特許第5872470号(P5872470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5872470-感光性樹脂組成物及びその硬化物 図000030
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872470
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20160216BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20160216BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20160216BHJP
   C08G 59/06 20060101ALI20160216BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   G03F7/004 503Z
   G03F7/038 503
   G03F7/075 501
   G03F7/004 512
   C08G59/06
   C08G59/68
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-524568(P2012-524568)
(86)(22)【出願日】2011年7月13日
(86)【国際出願番号】JP2011065923
(87)【国際公開番号】WO2012008472
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-159482(P2010-159482)
(32)【優先日】2010年7月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 美彩都
(72)【発明者】
【氏名】今泉 尚子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亮
(72)【発明者】
【氏名】本田 那央
(72)【発明者】
【氏名】清柳 正幸
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−184170(JP,A)
【文献】 特開2010−032991(JP,A)
【文献】 特開2000−191751(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/084578(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
C08G 59/06
C08G 59/68
G03F 7/038
G03F 7/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光カチオン重合開始剤(A)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)とを含む感光性樹脂組成物であって、
光カチオン重合開始剤(A)は、下記式(1)
【化1】

で表される光カチオン重合開始剤(A−1)であり、
エポキシ樹脂(B)は、軟化点が40℃以上120℃以下で、かつエポキシ当量が150〜500/eq.のエポキシ樹脂である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂(B)が下記式(3)
【化2】

(式(3)において、Rはそれぞれ独立にグリシジル基又は水素原子を示し、複数存在するRのうちの少なくとも2つはグリシジル基である。kは繰り返し単位数の平均値を示し、0〜30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−1)、
下記式(4)
【化3】

(式(4)において、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子1〜4個を有するアルキル基を示す。pは繰り返し単位数の平均値を示し、1〜30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−2)、
下記式(5)
【化4】

(式(5)において、R4及びR5は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子1〜4個を有するアルキル基又はトリフルオロメチルを示す。n及びmはそれぞれ独立に繰り返し単位数の平均値を示し、独立に1〜30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−3)、
下記式(6)
【化5】

(式(6)において、nは繰り返し単位数の平均値を示し、1〜30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−4)、
下記式(7)
【化6】

で表されるエポキシ樹脂(B−5)、
1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、及び1分子中に少なくとも1個以上の水酸基及び1個のカルボキシル基を有する化合物の反応物と、多塩基酸無水物との反応物であるエポキシ樹脂(B−6)、
下記式(9)
【化7】

(式(9)において、nは繰り返し単位数の平均値を示し、1〜10の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−7)、
下記式(10)
【化8】

(式(10)において、nは繰り返し単位数の平均値を示し、0.1〜5の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−8)、
下記式(11)
【化9】

(式(11)において、l、m及びnはそれぞれ独立に繰り返し単位数の平均値を示し、l+m+n=2〜60の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−9)、
下記式(12)
【化10】

(式(12)において、nは繰り返し単位数の平均値を示し、0.1〜6の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−10)、並びに
下記式(13)及び/又は式(14)
【化11】

で示される化合物と、下記式(15)及び/又は式(16)
【化12】

で示される化合物との共縮合物であるエポキシ樹脂(B−11)からなる群から選択される1種類又は2種類以上である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
感光性樹脂組成物がウエハーレベルパッケージ用である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
感光性樹脂組成物が基板と被着体の接着層として用いられる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなるドライフィルムレジスト。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項7】
