(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、金属管の一部を置換して強度を確保するためのFRP製樹脂管は剛性が高く変形しにくいだけでなく熱収縮性も有するため、特許文献1に記載の製造方法のように内面側の樹脂管の膨張を利用して管状複合素材を製造することはその製造上得策とはいえない。特に、前記製造方法は大型の管状複合素材を製造する際に用いることは困難である。
【0007】
又、仮に樹脂管の膨張に関する問題を解消したとしても、前記製造方法において金属管に樹脂管を機械的に挿入する際には、まず、金属管の内周面の真直度を制御した上に内径をホーニングする必要がある。同時に樹脂管の外面の真直度を制御した上で、外径精度を高める必要がある。そして、両者の曲がり方向を一致させた上で金属管に樹脂管を圧入しなければならない。
更にこれだけ手間をかけても、圧入途中で樹脂管が途中で引っかかり、圧入加工ができなくなるなどの問題が残る。
【0008】
一方、圧入加工の問題が生じにくいと考えられる特許文献2に記載の製造方法では、FRPを巻いたマンドレル心棒を加熱膨張させている。この製造方法は心棒の素材として熱膨張係数の大きいアルミニウムを用いても心棒の膨張量が小さく必要な膨張量に達しないため、金属とFRPとの均質な密着が得られ難いという問題がある。又、大型の管状複合素材を製作するには、心棒の体積が大きくなるだけでなく、加熱設備等も大型の物が必要となるため製造費用がかさむという問題もある。
【0009】
そして、前記製造方法により得られる複合素材管は、製造時の加熱により複合素材管の加工精度が低下し、加熱むらによって金属管とFRP管との接合強度が低下する等の問題を有していた。
【0010】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、一般的に入手可能な熱膨張率が小さい若しくは熱膨張率が負の樹脂で作製されたFRP管を用いて、外周側の金属管の内周面に高度な内径精度を得るためのホーミング加工等を施すことなく、金属管とFRP管を全長に亘り均質に接合させた長尺の接合長さにすることができる積層複合管の製造方法、及び、これにより得られる積層複合管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る積層複合管の製造方法は、金属からなる金属外管と、前記金属外管の内側に同軸となるように設置した繊維強化樹脂からなる樹脂内管と、からなる積層複合管の製造方法において、口付工程と、挿入(塗布)工程と、抽伸工程と、をこの順に行うものである。
【0012】
係る手順により積層複合管の製造方法では、口付工程により前記金属外管の一端を所定径に絞って口付部を設けて、抽伸工程における引抜加工の際の握持部分を設ける。そして、当該製造方法では、挿入工程により金属外管に金属外管の内径以下の外径を有する樹脂内管を圧入せずに前記口付部を設けた金属外管の前記口付部の他方の開放端側から樹脂内管を挿入して前記口付部により金属外管から樹脂内管が突出及び脱落することを防止しつつ前記金属外管と前記樹脂内管を重ね合せる。更に当該製造方法では、抽伸工程により前記樹脂内管が挿入された前記金属外管をソリッドダイスを介して引き抜くことで前記金属外管の内径を前記樹脂内管の外径以下に縮径させて前記金属外管と前記樹脂内管を同軸上に密着して積層一体化させる。
【0015】
又、本発明に係る積層複合管の製造方法は、前記挿入工程において回転軸に対して平行な当接面若しくは回転軸に対して傾斜した当接面を有する回転送りローラを樹脂内管に当接させて、前記樹脂内管をその中心軸を回転軸として回転させることで、前記回転送りローラを介して前記金属外管に向けて押し出しながら前記金属外管の開放端側から挿入
する。
【0016】
係る手順により積層複合管の製造方法では、前記樹脂内管をその中心軸を回転軸として回転させながら金属外管に挿入することで、金属外管と樹脂内管とを同軸に保ちつつ回転させずに挿入するよりも速く挿入することを可能とする。
【0017】
又、本発明に係る積層複合管の製造方法は、前記挿入工程において回転軸に対して平行な当接面若しくは回転軸に対して傾斜した当接面を有する回転送りローラを樹脂内管に当接させて、前記樹脂内管を前記金属外管に向けて押し出すことで、前記回転送りローラを介して前記樹脂内管をその中心軸を回転軸として回転させながら前記金属外管の開放端側から挿入しても、同様に金属外管と樹脂内管とを同軸に保ちつつ回転させずに挿入するよりも速く挿入することを可能
とする。
【0018】
又、本発明に係る積層複合管の製造方法は、前記挿入工程において回転軸に対して平行な当接面若しくは回転軸に対して傾斜した当接面を有する回転送りローラを樹脂内管に当接させて、前記回転送りローラをその中心軸を回転軸として回転させることで前記樹脂内管をその中心軸を回転軸として回転させると共に、前記金属外管に向けて移動させることで、前記金属外管の開放端側から挿入しても、同様に金属外管と樹脂内管とを同軸に保ちつつ回転させずに挿入するよりも速く挿入することを可能
とする。
【0019】
そして、本発明に係る積層複合管の製造方法は、前記挿入工程において前記樹脂内管の外面に接着用樹脂を塗布しながら前記樹脂内管を前記金属外管の開放端側から挿入
する。
【0020】
係る手順により積層複合管の製造方法では、前記金属外管と前記樹脂内管との間に前記接着用樹脂による樹脂層を設けることで前記金属外管と前記樹脂内管とを前記金属外管の縮径による前記金属外管の内周面と前記樹脂内管の外周面との摩擦力に加えて前記樹脂によっても接合する。
【0021】
係る手順により積層複合管の製造方法では、前記樹脂内管をその中心軸を回転軸として回転させながら前記樹脂内管の外周面全面に前記接着用樹脂を塗布し、前記接着用樹脂を塗布した樹脂内管を金属外管に挿入することで、前記金属外管と前記樹脂内管との間に隙間なく前記接着用樹脂による樹脂層を確実に設けることを可能とする。
【0022】
更に、本発明に係る積層複合管の製造方法は、前記挿入工程において前記樹脂内管を前記金属外管に挿入する挿入経路上に設置された容器により円筒状に保持された接着用樹脂を貫通することにより前記樹脂内管の外周面に前記接着用樹脂を塗布しつつ前記金属外管の開放端側から挿入
する。
【0023】
係る手順により積層複合管の製造方法では、樹脂内管を金属外管に挿入する手前で円筒状に保持された接着用樹脂を貫通することで外周面への前記接着用樹脂の塗布を効率的に行っている。
【0024】
係る手順により積層複合管の製造方法では、中心軸を回転軸として回転する樹脂内管が当接面が回転送りローラに当接することにより、前記樹脂内管の回転と前記樹脂内管の中心軸方向への押し出し(移動)との両方を同時に簡易、簡単、効率的かつ効果的に行うことができる。そして、当該製造方法では、金属外管に挿入する手前で樹脂内管が回転しながら、円筒状に保持された接着用樹脂を貫通することで外周面への前記接着用樹脂の塗布を効率的に行っている。
【0025】
係る手順により積層複合管の製造方法では、直線方向に送られる樹脂内管が回転送りローラに当接することにより、前記樹脂内管の回転と前記樹脂内管の中心軸方向への押し出し(移動)との両方を同時に簡易、簡単、効率的かつ効果的に行うことができる。そして、当該製造方法では、金属外管に挿入する手前で樹脂内管が回転しながら、円筒状に保持された接着用樹脂を貫通することで外周面への前記接着用樹脂の塗布を効率的に行っている。
【0026】
係る手順により積層複合管の製造方法では、回転送りローラに樹脂内管が当接した状態で回転送りローラを回転させることにより前記樹脂内管の回転と前記樹脂内管の中心軸方向への移動との両方を同時に簡易、簡単、効率的かつ効果的に行うことができる。そして、当該製造方法では、金属外管に挿入する手前で樹脂内管が回転しながら、円筒状に保持された接着用樹脂を貫通することで外周面への前記接着用樹脂の塗布を効率的に行っている。
