(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内容物が収容された被シール体の開口部をヒートシール装置によりシールする際に用いられ、前記開口部の近傍における被シール体の幅方向両側にそれぞれ配置される対をなす把持ユニットを有し、両把持ユニットで前記開口部を把持する被シール体把持装置であって、
前記把持ユニットは、
被シール体の厚み方向一方側に配置される第一把持部及び厚み方向他方側に配置される第二把持部と、
前記第一把持部が設けられるスライド部と、
前記スライド部を前記幅方向に沿ってスライド移動可能に支持するベースと、
先端側に前記第二把持部が設けられ、基端部が前記スライド部に回転可能に支持され、前記基端部のうち回転軸から変位した入力部位が前記幅方向外側に向けて押圧されることによって、前記第一把持部と前記第二把持部とが離間した開放姿勢から前記第一把持部と前記第二把持部とで被シール体を把持する把持姿勢へ回転により姿勢変更可能に構成された回転アームと、
前記回転アームの前記入力部位に係合する出力端を有し、前記入力部位を前記幅方向外側に向けて前記ベースを足場として押圧する動力部と、
前記動力部が前記回転アームを押圧することによって所定の初期位置から前記幅方向外側に向かおうとするスライド部を、前記初期位置に留まらせる方向に前記動力部による押圧力よりも小さな力で付勢する付勢部材と、
を備えることを特徴とする被シール体把持装置。
被シール体の幅方向一方側に配置される把持ユニットと、被シール体の幅方向他方側に配置される把持ユニットは、共通の動力源により駆動するように構成されている請求項1に記載の被シール体把持装置。
前記回転アームの入力部位として平歯車が配置され、前記出力端として前記平歯車に噛み合うラック部が形成されており、前記付勢部材は、一端が前記スライド部に接続され他端が前記ベースに接続されたバネである請求項1〜3のいずれかに記載の被シール体把持装置。
【背景技術】
【0002】
内容物を収容した樹脂製フィルムの包装袋(被シール体の一例)の開口部をシールするのに、簡便性、確実性などの利点を有することからヒートシール装置が多用されている。
【0003】
上記の包装袋の中に収容される内容物としては、食品、医療用器具、食品、機械部品、薬、など種々のものが例としてあげられる。
【0004】
このようなヒートシール装置は、包装袋の開口部を把持するための被シール体把持装置を有する。例えば特許文献1に例示される被シート体把持装置は、開口部の幅方向左右両側にそれぞれ配置され、包装袋の裏面側・表面側に位置する第一把持ローラ・第二把持ローラと、第一把持ローラ及び第二把持ローラを把持状態と開放状態とに切り換える状態切換機構と、第一把持ローラ及び第二把持ローラの回転駆動を制御する制御部とを備えている。
【0005】
この被シール体把持装置は、第一把持ローラ及び第二把持ローラが離間した開放状態から両ローラで被シール体を把持する把持動作を行うために、第二把持ローラを支持するローラ支持プレートの姿勢をシリンダ等の第一動力部からの動力を用いて姿勢変更し、第二把持ローラを第一把持ローラに近接又は接触させるように構成されている。さらに、両ローラで被シール体を把持した状態で被シール体を引っ張る動作を行うために、ローラ駆動モータ等の第二動力部からの動力を用いて両ローラを回転させる。被シール体把持装置は、把持動作を行った後、引っ張り動作を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記被シール体把持装置は、動作開始タイミングの異なる把持動作と引っ張り動作とを所定順序で実現すべく、把持動作の動力源と引っ張り動作の動力源とがそれぞれ別個に設けられているので、部品が冗長化して製造コストが増大してしまう。
【0008】
また、上記被シール体把持装置は、複数のローラと動力源との間に複数のギアやベルトなどの複数の部品が介在した複雑な構成であるので、部品点数が増大して製造コストが増大してしまう。
