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特許5872338超音波診断装置、画像処理装置及び画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872338
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】超音波診断装置、画像処理装置及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   A61B8/06
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-58221(P2012-58221)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-188417(P2013-188417A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】藤井 友和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊介
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 勝
(72)【発明者】
【氏名】福田 省吾
(72)【発明者】
【氏名】中井 淳
(72)【発明者】
【氏名】武藤 義美
(72)【発明者】
【氏名】山崎 聡
(72)【発明者】
【氏名】田代 充孝
(72)【発明者】
【氏名】西野 正敏
(72)【発明者】
【氏名】菊地 紀久
(72)【発明者】
【氏名】浜田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正美
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7-204203(JP,A)
【文献】 特開2003-164452(JP,A)
【文献】 特開2007-44317(JP,A)
【文献】 特開2007-296329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波により3次元走査される3次元領域内で設定された設定領域と、特定の心位相として設定された設定位相とを含む設定情報を受け付ける入力部と、
前記3次元領域を流動する血流に関する血流情報に基づいて、血流が存在する位置に対応するボクセルに輝度値を割り当てた3次元ドプラ画像データを時系列に沿って生成する画像生成部と、
前記設定位相の前記設定領域における3次元ドプラ画像データの輝度値を時系列に沿ってボクセルごとに順次加算した複数の加算データそれぞれに基づく表示用画像データを表示部に表示するように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記入力部は、更に、前記設定情報として閾値を受け付け、
前記制御部は、輝度値の加算値が前記閾値以上となるボクセルを前記加算データとして用いることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記入力部は、更に、前記設定情報として加算数を受け付け、
前記制御部は、前記複数の加算データを前記加算数分の加算データとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記3次元領域内の組織形状を示す3次元Bモード画像データであって、前記設定位相の前記設定領域における3次元Bモード画像データと前記複数の加算データそれぞれとに基づく画像データを前記表示用画像データとすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項5】
超音波により3次元走査される3次元領域内で設定された設定領域と、特定の心位相として設定された設定位相とを含む設定情報を受け付ける入力部と、
前記3次元領域を流動する血流に関する血流情報に基づいて、血流が存在する位置に対応するボクセルに輝度値を割り当てた画像として時系列に沿って生成された複数の3次元ドプラ画像データの中で、前記設定位相の前記設定領域における3次元ドプラ画像データの輝度値を時系列に沿ってボクセルごとに順次加算した複数の加算データそれぞれに基づく表示用画像データを表示部に表示するように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
超音波により3次元走査される3次元領域内で設定された設定領域と、特定の心位相として設定された設定位相とを含む設定情報を、入力部を介して取得する取得手順と、
前記3次元領域を流動する血流に関する血流情報に基づいて、血流が存在する位置に対応するボクセルに輝度値を割り当てた画像として時系列に沿って生成された複数の3次元ドプラ画像データの中で、前記設定位相の前記設定領域における3次元ドプラ画像データの輝度値を時系列に沿ってボクセルごとに順次加算した複数の加算データそれぞれに基づく表示用画像データを表示部に表示するように制御する制御手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置、画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置は、弁膜症の診断に用いられている。例えば、超音波診断装置により収集されたBモードのボリュームデータを用いて、心臓弁の閉鎖不全を観察する技術が知られている。また、従来、心臓弁の破損により生じる血液の逆流の度合いの評価は、カラードプラ技術が用いられている。
【0003】
医師は、2次元のカラードプラ画像を参照して逆流の度合いを評価する。ここで、弁膜症の手術としては、心臓弁を修復する「弁形成術」、或いは、心臓弁を完全に人口の心臓弁に取り替える「弁置換術」がある。医師は、「弁形成術」を採用するか「弁置換術」を採用するかといった手術方針を決定する際に、心臓弁の破損位置を確認する必要がある。しかし、医師は、2次元のカラードプラ画像を参照しても、心臓弁のどの位置が破損して逆流が発生しているのかを判断することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−188118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、心臓弁が破損している位置を把握させることができる超音波診断装置、画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の超音波診断装置は、入力部と、画像生成部と、制御部とを備える。入力部は、超音波により3次元走査される3次元領域内で設定された設定領域と、特定の心位相として設定された設定位相とを含む設定情報を受け付ける。画像生成部は、前記3次元領域を流動する血流に関する血流情報に基づいて、血流が存在する位置に対応するボクセルに輝度値を割り当てた3次元ドプラ画像データを時系列に沿って生成する。制御部は、前記設定位相の前記設定領域における3次元ドプラ画像データの輝度値を時系列に沿ってボクセルごとに順次加算した複数の加算データそれぞれに基づく表示用画像データを表示部に表示するように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、弁膜症で行なわれる外科手術を説明するための図である。
