特許第5872372号(P5872372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5872372-流動床反応炉及びその製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872372
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】流動床反応炉及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F23M 5/00 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   F23M5/00 C
   F23M5/00 H
   F23M5/00 J
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-99983(P2012-99983)
(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公開番号】特開2013-228137(P2013-228137A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】三津石 大貴
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−198096(JP,A)
【文献】 米国特許第05910290(US,A)
【文献】 特公平06−058168(JP,B2)
【文献】 特開2009−257695(JP,A)
【文献】 特開2011−106720(JP,A)
【文献】 特開2011−208165(JP,A)
【文献】 特開平10−100069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に供給された燃料及び空気と循環粒体とが上方に向けて流動しながら混合され、内部で燃料の燃焼が行われる燃焼室を備え、
前記燃焼室の底部は、下方に向かうにつれて縮径したテーパ形状を呈し、
前記底部の内壁面には、モース硬度が7以上の粒体で構成された保護層が形成されている、流動床反応炉。
【請求項2】
前記粒体の粒径は0.2mm〜0.4mmである、請求項1に記載の流動床反応炉。
【請求項3】
前記粒体は珪砂である、請求項1又は2に記載の流動床反応炉。
【請求項4】
前記粒体はアルミナ粉末である、請求項1又は2に記載の流動床反応炉。
【請求項5】
内部に供給された燃料及び空気と循環粒体とが上方に向けて流動しながら混合され、内部で燃料の燃焼が行われる燃焼室を備え、前記燃焼室の底部が下方に向かうにつれて縮径したテーパ形状を呈する流動床反応炉を製造する方法であって、
前記底部の内壁面に、モース硬度が7以上の粒体を衝突させることで、前記内壁面に保護層を形成する工程を含む、流動床反応炉の製造方法。
【請求項6】
前記保護層を形成する工程では、前記粒体を10m/s〜15m/sの速度で前記内壁面に衝突させる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記粒体の粒径は0.2mm〜0.4mmである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記粒体は珪砂である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粒体はアルミナ粉末である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床反応炉及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼室の底部から供給される燃料及び空気を、珪砂等の循環粒体と混合して流動床(流動層)を形成しながら、燃焼室内で燃料を燃焼させ、この燃焼反応により、燃焼室の壁内を流れる水と熱交換する流動床ボイラが知られている(特許文献1参照)。燃焼室内で発生した排ガスは循環粒体と共に火炉の上部から排出され、流動床反応炉に併設されたサイクロンに導入される。サイクロンでは、排ガスと循環粒体との分離が行われ、分離された循環粒体は燃焼室の底部に再び導入されて循環する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−106720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃焼室の上部から排出された循環粒体の大部分はサイクロンに導入されるが、その一部は、燃焼室の内壁面に沿って下方(火炉の底部)に向けて流下する。この際、循環粒体が燃焼室の内壁面を擦りながら流動して、燃焼室の内壁面が損耗し得る。通常、燃焼室の底部は下方に向かうにつれて縮径したテーパ形状を呈するため、循環粒体が当該底部に当たりやすく、当該底部において特に損耗が生じやすい。
【0005】
この損耗への対策として、特許文献1では、燃焼室の内壁面に溶射膜を形成している。しかしながら、流動床反応炉を長期間運転していると、循環粒体との接触によって溶射膜も損耗し得る。そのため、流動床反応炉のメンテナンス時に、溶射膜を形成しなおす作業や肉盛り溶接作業が発生し、追加的なコストが生ずる場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、燃焼室の内壁面を循環粒体による損耗から保護し、メンテナンス費用を抑制できる流動床反応炉及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流動床反応炉は、内部に供給された燃料及び空気と循環粒体とが上方に向けて流動しながら混合され、内部で燃料の燃焼が行われる燃焼室を備え、燃焼室の底部は、下方に向かうにつれて縮径したテーパ形状を呈し、底部の内壁面には、モース硬度が7以上の粒体で構成された保護層が形成されている。
【0008】
本発明に係る流動床反応炉では、モース硬度が7以上の粒体で構成された保護層が、燃焼室底部の内壁面に形成されている。燃焼室内を循環する循環粒体は主として珪砂であるので、珪砂と同等以上の硬さを有する粒体で保護層を構成することで、循環粒体による損耗から燃焼室の内壁面を効果的に保護できる。その結果、メンテナンス費用の抑制が実現される。
【0009】
粒体の粒径は0.2mm〜0.4mmでもよい。この場合、粒体の粒径は循環粒体の粒径と同等程度であるので、保護層から粒体が脱落し難くなる。またこの場合、燃焼室底部の内壁面に粒体を衝突させて保護層を形成する際に、当該内壁面に粒体が食い込んで付着し易くなる。
