図である。
図5】(A)、(B)はそれぞれ、同ズームレンズ鏡筒の2群支持筒(進退筒)の単体形状を示す、別の角度から見た斜視図である。
図6】同ズームレンズ鏡筒の2群支持筒(進退筒)にシャッタを組み合わせ、同シャッタから出たFPC基板を2群支持筒(進退筒)のFPC挿入溝に挿入した状態を示す斜視図である。
図7】2群支持筒(進退筒)を光軸方向前方から見た正面図である。
図8】嵌合状態の2群支持筒(進退筒)とカム環(環状部材)を光軸方向前方から見た正面図である。
図9図8の切断線IV-IVに沿って切断した断面図である。
図10】嵌合状態の2群支持筒(進退筒)とカム環(環状部材)において、2群支持筒の片持ち遮光リブ、FPCとカム環の内周面のカム溝との位置関係を示した側面図である。
図11】同ズームレンズ鏡筒の2群支持筒(進退筒)単体の第2実施形態を示す斜視図である。
図12】同第2実施形態の2群支持筒(進退筒)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に図1ないし図4により、本発明を適用したズームレンズ鏡筒10の主たる構成要素を説明する。図1は収納状態の縦断面図、図2は撮影状態におけるワイド端(上半)とテレ端(下半)を示す縦断面図、図3図4は分解斜視図である。図2に示すように、撮影時におけるズームレンズ鏡筒10の撮影光学系は、物体側から順に第1レンズ群L1、シャッタS(絞)、第2レンズ群L2、第3レンズ群L3、赤外線カットフィルタ等のフィルタ11及びCCD、CMOS等の固体撮像素子12からなっている。この撮影光学系の光軸をZ1で示す。ズーミングは、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2を撮影光軸Z1方向に所定の軌跡で進退させることによって行い、フォーカシングは同方向への第3レンズ群L3の移動で行う。なお、以下の説明中で「光軸方向」は、撮影光軸Z1と平行な方向を含み、「直進案内」は光軸方向の直進案内を意味する。また「前」、「後」は、被写体側、撮像面側をそれぞれ意味する。
【0017】
ズームレンズ鏡筒10は図示しないカメラボディ内に搭載されており、該カメラボディに対して固定される固定環13と、この固定環13の後部に固定される撮像素子ホルダ(固定部材)14を備えている。上述のフィルタ11と固体撮像素子12は、この撮像素子ホルダ14に固定されている。
【0018】
固定環13内には、第3レンズ群L3を保持するAFレンズ枠(3群枠)17が光軸方向に直進移動可能に支持されている。AFレンズ枠17は、AFモータ(図示せず)の駆動力によって、被写体距離情報に応じた光軸方向位置に移動される。AFモータによる焦点調節機構は周知である。
【0019】
固定環13には、撮影光軸Z1と軸線を平行にしたズームギヤ(ピニオン)22が回転可能に支持されている。ズームギヤ22は、固定環13の内周面側に露出するように位置されており、ズームモータ及びギヤ列によって正逆に回転される。
【0020】
固定環13の内周面には、カム溝13aと、光軸と平行な直進案内溝13bが形成されている。この固定環13のカム溝13aにはヘリコイド環(第1進退筒)25のフォロア突起25aが嵌まっており、直進案内溝13bには、直進カム環26の径方向突起26aが係合している。直進カム環26はヘリコイド環25の内周に位置していて、ヘリコイド環25と相対回転は自在に光軸方向には一緒に移動するように結合されている。すなわち、直進カム環26の外周面に形成した案内突起26bは、ヘリコイド環25の内周面に形成した周方向案内溝25bに係合している。
【0021】
ヘリコイド環25の後端部外周には、上述のズームギヤ22と噛み合うギヤ25cが形成されていて、このヘリコイド環25の内周面には、光軸と平行な回転伝達溝25dが形成されている。直進カム環26の内周に嵌めたカム環(回転部材)27には径方向に突出するフォロア27aが設けられており、このフォロア27aは、直進カム環26のカム溝26cを貫通した後、ヘリコイド環25の回転伝達溝25dに嵌まっている。つまり、ズームギヤ22を介してヘリコイド環25が回転すると、フォロア27aを介してカム環27に回転が伝達される。カム環27の光軸方向の位置は、直進カム環26の光軸方向の位置及びカム溝26cの形状によって定まる。
【0022】
カム環27にはその外周面に、第1レンズ群L1とバリア29を支持した第3進退筒30の移動軌跡を定める外面カム溝27cが形成され、内周面に、第2レンズ群L2を支持した2群支持筒(進退筒)33の移動軌跡を定める内面カム溝27dが形成されている。
