(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
調理物の1つであるご飯の食感は、温度に大きく左右され、温度が高い方が炊きたてに近く、美味しく感じる。一方、保温機器の1つである炊飯器は、保温処理の実行温度を高め(例えば72℃)または低め(例えば65℃)に選択可能としている。そして、この種の炊飯器の製造メーカでは、省エネを図るために初期設定を低め保温としており、ユーザも低め保温で使用する傾向にある。しかし、ユーザ毎に保温をする時間の長さは異なるため、食感がよいご飯をユーザに食味してもらうには、保温方法に改善の余地がある。
【0003】
特許文献1には、炊飯処理の実行前に、保温処理の実行時間を「保温長」「保温短」「保温なし」で選択可能とした炊飯器が記載されている。この炊飯器では、選択された保温処理の実行時間に応じて、炊飯処理の実行時の加熱量を変更し、炊き上げたご飯の含水量を調整する構成としている。即ち、保温時間が長くなることによって蒸発する水分が多くなることを踏まえ、炊飯処理の終了時の含水量を調整している。
【0004】
しかし、特許文献1の炊飯器は、選択された保温時間に基づいて炊飯処理での加熱量を変更するため、選択した時間によって、含水量の多いべちゃついたご飯になったり、含水量の少ないかたいご飯になり、炊飯直後のご飯の炊き上がり一定ではなく、最適な状態ではない。そもそも、炊飯器を使用するユーザは、予約炊飯機能を利用して第1希望の時刻に炊き上げたご飯を食事し、余ったご飯を保温して第2または第3希望の時刻に食事する。そのため、炊飯直後のご飯の状態を変更するとユーザに違和感を与える。
【0005】
特許文献2には、通常保温と高温保温とを選択可能とし、更に高温保温の設定時間を変更可能とした炊飯器が記載されている。この炊飯器では、通常保温が選択されると、炊飯処理の終了後に低温保温温度まで降下させ、加熱手段により低温保温温度を維持する。また、高温保温が選択されると、設定された実行時間に応じて78℃から85℃の間で維持する高温保温温度を変更する。具体的には、実行時間が長くなるに従って保温温度を低くしている。そして、高温保温の実行時間が経過すると、通常保温を実行する。
【0006】
しかし、特許文献2の炊飯器の保温処理では、朝に炊いたご飯を夜に食事する場合、通常保温状態になっているため、食感が悪くなっている。なお、高温保温の実行時間を長く設定可能とすると、実行時間が長くなるに従って保温温度が低く設定されるため、通常保温と変わらなくなってしまう。また、保温処理の開始直後に高温保温を行うため、ご飯に含まれる水分が直ぐに蒸発してしまい、食感の劣化が著しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ユーザの生活習慣に合致し、選択された保温時間内において、調理物の保温状態を最適に維持可能な保温機器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の保温機器は、機器本体内に配設した内鍋内の調理物を、温度検出手段の検出値に基づいて加熱手段によって加熱し、調理物を食事可能な保温温度帯に保温する保温機器であって、予め設定された2以上の食味保障時間のうち所定の食味保障時間に選択可能な選択手段と、前記加熱手段を制御して前記選択手段によって選択された食味保障時間毎に異なる保温処理を実行する制御手段と、を備える構成としている。
このようにすれば、ユーザが選択した食味保障時間内においては、調理物の劣化を最大限に抑え、良好な食感を維持することができる。
【0010】
この保温機器では、前記保温処理は、前記保温温度帯の低温側で保温する低保温工程と、前記保温温度帯の高温側で保温する高保温工程とを有し、前記食味保障時間毎に少なくとも前記低保温工程の実行時間が異なる。ここで、実行時間が異なるとは、実行しない「0分」を含む。このようにすれば、調理物の水分の蒸発を最大限に抑制し、食事時となる食味保障時間の終盤には、温度を含めた食感を良好に維持できる。
この場合、前記低保温工程の実行後に、前記高保温工程を実行することが好ましい。このようにすれば、ご飯に含まれる水分が過剰に蒸発することを防止できる。