図3図3は、本実施形態に係る制御部の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、設定領域を説明するための図(1)である。
図5図5は、設定領域を説明するための図(2)である。
図6図6は、設定位相を説明するための図(1)である。
図7図7は、設定位相を説明するための図(2)である。
図8図8は、本実施形態に係る画像生成部を説明するための図(1)である。
図9図9は、本実施形態に係る画像生成部を説明するための図(2)である。
図10図10は、本実施形態に係る超音波診断装置の設定情報取得処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図11図11は、本実施形態に係る超音波診断装置の設定情報取得処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。
【0009】
(実施形態)
まず、本実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。図1に例示するように、本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力部3と、心電計4と、装置本体10とを有する。
【0010】
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
【0011】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0012】
ここで、本実施形態に係る超音波プローブ1は、超音波により被検体Pを2次元で走査するとともに、被検体Pを3次元で走査することが可能な超音波プローブである。具体的には、本実施形態に係る超音波プローブ1は、一列に配置された複数の圧電振動子により、被検体Pを2次元で走査するとともに、複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで、被検体Pを3次元で走査するメカニカル4Dプローブである。或いは、本実施形態に係る超音波プローブ1は、複数の圧電振動子がマトリックス状に配置されることで、被検体Pを3次元で超音波走査することが可能な2Dアレイプローブである。なお、2Dアレイプローブは、超音波を集束して送信することで、被検体Pを2次元で走査することも可能である。
【0013】
入力部3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。なお、本実施形態に係る入力部3が操作者から受け付ける設定情報については、後に詳述する。
【0014】
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力部3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像等を表示したりする。
【0015】
心電計4は、3次元走査される被検体Pの生体信号として、被検体Pの心電波形(ECG: Electrocardiogram)を取得する。心電計4は、取得した心電波形を装置本体10に送信する。
【0016】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置である。具体的には、本実施形態に係る装置本体10は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波データに基づいて3次元の超音波画像データを生成可能な装置である。以下、3次元の超音波画像データを「ボリュームデータ」と記載する場合がある。
【0017】
装置本体10は、図1に示すように、送受信部11と、Bモード処理部12と、ドプラ処理部13と、画像生成部14と、画像メモリ15と、制御部16と、内部記憶部17とを有する。
【0018】
送受信部11は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0019】
なお、送受信部11は、後述する制御部16の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0020】
また、送受信部11は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0021】
本実施形態に係る送受信部11は、被検体Pを3次元走査するために、超音波プローブ1から3次元の超音波ビームを送信させる。そして、本実施形態に係る送受信部11は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
【0022】
なお、送受信部11からの出力信号の形態は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、包絡線検波処理後の振幅情報である場合等、種々の形態が選択可能である。
【0023】
Bモード処理部12は、送受信部11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0024】
ドプラ処理部13は、送受信部11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。本実施形態に係るドプラ処理部13は、移動体情報として、心臓内を流動する血液の血流情報を抽出する。
【0025】
なお、本実施形態に係るBモード処理部12及びドプラ処理部13は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理部12は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理部13は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。3次元のBモードデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点それぞれに位置する反射源の反射強度に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。また、3次元のドプラデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点それぞれに、血流情報(速度、分散、パワー)の値に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。