本発明に係る積層複合管の製造方法は、前記抽伸工程において前記金属外管の内径を前記樹脂内管の外径に対して0%以上0.5%以下の範囲になるように縮径させても構わない。
係る手順により積層複合管の製造方法では、抽伸工程において前記金属外管と前記樹脂内管との間に隙間を作らず確実に前記金属外管と前記樹脂内管とを密着させて積層一体化した積層複合管とすることを可能とすると共に、積層一体化させた前記積層複合管における前記金属外管と前記樹脂内管の接合強度を向上させる。
【0027】
本発明に係る積層複合管は、請求項1ないし請求項
6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された積層複合管であって、前記金属からなる金属外管と、前記金属外管の内側に同軸となるように設置した繊維強化樹脂からなる樹脂内管と、からなる積層複合管において、
前記金属外管の内周面の断面形状が多角形であると共に、前記樹脂内管の外周面の断面形状が前記金属外管の内周面の断面形状に対応する多角形としても構わない。
係る構成により積層複合管は、金属外管及び樹脂内管の接合力が増加する点と共に、滑り止めとなる部位(辺)が存在することで金属外管及び樹脂内管が相互に力を伝達しやすくなり、積層複合管を管状回転部材に使用した場合にトルクが確実に金属外管及び樹脂内管相互に伝達可能となる。
本発明に係る積層複合管は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された積層複合管であって、前記金属からなる金属外管と、前記金属外管の内側に同軸となるように設置した繊維強化樹脂からなる樹脂内管と、からなる積層複合管において、前記金属外管の内周面及び前記樹脂内管の外周面の断面形状が嵌合部を有する形状としても構わない。
係る構成により積層複合管は、積層複合管の周方向へ力を伝達することが容易となる。
【0028】
本発明に係る積層複合管は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された積層複合管であって、前記金属外管がアルミニウム、銅、チタン、ステンレス、黄銅のいずれかにより形成されても構わない。
係る構成により積層複合管は、一般的な鉄により製造されるよりも軽量化されると同時に積層複合管の外周面に現れるアルミニウム等が有する高度な表面処理特性と繊維強化樹脂(FRP)管が有する強度とを兼ね備える。
【0029】
本発明に係る積層複合管は、請求項1ないし請求項
6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された積層複合管であって、前記樹脂内管が1層又は2層以上からなる炭素繊維強化樹脂管(CFRP管)としてもよい。
【0030】
係る構成により積層複合管は、一般的な繊維強化樹脂(FRP)を用いた積層複合管以上の更なる高剛性、高強度、及び低回転慣性モーメント特性を備える。
【0031】
本発明に係る積層複合管は、請求項1ないし請求項
6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された積層複合管であって、前記金属外管と前記樹脂内管の間に樹脂層を有しても構わない。
【0032】
係る構成により積層複合管は、前記金属外管と前記樹脂内管との間に設けた前記樹脂層により、前記金属外管と前記樹脂内管とがより強固に密着する。
【0033】
本発明に係る積層複合管は、請求項1ないし請求項
6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された積層複合管であって、前記金属外管と前記樹脂内管の間の樹脂層が電気伝導性樹脂であっても構わない。
【0034】
係る構成により積層複合管は、前記金属外管と前記樹脂内管との間に設けた前記樹脂層が電気伝導性を有することで、前記金属外管と前記樹脂内管との相互の電気伝導性を改善する。
【0037】
本発明に係る積層複合管は、請求項1ないし請求項
6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された積層複合管であって、前記金属外管の端部に電極部を設けてもよい。
【0038】
係る構成により積層複合管は、金属外管の端部に設けた電極部を使用して金属外管の表面処理を容易かつ確実に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、一般的に入手可能な熱膨張率が小さい若しくは熱膨張率が負の樹脂で作製されたFRP管を用いて、外周側の金属管の内周面に高度な内径精度を得るためのホーミング加工等を施すことなく、金属管とFRP管を全長に亘り均質に接合させた長尺の接合長さにすることができる積層複合管の製造方法、及び、積層複合管が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係る積層複合管及びその製造方法を本発明の実施の形態に基づいて図面を参照して詳細に説明する。始めに積層複合管の構成について説明し、次に積層複合管の製造方法について説明する。
【0042】
[積層複合管]
積層複合管は、大型印刷機の転写ロール、紙送りロール等種々のロールをはじめとして長尺及び大直径の高速回転をする部材に用いるものである。
図6(a)に示すように、積層複合管1は金属からなる金属外管11と繊維強化樹脂からなる樹脂内管12とがそれぞれの中心軸を同軸となるように接合して一体化した管状体のことである。この積層複合管1は、
図6(b)に示すように、金属外管11と樹脂内管12との間に接着用樹脂からなる樹脂層13を有していてもよい。
【0043】
<金属外管>
金属外管11は、金属からなる管状体である。金属外管11の外周面は、
図6(a)に示すように、積層複合管1を形成している。以下、その材質及び形状等について説明する。
【0044】
(材質)
金属外管11の材質は、後記する抽伸工程S104において冷間引抜加工を施すことが可能である限り、特に制限はない。金属外管11の材質及び成分組成は積層複合管1を使用する際の条件及び環境、加工条件に応じて適宜選択をすることが可能である。
【0045】
金属外管11の材質としては、アルミニウム(合金)、銅(合金)、チタン(合金)、ステンレス、黄銅(真鍮)が好ましい。これにより、前記金属が有する物性、及び、特徴を生かした積層複合管1を製造することが可能となる。
又、前記金属の成分は目的の条件に合い抽伸工程S104において冷間引抜加工を施すことが可能であればよい。金属外管11に使用可能な前記金属(合金)の成分の例としては、JIS H 4080、JIS H 3300、JIS H 4630、JIS G 3468、JIS G 3459、JIS C 2700T等が挙げられる。
【0046】
その中でも、金属外管11の材質はアルミニウム(アルミニウム合金を含む。以下同様。)とするのがより好ましい。アルミニウムは延性に優れており、後記する抽伸工程S104において冷間引抜加工を容易に行うことが可能となる。又、アルミニウムの密度は鉄の約1/3であることから、積層複合管1の軽量化を図ることが可能となる。これにより、積層複合管1に低回転慣性モーメント特性を付与することが可能となる。更に、アルミニウムが有する表面処理特性、高剛性を積層複合管1に付与することが可能となる。
本実施形態において用いられるアルミニウム合金の種類としては、例えば、JIS A 1050、JIS A 3003、JIS A 5052、JIS A 5056、JIS A 6061、JIS A 6063等が挙げられる。又、金属外管11は、印刷機に使用されるロール基材、高速、低モーメント特性が要求される回転体や高弾性を必要とする構造支持体に使用される場合には、JIS A5052、JIS A 5056、JIS A 6N01等が使用される。
【0047】
(形状)
金属外管11の形状は、