また、前記保温処理は、選択された前記食味保障時間が長くなるに従って前記低保温工程の実行時間を長くすることが好ましい。このようにすれば、序盤に実行される低保温工程により省エネを図ることができるうえ、終盤では高保温工程の実行により確実に良好な食感を確保できる。
【0011】
また、前記保温温度帯の高温側の第1設定温度と、前記保温温度帯の低温側の第2設定温度と、前記第1設定温度より低く前記第2設定温度より高い第3設定温度とを設定し、前記低保温工程では、前記第1および第2設定温度に基づいて前記加熱手段を制御する一方、前記高保温工程では、前記第1および第3設定温度に基づいて前記加熱手段を制御することが好ましい。このようにすれば、保温温度帯内において、確実に低保温工程と高保温工程とを実行することができる。
具体的には、前記低保温工程では、加熱により前記第1設定温度になると前記加熱手段に供給する電力量を下げて温度を下げる降温ステップを実行し、前記第2設定温度になると前記加熱手段をオンオフ制御して前記第2設定温度に維持するように温調し、この温調ステップを所定時間実行すると、前記加熱手段に供給する電力量を上げて温度を上げる昇温ステップを実行することが好ましい。このようにすれば、第2設定温度を高温育成菌などが繁殖する可能性がある低い温度に設定しても、第1設定温度を菌の繁殖を抑制可能な高い温度に設定することにより、調理物の劣化を防ぐことができるうえ、確実に省エネを図ることができる。
この場合、前記低保温工程では、前記降温ステップにより前記第3設定温度より高く前記第1設定温度より低い第4設定温度を下回り、前記昇温ステップにより前記第4設定温度を上回るまでの時間が予め設定した劣化防止時間(TP)以下になるように、前記温調ステップの実行時間(TK)を設定することが好ましい。このようにすれば、調理物の劣化を確実に防止できる。
また、前記高保温工程では、加熱により前記第1設定温度になると前記加熱手段に供給する電力量を下げて温度を下げる降温ステップを実行し、前記第3設定温度になると前記加熱手段に供給する電力量を上げて温度を上げる昇温ステップを実行することが好ましい。このようにすれば、良好な食感を得ることが可能な温度を確実に維持できる。
なお、加熱手段に供給する電力量とは、特定の設定温度から他の特定の設定温度になるまでに通電する電力の総量を意味する。そして、供給する電力量を下げるとは、通電を遮断した「0」を含む。
【0012】
さらに、前記第1設定温度は75℃以上であり、前記第3設定温度は75℃未満かつ60℃以上であり、前記第2設定温度は60℃未満であることが好ましい。ここで、第1設定温度の上限は95℃であり、第2設定温度の下限は40℃である。このようにすれば、菌の繁殖を確実に防止したうえで、省エネを図り、良好な食感を維持した保温処理が可能である。
そして、前記選択手段により選択可能な食味保障時間は、12時間、24時間、48時間および前記保温処理を実行しない0時間を有することが好ましい。このようにすれば、ユーザの生活習慣に則した使用性のよい保温機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の保温機器では、ユーザが食味保障時間を選択可能とし、選択した食味保障時間毎に異なる保温処理を実行するため、食味保障時間内においては、調理物の劣化を最大限に抑え、良好な食感を維持することができる。よって、ユーザの生活習慣に合致した使用性のよい保温機器を提供することができる。具体的には、保温温度帯の低温側で保温する低保温工程を実行した後、保温温度帯の高温側で保温する高保温工程を実行するため、序盤では調理物の水分の蒸発を最大限に抑制し、食事時となる終盤には温度を含めた食感を良好な状態とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る実施形態の保温機器の一例である炊飯器を示す。この炊飯器は、誘導加熱される内鍋10を着脱可能に収容する炊飯器本体11と、炊飯器本体11に開閉可能に取り付けた蓋体19とを備えている。そして、本実施形態では、調理物であるご飯を保温する保温処理において、ユーザが希望する保温時間を選択可能とし、その時間が経過するまでの保温状態を最大限に優れたものとするものである。
