(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による旋回制御装置が組み込まれたショベルを示す側面図である。
【0012】
ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端に、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にバケット6が取り付けられている。ブーム4,アーム5及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
【0013】
図2は、
図1に示すショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは
太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は
細い実線でそれぞれ示されている。
【0014】
機械式駆動部としてのエンジン11は、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15に接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
【0015】
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の走行油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
【0016】
また、旋回機構2を駆動するための旋回油圧モータ21がコントロールバルブ17に接続される。旋回油圧モータ21は、旋回制御装置の油圧回路を介してコントロールバルブ17に接続されるが、
図2には旋回制御装置の油圧回路は示されていない。旋回油圧装置に関しては後で説明する。
【0017】
パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。 操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。本実施形態では、レバー26Aが旋回操作レバーとして機能する。
【0018】
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
【0019】
ショベルの傾斜角度を検知する傾斜センサ32が上部旋回体3に設けられている。ショベルが傾斜地に設置されているときには、傾斜センサ32はショベルの傾斜角度を示す信号をコントローラ30に供給する。傾斜センサ32は下部走行体1に設けられていてもよい。
【0020】
次に、旋回油圧モータ21の駆動を制御する旋回制御装置について説明する。旋回制御装置は旋回油圧モータ21を駆動するための旋回油圧回路を含んでおり、当該旋回油圧回路は旋回油圧モータ21とコントロールバルブ17の間に設けられる。
【0021】
図3は第1実施形態による旋回制御装置200の油圧回路を示す図である。まず、旋回油圧モータ21を駆動するための旋回駆動油圧回路について説明する。
図3において、旋回駆動油圧回路は、旋回油圧モータ21とコントロールバルブ17との間に設けられた油圧回路である。旋回駆動油圧回路は、コントロールバルブ17と旋回油圧モータのAポートを接続する油圧ライン210Aと、コントロールバルブ17と旋回油圧モータのBポートを接続する油圧ライン210Bと、油圧ライン210A及び210Bをタンク280に接続するメイクアップ油圧ライン220とを含む。
【0022】
油圧ライン210Aとメイクアップ油圧ライン220との間には、高圧リリーフバルブ230Aが設けられる。油圧ライン210Aの油圧(すなわち、旋回油圧モータ21のAポートにおける油圧)が、高圧リリーフバルブ230Aのリリーフ圧以上になると、油圧ライン210Aから高圧の作動油が高圧リリーフバルブ230Aを介してメイクアップ油圧ライン220に流れ、作動油は低圧となってタンク280に戻される。高圧リリーフバルブ230Aとメイクアップ油圧ライン220とで高圧リリーフ回路が構成される。
【0023】
また、油圧ライン210Aとメイクアップ油圧ライン220との間には、チェックバルブ240Aが設けられる。油圧ライン210Aの油圧(すなわち、旋回油圧モータ21のAポートにおける油圧)が、所定の油圧(メイクアップ油圧)以下になると、タンク280内の作動油が、メイクアップ油圧ライン220とチェックバルブ240Aを介して油圧ライン210Aに流れ込む。これにより、油圧ライン210Aの作動油(すなわち、旋回油圧モータ21のAポートにおける油圧)はメイクアップ油圧ライン220からの作動油により補われる。