【0009】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、動作開始タイミングの異なる被シール体の把持動作と引っ張り動作とを簡易な構成で実現し、製造コストを低減させた被シール体把持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
【0011】
すなわち、本発明の被シール体把持装置は、
内容物が収容された被シール体の開口部をヒートシール装置によりシールする際に用いられ、前記開口部の近傍における被シール体の幅方向両側にそれぞれ配置される対をなす把持ユニットを有し、両把持ユニットで前記開口部を把持する被シール体把持装置であって、
前記把持ユニットは、
被シール体の厚み方向一方側に配置される第一把持部及び厚み方向他方側に配置される第二把持部と、
前記第一把持部が設けられるスライド部と、
前記スライド部を前記幅方向に沿ってスライド移動可能に支持するベースと、
先端側に前記第二把持部が設けられ、基端部が前記スライド部に回転可能に支持され、前記基端部のうち回転軸から変位した入力部位が前記幅方向外側に向けて押圧されることによって、前記第一把持部と前記第二把持部とが離間した開放姿勢から前記第一把持部と前記第二把持部とで被シール体を把持する把持姿勢へ回転により姿勢変更可能に構成された回転アームと、
前記回転アームの前記入力部位に係合する出力端を有し、前記入力部位を前記幅方向外側に向けて前記ベースを足場として押圧する動力部と、
前記動力部が前記回転アームを押圧することによって所定の初期位置から前記幅方向外側に向かおうとするスライド部を、前記初期位置に留まらせる方向に前記動力部による押圧力よりも小さな力で付勢する付勢部材と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
このように構成すれば、スライド部が所定の初期位置にあり、回転アームが開放姿勢にある初期状態では、付勢部材がスライド部を所定の初期位置に留まらせる方向に付勢しているので、動力部による押圧力は回転アームを回転させる方向に働く。回転アームが回転により開放姿勢から把持姿勢に姿勢変更し、第一把持部及び第二把持部により被シール体を把持する動作がなされる。回転アームが把持姿勢にある状態では、動力部による押圧力が、第一把持部及び第二把持部により被シール体を把持する方向に働くと共に、スライド部が付勢部材の付勢力に抗して幅方向外側に移動させる方向に働く。スライド部の幅方向外側に向かおうとする推力が付勢部材による付勢力よりも勝ると、第一把持部及び第二把持部による被シール体の把持が維持された状態でスライド部が幅方向外側に移動して被シール体を幅方向外側に引っ張る動作がなされる。
【0013】
したがって、動作開始タイミングの異なる被シール体Pの把持動作と引っ張り動作とを共通の動力部65で実現することができ、製造コストを低減することが可能となる。また、被シール体Pの把持動作と引っ張り動作とを簡易な構成で実現することが可能となる。
【0014】
動力源を減らして製造コストを一層低減するためには、被シール体の幅方向一方側に配置される把持ユニットと、被シール体の幅方向他方側に配置される把持ユニットは、共通の動力源により駆動するように構成されていることが好ましい。
【0015】
簡素な構成で動力源を共有するためには、前記動力部は、圧縮空気により前記出力端を前記幅方向に沿って移動させるエアシリンダを含むことが効果的である。
【0016】
簡易な構成で、動作開始タイミングの異なる被シール体の把持動作と引っ張る動作とを共通の動力部で実現するためには、前記回転アームの入力部位として平歯車が配置され、前記出力端として前記平歯車に噛み合うラック部が形成されており、前記付勢部材は、一端が前記スライド部に接続され他端が前記ベースに接続されたバネであることが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るヒートシールシステムの好適な実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、ヒートシールシステム全体の外観構成を示す斜視図である。