【0017】
炊飯器本体11は、外装体の上部に開口部12が設けられ、この開口部12の下側に、内鍋10の収容部を構成する内胴13と非導電性材料からなる保護枠14とが配設されている。保護枠14の外周面下部には、内鍋10を誘導加熱する第1加熱手段である誘導加熱コイル15がフェライトコア16を介して配設されている。また、内胴13の外周面には、内鍋10の上側を加熱する第2加熱手段である胴ヒータ17が配設されている。さらに、保護枠14には、内鍋10の温度を検出するための第1温度検出手段である鍋用温度センサ18が配設されている。
【0018】
蓋体19は、炊飯器本体11に回動可能に取り付けられ、炊飯器本体11の開口部12を閉塞するものである。この蓋体19には、内鍋10を臨む内面側に放熱板20が配設され、この放熱板20の上面に第3加熱手段である蓋ヒータ21が配設されている。また、放熱板20の下面には、内鍋10の上端開口を密閉する内蓋22が着脱可能に配設されている。さらに、蓋体19には、内鍋10内と外部とを連通する排気通路23が設けられている。さらにまた、蓋体19には、内鍋10内の温度を検出する第2温度検出手段である蓋用温度センサ24が、放熱板20に接するように配設されている。なお、図中符号25は、蓋体19を開放操作するための開放操作部材である。
【0019】
この炊飯器において、炊飯器本体11の正面上部には、ユーザが炊飯条件や保温時間を入力したり、現状の動作状態を表示するための操作パネル部26が設けられている。この操作パネル部26は、
図2に示すように、中央の液晶表示板35の周囲に、入力手段である複数のスイッチ27〜34を配設したものである。
【0020】
液晶表示板35の右側には、炊飯処理の実行スイッチである炊飯スイッチ27と、現在時刻や炊飯時刻などを変更するためのアップスイッチ28およびダウンスイッチ29と、食事する第1希望時刻にご飯を炊き上げるための予約炊飯の選択スイッチである予約スイッチ30とが設けられている。また、液晶表示板35の左側には、炊飯処理および保温処理を停止したり選択状態を解除したりするためのとりけしスイッチ31と、炊飯する飯米が無洗米であると選択するための無洗米スイッチ32とが設けられている。そして、この無洗米スイッチ32の下側には、メニューを選択するためのメニュースイッチ33と、保温処理の実行スイッチであるとともに保温処理の実行時間(食味保障時間)TSを選択するための選択手段である保温選択スイッチ34とが設けられている。
【0021】
液晶表示板35には、予約時刻や炊飯に要する残時間などを示す数値セグメント36の周囲に、炊飯可能なメニューの選択状態を示すメニューセグメント37が設けられている。また、数値セグメント36の上部には、白米の選択状態を示すとともに、炊き上がり固さ(5段階)の設定状態を示す三角形状の印表示部38が設けられている。さらに、液晶表示板35の下側には、保温選択スイッチ34の操作により選択可能な保温時間(食味保障時間)選択表示部39が設けられている。この保温時間選択表示部39は、食味保障時間TSの選択状態を示すもので、保温切(保温なし)、半日(12時間)保温、1日(24時間)保温および2日(48時間)保温という文字表示の横にLED40a〜40dを配設したものである。
【0022】
また、炊飯器には、炊飯器本体11の正面側にホルダー41を介して制御基板42が配設され、この制御基板42に制御手段であるマイコン43が実装されている。このマイコン43は、
図3に示すように、操作パネル部26のスイッチ操作による入力情報と、温度センサ18,24からの入力情報とに基づいて、内蔵した記憶手段であるROM44に予め設定されたプログラムに従って、誘導加熱コイル15、胴ヒータ17、蓋ヒータ21を制御し、炊飯処理および保温処理を実行する。
【0023】
