特許第5872336号(P5872336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872336
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/07 20060101AFI20160216BHJP
   F16K 3/24 20060101ALI20160216BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   F16K11/07 C
   F16K11/07 M
   F16K3/24 D
   F15B11/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-53071(P2012-53071)
(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公開番号】特開2013-185680(P2013-185680A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 説与
(72)【発明者】
【氏名】松浦 明夫
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−287147(JP,A)
【文献】 特開平03−125083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/07
F16K 3/24
F15B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体にスプールを摺動自在に組み込むとともに、上記弁本体には、少なくとも、ポンプに連通した環状のポンプ連通溝と、上記ポンプ連通溝の両側に設けるとともにタンクに連通した第1,2タンク連通溝とを形成し、上記スプールには、少なくとも、第1ランド部と、上記第ランド部に対して軸方向両側に設けた第2,3ランド部とを設けた切換弁であって、
上記第1ランド部には第のノッチが形成され、上記第3ランド部には第2のノッチが形成され、上記第1のノッチは、上記スプールが中立位置から一方の方向に移動する過程で上記ポンプ連通上記第1タンク連通との連通を制御し、上記第2のノッチは、上記スプールが中立位置から上記一方の方向に移動する過程で上記ポンプ連通溝上記第2タンク連通溝との連通を制御することを特徴とする切換弁。
【請求項2】
上記第1ランド部には、上記スプールが中立位置から他方の方向に移動したとき、上記ポンプ連通溝と上記第2タンク連通溝と連通を制御する大流量制御ノッチ形成され、上記大流量制御ノッチを介してブリードオフ制御を可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建設機械のブームシリンダなどを上昇させたり、下降させたりする制御に最適な切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の切換弁で、例えば建設機械のブームシリンダの上昇及び下降を制御するとき、当該ブームシリンダの下降時には、その自重の作用を利用することによってポンプの負荷をなるべく小さくすることが求められるが、この要請に応えるために従来は、スプールの特定のランド部にブリードオフ用のノッチを形成するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−250263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スプールのランド部にブリードオフ用のノッチを形成した場合には、ランド部の周方向の長さに限界があるために、大きなノッチを形成することができず、十分なブリードオフ流量を確保できなかった。そのために、例えば、ブームシリンダの下降時には、ポンプに必要以上の負荷がかかるという問題があった。
この発明の目的は、十分なブリードオフ流量を確保できる切換弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、弁本体にスプールを摺動自在に組み込むとともに、上記弁本体には、少なくとも、ポンプに連通した環状のポンプ連通溝と、上記ポンプ連通溝の両側に設けるとともにタンクに連通した第1,2タンク連通溝とを形成している。
また、上記スプールには、少なくとも、第1ランド部と、上記第1ランド部に対して軸方向両側に設けた第2,3ランド部とを設けている。
【0006】
そして、第1の発明は、上記第1ランド部には第のノッチが形成され、上記第3ランド部には第2のノッチが形成され、上記第1のノッチは、上記スプールが中立位置から一方の方向に移動する過程で上記ポンプ連通上記第1タンク連通との連通を制御し、上記第2のノッチは、上記スプールが中立位置から上記一方の方向に移動する過程で上記ポンプ連通溝上記第2タンク連通溝との連通を制御する点に特徴を有する。
【0007】
第2の発明は、上記第1ランド部に、上記スプールを中立位置から他方の方向に移動したとき、上記ポンプ連通溝と上記第2タンク連通溝と連通を制御する大流量制御ノッチ形成され、上記大流量制御ノッチを介してブリードオフ制御を可能にした点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明によれば、スプールが上記一方の方向に移動したとき、ポンプ連通溝を第1タンク連通溝あるいは第2タンク連通溝に連通させるノッチを、スプールに形成した第1,3ランド部のそれぞれに別々に形成するようにしたので、一つのランド部に複数のノッチを形成するのに比べて、ノッチ形成エリアにゆとりができる。したがって、必要とする制御特性に応じて設計の自由度が飛躍的に大きくなる。
