(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発光素子を有し、該発光素子から光を送光する送光部と、受光素子を有し、前記送光部から送光された光を受光する受光部とを備え、前記送光部と前記受光部とを分離配置する光電式分離型感知器において、
前記送光部は、第1パターン発光と第2パターン発光を有する光を一定の周期で、前記受光部に送光し、
前記受光部は、第1受光素子に接続される第1アンプと、第2受光素子に接続される第2アンプと、受光部タイマ部と、受光部制御回路とを有し、
前記受光部タイマ部は、所定時間経過後に第1アンプを起動し、
前記第1受光素子は、前記第1アンプの起動により第1パターン発光を受光し、
前記第1アンプは、前記第1受光素子が第1パターン発光を受光すると同時に停止し、
前記第2アンプは、前記第1受光素子が第1パターン発光を受光すると同時に起動して、前記第2受光素子が第2パターン発光を受光し、
前記第1パターン発光により、前記送光部と前記受光部とを同期させ、
前記第2パターン発光により、火災監視を行うことを特徴とする光電式分離型感知器。
【背景技術】
【0002】
従来から、火災等にて発生した煙を感知する煙感知器の一形態として、検出光の減光率に基づいて煙の感知を行う光電式分離型感知器が知られている。
【0003】
光電式分離型煙感知器は、検出光を送光する送光部と、この検出光を受光する受光部とを、監視領域を挟んで、分離して対向配置して構成している。そして、送光部から送光された検出光を、それぞれに対向して配置されている受光部にて受光し、この受光部において検出光の受光量の減光量や減光率を算定する。減光率が所定の基準値以上になった場合、受光部は、煙の発生(火災が発生)したものと判定し、制御線にて有線接続された火災受信機に対して、火災発生の旨を示す発報信号を出力する。
【0004】
ここで、検出光の光量の減光量を適切に判定するためには、送光部による検出光の送光タイミングと、受光部による検出光の受光タイミングとを、相互に同期させる必要がある。このため、従来は、これら送光部と受光部とを相互に同期線(制御線)にて有線接続し、この同期線を介して、送光部から受光部へ同期信号を出力していた。そして、受光部において、この同期信号にて特定される同期タイミングを基準とした所定の同期間隔で受光を行なうことで、送光部と受光部との同期を確立していた(例えば、特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る光電式分離型感知器100を、
図1に基づいて説明する。
光電式分離型感知器100は、送光部1と受光部2とによって構成され、送光部1と受光部2は分離配置されている。ここで、送光部1と受光部2との間の距離(監視距離)は、例えば、5m〜100m程度である。
【0012】
[送光部1の構成]
送光部1は、送光部制御回路10と、発光素子12と、送光部タイマ部18と、を備えている。送光部制御回路10は、送光部タイマ部18と、発光素子12と、がそれぞれ接続されている。
【0013】
送光部タイマ部18は経過時間を計測しており、発光素子12の発光タイミングであることを知らせる発光タイミング信号を送光部制御回路10に出力する。
そして、送光部制御回路10は、発光タイミング信号を受信すると、発光素子12に発光信号を出力して、発光素子12が発光する。
【0014】
発光素子12は、第1パターン発光p1と、第2パターン発光p2とを備えた光を、一定の周期で発光している。第2パターン発光p2は火災を監視するためのサンプリング用の発光である。一方、第1パターン発光p1は、送光部1から発光される第2パターン発光p2の発光タイミングと、後述する受光部2の第2受光素子23の受光タイミングを合わせるための発光、すなわち同期用発光である。
【0015】
つまり、発光素子12は送光部タイマ部18に従って、常に一定の周期でパルス状の発光を続けている。なお、発光素子12は、例えば、近赤外線光発光素子で構成され、波長が約0.7μm〜2.5μmである近赤外線光を発光する。また、発光素子12は近赤外線光を送光するものでなくても良く、煙によって減衰する程度の波長を有する電磁波を送信(送光)する素子であれば何でも良い。
【0016】
