特許第5872477号(P5872477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5872477-酢酸の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872477
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】酢酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/12 20060101AFI20160216BHJP
   C07C 51/44 20060101ALI20160216BHJP
   C07C 53/08 20060101ALI20160216BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
   C07C51/12
   C07C51/44
   C07C53/08
   !C07B61/00 300
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2012-537643(P2012-537643)
(86)(22)【出願日】2011年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2011072059
(87)【国際公開番号】WO2012046593
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年7月15日
(31)【優先権主張番号】特願2010-226664(P2010-226664)
(32)【優先日】2010年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(72)【発明者】
【氏名】清水 雅彦
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−224040(JP,A)
【文献】 特開平08−067650(JP,A)
【文献】 特開2010−106045(JP,A)
【文献】 特開2001−300203(JP,A)
【文献】 特開昭63−290835(JP,A)
【文献】 特開昭61−267533(JP,A)
【文献】 Faanes, A et al.,Buffer Tank Design for Acceptable Control Performance,Ind. Eng. Chem. Res.,米国,American Chemical Society,2003年,42, 2198-2208.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/12
C07C 51/44
C07C 53/08
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属触媒、ハロゲン化物塩及びヨウ化メチルで構成された触媒系の存在下、メタノールと一酸化炭素とをカルボニル化反応器で連続的に反応させる反応工程と、
前記反応器からの反応混合物をフラッシャーに連続的に供給し、生成した酢酸およびヨウ化メチルを含む低沸点成分(2A)と、金属触媒およびハロゲン化物塩を含む高沸点成分(2B)とに分離するフラッシュ蒸発工程と、
前記低沸点成分(2A)を連続的に蒸留塔に供給し、ヨウ化メチルおよび副生したアセトアルデヒドを含む低沸点成分(3A)と、酢酸を含む流分(3B)とに分離して、酢酸を回収する酢酸回収工程と、
前記低沸点成分(3A)を凝縮させつつデカンターに一時的に保持してデカンターから排出する凝縮工程と、
前記デカンターから排出した低沸点成分(3A)からアセトアルデヒドを分離するとともに、アセトアルデヒドが分離された分離液を反応系からアセトアルデヒドの分離に至るまでの工程にリサイクルする分離・リサイクル工程とを含む酢酸の製造方法であって、
前記凝縮工程において、以下の方法
デカンターに保持される低沸点成分(3A)の平均液面高さ及び平均界面高さを、それぞれ100とするとき、デカンターに保持される低沸点成分(3A)の液面高さ及び/又は界面高さを、プロセス全体を通して90〜110に調整するように低沸点成分(3A)をデカンターから排出する方法
により、保持する低沸点成分(3A)の量を、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の流量の変動に基づいて調整又は制御するとともに、
前記凝縮工程において、以下の方法(a)、(b)及び(c)から選択された少なくとも1種の方法
(a)デカンターから排出した低沸点成分(3A)の一部を、少なくとも反応系に循環させる方法