図6(a)に示すように、中心軸に対して垂直な断面(内周面)の形状が円形の管状とするのが好ましい。これにより、金属外管11を均一に縮径することで樹脂内管12を均一に締めることが可能となり、金属外管11及び樹脂内管12の中心軸を同軸とすることが容易になる。又、金属外管11及び樹脂内管12の中心軸が同軸となることで、積層複合管1を回転体に用いた場合にその中心軸を回転軸とした回転がより安定する。更に、後記する挿入塗布工程S102において、金属外管11の内面形状に対応する外形を有する樹脂内管12の外面に接着用樹脂31を塗布する際に樹脂内管12を回転させやすくなる。
【0048】
次に、積層複合管1の金属外管11の外径は、抽伸工程において行う冷間引抜加工を考慮して、積層複合管1の仕上がり直径の103%以上とするのが好ましい。
【0049】
又、金属外管11の内径は、後記する挿入塗布工程S102(挿入工程S102a)における樹脂内管12の金属外管11への挿入のしやすさ、後記する抽伸工程S104における冷間引抜加工(絞り加工)の際の締め代、及び、前記締め代により制御される金属外管11及び樹脂内管12の圧着率との関連性から決められる。
即ち、金属外管11の内径は、樹脂内管12が挿入可能であるように、樹脂内管12の外径の102%以上110%以下、若しくは、樹脂内管12の外径より3mm以上10mm以下の範囲で大きくするのが好ましい。金属外管11の内径が樹脂内管12の外径の102%未満、若しくは、樹脂内管12の外径より3mm未満の場合は、樹脂内管12の金属外管11への挿入が困難となる。一方、金属外管11の内径が樹脂内管12の外径の110%、若しくは、樹脂内管12の外径より10mmを超えた場合は、金属外管11と樹脂内管12とを密着させるに必要な作業工程数が多くなる。このため、製造コストが増加する。
【0050】
金属外管11の肉厚は、樹脂内管12の肉厚の1/10以上1/2以下とするのが好ましい。金属外管11の肉厚が樹脂内管12の肉厚の1/10未満であると、積層複合管1の外周面に切削加工を施した場合に外周面に裂け等が生じるおそれがある。又、金属外管11の肉厚が樹脂内管12の肉厚の1/2を超えると、軽量化、低回転モーメント化の効果が薄れてくる。
【0051】
(表面粗さ)
金属外管11の内周面の表面粗さは、金属外管11の内周面と樹脂内管12の外周面の接触面積を拡大させて表面摩擦を増大させることで積層複合管1の接合強度を向上させるために重要な要素である。
金属外管11の内周面の表面粗さは、Ra(算術平均粗さ、以下同様)で0.2以上3.0以下とするのが好ましい。金属外管11の内周面の表面粗さRaが0.2未満である場合には、樹脂内管12の外周面の表面粗さと樹脂内管12の外周径にも依るが、金属外管11の耐力をσ、樹脂内管の外径をd、積層複合管の長さをLとすると(以下同様)、積層複合管1の回転トルクが、σπd
2L以上かかることで金属外管11と樹脂内管12が分離しやすくなる。一方、Raが3.0を超えると金属外管の内面粗度を確保するための作業工程数が多くなる。このため、製造コストが増加する。
【0052】
なお、前記範囲を満たすように作製された金属外管11を使用するだけでなく、前記範囲を満たすように一般に入手可能な金属管の内周面をやすり等で加工を行った金属外管11を使用してもよい。
【0053】
<樹脂内管>
樹脂内管12は、繊維強化樹脂(FRP)からなる管状体である。樹脂内管12の内周面は、積層複合管1の内周面を形成する。
樹脂内管12は、それ自体が有する優れた剛性により金属外管11の剛性を補強することで、積層複合管1全体の剛性を向上させつつ寸法精度も高めた長尺の積層複合管1の作製を可能にする。同時に低密度である樹脂内管12が積層複合管1のある一定体積を占めることで、金属外管11の割合を減少させて積層複合管1の軽量化を可能とする。
以下、その材質及び形状等について説明する。
【0054】
(材質)
樹脂内管12の材質はここでは、繊維強化樹脂(FRP)が使用される。前記繊維強化樹脂(FRP)を構成する樹脂の種類は一般的に入手可能なものであれば、その種類は問わない。前記樹脂は熱膨張性を有していても熱収縮性を有していてもよく、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂が好ましい。
【0055】
樹脂内管12の材質は積層複合管1の強度及び主たる使用目的である大型回転体への使用を考慮して繊維強化樹脂(FRP)の中でも炭素繊維強化樹脂(CFRP)とするのが好ましい。炭素繊維強化樹脂構成する繊維は、PAN系、又は、ピッチ系の両方が使用可能である。PAN系の方が安価で、品質が安定しており、入手しやすいという利点を有する。
樹脂内管12の材質を炭素繊維強化樹脂とすることにより、一般的な繊維強化樹脂を使用することにより得られる強度以上の強度を備えることが可能となる。
【0056】
図6(a)〜(c)に示すように、樹脂内管12又は12aの樹脂の積層数は1層以上とする。樹脂管の機械的強度の方向性を緩和する観点から積層数は、3層以上がより好ましい。
【0057】
(形状)
樹脂内管12の形状は、
図6(a)に示すように、その中心軸に対して垂直な断面における形状が円形である円筒形とするのが好ましい。これにより、後記する挿入塗布工程S102において樹脂内管12を回転させつつ、樹脂内管12の外面に接着用樹脂31を塗布しやすくなる。
【0058】
積層複合管1の仕上がり時の樹脂内管12の外径を考慮して、樹脂内管12の外径は仕上がり時の樹脂内管12の外径とほぼ同程度とするのが好ましい。
【0059】
樹脂内管12の肉厚は、積層複合管1の仕上がり肉厚の50%以上95%以下、並びに、金属外管11の200%以上とするのが好ましい。樹脂内管12の肉厚は、積層複合管1の仕上がり肉厚の50%以上90%以下、並びに、金属外管11の200%以上とするのがより好ましい。樹脂内管12の肉厚は、積層複合管1の仕上がり肉厚の95%を超えると、積層複合管1の外周面に切削加工を施した場合に外周面に裂け等が生じるおそれがある。
【0060】
(表面粗さ)
樹脂内管12の外周面の表面粗さは、金属外管11の内周面と樹脂内管12の外周面の接触面積を拡大させて積層複合管1の接合強度を向上させるために重要である。
樹脂内管12の外周面の表面粗さは、Ra(算術平均粗さ)で0.2以上3.0以下とするのが好ましい。樹脂内管12の外周面の表面粗さRaが0.2未満である場合には、金属外管11の内周面の表面粗さと金属外管11の内径にも依るが、積層複合管1にσπd
2L以上の回転トルクがかかることで金属外管11と樹脂内管12が分離しやすくなる。一方、樹脂内管12の外周面の表面粗さRaが3.0を超えると、樹脂内管の外面粗度を確保するための作業工程が多くなる。このため、製造コストが増加する。
【0061】
<樹脂層>
図6(b)に示すように、樹脂層13は金属外管11の内周面と樹脂内管12の外周面とを接着して積層複合管1の接合強度を向上させることを可能にする。これにより、積層複合管1を管状回転部材に用いた際に、金属外管11と樹脂内管12の分離をより防止することが可能となる。
【0062】
(樹脂)
樹脂層13を形成する樹脂(接着用樹脂31)は、後記する抽伸工程S104が終了した後に硬化を開始する遅硬性の樹脂とするのが好ましい。これにより、抽伸工程前に接着用樹脂31が硬化することによって樹脂内管12を挿入できないため、積層複合管1が製造できなくなることを防止できる。
例えば、接着用樹脂31としては、硬化開始まで20分以上あるエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。具体的には、熱硬化型エポキシ系樹脂、その中でも、本実施形態においては接着強度の点から弾性エポキシ系樹脂が好ましい。
【0063】
(厚さ)
