(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872456
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】生産性が高い多孔質半導体層形成装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3063 20060101AFI20160216BHJP
H01L 51/48 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
H01L21/306 L
H01L31/04 180
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-509957(P2012-509957)
(86)(22)【出願日】2010年5月5日
(65)【公表番号】特表2012-526398(P2012-526398A)
(43)【公表日】2012年10月25日
(86)【国際出願番号】US2010033792
(87)【国際公開番号】WO2010129719
(87)【国際公開日】20101111
【審査請求日】2013年5月2日
(31)【優先権主張番号】61/175,535
(32)【優先日】2009年5月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/774,667
(32)【優先日】2010年5月5日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509101804
【氏名又は名称】ソレクセル、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】カミアン ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ナグ ソムナス
(72)【発明者】
【氏名】タミルマニ サブ
(72)【発明者】
【氏名】モスレヒ マーダッド エム
(72)【発明者】
【氏名】クラマー カール ジョージフ
(72)【発明者】
【氏名】ヨネハラ タカオ
【審査官】
内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−151406(JP,A)
【文献】
特開平10−312990(JP,A)
【文献】
特開平10−275798(JP,A)
【文献】
特開平08−181103(JP,A)
【文献】
特開平05−198558(JP,A)
【文献】
国際公開第2002/055760(WO,A1)
【文献】
特開2008−177563(JP,A)
【文献】
特開2002−184709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3063
H01L 51/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の半導体ウェハ上に多孔質半導体層を形成する装置であって、
第1電極と第2電極を備えた、鉛直方向に配向された電解質槽であって、電流を供給するために、前記第1電極が前記電解質槽の頂部に配置され、かつ前記第2電極が前記電解質槽の底部に配置される、電解質槽と、
積層状態で配列された複数の半導体ウェハであって、各半導体ウェハの縁を囲みその場に固定するウェハ縁封止材を有し、ウェハ積層体と、
本装置に対する電解質供給用の電解質供給路と、
前記半導体ウェハ同士の間隙毎に配置され、少なくとも前記各半導体ウェハの表面に電解質を供給するため及び該表面からのガス排出に使用されるための、複数の電解質流路と、
前記各電解質流路に対応する電解質供給ポートと排出ポートであって、前記電解質供給ポートと排出ポートは前記電解質を前記複数の電解質流路を介し、かつ前記各半導体ウェハの上を流通させる、電解質供給ポートと排出ポートと、及び、
前記各電解質流路に対応し、前記電解質流路及び前記電解質供給ポート及び排出ポートを含む電解質流路から多孔質層形成副産物を除去するベントスタックと
を備える装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置であって、半導体ウェハのうち複数枚がシリコンウェハである装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置であって、半導体ウェハのうち複数枚が正方形又は略正方形の装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置であって、半導体ウェハのうち複数枚が略円形の装置。
