(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
例えば自動車のエンジンルーム内にはコンピュータ制御電子機器間を繋ぐハーネス(導体線)が組み込まれており、そのハーネスの全長も十数mにも達することがある。イグニッションノイズ電磁波は数十キロヘルツから数メガヘルツの高周波であり、前記ハーネスの導体線は線状受信アンテナとして作動すると考えられる。つまり、如何なる導体線も全て線状アンテナとして作動することはアンテナ工学の分野で良く知られた事柄であり、前記ハーネス(導体線)も例外ではない。
従って、路面反射等を含めてエンジンルーム内に侵入したイグニッションノイズ電磁波は、前記ハーネスの導体線が線状受信アンテナとして作動することにより、前記ハーネスの導体線にコモンモードノイズ電流を生じる要因となりうる。
【0016】
このことから、ハーネスの導体線上に生じたノイズ電流が電子制御回路に電磁波ノイズ障害を引き起こし、運転者の意図しない急加速などの問題を生じさせる可能性が考えられる。
【0017】
本発明は、以上の状況に基づいてなされた発明であり、電磁波ノイズに対する技術的対策の理論的検討により、ノイズ障害事故の低減に資するものである。
本発明の実施形態に係るノイズ減衰器は
図1(a)(b)に示す様に、ノイズが重畳する電力線或いはアース線などの導体線1が中空孔2aに貫通する筒状磁性材コア(以下、筒状コアという)2と、前記筒状コア2の中空孔2aに通して前記筒状コア2に巻き付けた巻線3と、前記巻線3に接続したインピーダンス素子4とを有する構成を基本構成としたものである。この場合、前記導体線1と前記巻線3との間は電気的に絶縁してある
。
【0018】
具体的に説明すると、本実施形態では
図1(a)(b)に示す様に、低周波から高周波域にわたり磁性損失の小さい、所謂広帯域特性を持つ磁性体リングコア(例えば、フェライト製のトロイダルコア)2
1,2
2・・・2
nを複数個重ねて筒状コア2を形成している。
前記筒状コア2に磁気飽和現象が生じると、巻線3がインダクターとして機能しなくなりノイズ電流阻止効果と抵抗4によるノイズ電力消費効果とが期待できなくなるため、前記筒状コア2の磁気飽和を最小限に止めるべく電源線等の導体線1を筒状コア2の中空孔2aに挿通して使用するだけの形態をとり、
図12のフェライトビーズと同様に電源電流等の信号線電流が筒状コア2内に作る磁束が最少となって筒状コア2の磁気飽和に対処すべく図られている。
現在市販されている前記
図12の現用ノイズ対策品も前記導体線を挿通して使用する形態ではあるが、そのフェライトコアは高周波領域での磁性損失が大なるように作られているが、MHz以下のノイズ周波数領域でのノイズ抑制効果が小さい。
他方、本発明による
図1、
図2に示す実施形態では、8個の広帯域低損失特性を持つトロイダルコア(磁性体リングコア)2
1,2
2・・・2
nを複数個重ねて筒状コア2を形成する形態を示している。この場合、複数個重ね合わせるトロイダルコア2
1,2
2・・・2
nの使用個数は、数が少ない場合は挿通する導体線1に対して呈するインダクタンスの値が小さくなり、多い場合には大きくなるため、筒状コア2を形成するトロイダルコア2
1,2
2・・・2
nの個数、前記抵抗4の値と巻線3の巻線数Nとを変えてノイズ電流抑制値とその有効下限周波数を調整することができる。なお、トロイダルコア(磁性体リングコア)2
1,2
2・・・2
nの個数は8個に限られるものではない。複数の磁性体リングコア2
1,2
2・・・2
nとして、フェライト製のトロイダルコアを用いたが、これ以外の磁性体リングコアを用いてもよい。
【0020】
さらに、
図1(a)の二次側の巻線回路Pにおける巻線3は
図1(b)に示す様に、前記筒状コア2の中空孔2aを通してN回巻き付けられ、その端子3a,3b間には抵抗4が接続されている。また、前記巻線3は、前記挿通した導体線1との電気的接触のないように筒状コア2に巻き付けてある。
ここで、前記巻線回路Pに、抵抗4だけでなくインダクターやコンデンサを併用して熱消費のノイズ電力に周波数特性を持たせてもよい
。
なお、前記本発明の基本構成において、筒状コア2が導体線1に呈するインダクタンスL
0と、前記巻線3の巻線数Nに依存するインダクタンスL
1との関係およびノイズ障害低減機能の詳細については後述する。
【0021】