樹脂層13の厚さは0.01mm以上10mm以下とするのが好ましい。これにより、金属外管11と樹脂内管12とをより強固に接合すると共に、一般的な機械の構造体に使用しても金属外管11と樹脂内管12とが分離し難い。樹脂層13の厚さが0.01mm未満であると接着強度の点から金属外管11と樹脂内管12との間に樹脂層を設ける意義を有さない。一方、樹脂層13の厚さが10mmを超えると、樹脂内管と金属外管を同軸上に配置させるのが困難となる。
【0064】
<張力>
積層複合管1は金属外管11の内周面で樹脂内管12の外周面を同一か若しくは僅かに締めて積層複合化をしたものである。この積層複合化を確実なものとするため、樹脂内管12の外周面に対する金属外管11の内周面の張力は重要である。
樹脂内管12の外周面に対する金属外管11の内周面の張力は、金属外管の耐力強度と同じとなるため、用途に合わせて、金属外管の材質、調質を選定する必要がある。
【0065】
次に、本実施形態において後記する挿入塗布工程S102にて樹脂内管12の外面に接着用樹脂31を塗布しつつ金属外管11に挿入する際に、後記抽伸装置60と併せて用いることが好ましい挿入装置50について説明する。この挿入装置50は挿入工程S102aにて樹脂内管12を金属外管11に挿入する際にも当然使用可能である。
【0066】
[挿入装置]
図1(a)及び
図2に示すように、樹脂内管12の金属外管11への挿入、及び、樹脂内管12に接着用樹脂31を塗布する際に用いることが好ましい挿入装置50は、金属外管11を固定する固定部50Aと樹脂内管12を移動させる移動部50Bとからなる。前記移動部50Bは、
図1ないし
図4に示す様に、中心軸を回転軸として回転する樹脂内管12をその中心軸と平行に金属外管11方向へ移動させる(押し出す)回転送りローラ51、中心軸を回転軸として回転する樹脂内管12を側面で支持しながら回転する回転ローラ52、及び、回転ローラ52を上部に備える台車54を備える。固定部50Aは回転ローラ53を備え、回転ローラ53は回転しながら金属外管11に挿入される樹脂内管12が金属外管11に接触することにより中心軸を回転軸として回転する金属外管11を側面で支持する。
【0067】
回転送りローラ51は、金属外管11の中心軸及び樹脂内管12の中心軸に対して所定の角度を保つように上下左右の位置が調整されて設置されている。回転ローラ52、及び、回転ローラ53は金属外管11の中心軸と樹脂内管12の中心軸が略一致する様に上下左右の位置が調整されて設置されている。又、回転送りローラ51、回転ローラ52、及び、回転ローラ53の金属外管11に対する設置順序に特に制限はないが、
図2に示すように、金属外管11の口付部21側から、回転ローラ53、回転ローラ53、回転送りローラ51、回転ローラ52の順に設置されるのが好ましい。
そして、回転送りローラ51は、挿入装置50の固定部の回転ローラ53に支持された金属外管11の開放端22側と対面すると共に、後記する挿入塗布工程S102にて塗布装置55を使用した接着用樹脂31の塗布に支障が生じない位置、具体的には塗布装置55に接触しない位置に設置されるのが好ましい。
【0068】
(回転送りローラ)
回転送りローラ51の作用は、大きく分けて3つある。まず、回転力の一部を押し出し力に変換する作用について、以下説明する。
回転送りローラ51は、円柱(図示せず)、円錐(図示せず)、又は、
図3(a)、
図3(b)に示すように、円錐台状であってその中心軸を回転軸として回転可能である。回転送りローラ51は、
図3(a)、
図3(b)に示すようにその側面(傾斜面)を当接面として、樹脂内管12をその外周面において支持する。又、回転送りローラ51はその回転軸が樹脂内管12の挿入方向(樹脂内管12の中心軸)に対して所定の角度を保つように設置される。そして、回転送りローラ51は2個で1組として所定の間隔を有するように設置されるのが好ましい。この所定の間隔とは回転送りローラ51の当接斜面により樹脂内管12の下方の側面から挟持する様に支持することが可能となる間隔である。加えて、円錐状若しくは円錐台状である場合の(1組の)回転送りローラ51の向きは、
図3(a)に示すように、互いに逆方向を向くのが好ましい。これにより、樹脂内管12を安定して挟持することが可能となる。なお、1組の回転送りローラ51は互いに当接していてもその機能を発揮する限り問題ない。
【0069】
更に、回転送りローラ51はその回転軸が樹脂内管12の挿入方向(樹脂内管12の中心軸)に対して所定の角度を保つように設置されることで、回転送りローラ51は樹脂内管12の中心軸を回転軸とした回転力の一部を前記所定の角度に比例して前記樹脂内管12の中心軸と略同一方向への移動力に変換する。
このように、回転送りローラ51は樹脂内管12を金属外管11へ挿入する際の抵抗を軽減させるため、及び、後記する樹脂内管12の外周面への接着用樹脂の塗布を行いやすくするため回転する樹脂内管12の回転を阻害することなく樹脂内管12の回転力の一部を樹脂内管12の中心軸と略同一方向への移動力(押し出し力)に変換する作用を有する。
【0070】
回転送りローラ51は、
図3(a)に示すように、樹脂内管12の中心軸(進行方向)に対する回転送りローラ51の回転軸の角度θが0度より大きく90度より小さくなるよう設置されるのが好ましい。より好ましい角度θは10度以上45度以下である。更に、一組の回転送りローラ51はその中心軸が平行である事が好ましい。これにより、樹脂内管12が安定して回転すると共に、金属外管11に向けて移動する(押し出される)。
回転送りローラ51が円錐若しくは円錐台状である場合において、回転送りローラ51の向きに制限はない。しかし、樹脂内管12の回転を安定させるため、回転送りローラ51は頂点が互いに逆方向を向くように設置されるのが好ましい。
【0071】
次に、回転送りローラ51の作用の2つ目として、移動力(押し出し力)の一部を回転力に変換する作用がある。即ち、回転送りローラ51はその回転軸が樹脂内管12の挿入方向(樹脂内管12の中心軸)に対して所定の角度を保つように設置されることで、回転送りローラ51は樹脂内管12の中心軸と略同一方向への移動力(押し出し力)の一部を前記所定の角度に比例して回転力に変換する。
【0072】
回転送りローラ51等の配置は前記と同様とし、樹脂内管12をその中心軸を回転軸として回転させる替わりに後記する押出装置等により樹脂内管12にその中心軸方向へ押し出す(移動力を与える)ことにより、樹脂内管12の中心軸と略同一方向への押し出し力(移動力)の一部を回転力に変換することが可能になる。この作用により、樹脂内管12を押し出しつつ(移動させつつ)回転させて金属外管11の開放端22側から挿入することも可能である。
【0073】
又、回転送りローラ51の作用の3つ目として、回転送りローラ51がその中心軸を回転軸として回転することにより、回転送りローラ51に載置された(当接した)樹脂内管12にその中心軸方向への移動力とその周方向への回転力との両方を同時に与える作用がある。即ち、回転送りローラ51はその回転軸が樹脂内管12の挿入方向(樹脂内管12の中心軸)に対して所定の角度を保つように設置されることで、回転送りローラ51はその中心軸を回転軸とする回転力を樹脂内管12に対して、前記所定の角度に比例して樹脂内管12の回転力と樹脂内管12の中心軸と略同一方向への移動力(押し出し力)に振り分けて与える。
【0074】
回転送りローラ51等の配置は前記と同様とし、回転送りローラ51をモータ等の任意の駆動手段を用いて回転させることにより、回転送りローラ51に載置された(当接した)樹脂内管12にその中心軸を回転軸として回転させる回転力と金属外管に向けて移動させる移動力との両方を与えることが可能になる。この作用により、樹脂内管12を回転させつつ移動させて金属外管11の開放端22側から挿入することも可能である。
【0075】
(回転ローラ)
回転ローラ52は、樹脂内管12の回転状態に関係無くその外周面おいて樹脂内管12を支持するものである。