【0024】
同様に、油圧ライン210Bとメイクアップ油圧ライン220との間には、高圧リリーフバルブ230Bが設けられる。油圧ライン210Bの油圧(すなわち、旋回油圧モータ21のBポートにおける油圧)が、高圧リリーフバルブ230Bのリリーフ圧以上になると、油圧ライン210Bから高圧の作動油が高圧リリーフバルブ230Bを介してメイクアップ油圧ライン220に流れ、作動油は低圧となってタンク280に戻される。高圧リリーフバルブ230Bとメイクアップ油圧ライン220とで高圧リリーフ回路が構成される。
【0025】
また、油圧ライン210Bとメイクアップ油圧ライン220との間には、チェックバルブ240Bが設けられる。油圧ライン210Bの油圧(すなわち、旋回油圧モータ21のBポートにおける油圧)が、所定の油圧(メイクアップ油圧)以下になると、タンク280内の作動油が、メイクアップ油圧ライン220とチェックバルブ240Bを介して油圧ライン210Bに流れ込む。これにより、油圧ライン210Bの作動油(すなわち、旋回油圧モータ21のBポートにおける油圧)はメイクアップ油圧ライン220からの作動油により補われる。
【0026】
メインポンプ14から吐出される高圧の作動油は、コントロールバルブ17に供給され、コントロールバルブ17から、油圧ライン210A又は油圧ライン210Bに供給される。油圧ライン210Aに高圧の作動油が供給されるようにコントロールバルブ17が操作されると、油圧ライン210Bはタンク280に接続される。したがって、高圧の作動油は旋回油圧モータ21のAポートに供給され、旋回油圧モータ21を駆動して低圧となり、油圧ライン210Bを介してタンク280に戻される。旋回油圧モータ21が駆動されることにより旋回機構2が駆動され、上部旋回体3は旋回する。このときの旋回を右方向の旋回とする。すなわち、旋回油圧モータのAポートに油圧が供給されたときには、上部旋回体3は右方向に旋回する。
【0027】
一方、油圧ライン210Bに高圧の作動油が供給されるようにコントロールバルブ17が操作されると、油圧ライン210Aはタンク280に接続される。したがって、高圧の作動油は旋回油圧モータ21のBポートに供給され、旋回油圧モータ21を駆動して低圧となり、油圧ライン210Aを介してタンク280に戻される。旋回油圧モータ21が駆動されることにより旋回機構2が駆動され、上部旋回体3は旋回する。このときの旋回を左方向の旋回とする。すなわち、旋回油圧モータのBポートに油圧が供給されたときには、上部旋回体3は左方向に旋回する。
【0028】
コントロールバルブ17は、操作装置26から供給されるパイロット圧により操作される。操作装置26にはパイロットポンプ15から油圧が供給されており、この油圧を用いて操作装置26はコントロールバルブ17を操作するためのパイロット圧を生成する。
【0029】
すなわち、運転者が上部旋回体3を右旋回させるために操作装置26の旋回操作レバー26Aを右側に倒すと、操作装置26はコントロールバルブ17の右側の制御ポート17Aにパイロット圧を供給する。このパイロット圧によりコントロールバルブ17は操作され、油圧ライン210Aがメインポンプ14に接続され且つ油圧ライン210Bがタンク280に接続された状態となる。
【0030】
一方、運転者が上部旋回体3を左旋回させるために操作装置26の旋回操作レバー26Aを左側に倒すと、操作装置26はコントロールバルブ17の左側の制御ポート17Bにパイロット圧を供給する。このパイロット圧によりコントロールバルブ17は操作され、油圧ライン210Bがメインポンプ14に接続され且つ油圧ライン210Aがタンク280に接続された状態となる。
【0031】
以上説明した構成が、上部旋回体3を旋回させるための旋回油圧モータ21を駆動制御する旋回
制御装置200の構成であるが、本実施形態では上述の構成に加え、旋回油圧モータ21の減速時に生じるハンチング現象を抑制する構成が設けられている。
【0032】
ハンチング現象を抑制する構成は、油圧ライン210Aとタンク280とを接続する油圧ライン250Aと、油圧ライン210
Bとタンク280とを接続する油圧ライン250Bとを含む。油圧ライン250Aには開閉バルブ252A及び絞り254Aが設けられる。油圧ライン250Bには開閉バルブ252B及び絞り254Bが設けられる。
【0033】