請求項5に記載のドライフィルムレジストを硬化して得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSパッケージ部品、半導体パッケージ部品、特に、加速度・角速度・圧力等の各種の機械量センサ、CMOSやCCDイメージセンサ、光学・RFセンサ、温湿度センサの小型で高気密な表面実装用パッケージ部品の作製、更に、MEMS(微小電子機械システム)部品、マイクロマシン部品、マイクロ流体部品、μ−TAS(微小全分析システム)部品、インクジェットプリンター部品、マイクロ反応器部品、導電性層、LIGA部品、微小射出成型及び熱エンボス向けの型又はこれらのスタンプ、微細印刷用途向けスクリーン又はステンシル、BioMEMS及びバイオフォトニックデバイス、並びにプリント配線板の製作において有用な、感度および解像度に優れた感光性樹脂組成物、並びにPCT試験後の基材との密着性及び急激な温度変化時にパッケージ内部で発生する結露が低減された該感光性樹脂組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィー加工可能なレジストは、最近半導体やMEMS・マイクロマシンアプリケーションに広範に用いられている。このようなアプリケーションでは、フォトリソグラフィー加工は基板上でパターニング露光し、ついで、現像液で現像することで露光領域もしくは非露光領域を選択的に除去することで達成される。フォトリソグラフィー加工可能なレジスト(フォトレジスト)にはポジタイプと、ネガタイプがあり、露光部が現像液に溶解するのがポジタイプであり、逆に不溶になるものがネガタイプである。先端技術のエレクトロパッケージアプリケーションやMEMSアプリケーションでは均一なスピンコーティング膜の形成能だけではなく、高アスペクト比、厚膜におけるストレートな側壁形状、基板への高密着性等が要求される。ここで、アスペクト比とは、レジスト膜厚/パターン線幅により算出され、フォトリソグラフィーの性能を示す重要な特性である。
【0003】
このようなフォトレジストとしては、多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(商品名 EPON SU−8レジン、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製)及びダウケミカル製 CYRACURE UVI−6974等の光カチオン重合開始剤(この光カチオン重合開始剤は芳香族スルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートのプロピレンカーボネート溶液からなる)からなるネガタイプの化学増幅型フォトレジスト組成物が知られている。該フォトレジスト組成物は350〜450nmの波長域に非常に低い光吸収を持つことから、厚膜フォトリソグラフィーが加工可能なフォトレジスト組成物として知られている。このフォトレジスト組成物を種々の基板上にスピンコートもしくはカーテンコート等の手法で塗布し、ついでベーキングにより溶剤を揮発させることで100μmもしくはそれ以上の厚みの固体フォトレジスト層を形成し、さらにコンタクト露光、プロキシミティ露光又はプロジェクション露光等の各種露光方法により、フォトマスクを通して近紫外光を照射することでフォトリソグラフィー加工が施される。続いて、現像液中に浸漬し、非露光領域を溶解させることで、基板上に高解像なフォトマスクのネガイメージを形成することができる。
【0004】
一方、MEMS部品や、MEMS及び半導体パッケージ等の分野では、パッケージ材料の物性がデバイスの信頼性に影響することが知られている。MEMS素子及び半導体素子は、周囲の温度や湿度の変化あるいは微細なごみや埃の影響でその特性が劣化したり、また機械的振動や衝撃を受けることにより破損しやすい。これら外的要因から保護するために、MEMS素子及び半導体素子は、各種材料で封止された形態や、各種材料の外壁で囲われた中空構造(キャビティ)に内包された形態、即ち、パッケージの形態として使用されている。封止剤や外壁の材料に金属やセラミックスを用いる気密封止方式の場合、得られるパッケージは信頼性に優れるが、製造コストが高いことや寸法精度が悪いことなどの欠点を有する。これに対して、封止剤や外壁の材料に樹脂を用いる樹脂封止の場合、従来の樹脂では、製造コストは比較的低く、かつ寸法精度も高いが、耐湿性や耐熱性等に問題があった。例えば、樹脂材料が外部環境から吸収した水分によって封止剤が基板や素子から剥離したり、高温環境下に晒された際にパッケージから発生するアウトガスに起因する不良が問題となっている。また、近年では、樹脂材料を用いて設けられたキャビティを有するパッケージにおいて、ハンダリフロー等の高温加熱工程から急令した際に、樹脂中に内包されている、或いは樹脂の硬化反応等により生成する水分がキャビティ内に結露し、MEMS及び半導体素子の特性を低下させるといった問題が発生している。
【0005】
特許文献1には、光カチオン重合開始剤が開示されており、実施例には該光カチオン重合開始剤を用いて、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート及び3−エチル−3−ヒドロキシメチル−オキセタンを含有する感光性組成物を硬化させることが記載されているが、特定構造の光カチオン重合開始剤と1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有する感光性樹脂組成物が、密着性、パターニング性、湿熱耐性等に優れることはなんら記載されていない。特許文献2には、キャビティを有するパッケージを製造するにあたり、特定構造の光カチオン重合開始剤と1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有する感光性樹脂組成物を用いることにより、高感度でかつプレッシャークッカー試験(PCT)後の基板への密着性が低下しないことが記載されているが、キャビティ内の結露低減効果については何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−533377号公報
