(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車室天井には、ルーフパネルPの内側に、車両前方部、中央部、後方部に付設されたパネル補強用ルーフボウrbにより空間Sを隔てて、天井を形成するルーフトリム1が設けられ、車室内の保温性と共に外気からの遮熱性を確保し、車室内の居住性向上に寄与している(
図5参照)。なお、ルーフパネルPの内側に設けられるルーフボウrbは、例えば特許文献1で見られるように、車両のルーフの補強用として重要な部品の一つである。
図5では、車載エアコン(図示省略)の暖房運転によって、車室内が暖められると、ルーフトリム1も暖められ、ルーフトリム1とルーフパネルP間の空間Sの空気層も暖められる。空気層が暖められると、暖気が少なくとも車室内温度より低い外気に触れるルーフパネルPの内面に触れることで、外気との熱交換がなされ、ルーフトリム1とルーフパネルP間の空間Sの空気層の温度が低下することとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、車載エアコン(図示省略)の暖房運転によって、車室内が暖められると、ルーフトリム1も暖められ、ルーフトリム1とルーフパネルP間の空間Sの空気層も暖められても、空間Sの空気層の暖気が車室内温度より低い外気に触れるルーフパネルPの内面に触れることで、外気との熱交換がなされ、上記空間Sの空気層の温度が低下してしまうので、車室内温度を維持するには、空間Sの空気層の温度低下の損失を考慮して、車載エアコンを余分に運転せねばならず、消費電力の増大を招き、ひいては、燃費悪化の要因の一つともなっている。
本発明は、以上のような課題を改善するために提案されたものであって、ルーフトリムとルーフパネル間の空間の、ルーフパネルによる外気との熱交換による、温度の損失を抑制可能な車両用ルーフトリムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を改善するために、
車両の車室天井に形成されたルーフパネル
の内側に、空間を隔てて、天井面を形成する車両用ルーフトリムにおいて、前記ルーフパネルの車室側に、該
ルーフパネルに付設した固定手段を介して、前記空間を隔てて設けた基材と、
該基材
を挟むように、表面側、裏面側に配置されたガラス繊維層と、前記ルーフパネル
と反対側の前記ガラス繊維層に積層された表皮層と、前記ルーフパネル側
の前記ガラス繊維層に積層された遮熱層と、前記基材の前記ルーフパネル側
で、前記遮熱層の表面に、各々、空気が封入された多数の独立気泡室同士が壁で仕切られて、連続的に隙間なく積層された該独立気泡室を有する、独立気泡体と、を備え、前記独立気泡体を構成する前記独立気泡室により、前記ルーフパネルと
の間に存在する前記空間の空気と、ルーフパネルとの間の熱交換を
防止して、車室内と、前記ルーフパネルによる外気との熱交換を抑制する、ことを特徴とする。
【0006】
なお、前記独立気泡体は、気泡層からなる。
【0007】
これにより、気泡層によって、ルーフパネルの車室側の空間の空気とルーフパネルとの熱交換がされないように、空気を閉じ込めることができる。
気泡層により閉じ込められた空気は対流する動きが抑制され、ルーフパネルとの熱交換がされないため、ルーフパネルの車室側の空間の温度損失を抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ルーフトリムとルーフパネル間の空間において、ルーフパネルによる外気との熱交換による、温度の損失を抑制可能な車両用ルーフトリムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る車両用ルーフトリムの実施形態を挙げ、添付図に基づいて説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。概要は以下のとおりである。
本発明における車両用ルーフトリムは、ルーフパネルの車室側に設けられ、車室内の天井面を形成するもので、基材と、基材のルーフパネル側に設けられ内部に気泡を含む気泡層と、ルーフパネルと気泡層の間に設けられ、ルーフパネルによる外気との熱交換を抑制する所定の空間と、を有する。