【0023】
他方、カム環27の外周には、該カム環27と相対回転は自在で光軸方向には一緒に移動する第2進退筒32が同軸に位置している。この第2進退筒32は、その外面に突出させた径方向突起32aを直進カム環26の内周面に形成した直進案内溝26dに嵌めて直進案内されており、第3進退筒30は、その外面に突出させた径方向突起30aを第2進退筒32内面の直進案内溝32bに嵌めて直進案内されている。
【0024】
また、カム環27の内側に同軸に位置している2群支持筒33の外面には、カム環27の内面カム溝27dに嵌まるフォロア33aが突出形成されている。カム環27にはまた、相対回転は自在で光軸方向には一緒に移動するように直進案内環34が結合されている。すなわち、図2に示すように、カム環27の後端部内周に環状溝27mが設けられ、直進案内環34には、この環状溝27mに相対回転自在に嵌まる突起34nが設けられている。同様に、直進案内環34の後端部外周に環状溝34mが設けられ、カム環27には、この環状溝34mに相対回転自在に嵌まる突起27nが設けられている。また、この直進案内環34は、その径方向突起34aを直進カム環26の直進案内溝26dに嵌めて直進案内されており、この直進案内環34の光軸平行腕34bが2群支持筒33の光軸平行案内溝33bに嵌まって、2群支持筒33を光軸方向に直進案内している。従って、カム環27が回転すると、第3進退筒30(第1レンズ群L1)、カム環27(第2進退筒32)及び2群支持筒33(第2レンズ群L2)が光軸方向に進退する。
【0025】
2群支持筒33には、図4に分解状態で示すように、その前方に前述のシャッタSが固定されており、後方(後面)には、カメラに加わる手ブレを相殺する方向に光軸直交面内で駆動される防振ベース40が支持されている。第2レンズ群L2を支持した2群枠42は、この防振ベース40上の光軸と平行な軸41を中心に揺動可能に支持されている。符号43は2群支持筒33との間に防振ベース40を支持する防振カバーである。2群枠42は、図2の撮影状態ではその第2レンズ群L2を撮影光軸Z1上に保持し、図1の収納状態では撮影光軸Z1から脱した収納位置に移動される。これらの防振機構及びレンズ群挿脱機構の詳細は公知であり、本発明の要旨と関係がないので、具体的な構成の説明を省略する。
【0026】
以上のように、本実施形態のズームレンズ鏡筒は、2群支持筒(進退筒)33がカム環(環状部材)27の内側に位置し、該カム環27と相対回転しながら光軸方向の収納位置と撮影位置との間で直進移動する。カム環27の内径dと2群支持筒33の外径Dは、両者の間に、相対回動に支障がない最小のクリアランスが生じるように設定されている。
【0027】
合成樹脂材料の成形品からなる2群支持筒33には、その前方筒状部内にシャッタSが挿入支持されており、該シャッタSにはFPC50の一端部が接続(固定)されている。FPC50は、シャッタSの環状の前面の一部に固定される円弧状部51と、この円弧状部51から後方に延びる後方延長部(ガイド溝挿入部)52と、この後方延長部52をさらに前後に折り返した折返部53と、制御基板との接続部54とを有している。後方延長部52は、平面的に見て、幅広部52aと、この幅広部52aの前端の幅狭部52bと、幅広部52aの幅狭部52b側の端部から側方(内方)に延びる側方折返部(側方突出部)52cとを有している。本実施形態は、以上のFPC50の後方延長部52をガイド(支持)する構造を提案するものである。FPC50の折返部53以下の構成は、2群支持筒33の光軸方向移動量や周辺部材に応じて、該FPC50を柔軟に変形させるための構造であればよく、その形状構造は問わない。
【0028】
一方、2群支持筒33には、一つの光軸平行案内溝33bに隣接させて、同光軸平行案内溝33bと平行なFPC挿入溝33dが形成されている。このFPC挿入溝33dは、2群支持筒33の外周面に同一深さに形成され、光軸方向の後方端部が開放(貫通)されており、平面的に見たとき、FPC50の幅広部52aに対応する幅a1の幅広部33d1と、幅狭部52bに対応する幅a2の幅狭部33d2とを有している。幅狭部33d2は、遮光サブ突起33fによって形成されている。この遮光サブ突起33fの後面と幅広部33d1との間には、FPC50の側方折返部52cが嵌る、幅広部33d1から周方向外側に突出するFPC収容凹部33eが形成されている。FPC収容凹部33eは、幅広部33d1より深く形成されている。