【請求項5】
請求項1記載の装置であって、第1及び第2電極を用い電流及び電圧の極性を所定期間経過後1サイクル以上に亘り交番又は変化させる装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置であって、その第1及び第2電極を用い複数通りの所定値で電流を供給することで、その多孔度が異なる複数個の層を発生させる装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置であって、その所定値として離散値を使用することで、その多孔度が不連続な複数個の層を発生させる装置。
【請求項8】
請求項6記載の装置であって、その所定値として連続値を使用することで、その多孔度に傾斜の付いた層を発生させる装置。
【請求項9】
請求項1記載の装置であって、そのウェハ縁封止材が形状適合性を有し、ある範囲内のウェハ直径及びウェハ厚に対応可能な装置。
【請求項10】
積層状態で配置されている前記複数の半導体ウェハは積層状態で配置されている複数のウェハのアレイである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記複数の半導体ウェハは鉛直に対して傾斜した角度で位置決めされている請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記電解質流路における前記電解質を加圧するポンプを備えた、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年5月5日付米国暫定特許出願第61/175535号及び2010年5月5日付米国特許出願第12/774667号に基づく優先権主張を伴う出願である。この参照を以て、両出願の全内容及び全趣旨を本願に繰り入れることにする。
【0002】
本発明は半導体分野、特に太陽電池を製造する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
単結晶シリコン、多結晶シリコン等の結晶シリコンは、市販の太陽電池で多用される吸光素材の代表である。量産が可能で効率が高く素材が豊富なことから、今後とも結晶シリコン製太陽電池を使用し更に発展させることに期待が寄せられている。しかし、結晶シリコン自体の生産コストが高いことが、それを使用した太陽電池の広範な普及にとり妨げとなっている。現状では、太陽電池生産コストのうち約40〜60%がウェハ作成コスト、即ちシリコンの結晶化コストとウェハへの切断コストで占められている。仮に、より手間のかからない手法でウェハを生産することができれば、太陽電池生産コストを大きく削減できるはずである。
【0004】
そのため、単結晶シリコンを成長させた後分離や転写でウェハ化する手法が様々に開発されている。これらの手法でシリコン製太陽電池の普及を進めるには、低コストなシリコン層エピタキシャル成長技術に加え、低コスト大量生産に適した実用的な分離層形成技術が必要となろう。
【0005】
その候補は多孔質半導体(PS)層形成なる新技術である。太陽電池分野にこれを適用するにはその形成工程の大規模低コスト化、ひいてはCoO(保有コスト)が極めて低く生産性が高い多孔質シリコン層形成装置の開発が欠かせない。
【0006】
PS層形成に当たっては、一般に、HF(例えばその49%水溶液)、IPA、酢酸若しくはその双方、並びに脱イオン水が原料として使用される。IPAや酢酸を使用するのは、界面活性剤として働きPS層の均一形成に役立つからである。電解質の導電率を高める添加物を使用することで、オーム損失による発熱を抑えることもできる。なお、本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)には自明な通り、PS層形成に当たり、HFとIPA以外の物質との混合物を使用することもできる。
【0007】
この技術は一部の分野で既に採用されている。太陽電池に比し単位ウェハ面積当たりコストにゆとりがあるMEMS(微細電気機械システム)やその周辺分野である。MEMS業界は規模の経済性が成り立つ分野であり、ウェハ1枚当たりダイ個数又はチップ個数を増やし、ウェハ寸法を拡げ、新製品開発時にチップ機能又は実装密度を向上させることで、その売り上げを伸ばすことができる。それに対し、太陽電池業界で採算を成り立たせるには、太陽電池製造工程を担う装置の低コスト化及び生産性向上に加え、太陽電池出力1W当たり素材使用量の低減を通じ素材コスト削減を図る必要がある。
【0008】