【特許文献2】特開2010−32991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂を用いた従来の感光性樹脂組成物では、含有する光カチオン重合開始剤の感度が低いため、大量の開始剤を含有することが必要であったり、短時間でマスクパターンを樹脂パターンに忠実に再現できないという問題点があった。また、六フッ化アンチモン酸イオン(SbF6)を含有する光カチオン重合開始剤は比較的高感度ではあるが、毒性の問題から用途が限定されるといった問題もあった。一方で、MEMS部品やMEMS及び半導体パッケージ等の分野では樹脂組成物の耐湿性や耐熱性等の理由により、中空パッケージにした際、ハンダリフロー等の高温加熱工程から急令することにより、樹脂中に内包されている、或いは樹脂の硬化反応等により生成する水分がパッケージ内部で結露するといった問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、感度および解像度に優れた感光性樹脂組成物、並びにPCT試験後の基材との密着性及び急激な温度変化時のパッケージ内部での結露の発生が低減された該感光性樹脂組成物の硬化物を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意、検討を重ねた結果、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と特定構造の光カチオン重合開始剤とを組み合わせた感光性樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)光カチオン重合開始剤(A)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)とを含むMEMS用感光性樹脂組成物であって、光カチオン重合開始剤(A)が下記式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
で表される光カチオン重合開始剤(A−1)である、MEMS用感光性樹脂組成物、
(2)エポキシ樹脂(B)の軟化点が40℃以上120℃以下で、かつエポキシ当量が150〜500/eq.である前項(1)に記載の感光性樹脂組成物、
(3)エポキシ樹脂(B)が下記式(3)
【0013】
【化2】
【0014】
(式(3)において、Rはそれぞれ独立にグリシジル基又は水素原子を示し、複数存在するRのうちの少なくとも2つはグリシジル基である。kは繰り返し単位数の平均値を示し、0〜30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−1)、
下記式(4)
【0015】
【化3】
【0016】
(式(4)において、各R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子1〜4個を有するアルキル基を示す。pは繰り返し単位数の平均値を示し、1〜30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−2)、
下記式(5)
【0017】
【化4】
【0018】
(式(5)において、R4及びR5は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子1〜4個を有するアルキル基又はトリフルオロメチルを示す。n及びmはそれぞれ独立に繰り返し単位数の平均値を示し、独立に1〜30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−3)、
下記式(6)
【0019】
【化5】
【0020】
(式(6)において、nは繰り返し単位数の平均値を示し、1〜30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−4)、
下記式(7)
【0021】
【化6】
【0022】
で表されるエポキシ樹脂(B−5)、
1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、1分子中に少なくとも1個以上の水酸基及び1個のカルボキシル基を有する化合物との反応物に、多塩基酸無水物を反応させることにより得られるエポキシ樹脂(B−6)、
下記式(9)
【0023】
【化7】
【0024】
(式(9)において、nは繰り返し単位数の平均値を示し、1〜10の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−7)、
下記式(10)
【0025】
【化8】
【0026】
(式(10)において、nは繰り返し単位数の平均値を示し、0.1〜5の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−8)、
下記式(11)
【0027】
【化9】
【0028】
(式(11)において、l、m及びnはそれぞれ独立に繰り返し単位数の平均値を示し、l+m+n=2〜60の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−9)、
下記式(12)
【0029】
【化10】
【0030】
(式(12)において、nは繰り返し単位数の平均値を示し、0.1〜6の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B−10)並びに
下記式(13)及び/又は式(14)
【0031】
【化11】
【0032】
で示される化合物と、下記式(15)及び/又は式(16)
【0033】
【化12】
【0034】
で示される化合物との共縮合物であるエポキシ樹脂(B−11)からなる群から選択される1種類又は2種類以上である前項(1)又は(2)に記載の感光性樹脂組成物、
(4)感光性樹脂組成物がウエハーレベルパッケージ用である前項(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
(5)感光性樹脂組成物が基板と被着体の接着層として用いられる前項(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
(6)前項(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基材で挟み込んで得られるドライフィルムレジスト、
(7)前項(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物、
(8)前項(6)に記載のドライフィルムレジストを硬化して得られる硬化物、
に関する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物は、良好な画像解像度、熱安定性、耐薬品及び溶媒溶解性を有し、高感度でかつプレッシャークッカー試験(PCT)後の基板への密着性が低下しない特徴を有する。さらに、急激な温度変化時でもパッケージ内部での結露が起こらないため、ウエハーレベルパッケージ用感光性樹脂組成物として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施例でPCT耐性評価に用いた試験片の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、前記式(1)で表される光カチオン重合開始剤(A−1)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)とを含有してなることを特徴とし、この樹脂組成物を用いると、高感度でプレッシャークッカー試験後の基板への密着性が低下しないパターンが形成できる。さらに上記組成物は、毒性の高いアンチモン化合物を含まないため人体及び環境に対する負荷を小さくすることができる。