【0009】
第2の発明によれば、例えばブームシリンダのように容量が大きなシリンダの収縮時には、大流量制御ノッチを介してポンプ吐出量の多くをブリードオフすることができるので、その分、ポンプの負荷を小さくできる。このようにポンプの負荷を小さくできれば、それを駆動するエンジン等の消費エネルギーを小さくでき、省エネルギーを達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スプールを中立状態に保った全体の断面図である。
図2】第2連通凹部を軸線に直交する方向に断面にして大流量制御ノッチを示した断面図である。
図3】シリンダを上昇させる方向にスプールを半分ほどストロークさせた状態の部分断面図である。
図4】シリンダを上昇させる方向にスプールをフルストロークさせた状態の部分断面図である。
図5】シリンダを下降させる方向にスプールを半分ほどストロークさせた状態の部分断面図である。
図6】シリンダを下降させる方向にスプールをフルストロークさせた状態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図示の実施形態における弁本体1には、建設機械のブームシリンダCのボトム側室2に連通する第1シリンダポート3と、上記ブームシリンダCのロッド側室4に連通する第2シリンダポート5とが形成され、スプールSを摺動自在に組み込むスプール孔6が形成されている。
【0012】
上記スプール孔6のほぼ中央には、図示していないポンプに連通する環状のポンプ連通溝7が形成され、このポンプ連通溝7の軸方向両側には、図示していないタンクに連通する環状の第1,2タンク連通溝10,11が形成されている。
なお、上記ポンプ連通溝7は、ロードチェック弁8を介して、弁本体1に形成したブリッジ通路9に連通する構成にしている。
【0013】
そして、上記第1,2タンク連通溝10,11の軸方向外側に、上記ブリッジ通路9に連通する第1,2環状溝13,14が形成され、さらに、これら第1,2環状溝13,14の軸方向外側に、第1,2シリンダポート3、5に連通する環状の第1,2ポート連通溝15,16が形成され、さらにこれらの第1,2ポート連通溝15,16の軸方向外側に環状の第3,4タンク連通溝17,18が形成されている。
【0014】
上記のようにしたスプール孔6に上記スプールSを摺動自在に組み込み、このスプールSの両端をパイロット室19,20に臨ませている。そして、一方のパイロット室19にはセンタリングスプリング21を介在させ、通常は、このセンタリングスプリング21のばね力で、スプールSが、図1に示す中立位置を保持するようにしている。
【0015】
そして、上記スプールSには、その中央部分に第1ランド部22が設けられている。この第1ランド部22は、スプールSが上記中立位置にあるとき、ポンプ連通溝7に対応する位置を保持する。
また、この第1ランド部22の軸方向両側には第2,3ランド部23,24が設けられている。この第2ランド部23と上記第1ランド部22との間を第1連通凹部25とし、第3ランド部24と上記第1ランド部22との間を第2連通凹部26としている。
【0016】
そして、上記第1ランド部22には、一対の大流量制御ノッチ27が形成されているが、これら一対の大流量制御ノッチ27は、第1ランド部22の外周部分をわずかに残すとともに、この第1ランド部22のその他の部分を軸線に平行な面で切り取って形成して、図2に示すように、それらの底面を互いに平行にしている。
このようにした大流量制御ノッチ27は、スプールSが図5,6に示すように他方の方向である右方向に移動したとき、この大流量制御ノッチ27及び第2連通凹部26を介して、ポンプ連通溝7と第2タンク連通溝11とが連通する構成にしている。
【0017】
また、上記第1ランド部22には、上記大流量制御ノッチ27とは反対側に開口する第1のノッチとしての小流量制御ノッチ28が形成されている。この小流量制御ノッチ28は、スプールSが図3に示す一方の方向である左方向に移動する過程でその開度が小さくなるとともに、この小流量制御ノッチ28及び第1連通凹部25を介して、ポンプ連通溝7と第1タンク連通溝10とを連通させるものである。
【0018】
なお、図3〜6に示した符号29は、大流量制御ノッチ27と同じタイミングでポンプ連通溝7と第2タンク連通溝11とを連通させる制御ノッチであり、符号30は、小流量制御ノッチ28と同じタイミングでポンプ連通溝7と第1タンク連通溝10とを連通させる制御ノッチで、その溝幅をほぼ一定にしている。
【0019】
一方、上記第3ランド部24であって、第2連通凹部26と隣接するエッジ部には、第2のノッチとしての小流量制御ノッチ31が形成されている。スプールSが中立位置にあるとき、第3ランド部24が、その中立位置から図面左方向に移動して、第2連通凹部26と第2タンク連通溝11との連通を遮断する過程で、上記小流量制御ノッチ31がその開度を小さくする構成にしている。
【0020】
さらに上記第2,3ランド部23,24の軸方向外側には、第4,5ランド部32,33が形成されるとともに、この第4,5ランド部32,33と上記第2,3ランド部23,24との間を、第3,4連通凹部34,35としている。
【0021】
そして、スプールSが図1に示す中立位置にあるときには、第4,5ランド部32,33で第1,2シリンダポート3,5とブリッジ通路9との連通が遮断されるが、スプールSが左右いずれかに移動すると、第1,2シリンダポート3,5とブリッジ通路9とが、第3,4連通凹部34,35を介して連通する。