以上の構成により、本発明の実施形態に係るノイズ減衰器は、前記筒状コア2の中空孔2aに貫通させた電源線やアース線などの導体線1にノイズ電流が重畳すると、前記ノイズ電流の一部が前記導体線1から前記巻線3へ電磁誘導されて前記巻線3に流れ、前記巻線3に配された抵抗4で熱消費されるとともに電磁波ノイズ障害を生じている医療機器やコンピュータ制御精密電子装置への流入ノイズ電力を低減し、ノイズ電磁波障害を除去しようとするものである。
【0022】
この様に本発明に係るノイズ減衰器において、筒状コア2の中空孔2aに導体線1を挿通して使用する場合にも、ノイズ障害の状況と被障害電子装置の設置された電磁環境に応じて、筒状コア2を形成する磁性体リングコアの使用個数、巻線3の巻線数、巻線3側の抵抗4の抵抗値を、適宜決定すれば良い。
【0023】
次に、本発明に係るノイズ減衰器のノイズ障害低減機能を説明するに、
図2(a)に示す回路構成モデルによって行うこととする。
図2(a)において、電源線等の導体線1の信号電流に重畳して流れているノイズ電流I
0は、導体線1が線状アンテナとして作動した結果流れている
ノーマルモード電流であって、前記線状アンテナの受信電圧をノイズ電圧源Eとして表示している。また、
図2(a)では、ノイズ電流I
0がノーマルモード電流の形態を示しているが、コモンモードノイズ電流に対しても後述する等価ノイズ負荷抵抗R
Lを想定することで、同じ回路モデルにより説明できる。すなわち、ノイズ電流がコモンモード電流であれ、ノーマルモード電流であれ、前記医療機器やコンピュータ制御精密装置にノイズ障害を生じる際には必ずノイズ電力の消費を伴うものと考えられ、その電力消費量をI
02R
LとしてこのR
Lを等価ノイズ負荷抵抗と定義できると考えている。したがって、コモンモードノイズ電流の場合でも前記装置の筐体と大地間に形成される迷容量の介在による電流であることを考慮して、
図2(a)に示したモデルによってノイズ障害の対処をすればよい。
【0024】
上述した様に、本発明の実施形態では、導体線1に重畳したノイズ電流I
0の一部を巻線3に電磁誘導作用により誘導することで抵抗4において熱消費し、かつ等価ノイズ負荷抵抗R
Lでの消費ノイズ電力I
02R
Lを低減することにより、前記装置に対するノイズ障害低減効果を創出するものである。
本発明者は、前記筒状コア2の中空孔2aに挿通した導体線1の呈するインダクタンスL
0と、前記巻線3が呈するインダクタンスL
1との関係をL,C,Rメータに依って実測し、前記導体線1を筒状コア2の中空孔2aに挿通した場合の導体線1のインダクタンスがL
0であり、巻線3の呈するインダクタンスがL
1であるとき、巻線3の巻線数Nとの間では、
L
1≒N
2L
0 (1)
の関係が成立していることを導き出した。
【0025】
次に、前記式(1)の関係に基づくことにより、ノイズ電流I
0を低減する効果について述べる。
図2(a)において、等価ノイズ負荷抵抗R
Lで消費されるノイズ電力P
RLについて求める。このノイズ電力P
RLは、ノイズ電流I
0に基づいてノイズ障害を電子機器に与える電力であり、言い換えるとノイズ障害に費やされる電力である。
前記電力P
RLは、式(2)、(3)に示す連立微分方程式で、2式をノイズ源電圧がe=Ee
jωt、ノイズ電流I
0がi
0=I
0e
jωt,巻線3に電磁誘導されて流れるノイズ電流がi
1=I
1e
jωtなる正弦波であると仮定して解いた結果の式(4)、(5)から、式(8)の形で得られる。ここに、I
0は導体線1に重畳するノイズ電流、I
1は巻線3に電磁誘導されて流れるノイズ電流である。L
0は前述のように筒状コア2に挿通した導体線1が呈するインダクタンス、L
1は前記巻線3が呈するインダクタンス、R
Lは前記等価ノイズ負荷の抵抗値、R
1は巻線3に接続した抵抗4の抵抗値である。
(2)
(3)
式(2)(3)の連立微分方程式の解は、
(4)
(5)
となる。
とおけば(ここではM≧0とする)、
(6)
(7)
(1)式のL
1≒N
2L
0の関係と式(6)、(7)から、
(8)
(9)
が得られる、P
RLは等価ノイズ負荷抵抗R
Lで消費されるノイズ電力、P
R1は巻線3の抵抗4で消費されるノイズ電力である。式(8)(9)において、ωはノイズ電圧,電流の角周波数である。
【0026】
本発明の実施形態に係るノイズ減衰器を用いない場合に等価ノイズ負荷抵抗R