回転ローラ52は、
図1(a)、
図2、及び、
図3に示すように、円柱形状であってその中心軸を回転軸として回転可能である。又、回転ローラ52は、その側面を樹脂内管12の外周面と当接させながら支持する。そして、回転ローラ52は2個で1組として各中心軸を樹脂内管12の中心軸と平行としつつ、樹脂内管12を挟持する様に台車54(の上部)に設置される。回転ローラ52が2個で1組として設置されることにより、樹脂内管12をその下方の側面から挟持する様に支持することが可能となる。1組の回転ローラ52は間隔を空けて設置してもよいし、互いに当接していてもよい。
【0076】
このような構造を有して設置される回転ローラ52は、回転可能であることにより樹脂内管12の回転状態に関係無く樹脂内管12を当接面となる外周面おいて支持する。そして、回転ローラ52は回転することにより、樹脂内管12を金属外管11へ挿入する際の抵抗を軽減させるための樹脂内管12の回転、及び、後記する樹脂内管12の外周面への接着用樹脂の塗布を効率的に行うための樹脂内管12の回転を阻害することなく樹脂内管12を支持する。回転ローラ52が樹脂内管12を挟持する様に支持することで樹脂内管12が回転しても安定して支持することも可能となる。
【0077】
(台車)
台車54は、
図1(a)、
図2に示すように、前記1組の回転ローラ52を回転自在にその上部に備えると共にその下部に図示しないレール上を移動する移動用の車輪等の移動手段を備える。台車54の前記移動手段は少なくとも回転ローラ52の回転軸方向、即ち樹脂内管12の中心軸方向に移動可能なものとする。又、台車54は樹脂内管12を回転送りローラ51及び台車54の上部に備えられた回転ローラ52に載置した際に金属外管11の中心軸及び樹脂内管12の中心軸が略一致する高さであることが好ましい。
【0078】
台車54がその上部に回転ローラ52を備えることにより、樹脂内管12の回転状態とは無関係に、回転ローラ52に支持される樹脂内管12がその中心軸方向(挿入方向)に移動して金属外管11に挿入されるのに合わせて、台車54が回転ローラ52を介して樹脂内管12を支持しつつ車輪等の移動手段により樹脂内管12の中心軸方向(挿入方向)に移動することを可能にする。
回転ローラ52を備える台車54を使用することにより、樹脂内管12を支持すると同時にその中心軸を回転軸として回転させながら金属外管11に挿入することが行いやすくなる。
【0079】
(回転ローラ)
回転ローラ53は、金属外管11の状態に関係無くその外周面おいて支持するものである。
回転ローラ53は、
図1(a)、
図2、及び、
図3に示すように回転ローラ52と同様の形態の円柱形状であってその中心軸を回転軸として回転可能である。又、回転ローラ53は、その側面を金属外管11の外周面と当接させながら支持する。そして、回転ローラ53は2個で1組として各中心軸を金属外管11の中心軸と平行としつつ、金属外管11を挟持する様に設置される。回転ローラ53が2個で1組として設置されることにより、金属外管11をその下方の側面から挟持する様に支持することが可能となる。1組の回転ローラ53は間隔を空けて設置してもよいし、当接していてもよい。
このような構造を有して設置される回転ローラ53は回転可能であることにより、樹脂内管12を金属外管11へ挿入する際の抵抗を軽減させるため、及び、後記する樹脂内管12の外周面への接着用樹脂の塗布を効率的に行うため回転しながら挿入される樹脂内管12との接触により回転しやすい金属外管11の回転を阻害することなく安定して支持する。
【0080】
なお、回転送りローラ51は、樹脂内管12との接触面積が増えて空転し難くなることから、円錐、若しくは、円錐台状が好ましい。
又、回転送りローラ51、回転ローラ52、回転ローラ53、及び、台車54の個数及び設置は前記に限られることはなく、その機能が発揮されるよう適宜設置が可能である。
更に、回転送りローラ51、回転ローラ52、回転ローラ53、及び、台車54の大きさ、固定方法、及び、材質等は適宜選択することが可能である。
【0081】
(押出装置)
図示しない押出装置は、任意の構成要素であり、樹脂内管12を金属外管11に向けて押し出して前記金属外管11に挿入するものである。押出装置は、樹脂内管12を金属外管11に向けて挿入できるものであれば、その種類は問わない。例えば、エアーシリンダー、アクチュエーター等が挙げられる。
【0082】
[塗布装置]
塗布装置55は、
図1(a)、
図2に示すように、樹脂内管12の外周に接着用樹脂31を塗布するものである。塗布装置55は、後記する挿入塗布工程S102において前記挿入装置50と組み合わせて使用するのが好ましい。
【0083】
この塗布装置55は円錐台状であって、上面(小円、縮径)側の中心に樹脂内管12の外径以上金属外管11の内径以下の穴を有し底面(大円)側が開放されている円錐台状の部材である。
前記塗布装置55の上面(小円、縮径)側の中心に設けた穴の直径は、樹脂内管12に塗布する樹脂量(厚)に応じて適宜変更することが好ましい。具体的には、前記塗布装置55の穴の直径は、樹脂内管の外径に対して10mmを超えると大量の接着剤が必要となり、経済的でない。このため、前記塗布装置55の穴の直径は、樹脂内管12の外径以上5mm以下が好ましい。このようにすることにより、均一な接着剤の塗布がより経済的に可能となる。より好ましい穴の直径は、樹脂内管12の外径以上1.0mm以下である。
【0084】
又、前記塗布装置55は、樹脂内管12を金属外管11に挿入する挿入経路上であって、前記金属外管11の開放端22側と前記樹脂内管12との間に、前記塗布装置55の開放された底面(大円)側を樹脂内管12の端面に向けて設置可能あることが好ましい。
例えば、塗布装置55は動作自在なアームに取り付けることが考えられる。
【0085】
更に、前記穴は、底面(大円)側に向けた折り返しを有していてもよい。この折り返し部分により余分な接着用樹脂31を削ぐことで効率的に塗布が可能となる。
【0086】
又、本実施形態において金属外管11と樹脂内管12を一体化する際に用いる抽伸装置(ドローベンチ)60について説明する。
【0087】
[抽伸装置(ドローベンチ)]
後記する抽伸工程S104において使用する抽伸装置60(ドローベンチ)は、
図1(b)及び
図5に示す冷間引抜加工に使用するソリッドダイス61、キャリッジ62、引抜プラグを先端に備える心金棒63、及び、心金押出シリンダー64等を備えた一般的な抽伸装置60が使用可能である。
【0088】
(ソリッドダイス)
ソリッドダイス61は抽伸工程S104の冷間引抜加工(絞り加工)において金属外管11を縮径するものである。ソリッドダイス61の形状により積層複合管1の外形を種々の形状及び直径とすることが可能である。本実施形態においては、回転体への使用に好適な円筒状積層複合管1を製造することを考慮してソリッドダイス61の縮径面の断面形状は円形とするのが好ましい。
ソリッドダイス61の材質は、金属外管11の種類、金属外管11の縮径量、及び、冷間引抜加工後の積層複合管1の仕上がり外径に合わせて適宜選択する。例えば、アルミ合金管を金属外管とする場合は、超硬や鋼種では、SKDを使用する。
【0089】
ソリッドダイス61の直径は所望の積層複合管1の外径とすることができる直径、かつ、金属外管11の内径を縮径後の樹脂内管12の外径に対して0%以上0.5%以下の範囲で縮径させることが可能な直径とするのが好ましい。
例えば、樹脂内管12の外径が、100mmであって、かつ、金属外管11の内径が105mmであるときは、金属外管の肉厚が3mmの場合、ソリッドダイス61の直径は105.8mmとなる。これにより、製造された積層複合管1は金属外管11の内径が略99.9mmとなり、回転トルクで、σπd
2Lまで力をかけても金属外管11と樹脂内管12とが分離せず、より接合強度が増加する。
【0090】
(引抜プラグ)