[受光部2の構成]
受光部2は、受光部制御回路20と、第1受光素子21と、第1アンプ22と、第2受光素子23と、第2アンプ24と、ピークホールド回路25と、A/D変換回路26と、受光部タイマ部28と、を備えている。
【0017】
受光部制御回路20は、第1アンプ22を介して第1受光素子21と接続し、A/D変換回路26、ピークホールド回路25、第2アンプ24を介して第2受光素子23と接続し、さらに受光部タイマ部28と接続している。
【0018】
受光部タイマ部28は、第1アンプ22を起動させるタイミングであることを知らせる第1アンプ起動タイミング信号を受光部制御回路20に出力する。そして、受光部制御回路20は、第1アンプ起動タイミング信号を受信すると、第1アンプ起動信号を出力して、第1アンプ22を起動させる。
【0019】
第1受光素子21は、発光素子12の第1パターン発光を受光するための素子で、第1パターン発光を確実に受光できるように、第1パターン発光を受光する前から第1アンプ22が起動している。
【0020】
第2の発光素子23は、発光素子12の第2パターン発光を受光するための素子で、第2パターン発光を確実に受光できるように、第2パターン発光を受光する前から第2アンプ24が起動している。第2アンプ24は、第1発光パターンp1を第1受光素子21が受光したときに、受光部制御回路20から第2アンプ起動信号が出力されて、起動する。
【0021】
第1アンプ22は、第2アンプ24に比べて増幅率は大幅に低くなっている。それは、第1受光素子21が受光したことを受光部制御回路20で検知できれば足りるため、第1アンプ22は第1受光素子21の受光量を少しだけ増幅する程度で良い。そのため、第1アンプ22は大きな電力を消費することがない。
一方、第2受光素子23は火災監視用の受光素子であり、受光量に応じて火災か非火災かを判別する必要があるため、消費電力の大きい第2アンプ24で大幅に増幅している。
【0022】
[発光及び受光の周期について]
以下、本発明の実施の形態に係る光電式分離型感知器100の送光部1の発光周期及び当該発光を受光する受光部2の受光周期を、
図2のタイムチャートに基づいて説明する。なお、横軸が経過時間、縦軸がそれぞれの構成のON、OFFを示している。
【0023】
まず、送光部1の発光周期は、第1パターン発光p1と第2パターン発光p2を一定の時間間隔で繰り返している。つまり、発光素子12は、送光部タイマ部18の経過時間計測に従って、一定の周期の発光を繰り返している。
【0024】
第1パターン発光p1は、後述する期間t1の最後のタイミングで発光するものであり、例えば発光が1回50μsecで4回、断続的に発光し、全体で、例えば0.4msecである。
第2パターン発光p2は、後述する期間t2の最後のタイミングで発光するものであり、例えば50μsecで1回の発光からなるものである。
【0025】
第1パターン発光p1と第1パターン発光p1、もしくは第2パターン発光p2と第2パターン発光p2の間隔は、例えば3104msecである。そして、第1パターン発光p1後から第2パターン発光p2までの間隔は、例えば4msecである。また、第2パターン発光p2後から第1パターン発光p1までの間隔は、例えば3100msecである。
【0026】
なお、以下の説明では、経過時間の説明を簡略化するために、第1パターン発光p1及び第2パターン発光p2のパルス幅は無視して説明していく。そのとき、第1パターン発光p1及び第2パターン発光p2の発光タイミングは、便宜上、パルス幅の終了時として扱うことにする。
【0027】
一方、受光部2の受光周期は、期間t1、期間t2、及び期間t3からなり、この順で繰り返している。
【0028】
期間t3は、受光部2の受光部タイマ部28が起動している期間であり、受光部タイマ部28は、発光素子12の第2パターン発光p2を受光したときに起動するものである。そして、受光部タイマ部28が時間計測をして、所定時間、例えば3sec経過後に、第1アンプ22を起動して、受光部タイマ部28は停止する。つまり、期間t3は、例えば3secである。
【0029】