【0010】
粒体は珪砂又はアルミナ粉末でもよい。
【0011】
本発明に係る流動床反応炉の製造方法は、内部に供給された燃料及び空気と循環粒体とが上方に向けて流動しながら混合され、内部で燃料の燃焼が行われる燃焼室を備え、燃焼室の底部が下方に向かうにつれて縮径したテーパ形状を呈する流動床反応炉を製造する方法であって、底部の内壁面に、モース硬度が7以上の粒体を衝突させることで、内壁面に保護層を形成する工程を含む。
【0012】
本発明に係る流動床反応炉の製造方法では、燃焼炉底部の内壁面に、モース硬度が7以上の粒体を衝突させることで、当該内壁面に保護層を形成している。燃焼室内を循環する循環粒体は主として珪砂であるので、珪砂と同等以上の硬さを有する粒体で保護層を構成することで、循環粒体による損耗から燃焼室の内壁面を効果的に保護できる。その結果、メンテナンス費用の抑制が実現される。
【0013】
保護層を形成する工程では、粒体を10m/s〜15m/sの速度で内壁面に衝突させてもよい。この場合、燃焼室底部の内壁面に粒体が食い込んで付着し易くなる。
【0014】
粒体の粒径は0.2mm〜0.4mmでもよい。この場合、粒体の粒径は循環粒体の粒径と同等程度であるので、保護層から粒体が脱落し難くなる。またこの場合、燃焼室底部の内壁面に粒体を衝突させて保護層を形成する際に、当該内壁面に粒体が食い込んで付着し易くなる。
【0015】
粒体は珪砂又はアルミナ粉末でもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、流動床反応炉及びその製造方法において、燃焼室の内壁面を循環粒体による損耗から保護し、メンテナンス費用を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係る流動床反応炉とサイクロンとを示す図である。
図2図2は、燃焼室の底部近傍を示す断面図である。
図3図3は、燃焼室の底部近傍を内側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態に係る流動床反応炉1について、図1図3を参照して説明する。流動床反応炉1は、循環流動床(CFB:Circulating Fluidized Bed)ボイラとも呼ばれる。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
図1及び図2に示されるように、流動床反応炉(火炉)1は、内部が中空の管状部材である。流動床反応炉1の上下端はそれぞれ閉塞されている。流動床反応炉1の内部は、燃料の燃焼が行われる燃焼室10とされる。
【0020】
燃焼室10は、下方に向かうにつれて縮径したテーパ形状を呈する底部12と、底部12の上端と連なると共に略同一径で鉛直方向に延びる上部14とを有する。底部12の側壁には、流動床反応炉1に併設されたサイクロン100と連通する開口16が形成されている。底部12の底壁には、燃焼空気を燃焼室10内に供給するための開口(図示せず)が複数形成されている。上部14の側壁には、サイクロン100と連通する連通流路18が設けられている。
【0021】
燃焼室10内には、主として珪砂が充填されている。珪砂は燃焼室10内において下方から上方に向けて流動し、排ガスを随伴しながら連通流路18を介してサイクロン100内に導入される。サイクロン100内では、排ガスと珪砂との分離が行われる。排ガスから分離された珪砂は、サイクロン100の下部から開口16を介して燃焼室10の下部に至る。本実施形態において、珪砂は循環粒体として機能し、サイクロン100は固気分離器として機能する。
【0022】
燃焼室10内では、底部12の底壁から燃焼空気が供給され、燃焼室10の下部から燃料(固形物)が供給されると、燃焼空気により燃料を含む固形物が循環粒体と共に上方に向けて流動しながら燃焼する。
【0023】
燃焼室10を構成する炉壁20は、図3に示されるように、炉壁20の周方向(図の左右方向)に並設した水壁チューブ(炉壁管)22同士を平板状のフィン24で連結した所謂メンブレンパネルで構成されている。この水壁チューブ22は、燃焼室10内での燃焼反応による熱を、当該水壁チューブ22内に流れる水と熱交換する。
【0024】
本実施形態において、燃焼室10の底部12における内壁面には、モース硬度が7以上の粒体で構成された保護層26が形成されている。モース硬度が7以上の粒体としては、例えば、珪砂又はアルミナ粉末などが挙げられる。特に、保護層26が珪砂で構成されていると、保護層26の粒体と循環粒体とが共に同じ物質(珪砂)となるので、保護層26がより損耗し難い。
【0025】
保護層26は、燃焼室10の底部12の内壁面に、モース硬度が7以上の粒体を衝突させることで形成される。この際、粒体を10m/s〜15m/sの速度で当該内壁面に衝突させてもよい。この場合、燃焼室10の底部12の内壁面に粒体が食い込んで付着し易くなる。サンドブラスト等を用いて粒体を当該内壁面に衝突させてもよいし、流動床反応炉1の運転中に循環粒体(珪砂)を燃焼室10内で流動させることで循環粒体を当該内壁面に衝突させてもよい。「流動床反応炉1の運転中」とは、初運転時、運転継続中、又は燃焼室10内に循環粒体が存在するが燃料等が存在しない空焚き運転中などを含む。
【0026】
粒体の粒径は0.2mm〜0.4mmでもよい。この場合、粒体の粒径は循環粒体の粒径と同等程度であるので、保護層26から粒体が脱落し難くなる。またこの場合、燃焼室10の底部12の内壁面に粒体を衝突させて保護層26を形成する際に、当該内壁面に粒体が食い込んで付着し易くなる。
【0027】
以上のような本実施形態では、モース硬度が7以上の粒体で構成された保護層26が、燃焼室10の底部12の内壁面に形成されている。燃焼室10内を循環する循環粒体は主として珪砂であるので、珪砂と同等以上の硬さを有する粒体で保護層26を構成することで、循環粒体による損耗から燃焼室10の内壁面を効果的に保護できる。その結果、メンテナンス費用の抑制が実現される。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、燃焼室10の底部12の内壁面全面に保護層26を形成してもよいし、燃焼室10の上部14の内壁面全面に保護層26を形成してもよい。経験上、燃焼室の内壁面のうち損耗が著しいと分かっている箇所にのみ保護層26を形成してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…流動床反応炉、10…燃焼室、12…底部、20…炉壁、26…保護層。
図1
図2
図3