【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23〜24年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「風力等自然エネルギー技術研究開発/次世代海洋エネルギー発電技術研究開発(海洋温度差発電)に係わる委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、熱交換器等に組み込まれる熱交換用プレートとして、金属板が利用されるようになっている。また、この用途で金属板を使用するには高い伝熱性が求められ、このような特性を有する金属板としてチタン板が用いられるようになっている。
【0003】
現在、このような用途に用いられるチタン板にはより高い伝熱性が求められるようにもなっている。チタン板の伝熱性の改善手段には、その表面にミクロンオーダーの微細な凹凸を形成し、表面積を拡大させる方法がある。例えばそのような方法として、ワークロール表面の凹凸を金属板に転写する技術が開発されている(特開2005−298930号公報及び特開2006−239744号公報参照)。
【0004】
他方、熱交換効率は冷却媒体の流量を増やすことで向上できるため、成形性を維持しつつ、高圧に耐えられるより耐力の高いチタン板が望まれる。耐力を向上させる手段として、プレートのスキンパス圧延やレベラーロールでの曲げ加工等の技術も開発されている(特開平8−53726号公報及び特許第4584341号公報参照)。しかしながら、表面に凹凸パターンを有するワークロールで圧延し、凹凸を形成させたチタン板に、焼鈍や酸洗後、スキンパス圧延を施すと、チタン板の耐力は向上するものの、チタン板の凸部が大きくつぶれ、伝熱性が低下してしまうことがある。また、チタン板の片面に凹凸を付与した場合、凸部が優先的につぶれ、凹凸付与面側が平滑面側に比べて伸びが大きく、板は反った形状となり、その結果、所望の特性を得ることができないことがある。一方、レベラーロールでの曲げ加工では、上記のような凸部のつぶれは小さいものの、耐力向上効果は小さく、この場合も所望の特性を得ることはできないことがある。
【0005】
従って、これらの先行技術文献に記載の発明は、一定の技術的効果が認められるものの、伝熱性及び耐力に優れたチタン板の簡便な製造方法、並びに伝熱性及び耐力に優れたチタン板という観点からは、必ずしも満足のいくものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、熱交換用プレートとして好適に使用することができるような伝熱性及び耐力に優れたチタン板の簡便な製造方法、並びに伝熱性及び耐力に優れたチタン板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、表面に微細な凹凸が形成されたチタン板をテンションレベラーを用いて特定の伸び率で矯正することで、伝熱性及び耐力に優れたチタン板を簡便に得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして、上記課題を解決するためになされた発明は、
表面に凹凸パターンを有するワークロールを用いた圧延により、チタン板の片面又は両面に凹凸パターンを形成する工程(凹凸形成工程)と、
上記チタン板を焼鈍及び/又は酸洗する工程(焼鈍及び/又は酸洗工程)と、
上記チタン板をテンションレベラーにより0.1%以上1.3%以下の平均伸び率で矯正する工程(矯正工程)と
を含む片面又は両面に凹凸パターンを有するチタン板の製造方法である。
【0010】
本発明の製造方法は、上記凹凸形成工程、焼鈍及び/又は酸洗工程、矯正工程を含む。また、矯正工程でテンションレベラーを用いて上記のような平均伸び率の矯正をチタン板に施すことで、従来問題となっていた凸部の大きな破壊、チタン板の反り等を引き起こすことなく、チタン板の耐力を高めることができる。従って、本発明の製造方法によれば、伝熱性及び耐力に優れたチタン板を簡便に製造することができる。
【0011】