(b)デカンターから排出した低沸点成分(3A)を、バッファー機能を備えた貯蔵器を介して、分離・リサイクル工程に供給する方法
(c)デカンターとして低沸点成分の供給量の変動を緩和できる容量を有するデカンターを用い、このデカンターにおける低沸点成分(3A)の滞留時間を1分以上とし、低沸点成分(3A)を分離・リサイクル工程に供給する方法
により、前記分離・リサイクル工程に供給される低沸点成分(3A)の量を調整又は制御する酢酸の製造方法。
【請求項2】
デカンターに供給される低沸点成分(3A)の平均流量を液体の体積換算で100とするとき、プロセス全体を通して、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の流量が80〜120である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
凝縮工程において、下記方法(c)により、分離・リサイクル工程に供給される低沸点成分(3A)の量を調整又は制御する請求項1又は2記載の製造方法
(c)デカンターから排出する低沸点成分(3A)の平均流量を100とするとき、プロセス全体を通してデカンターから排出する低沸点成分(3A)の量を95〜105に調整する方法
【請求項4】
方法(a)において、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の平均流量の10%以上を循環させる請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項5】
方法(a)において、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の平均流量の20%以上を循環させる請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項6】
方法(a)において、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の平均流量の40〜90%を循環させる請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項7】
方法(a)において、低沸点成分(3A)を、デカンター内で上層と下層とに分離し、上層及び/又は下層を循環させる請求項1、2、4〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
方法(b)において、貯蔵器における低沸点成分(3A)の滞留時間を0.5分以上とする請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項9】
方法(b)において、デカンターにおける低沸点成分(3A)の滞留時間と貯蔵器における低沸点成分(3A)の滞留時間の総時間を1.5分以上とする請求項1、2又は8記載の製造方法。
【請求項10】
分離・リサイクル工程において、低沸点成分(3A)をアセトアルデヒド分離塔に供給し、蒸留により、アセトアルデヒドを含む低沸点成分(4A)と、ヨウ化メチルを含む高沸点成分(4B)とに分離し、分離液としての高沸点成分(4B)をリサイクルする請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
分離・リサイクル工程において、バッファー機能を備えた貯蔵器を介して分離液をリサイクルする請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
低沸点成分(4A)がヨウ化メチルを含み、分離・リサイクル工程において、さらに、低沸点成分(4A)から回収したヨウ化メチルをリサイクルする請求項10又は11記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属触媒(ロジウム触媒など)およびヨウ化メチルの存在下でのメタノールのカルボニル化によって形成される酢酸を安定的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸の工業的な製造方法は種々知られているが、中でも、水の存在下、ロジウム触媒およびヨウ化メチルを用いて、メタノールと一酸化炭素を連続的に反応させて酢酸を製造する方法が工業的には優れた方法である。また、近年、反応条件、触媒の改良が検討され、ヨウ化物塩などの触媒安定化剤を添加し、従来の条件よりも低水分条件下で反応させることにより、生産性が高い工業的な酢酸の製造方法が開発されている。この方法では、反応液中の水分を低減することで、二酸化炭素やプロピオン酸といった副生物を減少できる。