前記式(1)で表される光カチオン重合開始剤(A−1)は、GSID4480−1(商品名 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、後に「Irgacure PAG290(商品名、BASF社)」に名称変更)として、入手することができる。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる光カチオン重合開始剤(A)は、紫外線、遠紫外線、KrFやArFなどのエキシマレーザー、X線および電子線などの放射線の照射を受けてカチオンを発生し、そのカチオンが重合開始剤となりうる化合物であり、通常感エネルギー線酸発生剤ともいわれている。
【0039】
次に前記エポキシ樹脂(B)について説明する。
本発明における前記エポキシ樹脂(B)とは、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではない。1分子中に有するエポキシ基が2個未満の場合、硬化物の耐薬品性や耐熱性が著しく低下し、永久膜としての使用に耐えない可能性がある。エポキシ樹脂(B)の具体例としては、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応して得られるノボラック類と、エピクロルヒドリン及びメチルエピクロルヒドリンのようなハロヒドリンとを反応させて得られるノボラック型エポキシ樹脂や、オレフィンを有する化合物の酸化反応によって得られるエポキシ化合物等が挙げられる。
【0040】
これらエポキシ樹脂(B)のエポキシ当量は150〜500g/eq.が好ましい。エポキシ当量がこの範囲よりも小さい場合、感光性樹脂組成物の硬化収縮率が大きくなり、硬化物の反りやクラックが発生する可能性がある。一方、エポキシ当量がこの範囲よりも大きい場合には、感光性樹脂組成物の架橋密度が小さくなり、硬化膜の強度や耐薬品性、耐熱性、耐クラック性等が低下する可能性がある。尚、本願明細書ではエポキシ当量とは、JIS K7236に準拠した方法で測定した値である。
また、エポキシ樹脂(B)の軟化点が低過ぎる場合には、パターニングする際にマスクスティッキングが発生しやすくなり、更に感光性樹脂組成物をドライフィルムレジストとして使用する際に、常温で軟化してしまう可能性がある。一方、エポキシ樹脂(B)の軟化点が高過ぎる場合には、ドライフィルムレジストを基板にラミネートする際に軟化しにくく、基板への貼合性が悪くなるので好ましくない。これらのことから、本発明の感光性樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂(B)の軟化点は、好ましくは40℃以上120℃以下であり、より好ましくは50℃以上100℃以下である。尚、本願明細書でいう軟化点とはJIS K7234に準拠した方法で測定した値である。
したがって、本発明の感光性樹脂組成物用いるエポキシ樹脂(B)としては、軟化点が好ましくは40℃以上120℃以下、より好ましくは50℃以上100℃以下であり、かつエポキシ当量が150〜500/eq.であるエポキシ樹脂が特に好ましい。前記の軟化点及びエポキシ当量を有するエポキシ樹脂(B)の具体例としては、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1020、EOCN−4400H、EPPN−201、EPPN−501、EPPN−502、XD−1000、BREN−S、NER−7604、NER−7403、NER−1302、NER−7516、NC−3000H(いずれも商品名、日本化薬株式会社製)、エピコート157S70(商品名、三菱化学株式会社製)、EHPE3150(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
これらのエポキシ樹脂(B)の中でも、硬化物の耐薬品性、プラズマ耐性及び透明性が高く、さらに硬化物が低吸湿である等の理由で、前記エポキシ樹脂(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−4)、(B−5)、(B−6)、(B−7)、(B−8)、(B−9)、(B−10)及び(B−11)が特に好ましい。
尚、本発明において式(3)〜(12)等で表されるエポキシ樹脂とは、各式で表されるエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂を意味するものであり、該エポキシ樹脂を製造する際に生成する副成分や、該エポキシ樹脂の高分子量体等が含有される場合も該エポキシ樹脂に含まれる。
【0042】
前記式(3)で表されるエポキシ樹脂(B−1)の具体例としては、エピコート157(商品名、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製、エポキシ当量180〜250g/eq.、軟化点80〜90℃)、EPON SU−8(商品名、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ社製、エポキシ当量195〜230g/eq.、軟化点80〜90℃)等が挙げられる。前記式(4)で表されるエポキシ樹脂(B−2)の具体例としては、NC−3000(商品名、ビフェニル−フェノールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、エポキシ当量270〜300g/eq.、軟化点55〜75℃)が挙げられる。前記式(5)で表されるエポキシ樹脂(B−3)の具体例としては、NER−7604及びNER−7403(いずれも商品名、アルコール性水酸基の一部がエポキシ化されたビスフェノールF型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、エポキシ当量200〜500g/eq.、軟化点55〜75℃)、NER−1302及びNER−7516(いずれも商品名、アルコール性水酸基の一部がエポキシ化されたビスフェノールA型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、エポキシ当量200〜500g/eq.、軟化点55〜75℃)等が挙げられる。前記式(6)で表されるエポキシ樹脂(B−4)の具体例としては、EOCN−1020(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量190〜210g/eq.、軟化点55〜85℃)が挙げられる。前記式(7)で表されるエポキシ樹脂(B−5)の具体例としては、NC−6300(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量230〜235g/eq.、軟化点70〜72℃)が挙げられる。