図2は、包装袋の構成を示す図である。
【0019】
図2に示すような包装袋P(被シール体に相当)内に適宜の内容物が収容されると、その開口部Aがシールされて密封される。開口部Aに隣接した内側は、把持領域Sに相当する箇所であり、開口部Aをシールする際には、この場所が押圧されて包装袋Pが不用意に移動しないように保持する。包装袋P内に収容される内容物としては、食品、機械部品、注射器等の医療用器具、各種日用品などが例としてあげられるが、特定のものに限定されるものではない。
【0020】
図1のように、ヒートシールシステムは、包装袋Pの開口部Aをシールするためのヒートシール装置Hと、包装袋Pの把持領域Sを把持する被シール体把持装置Mと、筐体部Bにより構成されている。筐体部B内にヒートシール装置Hと被シール体把持装置Mとが収納されており、ヒートシール装置H及び被シール体把持装置Mは固定されている。
【0021】
図1において、ヒートシール装置Hは、装置の下部側に位置する基台部1を備えており、この基台部1に主要な機構が収容されている。基台部1の上部には上部カバー部材2が設けられている。基台部1の手前側には、開口部Aをシールすべき包装袋Pを載置し、挟持するための袋挟持部3が設けられている。基台部1の上部手前側には、圧着レバー部4が設けられており、シールを行う時は、この圧着レバー部4が押し下げられる。
【0022】
袋挟持部3には、第1受け部30と第2受け部31が配置されている。これに対応して、圧着レバー部4には、第1押圧部40と第2押圧部41が配置されている。第1押圧部40と第1受け部30は、包装袋Pの把持領域Sを押圧する機能を有し、その表面はゴムなどの弾性材料により形成される。第2押圧部41と第2受け部31は、包装袋Pの開口部A(被シール箇所)を押圧・挟持する機能を有する。また、第1押圧部40と第2押圧部41は、独立して動くことが可能である。圧着レバー部4の左右両側には、一対の駆動レバー4aが設けられており、第2押圧部41と一体的に連結されている。また、駆動レバー4aには、駆動軸4bが連結されており、不図示のシリンダーにより駆動される。圧着レバー部4は、基台部1の奥側に設定された所定の軸芯周りに回転可能に支持されている。
【0023】
第2受け部31は、その上部に不図示の線状ヒーターが内蔵されており、その表面部はフッ素樹脂シートにより被覆されている。これにより、樹脂製の包装袋Pの融着片が付着しにくく、たとえ付着したとしてもはがれ易いようになっている。線状ヒーターは、包装袋Pの開口部Aの長さをカバーできるに十分な長さを有している。
【0024】
第2押圧部41は、操作手前側に2箇所、第1押圧部40を支持するための支持部41aを備えている。第1押圧部40には、第1押圧部支持軸42が一体的に結合されており、第1押圧部支持軸42は、支持部41aに沿ってスライド自在に取り付けられている。また、第1押圧部支持軸42の周囲にはコイルバネが設けられており、第2押圧部41に対して相対的に第1押圧部40を下方向に付勢している。
【0025】
被シール体把持装置Mについて図を用いて詳しく説明する。
図3は、被シール体把持装置Mの外観構成を示す斜視図である。被シール体把持装置Mは、主として、包装袋Pの幅方向WD両側にそれぞれ配置される対をなす把持ユニット6・6を有する。両把持ユニット6・6は、幅寸法が異なる種々の包装袋Pに対応可能にするべく、互いの離間距離を変更可能に筐体部Bに取り付けられている。
【0026】
把持ユニット6は、包装袋Pの開口部の両側をそれぞれ把持する把持動作を行い、その後、把持状態を維持したまま開口部Aを幅方向両側に引っ張る動作を行う機構である。把持ユニット6は、
図4に示すように、包装袋Pに接触して当該包装袋Pを把持するための第一把持部60及び第二把持部61と、スライド部62と、ベース63と、回転アーム64と、動力部65と、付勢部材66とを有する。なお、
図4は、把持ユニット6を示す斜視図であり、
図5は、把持ユニット6を模式的に示す正面図である。
【0027】
図4及び