Lで消費されるノイズ電力は、E
2/R
Lである。
これに対して、本発明の実施形態に係るノイズ減衰器を用いた場合、ノイズ電流I
0の一部を巻線3に電磁誘導させて巻線3の抵抗4で熱消費しつつ、一部のノイズ電力は再放射される。式(8)で、
(10)
とおけば、式(10)に示すαは明らかに1より小さくなるから、本発明によるノイズ減衰器を用いないときの等価ノイズ負荷抵抗R
Lで消費されるノイズ電力のE
2/R
Lより小となり、ノイズ障害を低減する機能を持つことが示されている。そして、そのノイズ電力の一部が巻線3側の抵抗4により式(9)に示す電力P
R1として消費されていることを示している。
以上の様に、本発明に係るノイズ減衰器を用いることで、等価ノイズ負荷抵抗R
Lでノイズ障害を生じるのに消費する電力P
RLを低減することでノイズ障害除去効果が期待できる。
【0027】
また、ノイズ減衰器の巻線3の抵抗4で消費されるノイズ電力P
R1を表す式(9)で
(11)
と置けば、式(10)、(11)のNとR
1の値を選ぶことで、種々のα、βを得ることができるから、ノイズ対策現場における環境電磁波ノイズの低減を図りながらのノイズ障害除去作業が可能となる。そこで、この作業を行う場合のαとβの値についての数値例を挙げておく。
図1の筒状コア2における式(1)のL
0にインピーダンスメータによる実測値64μHを用いて、この値を使っての式(10)および式(11)によるα、βの値は、巻線3の巻線数N=3、抵抗4の抵抗値R
1=1kΩ、等価ノイズ負荷抵抗R
Lの抵抗値R
L=50Ωとすると、αについてはノイズ周波数が100KHzである場合に−3.2dB、ノイズ周波数が500KHzである場合に−9dB、ノイズ周波数が2MHzである場合に−10dB、10MHz以上のノイズ周波数帯域でも−10dBとなる。また、βについてはノイズ周波数が100KHzである場合、β=0.12、ノイズ周波数が500KHzである場合、β=0.21、ノイズ周波数が1MHz以上の場合であってもβ=0.21となる。
つまり、この場合は500kHz以上でのノイズ周波電力E
2/R
Lは、その21%が抵抗4で熱消費され、等価ノイズ負荷抵抗R
Lでの障害電力は10%〜12%に軽減されて、残余のノイズ周波電力が反射電力となることを示している。
一方、前記条件と同じ、L
0=64μH、N=3、R
L=50Ωで、巻線3の抵抗4の抵抗値R
1を5KΩに変えると、αの値はノイズ周波数が100KHzの場合−2.3dB、ノイズ周波数が500KHzの場合−12dB、ノイズ周波数が2MHz以上の場合は−20dBとなって前記R
1=1kΩのときより500kHz以上のノイズ周波数で等価ノイズ負荷抵抗R
Lの消費ノイズ電力が減少し、ノイズ障害低減効果は向上する。
しかし、他方、βの値は、ノイズ周波数が100KHzである場合は0.03、ノイズ周波数が500KHzである場合は0.07、ノイズ周波数が2MHz以上である場合は0.08となり、巻線3の抵抗4での熱消費電力が大幅に減少し、したがって反射電力も大幅に増大してノイズ電磁波についての電磁環境緩和に寄与する効果が低下している。
上述した様に、前記筒状コア2に挿通した導体線1が呈するインダクタンスL
0と、前記巻線3が呈するインダクタンスL
1と、前記巻線3の巻線数Nとを前記式(1)に示す関係から、この条件下で巻線3の巻線数Nと抵抗4の抵抗値R
1を選ぶことにより、種々のα,βを得ることでき、適宜αとβの値を選ぶことで電磁環境の浄化と共にノイズ障害の低減を図ることができる。
なお、CEマーキング等の現状法的ノイズ規制下においては大きな環境ノイズ電磁界の存在は考えられないから、前記導体線1に流れるノイズ電流I
0が大きい場合は等価ノイズ負荷抵抗R
Lが小さいものと考えられ、ノイズ電流I
0が小さい場合にはR
Lの値が大きいと考えられる。それ故、本実施形態では等価ノイズ負荷抵抗R
Lを最大でも50Ω程度と見積もっている。
また、式(8)〜(11)が示すように巻線3の巻数Nが固定された状態で等価ノイズ負荷抵抗R
Lの抵抗値が変われば、巻線3に接続した抵抗4の抵抗値R
1の値を適宜変えてノイズ障害に対処すれば良いし、また前記巻線3の巻数Nを変えてノイズ障害解消のための最適なR
1値を選定しても良い。つまり、電磁波ノイズ障害下にある電子装置において、ノイズ障害を低減除去し、かつその設置現場
における電磁環境の改善に供する最適N,R