エポキシ樹脂(B−6)としては、日本国特許第3698499号公報に製法が記載されたポリカルボン酸エポキシ化合物が挙げられ、そのエポキシ当量及び軟化点は、エポキシ樹脂(B−6)の原料として用いるエポキシ樹脂や導入する置換基の導入率によって種々調整が可能であり、エポキシ当量は通常300〜900g/eq.の範囲で調整される。前記式(9)で表されるエポキシ樹脂(B−7)の具体例としては、EPPN−201−L(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量180〜200g/eq.、軟化点65〜78℃)が挙げられる。前記式(10)で表されるエポキシ樹脂(B−8)の具体例としては、EPPN−501H(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量162〜172g/eq.、軟化点51〜57℃)、EPPN−501HY(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量163〜175g/eq.、軟化点57〜63℃)、EPPN−502H(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量158〜178g/eq.、軟化点60〜72℃)が挙げられる。前記式(11)で表されるエポキシ樹脂(B−9)の具体例としては、EHPE3150(商品名、ダイセル化学工業株式会社製、エポキシ当量170〜190g/eq.、軟化点70〜85℃)が挙げられる。前記式(12)で表されるエポキシ樹脂(B−10)の具体例としては、XD−1000(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量245〜260g/eq.、軟化点68〜78℃)が挙げられる。前記式(13)及び/又は式(14)で示される化合物と、前記式(15)及び/又は式(16)で示される化合物との共縮合物であるエポキシ樹脂(B−11)は、特開2007−291263号公報に記載の方法により得ることができ、エポキシ当量は、通常400〜900g/eq.の範囲で調整される。
【0043】
次に本発明の感光性樹脂組成物における各成分の配合割合について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物における、光カチオン重合開始剤(A)(以下、単に「(A)成分」という場合もある)と1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)(以下、単に「(B)成分」という場合もある)の合計量を100質量%とした場合、通常(A)成分0.1〜15質量%、(B)成分85〜99.9質量%の割合で配合される。本発明の感光性樹脂組成物に用いられる光カチオン重合開始剤(A)は、波長300〜380nmにおけるモル吸光係数が高いので、感光性樹脂組成物を使用する際の膜厚に応じて適切な配合比に調整される必要がある。
【0044】
本発明の感光性樹脂組成物には、さらにパターンの性能を改良するため混和性のある反応性エポキシモノマー(C)(以下、単に「(C)成分」という場合もある)を添加してもよい。反応性エポキシモノマー(C)とは、グリシジルエーテル化合物に代表される、分子量の比較的小さい、室温で液状或いは半固形状のエポキシ基を有する化合物を意味し、その具体例としては、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(株式会社ADEKA製、ED506)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(株式会社ADEKA製、ED505)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(低塩素タイプ、ナガセケムテックス株式会社製、EX321L)、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等が挙げられるがこれらに限定されない。さらにこれらエポキシモノマーは塩素含有量が一般的に高いため、低塩素製造法又は精製工程を経た低塩素タイプのものを使用することが好ましい。これらは、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。反応性エポキシモノマー(C)はレジストの反応性や硬化膜の物性を改善する目的で使用されるが、反応性エポキシモノマー(C)は液状のものが多く、該成分が液状である場合に感光性樹脂組成物の総量に対して20質量%よりも多く配合すると、溶剤除去後の皮膜にベタツキが生じ、その結果、マスクスティッキングが起きやすくなる。この点から、(C)成分を配合する場合には、その配合割合は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計をレジストの固形分とした場合、該固形分中で10質量%以下が好ましく、特に7質量%以下が好適である。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物の粘度を下げ、塗膜性を向上させるために溶剤(D)を用いることができる。溶剤としては、インキ、塗料等に通常用いられる有機溶剤であって、感光性樹脂組成物の各構成成分を溶解することができるものであれば特に制限なく用いることができる。溶剤(D)の具体例としては、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン及びシクロペンタノン等のケトン類、トルエン、キシレン及びテトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びジプロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びγ−ブチロラクトン等のエステル類、メタノール、エタノール、セレソルブ及びメチルセレソルブ等のアルコール類、オクタン及びデカン等の脂肪族炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ及びソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0046】
これら溶剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。溶剤(D)は、基材へ塗布する際の膜厚や塗布性を調整する目的で加えるものであり、主成分の溶解性や成分の揮発性、組成物の液粘度等を適正に保持する為、使用する場合は、感光性樹脂組成物中において95質量%以下が好ましく、特に好ましくは10〜90質量%である。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物には、さらに基板に対する組成物の密着性を向上させる目的で、混和性のある密着性付与剤を使用してもよい。密着性付与剤としてはシランカップリング剤又はチタンカップリング剤などのカップリング剤を用いることができ、好ましくはシランカップリング剤が挙げられる。
【0048】