しかし、反応液中には、これらの成分以外の微量の副生物(不純物)、例えば、カルボニル化合物(例えば、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、これらのアルドール縮合物など)、有機ヨウ化物(例えば、ヨウ化エチル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化メチル以外のヨウ化アルキル)なども存在しており、このような不純物は、酢酸の生産量の増加と共に生成量が増加し、酢酸の品質を悪化させる。例えば、過マンガン酸還元性物質試験(過マンガン酸タイム)と呼ばれる、酢酸中のごく微量の還元性不純物の存在量を調べる品質試験においては、今日の高度な機器分析をもってしても定量が困難であるようなごくわずかな濃度の不純物を検出でき、不純物が品質の悪化につながっている。また、これらの不純物の中には、酢酸の用途に関連して悪影響をおよぼすものも含まれており、例えば、エチレンと酢酸から酢酸ビニルを製造する場合、使用するパラジウム系触媒を劣化させることが知られている。
【0003】
しかし、カルボニル化合物やヨウ化アルキルは、ヨウ化物触媒促進剤に近い沸点を有していることなどにより、蒸留のような通常の手段によって十分に除去することは困難である。
【0004】
そのため、これらの微少な不純物を含む粗酢酸をオゾンや酸化剤で処理するなどの技術が開発されているが、オゾンや酸化剤での処理では、処理される不純物の濃度に限度があり、カルボニル化合物および有機ヨウ化物を効率よく除去できない。
【0005】
一方、連続反応プロセスにおいて、プロセス循環液中のカルボニル化合物を除去することも試みられている。例えば、特開平4−266843号公報(特許文献1)には、カルボニル化するカルボニル化反応器へのヨウ化メチル再循環流を、カルボニル不純物と反応して水溶性窒素含有誘導体を形成するアミノ化合物と接触させて、有機ヨウ化メチル相を水性誘導体相から分離し、ヨウ化メチル相を蒸留してカルボニル不純物を除去する方法が開示されている。しかし、前記カルボニル化反応器に再循環する有機流中に含まれるカルボニル不純物濃度は依然として高く、カルボニル不純物を十分に除去することが困難である。また、この文献の方法では、含窒素化合物の除去が必要となる。
【0006】
また、特開平8−67650号公報(特許文献2)には、ロジウム触媒、ヨウ化物塩およびヨウ化メチルの存在下、連続的にメタノールと一酸化炭素とを反応させて酢酸を製造する方法において、反応器に循環するプロセス液からアセトアルデヒドを除去することにより、反応液中のアセトアルデヒド濃度を400ppm以下に保ち、反応を行う高純度酢酸の製造方法が開示されている。この文献では、前記不純物のほとんどが、反応系で生成し、その生成が反応系で副生するアセトアルデヒドに起因することに着目しており、反応系中のアセトアルデヒド濃度を制御することにより、カルボニル化合物あるいは有機ヨウ化物を減少させて高純度の酢酸を得ることができる。
【0007】
そして、この文献では、アセトアルデヒドを除去しつつ酢酸を製造する方法に関し、反応液を酢酸、酢酸メチルおよびヨウ化メチルを含む揮発性相とロジウム触媒を含む低揮発性相とに分離し、揮発性相を蒸留して、酢酸を含む生成物と酢酸メチルおよびヨウ化メチルを含むオーバーヘッドを得、得られたオーバーヘッドを反応器に再循環するに際して、オーバーヘッドあるいはそのカルボニル不純物(特にアセトアルデヒド)濃縮液を水と接触させ、酢酸メチルとヨウ化メチルを含む有機相とカルボニル不純物を含む水相とに分離し、該有機相を反応器に再循環させる方法を開示している。また、カルボニル不純物濃縮液からヨウ化メチルを得る具体的な方法として、ヨウ化メチルを含むアセトアルデヒド液をプロセス液から蒸留分離し、得られたアセトアルデヒド液を水抽出してアセトアルデヒドを選択的に抽出する方法が好ましいことが記載されている。
【0008】
なお、この文献には、オーバーヘッドを反応器に再循環させる際に、オーバーヘッドの流量を制御することについては何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−266843号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平8−67650号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、アセトアルデヒドを効率よく除去しつつ、安定して酢酸を製造する方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、触媒としてのヨウ化メチルを高い効率でリサイクルしつつ酢酸を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、金属触媒、ハロゲン化物塩およびヨウ化メチルを含む触媒系を用いた一連の酢酸の連続製造プロセスにおいて、酢酸を含む流分を分離した後に得られる成分であって、少なくともヨウ化メチルおよびアセトアルデヒドを含む低沸点成分(オーバーヘッド)からアセトアルデヒドを除去し、ヨウ化メチルなどの有用成分を効率よく回収して反応系などにリサイクルするプロセスについて検討した結果、現実的には、オーバーヘッドから直接的にアセトアルデヒドを蒸留などにより除去するとプロセスの安定運転が困難であることを見出した。