引抜プラグ63は抽伸工程S104の冷間引抜加工(絞り加工)において金属外管11を縮径する際に樹脂内管12に挿入して樹脂内管12を介して金属外管11を内側から支持することにより、引抜加工の精度を向上させるものである。このため、引抜加工の際に引抜プラグ63が使用されることが好ましい。しかし、抽伸工程S104において引抜プラグ63が必ず使用される必要はない。
【0091】
本実施形態においては、回転体への使用に好適な管状積層複合管1とすることを考慮して引抜プラグ63の形状はソリッドダイス61の入り口側に向かって拡径する円錐形とするのが好ましい。これにより、樹脂内管12を挿入した金属外管11を空引きした場合と比べて、金属外管11の表面の加工精度が向上する。
引抜プラグ63の直径は樹脂内管12の内径以下とし、プラグの材質はSKDが好ましい。
【0092】
(キャリッジ)
キャリッジ62は抽伸工程S104の冷間引抜加工(絞り加工)においてソリッドダイス61に挿入された金属外管11の口付部21を握持するものである。これにより、樹脂内管12が重ね合わされた金属外管11を引き抜くことで積層複合管1を製造する。
本実施形態においては、その構造及び機能に特に制限はなく、任意のものが使用可能である。
【0093】
(心金押出シリンダー)
心金押出シリンダー64は、引抜プラグ63を樹脂内管12に挿入する際に用いる引抜プラグ63が附属した心金棒を樹脂内管12に押し出すものであり、一般的なものが使用可能である。
【0094】
次に、
図7ないし
図9を参照して前記抽伸装置60(ドローベンチ)及び前記挿入装置を用いた積層複合管の製造方法について説明する。
【0095】
(第1実施形態)
[製造方法]
本実施形態における製造方法は、はじめに
図7に示すように口付工程S101、挿入工程S102a、抽伸工程S104からなる。
【0096】
<口付工程>
図7に示す口付工程S101は、
図1及び
図5に示すように後記する抽伸工程S104において樹脂内管12が挿入された金属外管11を引き抜く際にキャリッジ62で握持するための縮管部分である口付部21を設ける工程である。又、この口付工程は前記役割の他にも挿入工程S102a(挿入塗布工程S102)において樹脂内管12が金属外管11から突出、若しくは、脱落等することを防止する役割も果たす口付部21を設ける工程である。
【0097】
口付部21の外径は、後記する抽伸工程S104において用いるソリッドダイス61を通すためソリッドダイス径よりも小さいものとする。口付部21の長さも後記する抽伸工程S104において樹脂内管12が挿入された金属外管11がソリッドダイス61から突出した状態となると共にキャリッジ62で握持可能な長さとする。
金属外管11の縮管方法は、スエージング、若しくはプレス加工等公知の方法による。
【0098】
<挿入工程>
図7に示す挿入工程S102aは金属外管11に樹脂内管12を挿入することにより、金属外管11と樹脂内管12とを重ね合わせる工程である。
【0099】
(金属外管及び樹脂内管の設置)
まず、挿入装置50の固定部50Aに備えられた2組の回転ローラ53に金属外管11を載置する。この際、金属外管11の回転軸(中心軸)と回転ローラ53の回転軸(中心軸)の向きが略一致して金属外管11が均一に回転することを確認する。
次に、挿入装置50の移動部50Bに備えられた1組の回転送りローラ51及び台車54に備えられた1組の回転ローラ52上に樹脂内管12を載置する。この際、前記1組の回転送りローラ51の回転軸(中心軸)が樹脂内管12の中心軸と前記所定の角度を有すること、及び、樹脂内管12が均一に回転しつつ、樹脂内管12が金属外管11方向に移動することを確認する。
又、金属外管11と樹脂内管12の中心軸が略一致することを確認する。
【0100】
(挿入)
まず、挿入装置50の回転送りローラ51と回転ローラ52上に載置された樹脂内管12を任意の手段で回転させる。これにより、当接する回転送りローラ51が中心軸を回転軸として回転する。回転送りローラ51はその回転軸が樹脂内管12の挿入方向(樹脂内管12の中心軸)に対して所定の角度を保つように設置されていることで、回転送りローラ51は樹脂内管12の中心軸を回転軸とした回転力の一部を前記所定の角度に比例して前記樹脂内管12の中心軸と略同一方向への移動力に変換する。前記当接斜面に載置された樹脂内管12はこの移動力により、その中心軸の方向に金属外管11に向けて押される。これを利用して、前記金属外管11に前記樹脂内管12を挿入する。この際、台車54は樹脂内管12の移動に伴い金属外管11の方向に移動する。
【0101】
樹脂内管12の回転手段に特に制限はなく、手動でもよいし、モータ等の回転動力源でもよい。又、台車54上の回転ローラ52を任意の手段で回転させることで、樹脂内管12を回転させてもよい。
【0102】
樹脂内管12の金属外管11への挿入の準備として、金属外管11の内周面の真直度の制御及び内面のホーニング加工は不要である。又、樹脂内管12の外面の真直度及び外径精度の制御も不要である。更に金属外管11及び樹脂内管12の曲がり方向を一致させる必要もない。これにより、従来の樹脂内管12の圧入方法による積層複合管1の製造の場合と比べて、約3倍と作業速度の大幅な向上を図ることが可能となる。
【0103】
ここまで、挿入装置50を使用して樹脂内管12を回転させることで挿入する方法示したが、回転送りローラ51の別の作用を利用する方法も可能である。即ち、挿入装置50を使用して樹脂内管12を金属外管11に向けて押し出す、又は、円柱、円錐、若しくは、円錐台状の回転送りローラ51をその中心軸を回転軸として回転させることで、その当接面で支持された樹脂内管12を回転させつつ樹脂内管12の中心軸方向への移動力を与えてもよい。この方法によっても、樹脂内管12を金属外管11へ挿入することが可能となる。
【0104】
以上、挿入工程S102aにおいて挿入装置50を使用する方法を示したが、これ以外の金属外管11を固定可能な装置、並びに、前記回転送りローラ51、及び、前記塗布装置55を備える装置等を使用して挿入工程S102aを行うことも当然可能である。
【0105】
挿入工程S102aは、
図8に示すように挿入工程S102aに替えて、この工程に含まれる金属外管11と樹脂内管12との間に接着用樹脂31からなる樹脂層を設ける挿入塗布工程S102とするのが好ましい。
これにより、挿入塗布工程S102において樹脂内管の外周面に接着用樹脂を塗布しつつ塗布し終わった部分から順次金属外管へ挿入することで、積層複合管の製造速度の向上も可能となる。又、金属外管と樹脂内管の間に隙間なく均一な厚さの樹脂層をより簡単かつ確実に設けることが可能となる。
【0106】
<挿入塗布工程>
図8に示す挿入塗布工程S102は、
図2に示すように、接着用樹脂31を樹脂内管12の外面に塗布しつつ金属外管11に樹脂内管12を挿入することにより、金属外管11と樹脂内管12との間に接着用樹脂31からなる樹脂層13も設けつつ金属外管11と樹脂内管12とを重ね合わせる工程である。
挿入塗布工程S102における作業は挿入作業と塗布作業からなる。挿入作業は第1実施形態の挿入工程S102aの作業内容と同様である。
【0107】
(塗布作業)
塗布作業は、樹脂内管12の外周面全面に接着用樹脂31を塗布する作業である。以下詳細に説明する。
【0108】
(塗布装置の設置)
前記挿入装置50に載置された前記金属外管11と前記樹脂内管12との間に、前記塗布装置55を設置する。この際、前記塗布装置55の開放された底面(大円)側が前記樹脂内管12の金属外管11側の端面と対面する様に設置する。
又、前記金属外管11へ前記樹脂内管12を挿入したときに前記金属外管11の中心軸と前記樹脂内管12の中心軸とが略一致するように、前記金属外管11の中心軸、及び、前記樹脂内管12の中心軸上に前記塗布装置55の中心が来る様に上下左右の位置が調整して設置するのが好ましい。
【0109】
(塗布)