開閉バルブ252A及び252Bは、コントローラ30からの信号により操作される。操作装置26から制御ポート17Aに供給されるパイロット圧を電気信号に変換するスイッチ256Aが、操作装置26とコントロールバルブ17の制御ポート17Aを接続するパイロットライン258Aに接続されている。また、操作装置26から制御ポート17Bに供給されるパイロット圧を電気信号に変換するスイッチ256Bが、操作装置26とコントロールバルブ17の制御ポート17Bを接続するパイロットライン258Bに接続されている。
【0034】
操作装置26からコントロールバルブ17の制御ポート17Aにパイロット圧が供給されると、スイッチ256Aがこれを検知し、検知信号(電気信号)をコントローラ30に供給する。コントローラ30は、スイッチ256Aから検知信号が供給されているときには、開閉バルブ252Aを閉じ、開閉バルブ252Bを開くように制御する。
【0035】
すなわち、運転者が上部旋回体3を右旋回させるために旋回操作レバー26Aを右側に倒すと、操作装置26はコントロールバルブ17の右側の制御ポート17Aにパイロット圧を供給するので、スイッチ256Aがコントローラ30に検知信号を送る。これにより、コントローラ30は開閉バルブ252Aを閉じ、開閉バルブ252Bを開くように制御する。このとき、開閉バルブ252Aが閉じられるので、コントロールバルブ17からの高圧の作動油は、油圧ライン250Aには流れず、油圧ライン210Aを通って旋回油圧
モータ21のAポートに供給される。Aポートに供給された作動油は旋回油圧
モータ21を駆動させて、Bポートから排出され、油圧ライン210Bを流れてタンク280に戻る。このとき、Bポートに接続された油圧ライン210Bは油圧ライン250Bに接続されており、開閉バルブ252Bが開いているので、Bポートから排出された作動油の一部は油圧ライン250Bを経由してタンク280に戻ることができる。
【0036】
以上のように、油圧ライン250Bと開閉バルブ252Bと絞り254Bとで、ハンチング低減回路が構成される。
【0037】
同様に、操作装置26からコントロールバルブ17の制御ポート17Bにパイロット圧が供給されると、スイッチ256Bがこれを検知し、検知信号(電気信号)をコントローラ30に供給する。コントローラ30は、スイッチ256Bから検知信号が供給されているときには、開閉バルブ252Bを閉じ、開閉バルブ252Aを開くように制御する。
【0038】
すなわち、運転者が上部旋回体3を左旋回させるために旋回操作レバー26Aを左側に倒すと、操作装置26はコントロールバルブ17の左側の制御ポート17Bにパイロット圧を供給するので、スイッチ256Bがコントローラ30に検知信号を送る。これにより、コントローラ30は開閉バルブ252Bを閉じ、開閉バルブ252Aを開くように制御する。このとき、開閉バルブ252Bが閉じられるので、コントロールバルブ17からの高圧の作動油は、油圧ライン250Bには流れず、油圧ライン210
Bを通って旋回油圧
モータ21のBポートに供給される。Bポートに供給された作動油は旋回油圧
モータ21を駆動させて、Aポートから排出され、油圧ライン210Aを流れてタンク280に戻る。このとき、Aポートに接続された油圧ライン210Aは油圧ライン250Aに接続されており、開閉バルブ252Aが開いているので、Aポートから排出された作動油の一部は油圧ライン250Aを経由してタンク280に戻ることができる。
【0039】
以上のように、油圧ライン250Aと開閉バルブ252Aと絞り254Aとで、ハンチング低減回路が構成される。
【0040】
以上のような構成の油圧回路を有する旋回制御装置200において、旋回操作レバー26Aが急激に中立位置に向けて戻されて、急激な旋回減速が行なわれたときの動作について説明する。
【0041】
まず、比較のために、旋回油圧モータ21の減速時に生じるハンチング現象を抑制する構成が設けられない場合について、
図4(a)を参照しながら説明する。
図4(a)は、上部旋回体3が旋回減速し停止したときの、旋回油圧モータ21における油圧の変化を示すタイムチャートである。
【0042】
時刻t1において旋回操作レバー26Aが右旋回方向に倒されると、旋回油圧モータ21のAポートへの油圧の供給が開始され、油圧ライン210A(Aポート)の油圧は上昇し始める。このときの旋回油圧モータ21のAポートは加速側油圧ポートとなる
。旋回操作レバー26Aの操作量は時刻t2において最大となり(旋回操作レバー26Aが右側に最大に倒された状態)、その後、最大操作量が維持される。このとき、旋回油圧モータ