上記矯正工程において、チタン板表面の凹凸パターンにおける平均凸部最大高さの縮小率が15%以下であることが好ましい。平均凸部最大高さの縮小率を上記範囲とすることで、上述の伝熱性及び耐力の向上をバランスよく促進することができる。
【0012】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、
上記製造方法により得られる片面又は両面に凹凸パターンを有するチタン板であって、
上記凹凸パターンにおける平均凸部最大高さが15.0μm以上であることを特徴とするチタン板である。当該チタン板は伝熱性及び耐力に優れる。
【0013】
また、チタン板のL方向の0.2%耐力は180MPa以上であることが好ましい。L方向の0.2%耐力を上記範囲とすることで、チタン板の上記伝熱性及び耐力向上作用を効果的に奏することができる。
【0014】
よって、本発明によれば、片面又は両面に凹凸パターンを有するチタン板であって、
上記凹凸パターンにおける平均凸部最大高さが15.0μm以上であり、
L方向の0.2%耐力が180MPa以上であることを特徴とするチタン板を提供することもできる。このようなチタン板は、伝熱性及び耐力に優れ、有用である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上述のように伝熱性及び耐力を向上させたチタン板を簡便に製造することができる。従って、本発明の製造方法により得られたチタン板を熱交換プレートとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るチタン板の製造方法及びチタン板を詳説する。
【0018】
<チタン板の製造方法>
本発明のチタン板の製造方法は、少なくとも、
(a)表面に凹凸パターンを有するワークロールを用いた圧延により、チタン板の片面又は両面に凹凸パターンを形成する工程(凹凸形成工程)と、
(b)上記チタン板を焼鈍及び/又は酸洗する工程(焼鈍及び/又は酸洗工程)と、
(c)上記チタン板をテンションレベラーにより0.1%以上1.3%以下の平均伸び率で矯正する工程(矯正工程)と
を含む。
【0019】
このような工程を含むことで、伝熱性及び耐力に優れたチタン板を簡便に製造することができる。また、チタン板の伝熱性を高めることで、その使用量を減らすことができ、その結果、チタン板や製造工程の低コスト化を図ることができる。他方、チタン板の耐力を高めることで、その薄肉化を図ることができ、その結果、この観点からも低コスト化を図ることができ、熱交換効率の向上を図ることもできる。さらに、チタン板の平坦度を高めることで形状等の不良品の発生率を抑制することもできる。以下、各工程について説明する。
【0020】
<凹凸形成工程(a)>
工程(a)では、表面に凹凸パターンを有するワークロールを用いた圧延により、チタン板の片面又は両面に凹凸パターンを形成する。具体的には、表面に凹凸パターンを有するワークロールを用いた圧延により、原料としてのチタン板の片面又は両面に凹凸パターンを形成することで、片面又は両面に凹凸パターンを有するチタン板を得ることができる。また、これらの面の表面積を増大させることで、チタン板の熱交換効率を高め、その結果、その伝熱性を高めることができる。
【0021】
当該凹凸形成工程(a)は、通常一対のワークロールの間にチタン板を通し、チタン板を圧下することでチタン板の片面又は両面に凹凸パターンを転写する。チタン板の片面のみに凹凸パターンを形成する場合、一方に凹凸パターンを有するワークロールを使用する。他方、チタン板の両面に凹凸パターンを形成する場合、両方に凹凸パターンを有するワークロールを使用する。
【0022】
ワークロールは、表面に凹凸パターンを有すること以外は、特に限定されず、公知のワークロールを使用することができる。また、ワークロール数も、特に限定されず、複数の同一又は異なったワークロールを組み合わせて使用することや、これにバックアップロールを組み合わせて使用することもできる。
【0023】