図5に示すように、第一把持部60及び第二把持部61は、ゴムなどの弾性部材で形成されており、包装袋Pと接触して把持するための平坦面を有する。第一把持部60は、包装袋Pの厚み方向一方側PD2に配置され、第二把持部61は、包装袋Pの厚み方向他方側PD1に配置される。
【0028】
スライド部62は、底板部位62a及び底板部位62aの両側端から起立する起立板部位62bを有する断面U字状をなすスライド本体62cと、起立板部位62b同士を接続するスペーサ62dとを有する。スペーサ62dは、スライド本体62cのうち被シール体幅方向外側WD1となる一端部及び被シール体幅方向内側WD2となる他端部にそれぞれ配置されている。スライド本体62cの被シール体幅方向内側WD2となる他端部には、第一把持部60が設けられている。
【0029】
ベース63は、スライド部62を被シール体幅方向WDに沿ってスライド移動可能に支持する。具体的には、スライド部62を構成するスライド本体62cの底板部位62aを支持する略板状のレール部位63aを有する。レール部位63aの被シール体幅方向外側WD1となる一端部及び被シール体幅方向内側WD2となる他端部には、対をなす起立片63b・63cが設けられ、両起立片63b・63cによってスライド部62のスライド移動可能な範囲を規定する規定部63Xが構成されている。被シール体幅方向外側WD1にある起立片63bは、その先端が被シール体幅方向内側WD2に向かって折り曲げられており、先端部がスライド本体62cの起立板部位62b同士の間に挟まり、スライド部62を支持している。
【0030】
回転アーム64は、先端側に第二把持部61が設けられ、基端部64aがスライド部62の起立板部位62bに回転可能に支持されている。回転アーム64は、第一把持部60と第二把持部61とが離間した開放姿勢t1(
図5参照)と、第一把持部60と第二把持部61とで被シール体Pを把持する把持姿勢t2(
図7参照)とのいずれかの姿勢に回転により姿勢変更可能に構成されている。回転アーム64の基端部64aには、回転軸CLと同軸に平歯車64bが取り付けられている。回転アーム64の基端部64aのうち回転軸CLから変位した入力部位P1(平歯車64bの一部)を被シール体幅方向外側WD1に押圧すると、第二把持部61が第一把持部60に近づく方向に回転アーム64が回転し、
図5に示す開放姿勢t1から
図7に示す把持姿勢t2に回転アーム64の姿勢が変更される。逆に、入力部位P1(平歯車64bの一部)を被シール体幅方向内側WD2に押圧すると、第二把持部61が第一把持部60から遠ざかる方向に回転アーム64が回転し、
図7に示す把持姿勢t2から
図5に示す開放姿勢t1に回転アーム64の姿勢が変更される。
【0031】
図4及び
図5に示すように、動力部65は、動力源となるエアポンプ65aと、エアポンプ65aからの圧力空気によって駆動する複動式のエアシリンダ65bとを含んで構成されている。エアシリンダ65bは、ベース63に取り付けられたシリンダ本体65cと、シリンダ本体65cによって被シール体幅方向WDに沿って移動可能に支持される出力端65dとを有し、圧縮空気の入力により出力端65dが被シール体幅方向外側WD1又は被シール体幅方向内側WD2に向けて移動するように構成されている。出力端65dには、回転アーム64の基端部64aに設けられた平歯車64bに噛み合うラック部65eが形成されている。圧縮空気によって出力端65dが被シール体幅方向外側WD1に向けて移動すると、動力部65が入力部位P1を被シール体幅方向外側WD1に向けてベース63を足場として押圧することになる。なお、動力部65が回転アーム64を押圧することによって、スライド部62は被シール体幅方向外側WD1に向かおうとする。仮に、スライド部62のスライド移動が規制されている場合には、動力部65が回転アーム64を押圧することによって、回転アーム64が回転することになる。
【0032】
図3及び