【0026】
画像生成部14は、Bモード処理部12及びドプラ処理部13が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表した2次元Bモード画像データを生成する。2次元Bモード画像データは、超音波走査された2次元領域内の組織形状が描出されたデータとなる。また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表す2次元ドプラ画像データを生成する。2次元ドプラ画像データは、速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせた画像である。2次元ドプラ画像データは、超音波走査された2次元領域内を流動する血流に関する血流情報に基づいて、血流が存在する位置に対応するピクセルに輝度値が割り当てられたデータとなる。
【0027】
ここで、画像生成部14は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成部14は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成部14は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成部14は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0028】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成部14が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0029】
更に、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元ドプラ画像データを生成する。すなわち、画像生成部14は、「3次元のBモード画像データや3次元ドプラ画像データ」を「3次元の超音波画像データであるボリュームデータ」として生成する。3次元Bモード画像データは、超音波により3次元走査される3次元領域内の組織形状を示す画像データとなる。また、3次元のBモード画像データは、超音波により3次元走査される3次元領域を流動する血流に関する血流情報に基づいて、血流が存在する位置に対応するボクセルに輝度値が割り当てられた画像データとなる。
【0030】
更に、画像生成部14は、ボリュームデータをモニタ2にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行なう。画像生成部14が行なうレンダリング処理としては、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を行なってボリュームデータからMPR画像データを生成する処理がある。また、画像生成部14が行なうレンダリング処理としては、ボリュームデータに対して「Curved MPR」を行なう処理や、ボリュームデータに対して「Maximum Intensity Projection」を行なう処理がある。
【0031】
また、画像生成部14が行なうレンダリング処理としては、3次元の情報を反映した2次元画像データを生成するボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理がある。また、画像生成部14は、ボリュームデータで設定された2つの断面で挟まれる領域を用いて、厚み付きMIP画像データや、厚み付きMPR画像データを生成することもできる。
【0032】
ここで、ドプラデータを用いた画像の表示方法について説明する。ドプラデータを用いた画像の表示方法は、一般的には、カラードプラ法(CDI:Color Doppler Imaging)とパワードプラ法(PDI:Power Doppler Imaging)とに大別される。カラードプラ法では、画像生成部14は、血流の方向及び血流の速度の大きさに応じて色相を変化させた輝度値を、血流が存在する位置に対応するボクセルに割り当てたカラードプラ画像データを生成する。例えば、画像生成部14は、超音波プローブ1に向かってくる方向の血流を、血流の速度の大きさに応じて赤系色(赤から黄)の色相を割り当て、超音波プローブ1から遠ざかる方向の血流を、血流の速度の大きさに応じて青系色(青から青緑)の色相を割り当てたカラードプラ画像データを生成する。なお、カラードプラ法では、画像生成部14は、速度情報に分散情報を組み合わせた速度―分散表示を行なうためのカラードプラ画像データを生成する場合もある。
【0033】
また、パワードプラ法では、画像生成部14は、ドプラ信号の強度であるパワーの値に応じて、例えば、赤色系の色相や明度、或いは、彩度を変化させた輝度値を、血流が存在する位置に対応するボクセルに割り当てたパワー画像データを生成する。
【0034】
3次元走査でカラードプラ法を行なう場合、画像生成部14は、3次元ドプラデータから、3次元ドプラ画像データとして3次元カラードプラ画像データを生成する。また、3次元走査でパワードプラ法を行なう場合、画像生成部14は、3次元ドプラデータから、3次元ドプラ画像データとして3次元パワー画像データを生成する。また、3次元走査が時系列に沿って繰り返し行なわれる場合、画像生成部14は、3次元ドプラ画像データを時系列に沿って順次生成する。
【0035】
また、ドプラ画像データは、通常、Bモード画像データに重畳されて、モニタ2に出力される。送受信部11は、2次元走査や3次元走査において、1本の走査線で1回超音波ビームの送受信を行なうBモード用のスキャンと、1本の走査線で複数回超音波ビームの送受信を行なうドプラモード用のスキャンとを並行して行なう。ドプラ処理部13は、同一走査線の複数の反射波データに対して、MTIフィルタ処理、自己相関演算処理、速度・分散・パワー推定処理を行なうことで、ドプラデータを生成する。
【0036】
或いは、フレームレートやボリュームレートを向上させるために、Bモード用のスキャンと同様に、1本の走査線で1回超音波ビームの送受信を行なうことで、ドプラモード用のスキャンを行なう方法もある。かかる方法では、ドプラ処理部13は、各フレーム、又は、各ボリュームの同じ位置の複数の反射波データに対してフレーム方向、又は、ボリューム方向で、MTIフィルタ処理、自己相関演算処理、速度・分散・パワー推定処理を行なうことで、ドプラデータを生成する。