1の値を選定できることとなる。但し、R
Lの値はノイズ障害をうけている電子装置における特有の値と考えられ、計測作業によって得られる値ではなく、クランプ型オシロスコープ電流計による導体線1のノイズ周波電流計測値と環境ノイズ電磁波の電磁界計測値から推定する値である。
なお、本発明に係るノイズ減衰器において前記抵抗4のかわりに可変抵抗器によりその抵抗値を可変にすることでも、上記電磁波ノイズ障害に対処することができることは言うまでもない。
【0028】
次に本発明によるノイズ低減効果およびノイズ電磁波環境浄化機能を
図3によって説明する。
図3は、
図2(a)及び
図2(b)に示した磁性体リングコア2
1、2
2・・・2
nを積層した筒状コア2の中空孔2aを貫通する導体線1を一次巻線とし、前記筒状コア2の中空孔2aに挿通して前記筒状コア2に巻かれた巻線3
1,3
2・・・3
nを二次巻線とした変成器に相当する等価回路図である。
ただし、
図2(a)(b)では、二次巻線としての巻線3の数を1、その巻線3による巻線回路Pの回路素子を純抵抗4としてあるが、これに限られるものではなく、
図3のようにしてもよい。すなわち、
図3に示す様に、前記筒状コア2に個々に独立して巻かれる巻線3
1,3
2,・・・3
nが複数であっても良く、複数の巻線3
1,3
2,・・・3
nによる個々に独立した巻線回線P
1,P
2・・・P
nを複数に設定しても良い。さらに、複数の二次巻線の巻線3
1,3
2,・・・3
nに接続するインピーダンス素子4は、純抵抗の単独のものばかりではなく、抵抗,インダクター及びコンデンサを含むインピーダンス素子4であっても良い。
従って
図3では、
図2に示す抵抗4の代わりにインピーダンス素子4をZ
1〜Z
nで表示してある。また
図3において、Eは導体線1がアンテナとして作動しノイズ電流I
0を派生するときの電圧を示している。I
1、I
2〜I
nはI
0および各巻線3
1,3
2,・・・3
nへの相互誘導作用によって派生するノイズ電流を示している。従って、
図3から、以下の式が与えられる。
(12)
(12)式(行列式)において、ωはノイズ電流の角周波数、M
01等は一次側巻線(導体線1)および二次側の各巻線3
1,3
2,・・・3
n間の相互誘導係数であるが、
図3では図の煩雑さを避けて一次側巻線(導体線1)と二次側の各巻線3
1,3
2,・・・3
n間の相互誘導係数のみを表示してある。良く知られているように、M
mn=M
nmである。また巻線3
1,3
2・・・3
nの巻線数N
1、N
2等は巻線3
1,3
2・・・3
nの番号及び巻線数を示すものとし、これらの添字番号と電流I、巻き線のインダクタンスLの添字番号を一致させてある。また前記相互誘導係数M
nmは
とし、k=1としてよい。
以上を考慮して(12)式を解けばI
0〜I
nが求められ、従って前記ノイズ障害電力I
02R
Lと二次側の各巻線3
1,3
2,・・・3
nの各インピーダンス素子Z
1〜Z
nで消費されるノイズ電力とが分かることになる。
【0029】
また本発明者は、前記筒状コア2の中空孔2aに挿通された導体線1が呈するインダクタンスL
0と、前記巻線3が呈するインダクタンスL
mとの関係をL,C,Rメータに依って実測し、前記(1)式と同様に、低損失の筒状コア2の中空孔2aに挿通した導体線1が呈するインダクタンスL
0と巻線数N
mの巻線3が呈するインダクタンスL
m間で、(13)式が成立していることを導き出した。
L
m≒N
m2L
0 (13)
【0030】
(13)式の関係を用いて(12)式の計算を行う場合、L
m=N
m2L
0とおけるから、M
nm=±N
nN
mL
0となる。
また、ノイズ電力の消費量に注目し、
図3におけるインピーダンス素子Z
1,Z
2・・・Z
nを単に純抵抗R
1,R
2・・・R
nとおけば、(12)式のZ
0,Z
1,Z
2・・・Z
nは、Z
0=R
L+jωL
0、Z
1=R
1+jωL
1=R
1+N
12jωL
0、・・・Z
n=R
n+jωL
n=R
n+N
n2jωL
0となり、各電流値I
0,I
1,I
2・・・I
nからR
Lおよび二次側の巻線3
1,3
2,・・・3
nの抵抗R
1、R
2,・・R
nでのノイズ電力消費量を求めると、
【0031】
二次側の巻線の数n=1の場合。
(14)
(15)
が得られる。
【0032】