太陽電池に関し採算を成り立たせるのに必要な装置性能は、工程コストモデルの検討で特定、実現することができる。その際には、総合的コスト指標をなす三種類のコスト、即ち固定費(FC)、経常費(RC)及び経費換算歩留まり(YC)が検討される。これらのうち、FCは設備購入費、設備設置費、自動化・ロボット化費用等のことである。RCは主に電気代、ガス代、化学薬品費、従業員給与及び保守管理費のことである。YCは、生産中に損失した部品の総価値をコストに換算した数値のことである。
【0009】
CoO値を太陽電池業界での許容水準下に抑えるには、これらのコスト指標全てを最適化する必要がある。即ち、その工程の低コスト化のため、優先度の順に述べると(1)生産性向上、(2)歩留まり向上、(3)RC削減及び(4)FC削減が必要になる。
【0010】
装置の生産性向上には、処理上の必要条件を十分に理解しそれを装置設計に反映させる必要がある。装置の生産性向上につれYCが肥大するので、歩留まり向上のためには処理をロバスト化し装置の信頼性を高める必要がある。RC削減もCoOの総抑制上の前提条件であり、電気代や原料入荷の利便性に基づく工場立地検討等の際にはRCが大きな影響を及ぼす。そして、装置の生産性が低いときにはFC削減の重要度が増す。
【0011】
RC削減には化学薬品の効率的使用が必要になる。湿式処理の場合、ウェハに付着し反応槽外に持ち出された化学薬品を除去するため、ウェハを洗浄する必要がある。化学薬品の付着量が多ければ、その浄化に必要なウェハ洗浄水の所要量も多くなる。これらは共にCoOを増大させる。更に、長期間に当たり再使用、循環させうるよう、化学薬品の加齢を抑える必要もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5458755号明細書
【特許文献2】米国特許第7014748号明細書
【特許文献3】米国特許第6818104号明細書
【特許文献4】米国特許第6143629号明細書
【特許文献5】米国特許第6551908号明細書
【特許文献6】米国特許第6428620号明細書
【特許文献7】米国特許第5348618号明細書
【特許文献8】米国特許第6416647号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2006/0231031号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2006/0070884号明細書
【特許文献11】米国特許第5112453号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上述べたことをまとめると、生産性が高く、信頼でき、効率的な製造装置が、太陽電池の低コスト生産化に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願では、太陽電池分野に関し、PS層例えば多孔質シリコン層を効率的に形成する手段を提供する。形成できるのは、半導体ベース分離層、抗反射被覆層、パッシベーション層、埋込反射層、多接合多バンドキャップ太陽電池の一部となる結晶シリコン薄膜上又は太陽電池ウェハ上の可変バンドギャップ輻射層等である。その多孔度が異なる複数個のPS層を形成することもできる。
【0015】
本願では、電圧極性及び電流方向を交番又は変化させることで基板両面にPS層を形成する手段を提供する。本願では、基板両面に形成されたPS層の上に半導体例えばシリコンの層を例えばエピタキシャル成長させる手段を提供する。基板両面に半導体層をエピタキシャル成長させることで、半導体層成長工程のCoOを抑えることができる。また、その層を基板の表面から分離させることで、半導体薄板を低コスト生産することができる。
【0016】
本願では、半導体分野に関し、ダイアタッチメント用MEMS分離層を形成する手段、相応の多孔度を有する多孔質シリコン層を酸化しシャロウトレンチアイソレーション(STI)を形成する手段、スタンドアロン型又は微細半導体回路集積型のセンサ及びアクチュエータを含め種々のMEMSを形成する手段等を提供する。本願では、更に、食品検査や化学薬品評価に使用される大反応面積検査環境も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来技術に係る電解質槽を用い単一のウェハ上にPS層を形成する装置を示す図である。
【
図2】ウェハ積層体を用いるマルチウェハ処理装置を示す図である。
【
図3】
図2に示したものと類似しているが、水素ガス(H
2)が左から右へと排出されるよう傾斜配置された装置を示す図である。
【
図4】共有電極付の二次元ウェハ配列を用いるマルチウェハ処理装置を示す頂面図である。
【