上記シランカップリング剤としては3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これら密着性付与剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
密着性付与剤は主成分とは未反応性のものであるため、基材界面で作用する成分以外は硬化後に残存成分として存在することになり、多量に使用すると物性低下などの悪影響を及ぼす。基材によっては、少量でも効果を発揮する点から、悪影響を及ぼさない範囲内での使用が適当であり、その使用割合は、使用する場合であっても、感光性樹脂組成物に対して15質量%以下が好ましく、特に好ましくは5質量%以下である。
【0049】
本発明の感光性樹脂組成物には、さらに紫外線を吸収し、吸収した光エネルギーを光カチオン重合開始剤に供与するために増感剤を使用してもよい。増感剤としては、例えばチオキサントン類、9位と10位にアルコキシ基を有するアントラセン化合物(9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体)が好ましい。前記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のC1〜C4のアルコキシ基が挙げられる。9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基等のC1〜C4のアルキル基やスルホン酸アルキルエステル基、カルボン酸アルキルエステル基等が挙げられる。スルホン酸アルキルエステル基やカルボン酸アルキルエステルにおけるアルキルとしては、例えばメチル、エチル、プロピル等のC1〜C4のアルキルが挙げられる。これらの置換基の置換位置は2位が好ましい。
【0050】
チオキサントン類の具体例としては、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられ、2,4−ジエチルチオキサントン(商品名 カヤキュアーDETX−S、日本化薬株式会社製)、2−イソプロピルチオキサントンが好ましい。
【0051】
9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体としては、例えば9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジメトキシ−2−エチルアントラセン、9,10−ジエトキシ−2−エチルアントラセン、9,10−ジプロポキシ−2−エチルアントラセン、9,10−ジメトキシ−2−クロロアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸メチルエステル、9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホン酸メチルエステル、9,10−ジメトキシアントラセン−2−カルボン酸メチルエステル等を挙げることができる。
【0052】
これらは、単独で又は2種以上混合して用いることができるが、2,4−ジエチルチオキサントン及び、9,10−ジメトキシ−2−エチルアントラセンの使用が最も好ましい。増感剤成分は、少量で効果を発揮する為、その使用割合は、使用する場合であっても、光カチオン重合開始剤(A)に対し30質量%以下が好ましく、特に好ましくは20質量%以下である。
【0053】
本発明において、光カチオン重合開始剤(A)由来のイオンによる悪影響を低減する必要がある場合には、トリスメトキシアルミニウム、トリスエトキシアルミニウム、トリスイソプロポキシアルミニウム、イソプロポキシジエトキシアルミニウム及びトリスブトキシアルミニウム等のアルコキシアルミニウム、トリスフェノキシアルミニウム及びトリスパラメチルフェノキシアルミニウム等のフェノキシアルミニウム、トリスアセトキシアルミニウム、トリスステアラトアルミニウム、トリスブチラトアルミニウム、トリスプロピオナトアルミニウム、トリスアセチルアセトナトアルミニウム、トリストリフルオロアセチルアセナトアルミニウム、トリスエチルアセトアセタトアルミニウム、ジアセチルアセトナトジピバロイルメタナトアルミニウム及びジイソプロポキシ(エチルアセトアセタト)アルミニウム等の有機アルミニウム化合物などのイオンキャッチャーを添加してもよく、これら成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。使用する場合、その配合量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計をレジストの固形分とした場合、該固形分に対して10質量%以下である。
【0054】
更に本発明においては、必要に応じて、熱可塑性樹脂、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤等の各種添加剤を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリカーボネート等があげられ、着色剤としては、例えばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジン・グリーン、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等が挙げられ、増粘剤としては、例えば、オルベン、ベントン、モンモリロナイト等が挙げられ、消泡剤としては、例えばシリコーン系、フッ素系および高分子系等の消泡剤が挙げられ、これらの添加剤等を使用する場合、その使用量は本発明の感光性樹脂組成物中、例えば、それぞれ0.1〜30質量%程度が一応の目安であるが、使用目的に応じ適宜増減し得る。
【0055】
更に、本発明においては、例えば硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉等の無機充填剤を用いることができ、使用する場合、その配合比率は、本発明の感光性組成物中0〜60質量%である。
【0056】
本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくは下記表1の割合で各成分を配合し、必要に応じ前記密着性付与剤、増感剤、イオンキャッチャー、熱可塑性樹脂、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤および無機充填剤を添加してもよい。通常の方法で混合、攪拌するだけでよく、必要に応じディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用い分散、混合させてもよい。また、混合した後で、さらにメッシュ、メンブレンフィルターなどを用いてろ過してもよい。
【0057】
【表1】