【0037】
図1の説明に戻って、画像メモリ15は、画像生成部14が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ15は、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ15が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成部14を経由して表示用の超音波画像データとなる。なお、画像生成部14は、ボリュームデータと当該ボリュームデータを生成するために行なわれた超音波走査の時間とを、心電計4から送信された心電波形に対応付けて画像メモリ15に格納する。後述する制御部16は、画像メモリ15に格納されたデータを参照することで、ボリュームデータを生成するために行なわれた超音波走査時の心時相を取得することができる。
【0038】
内部記憶部17は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶部17は、必要に応じて、画像メモリ15が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶部17が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部の装置へ転送することができる。
【0039】
制御部16は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部16は、入力部3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部17から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部12、ドプラ処理部13、画像生成部14の処理を制御する。また、制御部16は、画像メモリ15や内部記憶部17が記憶する表示用の超音波画像データをモニタ2にて表示するように制御する。
【0040】
以上、本実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係る超音波診断装置は、弁膜症の診断を行なう医師に対して、診断用の画像データを生成し、モニタ2に表示する。弁膜症の診断対象となる心臓弁は、例えば、僧帽弁や大動脈弁である。
【0041】
弁膜症は、心臓弁が機能しなくなる疾患であり、弁膜症は、心臓弁の破損の仕方により、「逆流型(閉鎖不全症)」と「狭窄型(狭窄症)」とに大きく分類される。また、弁膜症の原因は、先天性(二尖弁、先天性心疾患)と後天性(リウマチ熱、動脈硬化、心筋梗塞、膠原病等)とがある。また、弁膜症の原因を特定できない症例も多く報告されている。高齢化の進む現代では、動脈硬化が進行した結果、大動脈弁が硬くなり、大動脈弁が速やかに開かなくなる「大動脈弁狭窄症」や、僧帽弁の組織が弱くなって起きる「僧帽弁閉鎖不全」の患者数が増加している。
【0042】
破損した心臓弁自体を修復するには、外科手術が必要である。弁膜症の手術としては、心臓弁を修復する「弁形成術」、或いは、心臓弁を完全に人口の心臓弁に取り替える「弁置換術」がある。図2は、弁膜症で行なわれる外科手術を説明するための図である。
【0043】
図2の(A)は、僧帽弁の弁膜や弁膜を支える構造体が伸び、閉鎖時に、僧帽弁が左心房側に落ち込むことで僧帽弁閉鎖不全となる「僧帽弁逸脱症」で弁形成術を行なう場合を例示した図である。心臓外科医師は、図2の(A)に示すように、閉鎖不全の要因となる余分な部位を切除し、切除後の僧帽弁が元の形状となるように縫合する。そして、心臓外科医師は、図2の(A)に示すように、縫合後の僧帽弁の周りに、人工弁輪を付ける。
【0044】
或いは、心臓弁の損傷が弁形成術で修復できない場合、心臓外科医師は、損傷した心臓弁を、図2の(B)に示すような人工弁に取り替える弁置換術を行なう。
【0045】
心臓弁の修復を、弁形成術か弁置換術かのどちらで行なうかは、心臓外科医師が、どの心臓弁が、どの程度損傷しているかを確認して判断する。最終的には、心臓外科医師は、手術時に実際に心臓弁を見て決定している。また、弁形成術は、通常の弁置換術に比べ、長時間の手術となる場合がある。これは、弁形成術が計画通りに進まない場合や、弁形成術を行なっても逆流が残る際に、人工弁置換術に切り替える場合があるからである。
【0046】
このため、心臓外科医師は、術前に、どの心臓弁が、どの程度損傷しているかを、非侵襲で撮影した超音波画像より判断している。従来、心臓弁の破損により生じる血液の逆流の度合いの評価は、カラードプラ技術が用いられている。
【0047】
具体的には、従来、心臓外科医師は、2次元のカラードプラ画像を参照して逆流の度合いを評価していた。しかし、心臓外科医師は、2次元のカラードプラ画像を参照しても、立体的に、心臓弁のどの位置が破損して逆流が発生しているのかを判断することができなかった。
【0048】
そこで、本実施形態に係る超音波画像診断装置は、診断対象となる心臓弁を含む領域の3次元走査を行なって、3次元走査される3次元領域の3次元ドプラ画像データを時系列に沿って生成する。そして、本実施形態に係る超音波画像診断装置は、以下に説明する処理を行なうことで、時系列に沿って生成した複数の3次元ドプラ画像データから、心臓弁が破損している位置を把握させることができる表示用の画像データを生成する。
【0049】
図3は、本実施形態に係る制御部の構成例を示すブロック図である。図3に例示するように、本実施形態に係る制御部16は、設定情報取得部16aと、画像生成制御部16bと、表示制御部16cとを有する。
【0050】
設定情報取得部16aは、入力部3が操作者から受け付けた設定情報を取得する。画像生成制御部16bは、設定情報に基づいて、表示用の画像データの生成を画像生成部14に実行させる。具体的には、画像生成制御部16bは、設定情報として受け付けた設定領域の特定処理を行なう。また、画像生成制御部16bは、設定情報として受け付けた設定位相の特定処理を行なう。
【0051】
まず、設定情報取得部16aが入力部3から取得する設定情報に含まれる設定領域及び設定位相について説明する。入力部3は、超音波により3次元走査される3次元領域内で設定された設定領域と、特定の心位相として設定された設定位相とを含む設定情報を受け付ける。図4及び図5は、設定領域を説明するための図である。
【0052】
超音波診断装置の操作者は、設定領域を設定するために、診断対象である心臓弁を含む領域が3次元走査されるように、超音波プローブ1を被検体Pに当接する。そして、操作者は、3次元Bモード画像データを収集するための3次元走査を行なうための指示を入力部3に入力する。以下では、診断対象の心臓弁が僧帽弁である場合について説明する。