【0013】
すなわち、オーバーヘッドからアセトアルデヒドを除去するためには、オーバーヘッドを凝縮させて一時的にデカンターに保持し、さらに、デカンターから凝縮したオーバーヘッド(又はオーバーヘッドの凝縮成分)をアセトアルデヒド分離プロセス(例えば、蒸留プロセスなど)に供給する必要があるが、一連の連続製造工程を経て、プロセスでの圧力変動などに伴って、通常、デカンターに供給されるオーバーヘッドの流量は変動する。しかし、デカンターには保持可能な許容容量が存在するため、オーバーヘッドをそのままデカンターに供給すると、その流量変動に伴ってデカンター内の液面も変動してしまい、変動の大きさによっては安定して運転ができなくなる。一方、デカンター内の液面変動を抑制するため、オーバーヘッドの流量変動に対応させて、オーバーヘッドをアセトアルデヒド分離プロセスに供給しようとすると、デカンターから供給されるオーバーヘッドの流量変動をアセトアルデヒド分離プロセスにおいて緩和(又は吸収)しきれず、アセトアルデヒドの分離を十分に行うことができなくなったり(そのため反応系におけるアセトアルデヒド濃度が高くなったり)、蒸留塔などのアセトアルデヒド分離装置の安定運転もできなくなる場合がある。また、オーバーヘッドの流量変動をアセトアルデヒド分離プロセスにおいて緩和できずにデカンター内の液面(さらにはその前段の工程)が変動してしまう。
【0014】
そこで、本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、デカンターに供給される凝縮したオーバーヘッドの一部をアセトアルデヒド分離プロセスに供給することなく反応系に循環させたり、オーバーヘッドをバッファータンクを介してデカンターからアセトアルデヒド分離プロセスに供給することなどにより、オーバーヘッドの供給量の変動に応じてデカンターにおいて貯蔵するオーバーヘッドの量を調整又は制御したり、さらには、デカンターからアセトアルデヒド分離プロセスに供給されるオーバーヘッドの量を調整又は制御することにより、アセトアルデヒドを除去しつつ、ヨウ化メチルを回収する一連の酢酸製造プロセスを安定的にかつ効率よく行うことができることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明は、金属触媒(ロジウム触媒など)、ハロゲン化物塩(ヨウ化物塩など)及びヨウ化メチルで構成された触媒系の存在下、メタノールと一酸化炭素とをカルボニル化反応器で連続的に反応させる反応工程と、前記反応器からの反応混合物をフラッシャー(又は蒸発槽)に連続的に供給し、生成した酢酸およびヨウ化メチルを含む低沸点成分(2A)(又は揮発性成分(2A))と、金属触媒およびハロゲン化物塩を含む高沸点成分(2B)(又は低揮発性成分(2B))とに分離するフラッシュ蒸発工程と、前記低沸点成分(2A)を連続的に蒸留塔に供給し、ヨウ化メチルおよび副生したアセトアルデヒドを含む低沸点成分(又はオーバーヘッド又は第1のオーバーヘッド)(3A)と、酢酸を含む流分(3B)とに分離して、酢酸を回収する酢酸回収工程と、前記低沸点成分(3A)(又は前記低沸点成分(3A)の一部又は全部)を凝縮(冷却して凝縮)させつつデカンター(デカンター装置、貯蔵器)に一時的にホールド(貯蔵)して(又は凝縮成分(凝縮液)をホールドして)デカンターから排出する(又は分離・リサイクル工程に供給する又はアセトアルデヒドの分離に供するために排出する)凝縮工程と、凝縮した(又はデカンターから排出した)低沸点成分(3A)(又は低沸点成分(3A)の凝縮成分(3A’))からアセトアルデヒドを分離するとともに、アセトアルデヒドが分離された分離液を反応系(又は反応器又は反応工程)からアセトアルデヒドの分離に至るまでの工程にリサイクルする分離・リサイクル工程とを含む酢酸の製造方法(閉鎖製造プロセス)であって、前記凝縮工程において、ホールドする低沸点成分(3A)(又は低沸点成分(3A)の凝縮成分(3A’))の量を、デカンターに供給される低沸点成分(3A)(又は低沸点成分(3A)の凝縮成分(3A’))の流量の変動に基づいて調整又は制御する酢酸の製造方法である。
【0016】
このような酢酸製造プロセスでは、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の量は、プロセス全体を通して大きく変動するが、例えば、このような変動は、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の平均流量を、液体(凝縮液)の体積換算で100とするとき、プロセス全体を通して、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の流量が80〜120程度となる流量変動であってもよい。