図6】二次元ウェハ配列の積層体を用いる複合的なマルチウェハ処理装置を示す側面図である。
【
図7】別タイプのマルチウェハ処理装置を示す図である。
【
図8A】インライン配置型のマルチウェハ処理装置を示す頂面図である。
【
図9A】ウェハ及びその縁封止材の一例を示す図である。
【
図9B】ウェハ及びその縁封止材並びにその鉛直又は略鉛直配置バッチの一例を示す図である。
【
図9C】ウェハ及びその縁封止材の一例を示す図である。
【
図9D】ウェハ及びその縁封止材の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、別紙図面を参照しつつ、本発明の目的、構成及び効果についてより詳細に説明する。そのなかには、発明の包括的説明ではなく主要構成の概括を目的とする「発明の概要」の欄では採り上げなかった構成及び効果も含まれている。いわゆる当業者であれば、別紙図面及びそれに基づく詳細な説明を参照することで、本発明に他の実施形態があり得ることを察知し、その目的、特徴及び効果を理解することができよう。それらの事項も本発明の技術的範囲に属するものとする。また、以下の説明では具体的な実施形態を示しているが、いわゆる当業者であれば、そうした実施形態に囚われず様々な分野乃至装置に本発明の原理を適用することができよう。即ち、いわゆる当業者であれば、これから説明するそれを含め様々な分野乃至形態で本発明を実施可能なことを理解できよう。
【0019】
まず、本発明はPS層形成に使用可能なマルチウェハ処理装置及び方法を提供するものであり、ベンチ又はタンク内で実行される湿式化学処理と同じくバッチ規模の拡大や処理コストの低減が可能である。一度に1枚のウェハしか処理できない従来のPS層形成装置では、ウェハ1枚当たり設備費が高くつき、処理時間が累積し、ウェハの扱い及び封止が面倒で、従って宿命的に歩留まりが低くなっていたが、本発明に係る装置及び方法では、ウェハ積層体又はウェハ配列1個当たりウェハ枚数に比例し設備費を削減することができる。しかも、自動化を簡便に達成することや、装置占有スペースを抑えることや、洗浄・乾燥を装置の下流で実行することができる。
【0020】
図1に、従来技術に係る単一ウェハ用電解質槽を用い、陽極酸化で多孔質シリコン層を形成する装置の構成を模式的に示す。この装置では、ウェハ10が電解質槽12内に配置される。その位置は陽極14と陰極16の間である。通常、槽12内にはHF及びIPAが充填される。この槽12に通電すると、ウェハ10の前面18に多孔質シリコン膜が発生する。ウェハ10の背面17には発生しない。その通電に伴い、陰極16やウェハ背面17では水素ガスが生じ、陽極14やウェハ前面18では酸素ガスが生じる。
【0021】
図2に、従来のPS層形成装置で生じる問題のうち幾つかを解決可能なウェハ積層体の側面を示す。本実施形態では、供給路22経由で供給される電解質が、ウェハ20毎にその流動方向を反転させつつ、ウェハ20間間隙を流れて還流路24に達し、最終的にそこから排出されていく。本発明の実施にとり必須ではないものの、この流動方向反転は流路構造の簡略化に役立つ。陽極28及び陰極29は、多孔質シリコン層形成の際に電流供給に使用される。積層されるウェハ20の枚数をnとすると、ウェハ1枚当たり電圧値は陽極28・陰極29間総電位差Vの1/n、ウェハ1枚当たり圧力は供給路22・還流路24間総圧力差Pの1/nとなる。
【0022】
各種PS層形成装置で面倒なことは、陽極におけるエッチング反応でPS層が形成される際に生じる水素ガス(H
2)の取扱である。発生場所は個々の電極、個々のウェハの表面であり、電解質槽が電解質流路の一部となっているので、そこでは水素ガスの作用で電解質が押しのけられて通電が阻害される。反応面への電解質供給が妨げられるとPS層形成にも悪影響が及ぶ。従って、電極やウェハの表面で生じた水素ガスを効率よく迅速に排出させるのが望ましい。水素ガス排出効率はウェハ間隙、流動状態及び通流ポートの構成で左右される。水素ガス排出管束23が設けられているのは、ウェハ表面から電解質の作用で押し流されてくる水素ガスをそこから効率的に排出させるためである。
【0023】
この水素ガス排出機構は流体力学的にかなり簡略である。十分な注意を払えば、通流ポートでの電流損失を低減する手段にもなる。即ち、ウェハ間隙間が通流管で結ばれているので、通流ポート形状、通流管直径及び通流管長の工夫で、個別ウェハからその通流管に流れる漏洩電流やバイパス電流を抑えることができる。例えば、通流管を細径且つ長尺にすることで、その電気抵抗を高め、漏洩電流やバイパス電流を抑えることができる。電気力線もウェハ近傍の幾何学的構成に左右される。従って、大きな通流ポートを設けるよりは小さな通流ポートを数多く設ける方がよい。
