(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872334
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】軟磁性ステンレス鋼細線およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20160216BHJP
C22C 38/50 20060101ALI20160216BHJP
C22C 38/54 20060101ALI20160216BHJP
C21D 1/26 20060101ALI20160216BHJP
C21D 9/52 20060101ALI20160216BHJP
H01F 1/14 20060101ALI20160216BHJP
B21C 1/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
C22C38/00 303S
C22C38/50
C22C38/54
C21D1/26 B
C21D1/26 K
C21D9/52 103B
H01F1/14 Z
B21C1/00 L
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-49865(P2012-49865)
(22)【出願日】2012年3月7日
(65)【公開番号】特開2013-185183(P2013-185183A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】503378420
【氏名又は名称】新日鐵住金ステンレス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507349237
【氏名又は名称】鈴木住電ステンレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100097995
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悦一
(74)【代理人】
【識別番号】100074790
【弁理士】
【氏名又は名称】椎名 彊
(72)【発明者】
【氏名】高野 光司
(72)【発明者】
【氏名】木崎 雅之
(72)【発明者】
【氏名】菅野 史人
【審査官】
田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−162088(JP,A)
【文献】
特開2006−016665(JP,A)
【文献】
特開2002−241904(JP,A)
【文献】
特公昭57−009624(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00−38/60
C21D 9/52、1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C:0.03%以下、
Si:1.0%以下、
Mn:1.0%以下、
P:0.04%以下、
S:0.02%以下、
Ni:1.0%以下、
Cr:10.5〜16.2%未満、
Al:1.5%以下、
O:0.01%以下、
N:0.03%以下を含有し、
更に、
Nb:0.05〜1.0%、
Ti:0.05〜1.0%、
V:0.05〜1.0%、
W:0.05〜1.0%、
Ta:0.05〜1.0%の内、1種類以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物から構成され、フェライト単相組織であり、線径が0.05〜0.5mm,平均結晶粒径が線径の0.1〜0.8倍であり、最大比透磁率が800以上であることを特徴とする軟磁性ステンレス鋼細線。
【請求項2】
更に質量%で、
Mo:2.5%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の軟磁性ステンレス鋼細線。
【請求項3】
更に質量%で、
B:0.0001〜0.01%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の軟磁性ステンレス鋼細線。
【請求項4】
更に質量%で、
Cu:1.0%以下、
Co:1.0%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の軟磁性ステンレス鋼細線。
【請求項5】
更に質量%で、
Ca:0.0005〜0.01%、
Mg:0.0005〜0.01%、
REM:0.0005〜0.05%の内、1種類以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の軟磁性ステンレス鋼細線。
【請求項6】
最終伸線加工後に900〜1200℃で5〜60秒の最終のストランド焼鈍を施して仕上げることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の軟磁性ステンレス鋼細線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状安定性と軟磁性に優れる安価なステンレス鋼細線製品に関し、熱処理条件により線径に対する結晶粒径を制御した高純フェライト系ステンレス鋼細線およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気フィルター等に使用される耐食性に優れる軟磁性(最大比透磁率≧800)の細線(線径:0.05mm〜0.5mm)は、低炭の炭素鋼を焼鈍・伸線を繰り返し、その後、表面処理を施して製造されてきたが、焼鈍温度が700〜800℃前後と低いために磁壁となる歪みを完全に除去するために長時間熱処理を要し、また、表面処理が必要であるうえ、ダレ等の形状安定性が悪く製品歩留まりが悪いことから多大なコストが必要となっていた。また、表面処理が剥離する場合があり、耐食性が不安定であった。