【0053】
操作者の指示により、本実施形態に係る超音波診断装置は、3次元走査を開始し、3次元Bモード画像データの収集を行なう。画像生成部14が生成した3次元Bモード画像データは、モニタ2に表示される。モニタ2は、図4に例示する各種データを表示する。
【0054】
例えば、モニタ2は、3次元Bモード画像データのA面のMPR画像データ(図4の「A」を参照)と、3次元Bモード画像データのB面のMPR画像データ(図4の「B」を参照)とを表示する。なお、A面とは、超音波プローブ1における振動子群の配列方向と、超音波ビームの送信方向とで形成される断面である。また、B面とは、超音波プローブ1の当接面に直交する断面であり、かつ、A面に直交する断面である。なお、A面及びB面に直交する断面、すなわち、超音波ビームの送信方向に対して垂直方向にある断面は、C面と呼ばれる。換言すると、C面は、当接面に平行な断面である。
【0055】
また、モニタ2は、図4の右下に例示するように、超音波プローブ1の当接面の上からボリュームデータを俯瞰した模式図に、A面の位置(図中の実線を参照)と、B面の位置(図中の点線を参照)とを示す線分を重畳して表示する。
【0056】
また、モニタ2は、図4に例示するように、被検体Pの心電波形を表示する。また、モニタ2は、図4に例示するように、現時点で表示している画像データの心位相を示す実線を心電波形の上に重畳して表示する。
【0057】
また、モニタ2は、図4に示す「3D」の表示領域に、収集された3次元Bモード画像データを立体的に観察できる画像データを表示する。例えば、モニタ2は、図4に示す「3D」の表示領域に、超音波プローブ1の当接面の上に視点が設定された3次元Bモード画像データのVR画像データを表示する。なお、モニタ2は、3次元Bモード画像データのC面のMPR画像データを表示しても良い。
【0058】
操作者は、モニタ2にライブ表示される画像を参照しながら、超音波プローブ1の位置を調整する。そして、操作者は、僧帽弁が3次元走査されていると判断した時点で、例えば、Freezeボタンを押下し、設定領域を設定する。
【0059】
操作者は、例えば、図4に示すように、A面のMPR画像データに対して、2つの平行する直線L1及び直線L2を設定する。図4に例示する直線L1は、僧帽弁の閉鎖不全により左心室から血液が流入する左心房側に位置し、図4に例示する直線L2は、左心房と左心室との境界に位置する。また、操作者は、例えば、図4において、直線L1及び直線L2に垂直であり、直線L1上を始点として直線L2に向かう方向の矢印L3を設定する。なお、モニタ2は、図4に例示するように、矢印L3が設定されると、B面のMPR画像データに矢印L3に対応する矢印L4を表示する。
【0060】
入力部3は、直線L1及び直線L2の位置情報を設定情報取得部16aに通知する。設定情報取得部16aは、「直線L1を含み、かつ、A面に直交する断面」と「直線L2を含み、かつ、A面に直交する断面」とで挟まれる3次元領域が、設定領域の候補領域であることを取得する。また、入力部3は、矢印L3の方向を設定情報取得部16aに通知する。設定情報取得部16aは、矢印L3の方向で候補領域を観察する画像データの表示要求を受け付けたことを取得する。
【0061】
上記の情報は、設定情報取得部16aから画像生成制御部16bに通知され、画像生成制御部16bは、画像生成部14を制御することで、例えば、3次元Bモード画像データにおける候補領域を矢印L3の方向で投影した厚み付きMPR画像データを生成させる。そして、表示制御部16cの制御により、モニタ2は、厚み付きMPR画像データを、図4に示す「3D」の表示領域に表示する。
【0062】
図4に例示する厚み付きMPR画像データは、例えば、直線L1で定まる断面に近いボクセルに赤系色の色相を割り当て、直線L2で定まる断面に近いボクセルに青系色を割り当てたうえで、候補領域のボクセルを直線L2で定まる断面に平行投影することで生成された画像データである。
【0063】
操作者は、厚み付きMPR画像データ等を参照して、直線L1や直線L2の位置を調整する。そして、僧帽弁を重点的に観察可能な領域が設定できたと判断した場合、操作者は、例えば、入力部3が有する確定ボタンを押下する。例えば、操作者は、図4に例示した直線L1、直線L2及び矢印L3を、設定領域として確定する。
【0064】
これにより、設定情報取得部16aは、図5の(A)に示すように、3次元Bモード画像データにおいて2つの断面で挟まれる3次元領域が設定領域であることを取得する。
【0065】
なお、本実施形態は、A面、B面及びC面のMPR画像データそれぞれで2つの直線が設定されることで、図5の(B)に例示するように、直方体の設定領域が設定される場合であっても良い。
【0066】
また、上記では、設定領域を設定する際に、Bモード用の3次元走査を行なう場合について説明した。しかし、本実施形態は、Bモード用とドプラモード用の3次元走査を並行して行ない、3次元Bモード画像データと3次元ドプラ画像データとの重畳画像データを参照して、設定領域が設定される場合であっても良い。
【0067】
また、操作者は、設定位相を設定する。ここで、設定位相は、具体的には、逆流を観察可能な特定の心位相である。図6及び図7は、設定位相を説明するための図である。
【0068】
図6に示すように、僧帽弁が閉鎖する位相は、心電波形のR波からS波の間であり、等容収縮期の初期であることが知られている。また、図6に示すように、僧帽弁が開放する位相は、心電波形のT波の少し後であり、等容弛緩期の末期であることが知られている。
【0069】
また、図6に示すように、大動脈弁が閉鎖する位相は、心電波形のT波の少し後であり、等容弛緩期の初期であることが知られている。また、大動脈弁が開放する位相は、心電波形のS波の少し後であり、等容収縮期の末期であることが知られている。
【0070】
操作者は、例えば、図7に示すように、僧帽弁が閉鎖する等容収縮期の初期を含むように、R波から15ミリ秒といった数10ミリ秒の期間を設定位相として設定する。すなわち、設定位相は、正常な心臓弁であるならば設定領域に血流が検出されない時相であり、弁疾患がある場合には、逆流による血液の漏れにより設定領域に血流が検出される時相である。
【0071】
入力部3は、設定位相を設定情報取得部16aに通知する。これにより、設定情報取得部16aは、設定位相の情報を取得し、画像生成制御部16bに通知する。
【0072】
操作者は、設定領域及び設定位相を設定した後、Freezeボタンを再度押下することで、Freeze状態を解除し、3次元走査を再開する。なお、Freeze状態の間、設定領域の座標が変更されないよう、超音波プローブ1の位置は、固定されている。