【0024】
PS層形成に当たり消費される化学薬液の量も少ない。それでいて、装置内流速は一般的な値でよい。従って、仮に、効率的な水素ガス排出手段を使用することができれば、装置内流体収容力を抑え、更にコストを削減することができる。このほか、図中のマルチウェハ処理装置には、同じバッチのウェハ複数枚を同じ電解質槽で同時に処理できる、電極使用数が一対で済む、処理に必要な素材及び部品の量が少ない、といった長所もある。
【0025】
乾いた清浄なPS層を得るには、積層体のまま一群のウェハを別の槽に運び入れ、上述したものと同じ要領で固定した後、そのウェハに洗浄、浄化及び乾燥処理を施せばよい。その際にもウェハ複数枚が並列処理されるので、CoOが更に抑制されることになる。
【0026】
そして、いわゆる当業者には自明な通り、使用する電流の強さ及び極性を相応に変化させることで、その多孔度が層毎に異なる2個、3個更にはより多数のPS層を形成することができる。この点は、同図に示した実施形態に限らず後述する他の実施形態でも同様である。更に、ウェハの片面に所望のPS層を幾つか形成した後、電流極性を反転させることで、そのウェハの他面にもPS層を形成することができる。ウェハの両面に各複数個のPS層を形成することや、一方の面における層構造と他方の面における層構造とを互いに似せること或いは違えることも可能である。
【0027】
図3に、上掲の実施形態に類似する実施形態として、鉛直線30に対しある傾斜角31をなすようウェハ積層体が傾斜配置され、水素ガス(H
2)が左から右へと排出されるようにしたものを示す。本実施形態では、発生した水素ガスが放っておいても水素ガス排出管束32から流れ出すため、電解質の流動状態が顕著に改善される。しかも、どの流路でも電解質が同じ方向に流れるので、構造が簡略で低コストでの実現が可能である。ウェハの搬入及び搬出並びに電解質の充填に当たり、反応槽を傾け直立状態にすることもできる。また、本実施形態は様々に変形することができる。例えば、ウェハを差し込むためのスロットを鉛直な反応槽内に斜めに形成し、装置占有スペースを抑えるようにしてもよい。或いは、反応槽を略平行に配置し、電解質に丸ごと浸されたウェハで発生する水素ガスを液面上方の槽内上部空間を介し水素ガス排出管に送るようにしてもよい。この形態では、水素ガス排出管が1本で済むので、水素ガス排出手段の複雑化を抑え安価に実現することができる。
【0028】
反応槽上方に上部空間があることで圧力水頭が生じるものの、現実には、ウェハ積層体の全体に亘り十分な圧力、十分な電解質流が供給されるようポンプを使用する構成にするのが望ましい。図示しないが、このポンプの必要性は積層体内ウェハ枚数nが多いほど強まる。ポンプ使用のメリットは、圧力降下で生じるウェハ間圧力差がより均一になることである。その圧力差には、各ウェハを封止材上に着座させる作用がある。その値が十分であれば、封止材上に個々のウェハがより確実に着座するため、ウェハ周囲の漏洩電流が少なくなり、形成されるPS層がより均一なものとなる。
【0029】
そして、電圧及び電流の値、或いは合計電力の値にバッチ間差異が生じない構成にすることも望まれる。PS層形成処理は電解質を利用する処理であるので、ウェハ乃至テンプレートの再使用に伴いウェハ厚が変化することや、HF消費に伴い槽内化学薬品がドリフトすることで、PS層形成処理に悪影響が及ぶことも考慮した方がよい。槽内化学反応の実時間監視と処理条件制御を組み合わせれば、処理をロバスト化し、バッチ間差異や同一バッチ内差異を抑えることができる。
【0030】
また、マルチウェハ処理を行う動機の一つは、ウェハ1枚当たり設備費を抑えると同時に生産性を高め、それによってCoOを抑えることにある。その達成手段としては、ウェハ複数枚で共有電極付の二次元配列を形成する、という手段もある。
【0031】
図4に、本発明の他の実施形態に係るマルチウェハ処理装置の頂面を示す。図中、ウェハが16枚あるのに対し電極が四対しかないことからわかるように、本実施形態では、コスト削減のためウェハ複数枚で同じ電極対が共有されている。即ち、その配列の一方の面に位置する陽極41と、それとは逆側にあり見えていない陰極とが共有されている。同じトレイ40上にあり同じ電極対を共有しているウェハの枚数は、図上は4枚であるが、いわゆる当業者には自明な通り4枚超にすることもできる。電極一対当たりウェハ枚数を多めにする場合、どのウェハでもその表面における電流分布ひいてはPS層形成具合が均一になるよう、ウェハ表面・電極間の距離を広めにとる必要がある。いずれにせよ、本実施形態では、ウェハ複数枚が二次元的に並ぶ二次元ウェハ配列が形成されることになる。いわゆる当業者には自明な通り、こうした配列は、電極対1個当たりウェハ枚数の如何によらず、正方形配列、長方形配列、非長方形配列等、所望の形状にすることができる。