【0003】
一方、耐食性に優れるステンレス鋼では、Alを添加して磁気応答性を改善したフェライト系の電磁ステンレス鋼や極低C,N化した冷間鍛造性に優れる高純度フェライト系電磁ステンレス鋼が数多く提案されている(例えば、特許文献1,2)。但し、850℃,4hや900℃,2hの長時間熱処理が必要であり、線径が0.5mm以下の細線で製造する場合、伸線・熱処理を繰り返す必要があり、膨大なコストが発生するばかりか、ダレ等の形状安定性が悪く製品歩留まりが著しく劣化するという問題点があった。
【0004】
また、磁気フィルター用のΦ50〜200μmのフェライト系ステンレス鋼線も開示されている(特許文献3)。しかしながら、高透磁率特性や鋼線のダレ等の寸法安定性に関する記載は無い。
【0005】
更に、近年、3分程度の1050℃のストランド焼鈍(光輝焼鈍)で磁性を有する高純度フェライト系ステンレス鋼線およびその高生産性の製造方法が提案されている(特許文献4)。しかしながら、着磁性を有するものの細線(線径≦0.5mm)では伸線歪みの影響で優れた磁気特性が得られない。また、ストランド焼鈍(光輝焼鈍)を施しても表面窒化により表面にマルテンサイト組織が生成するなどで優れた磁気特性を満足することができないうえ、生産性にも問題があった。
【0006】
そのため、従来の鋼細線(線径:0.05〜0.5mm)では、耐食性と優れた形状安定性,軟磁性を安価に兼ね備えることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−27307号公報
【特許文献2】特開平02−15143号公報
【特許文献3】特開昭56−38116号公報
【特許文献4】特開2006−16665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解消し、軟磁性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼細線(線径≦0.5mm)および安価製造方法を提供し、従来の高耐食・軟磁性細線よりも形状安定性に優れる製品を飛躍的に安価に大量に提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、Nb,Ti等の安定化元素を添加し、極低C,N化した高純度フェライト系ステンレス鋼細線(線径:0.05〜0.5mm)において、高温・単時間のストランド焼鈍(光輝焼鈍)を施して線径に対する平均結晶粒径を制御することで、磁気特性に優れる(最大比透磁率≧800)ステンレス鋼細線を飛躍的に安価に得ることを見出した。本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した下記の通りである。
【0010】
(1)質量%で、C:0.03%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Ni:1.0%以下、Cr:
10.5〜16.2%未満、Al:1.5%以下、O:0.01%以下、N:0.03%以下を含有し、更に、Nb:0.05〜1.0%、Ti:0.05〜1.0%、V:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%、Ta:0.05〜1.0%の内、1種類以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物から構成され、フェライト単相組織であり、線径が0.05〜0.5mm,平均結晶粒径が線径の0.1〜0.8倍であり、最大比透磁率が800以上であることを特徴とする軟磁性ステンレス鋼細線。
(2)更に質量%で、Mo:2.5%以下を含有することを特徴とする(1)に記載の軟磁性ステンレス鋼細線。
(3)更に質量%で、B:0.0001〜0.01%を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の軟磁性ステンレス鋼細線。
(4)更に質量%で、Cu:1.0%以下、Co:1.0%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の軟磁性ステンレス鋼細線。
(5)更に質量%で、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜0.01%、REM:0.0005〜0.05%の内、1種類以上を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の軟磁性ステンレス鋼細線。
(6)最終伸線加工後に900〜1200℃で5〜60秒の最終のストランド焼鈍を施して仕上げることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一項に記載の軟磁性ステンレス鋼細線の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明による線径に対する結晶粒径を制御された高純度フェライト系ステンレス鋼細線(線径≦0.5mm)は、高生産性(高製品歩留まり)の伸線・熱処理プロセスで材料自体に優れた耐食性と最大比透磁率≧800の軟磁性を合わせもつため、耐食性,形状安定性と軟磁性に優れる細線製品を飛躍的に安価に大量に提供することができ、産業上有用な著しい効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