具体的には、マイコン43のROM44には、各メニューに応じて異なる炊飯フロー(炊飯処理)および保温フロー(保温処理)が記憶されている。炊飯スイッチ27が操作されると、選択された炊飯処理が実行された後、引き続いて保温処理が実行される。また、保温選択スイッチ34が操作されると、前に実行(選択)された保温時間(食味保障時間)が点灯(選択)され、操作の度に「保温切」「半日保温」「1日保温」「2日保温」が順番に選択される。そして、非操作状態が3秒間継続すると選択状態を確定し、その選択された保温処理が実行される。なお、初期設定は1日保温である。
【0024】
炊飯処理は、周知の炊飯器と同様に、予熱工程、昇温工程、沸騰維持工程およびむらし工程を有し、これらの工程が順番に実行される。予熱工程は、飯米に水を吸収させるためのもので、鍋用温度センサ18による下部測定温度が約40℃を維持するように、誘導加熱コイル15と蓋ヒータ21とが動作される。昇温工程は、内鍋10内を沸騰直前の温度まで昇温させ、その途中で内鍋10内の炊飯容量を判別するもので、誘導加熱コイル15および蓋ヒータ21がフルパワーで動作される。沸騰維持工程は、内鍋10内を沸騰温度に維持してご飯を炊き上げ、ドライアップさせるもので、誘導加熱コイル15、胴ヒータ17および蓋ヒータ21が所定の通電率でオンオフ制御される。むらし工程は、炊き上げた内鍋10内のご飯を蒸らすもので、誘導加熱コイル15、胴ヒータ17および蓋ヒータ21が所定の通電率で動作される。
【0025】
保温処理は、
図4および
図5(A),(B),(C)に示すように、鍋用温度センサ18の検出値に基づいて誘導加熱コイル15および蓋ヒータ21を制御することにより、内鍋10内のご飯を食事可能な温度帯(本実施形態では55℃から80℃)に保温するものである。そして、本実施形態では、保温選択スイッチ34によって選択された食味保障時間TS毎に異なる保温処理が実行される。
【0026】
具体的には、保温処理は、選択された食味保障時間内において、低保温工程と高保温工程との組み合わせることにより構成される。具体的には、低保温工程の実行後に、引き続いて高保温工程を実行する構成としている。低保温工程は、ご飯を保温温度帯の低温側(平均温度が約60℃)で保温するもので、温度センサ18,24の検出値と、予め設定した第1および第2設定温度T1,T2に基づいて誘導加熱コイル15を制御するものである。高保温工程は、ご飯を保温温度帯の高温側(平均温度が約70℃)で保温するもので、温度センサ18,24の検出値と、予め設定した第1および第3設定温度T1,T3に基づいて誘導加熱コイル15が制御するものである。
【0027】
低保温工程および高保温工程の実行時間は、
図4に一例を示すように、選択された食味保障時間TSに基づいて異なるように設定されている。この
図4に示すように、低保温工程の実行時間は、選択された食味保障時間TSが長くなるに従って長くなるように設定されている。ここで、半日保温の場合に示すように、低保温工程の実行時間の変更とは、実行しない「0分」を含む。また、本実施形態では、「保温切」が選択されている場合を除き、低保温工程および高保温工程を合わせた食味保障時間TSが経過した後は、とりけしスイッチ31が操作されるまで高保温工程を実行し続ける構成としている。
【0028】
第1設定温度T1は、保温温度帯の高温側の温度であり、保温中でも育成可能な高温育成菌(例えばBacillus属細菌)などを死滅可能な温度に設定される。この第1設定温度は、水分の過剰蒸発を防ぐために95℃未満75℃以上とすることが好ましく、本実施形態では80℃に設定されている。第2設定温度T2は、保温温度帯の低温側の温度であり、高温育成菌などが繁殖する可能性があるが、その増殖率は少ない温度に設定される。この第2設定温度は、消費電力を低減するために60℃未満40℃以上とすることが好ましく、本実施形態では55℃に設定されている。第3設定温度T3は、第1設定温度T1より低く第2設定温度T2より高い温度であり、第1設定温度T1との平均温度が高温育成菌の繁殖リスクが低い温度に設定される。この第3設定温度は、平均温度による食感を良好な状態とするために75℃未満60℃以上とすることが好ましく、本実施形態では65℃に設定されている。このようにすれば、菌の繁殖を確実に防止したうえで、省エネを図り、良好な食感を維持した保温処理が可能である。