21のAポートの油圧は時刻t1から上昇し始め時刻t2を過ぎてから一定の値となる。Aポートの油圧が一定となるのは、油圧ライン2
10Aの油圧が高圧リリーフバルブ2
30Aのリリーフ圧に達したためである。すなわち、旋回油圧モータのAポートに供給される油圧は、高圧リリーフバルブ2
30Aにより上限が決められている。
【0043】
時刻t1から旋回油圧モータ21のAポートに油圧が供給されるので、旋回油圧モータ21は油圧により駆動される。これにより上部旋回体3は右旋回を始める。旋回速度は時刻t2を過ぎて時刻t3まで上昇する。
【0044】
ここで、時刻t3において、運転者は所望の旋回速度に達したとして減速するために、旋回操作レバー26Aをハーフ位置に向けて戻す操作を行なっている。ここで、ハーフ位置とは最大操作量と中立位置との中間位置を示す。すると、油圧ライン210Aへの油圧の供給は停止され、旋回油圧モータ21のAポートの油圧は急激に減少してゼロになる。このとき、時刻t3においてAポートへの油圧供給が停止されても、旋回油圧モータ21は上部旋回体3の慣性力で回転するので、Aポートにおける油圧がメイクアップ油圧より低くなり、タンク280内の作動油と高圧リリーフバルブ230Bを通った作動油が、メイクアップ油圧ライン220とチェックバルブ240Aを介して油圧ライン210Aに流れ込み、Aポートに供給される。この作動油が旋回油圧モータ21のBポートから吐出されるため、Bポートにおける油圧は時刻t3から急激に上昇しはじめる。このときの旋回油圧モータ21のBポートは減速側油圧ポート(制動側油圧ポート)となる。このBポートにおける油圧の上昇により、旋回油圧モータ21によりブレーキがかかることとなり、上部旋回体3の加速は停止される。このとき、油圧ライン210Bは遮断されているので、旋回油圧モータ21のBポート及
び油圧ライン21
0B内の油圧は急激に上昇し、高圧リリーフバルブ230Bのリリーフ圧に到達する。ところが、上部旋回体3の急減速により運転者が操作している旋回操作レバー26Aの操作量が
図4(a)に示すように時刻t3と時刻t4の間で大きく変動するので、これに対応して旋回油圧モータ21のAポートでは時刻t3でゼロになった油圧が再び上昇、下降を繰り返す。また、旋回油圧モータ21のBポートの油圧も時刻t3
と時刻t4の間で大きく変動する。すなわち、Bポートにおける油圧は、時刻t3から急激に上昇して高圧リリーフバルブ2
30
Bのリリーフ圧に達した後、旋回操作レバー26Aの操作が加速方向に振れるので再び加速状態になり、急激に低下する。旋回操作レバー26Aがまた中立位置方向に操作されるので再び減速状態となり、Bポートの圧力は急激に上昇する。このBポートにおける油圧の変動により、上部旋回体3の旋回運動にハンチング現象として細かな衝撃又は振動が発生する。
【0045】
旋回操作レバー26Aの操作量の変動が時刻t4で無くなると、旋回油圧モータ21のAポートの油圧は、旋回操作レバー26Aの操作量(倒し量)により決まる油圧となり、その後、旋回油圧モータ21は等速回転となり、上部旋回体3は運転者の操作に応じた旋回速度で旋回を続ける。
【0046】
続いて、時刻t5において、運転者は旋回操作レバー26Aを再び右側に最大に倒すように操作を始めるため、旋回操作レバー26Aの操作量は再び増加し最大操作量となる。これにより旋回油圧モータ21のAポートに供給される油圧は増大し、高圧リリーフバルブ230Aのリリーフ圧に到達して、リリーフ圧に維持される。
【0047】
続いて、時刻t6において、運転者は上部旋回体3の旋回を停止するために、旋回操作レバー26Aを中立位置に戻し始める。すると、旋回油圧モータ21のAポートに供給されていた油圧は急激に低下し、その代わりにBポートの油圧が急激に上昇する。このBポートの油圧の急激な増大により、旋回油圧モータ21に大きなブレーキがかかり、上部旋回体3は急減速する。この上部旋回体3の急減速により、上述のハンチング現象が生じ、旋回油圧モータ21のBポート圧力が大きく変動するので、上部旋回体3に振動が発生する。
【0048】
以上のように、上部旋回体3を急減速すると、運転者の旋回操作レバー26Aの操作量が変動し、これに起因したハンチング現象により上部旋回体3に振動が発生する。本実施形態では、このハンチング現象を抑制するために、開閉バルブ252Aと絞り254Aを有する油圧ライン250Aが旋回油圧モータ21のAポートに油圧を供給するための油圧ライン210Aに接続され、開閉バルブ252Bと絞り254Bを有する油圧ライン250Bが旋回油圧モータ21のBポートに油圧を供給するための油圧ライン210Bに接続されている。