【0017】
ホールドする低沸点成分(3A)の量を調整(又は制御)する具体的な方法としては、(1)デカンター内にホールドする低沸点成分(3A)の量又は液面高さの変動を抑える(又は実質的に固定化する)ように低沸点成分(3A)を排出する方法、及び/又は(2)デカンターとしてバッファー機能を備えたデカンターを使用し、低沸点成分(又は凝縮液)(3A)の供給量の変動をデカンター内で緩和する方法などが挙げられる。
【0018】
方法(1)では、例えば、凝縮工程において、デカンターにホールドされる低沸点成分(3A)の平均液面高さ(又は平均量)及び平均界面高さを、それぞれ100とするとき、デカンターにホールドされる低沸点成分(3A)の液面高さ(又は平均量)及び/又は界面高さを、プロセス全体を通して90〜110(例えば、95〜105)程度に調整(詳細には、調整するように低沸点成分(3A)をデカンターから排出)してもよい。なお、液面高さとは、デカンター内において、凝縮した低沸点成分(3A)(液の上面)が気体と接触する液の高さを示し、界面高さとは、凝縮した低沸点成分(3A)が二層(上層および下層)に分離した場合の分離面の高さ(又は下層の液面高さ)を示す。そのため、界面高さの概念は、低沸点成分(3A)が層分離(相分離)する場合において用いる。
【0019】
また、方法(2)では、凝縮工程において、デカンターとしてバッファー機能を備えたデカンターを用いてもよく、特に、このようなデカンターを用い、デカンターにおける低沸点成分(3A)(又は低沸点成分(3A)の凝縮成分(3A’))の滞留時間を1分以上(例えば、3分以上)としてもよい。このように十分な滞留時間を保持できるデカンターを用いることで、デカンター内で低沸点成分(3A)(又は低沸点成分(3A)の凝縮成分(3A’))の変動を効率よく緩和することができる。
【0020】
本発明では、プロセス全体を安定的に行うため、通常、凝縮工程において、ホールドする低沸点成分(3A)の量を、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の流量の変動に基づいて調整又は制御するとともに、さらに、分離・リサイクル工程に供給される低沸点成分(3A)(又は低沸点成分(3A)の凝縮成分(3A’))の量を調整又は制御してもよい。具体的には、凝縮工程において、分離・リサイクル工程に供給される低沸点成分(3A)の量を一定又はほぼ一定となるように調整(又は実質的に固定化)[例えば、低沸点成分(3A)の平均流量を100とするとき、分離・リサイクル工程に供給される低沸点成分(3A)の流量を、プロセス全体を通して90〜110(例えば、95〜105)に調整]してもよい。
【0021】
このような分離・リサイクル工程に供給する低沸点成分(3A)の供給量の調整又は制御方法としては、代表的には、(a)デカンターから排出した低沸点成分(3A)の一部を、分離・リサイクル工程とは異なる工程[例えば、反応系(反応器又は反応工程)及び酢酸回収工程(又は蒸留塔)から選択された少なくとも1種、特に、少なくとも反応系(又は反応器)又は反応工程]に循環させる方法、(b)デカンターから排出した低沸点成分(3A)をバッファー機能を備えた貯蔵器を介して、分離・リサイクル工程に供給する方法、及び(c)デカンターから排出する低沸点成分(3A)の量を一定とする(又はほぼ一定、例えば、デカンターから排出する低沸点成分(3A)の平均流量を100とするとき、プロセス全体を通してデカンターから排出する低沸点成分(3A)の量を90〜110(例えば、95〜105)に調整する)方法から選択された少なくとも1種の方法などが挙げられる。
【0022】
方法(a)では、凝縮工程において、デカンターから排出した低沸点成分(3A)の一部を、分離・リサイクル工程とは異なる工程に循環させることにより、分離・リサイクル工程に供給される低沸点成分(3A)の量(又は流量)を調整してもよい。この方法(a)では、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の平均流量の10%以上、好ましくは20%以上(例えば、20〜90%程度)を循環させてもよく、特に40%以上(例えば、40〜90%程度)を循環させてもよい。また、方法(a)では、低沸点成分(3A)を、デカンター内で上層と下層とに分離し、上層及び/又は下層を循環させてもよい。さらに、低沸点成分(3A)を二層分離させず、単一相として循環させてもよい。
【0023】