【0029】
2群支持筒33にはさらに、FPC挿入溝33d(幅狭部33d2、遮光サブ突起33f)の前方に位置させて、光軸方向から見たとき該FPC挿入溝33dの前方に位置する片持ち遮光リブ33hが一体に形成されている。この片持ち遮光リブ33hは、その後面と幅狭部33d2の前方端面及び遮光サブ突起33fの前方端面との間に、FPC導入スリット33gを形成しながら、遮光サブ突起33fとは反対側の周方向の端部が2群支持筒33と一体に結合される片持ち梁状に成形されている。また、片持ち遮光リブ33hと遮光サブ突起33fの周方向の位置関係は、片持ち遮光リブ33hの周方向の自由端部(先端部33h1)側に遮光サブ突起33fが位置する(光軸方向から見て重なる)関係である。
【0030】
片持ち遮光リブ33hの径方向外周部は、光軸方向から見たとき、全体として、2群支持筒33の外径D内に収まり、かつ、FPC挿入溝33dの底部より径方向外方に位置するように形状が設定されている。片持ち遮光リブ33hの径方向内周部は、光軸方向から見たとき、FPC挿入溝33dの底部より径方向内方に位置するように形状が設定されている。片持ち遮光リブ33hの先端部33h1は、光軸方向から見たとき円弧形状ではないが(図7図8)、これは成形型(抜き型)の関係で設定されたものであり、理想的には2群支持筒33の外径Dと同一径(の円弧形状)であるのがよい。
【0031】
以上のFPC50は、次のようにして、2群支持筒33のFPC挿入溝33dに嵌められる。後方延長部52(幅狭部52b)をFPC導入スリット33gから挿入し、FPC挿入溝33dの幅狭部33d2に位置させる。また、後方延長部52の幅広部52aをFPC挿入溝33dの幅広部33d1に位置させ、側方折返部52cをFPC収容凹部33eに位置させる。このように、FPC50を2群支持筒33のFPC挿入溝33dに嵌めるだけで、FPC50の2群支持筒33に対する装着(引き回し)が完了する。このように、FPC導入スリット33gからFPC挿入溝33dに嵌めた(収納した)FPC50は、両面テープ(図示せず)等により2群支持筒33(FPC挿入溝33d)に接着固定される。片持ち遮光リブ33hは、先端部33h1と遮光サブ突起33fとの間にFPC導入スリット33gの切れ目(開口)を形成して、FPC50をこの切れ目からFPC導入スリット33gに挿入可能にしているので、組立の際にFPC50をこの切れ目からFPC挿入溝33d内に容易に挿入できる。FPC導入スリット33gに切れ目を設けているので、組み立て時にFPC50を一旦切れ目に挿入すると、FPC50がバタつかず、FPC50をFPC挿入溝33d内に挿入しやすくなる。また、FPC導入スリット33gの光軸方向幅を狭くすると、片持ち遮光リブ33hにFPC50が前後方向に移動するのを防止する移動防止作用を持たせることができる。
【0032】
この組立状態では、図7図8図9図10に明らかなように、片持ち遮光リブ33hは、FPC挿入溝33dの光軸方向前方に位置しているので、FPC挿入溝33dに迷光が進入するのを防止することができる。また、片持ち遮光リブ33hは、2群支持筒33の最大外径D内に収まっているので、カム環27に対する相対回転を妨げることがなく、カム環27と2群支持筒33の全相対回転角内で遮光の効果を得ることができる。
【0033】
また、本実施形態では、カム環27の内面に内面カム溝27dが形成されているため、2群支持筒33との周方向及び光軸方向の位置関係によっては、この内面カム溝27dを介して迷光が進入する可能性が増す。しかし、片持ち遮光リブ33hは、2群支持筒33の外側の環状部材(つまりカム環27)の内面に内面カム溝27d等の有底溝が存在する場合にも、迷光の進入を効果的に防止する(図9図10)。
【0034】
特に、この実施形態では、2群支持筒33がカム環27に対して最も後方に位置するワイド端撮影状態において(図2の上半分、図9図10)、片持ち遮光リブ33hが内面カム溝27dと周方向位置が一致して径方向に対向または光軸方向後方に位置(第1レンズ群L1を通った迷光と内面カム溝27dの間に位置)しているので、迷光の量が最も多いワイド端撮影状態において、迷光が内面カム溝27dに進入するのを効果的に防止できる。例えば、迷光が内面カム溝27dから第2レンズ群L2を通って固体撮像素子12に入射するのを防止し、あるいは迷光が内面カム溝27dからFPC挿入溝33dを通って固体撮像素子12に入射するのを防止するなど、迷光が内面カム溝27dを介して固体撮像素子12に入射するのを効果的に防止できる。すなわち、一般に迷光の量が最も多くなるのはレンズ間隔が最も広いときであり、この実施形態では第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の距離が最も長いワイド時(図2の上半分、図9図10)に迷光の量が最も多くなる。