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくは液状で使用される。本発明の感光性樹脂組成物を使用するには、例えばシリコン、アルミニウム、銅等の金属基板、リチウムタンタレート、ガラス、シリコンオキサイド、シリコンナイトライド等のセラミック基板、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート等の基板上に0.1〜1000μmの厚みでスピンコーター等を用いて塗布し、60〜130℃で5〜60分間程度の熱処理をし、溶剤を除去して、感光性樹脂組成物層を形成する。その後、所定のパターンを有するマスクを載置して、紫外線を照射し、50〜130℃で1〜50分間程度の加熱処理を行った後、未露光部分を、現像液を用い室温〜50℃で1〜180分間程度現像してパターンを形成する。これを130〜200℃で加熱処理をすることで、諸特性を満足する永久保護膜が得られる。現像液としては、例えばγ−ブチロラクトン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶剤、あるいは、前記有機溶剤と水の混合液等を用いることができる。現像にはパドル型、スプレー型、シャワー型等の現像装置を用いてもよく、必要に応じて超音波照射を行ってもよい。尚、本発明の感光性樹脂組成物を使用する場合、好ましい金属基板としては、アルミニウムが挙げられる。
【0059】
本発明の樹脂組成物は、ベースフィルム上にロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等を用いて該組成物を塗布した後、45〜100℃に設定した乾燥炉で乾燥し、所定量の溶剤を除去することにより、また、必要に応じてカバーフィルム等を積層することによりドライフィルムレジストを得ることができる。この際、ベースフィルム上のレジストの厚さは、2〜100μmに調整される。ベースフィルム及びカバーフィルム(これらフィルムを基材ともいう)としては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、TAC、ポリイミド等のフィルムが使用され得る。これらフィルムは必要に応じてシリコーン系離型処理剤や非シリコーン系離型処理剤等により離型処理されたフィルムを用いてもよい。このドライフィルムレジストを使用するには、例えばカバーフィルムをはがして、ハンドロール、ラミネーター等により、温度40〜100℃、圧力0.05〜2MPaで基板に転写し、前記液状の感光性樹脂組成物と同様に露光、露光後ベーク、現像、加熱処理をすればよい。
【0060】
前述のように感光性樹脂組成物をフィルムとして供給すれば、支持体上への塗布、および乾燥の工程を省略することが可能であり、より簡便に本発明の感光性樹脂組成物を用いたパターン形成が可能となる。
【0061】
MEMSパッケージ及び半導体パッケージに用いる場合は、本発明の感光性樹脂組成物で被覆、又は中空構造を作製することにより使用できる。MEMSパッケージ及び半導体パッケージの基板としては種々の形状のシリコンウエハ上に、スパッタリング又は蒸着によりアルミニウム、金、銅、クロム、チタン等の金属薄膜を10〜5000Åの膜厚で成膜し、エッチング法等によりその金属を微細加工した基板等が用いられる。場合によっては、さらに無機の保護膜としてシリコンオキサイドやシリコンナイトライドが10〜10000Åの膜厚で成膜されることもある。次いで基板上に、MEMSデバイス又は半導体デバイスを作製又は設置し、このデバイスを外気から遮断するために、被覆又は中空構造を作製する必要がある。本発明の感光性樹脂組成物で被覆する場合は、前記の方法で行なうことができる。また、中空構造を作製する場合は、基板上へ前記の方法で隔壁を形成させ、その上にさらに、前記の方法でドライフィルムをラミネート及び隔壁上の蓋となるようにパターニングを行なうことで、中空パッケージ構造を作製することができる。また、作製後、必要に応じて130〜200℃で10〜120分間、加熱処理をすることで諸特性を満足するMEMSパッケージ部品及び半導体パッケージ部品が得られる。
尚、「パッケージ」とは、基板、配線、素子等の安定性を保つため、外気の気体、液体の浸入を遮断するために用いられる封止方法又は封止されたものである。本発明で記載するパッケージとは、MEMSのような駆動部があるものや、SAWデバイス等の振動子をパッケージするための中空パッケージや、半導体基板、プリント配線版、配線等の劣化を防ぐために行う表面保護や、樹脂封止等をいう。「ウエハーレベルパッケージ」とはウエハーの状態で保護膜、端子、配線加工、パッケージまで行い、その後チップへ切り出すパッケージ工法のことを表す。
【0062】
本発明の感光性樹脂組成物は、良好な画像解像度、熱安定性、耐薬品及び溶媒溶解性を有し、高感度でかつプレッシャークッカー試験(PCT)後の基板への密着性が低下しないという特徴があるので、例えば、MEMS(微小電子機械システム)部品、マイクロマシン部品、マイクロ流体部品、μ−TAS(微小全分析システム)部品、インクジェットプリンター部品、マイクロ反応器部品、導電性層、LIGA部品、微小射出成型及び熱エンボス向けの型又はこれらのスタンプ、微細印刷用途向けスクリーン又はステンシル、MEMSパッケージ部品、半導体パッケージ部品、BioMEMS及びバイオフォトニックデバイス、並びに、プリント配線板の製作等に利用される。中でも特に、MEMSパッケージ部品及び半導体パッケージ部品において有用である。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0064】
実施例1〜3及び比較例1〜2
(感光性樹脂組成物の調製)
表2に記載の配合量(単位は質量部)にしたがって、光カチオン重合開始剤(A)、エポキシ樹脂(B)、およびその他の成分((C)、(D)、(E)及び(F)等)を攪拌機付きフラスコで60℃、1時間攪拌混合し、本発明及び比較用の感光性樹脂組成物を得た。
【0065】
(感光性樹脂組成物のパターニング)
実施例1〜3及び比較例1〜2の各感光性樹脂組成物をシリコンウエハ上にスピンコーターで塗布後、乾燥し、表2に示す膜厚(表2における「塗工後膜厚」は塗布、乾燥した後の膜厚を意味する。)を有する感光性樹脂組成物層を得た。この感光性樹脂組成物層をホットプレートにより65℃で5分間そして95℃で15分間プリベークした。その後、i線露光装置(マスクアライナー:ウシオ電機社製)を用いてパターン露光(ソフトコンタクト、i線)を行い、ホットプレートにより95℃で6分間の露光後ベーク(以下「PEB」と記載する)を行い、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMEA」と記載する)を用いて浸漬法により23℃で5分間現像処理を行って、基板(シリコンウエハ)上に硬化した樹脂パターンを得た。
【0066】
(感光性樹脂組成物の感度評価)
前記パターン露光において、マスク転写精度が最良となる露光量を最適露光量とし、それぞれの感光性樹脂組成物の感度の評価を行った。最適露光量の値が小さいほど感度が高いことを表す。結果を下記表2に示す。
【0067】
(感光性樹脂組成物の解像性評価)