ワークロール表面の凹凸パターン形成方法も、特に限定されず、公知の方法を挙げることができる。一例を挙げれば、凹凸転写圧延に用いるワークロールは、凹凸転写圧延したチタン板の凸部が平面視で円形状であって、その直径が400μm以上で千鳥状に配置され、その平均凸部最大高さの平均値が15.0μm以上であり、また隣り合う凸部のピッチが600μm以上となるようにワークロール表面を凹凸加工する。具体的には、転写圧延後に凸形状となる領域を打ち抜き加工したフィルムをロールに張り付けエッチング加工することで、ロール表面に凹凸を形成させる方法や、レーザー加工、切削加工等の方法によりワークロールの表面に凹凸を形成することができる。
【0024】
ワークロール表面の凹凸パターン(凹凸の形状)は、求められるチタン板の凹凸パターンやその大きさに従って適宜設定される。
【0025】
ここで、ワークロール表面の凹凸パターンの凹凸形状は、特に限定されず、通常凹部状又はストライプ状であり、凹部状が好ましい。凹部としては、円柱〜楕円柱、又は立方体〜直方体が挙げられる。この場合、チタン板上に所望の形状の凹部を容易に形成させることができる。また凹凸パターンは、特に限定されず、通常、ワークロール表面に千鳥状、格子状、菱格子状、ランダム状等に配置することができる。
【0026】
チタン板の金属成分としては、所望のチタン板を得ることができる限り、特に限定されず、純チタンであってよく、或いは少量の他の金属を含むチタン系合金であってもよい。純チタンとしては、JIS1種(JIS H4600)に規定されるようなチタンを挙げることができる。他の金属としても、特に限定されず、通常パラジウム、アルミニウム、スズ、バナジウム、クロム等が挙げられる。またチタン板は熱延等の公知の方法により製造することができる。
【0027】
圧延方法としては、特に限定されず、公知の方法を挙げることができ、例えば、冷間圧延法が挙げられる。
【0028】
<焼鈍及び/又は酸洗工程(b)>
工程(b)では、チタン板を焼鈍及び/又は酸洗する。具体的には、工程(a)で得られた片面又は両面に凹凸パターンを有するチタン板を焼鈍及び/又は酸洗する。この工程(b)により、チタン板内部のひずみや、チタン板表面の異物を取り除くことができる。
【0029】
ここで、焼鈍時の工程温度は、特に制限されず、通常600℃以上850℃以下で、工程雰囲気も、特に制限されず、通常大気雰囲気、真空雰囲気等が挙げられる。
【0030】
酸洗をする際の酸溶液としては、特に限定されず、例えば、硝酸及びフッ酸を含む溶液等が挙げられる。
【0031】
また、工程(b)として焼鈍工程及び酸洗工程、又は焼鈍工程のみのいずれかで行ってもよい。他方、焼鈍工程や酸洗工程の前後に塩浴中でのソルト処理工程を組み込むこともできる。
【0032】
<矯正工程(c)>
工程(c)では、チタン板をテンションレベラーにより0.1%以上1.3%以下の平均伸び率で矯正する。具体的には、工程(b)で得られたチタン板をテンションレベラーにより0.1%以上1.3%以下の平均伸び率で矯正することで、目的とする片面又は両面に凹凸パターンを有するチタン板を得ることができる。この工程(c)により、工程(b)後のチタン板に高いテンションを掛けながら、チタン板の形状矯正や表面性状の向上を行うことができる。その結果、チタン板の平坦度及び耐力をより高めることができる。
【0033】
テンションレベラーとしては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。本発明では、チタン板を0.1%以上1.3%以下、好ましくは0.2%以上1.3%以下の平均伸び率で矯正する。平均伸び率が0.1%より小さいとチタン板の耐力を十分に高めることができない。他方、平均伸び率が1.3%より大きいと凹凸がつぶれ、所定の凸部高さが得られず伝熱性向上効果が小さい。また、凹凸がつぶれることで、板が反った状態になってしまうことがある。「平均伸び率」とは、L方向における矯正前のチタン板の長さに対する矯正後のチタン板の長さから矯正前のチタン板の長さを引いた長さの比率を意味する。テンションレベラーの操作条件等は上記のような平均伸び率を得ることができるように適宜設定される。また、「L方向」とは、チタン板の圧延方向に平行な方向を意味する。
【0034】
チタン板表面の凹凸パターンにおける平均凸部最大高さの縮小率は、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。縮小率が15%より高い場合、チタン板の凸部が多くつぶれ、伝熱性が低下することがある。