【0032】
また、図上はウェハが略正方形であるが、いわゆる当業者には自明な通り、配列されるウェハの形状は、正方形、円形等、任意の形状にすることができる。
【0033】
図5に、
図4に示した実施形態をより詳細に示す。二次元ウェハ配列の個数が1個でも採算は成り立つが、経済性を高めるためこの例では二次元ウェハ配列を高さ方向に沿い複数個配列してある。配列されるのが二次元ウェハ配列であるので、作用する電界(図中の57は概略力線形状)が十分均一になるよう槽内導電率を高くする必要があるほか、ウェハ枚数が多い分は流路が長く水素ガスがたまりやすいことを考慮し、水素ガスの発生を抑えることが重要となる。ウェハは、5×5×1、10×10×1、20×20×1、10×10×5、10×20×2等、様々なX×Y×n配列にすることができる。この表記中、X×Yはウェハ配列内ウェハ枚数、nはその配列の高さ方向配列個数を表している。使用する反応槽を適宜設計すれば、n=2,3,…,10或いはそれ以上のもの等、二次元ウェハ配列複数個を高さ方向に配列したものをバッチ処理して多孔質シリコン層を形成することもできる。いずれにしても、本実施形態によれば、多孔質シリコン層の生産コストを大きく削減し且つその生産性を大きく高めることができる。本実施形態を用い半導体ウェハ上に一通り又は複数通りの多孔度で多孔質シリコン層を形成した場合、その実効的スループットは一時間当たりウェハ処理枚数で数百から数千にも上る数値となる。
【0034】
図6に、複合的な実施形態に係り二次元ウェハ配列の積層体が形成される装置の側面を示す。本実施形態は、
図2に倣い直立させることも
図3に倣い傾斜させることも可能である。また、二次元ウェハ配列同士の間隙に形成される流路での電解質流動方向が、それら流路間で互いに同方向になる構成にすることも別方向になる構成にすることもできる。更に、図示例では、水素ガス排出が好適に行われるよう、2×2×5配列されている計20枚のウェハで一組の電極が共有されている。個々の二次元ウェハ配列を形成するウェハの枚数や、その二次元ウェハ配列の積層個数は、設計条件乃至スループット条件に応じ定めればよい。
【0035】
図7に、その素材利用形態が異なる別の実施形態を示す。本実施形態では、個々の陰極74が2枚のウェハ70に作用するよう、その陰極74に対向する陽極76にウェハ70がチャック又はクランプで固定されている。本実施形態では、ウェハを直立させると水素ガスが自然に槽内上部空間に抜けていくので、処理中に電解質をポンプで押送し又は循環させる必要がない。ドライウェハチャックで使用される素材の工夫で更にコスト低減することもできる。そして、図示した構成を左右方向に拡張することや紙面直交方向に拡張することも可能である。
【0036】
図8A及び
図8Bに、電解質槽にパレットを浸漬させる実施形態を示す。本実施形態では、ウェハ84を載せたパレット83複数個が電解質槽80内で搬送され、その上方に位置する電極85,86の作用でウェハ84上にPS層が形成される。その電極が2個の領域A,Bに分かれているので、領域Aに印加される電圧と領域Bに印加される電圧を別の値に設定することで、例えばその多孔度が低いPS層の形成と多孔度が高いPS層の形成とを縦続的に実行することができる。なお、パレット83はサイドレールと接触させ、電極85,86は槽80内に浸漬させる。また、その多孔度が異なる複数個のPS層を縦続的に形成する手法としては、こうした電解質槽を2個、縦列配置して使用する手法もある。ウェハを第1の電解質槽に送り、そこで第1の化学薬品及び第1の電流値を使用し第1多孔度のPS層を形成した後、そのウェハをコンベアで第2の電解質槽に送り、そこで第2の化学薬品及び第2の電流値を使用し第2多孔度のPS層を形成する、といった手法である。装置占有スペースを抑えつつ所要特性のPS層形成に必要な滞留時間を確保するには、例えば、電解質槽をU字状に配置乃至形成すればよい。
【0037】
図9A及び
図9Bに、本発明の諸実施形態で使用でき形状適合性のあるウェハ縁封止材の構成を示す。
図9Aに示したのはウェハ90及びハウジング91の前面、
図9Bに示したのは複数枚のウェハ90及びそれをその場に固定しているウェハ縁封止材92の端面である。
図9Bには、幾枚かのウェハ90及び縁封止材92に関し、その当接部の詳細も併記されている。ウェハ90の上方には水素ガス排出管93が描かれている。
【0038】