【0029】
低保温工程は、降温ステップと温調ステップと昇温ステップとを繰り返し行うものである。降温ステップは、加熱により第1設定温度T1になると誘導加熱コイル15に供給する電力量を下げてご飯の温度を下げるものである。なお、電力量とは、降温ステップにて誘導加熱コイル15へ通電する電力の総量を意味する。本実施形態では誘導加熱コイル15に対する電力供給を遮断する構成としている。即ち、供給する電力量を下げるとは、通電を遮断した「0」を含む。なお、定期的に電力の供給しながら徐々に降温させてもよい。温調ステップは、降温により第2設定温度T2になると、誘導加熱コイル15をオンオフ制御することによりご飯を第2設定温度T2に所定時間TK維持するものである。昇温ステップは、誘導加熱コイル15に供給する電力量を上げてご飯の温度を上げる(再加熱)ものである。本実施形態では、ご飯に焦げを生じさせることのない最大の通電率で誘導加熱コイル15に電力を供給することにより、昇温させる構成としている。
【0030】
温調ステップの実行時間TKは、平均温度を約60℃とする低保温工程にて、最大限に省エネを図ることができ、ご飯の劣化を最小限に抑えることを可能とする劣化防止時間TPに基づいて設定される。具体的には、高温育成菌の繁殖リスクは、保温温度約70℃を境界として温度が低くなるに従って高くなる。また、高温育成菌は、時間とともに増加し、5時間程度を越えると菌の増加に伴う米飯の変敗をユーザが認識できる程度になる。そこで、第3設定温度T3より高く第1設定温度T1より低い70℃を第4設定温度T4とする。そして、降温ステップにより第4設定温度T4を下回り、昇温ステップにより第4設定温度を上回るまでの時間が劣化防止時間TP以下になるように、温調ステップの実行時間TKを設定する。本実施形態では、降温ステップによる温度下降勾配とROM44に予め記憶したデータテーブルとに基づいて内鍋10内のご飯の残量を判別し、昇温ステップにより第2設定温度T2から第4設定温度T4まで昇温させるのに要する時間を演算して、温調ステップの実行時間TKを設定している。勿論、実行時間TKは、全ての残量にて劣化防止時間TPを超えないように予め設定してもよい。
【0031】
高保温工程は、降温ステップと昇温ステップとを繰り返し行うものである。降温ステップは、加熱により第1設定温度T1になると誘導加熱コイル15に供給する電力量を下げて温度を下げるものである。本実施形態では、降温時間TDで第1設定温度T1から第3設定温度T3まで降下するように、誘導加熱コイル15に対する電力を調整している。昇温ステップは、低保温工程の場合と同様に、ご飯に焦げを生じさせないように誘導加熱コイル15に供給する電力量を上げてご飯の温度を上げるものである。
【0032】
降温ステップの降温時間TDは、平均温度を約70℃とする高保温工程にて、高温育成菌の増殖防止を可能とする増殖防止時間TEに基づいて設定される。具体的には、高温育成菌の増殖を防止して滅菌を図るには、6時間毎にご飯の温度を第1設定温度T1に昇温させることが好ましい。そのため、昇温ステップにて第3設定温度T3から第1設定温度T1まで昇温するのに要する時間を計測し、その計測時間を増殖防止時間TEから減算して降温時間TDを設定する。因みに、人の生活習慣において、ご飯を食事する朝、昼、夜の時間帯は、略6時間毎になっている。そのため、6時間毎に第1設定温度T1に昇温させることにより、炊きたてに近い温度のご飯を食事することができる。そのため、増殖防止時間TE(6時間)は、ユーザである人の生活習慣に合致するように設定されている。そのため、ユーザの生活習慣に則した使用性のよい保温処理を実行できる。また、6時間毎に昇温させた場合、第4設定温度T4を下回る時間は5時間未満になるため、菌の繁殖リスクも低減する。
【0033】
次に、マイコン43による保温処理について具体的に説明する。なお、この保温処理は、とりけしスイッチ31の操作により、割込停止処理が実行されるまで、以下のステップS1〜S9を実行するものである。
【0034】
炊飯処理が終了して保温処理が実行されると、または、ユーザが別途炊き上げたご飯を内鍋10にセットして保温処理が実行されると、