【0011】
(実施形態)
図1に車両用ルーフトリム1(以下、ルーフトリム1)を示す。このルーフトリム1は、平面視で略長方形を呈しており、
図1は、ルーフパネルに対向する面側を示している。A側は車両のフロントウインドウ側に向かって、対向するB側は、リアウインドウ側に向かって配置される。かかるルーフトリム1は、全体が施工される車両のルーフパネル形状に倣う形状に、A側からB側に向かう軸方向に沿って、中央領域がルーフパネルに向かって盛り上がるトレイ形状に成形加工されている(後述)。
【0012】
ルーフトリム1のA側寄りの両側端部には、車両のフロントピラー(図示省略)に係合する凹角部1a、1aが形成され、ルーフトリム1の縁部であるルーフトリム1の長手側の両側縁部の略中間部位には、車両のセンターピラー(図示省略)に係合するルーフトリム側縁の切欠き縁部1b、1bが形成されている。
【0013】
さらにルーフトリム1のA側寄りの縁部中央から両側の凹角部1a、1aにかけて、サンバイザー配置成形部1c、1cと、サンバイザー配置成形部1c、1c間にマップランプ取付穴1dと、中央領域の部位には、ルームランプ(図示省略)を取り付けるためのルームランプ取付穴1e他、種々のAssy部品(図示省略)が設けられる。
【0014】
そして以上のようなルーフトリム1は、
図2に示すように、ルーフパネルPの車室側に、ルーフパネルPに付設されるルーフボウrbを介して所定の空間Sを隔てて設けられる。この空間Sは、ルーフパネルPと独立気泡構造マット(気泡層)2の間に設けられ、ルーフパネルPによる外気との熱交換を抑制する。ルーフパネルPは、例えばアルミニウム合金製 (アルミニウム合金板製) または鋼製
(鋼板製) で構成することができ、外観形状が、車体幅方向や車体前後方向に、ゆるやかな凸面形状を有している。また、ルーフボウrbは、車体前部、中央部、さらには車体後部において車体幅方向にルーフパネルPに周知の固定手段、例えば接着剤、ボルトやリベットなどの機械的接合、または溶接接合 (スポット溶接等) により一体的に固定されている。
【0015】
次に、ルーフトリム1の素材構成について説明すると、ルーフトリム1は、詳細な図示、説明は省略するが、例えば、ウレタン製の基材11からなる。この基材11を挟むように表面側、裏面側に配置される第1、第2のガラス繊維層(図示省略)と、車室側の第1ガラス繊維層に積層される表皮層(図示省略)と、ルーフパネルP側の第2ガラス繊維層に積層される非通気層(アルミニウムを蒸着させたPETフィルム)とで構成される。
非通気層は、例えばPPやPETのフィルム等で構成される。
かかるルーフトリム1は、上記の素材を成形金型(図示省略)の上型と下型との間に配置してホットプレス成形を行い、全ての層を一体化して所定形状のルーフトリム1を得ている。
【0016】
そしてこのようなルーフトリム1に対し、基材11のルーフパネルP側に、すなわち、ルーフパネルP側の第2ガラス繊維層に積層される遮熱層上に、上記成型工程後に、気泡層、すなわち独立気泡体2が積層されている。
かかる独立気泡体2は、表面に例えば径が5〜40mm、高さが3〜15mm程度の独立気泡室2bが隙間なく形成されているものである。なお、独立気泡体2の他に、気泡室同士が独立しているシートでいわゆるエアキャップ(登録商標:宇部フィルム(株))も用いることができる。エアキャップは基材にポリフィルムを貼り合せる際、独立気泡室を形成したものである。
多数の独立気泡室2bは、それぞれ気泡室中に空気を封入しており、気泡室同士が壁で仕切られている。
以上の独立気泡体2は、ルーフトリム1のルーフパネルP側の第2ガラス繊維層に積層される遮熱層全体(ここでは表面積が略2m
2)に積層されている。
【0017】
本実施形態に係るルーフトリム1は以上のように構成されるものであり、次に作用効果を説明する。
ルーフパネルPの車室側に、ルーフボウrbを介して空間Sを隔ててルーフトリム1が装着されると、ルーフパネルPの車室側の空間S内には、全体に亘って、ルーフトリム1における独立気泡体2の多数の独立気泡室2bが展開することとなる(