本実施形態において、樹脂内管12の外周面への接着用樹脂31の塗布は、前記挿入装置50を使用して樹脂内管12を回転させながら前記樹脂内管12を前記金属外管11に向けて移動させ、かつ、前記樹脂内管12を前記金属外管11に挿入する挿入経路上に設置された前記塗布装置55により円筒状に保持された接着用樹脂31に貫通させることにより前記樹脂内管12の外周面に前記接着用樹脂31を塗布することが好ましい。
【0110】
前記塗布装置55への接着用樹脂31の保持する方法は、接着用樹脂31が塗布装置55に保持される限りその手段を問わない。例えば、任意の押出装置等により塗布装置55の開放された上方から、若しくは、塗布装置55の上部に設けた開口部等から塗布装置55の内面側に接着用樹脂31を押し出し、若しくは、垂下させてもよく、人の手により接着用樹脂31を保持させてもよい。又、樹脂内管12が塗布装置55を通過している間中接着用樹脂31を徐々に押し出し、若しくは、垂下させて、接着用樹脂31の保持と補充を継続してもよい。
【0111】
樹脂内管12の回転手段は樹脂内管12の金属外管11への挿入前から挿入後まで接着用樹脂31の塗布の前後を含めて前記の通り特に制限はない。手動で回転させてもよいし、モータ等の回転動力源を使用して回転させてもよい。又、台車54上の回転ローラ52を任意の手段で回転させることで、樹脂内管12を回転させてもよい。
【0112】
又、台車54は、樹脂内管12の半分以上が金属外管11に挿入されてその支持が不要となる、又は、回転送りローラ51と接する位置に達したところで挿入経路上から除外してもよい。
そして、樹脂内管12が塗布装置55を通過し終わって樹脂内管12への接着用樹脂31の塗布が終わった後、塗布装置55が挿入経路上から取り除かれるのが好ましい。樹脂内管12を更に回転し続けることにより樹脂内管12全体を金属外管11に完全に挿入する。この際、樹脂内管12の回転は樹脂内管12の内周面に回転手段を当接等させて回転させるのが好ましい。又、接着に必要な量以上の接着用樹脂31が金属外管11の管端からはみ出しても製造工程上及び積層複合管1に問題は生じない。
【0113】
(塗布量制御)
接着用樹脂31の塗布量の制御は、塗布の際に樹脂内管12を回転させながら前記塗布装置55の前記所定の直径の穴を通すことにより、前記塗布装置の穴で所定厚(量)以上の余分な接着用樹脂31を削いで前記穴の周囲に分離付着させることにより行うのが好ましい。同時に前記樹脂内管12を前記塗布装置55の所定の直径の穴に通すことにより、前記塗布装置55の穴の部分によって接着用樹脂31を樹脂内管12の外周面によりむらなく均一に接着用樹脂31を塗布することが可能となる。
この結果、本実施形態によって製造される積層複合管1の任意の断面における接着用樹脂31の充填率は、90%以上とすることが可能となる。
【0114】
<抽伸工程>
図7に示す抽伸工程S104は、樹脂内管12が挿入された金属外管11に冷間引抜加工(絞り加工)を行うことで金属外管11を縮径させて樹脂内管12の外周面と金属外管11の内周面とを圧着させて一体化することにより積層複合管1とする工程である。
なお、樹脂内管12の外周面と金属外管11の内周面との間に接着用樹脂31が存在してもよい。又、冷間引抜加工を1回のみ行って積層複合管1の外径を所望の大きさしてもよいし、積層複合管1の外径が所望の大きさになるまで複数回にわたり冷間引抜加工を行ってもよい。
【0115】
(設置)
まず、
図5(a)に示すように、樹脂内管12が挿入されて重ね合わされた金属外管11の口付部21をソリッドダイス61に通して抽伸装置60のフロントベンチ上に固定する。次に、ソリッドダイス61から突出した口付部21をキャリッジ62で握持する。そして、
図5(b)(c)に示すように、前記樹脂内管12が挿入された金属外管11を金属外管11と樹脂内管12が同軸となるように後記の条件で冷間引抜加工を行う。
なお、樹脂内管12が挿入されて重ね合わされた金属外管11の内周面と樹脂内管12の外周面との間に接着用樹脂31が存在する場合において、この金属外管11に抽伸を行って接着用樹脂31が開放端22側からはみ出しても製造工程上及び積層複合管1に問題は生じない。
【0116】
(締め代)
冷間引抜加工による絞り加工の際の締め代は、金属外管11及び樹脂内管12の圧着率を決定することから重要である。
締め代は、前記樹脂内管の外径寸法に対して、加工後の金属外管の内径寸法の0%以上0.5%以下の範囲で縮径させる量が好ましい。これにより、樹脂層の充填率を90%以上とすることができ、接合強度を向上させることができる。
【0117】
締め代が冷間引抜加工後の樹脂内管の外径寸法の0.5%を超えると、金属外管11の抽伸率が高くなり金属外管11の表面にしわが生じやすくなる。又、冷間引抜加工による縮径加工の際に、樹脂内管を締付け過ぎ、樹脂内管の樹脂層にひび割れが生じ、樹脂内管の強度低下を招く可能性が大きくなる。
【0118】
以上、本実施形態に係る積層複合管の製造方法は、以下に示すように、優れた効果を備える。
本実施形態に係る積層複合管の製造方法により、金属外管と繊維強化樹脂内管が均質に接合一体化した長尺の積層複合管を冷間引抜加工により安価で高効率に製造が可能となる。又、繊維強化樹脂内管を金属外管に迅速に挿入することでより安価で高効率に製造が可能となる。更に、前記金属外管と前記樹脂内管の間に隙間なく均一な厚さの樹脂層をより簡単かつ確実に設けることが可能となる。併せて、樹脂内管の外周面に接着用樹脂を塗布しつつ塗布し終わった部分から順次金属外管へ挿入することで、積層複合管の製造速度の向上も可能となる。そして、積層複合管を高精度かつ高効率に製造することが可能になる。
【0119】
本実施形態に係る積層複合管は、表面処理特性、高剛性、軽量、かつ、低回転慣性モーメント特性を備える。
これにより、従来の重量がある鉄製部材とは異なり、本実施形態に係る積層複合管を用いた部材は交換が容易となる。又、従来の鉄製部材以上の大きさ及び剛性を有する部材の製作が容易に可能となり、鉄以外の金属特性を備えた従来と同等以上の部材の製作も容易に可能となる。このため、大型印刷機の転写ロール、紙送りロール等種々のロールをはじめとして長尺及び大直径の高速回転をする部材に最適に用いることが可能である。
更に、金属が有する塑性加工性、延性、及び、伝導性、並びに、FRPが有する軽量、高強度、及び、高弾性を生かして、本実施形態に係る積層複合管は大型機械に限らずヨットのマストやボートのオールなど輸送機械及び遊戯装置のポール材及び支持体にも最適に用いることが可能である。
そして、積層複合管の普及が図られると共に積層複合管を用いた前記装置及び部材の普及も図られる。
【0120】
以下、第2実施形態に係るクラッド管及びその製造方法について説明する。なお、前記した第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0121】
(第2実施形態)
本実施形態は、
図9に示すように挿入塗布工程S102と抽伸工程S104との間に、樹脂内管12が挿入された金属外管11の開放端22側を絞り加工にて絞って抽伸工程S104において樹脂内管12が抜け出るのを防止するための縮径部を設ける抜止防止工程S103を有する。
これにより、抽伸工程S104において樹脂内管12が挿入された金属外管11について冷間引抜加工を行う際に樹脂内管12が抜け出ることを確実に防止でき、積層複合管1の製造効率がより向上する。
【0122】
<抜止防止工程>
本工程における絞り加工は公知の手段により行うことが可能である。又、樹脂内管12が抜け出ることを防止可能である限り絞り加工量も任意である。
更に、抜止防止工程S103は、挿入工程S102aと抽伸工程S104との間に設けることも可能である。
【0123】
以下、これら実施形態とは異なる変形例に係るクラッド管及びその製造方法について説明する。なお、これら実施形態と同一の要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0124】