【0049】
図4(b)は、旋回制御装置200が設けられた場合において、
図4(a)に示す旋回操作レバー26Aの操作と同じ操作を運転者が行なった場合の、旋回油圧モータ21における油圧の変化を示すタイムチャートである。
【0050】
各時刻t1〜t6における動作、操作は
図4(a)に示す動作、操作と同じであるが、
図4(b)に示す例では、ハンチング現象の発生が抑制されている
。
【0051】
すなわち、時刻t3において旋回操作レバー26Aからコントロールバルブ17の制御ポート17Aに供給されるパイロット圧をスイッチ256Aが検知し、コントローラ30に検知信号を送る。検知信号を受けると、コントローラ30は開閉バルブ252Bを開くように制御する。これにより、旋回油圧モータ21のBポートから吐出される作動油は、油圧ライン2
50Bを通ってタンク280に流れるようになる。ただし、油圧ライン2
50Bの途中には絞り254Bが設けられており、所定の流路抵抗が得られるので、時刻t3以降に旋回油圧モータ21のBポートから吐出される作動油の油圧はある程度上昇する。この油圧が適度な制動力を発生させることとなり、旋回油圧モータ21で急激なブレーキがかかることはない。したがって、上部旋回体3の減速も過度に急激な減速とはならず、運転者の旋回操作レバー26Aの操作に影響を及ぼすような減速とはならないので、ハンチング現象の発生が抑制される。
【0052】
時刻t6における旋回停止時の旋回油圧モータ21のBポートにおける油圧の変化も、時刻t3以降のBポートにおける油圧の変化と同様である。一定速度の旋回状態から減速の旋回状態へ切替わる際に、パイロット圧の変化に対応して油圧ライン210を絞るようにコントロールバルブ17が制御されるとともに、コントローラ30は開閉バルブ252Bを開くように制御する。これにより、Bポートから吐出された作動油は絞り254Bを通過してタンク280に戻るため、Bポートにおける油圧は急激に上昇しない。時刻t6以降にBポートにおける油圧は適度に上昇し、その油圧が高圧リリーフバルブ230Bのリリーフ圧に到達すると、その油圧に維持される。その後、旋回油圧モータ21の回転速度が減少するとBポートでの油圧は低下し、上部旋回体3の旋回が停止すると油圧はゼロになる。以上のように時刻t6以降の旋回停止時においても急減速は生じず、運転者慣性力が旋回操作レバー26Aの操作に影響を及ぼすような減速とはならないので、ハンチング現象の発生が抑制される。このように、加速している旋回状態から一定速度の旋回状態へ切り替わる際、または、一定速度の旋回状態から減速の旋回状態で切替わる際に、パイロット圧の変化に対応して減速側の油圧ラインを絞るようにコントロールバルブ17が操作されるとともに、コントローラ30が減速側のハンチング低減回路を開くように制御することで、ハンチング現象の発生を抑制することができる。また、加速している旋回状態から減速の旋回状態へ切替わる際も、同様に制御される。
【0053】
次に、第2実施形態による旋回制御装置200Aについて、
図5を参照しながら説明する。
図5は第2実施形態による旋回制御装置200Aの油圧回路を示す図である。
【0054】
図5に示す旋回制御装置200Aの油圧回路の構成は、
図3に示す第1実施形態による旋回制御装置200における絞り254A,254Bがそれぞれ低圧リリーフバルブ260A,260Bに置き換えられたものである。したがって、
図5において
図3に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0055】
本実施形態では、例えば右旋回減速時に旋回油圧モータのBポートから吐出される作動油は、低圧リリーフ
バルブ260Bを介してタンク280に戻される。すなわち、減速時にBポートにおける油圧をある程度上昇させながらタンク280に戻す機能を、絞り254Bの代わりに低圧リリーフ
バルブ260Bで実現している。したがって、本実施形態では、油圧ライン250Bと開閉バルブ252Bと低圧リリーフ
バルブ260Bとで、ハンチング低減回路が構成される。同様に、油圧ライン250Aと開閉バルブ252Aと低圧リリーフ
バルブ260Aとで、ハンチング低減回路が構成される。
【0056】
図6は、旋回制御装置200Aが設けられた場合において、