【0022】
上記第4,5ランド部32,33のさらに軸方向外側には、第6,7ランド部36,37が形成されるとともに、この第6,7ランド部36,37と上記第4,5ランド部32,33との間を、第5,6連通凹部38,39としている。
【0023】
そして、スプールSが、図1に示す中立位置にあれば、ポンプ連通溝7に導かれたポンプ吐出油は、第1,2連通凹部25,26を経由して第1,2タンク連通溝10,11からタンクに導かれる。このとき、第1,2シリンダポート3,5に連通する第1,2ポート連通溝15,16は、第4,5ランド部32,33で閉じられているので、シリンダCは現状の位置を保持する。
【0024】
上記の状態から図3に示すようにスプールSを図面左方向に少し移動すると、第1ランド部22と第3ランド部24との間でポンプ連通溝7が閉ざされ、ポンプ連通溝7と第1,2タンク連通溝10,11との連通が遮断される。したがって、ポンプ連通溝7に導かれたポンプ吐出油はロードチェック弁8を押し開いてブリッジ通路9に導かれる。
【0025】
一方の第4ランド部32に形成された制御ノッチ40と第3連通凹部34を介して、第1ポート連通溝15と第1環状溝13とが連通するので、上記のようにブリッジ通路9に導かれたポンプ吐出油は、第1シリンダポート3を経由してシリンダCのボトム側室2に供給される。そして、シリンダCのロッド側室4の戻り油は、第2シリンダポート5から、第2ポート連通溝16、第6連通凹部39及び第4タンク連通溝18を通ってタンクに戻され、シリンダCは伸長する。
【0026】
ただし、上記のようにポンプ連通溝7から圧油がシリンダCのボトム側室2に供給される過程、特に、スプールSの移動初期の過程では、小流量制御ノッチ28及び31を介して、ポンプ連通溝7に導かれたポンプ吐出油がブリードオフされるとともに、スプールSがさらに移動する過程では、第3ランド部24の小流量制御ノッチ31が先に閉じ、その後に第1ランド部22の小流量制御ノッチ28が閉じる構成にしている。したがって、これら両小流量制御ノッチ28,31の機能が相まって、スプールSのストロークに応じたブリードオフ特性が決められることになる。
【0027】
なお、上記のようにスプールSの移動過程では、制御ノッチ30も小流量制御ノッチ28とともに開くが、この制御ノッチ30はその開度が一定に保たれる。
さらに、スプールSが上記左方向にフルストロークすると、図4に示すように、小流量制御28,30、31が閉じるので、ブリードオフ流量がゼロになり、シリンダCの伸長速度が最大になる。
【0028】
一方、スプールSが図5に示すように右方向に移動した初期の過程では、第1タンク連通溝10は第2ランド部23によってふさがれるとともに、ポンプ連通溝7と第2タンク連通溝11とが、大流量制御ノッチ27、制御ノッチ29及び第2連通凹部26を介して連通するので、ポンプ連通溝7に導かれたポンプ吐出油のほとんどが、第2タンク連通溝11からブリードオフされ、残りの一部がブリッジ通路9から、第2環状溝14、第4連通凹部35、第5ランド部33に形成した制御ノッチ42、第2ポート連通溝16及び第2シリンダポート5を経由してシリンダCのロッド側室4に導かれる。
【0029】
一方、第1ポート連通溝15と第3タンク連通溝17とは、第4ランド部32に形成した制御ノッチ41を介して連通するので、シリンダCのボトム側室2の戻り油が、第1シリンダポート3、第1ポート連通溝15、制御ノッチ41、第5連通凹部38及び第3タンク連通溝17を経由してタンクに導かれる。このときには、シリンダCがほとんど自重でゆっくりと下降するので、ポンプの負荷は小さくてすむ。
【0030】
そして、スプールSが上記右方向にフルストロークすると、図6に示すように、制御ノッチ41及び42の開度が大きくなるので、シリンダCのロッド側室4に供給される流量が相対的に多くなるとともに、ボトム側室2からの戻り流量も多くなるので、シリンダCの収縮速度が速くなる。
【0031】
上記したようにこの実施形態によれば、第1ランド部22と第3ランド部24との両方に小流量制御ノッチ28,31を形成したので、これら両小流量制御ノッチ28,31の合成特性によって、シリンダCの伸長時のブリードオフ流量を決めることができる。
また、第1ランド部22に大流量制御ノッチ27を形成したので、シリンダCが収縮するときのポンプの負荷を小さくでき、その分、省エネルギーを達成できる。
【0032】
しかも、上記小流量制御ノッチ28,31を第1,3ランド部22,24に別々に設けたので、この実施形態のように、第1ランド部22に大流量制御ノッチ27を形成したとしても、第1ランド部22にスペース的にゆとりを持って小流量制御ノッチ28を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
建設機械に用いるブームシリンダの制御に最適である。
【符号の説明】
【0034】
1 弁本体
C シリンダ
2 ボトム側室
3 第1シリンダポート
4 ロッド側室
5 第2シリンダポート
S スプール
6 スプール孔
7 ポンプ連通溝
10,11 第1,2タンク連通溝
13,14 第1,2環状溝
15,16 第1,2ポート連通溝
17,18 第3,4タンク連通溝
22〜24 第1〜3ランド部
25,26 第1,2連通凹部
27 大流量制御ノッチ
28 小流量制御ノッチ
31 小流量制御ノッチ
32,33 第4,5ランド部
34,35 第3,4連通凹部
36,37 第6,7ランド部
38,39 第5,6連通凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6