図6に示すように、マイコン43は、ステップS1で、内蔵した計測タイマ45をリセットしてスタートし、保温時間の計測を開始する。ついで、ステップS2で、選択された保温時間を読み込み、ステップS3で、食味保障時間TSを設定するとともに、ステップS4で、低保温工程の実行時間TLを設定する。
【0035】
その後、ステップS5で、後述する低保温工程を実行しながら、ステップS6で、実行時間TLを計測する(並行処理)。即ち、実行時間TLが経過するまで、低保温工程を実行する。
【0036】
低保温工程の実行時間TLが経過すると、ステップS7で、後述する高保温工程を実行しながら、ステップS8で、食味保障時間TSを計測する(並行処理)。そして、食味保障時間TSが経過すると、ステップS9で、報知処理を実行しながら、ステップS7の高保温工程を継続する。なお、本実施形態の報知処理は、保温時間表示部の全てのLED40a〜40dを点滅させる構成としているが、圧電ブザーによって報知音を出力するなど、種々の方法が可能である。
【0037】
ステップS5の低保温工程では、
図7に示すように、まず、ステップS5−1で、誘導加熱コイル15への通電をオフ(遮断)して降温ステップを実行する。ついで、ステップS5−2で、温度の下降勾配に基づいて内鍋10内のご飯の残量判別処理を実行した後、ステップS5−3で、判別したご飯の残量に基づいて温調ステップの実行時間TKを設定する。その後、ステップS5−4で、鍋用温度センサ18による検出温度が第2設定温度T2未満になるまで待機し、第2設定温度T2になると、ステップS5−5に進んで温調ステップを実行する。
【0038】
ステップS5−5では、誘導加熱コイル15をオン(通電)した後、ステップS5−6で、鍋用温度センサ18による検出温度が第2設定温度T2以上になるまで待機する。そして、第2設定温度T2以上になると、ステップS5−7で、誘導加熱コイル15への通電を遮断した後、ステップS5−8で、実行時間TKが経過したか否かを判断する。そして、実行時間TKが経過していない場合にはステップS5−4に戻り、ステップS5−4〜S5−8までの温調ステップを繰り返す。一方、実行時間TKが経過した場合には、ステップS5−9に進んで昇温ステップを実行する。
【0039】
ステップS5−9では、誘導加熱コイル15への通電を開始し、ステップS5−10で、ご飯に焦げが生じることのない範囲で昇温するように電力調整処理を実行するとともに、ステップS5−11で、鍋用温度センサ18による検出温度が第1設定温度T1以上になったか否かを判断する。即ち、第1設定温度T1以上になるまで電力調整処理を実行する。そして、第1設定温度T1以上になると、ステップS5−1に戻り、降温ステップを実行する。
【0040】
このように、低保温工程では、実行時間TLが経過するまで、ステップS5−1からステップS5−4の降温ステップ、ステップS5−4からステップS5−8の温調ステップ、ステップS5−8からステップS5−11の昇温ステップを繰り返し実行する。そして、この低保温工程では、第2設定温度T2を高温育成菌などが繁殖する可能性がある低い温度に設定しているが、第1設定温度を菌の繁殖を抑制可能な高い温度に設定している。しかも、第2設定温度T2に維持する温調ステップの実行時間TKは、劣化防止時間TPに基づいて設定されている。そのため、ご飯の劣化を確実に防止できるうえ、確実に省エネを図ることができる。
【0041】
ステップS7の高保温工程では、
図8に示すように、まず、ステップS7−1で、誘導加熱コイル15に供給する電力量を上げて昇温ステップを実行する。ついで、ステップS7−2で、昇温ステップの実行時間を計測するために昇温計測タイマをリセットしてスタートする。その後、ステップS7−3で、前述と同様に電力調整処理を実行するとともに、ステップS7−4で、鍋用温度センサ18による検出温度が第1設定温度T1以上になったか否かを判断する。そして、第1設定温度T1以上になると、ステップS7−5で、昇温計測タイマをストップして、ステップS7−6に進んで降温ステップを実行する。
【0042】