期間t1は、受光部2の第1アンプ22が起動している期間であり、第1パターン発光p1を受光するまで起動している。第1パターン発光p1を受光すると、第1アンプ22は停止し、第2アンプ24が起動する。つまり、期間t1は、第1パターン発光p1を受光し損なわなければ、例えば100msecとなる。
【0030】
期間t2は、受光部2の第2アンプ24が起動している期間であり、第2パターン発光p2を受光するまで起動している。第2パターン発光p2を受光すると、第2アンプ24は停止し、受光部タイマ部28が起動する。つまり、期間t2は、例えば4msecである。
【0031】
つまり、受光周期は、期間t1〜3が合わせて1つの周期となっている。また、受光周期は、発光周期を基準にしているので、発光周期と同様に3104msecが1周期となっている。
【0032】
受光部タイマ部28の経過時間計測と送光部タイマ部18の経過時間計測とが一致していた場合、期間t1が開始してから、100msec経過時に第1受光素子21が第1パターン発光p1を受光することになる。つまり、期間t1が開始してから100msecを予備の時間として設けているため、受光部タイマ部28の経過時間計測が送光部タイマ部18の経過時間計測と比べて100msec遅れてしまった場合でも、問題なく第1受光素子21が第1パターン発光p1を受光できる。さらに、期間t1は第1パターン発光p1を受光するまで続くため、言い換えると第1受光素子21が第1パターン発光p1を受光するまで第1アンプ22は起動し続けるため、受光部タイマ部28の経過時間計測が送光部タイマ部18の経過時間計測と比べて早まってしまった場合でも、問題なく第1受光素子21が第1パターン発光p1を受光できる。
【0033】
なお、期間t2が期間t1より短いのは、期間t1において送光部1と受光部2とが同期されているため、送光部1が第2パターン発光を発光するタイミングに合わせて、受光部2の第2アンプ24を起動させることができるので、大きな電力を消費する第2アンプ24の起動時間を短くすることができる。
【0034】
[動作説明]
図1及び
図2を参照して、本発明の光電式分離型感知器100の動作例を説明する。
送光部1と受光部2の光軸調整をして設置後、最初の同期は期間t1から始まり、第1アンプ22が第1パターン発光p1を受光するまで、常に起動している状態を続ける。最初の同期が終了してからは、通常の火災監視が始まる。
【0035】
通常の火災監視が開始されると、
図2のように、期間t1、期間t2、期間t3が1周期の受光周期が繰り返すことになる。なお、送光部1は送光部タイマ部18の経過時間の計測に従って、一定のタイミングで発光を繰り返しており、その発光に合わせて、受光部2側が受光のタイミングを調整している。そのため、例えば期間t1と、次の周期の期間t1の時間が異なってくることもある。ここでは、光電式分離型感知器100の監視時の動作について、期間t3から、期間t1、期間t2の順に、受光タイミングを調整している受光部2を中心に説明していく。
【0036】
先ず、期間t3は、送光部1による第2パターン発光p2後から開始され、送光部1からは発光がない時間であるため、受光部制御回路20は第1アンプ22及び第2アンプ24を起動しておらず、受光部タイマ部28が起動している。期間t3は、例えば3secであり、受光部2は受光部タイマ部28で経過時間を計測している。
【0037】
そして、経過時間が3secに達したとき、つまり、期間t1に移行するとき、受光部タイマ部28から第1アンプ起動タイミング信号が受光部制御回路20に出力され、受光部制御回路20から第1アンプ起動信号を第1アンプ22に出力して、第1アンプ22を起動させ、送光部1から発光される第1パターン発光p1の受光に備えている。つまり、受光部タイマ部28から出力される第1アンプ起動タイミング信号がトリガとなって、第1アンプ22が起動され、期間t3から期間t1へと移行する。そして、第1アンプ22の起動と同時に、受光部タイマ部28は停止し、時間計測はリセットされる。
【0038】
次に、期間t1では、受光部2は第1アンプ22が起動している状態であり、送光部1から発光される第1パターン発光p1を受光できる状態となっている。