図9Bに示す如く複数枚のウェハを鉛直又は略鉛直に配置し、そのウェハ上に多孔質シリコン層を形成する場合、電解質を強制的に流動させる必要はない。反応面で発生するガスが浮力の作用で自然に浮かび上がり、その反応面から離れていくので、電解質槽の上方でそのガスを排出させることができる。また、その際、形状適合性及び非浸透性を有するウェハ縁封止材を使用することで、個々の電解質分室間で電解質同士が接触することを防ぐことができる。
【0039】
電解質分室とは、ウェハ及びその縁封止材の協働で形成される独立した電解質通流空間のことである。ウェハ縁封止材に形状適合性及び非浸透性を持たせることで、電解質分室間の電解質漏洩や電界漏洩をほぼ又は完全に防ぐことができる。ひいては、所望の多孔度を有する多孔質シリコン層をウェハの露出面全体に亘り均一形成することができる。
【0040】
しかも、ウェハ縁封止材には、形状適合性及び非浸透性に加え、ウェハを直立状態で安定させる機能を持たせることができる。これには様々な手段を使用することができる。
図9Cに示す如くウェハ縁封止材の形状を工夫してもよいし、
図9Dに示す如くウェハ縁封止材を孔付又はスポンジ状の円環にしてもよい。これらの手段なら、電解質や電界をウェハの縁付近にまで到達させることができる。
【0041】
まず、
図9Cに示したのは、
図9B中の拡大部分を更に拡大したものである。この図では、陽極酸化電流の交番乃至変化によって、ウェハ90の両面に複数個のPS層例えば多孔質シリコン層98が形成されている。
【0042】
次に、
図9Dに示したのは、本発明の他の実施形態100で使用されるウェハ縁封止材である。形状適合性があり連続的で湾曲の付いた(形状が工夫された)ウェハ縁封止材が使用される
図9Bの実施形態と異なり、本実施形態100では、形状適合性のあるウェハ縁封止材101が、縦に延びる封止枠103の内側に埋め込まれている。封止枠103は電解質及び電流を通すので、枠103で隠されている部分を含めウェハを適正且つ均一に陽極酸化させることができる。
【0043】
これら、形状適合性を備えたウェハ縁封止材は、様々な目的で使用することができる。例えば、ウェハ90からPS層を分離させることで薄膜型太陽電池基板を生産する場合には、PS層の形成先となるウェハ90がウェハ縁封止材を用い繰返し固定されることになる。この場合、ウェハ90の寸法、例えばその厚み、直径及び形状は、PS層形成に使用するたびに僅かずつ変化していく。こうした変化が生じても、ウェハ縁封止材に形状適合性があるので、その変化を吸収することができる。
【0044】
本発明の諸実施形態は、PS層例えば多孔質シリコン層の片面形成にも両面形成にも使用することができる。単一のPS層を形成することも、その多孔度が異なる複数個の層を有する多層構造を形成することもできる。ウェハの片面にPS層例えば多孔質シリコン層を形成し、それを再処理して片面に半導体層例えばシリコン層をエピタキシャル成長させ、そのエピタキシャル層を半導体薄板として分離させる、というように、ウェハをリユーザブル半導体テンプレートとして使用することもできる。
【0045】
同様に、ウェハの両面にPS層例えば多孔質シリコン層を形成し、それを再処理して両面に半導体層例えばシリコン層をエピタキシャル成長させ、各面のエピタキシャル層を半導体薄板として分離させる、というように、ウェハをリユーザブル半導体テンプレートとして使用することもできる。こうすることで、半導体薄板の生産コストを更に抑えることができる。
【0046】
本発明の諸実施形態に係るPS層形成装置例えば多孔質シリコン層形成装置で使用される電極の形成素材としては、様々な素材、例えばダイアモンド、プラチナ、シリコン、カーボン、ダイアモンド被覆導電素材、ダイアモンド様カーボン被覆導電素材等をはじめ本件技術分野で既知の諸素材を使用することができる。その電極の形状も、平坦な円盤、湾曲の付いた円盤、ロッド、円環等、様々な形状にすることができる。電極の形状及びサイズは、所定の電界及び電流分布が得られるように設定すればよい。
【0047】
以上、本発明の諸実施形態に関し説明してきたが、これは、いわゆる当業者が本発明の構成を理解しそれを応用できるようにするためのものであり、本発明の技術的範囲が上掲の諸実施形態に限定されるわけではない。上掲の諸実施形態を変形することや、上掲の諸原理を参照し他の形態で本発明を実施することは、いわゆる当業者であれば、技術水準の飛躍無しに行えることである。従って、本発明の技術的範囲は、上掲の諸原理及び諸特徴と矛盾しない最大限の範囲に及ぶものと解すべきである。
【0048】
そうした応用的な装置、方法、手段及び特徴のうち本願の記載と矛盾しないものに関しては、本発明の技術的範囲に包含されるものと解されたい。