【0073】
ここで、操作者は、Freeze状態の解除後、3次元ドプラ画像データを収集するための3次元走査を行なうための指示を入力部3に入力する。本実施形態では、操作者は、Freeze状態の解除後、3次元Bモード画像データ及び3次元ドプラ画像データを、同一の3次元領域で収集する3次元走査を行なうための指示を入力部3に入力する。ただし、設定位相の3次元Bモード画像データが収集されている場合は、Freeze状態の解除後に行なわれる3次元走査は、ドプラモード用のスキャンのみであっても良い。
【0074】
3次元走査が再開されると、画像生成部14は、3次元ドプラ画像データを時系列に沿って生成する。なお、本実施形態では、3次元ドプラ画像データとして、血流の方向の情報が得られる3次元カラードプラ画像データを用いる。ただし、3次元カラードプラ画像データを用いる場合、弁疾患により生じる逆流の方向が、超音波ビームの方向と直交する方向とならないように3次元走査を行なうことが望ましい。
【0075】
また、本実施形態は、3次元ドプラ画像データとして、血流の存在する位置が、血流の方向と超音波ビームの方向との相対的関係に依存することなく検出できる3次元パワー画像データを用いる場合であっても良い。なお、本実施形態は、図5の(B)に例示する設定領域が設定された場合は、3次元ドプラ画像データを生成するための処理負荷を軽減したり、3次元ドプラ画像データの時間分解能及び空間分解能を向上したりするために、設定領域を含むように再開後の3次元走査領域を狭めても良い。
【0076】
3次元走査が再開されると、制御部16は、設定情報として通知された設定領域及び設定位相を用いて、画像生成部14に対して、以下の制御を行なう。なお以下では、設定位相の間に、1つのボリュームデータが生成されるとして説明する。
【0077】
図3に示す画像生成制御部16bは、設定位相の設定領域における3次元ドプラ画像データの輝度値を時系列に沿ってボクセルごとに順次加算した複数の加算データそれぞれに基づく表示用画像データを画像生成部14に生成させる。本実施形態では、画像生成制御部16bは、設定位相の設定領域における3次元Bモード画像データと複数の加算データそれぞれとに基づく画像データを表示用画像データとする。そして、図3に示す表示制御部16cは、表示用画像データをモニタ2に表示するように制御する。
【0078】
まず、画像生成制御部16bは、画像生成部14が順次生成する3次元ドプラ画像データが設定位相のボリュームデータであるか否かを判定する。画像生成制御部16bは、画像生成部14が生成した3次元ドプラ画像データが設定位相のボリュームデータである場合、当該3次元ドプラ画像データの設定領域を特定し、画像生成部14に通知する。具体的には、画像生成制御部16bは、設定位相であると特定した3次元ドプラ画像データの設定領域を、レンダリング対象とするように、画像生成部14に通知する。なお、画像生成制御部16bは、前述した投影方向(例えば、矢印L3)の情報も、画像生成部14に通知する。また、画像生成制御部16bは、設定位相を特定するごとに、画像生成部14への通知処理を繰り返す。
【0079】
画像生成部14は、画像生成制御部16bから通知された情報に基づいて、設定位相の設定領域における3次元ドプラ画像データの輝度値のみを抽出する。そして、画像生成部14は、例えば、輝度値を有するボクセルを、矢印L3の方向で投影した厚み付きMPR画像データを生成する。
【0080】
ここで、画像生成部14は、3次元走査再開後に、最初に設定位相のボリュームデータとして生成された3次元ドプラ画像データから生成した厚み付きMPR画像データを、1回目の血流データとする。また、画像生成部14は、最初に設定位相のボリュームデータとして生成された3次元Bモード画像データから、設定領域の厚み付きMPR画像データを生成する。画像生成部14は、画像生成制御部16bの制御により、最初に設定位相のボリュームデータとして生成された3次元Bモード画像データの厚み付きMPR画像データを、血流データの重畳対象である組織データとする。図8及び図9は、本実施形態に係る画像生成部を説明するための図である。
【0081】
図8に示すように、画像生成部14は、組織データ100と1回目の血流データ200とを重畳したデータを、1番目のフレームである表示用画像データ300として生成する。すなわち、表示用画像データ300は、血流データ200のみの加算データに、組織データ100を重畳した画像データである。表示制御部16cは、表示用画像データ300をモニタ2に表示させる。
【0082】
そして、図8に示すように、2回目の通知を画像生成制御部16bから受信した画像生成部14は、2回目の特定位相の3次元ドプラ画像データから、2回目の血流データ201を生成し、表示用画像データ300に重畳することで、2番目のフレームである表示用画像データ301を生成する。すなわち、表示用画像データ301は、血流データ200と血流データ201とを対応するボクセルごとに輝度値を加算した加算データに、組織データ100を重畳した画像データである。表示制御部16cは、表示用画像データ301をモニタ2に表示させる。
【0083】
そして、図8に示すように、3回目の通知を画像生成制御部16bから受信した画像生成部14は、3回目の特定位相の3次元ドプラ画像データから、3回目の血流データ202を生成し、表示用画像データ301に重畳することで、3番目のフレームである表示用画像データ302を生成する。すなわち、表示用画像データ302は、血流データ200と血流データ201と血流データ202とを対応するボクセルごとに輝度値を加算した加算データに、組織データ100を重畳した画像データである。表示制御部16cは、表示用画像データ302をモニタ2に表示させる。
【0084】
図8では、順次輝度値が加算されることで、多くの血流が検出された位置の輝度値が、フレームが更新されるごとに向上していることが示されている。なお、本実施形態では、3次元カラードプラ画像データを収集していることから、図8に示す画像データでは、血流は、赤色系の輝度で血流が描出されている。
【0085】
図9に例示する表示用画像データ302の輝度を参照することで、操作者は、心臓弁が完全に閉じていないために、逆流が生じている領域400や、心臓弁上に輝度が高い箇所があることから心臓弁が破損していることが示される領域401を把握することができる。また、操作者は、領域400の大きさを観察することで、閉鎖不全の度合いを把握でき、領域402の形状を観察することで、心臓弁がどのように破損しているのかを把握することができる。
【0086】