先ず、本発明の(1)に記載の限定理由について説明する。
【0013】
C,Nは、NbやTi等と結合して炭化物を形成するが、各々0.03%を超えて添加すると、粗大炭窒化物が生成して、軟磁性および靱性が劣化して生産性が劣化する。そのため、各々の上限を0.03%とする。好ましい範囲は、0.005〜0.02%である。
【0014】
Siは、脱酸のため添加するが、1.0%を超えて添加すると細線の靱性が劣化して生産性が劣化する。そのため、上限を1.0%に限定する。好ましい範囲は、0.1〜0.5%である。
【0015】
Mnは、脱酸のため添加する。しかしながら、1.0%を超えて添加すると磁気特性が劣化するばかりか、靱性が悪く生産性も劣化する。そのため、上限を1.0%に限定する。好ましい範囲は、0.1〜0.5%である。
【0016】
Pは、不可避不純物であり、軟磁性を劣化させるため、0.04%以下に限定する。好ましくは、0.025%以下である。
【0017】
Sは、不可避不純物であり、軟磁性を劣化させるため、0.02%以下に限定する。好ましくは、0.005%以下である。
【0018】
Niは、耐食性や靱性を向上させるため、必要に応じて添加するが、過度に添加すると軟磁性を劣化させるため、1.0%以下に限定する。好ましくは、Ni:0.05〜0.5%である。
【0019】
Crは、基本的に耐食性を確保するため添加するが、9.0%未満の場合、高温ストランド焼鈍時にオーステナイト相が生成し、冷却時にマルテンサイト変態を生じて軟磁性を劣化させる。一方、17.0%を超えて添加すると磁束密度が低下するため軟磁性が劣化する。そのため、9.0〜17.0%に限定する。好ましい範囲は10.5%〜16.5%である。
【0020】
Alは、脱酸のため添加する。しかしながら、1.5%を超えて添加すると生産性が劣化する。そのため、上限を1.5%に限定する。好ましい範囲は、0.002%以上、0.05%未満である。
【0021】
Oは、不可避不純物であり、軟磁性を確保するため、0.01%以下に限定する。好ましくは、0.008%以下である。
【0022】
Nb,Ti,V,W,Taは、炭窒化物を形成してC,Nを固定することで、マルテンサイト組織の生成を抑制し、軟磁性を向上させる。しかしながら、過度に添加すると粗大炭窒化物が生成して軟磁性を逆に劣化させる。そのため、Nb:0.05〜1.0%,Ti:0.05〜1.0%、V:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%,Ta:0.05〜1.0%の内、1種類以上を含有することに限定する。好ましくは、Nb:0.2〜0.6%,Ti:0.05〜0.2%、V:0.1〜0.5%、W:0.1〜0.5%,Ta:0.1〜0.5%の内、1種類以上を含有する。
【0023】
金属組織は、マルテンサイト組織やオーステナイト組織等、フェライト組織以外の金属組織が5体積%以上混じると軟磁性が急激に劣化する。そのため、軟磁性に優れるフェライト単相組織に限定する。
【0024】
線径および平均結晶粒径の制御は本発明の最大の特性であり、線径が0.5mmを超えるとダレや表面窒化によるマルテサイト生成等の問題も無くなり、従来公知の製造方法でも形状安定性と軟磁性に優れる鋼線を製造可能であり、本発明の優位性が無くなる。そのため、線径を0.5mm以下に限定する。一方、線径が0.05mm未満になると本発明を適用しても形状安定性に劣る。そのため、線径を0.05〜0.5mmに限定する。好ましい線径範囲は、0.1〜0.4mmである。
【0025】
平均結晶粒径は、線径の0.1倍未満であれば、磁壁となる結晶粒界の割合が多くなり、軟磁性が劣化する。一方、0.8倍超になると結晶粒の異方性のため軟磁性が逆に劣化する。そのため、平均結晶粒径を線径の0.1〜0.8倍に限定する。好ましい範囲は、線径の0.2〜0.5倍である。
【0026】
最大比透磁率(真空中の透磁率に対する比。最大比透磁率=1は真空中の透磁率を示す。)は、軟磁性の指標であり、800未満であれば公知の製造方法でも製造可能である。本発明の効果の優位性を示すため、最大比透磁率を800以上に限定する。好ましい範囲は、1000以上である。
【0027】
次に、本発明の(2)に記載の限定理由について説明する。
Moは、耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて2.5%以下を添加する。しかしながら、2.5%を超えて添加すると軟磁性が劣化する。そのため、2.5%以下に限定する。好ましい範囲は、0.05〜1.0%以下である。
【0028】
次に、本発明の(3)に記載の限定理由について説明する。
【0029】
Bは、細線の靱性を向上させて生産性を向上させるため、必要に応じて0.0001%以上添加する。しかしながら、0.01%を超えて添加すると粗大ボライドのため軟磁性が劣化するばかりか靱性が劣化して生産性が劣化するため、上限を0.01%とする。
【0030】
次に、本発明の(4)に記載の限定理由について説明する。
【0031】
Cu,Coは、細線の靱性を向上させて生産性を向上させるため、必要に応じて,各々1.0%以下を添加する。しかしながら、1.0%を超えて添加すると軟磁性が劣化する。そのため、上限を各々1.0%に限定する。好ましい範囲は、各々0.01〜0.5%である。
【0032】
次に、本発明の(5)に記載の限定理由について説明する。
【0033】
Ca,Mg,REMは、脱酸に有効な元素であり、必要に応じて添加するが、過度に添加すると、軟磁性が劣化するばかりか粗大脱酸生成物のため生産性が劣化する。そのため、Ca:0.0005〜0.01%,Mg:0.0005〜0.01%,REM:0.0005〜0.05%の内、1種類以上を含有することに限定する。