【0035】
さらにこの実施形態では、ワイド端撮影状態において、遮光サブ突起33fが片持ち遮光リブ33hが遮光する内面カム溝27dとは別の内面カム溝27dと周方向位置が一致して径方向に対向または光軸方向後方に位置(第1レンズ群L1を通った迷光と別の内面カム溝27dの間に位置)するので(図9図10)、迷光が別の内面カム溝27dに進入するのを効果的に防止できる。
【0036】
以上の第1実施形態では、遮光リブを片持ち梁形式の片持ち遮光リブ33hとしたが、図11及び図12は、遮光リブを、両端部が2群支持筒33と一体に形成された両持ち遮光リブ33iとした実施形態である。図11及び図12では、図5乃至図10の第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。両持ち遮光リブ33iは、片持ち遮光リブ33hと同様に、FPC挿入溝33d及び遮光サブ突起33fの前方に位置しており、その後面とFPC挿入溝33d及び遮光サブ突起33fの前端部との間に、2群支持筒33を径方向に貫通するFPC導入穴(貫通穴)33jが形成されている。
【0037】
両持ち遮光リブ33iは、片持ち遮光リブ33hと同様に、光軸方向から見たとき、全体として、2群支持筒33の外径D内に収まり、かつ、FPC挿入溝33dの底部より径方向外方に位置するように形状が設定されている。両持ち遮光リブ33iの径方向内周部は、光軸方向から見たとき、FPC挿入溝33dの底部より径方向内方に位置するように形状が設定されている。FPC導入穴33jの周方向長及び光軸方向(前後)長は、FPC50の柔軟性を考慮し、FPC50の接続部54、折返部53、及び後方延長部52(幅広部52a、側方折返部52c)が順に挿通されて、幅狭部52bが位置可能な形状、大きさに形成されている。FPC50は、FPC導入穴33jに挿通された後、後方延長部52(幅広部52a、側方折返部52c)が、FPC挿入溝33dの底部に、両面テープ等により接着固定される。
【0038】
以上の第1、第2実施形態では、FPC50の後方延長部52が幅広部52aと幅狭部52bを有しており、このため、2群支持筒33のFPC挿入溝33dには、幅広部33d1と幅狭部33d2(遮光サブ突起33f)を設けたが、後方延長部52が一定幅であって遮光サブ突起33fを設けない場合でも、片持ち遮光リブ33h、両持ち遮光リブ33iによって、確実に迷光進入防止効果を得ることができる。遮光サブ突起33fを設けない場合、第1実施形態の片持ち遮光リブ33hは、光軸方向前方から見て、片持ち遮光リブ33hの輪郭内にFPC挿入溝33dが納まるように形成することが好ましい。
【0039】
さらに、以上の第1、第2実施形態では、FPC50の後方延長部52が側方折返部52cを有し、2群支持筒33が、側方折返部52cを収容するために、FPC収容凹部33eを有しているが、側方折返部52cは必須でなく、従ってFPC収容凹部33eも必須でない。
【0040】
以上の第1、第2実施形態では、2群支持筒33が光軸方向に直進移動する進退筒であり、カム環27がこの進退筒に対して回転する環状部材であるが、2群支持枠33とカム環27は、一方が回転運動しながら光軸方向に進退し、他方がその回転運動に伴って光軸方向に移動する部材であれば、本発明は成立する。
【符号の説明】
【0041】
Z1 撮影光軸
L2 第2レンズ群
10 ズームレンズ鏡筒
26 直進カム環
27 カム環(環状部材)
27d 内面カム溝(カム溝)
33 2群支持筒(進退筒)
33a フォロア
33b 光軸平行案内溝
33d FPC挿入溝
33d1 幅広部
33d2 幅狭部
33e FPC収容凹部
33f 遮光サブ突起
33g FPC導入スリット
33h 片持ち遮光リブ(遮光リブ)
33i 両持ち遮光リブ(遮光リブ)
33j FPC導入穴
50 FPC
51 円弧状部
52 後方延長部
52a 幅広部
52b 幅狭部
52c 側方折返部
53 折返部
54 接続部
S シャッタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12