【0035】
温度、圧力、時間及び設備のようなその他の工程条件は、特に限定されず、使用原料等に従って適宜設定される。
【0036】
<チタン板>
本発明の製造方法により、片面又は両面に凹凸パターンを有する、伝熱性及び耐力に優れたチタン板を提供することができる。具体的には、凹凸パターンにおける平均凸部最大高さが15.0μm以上であり、L方向の0.2%耐力が180MPa以上であるような、片面又は両面に凹凸パターンを有するチタン板を提供することもできる。「チタン板」とは、プレート状又はシート状のチタン製金属板を意味する。
【0037】
ここで、チタン板表面の凹凸パターンは、ワークロール上の凹凸パターンと同様に、特に限定されず、通常凸部状又はストライプ状であり、凸部状が好ましい。凸部としては、円柱〜楕円柱、又は立方体〜直方体が挙げられる。
【0038】
チタン板の平均凸部最大高さの下限値は、好ましくは15.0μm、より好ましくは15.1μmである。下限値が15.0μmより低いとチタン板の表面積が不足し、チタン板の伝熱性が低下することがある。
【0039】
凹凸パターンが凸部状である場合、凸部の平面視形状は、特に限定されず、通常円形〜楕円形、正方形〜長方形等が挙げられ、円形〜楕円形が好ましい。また、これらは同一の形状であっても、或いは異なった形状であってもよい。また、凸部の頂部の形状も、特に限定されず、平坦〜略平坦であってよく、山状であってもよいが、平坦〜略平坦であることが好ましい。
【0040】
凸部の大きさも、特に限定されず、例えば凸部の平面視形状が円形〜楕円形の場合、通常2000μm
2以上1000000μm
2以下、好ましくは10000μm
2以上800000μm
2以下である。凸部の大きさが2000μm
2より小さいと、凹凸形成工程で凸部高さが高くなりにくく、チタン板の伝熱性が低下することがある。他方、凸部の大きさが1000000μm
2より大きいと、チタン板の表面積が不足し、チタン板の伝熱性が低下することがある。
【0041】
凸部間の距離(ピッチ)も、特に限定されず、通常100μm以上2000μm以下、好ましくは200μm以上1000μm以下である。ピッチが100μmより小さいと凸部間の距離が小さくなり、伝熱性が低下することがある。他方、ピッチが2000μmより大きいと凸部間の距離が大きくなりすぎ、この場合も伝熱性が低下することがある。
また、凸部の数も、特に限定されず適宜設定される。
【0042】
チタン板の対平滑板伝熱性向上率は、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.15以上となる。このことは、本発明のチタン板は優れた伝熱性を有することを示す。
【0043】
他方、L方向の0.2%耐力は、好ましくは180MPa以上、より好ましくは200MPa以上となる。このことは、本発明のチタン板は優れた耐力を有することを示す。
【0044】
本発明のチタン板は優れた伝熱性及び耐力を有する。このため、本発明に係るチタン板はこのような特性が求められる分野、特に熱交換器用プレートとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
<平均伸び率>
チタン板の平均伸び率は、L方向における矯正前のチタン板の長さに対する矯正後のチタン板の長さから矯正前のチタン板の長さを引いた長さの比率として算出した。
【0047】
<平均凸部最大高さ>
図2に示すように、レーザー顕微鏡(キーエンス製、VK−9700)で凸部7を1個以上含む線(測定ライン3)上の凹凸形状を圧延方向2に測定し、得られたプロフィルの凹部の平均線5をゼロとし、そのときの1個の凸部の中で最大となる高さを凸部最大高さとし、板幅方向6の同一線上に存在する凸部最大高さ4の10個の平均値を求め、平均凸部最大高さとした。
【0048】
<L方向(圧延方向に平行な方向)の0.2%耐力>
ASTM E345に準拠し、測定機器としてインストロン社製、引張り試験機5882型を使用する引張り試験により測定した。
【0049】
<対平滑板伝熱性向上率(蒸発伝熱性試験)>