図4に示すように、対をなす把持ユニット6・6は、それぞれエアシリンダ65bを有し、両エアシリンダ65b・65bは、共通のエアバルブ65fを介して共通のエアポンプ65aにより駆動するように構成されている。エアシリンダ65bは、複動式であるので、圧力空気を入れるための流入口が2つある。一方の流入口は、出力端65dを被シール体幅方向外側WD1に向けて移動させる方向に圧縮空気を入れるための口である。他方の流入口は、出力端65dを被シール体幅方向内側WD2に向けて移動させる方向に圧縮空気を入れるための口である。エアバルブ65fは、エアポンプ65aからの圧縮空気の供給先を2つの流入口のいずれかに切り替える。すなわち、被シール体幅方向一方側に配置される第一把持部及び第二把持部を把持動作させるための出力端と、被シール体幅方向他方側に配置される第一把持部及び第二把持部を把持動作させるための出力端とは、共通の動力源(エアポンプ65a)により駆動するように構成されている。なお、本実施形態では、共通の動力源としてエアポンプ65aを用いているが、工場にあるエア源を用いてもよい。本実施形態では、エアシリンダ65bに複動式を用いているので、エアポンプ65aは常に圧縮空気を送り出す駆動状態にある。
【0033】
図4及び
図5に示すように、付勢部材66は、コイルバネを用いたもので、一端部がスライド部62に設けられ、他端部がベース63に取り付けられ、スライド部62を所定の初期位置(スライド可能範囲のうち最も幅方向内側)に留まらせる方向に付勢している。付勢部材66による付勢力(バネ力)は、動力部65による押圧力(圧縮空気による押圧力)によりも小さく設定されている。なお、
図4及び
図5は、スライド部62が所定の初期位置にある状態を示している。
【0034】
被シール体把持装置Mの動作について
図5、
図7及び
図8を用いて説明する。
図5は、被シール体Pの把持を開放した開放状態であり、
図7及び
図8は、被シール体Pを把持する把持状態である。
【0035】
図5に示すように、動力源としてのエアポンプ65aからエアバルブ65fを介して圧縮空気が供給され、出力端65dを被シール体幅方向内側WD2に向けて移動させる方向に圧縮空気が供給されている場合には、付勢部材66の付勢力及び圧縮空気の押圧力によってスライド部62が所定の初期位置に留まることになる。このとき、出力端65dのラック部65eと回転アーム64の平歯車64bとの噛み合いによって、回転アーム64が開放姿勢t1に保持される。
【0036】
エアバルブ65fにより圧縮空気の供給先が変更され、動力部65を被シール体幅方向外側WD1に向けて移動させる方向に圧縮空気が供給されると、出力端65dが回転アーム64を被シール体幅方向外側WD1に向けて押圧する。出力端65dが回転アーム64を被シール体幅方向外側WD1に押圧すると、スライド部62が被シール体幅方向外側WD1に向けて移動しようとする。ところが、スライド部62のスライド移動は付勢部材66の付勢力によって規制されているので、スライド部62は所定の初期位置に留まり、その代わりに、
図7に示すように、回転アーム64が回転して開放姿勢t1から把持姿勢t2に姿勢変更し、被シール体Pが第一把持部60及び第二把持部61で把持される把持動作が実行される。
【0037】
図7に示すように、回転アーム64が把持姿勢t2になると、出力端65dによる押圧力がそのまま両把持部60・61による把持力となる。当然ながら回転アーム64はそれ以上回転しなくなり、出力端65dによる押圧力がスライド部62を被シール体幅方向外側WD1に移動させる方向に作用する。付勢部材66による付勢力よりも出力端65dの押圧力が小さい初期状態では、付勢部材66の付勢力によってスライド部62が所定の初期位置に留まる。
【0038】
出力端65dによる押圧力が徐々に大きくなり、その押圧力が付勢部材66による付勢力よりも大きくなると、
図8に示すように、スライド部62は、付勢部材66の付勢力に抗して被シール体幅方向外側WD1に移動し、引っ張り動作がなされる。スライド部62が起立片63bに係合することでスライド移動が終わる。このとき、第一把持部60及び第二把持部61は、付勢部材66の付勢力に等しい力で被シール体Pを把持する。
【0039】