なお、本実施形態は、血流データ(加算データ)及び組織データを厚み付きMPR画像データでなく、厚み付きMIP画像データや、VR画像や、複数のMPR画像データとして生成する場合であっても良い。また、本実施形態は、組織データを最初の3次元Bモード画像データに基づいて生成する場合であっても、組織データを最新の3次元Bモード画像データに基づいて生成する場合であっても良い。
【0087】
このように、制御部16は、設定領域及び設定位相を用いた制御処理を行なう。しかし、本実施形態は、更に、設定情報として、以下の2つの追加情報を用いて、画像生成制御部16bが、重畳調整処理を行なっても良い。
【0088】
1つ目の追加情報である設定情報として、入力部3は、更に、閾値を受け付ける。そして、画像生成制御部16bは、閾値に基づく輝度調整処理を行なう。具体的には、画像生成制御部16bは、輝度値の加算値が閾値以上となるボクセルを加算データとして用いるように、画像生成部14を制御する。例えば、画像生成部14は、血流データ200と血流データ201と血流データ202とを対応するボクセルごとに輝度値を加算した加算データにおいて、輝度値が閾値より小さいボクセルを除去する。
【0089】
例えば、図9に示す表示用画像データ302には、ノイズである領域402が恰も逆流であるかのように描出される。心臓弁の破損形状等を観察するためには、フレーム更新により、輝度値が向上する場所のみが表示されることが望ましい。下限閾値となる閾値を設定情報として追加することで、領域402のようなノイズを除去することができる。これにより、心臓弁の破損形状が強調されたり、開放の形状が強調されたりするので、操作者は、弁疾患の診断を正確に行なうことができる。また、閾値の値を大きくすることで、ノイズ除去だけでなく、例えば、心臓弁上で重篤な破損箇所のみを強調させることができる。なお、本実施形態は、上記の下限閾値だけでなく、モニタ2の性能に応じて、輝度が飽和しないように、上限閾値を設定する場合であっても良い。
【0090】
2つ目の追加情報である設定情報として、入力部3は、更に、加算数を受け付ける。そして、画像生成制御部16bは、加算数に基づく輝度調整処理を行なう。具体的には、画像生成制御部16bは、複数の加算データを加算数分の加算データとするように、画像生成部14を制御する。
【0091】
例えば、重篤な弁疾患であり、逆流する血液の量が1心拍において多い場合、無制限に加算データを更新すると、高輝度の領域が広範囲となるため、逆流の程度や心臓弁の破損を正確に観察できない。かかる場合、操作者は、例えば、加算数を「3」に設定する。加算数が「3」と設定された場合、画像生成部14は、3ボリュームの3次元ドプラ画像データを用いて、3フレームの表示用画像データを生成する。
【0092】
或いは、例えば、軽度な弁疾患であり、逆流する血液の量が1心拍において微量である場合、加算数が小さいと、高輝度の領域が狭くなるため、逆流の程度や心臓弁の破損を正確に観察できない。かかる場合、操作者は、例えば、加算数を「20」に設定する。加算数が20と設定された場合、画像生成部14は、20ボリュームの3次元ドプラ画像データを用いて、20フレームの表示用画像データを生成する。
【0093】
なお、本実施形態は、閾値及び加算数は、設定領域及び設定位相とともに設定される場合であっても良く、設定領域及び設定位相が設定されて表示される画像を参照した操作者が、追加で設定する場合であっても良い。また、本実施形態は、閾値、設定領域及び設定位相を設定した後に、加算数が設定される場合や、加算数、設定領域及び設定位相を設定した後に、閾値が設定される場合であっても良い。
【0094】
また、本実施形態は、ボリュームレートが高く、設定位相の間に複数のボリュームデータが生成可能であるならば、設定位相の間に複数フレームの表示用画像データが生成される場合であっても良い。また。本実施形態は、表示用画像データとして、設定位相の設定領域の3次元Bモード画像データに基づく組織データを用いずに、血流データの加算データのみを用いる場合であっても良い。また、本実施形態は、僧帽弁だけでなく、大動脈弁や三尖弁等の他の心臓弁に対しても適用することができる。また、本実施形態は、心位相を特定する情報として、PCG(phonocardiogram)波形が用いられる場合であっても良い。
【0095】
次に、図10及び図11を用いて、本実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図10は、本実施形態に係る超音波診断装置の設定情報取得処理の一例を説明するためのフローチャートであり、図11は、本実施形態に係る超音波診断装置の設定情報取得処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0096】
図10に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置は、3次元の走査開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、3次元の走査開始要求を受け付けない場合(ステップS101否定)、超音波診断装置は、3次元の走査開始要求を受け付けるまで待機する。
【0097】
一方、3次元の走査開始要求を受け付けた場合(ステップS101肯定)、制御部16は、反射波データの収集及びボリュームデータの生成を開始させる(ステップS102)。例えば、ボリュームデータは、3次元Bモード画像データである。そして、制御部16の制御により、画像生成部14は、領域設定用の画像データを生成し、モニタ2は、領域設定用の画像データを表示する(ステップS103)。
【0098】
そして、制御部16は、Freezeボタンが押下されたか否かを判定する(ステップS104)。ここで、Freezeボタンが押下されない場合(ステップS104否定)、制御部16は、ステップS103の処理を継続させる。
【0099】
一方、Freezeボタンが押下された場合(ステップS104肯定)、制御部16は、入力部3が設定領域を受け付けたか否かを判定する(ステップS105)。ここで、入力部3が設定領域を受け付けていない場合(ステップS105否定)、制御部16は、設定領域を受け付けるまで待機する。
【0100】
一方、入力部3が設定領域を受け付けた場合(ステップS105肯定)、制御部16は、入力部3が設定位相を受け付けたか否かを判定する(ステップS106)。ここで、入力部3が設定位相を受け付けていない場合(ステップS106否定)、制御部16は、設定位相を受け付けるまで待機する。
【0101】
一方、入力部3が設定位相を受け付けた場合(ステップS106肯定)、制御部16は、入力部3が閾値及び加算数を受け付けたか否かを判定する(ステップS107)。ここで、入力部3が閾値及び加算数を受け付けていない場合(ステップS107否定)、制御部16は、閾値及び加算数を受け付けるまで待機する。