蒸発伝熱性試験は、試料をセットした蒸発器に温水(35℃)と媒体(フロンR134a)を流し、温水及び媒体の温度、圧力及び流量の計測を行った。計測した温度及び流量より交換熱量を求め、熱通過係数を算出し、それらから平滑チタン板の熱通過係数を1.00としたときの各チタン板の比率を求め、対平滑板伝熱性向上率とした。
【0050】
(実施例1〜3及び比較例1〜5)
表面が凹凸加工されたワークロールでチタン板を冷間圧延し、片面の表面に凸部がφ400μm水玉でそのピッチ(凸部と凸部の間隔)が600μmとなる凸部を形成させ(工程(a))、800℃大気焼鈍し、ソルト処理後、硝酸−フッ酸で酸洗し、板厚0.6mmのチタン板(JIS1種)を作製した(工程(b))。凹凸付与した面の板幅方向の同一線上に存在する凸部の高さを圧延方向にレーザー顕微鏡を用いて測定し凸部最大高さの平均値を求めたところ、平均凸部最大高さは16.7μmであった。
【0051】
次に、このチタン板をテンションレベラーにて平均伸び率0.08%(比較例1)、0.21%(実施例1)、0.75%(実施例2)、1.27%(実施例3)、1.45%(比較例2)で矯正処理したものと、スキンパスにて平均伸び率0.20%(比較例3)、0.40%(比較例4)、0.90%(比較例5)で矯正処理したものを作製した(工程(c))。
図1は実施例1のチタン板を示すレーザー顕微鏡写真である。
【0052】
テンションレベラー又はスキンパスで矯正後のそれぞれのチタン板について、レーザー顕微鏡で平均凸部最大高さを測定し、凹凸付与した面の板幅方向(圧延方向の直交方向)の同一線上に存在する凸部の高さを圧延方向にレーザー顕微鏡を用いて測定し平均凸部最大高さの平均値を求め、縮小率として、矯正前のチタン板の平均凸部最大高さに対する矯正後のチタン板の平均凸部最大高さの比を求めた。さらに、引張り試験(ASTM E345に準拠、J試験片形状)を行い、L方向(圧延方向に平行な方向)の0.2%耐力を求めた。これらの結果を表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示されるように、テンションレベラーで平均伸び率を0.1%以上1.3%以下の範囲内で矯正したNo.1から3(実施例1から実施例3)は平均凸部最大高さが15.0μm以上かつ縮小率15%以下であり、凸部の潰れは小さく、さらに、0.2%耐力も180MPa以上となった。一方、テンションレベラーで平均伸び率を0.1%以上1.3%の範囲外で矯正したNo.4及び5(比較例1及び2)では、No.4は凸部の潰れが小さく平均凸部最大高さが15.0μm以上かつ縮小率15%以下であるが、平均伸び率は低いため0.2%耐力が小さくなり、No.5では0.2%耐力は大きいが、凸部の潰れ量が大きく、平均凸部最大高さが13.9μm、縮小率も17%と大きくなった。さらに、スキンパスで矯正を行ったNo.6から8(比較例3から比較例5)は、平均伸び率が0.2%と小さいNo.6でも凸部の潰れ量が大きく、平均凸部最大高さが得られず、縮小率が大きくなった。また、0.2%耐力も小さくなった。平均伸び率が0.90%と大きいNo.8では0.2%耐力は大きいが、凸部の潰れ量が大きくなった。また、凸部の潰れ量が大きいNo.7と8は凹凸付与面側が平滑面側に比べ伸びが大となり、板が反った形状となってしまった。
【0055】
次に0.2%耐力(L方向)が180MPa以上であったNo.1(実施例1)、2(実施例2)、3(実施例3)、5(比較例2)、8(比較例5)について、それぞれ80W×200Lmmに切り出し、また、基準材として凹凸がない同形状の平滑チタン板を用意した。それらを用いて蒸発伝熱性試験を行った。これらの結果を表2に示した。
【0056】
【表2】
【0057】
平滑板の伝熱性能を1.00とし、凹凸板における伝熱性能を考えると、熱交換器用プレートの対平滑板伝熱性向上率は1.00よりも大きいことが必要であるが、現実の熱交換器での著しい作用を得るためには、伝熱効率は1.05以上あることが望ましいとされている。No.1から3(実施例1から3)では、対平滑板伝熱性能向上率が1.16以上となり高い伝熱性能を得られることが分かった。