ステップS7−6では、内鍋10内の温度が降下するように誘導加熱コイル15に供給する電力量を下げた後、ステップS7−7で、降温ステップの実行(降温)時間TDを設定する。その後、ステップS7−8で、実行時間TDで第3設定温度T3に降温するように誘導加熱コイル15に供給する電力量を調整するとともに、ステップS7−9で、鍋用温度センサ18による検出温度が第3設定温度T3未満になったか否かを判断する。即ち、第3設定温度T3未満になるまで電力調整処理を実行する。そして、第3設定温度T3未満になると、ステップS7−1に戻り、昇温ステップを実行する。
【0043】
このように、高保温工程では、とりけしスイッチ31が操作されるまで、ステップS7−1からステップS7−6の昇温ステップと、ステップS7−6からステップS7−9の降温ステップとを繰り返し実行する。そのため、ユーザが食事する保温処理の終盤では、良好な食感を得ることが可能な温度を確実に維持できるうえ、高温育成菌の繁殖を確実に防止できる。
【0044】
このように、本発明の炊飯器では、ユーザが選択した保温時間である食味保障時間毎に異なる保温処理を実行するため、選択された食味保障時間内において、ご飯の劣化を最大限に抑えることができるため、良好な食感を維持することができる。具体的には、保温処理は、序盤の低保温工程にてご飯の水分の蒸発を最大限に抑制し、食事時となる終盤の高保温工程にて温度を含めた食感を良好な状態とすることができる。そして、選択された食味保障時間が長くなるに従って低保温工程の実行時間TLを長くするため、十分に省エネを図ることができる。しかも、炊飯処理は何ら変更していないため、炊き上げ直後の食感が損なわれることはない。
【0045】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0046】
例えば、前記実施形態では、低保温工程と高保温工程とを有し、低保温工程の実行後に高保温工程を実行する構成としたが、低保温工程の前や後に保温温度帯の中間温度に保温する中保温工程を実行する構成としてもよい。また、ご飯から過剰に水分が放出されない程度の実行時間であれば、低保温工程の前に高保温工程を実行する構成としてもよい。しかも、高保温工程の後に低保温工程や中保温工程を実行する構成としてもよい。
【0047】
さらに、前記実施形態では、半日保温の場合には低保温工程を実行しない構成としたが、例えば6時間実行する構成としてもよい。さらにまた、前記実施形態では、低保温工程に温調ステップを設けたが、高保温工程と同様に温調ステップは設けずに、第1設定温度T1と第2設定温度T2との間をハンチング制御する構成としてもよい。また、低保温工程および高保温工程は、昇温ステップにて高温育成菌を死滅可能な第1設定温度まで昇温させるサイクルを繰り返し実行する構成としたが、第1設定温度は段階的に低下させたり、段階的に上げる構成としてもよい。
【0048】
そして、前記実施形態では、第4設定温度T4はあくまで設計時の基準温度とし、マイコン43による実際の制御には使用しない構成としたが、降温ステップにて第4設定温度T4を下回った時間から時間計測を開始して、温調ステップの実行時間TKを最大限に長くなるように構成してもよい。また、第4設定温度T4を下回る時間が5時間未満となることを条件として、第1設定温度T1から第4設定温度T4になるまでの間、ファンにより急冷する構成としてもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、加熱手段として誘導加熱コイル15を搭載した誘導加熱方式の炊飯器を用いて説明したが、加熱手段として伝熱性がよいアルミ材料からなる板材の内部に加熱ヒータを配設した加熱板を配設した炊飯器であってもよい。さらに、排気通路23に内鍋10内と外部との連通を遮断可能なリリーフ弁を配設し、内鍋10内を大気圧より高い圧力に昇圧可能な圧力炊飯器であってもよい。
【0050】
そして、前記実施形態では、炊飯器を例に挙げて説明したが、保温機能だけを搭載した保温機器としても、同様の作用および効果を得ることができる。この場合、保温対象物はご飯に限られず、おかずなどの調理物であっても、同様の作用および効果を得ることができる。