解像性:前記で得られた最適露光量によるパターン露光において、1、5、10及び20μmのラインアンドスペースのフォトマスクを使用し、残渣がなく解像されたレジストパターン中、基板へ密着している最も細かいパターン幅を測定した。結果を下記表2に示した。
【0068】
(感光性樹脂組成物の密着力及びPCT耐性評価)
シリコンウエハ上に1000Åのアルミニウム薄膜をスッパッタリングにより成膜し、その基板を用いて実施例1〜3及び比較例1で得られた各感光性樹脂組成物について、前記で得られた最適露光量でパターニングを行なった。得られた各試験片に、温風対流式オーブンを用いて150℃、30分間のハードベークを施した。その後、各試験片をHASTチャンバー(エスペック社製)中に入れ、121℃、100%RH、2気圧とし、20時間恒温恒湿状態を保持した(PCT)後、試験片を取り出した。PCT後の試験片について、図1で模式的に示す形状のパターンの密着力を測定し、PCT耐性を評価した。尚、ここでいう密着力とは、シェアツールを用いてパターン側面部から力を加え、基板からパターンが剥離した時点でのシェア強度である。尚、比較例2の感光性樹脂組成物については、2000mJ/cm2までの露光量では基板に密着したパターンが得られず、最適露光量を確認できなかったため、PCT耐性の評価を実施しなかった。
評価基準
○:密着力が50gf以上
△:密着力が5gf以上50gf未満
×:密着力が5gf未満(測定限界以下)
【0069】
(感光性樹脂組成物の結露試験)
6インチシリコンウエハを用いて実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた各感光性樹脂組成物について、前記同様のパターニングを行なった。但し、このとき、幅1mmのラインでフレーム状に囲い、縦3mm、横3mmのスペースが作製できるよう格子状のフォトマスクを使用した。パターニング後、被着体として厚さ300μmの6インチテンパックスガラスウエハ(ショット日本株式会社製)基板をパターン上に加熱圧着(加熱圧着条件:150℃、10kN、3分間)により貼りあわせ、キャビティ部を有する結露試験評価用サンプルを得た。このサンプルを180℃で1時間対流式オーブンを用いて加熱硬化し、評価用サンプルを作製した。得られたサンプルに、260℃のホットプレート上で3分間加熱する工程と23℃の水冷クーリングプレート上で2分間冷却する工程とを1セットとするヒートサイクル試験を10セット繰り返した後、キャビティ内のガラス基板面に発生した結露の有無を顕微鏡で確認し、下記の基準で評価した。結果を表2に示した。尚、比較例2の感光性樹脂組成物については、2000mJ/cm2までの露光量では基板に密着したパターンが得られず、最適露光量を確認できなかったため、結露試験を実施しなかった。
評価基準
○:試験直後に結露が見られない
△:試験直後には結露が見られたが、3分後には結露が見られない
×:試験直後及び3分後に結露が見られた
【0070】
【表2】
【0071】
尚、表2における(A−1)〜(F)をそれぞれ下記する。
(A−1):前記式(1)で表される光カチオン重合開始剤(GSID4480−1(商品名 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、後に「Irgacure PAG290(商品名、BASF社)」に名称変更)
(PAG−1):下記式(20)で表される光カチオン重合開始剤(商品名 GSID26−1、BASF社製)
【0072】
【化13】
【0073】
(PAG−2):特表2009−533377号公報の実施例6に準じて調製した下記式(21)で表されるカチオン重合開始剤
【0074】
【化14】
【0075】
(B−1):前記式(3)で表されるエポキシ樹脂(商品名 EPON SU−8、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製、エポキシ当量210g/eq.、軟化点85℃、平均繰り返し数k=4、置換基Rはグリシジル基を表す。)
(B−2):前記式(4)で表されるエポキシ樹脂(商品名 NC−3000H、日本化薬社株式会製、エポキシ当量285g/eq.、軟化点65℃、平均繰り返し数p=2、置換基R〜Rはいずれも水素原子を表す。)
(B−3):前記式(5)で表されるエポキシ樹脂(商品名 NER−7604、日本化薬株式会社製、エポキシ当量347g/eq.、軟化点71℃、平均繰り返し数n=4、m≦1、置換基R、Rはいずれも水素原子を表す。)
(B−6):特許3698499号公報の合成例2に準じて合成したエポキシ樹脂(サンプル名を「EP3698499」とする、エポキシ当量350g/eq.、軟化点60℃)
(C):反応性エポキシモノマー(商品名 EX−321L、ナガセケムテックス株式会社製)
(D):溶剤シクロペンタノン
(E):フッ素系レベリング剤(商品名 メガファックF−470、DIC株式会社製)
(F):シランカップリング剤(商品名 S−510、チッソ株式会社製)
【0076】
表2に示すとおり、本発明の感光性樹脂組成物(実施例1〜実施例3)は比較例1に比べ、高感度で、かつ高PCT耐性(基板への密着性が低下しない)であることが判った。
【0077】
実施例4
(感光性樹脂組成物積層体)
上記実施例1にて得られた感光性樹脂組成物を膜厚15μmのポリプロピレン(PP)フィルム(ベースフィルム、東レ株式会社製)上に均一に塗布し、温風対流乾燥機により65℃で5分間及び80℃で20分間乾燥した後、露出面上に膜厚38μmのPPフィルム(カバーフィルム)をラミネートして、15μmの膜厚の感光性樹脂組成物積層体を調製した。
【0078】
(感光性樹脂組成物積層体のパターニング)
前記で得られた感光性樹脂組成物積層体のカバーフィルムを剥離して、ロール温度70℃、エアー圧力0.2MPa、速度0.5m/minでシリコンウエハ上にラミネートする工程を4回行い、60μmの感光性樹脂組成物層を得た。この感光性樹脂組成物層に、i線露光装置(マスクアライナー:ウシオ電機社製)を用いてパターン露光(ソフトコンタクト、i線)を行った。その後、ホットプレートにより95℃で4分間PEBを行い、PGMEAを用いて浸漬法により23℃で4分間現像処理を行い、基板上に硬化した樹脂パターンを得た。最適露光量500mJ/cm2で、細線密着10μmであり、良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明にかかる感光性樹脂組成物は、良好な画像解像度、熱安定性、耐薬品及び溶媒性特性を保有し、高感度でかつプレッシャークッカー試験(PCT)後の基板への密着性が低下しない樹脂パターンの形成に有用であり、特に、MEMS部品、MEMSパッケージ部品及び半導体パッケージ等の分野で寸法安定性が高く、耐久性の高い樹脂成形に適している。
【符号の説明】
【0080】
図1において、
1は、カバーフィルム及びベースフィルムを取り除いた感光性樹脂組成物の積層体の硬化物、
2は、感光性樹脂組成物の硬化物、
3は、アルミニウム薄膜(厚さ1000Å)、
4は、シリコンウエハ(厚さ500μm)、
をそれぞれ示す。
図1