図2参照)。
【0018】
そこで、実際に、車室内で車載エアコン(図示省略)を運転し、独立気泡体2が全面的に積層されたルーフトリム1の効果を検証してみる。なお、ここでは、車載エアコンの暖房運転を挙げて説明する。
車載エアコンの暖房運転によって、車室内が暖められると、ルーフトリム1も暖められる。すると、独立気泡体2には、独立気泡体2を積層する非通気層から熱が伝わり、多数の独立気泡室2b中の空気を暖めることとなる。さらに一部の熱は空間Sの空気層に伝わり、空気層が暖められる。かかる空気層は、外気に触れるルーフパネルPの内面に触れることで、外気との熱交換がなされる。
その際、多数の独立気泡室2b中に閉じ込められた暖気は対流する動きが抑制されるため、独立気泡室2b内の空気はルーフパネルPの内面に触れることはなく、外気との熱交換がなされない。結果、空間Sの空気の温度低下を抑制することができる。
【0019】
ここで、独立気泡体2が用いられていない従来のルーフトリムと独立気泡体2が用いられた本実施形態に係るルーフトリム1とにおいて、ルーフパネルP側に放出された熱量を比較してみる。なお、ルーフパネルP側に放出された熱量とは、ルーフトリム1全体(表面積が2m
2として)に与えられた熱量から独立気泡体2の独立気泡室2bに閉じ込められた熱量(空気の定積比熱×独立気泡の総体積×温度差)を差し引いた熱量W(ただし、ルーフトリム1の熱損失を除く)としている。
独立気泡室2bは、径が5〜40mm、高さが3〜15mm程の範囲で、複数の異なった大きさの独立気泡室2bからなる独立気泡体2(m
1、m
2、m
3、m
4、m
5、m
6)を用いて、ルーフパネルP側に放出された熱量Wを求めてみた。この場合、前述しているように、ルーフトリム1全体に独立気泡体2を積層したと仮定している。
このような、異なった大きさの独立気泡室2bからなる独立気泡体2を用いたルーフトリム1のルーフパネルP側に放出された熱量Wは、
図3に示すとおりである。
【0020】
図から判るように、独立気泡体2が用いられていない従来のルーフトリムでは、熱量は略299Wで、本実施形態のルーフトリム1のうち、m
3の独立気泡体2を用いたルーフトリム1が、ルーフパネルP側に放出された熱量が186Wと、最も低く抑えられていることがわかる。
このように、本実施形態のルーフトリム1によれば、独立気泡室2bが適切な仕様のものを選択することによって、従来と比較して最大で、ルーフパネルP側に放出された熱量を略113W程、抑制することができる。
【0021】
そして、上述の仕様の独立気泡体2(m
1、m
2、m
3、m
4、m
5、m
6)を用いた場合、車室内温度は、
図4に示すとおりとなる。なお、
図4では、車載エアコンを運転することで、車室内温度が50℃を超える値となっているが、独立気泡体2の熱放出を抑制する効果を検証するために、実験上で設定された値である。
図から判るように、独立気泡体2が用いられていない従来のルーフトリムを用いた場合の車室内温度に比較して、独立気泡体2(m
1、m
2、m
3、m
4、m
5、m
6)を用いた場合、いずれも車室内温度が上昇していることがわかる。これは、独立気泡体2を用いることによって、ルーフパネルP側に放出された熱量Wが抑制されることから車室内温度を高めることができることがわかる。この場合、車室内温度は、最低で2℃で、最大で6℃程上昇させることが可能となることがわかる。
【0022】
以上、本実施形態に係るルーフトリム1について、車載エアコンの暖房運転時の作用について説明した。勿論、車載エアコンの冷房運転時においても、気泡層である、独立気泡体2の独立気泡室2b内の空気はルーフパネルPとの熱交換が阻止されるので、ルーフパネルによる外気との熱交換による、温度の損失を抑制することができる。
【0023】
また、独立気泡体2は、ルーフトリム1のルーフパネルP側の第2ガラス繊維層に積層される遮熱層に設けられるとしたが、これに限らず、基材11内に、すなわち、第2ガラス繊維層と遮熱層間に配置するようにしてもよい。