二次側の巻線の数n=2の場合。
(16)
(17)
(18)
が得られる。
【0033】
二次側の巻線の数n=3の場合。
(19)
(20)
(21)
(22)
が得られる。
【0034】
二次側の巻線の数n=nの場合も同様にして求められる。
【0035】
(14)〜(22)式において、E
2/R
Lは
図2における本発明のノイズ減衰器が無い場合に等価ノイズ負荷抵抗R
Lで消費されるノイズ電力を示しており、αはノイズ減衰器が存在した時のR
Lで消費されるノイズ電力の低減度を示している。またβは二次側の巻線3
1,3
2・・・3
nの各抵抗Z
1,Z
2・・・Z
nで消費されるノイズ電力のE
2/R
Lに対する割合を示している。換言すると、βはノイズ環境浄化への寄与率を示している。
従って、
図2に示す本発明のノイズ減衰器が存在することにより、
図2に示す本発明のノイズ減衰器が無い場合に等価ノイズ負荷抵抗R
Lで消費されるノイズ電力E
2/R
Lは、(14),(16)及び(19)式から明らかなように低減され、その低減された電力分は、(15),(17),(18),(20),(21)及び(22)式から明らかなように、二次側の巻線3
1,3
2・・・3
nの各抵抗Z
1,Z
2・・・Z
nで消費される。
従って、本発明によるノイズ減衰器においては、ノイズ負荷におけるノイズの消費電力つまりノイズ低減効果は1巻線回路の場合と同じであるが、二次側の巻線回路Pの巻線3に接続したインピーダンス素子4によるノイズの電力消費量は、二次側の巻線回路Pが1巻線回線Pより複数の巻線回線Pとした場合の方が増大し、二次側の巻線回路Pの数が多ければ多いほど増大する。つまりノイズ環境浄化機能が増大する。
【0036】
次に、
図2に示す本発明による実施形態の変更例を説明する。
図2に示す本発明による実施形態では、1個のノイズ減衰器Dの筒状コア2の中空孔2aに
図1に示す導体線1を貫通させている形態を示してあるが、被ノイズ電磁波障害電子装置へのノイズ障害低減効果を優先し、環境ノイズ電磁波低減効果を犠牲にする場合には、
図4(a)に示す様に、導体線1をm(m=1〜n)個のノイズ減衰器Dの筒状コア2の中空孔2aに挿通使用してもよい。この場合の実施形態として、mが3の場合の効果につき述べる。
まず、挿通個数がm個の場合の式(10)に示すαの値は、式(26)で示すα
mの形となるが、式(26)の導出過程について説明するに、
図1(b)において、筒状コア2の中空孔2aに挿通した導体線1側から巻線3側を見たインピーダンスZ、つまり変圧器において1次側から2次巻線側を見たインピーダンスは、式(23)で示され、
(23)
となるから、これをm個直列にした場合のノイズ源E側から見た入力インピーダンスZ
inは、式(24)で示す、
(24)
となり、式(24)から
(25)
を得て、
により
によって、式(10)と同様のαが式(26)の形で求められる。
(26)
βについても同様に、
(27)
式(26),式(27)で、L
0=64μH、N=3、巻線3に接続した抵抗4の純抵抗値R
1を1KΩとし、m=3とすると、α
mの値は、ノイズ周波数が100kHzの場合−9dB、500kHzの場合−16.6dB、ノイズ周波数が2MHz以上である場合は−17.7dBとなって、よりノイズ障害低減効果を上げることができている。しかし、R
1によるノイズ電力の吸収効果を示すβ
mの値は、ノイズ周波数100kHzでは0.10、500kHzでは0.11、2MHz以上のノイズ周波数でも0.11となって電磁環境浄化機能は単独つまり、m=1の場合よりも低下している。
また、巻線3に接続した抵抗4の純抵抗値R
1を5kΩとした場合のα
mの値は、ノイズ周波数が100kHzの場合は―8.5dB、500kHzの場合−21.4dB、2MHzでは−28.9dB、10MHz以上のノイズ周波数では−30.7dBとなり、電子装置側へのノイズ電力低減効果は増大するものの、β
mの値はノイズ周波数100kHzの場合0.02、500kHz以上のノイズ周波数でも0.03となり、電磁環境浄化機能は僅か3%程度と大幅に劣化する。
この様に本発明に係るノイズ減衰器を複数個用い、その複数個のノイズ減衰器の筒状コア2の中空孔2aに導体線1を挿通して使用する場合にも、ノイズ障害の状況と被障害電子装置の設置された電磁環境に応じて、使用個数m、巻線3の巻線数N、巻線3に接続した抵抗4の抵抗値R