図4(a)に示す旋回操作レバー26Aの操作と同じ操作を運転者が行なった場合の、旋回油圧モータ21における油圧の変化を示すタイムチャートである。
【0057】
各時刻t1〜t6における動作、操作は
図4(a)に示す動作、操作と同じであるが、
図6に示す例では、ハンチング現象の発生が抑制されている。時刻t3において上部旋回体3の急減速が行なわれると、旋回油圧モータ21のBポートの油圧は上昇するが、その上昇は、Bポートにおける油圧が低圧リリーフバルブ260Bのリリーフ圧を越えた時点からは、低圧のリリーフ圧で一定となっている。
【0058】
すなわち、時刻t3において開閉バルブ252Bが開いても、Bポートにおける油圧が低圧リリーフバルブ260Bのリリーフ圧になるまでは、作動油は油圧ライン250Bを介してタンク280には戻らず、Bポートにおける油圧(油圧ライン210B内の油圧)は急激に上昇する。しかし、Bポートにおける油圧(油圧ライン2
10B内の油圧)が低圧リリーフバルブ260Bのリリーフ圧となると、Bポートから吐出された作動油の一部は油圧ライン250Bを流れて低圧リリーフバルブ260Bを介してタンク280に戻ることができる。低圧リリーフバルブ260Bは、上述の絞り254Bと同様に所定の流路抵抗を有している。これにより、Bポートにおける油圧の上昇は抑制され、急激な減速が抑制され、ハンチング現象の発生が抑制される。
【0059】
時刻t6以降も、時刻t3以降と同様な旋回減速となり、Bポートにおける油圧の上昇は抑制され、急激な減速が抑制され、ハンチング現象の発生が抑制される。
【0060】
時刻t7で旋回操作レバー26Aが中立位置に戻されると、開閉バルブ252Bへの信号が供給されなくなるため、開閉バルブ252Bが閉じられる。これにより、低圧リリーフバルブ260Bには作動油が流れなくなり、Bポートにおける油圧に対する低圧リリーフ機能は働かなくなる。したがって、Bポートにおける油圧は、低圧リリーフ圧から上昇し、高圧リリーフ圧まで到達する。このように、旋回停止時に振動を抑制することができる。
【0061】
次に、第3実施形態による旋回制御装置200Bについて、
図7を参照しながら説明する。
図7は第3実施形態による旋回制御装置200Bの油圧回路を示す図である。
【0062】
図7に示す旋回制御装置200Bの油圧回路の構成は、
図5に示す第2実施形態による旋回制御装置200Aにおける低圧リリーフバルブ260A,260Bの機能と高圧リリーフバルブ230A,230Bの機能とをそれぞれ2段リリーフバルブ270A,270Bとして一つにまとめたものである。
図7において
図5に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0063】
本実施形態では、旋回油圧モータ21の駆動油圧回路にもともと備えられている高圧リリーフバルブ230A,230Bをそれぞれ2段リリーフバルブとすることで、例えば右旋回減速時のBポートにおける油圧の上昇
を抑制し、これにより上部旋回体3の急激な減速を抑制してハンチング現象の発生を抑制している。2段リリーフバルブ270A,270Bのリリーフ圧の切替えは、コントローラ30からの信号で行なわれる。例えば、
図8において、スイッチ256Aから検知信号がコントローラ30に供給されたら、Bポートにおける油圧が急激に上昇すると判断して、コントローラ30は時刻t1において2段リリーフバルブ270Bに対して切替信号を送り、リリーフ弁を高圧リリーフ圧からそれより低い例えば第2実施形態における低圧リリーフ
バルブと同様な低圧リリーフ圧でも働くように低圧リリーフをONとする。
図8の時刻t1で旋回操作レバー26Aが操作されると、減速側の2段リリーフバルブ270Bへ信号が供給され、低圧リリーフがON状態となる。したがって、Bポートにおける油圧が低圧リリーフ圧以上となると、作動油はメイクアップ油圧ライン220を通じてタンク280に戻される。これにより、
図8の時刻t3、t6において、操作者が旋回操作レバー26Aを中立位置やハーフ位置に向けて戻す操作を行なっても、ハンチング現象の発生を抑制することができる。
【0064】
図8の時刻t7で旋回操作レバー26Aが中立位置に戻されると、2段リリーフバルブ270Bへの信号が供給されなくなるので、低圧リリー
フ機能が働かなくなる。したがって、Bポートにおける油圧は、低圧リリーフ圧から上昇し、高圧リリーフ圧まで到達する。このように、旋回停止時に振動を抑制することができる。このときの旋回油圧モータ21のBポートにおける油圧の変化は、
図8に示すように、