【0102】
一方、入力部3が閾値及び加算数を受け付けた場合(ステップS107肯定)、制御部16は、設定情報を取得したと判定し、処理を終了する。なお、設定情報を受け付ける順番は、図10に例示する順番に限定されるものではない。また、設定領域以外の設定情報は、3次元走査を開始する前に操作者が設定する場合であっても良い。また、閾値及び加算数は、図10に例示するフローチャートで設定されない場合であっても良い。
【0103】
続いて、図11に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置は、設定情報が設定され、Freeze状態が解除されたか否かを判定する(ステップS201)。ここで、設定情報が設定され、Freeze状態が解除されていない場合(ステップS201否定)、超音波診断装置は、待機状態となる。
【0104】
一方、設定情報が設定され、Freeze状態が解除された場合(ステップS201肯定)、制御部16は、反射波データの収集及びボリュームデータ(3次元Bモード画像データ及び3次元ドプラ画像データ)の生成を再開させる(ステップS202)。
【0105】
そして、制御部16は、設定位相の3次元ドプラ画像データが生成されたか否かを判定する(ステップS203)。ここで、設定位相の3次元ドプラ画像データが生成されていない場合(ステップS203否定)、制御部16は、設定位相の3次元ドプラ画像データが生成されるまで待機する。
【0106】
一方、設定位相の3次元ドプラ画像データが生成された場合(ステップS203肯定)、制御部16は、画像生成部14に対して、設定領域の3次元ドプラ画像データを用いた加算処理及び輝度調整処理を指示する(ステップS204)。そして、画像生成部14は、表示用画像データを生成し、モニタ2は、表示用画像データを表示する(ステップS205)。
【0107】
そして、制御部16は、加算数分の処理が行なわれたか否かを判定する(ステップS206)。ここで、加算数分の処理が行なわれていない場合(ステップS206否定)、制御部16は、ステップS203に戻って、設定位相の特定処理を継続する。
【0108】
一方、加算数分の処理が行なわれた場合(ステップS206肯定)、制御部16は、画像表示の終了要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS207)。ここで、終了要求を受け付けていない場合(ステップS207否定)、制御部16は、設定情報の変更要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS208)。
【0109】
ここで、設定情報の変更要求を受け付けない場合(ステップS208否定)、制御部16は、設定情報の変更無しで処理を続行すると判定し(ステップS209)、ステップS203に戻って、設定位相の特定処理を継続する。
【0110】
一方、設定情報の変更要求を受け付けた場合(ステップS208肯定)、制御部16は、変更後の設定情報で処理を続行すると判定し(ステップS210)、ステップS203に戻って、設定位相の特定処理を継続する。
【0111】
また、終了要求を受け付けた場合(ステップS207肯定)、制御部16は、モニタ2に表示された全フレームの表示用画像データを、例えば、内部記憶部17に保存し(ステップS211)、処理を終了する。
【0112】
上述したように、本実施形態では、2次元ドプラ画像データではなく、3次元ドプラ画像データを用いて、診断用の画像データを生成する。具体的には、本実施形態は、心臓弁が閉鎖している心位相を含む設定位相の血流情報であり、診断対象となる心臓弁近傍の3次元領域として設定された設定領域の血流情報を、設定位相ごとに順次加算した加算データを用いた表示用画像データを、時系列に沿って表示する。操作者は、フレームが更新されるごとに、輝度が向上する位置を、心臓弁が破損して逆流が生じている位置であると把握することができる。
【0113】
ここで、画像生成部14の制御を行なう制御部16は、ボリュームデータの各ボクセルの位置と、表示用画像データの各ピクセルの位置との対応関係を取得することができる。このため、操作者が表示用画像データを参照して、心臓弁が破損していると判断した位置を、入力部3を用いて指定すると、制御部16は、指定された位置を、ボリュームデータにおける位置に変換することができる。従って、本実施形態では、心臓弁が破損している位置を把握させることができる。
【0114】
また、本実施形態では、閾値や加算数を設定情報として用いることで、操作者である心臓外科医の診断目的に応じた表示用画像データを生成することができる。また、本実施形態では、設定位相の設定領域の3次元Bモード画像データを用いて表示用画像データを生成するので、心臓弁の形状を把握できる。その結果、本実施形態では、心臓弁が破損している位置を容易に把握させることができる。
【0115】
なお、本実施形態で説明した画像処理方法は、超音波診断装置とは独立に設置された画像処理装置により行なわれる場合であってもよい。かかる画像処理装置は、3次元ドプラ画像データ及び3次元Bモード画像データを取得することで、本実施形態で説明した画像処理方法を行なうことができる。
【0116】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0117】
また、本実施形態で説明した画像処理方法は、あらかじめ用意された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD、USBメモリ及びSDカードメモリ等のFlashメモリ等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0118】
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、心臓弁が破損している位置を把握させることができる。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0120】
1 超音波プローブ
2 モニタ
3 入力部
10 装置本体
11 送受信部
12 Bモード処理部
13 ドプラ処理部
14 画像生成部
15 画像メモリ
16 制御部
16a 設定情報取得部
16b 画像生成制御部
16c 表示制御部
17 内部記憶部
図1
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図3
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