1を式(26)、式(27)の数値計算により適宜決定すれば良いことが示されている。
【0037】
ノイズ電磁波による障害は、電子機器に接続されたアース線や電源線等の導体線1がアンテナとして作動することにより生じる。従って、導体線1に伝わるノイズ電流のモードは基本的にはコモンモードであるが、電源線などの導体線1は2線式であり、それが直角に曲げられたり引き回されたりしているためにノーマル(ディファレンシャル)モードのノイズ電流に変換され、導体線1には二つのモードのノイズ電流が混在する。
本発明の実施形態に係るノイズ減衰器で電源線等の2線の導体線1を挿通して使用した場合は、理論上前記基本ノイズ電流であるコモンモードのノイズ電流に対してのみのノイズ障害低減効果があると考えられ、ノーマル(ディファレンシャル)モードノイズ電流は2本の導体線1を互いに逆方向に流れて筒状コア2内に作る磁束を打ち消し合うため、ノーマルモード電流に対してのノイズ障害低減効果がないものと考えられる。
そこで、前記2つのモードのノイズ電流に対して本発明の実施形態に係るノイズ減衰器を同時に有効とするには、
図4(a)(b)に示す構成を提案する。但し、この場合は
図4(b)に示したように2つの導体線1a,1bの1線ずつを本発明の実施形態に係る
図1のノイズ減衰器Dの筒状コア2の中空孔2aに貫通させるため、周知の「アンベア周回積分」の法則から電源電流等の大電流による磁束が筒状コア2の内部に生じる。
しかし、上述した様に本実施形態においては、導体線1を挿通して使用する形態であるから変圧器の一次巻線数が1である場合に相当し、インダクターとしての最も磁気飽和を抑えた使用形態となっていて、また前記筒状コア2のコア径の大なるものの使用により磁気飽和に至らずに、電源電流等の大きな電流値に耐えうるものが実現可能と考える。
【0038】
また、
図4(b)に示す構成では複数個の本ノイズ滅衰器Dを使用してノーマル(ディファレンシャル)モードの両ノイズ電流に対応しているが、この場合、個々のノイズ減衰器Dは巻線3の巻線数Nと抵抗4の各抵抗値R
1が夫々異なっていてもよい。
さらに、
図5に示す様に、従来のノイズフィルタの技術を併用して、ノイズ減衰器Dに貫通させた導体線1a,1bの入出力端に並列コンデンサCを加えて使用しても良い。
【0039】
以上説明したように本発明の実施形態によれば、アース線や電力線などの導体線をノイズ減衰器の筒状コアに挿通することにより、電磁波ノイズ障害を低減することができ、且つノイズ電磁波の反射(換言すれば無効電力)を低減し、電磁波ノイズ環境を浄化できる。
さらに、導体線をノイズ減衰器の筒状コアに挿通することにより設置することができるため、前記導体線1が単線のアース線や2線或いは3線の電源線であったとしても、複数本のアース線や電源線に重畳するノイズ電流による障害を有効に低減することができる。また、前記導体線をノイズ減衰器の筒状コアに挿通して使用することで前記導体線の結線接続作業が不要となる場合が多くなり、利便性が大である。
【0040】
次に、本発明の実施形態の変更例を説明する。その変更例は、
図1に示す筒状コア2を形成するフェライト等の磁性体リングコア2
1,2
2,・・・2
nの磁性体コア材に透磁率が異なったものを用い、透磁率の異なる磁性体リングコア2
1,2
2,・・・2
nを複数個重ねることにより、
図1に示す筒状コア2を形成したものである。その他の巻線3及びインピーダンス素子4を含む構成は
図1(a)(b)に示す構成と同様である。
図1における筒状コア2は、透磁率が等しい磁性体リングコア(例えばトロイダルコア)2
1,2
2,2
3,・・・2
nを複数個重ねた場合を説明したが、前記筒状コア2は、異なる透磁率の磁性体リングコア2
1,2
2,2
3,・・・2
nを複数個重ねて形成してもよいものである。
前記異なる透磁率の磁性体リングコア2
1,2
2,2
3,・・・2
nとしては、フェライト,アモーファス等の磁性体コア材を用いる。これらの異なる透磁率の磁性体リングコア2
1,2
2,2
3,・・・2
nを複数個重ねて筒状コア2を形成してなるノイズ減衰器は、そのノイズ減衰機能を各磁性体リングコアの透磁率(μ=μ´−jμ´´)に依存する。そして、(μ´),(μ´´)はそれぞれ電流の周波数によって変化する。また周知のことであるが、(μ´)は電流に依存する磁界が磁性体リングコア内に作る磁束の比例定数であり、(μ´´)は磁界により磁性体リングコア内で発生する消費電力の比例定数である。つまり、磁性体リングコアにおいての自己インダクタンスL