図6に示す変化と同じとなる。
【0065】
以上のように、本実施形態では、2段リリーフバルブ270Aの低圧リリーフ機能とメイクアップ油圧ライン220とで、ハンチング低減回路が構成される。同様に、2段リリーフバルブ270Bの低圧リリーフ機能とメイクアップ油圧ライン220とで、ハンチング低減回路が構成される。
【0066】
以上の実施形態は全て、ショベルが平地に設置されており、旋回油圧モータ21にコントロールバルブ17から油圧が供給されていないときは、旋回油圧モータ21のAポート及びBポートには油圧が発生していないものとした。ここで、ショベルが傾斜地に設置されているような場合には、上部旋回体3の重心位置と旋回中心位置とが異なるような場合、上部旋回体3の重心が傾斜に沿って下降しようとする旋回力が働き、最初から旋回油圧モータ21のAポート又はBポートに油圧が発生していることがある。すなわち、ショベルが傾斜していることによって、上部旋回体3が重力のみで旋回しようとしていることがある。
【0067】
通常の制御であれば、旋回操作レバー26Aが中立位置にあるときには(すなわち、旋回操作されていない場合)、Aポートに接続された油圧ライン210A及びBポートに接続された油圧ライン210Bの両方が遮断された状態となっており、旋回油圧モータ21により両旋回方向にブレーキがかかっていることとなる。
【0068】
ショベルが傾斜
地に設置されている場合でも、旋回油圧モータ21により両旋回方向にブレーキがかかっており、上部旋回体3は旋回しないようになっている。ところが、上述の旋回制御装置が組み込まれたショベルが傾斜
地に設置されていて上部旋回体3に旋回力が発生しているときに、旋回操作レバー26Aが僅かに操作された場合には、上部旋回体3が運転者の意図に反して傾斜に沿って旋回してしまうおそれがある。
【0069】
具体的には、例えば
図3に示す旋回制御装置200が組み込まれたショベルが、上部旋回体3に右方向に旋回力が作用するような傾斜地に設置されている場合を考える。この場合、旋回操作レバー26Aが中立位置であって上部旋回体3が旋回操作されていないときは、傾斜に起因して上部旋回体3に加わっている旋回力により旋回油圧モータ21のBポートにおける油圧が上昇している。この状態において、
図9に示すように、旋回操作レバー26Aが僅かに右旋回方向に操作されてすぐに中立位置にもどされた場合、旋回油圧モータ21のAポートに油圧が供給されると同時に、油圧ライン210B及び油圧ライン250Bを介してBポートに接続されている開閉バルブ252Bが開くこととなる。開閉バルブ252Bが開くとBポートにおける油圧は減少していき、Aポートにおける油圧の上昇に伴ってAポートにおける油圧がBポートにおける油圧より大きくなると、上部旋回体3は右旋回を始める。
【0070】
ところが、上部旋回体3は右旋回を始めた後、旋回操作レバー26Aをハーフ位置に向けて戻す操作を行なうと、Aポートにおける油圧は減少するが、開閉バルブ252Bが開いたままなので、Bポート
にブレーキ圧を発生させることができない。このため、上部旋回体3の自重をささえることができず、旋回操作レバー26Aを中立位置に戻すまで上部旋回体3は傾斜に沿って右旋回してしまう。
【0071】
このような意図しない旋回を防止するため、傾斜地にショベルが設置されているときは、開閉バルブ252A,252Bを開かないように制御することが望ましい。例えば、旋回操作レバー26Aが操作されていないときに、スイッチ256A,256Bのいずれかから検知信号が出力されているときには、コントローラ30はショベルが傾斜地に設置されていると判断し、旋回操作レバー26Aが操作されたとしても、開閉バルブ252A,252Bを開かないように制御する。これにより、
図9に示すように、旋回油圧モータ21のBポートにおける油圧は、旋回操作レバー26Aが中立位置に戻されると再び上昇し、傾斜により旋回しないように旋回油圧モータ21によりブレーキがかけられた状態に戻すことができる。
【0072】
なお、ショベルが傾斜地に設置されているか否かは、ショベルに設けられた傾斜センサ32からの信号に基づいてコントローラ30により判断してもよい。すなわち、コントローラ30は、傾斜センサ32で検出した傾斜角度が所定の値より大きい場合には、旋回操作レバー26Aが操作されたとしても、開閉バルブ252A,252Bを開かないように制御する。また、傾斜度は傾斜センサ32だけではなく、旋回の油圧ライン210A,210Bに設けられた油圧センサの検出値によって検出してもよい。