【0034】
次に、本発明の(6)に記載の限定理由について説明する。
【0035】
線径が0.05〜0.5mmへ最終伸線加工後に、磁壁となる加工歪みや結晶粒界を減らすため、熱処理を行うが、900℃未満では、軟磁性に劣り、1200℃超では断線や線細り等で形状安定性に劣り、製品歩留まりが著しく劣化する。そのため、熱処理温度を900〜1200℃に限定する。好ましい範囲は、1000〜1160℃である。
【0036】
また、細線において、形状安定性を確保し、且つ、結晶粒径を制御して優れた軟磁性を得るために熱処理時間も限定する必要がある。単時間のストランド焼鈍を施すが、熱処理時間(在炉時間)が5秒未満であると結晶粒径が小さく、軟磁性に劣る。一方、熱処理時間が60秒を超えると、結晶粒径が粗大化して異方性がでるため軟磁性に劣るばかりか、線細りで形状安定性に劣ったり、断線率が増大したりして製品歩留まりが劣化する。そのため、5〜60秒に限定する。好ましい範囲は、10〜40秒である。
【0037】
ストランド焼鈍の雰囲気は、形状安定性のため焼鈍後に酸洗が不要であることが望ましいため、一般のステンレス鋼で実施される水素ガス雰囲気,窒素ガス雰囲気,Arガス雰囲気およびこれらの混合ガス雰囲気が好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に本発明の実施例について説明する。表1に実施例の鋼の化学組成(質量%)を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
これらの化学組成の鋼は、ステンレス鋼の安価溶製プロセスであるAOD溶製を想定し、100kgの真空溶解炉にて溶解し、φ180mmの鋳片に鋳造し、その鋳片をφ5.5mmまで熱間の線材圧延を行い、1000℃で熱間圧延を終了した。その後、溶体化処理として1050℃で30分保持した後に水冷し、酸洗を行い線材とした。その後、φ1.0mmまで伸線加工と通常の焼鈍を繰り返して施した。
【0041】
その後、成分の影響を調査するため、30kgサンプリングして、引き続き0.1mmまで冷間で伸線加工を施し、その後、最終焼鈍として、1100℃,20秒在炉のストランド焼鈍(光輝焼鈍)を施し、コイル状に捲き取られたステンレス鋼細線の製品とした。
そして、鋼細線製品の軟磁性,金属組織,結晶粒径(線径に対する比率),耐食性と製品歩留まりに及ぼす成分の影響を評価した。その評価結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
鋼線製品の軟磁性は、直流磁化特性試験装置を用い、エプスタイン法を用いてヒステリシスカーブを描き、比最大透磁率(最大透磁率を求め、真空中の透磁率に対する比に直したもの)を測定した。本発明例の鋼線の比最大透磁率は、800以上であり、優れた軟磁性を示した。
【0044】
鋼線製品の金属組織は、鋼線の縦断面埋め込み面を王水エッチ後、光顕観察を行い、金属組織を評価した。本発明の鋼線の金属組織は、フェライト単相であった。
【0045】
鋼線製品の平均結晶粒径は、鋼線の縦断面埋め込み面を王水エッチ後、光顕観察を行い、切断法により鋼線長手方向の平均結晶粒径を求め、平均結晶粒径/線径の比を計算した。なお、切断法について、光顕写真で鋼線長手方向に直線を引いて直線と結晶粒界が交差する箇所をカウントし、(直線の長さ)/(交差数)で平均結晶粒径を計算した。本発明例の平均結晶粒径/線径の比は、0.1〜0.8の範囲に入っていた。
【0046】
鋼線製品の耐食性は、JIS Z 2371の塩水噴霧試験に従い、100時間噴霧試験を実施し、発銹するか否かで評価した。無発銹レベルであれば耐食性を良好,流れ錆等赤錆発銹の場合は耐食性を不良として評価した。本発明鋼の耐食性の評価は全て良好であった。
【0047】
鋼線製品の歩留まりは、30kgのサンプリング材に対して、鋼線製品時の良品の質量%により求めた。線径に対して10%以上の線細りの場合や、断線した場合や、ダレ・曲がりがある場合は不良品と判断して歩留まり落ちとした。本発明例の製品歩留まりは80%以上であり、良好な歩留まりを示した。
【0048】
次に、線径,平均結晶粒径の影響を調査するため、前記[0035]段落に示す焼鈍を施された鋼A,AG,ALの線径1.0mmの鋼線を30kgサンプリングし、0.03〜0.7mmまで冷間伸線加工を施し、種々の条件で最終焼鈍を施し、その後、必要に応じて酸洗を行い、コイル状に捲き取られたステンレス鋼細線の製品とした。そして、鋼細線製品の軟磁性,結晶粒径(線径に対する比率)と製品歩留まりに及ぼす成分の影響を評価した。その評価結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
本発明例は、優れた軟磁性(最大比透磁率)と製品歩留まりを示した。 一方、比較例は、線径,焼鈍温度,焼鈍時間が本発明から外れており、軟磁性(最大比透磁率)や製品歩留まりに劣っていた。なお、比較例No.84,100,116は、線径が本発明範囲よりも太い領域では、従来の提案されているプロセス(バッチ焼鈍・酸洗)でも優れた軟磁性と製品歩留まりが得られるため本発明の優位性が認められない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上の各実施例から明らかなように、本発明により軟磁性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼細線を安価に製造でき、優れた耐食性と軟磁性特性を合わせ持つ磁気フィルター等の細線製品を安価に提供することができ、産業上極めて有用である。