0は、
(28)
で与えられている。
式(28)において、Nは磁性体リングコア(例えばトロイダルコア2
1,2
2,・・・2
n)に巻かれた巻線の巻数、Aは磁性体リングコア(例えばトロイダルコア2
1,2
2,・・・2
n)の断面積、ρは磁性体リングコア(例えばトロイダルコア2
1,2
2,・・・2
n)の平均磁路長である。
この場合、式(28)におけるμは透磁率、(μ=μ´−jμ´´)の左辺のμではなく、(μ´)のことであり、正確には左辺のμを(μ´)と書かねばならないのであるが、一般には磁性体損失を表す(μ´´)が0であるものとしても差し支えないので、単にμと標記されている(文献:DOVER PUBLICATION,INC. Minecola,New York“,Roger F,Harrington”,「Electromagnetic Engineering」pp245)。
【0041】
従って、ノイズ減衰器における式(1)式に示した、L
1≒N
2L
0に関係するμは(μ´)であり、その値は周波数特性を有している。
磁性体リングコア(例えばトロイダルコア2
1,2
2,・・・2
n)としては、Ni-Zn、Mn-Zn系フェライトやアモーファスなど(μ´),(μ´´)に様々な周波数を持つものが市販されている。一例を挙げると、
図6に示すように(μ´)値は低いが周波数特性が100MHz以上までインダクター特性を有するものから、
図7に示すように(μ´)値が高く、しかし数十MHzまでしかインダクター特性を示さないものがある。
本発明の実施形態に係るノイズ減衰器は、磁性体リングコア(例えばトロイダルコア2
1,2
2,・・・2
n)のインダクター機能を利用して2次側の巻線回路Pの抵抗(インピーダンス素子)4によりノイズ電力を吸収することにより、ノイズ障害を低減除去する目的を持たせたものであるから、
図1における磁性体リングコア材2
1〜2
nには、(μ´)値に上述したような様々な周波数特性を持たせたものを混合させて広帯域にわたってノイズ低減効果を持たせるようにすることが望ましい。
尚、(μ´´)は、電流によって派生した磁界のエネルギーをフェライトなどの磁性体リングコア材内で消費されるエネルギーの比例定数であるから、
図1に示すノイズ減衰器における巻線3の効果には依存しない。つまり、磁性体リングコア2
1〜2
nの材質のみに依存するノイズ電力消費効果を示す定数である。
従って、本発明の実施形態に係るノイズ減衰器においては、商用電源周波数などの低周波周波数帯域内における(μ´´)の値は0に等しいことが望ましく、ノイズ周波帯域では大きな値を呈する磁性体リングコアを採用することが望ましい。また、一般にフェライト、アモーファス磁性体においては透磁率の実部(μ´)における値がMHz帯域で急速に低下し、虚部(μ´´)が増加する特性をもつものが多い。しかし、この特性は
図12及び
図13に示す従来のフェライトビーズにおけるノイズ対策品と同機能であって、本発明品への適用は可能である。
【0042】
さらに、本発明の実施形態の他の変更例を説明する。前記他の変更例は
図8に示すように、
図1に示す筒状コア2を形成する磁性体リングコア2
1,2
2・・・2
nの全部(或いは一部)に磁気ギャップ5を設け、前記磁性体リングコア2
1,2
2・・・2
nの磁気ギャップ5同士の位置をリングコアの円周方向に相対的にずらせて配置したものである。その他の巻線3及びインピーダンス素子4を含む構成は
図1(a)(b)に示す構成と同様である。
【0043】
フェライトやアモーファスなどの磁性体リングコア2
1,2
2に磁気ギャップ5を設けることにより、磁気抵抗を増加させて、磁気ギャップ5の無いときより磁気飽和電流を大きくする技術が広く用いられている。この場合、磁気ギャップ5の幅により磁性体リングコア2
1,2
2・・・2
nの磁気抵抗が変化し、実効的な(μ´)の値も磁気ギャップ5の無い時より大きく低下することは、良く知られている事柄である。
本発明の実施形態に係るノイズ減衰器においては、上述した式(1),(10),(11)から分かるように、(μ´)値の低下は、筒状コア2の中空孔2aに挿通した導体線1のインダクタンスL
0の低下となり、ノイズ減衰効果の低下につながる。