<システムの機能ブロック図>
次に、本実施形態に係るヒートシールシステムの機能に関して、
図6のブロック図により説明する。制御部100は、ヒートシールシステムを構成するヒートシール装置H及び被シール体把持装置Mを制御するものであり、CPU、メモリ、制御プログラム等により構成される。
【0040】
圧着制御手段100cは、被シール体把持装置Mにより把持された包装袋Pの開口部Aをシールするための制御機能を提供する。圧着レバー部4を押し下げ駆動制御することで、包装袋Pの開口部A近傍の把持領域Sを押圧・圧着し、また、開口部Aに第2押圧部41(シール圧着部に相当)を押圧・圧着させる。圧着レバー部4の駆動は、不図示のシリンダーにより行なわれ、このシリンダーに対する駆動指令信号を出す。
【0041】
圧着レバー作動量検出手段104は、圧着レバー部4の動作状態を検出する。圧着レバー部4の動作状態は、圧着を行なわない開放位置、第1押圧部40(開口部近傍を押圧する押圧部に相当)により把持領域Sのみの押圧を行う第1押圧位置、この第1押圧位置よりも更に押圧して第2押圧部41による圧着も行われる第2押圧位置の3段階の状態を検出する。作動量の検出は、シリンダーの通電状態や、圧着レバー部4の位置を検出するセンサー信号などに基づいて行うことができる。
【0042】
また、圧着制御手段100cは、ヒーター108に対する駆動制御を行なう。ヒーター108への加熱時間・加熱タイミング・冷却時間などは、予め設定されたプログラムにより行うことができる。ヒーター108の作動状態も、ヒーター動作完了検出手段105やノズル動作完了検出手段106の機能により行なうことができる。
【0043】
被シール体把持装置制御手段100dは、被シール体把持装置Mに対する駆動制御を行う。被シール体把持装置Mは、原点位置・シール位置・排出位置などの各位置に移動制御する必要がある。原点位置は、包装袋Pを被シール体把持装置Mにセットする位置である。シール位置は、包装袋Pの開口部Aをシールする位置である。排出位置は、シールされた包装袋Pを被シール体把持装置Mから排出させる位置である。被シール体把持装置Mの位置は、位置検出手段107の機能により検出することができる。また、上記把持ユニット6による被シール体Pの把持動作及び引っ張り動作を制御すべく、圧縮空気の供給先を変更するためのエアバルブ65fの駆動を制御する。
【0044】
以上のように、本実施形態の被シール体把持装置Mは、内容物が収容された被シール体Pの開口部Aをヒートシール装置Hによりシールする際に用いられ、開口部Aの近傍における被シール体Pの幅方向両側WDにそれぞれ配置される対をなす把持ユニット6・6を有し、両把持ユニット6・6で開口部Aを把持する被シール体把持装置Mであって、
前記把持ユニット6は、
被シール体Pの厚み方向一方側PD2に配置される第一把持部60及び厚み方向他方側PD1に配置される第二把持部61と、
第一把持部60が設けられるスライド部62と、
スライド部62を幅方向WDに沿ってスライド移動可能に支持するベース63と、
先端側に第二把持部61が設けられ、基端部64aがスライド部62に回転可能に支持され、基端部64aのうち回転軸CLから変位した入力部位P1が幅方向外側WD1に向けて押圧されることによって、第一把持部60と第二把持部61とが離間した開放姿勢t1から第一把持部60と第二把持部61とで被シール体Pを把持する把持姿勢t2へ回転により姿勢変更可能に構成された回転アーム64と、
回転アーム64の入力部位P1に係合する出力端65dを有し、入力部位P1を幅方向外側WD1に向けてベース63を足場として押圧する動力部65と、
動力部65が回転アーム64を押圧することによって所定の初期位置から幅方向外側WD1に向かおうとするスライド部62を、初期位置に留まらせる方向に動力部65による押圧力よりも小さな力で付勢する付勢部材66と、
を備えている。
【0045】