一方、送光部1は、送光部タイマ部18に従って発光しており、第2パターン発光p2から、例えば3100msec経過後に、第1発光パターンp1の発光タイミングであることを知らせる発光タイミング信号を送光部制御回路10に出力する。そして、送光部制御回路10は、発光素子12に第1パターン発光p1の発光信号を出力し、発光素子12から第1パターン発光p1を発光させる。この第1パターン発光p1のタイミングは、受光部2の受光周期における期間t3の開始から3100msec経過後に近く、言い換えると、期間t1の開始から100msec経過後に近くなっている。
【0039】
この第1パターン発光p1を受光部2の第1受光素子21が受光すると同時に、その受光出力(受光電圧)が第1アンプ22により増幅されて受光部制御回路20に入力される。第1受光素子21からの受光出力がトリガとなり、受光部制御回路20は、第2アンプ起動信号を出力して第2アンプ24を起動させる。それと共に、受光部制御回路20は、第1アンプ22を停止する。つまり、第1パターン発光p1の受光後、すぐに第2アンプ24を起動するため、言い換えると、第1パターン発光p1の受光によって、送光部1と受光部2を同期しているため、次の期間t2は時間が短くて済むようになっている。
【0040】
最後に、期間t2では、第2アンプ24が起動している状態であり送光部1から発光される第2パターン発光p2を受光できる状態となっている。第2受光素子23は、期間t2が開始してから、例えば4msec経過後に送光部1から発光される第2パターン発光p2を受光する。第2受光素子23が受光した受光出力は、第2アンプ24によって増幅し、ピークホールド回路25によって受光出力のピーク値を直流に変換し、その電圧値をA/D変換回路26にてデジタルデータに変換し、受光部制御回路20にて減光率の計算を行う。これにより、火災の監視を行っている。
【0041】
そして、第2受光素子23が第2パターン発光p2を受光すると同時に、第2アンプ24は停止すると共に、受光部タイマ部28が起動して、期間t3に移行する。
【0042】
すなわち、送光部1は一定の周期で2種類の発光を繰り返しており、その発光タイミングは、例えば、第1パターン発光p1は期間t3開始時から3100msec後であり、第2パターン発光p2は期間t3開始時から3104msec後である。一方、受光部2は、期間t1で第1パターン発光p1を受光すると、すぐに第2アンプ24を起動することで、送光部1と受光部2を同期させており、大きい電力を使う第2アンプ24が起動する期間t2の時間を短くしている。そして、送光部1は一定のタイミングで発光するのに対し、受光部2は期間t1で送光部1側と同期してずれを小さくしつつ、同期後に生じた時間のずれは、送光部1から発光される前から第1アンプ22又は第2アンプ24を起動することで補っている。
【0043】
なお、期間t1で第1受光素子21が第1パターン発光p1を受光できなかった場合、次の周期の第1発光パターンp1が発光されるまで第1アンプ22を起動させておいても良い。そして、所定時間たっても第1発光パターンp1を受光できない場合は、光軸ずれや障害物進入等が考えられるため、警報を出すと良い。また、警報を出す前に、第2アンプ24を一定時間、例えば期間t1〜t3の1周期分だけ起動して、第2パターン発光p2が受光できなかったときに、光軸ずれ等の警報を出しても良い。
【0044】
また、受光部タイマ部28は期間t3だけに限らず、常に起動していてもよい。その場合、第1アンプ22と第2アンプ24の起動タイミングは受光部タイマ部28の時間計測によるものでよく、第1パターン発光p1を受光したときに受光部タイマ部28の計測時間をリセットすることで、受光部タイマ部28と送光部タイマ部18の時間のずれをなくして、同期させることができる。
【0045】
[光電式分離型感知器100の有する効果]
本発明に係る光電式分離型感知器100は、第1パターン発光p1で送光部1と受光部2とを同期させるため、送光部1と受光部2の間に、同期用の制御線である同期線を敷設することが不要になる。
【0046】
また、受光部2の第2アンプ24は、複数(例えば、3段階)の増幅率が設定できるようになっており、送光部1と受光部2の距離によって施工時に増幅率を設定しておくものであるが、この増幅率を切り替えるプロトコルを有する発光を行うリモコンを用いれば、施工後でも足場を組むことなく、リモコン操作によって増幅率を切り替えることができる。