しかし、前述のように磁気ギャップ5の存在は、信号(電源等)電流による磁性体リングコア2
1,2
2の磁気飽和を緩和する、つまり、より大きな使用電流値まで磁気飽和現象を延ばすことができるから、電源電流等の大きな電流に重畳しているノイズ電流を除去しようとする際には、磁気ギャップ5を有する磁性体リングコアの採用は不可欠である。
しかしながら、ノイズ減衰器において、筒状コア2の中空孔2aに挿通した導体線1のインダクタンスL
0の値の低下と電源電流等の信号電流値とを最適な状態におくことは至難の技である。つまり、信号電流値で磁性体リングコア2
1,2
2・・・2
nが磁気飽和しない限界の磁気ギャップ5の長さに設定して、筒状コア2の中空孔2aに挿通した導体線1のインダクタンスL
0の値を可能な限りの最大値に留めるという作業は、不可能ではないが困難を極めることとなる。
【0044】
そこで、
図8に示すように、隣接する磁性体リングコア2
1,2
2・・・2
nの端面同士を突き合わせ、磁性体リングコア2
1,2
2・・・2
nに設けた磁気ギャップ5の位置を磁性体リングコア2
1,2
2・・・2
nの円周方向に相対的にずらせることにより、磁性体リングコア2
1,2
2・・・2
nの磁気ギャップ5の位置を相対的にずらせて配置している。
このように、磁性体リングコア2
1,2
2・・・2
nの磁気ギャップ5の位置を相対的にずらせて配置することにより、隣接する一方の磁性体リングコアの磁気ギャップ5における漏洩磁束が隣接する他方の磁性体リングコアの磁気ギャップ5又は磁気ギャップ5が無い端面によって再び隣接する他方の磁性体リングコア内に結合するため、磁気ギャップ5の効果が低下し、結果として巻線3を流れる電流による磁性体リングコア2
1,2
2・・・2
nの磁気飽和と、巻線3と磁性体リングコア2
1,2
2・・・2
nによるインダクタンスを最適値に設定することができる。このように、電源電流等の信号電流により筒状コア2に生じる磁気飽和を最小限にとどめて、大きな信号電流にも対応して汎用性を高めることもできる。
【0045】
実験例として、例えば隣接する2個の磁性体リングコア2
1,2
2の磁気ギャップ5の位置を、磁性体リングコア2
1,2
2の円周方向に相対的にずらせた場合のインダクタンス値を測定した例を説明する。
【0046】
図8に示すように、隣接して2段に重ねられ且つ磁気ギャップ5,5を有する2個の磁性体リングコア2
1,2
2に50ターンの巻線3を巻き付け、一方の磁性体リングコア2
1又は2
2の磁気ギャップ5の位置を他方の磁性体リングコア2
2又は2
1の磁気ギャップ5の位置に対してθ°ズラした場合のインピーダンス値をインピーダンスメータによって計測した結果を
図9に示す。
【0047】
図9において、2つの磁気ギャップ5の位置を示すθ°と巻線3が呈するインダクタンスの値L(L
0)とは、上段が磁気ギャップ5のズレ角度θを、下段が巻線3の呈するインダクタンス値L(L
0)mHを示している。
そして、この場合のインピーダンスZは、純リアクタンスと見て差し支えないから、
Z=jX=jωL
1、とおいて、L
1=X/ωとおけば、θの変化に対するインダクタンス値であるL〔mH〕が求められる。
尚、この時、使用した2個の磁性体リングコア2
1,2
2としてフェライトコアを用い、その2個の磁性体リングコア2
1,2
2のサイズは、外径60〔mm〕、内径40〔mm〕、厚さ18〔mm〕で、磁気ギャップ5の幅は共に4〔mm〕とした。
又、これとは別に、この4〔mm〕の磁気ギャップ5の無い同一形状の2個の磁性体リングコアに50ターンの巻線3を巻き付けた場合におけるインダクタンスを、インピーダンスメータで計測すると、その計測値は56〔mH〕の固定値が得られた。
【0048】
実験例から明らかなように、磁性体リングコア2
1,2
2の磁気ギャップ5の位置関係が円周方向にずれることにより、前記磁気ギャップ5における漏洩磁束が夫々相手方の磁性体リングコア2
1又は2
2の磁気ギャップ5或いは磁気ギャップのない端面によって再び相手側磁性体リングコア2
2又は2
1内に結合するため、磁気ギャップ5の効果が低下し、結果として電流による磁性体リングコアの磁気飽和とインダクタンス値とを最適値に設定することができるという効果が確かめられた。
【0049】
本発明の実施形態を示した
図1,
図8における巻線3は1巻だけを示してあるが、これを複数巻としてもよい。