このように構成すれば、スライド部62が所定の初期位置にあり、回転アーム64が開放姿勢t1にある初期状態では、付勢部材66がスライド部62を所定の初期位置に留まらせる方向に付勢しているので、動力部65による押圧力は回転アーム64を回転させる方向に働く。回転アーム64が回転により開放姿勢t1から把持姿勢t2に姿勢変更し、第一把持部60及び第二把持部61により被シール体Pを把持する動作がなされる。回転アーム64が把持姿勢t2にある状態では、動力部65による押圧力が、第一把持部60及び第二把持部61により被シール体Pを把持する方向に働くと共に、スライド部62が付勢部材66の付勢力に抗して幅方向外側WD1に移動させる方向に働く。スライド部62の幅方向外側WD1に向かおうとする推力が付勢部材66による付勢力よりも勝ると、第一把持部60及び第二把持部61による被シール体Pの把持が維持された状態でスライド部62が幅方向外側WD1に移動して被シール体Pを幅方向外側WD1に引っ張る動作がなされる。
【0046】
したがって、動作開始タイミングの異なる被シール体Pの把持動作と引っ張り動作とを共通の動力部65で実現することができ、製造コストを低減することが可能となる。また、被シール体Pの把持動作と引っ張り動作とを簡易な構成で実現することが可能となる。
【0047】
特に、本実施形態では、被シール体Pの幅方向一方側に配置される把持ユニット6と、被シール体Pの幅方向他方側に配置される把持ユニット6は、共通の動力源たるエアポンプ65a又は工場のエア源により駆動するように構成されている。このように、被シール体Pの幅方向左右両側にそれぞれ配置される第一把持部60及び第二把持部61が、共通の動力源たるエアポンプ65aで駆動するので、動力源を減らして製造コストを一層低減することが可能となる。
【0048】
さらに、本実施形態では、動力部65は、圧縮空気により出力端65dを幅方向WDに沿って移動させるエアシリンダ65bを含んでいる。エアシリンダ65bであれば、エアポンプ65a又は工場のエア源から送出される圧縮空気のエア配管を共通化するだけで、幅方向左右両側にそれぞれ配置される把持ユニット6の動力源を共通化でき、簡素な構成で動力源を共有することが可能となる。
【0049】
さらにまた、本実施形態では、回転アーム64の入力部位P1として平歯車64bが配置され、出力端65dとして平歯車64bに噛み合うラック部65eが形成されており、付勢部材66は、一端部が前記スライド部62に接続され他端部がベース63に接続されたバネである。このように、簡易な構成で、動作開始タイミングの異なる被シール体Pの把持動作と引っ張る動作とを共通の動力部65で実現することが可能となる。
【0050】
<別実施形態>
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【0051】
例えば、本実施形態では、動力部65としてエアポンプ65a、エアバルブ65f及び複動式のエアシリンダ65bを用いているが、出力端65dを直線移動可能なものであれば、これに限定されるものではない。例えば、リニアアクチュエータや直動モータなどが挙げられる。また、本実施形態では、複動式のエアシリンダ65bを用いているが、単動式のエアシリンダを用いてもよい。また、本実施形態では、動力部65を、共通のエアバルブ65f及び共通のエアポンプ65aとで構成しているが、これに限定されるものではない。例えば、動力部を、エアシリンダ毎に設けたエアバルブおよび共通のエアポンプで構成してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、左右にある把持ユニット6の動力源を共用しているが、把持動作と引っ張り動作の動力源が共用されていれば、把持ユニット毎に動力源を個別に設けてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、回転アーム64の基端部64aに設定した入力部位P1として平歯車64bを採用し、出力端65dにラック部65eを設けているが、回転アームに設定した入力部位を被シール体幅方向外側WD1に向けて押圧することができれば、本実施形態に限定されるものではない。例えば、ボールスクリューなどの動力伝達機構を採用することも可能である。