本実施形態において、第1実施形態の挿入塗布工程S102中の塗布作業において用いる接着用樹脂31の種類を電気伝導性樹脂としてもよい。
これにより、金属外管11と樹脂内管12との間に設ける樹脂層が電気伝導性を有する。積層複合管1が得られる。この積層複合管1は、金属外管11と樹脂内管12との導電性が向上し、表面処理等の際にアースを取りやすくなると共に、積層複合管1を回転体に使用したときに回転体の帯電を防止することが容易となる。
【0125】
(電気伝導率)
本実施形態で用いる接着用樹脂の電気伝導率は1×10
3S/m以上1×10
6S/m以下が好ましく、その種類はエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等のいずれも使用可能である。これにより、電気鍍金及び電着塗装等の表面処理、並びに、電気溶接等が行いやすくなる。
【0126】
(厚さ)
電気伝導性樹脂による樹脂層13の厚さは第1実施形態と同様0.01mm以上10mm以下とするのが好ましい。これにより、電気伝導性を有しつつ、金属外管11と樹脂内管12とをより強固に接合することが可能となる。又、一般的な機械の構造体に使用しても金属外管11と樹脂内管12とが分離しにくい。樹脂層13の厚さが0.01mm未満であると接着強度の点から金属外管11と樹脂内管12との間に樹脂層を設ける意義を有さない。一方、樹脂層13の厚さが10mmを超えると、樹脂層13の電気伝導性が低下する。同時に、樹脂内管と金属外管を同軸上に保持し接着を完了させるのが困難となる。
【0127】
本実施形態において、
図6(d)に示すように、第1実施形態の金属外管11の内周面及び樹脂内管12の外周面の断面形状を円に替えて多角形状としてもよい。
【0128】
(断面形状)
金属外管11の内周面及び樹脂内管12の外周面の中心軸に垂直である断面形状は、金属外管11の内周面及び樹脂内管12の外周面相互の接合面積を拡大することで金属外管11及び樹脂内管12の接合力が増加する点と共に、滑り止めとなる部位(辺)が存在することで積層複合管1を管状回転部材に使用したときにトルクが相互に有効に伝達する点において重要である。
【0129】
本実施形態においては、前記断面形状を三角形、四角形、六角形、八角形等の多角形状とするのが好ましい。金属外管11bには抽伸加工等公知の加工方法により金属管の内周面の形状を多角形状とした金属外管が使用可能である。樹脂内管12bには当初より多角形管として製造された樹脂管だけでなく、円形管の外周面を公知の加工方法により多角形管とした樹脂管も使用可能である。
そして、この積層複合管は、金属外管と樹脂内管の接合面の形状を多角形にすることで管状回転部材に使用した場合にトルクが確実に伝達できると共に、軽量化して機械的にも優れる。
【0130】
本実施形態においては、
図6(e)に示すように、第1実施形態の金属外管11の内周面及び樹脂内管12の外周面の断面形状を円に替えて嵌合部分を有する形状としても構わない。
【0131】
(断面形状)
金属外管11の内周面及び樹脂内管12の外周面の断面形状は、金属外管11の内周面及び樹脂内管12の外周面相互の接合面積を拡大することで金属外管11及び樹脂内管12の接合力が増加する点、及び、嵌合部分を有することで積層複合管1を管状回転部材に使用したときにトルクが有効に伝達する点において重要である。
【0132】
本実施形態における金属外管11cはその内周面に長手方向に延びる凹部又は凸部を1又は2以上有すると共に、樹脂内管12cの外周面に長手方向に延びる前記凹部又は凸部に対応する凸部又は凹部を1又は2以上有し、前記凹部及び前記凸部が嵌合可能なものとする。
金属外管11cと樹脂内管12cが嵌合することで、その嵌合部分により積層複合管1の周方向へ力を伝達することが容易となる。
【0133】
本実施形態においては、第1実施形態の金属外管11の端部に金属外管11の表面処理時に使用する電極部を設けてもよい。
これにより、電気鍍金及び電着塗装等の表面処理、並びに、電気溶接等の処理対象を電気的に接続して回路を構成して行う表面処理の際に積層複合管1を確実に接続することが可能となる。又、本実施形態に係る積層複合管が大型装置及び機械等に組み込まれた場合に、アースをとりやすくなることで積層複合管が帯電することを防止可能となる。
【0134】
(形状)
前記電極部は、挿入塗布工程S102若しくは挿入工程S102aにおいて金属外管11を樹脂内管12に挿入する際に、樹脂内管12を金属外管11の口付部21側の屈曲開始部管端から5〜50mmまで挿入すると共に、金属外管11の開放端側において樹脂内管12の管端から5〜50mm残すことにより設けるのが好ましい。しかし、前記電極部はこの様なものに限られず、表面処理に使用する装置と接続が可能である限り、任意とする。例えば、クリップ、ハンガー、若しくは、アルミ線が挙げられる。
【0135】
なお、本発明は前記実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、適宜変更することができる。
例えば、回転送りローラ51を複数組(個)設置した場合には、回転ローラ52を組にせず単独で用いてもよい。この場合、回転ローラ52をその中心軸(回転軸)が樹脂内管12の中心軸(回転軸)と略90度となるように設置することも可能である。
【0136】
2個で1組とした回転送りローラ51の方向は、その円錐の頂点、又は、円錐台の頂部(上面の小円形、縮径方向)を樹脂内管12の挿入方向(又は、挿入方向とは反対方向)に向けて設置することも可能である。この場合、回転送りローラ51(の組)は、所定の間隔を有しつつ、その回転軸(中心軸)のなす角の2等分線と樹脂内管12の中心軸とが略一致するように設置されるのが好ましい。これにより、樹脂内管12の回転と挿入の双方が安定する。
又、2個で1組とした回転送りローラ51は、その回転軸が略同一直線上に一致するように設置することも可能である。更に、円錐、若しくは、円錐台2個が頂点(部)で接合して一体となった、その端部から中央部に向けて同心かつその直径が徐々に縮小する形状を有するものでもよい。
そして、回転送りローラ51は、必ずしも2個で1組とせず、1個単独とすることも可能である。
図3(c)に示すように、回転送りローラ51は、回転送りローラ51の当接斜面の略中央に樹脂内管12の中心軸(回転軸)を設置してもその作用及び機能を発揮することが可能である。この場合の樹脂内管12の中心軸(進行方向)に対する回転送りローラ51の回転軸の角度θは0度より大きく90度より小さくなるよう設置されるのが好ましく、10度以上45度以下がより好ましい。この様に回転送りローラ51を設置することにより、樹脂内管12を移動させつつ(押し出しつつ)回転させることが可能となる。
【0137】
円柱状の回転ローラ52、及び、回転ローラ53の代替として回転自在な球体を使用した支持装置等回転軸が固定されていない支持装置を使用してもよい。台車54についても、これらを備えたものとしてもよい。
塗布装置55は樹脂内管12の外径以上金属外管11の内径以下の穴を有し接着用樹脂31を保持することが可能であれば、円錐台状に限らず円筒状、角筒状、角錐台状とすることも可能である。
【0138】
挿入塗布工程S102、又は、挿入工程S102aにおいて挿入装置50を使用する替わりに金属外管11を固定可能な装置、並びに、前記回転送りローラ51、及び、前記塗布装置55を備える装置等を使用して挿入塗布工程S102を行うことも当然可能である。
挿入塗布工程S102、又は、挿入工程S102aの終了直後に抽伸工程S104を行うことも可能であるし、挿入塗布工程S102、又は、挿入工程S102aにおいて樹脂内管12が挿入されて重ね合わされた金属外管11を複数まとめて抽伸工程S104で抽伸を行うことも可能である。