方法(b)では、バッファー機能を備えた貯蔵器における低沸点成分(3A)の滞留時間を0.5分以上(例えば、1分以上)としてもよい。また、方法(b)では、デカンターにおける低沸点成分(3A)の滞留時間と貯蔵器における低沸点成分(3A)の滞留時間の総時間を1.5分以上(例えば、2分以上)としてもよい。
【0024】
方法(c)では、代表的には、デカンターとしてバッファー機能を備えたデカンターを用い、デカンターにおける低沸点成分(3A)の滞留時間を1分以上としてもよい。
【0025】
方法(a)〜(c)は、単独で行ってもよく、組み合わせて(例えば、少なくとも方法(a)又は方法(b)を)行ってもよい。
【0026】
本発明では、アセトアルデヒドの除去だけでなく、ヨウ化メチルの回収(リサイクル)も効率よく行うことができ、例えば、分離・リサイクル工程において、低沸点成分(3A)をアセトアルデヒド分離塔に供給し、蒸留により、アセトアルデヒドを含む低沸点成分(4A)(又は第2のオーバーヘッド(4A))と、ヨウ化メチルを含む高沸点成分(4B)(又は底部流(4B))とに分離し、分離液としての高沸点成分(4B)をリサイクル[例えば、反応系(反応器又は反応工程)、酢酸回収工程(又は蒸留塔)、およびアセトアルデヒド分離塔から選択された少なくとも1種にリサイクル]してもよい。
【0027】
また、本発明では、分離・リサイクル工程において分離された分離液の流量変動を抑えつつリサイクルしてもよい。具体的には、分離・リサイクル工程において、バッファー機能を備えた貯蔵器を介して分離液をリサイクルしてもよい。
【0028】
前記低沸点成分(4A)には、分離しきれないヨウ化メチルを含む場合がある。そのため、本発明では、低沸点成分(4A)がヨウ化メチルを含み、分離・リサイクル工程において、さらに、低沸点成分(4A)から回収したヨウ化メチルをリサイクル[反応系からアセトアルデヒドの分離に至るまでの工程にリサイクル、例えば、反応系(反応器又は反応工程)、酢酸回収工程(又は蒸留塔)、およびアセトアルデヒド分離塔から選択された少なくとも1種にリサイクル]してもよい。
【0029】
なお、本明細書において、凝縮工程および凝縮工程よりも後続の工程における「低沸点成分(3A)」とは、酢酸回収工程において分離される低沸点成分(又はオーバーヘッド)(3A)のうち、凝縮した成分(凝縮成分又は液体成分)を意味し、「凝縮成分(3A’)」、「凝縮液(3A’)」などとして、低沸点成分(3A)と区別して用いる場合がある。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、ヨウ化メチルおよびアセトアルデヒドを含む低沸点成分の供給量の変動に対応させて、デカンターに貯蔵する低沸点成分の量を調整するので、アセトアルデヒドを効率よく除去しつつ、安定して酢酸(高純度の酢酸)を製造できる。また、本発明では、低沸点成分中のアセトアルデヒドを効率よく確実に分離できるので、低沸点成分から分離された助触媒としてのヨウ化メチルを高い効率でリサイクルしつつ、酢酸を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の酢酸の製造方法(又は製造装置)の一例を説明するためのフロー図である。
図2図2は、本発明の酢酸の製造方法(又は製造装置)の他の例を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、必要により添付図面を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。図1は本発明の酢酸の製造方法(又は製造装置)の一例を説明するためのフロー図である。
【0033】
図1の例では、金属触媒としてのロジウム触媒、助触媒[ハロゲン化物塩としてのヨウ化リチウム、及びヨウ化メチル]で構成された触媒系、並びに酢酸、酢酸メチル、有限量の水の存在下、メタノールと一酸化炭素との連続的カルボニル化反応により生成した反応混合物から酢酸を製造する連続プロセス(又は製造装置)が示されている。
【0034】
このプロセス(又は製造装置)は、メタノールのカルボニル化反応を行うための反応器(反応系)1と、反応により生成した酢酸を含む反応混合物(反応液)から、生成した酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、および水を含む低沸点成分又は揮発相(2A)と、ロジウム触媒及びヨウ化リチウムを含む高沸点成分又は低揮発相(2B)とを分離するためのフラッシャー2と、このフラッシャー2から供給された低沸点成分(2A)から、ヨウ化メチル、酢酸メチル、副生したアセトアルデヒド、水などを含む低沸点成分又はオーバーヘッド(第1のオーバーヘッド)(3A)と、側流としての酢酸を含む流分又は酢酸相(3B)と、酢酸、水、プロピオン酸などを含む高沸点成分(3C)とに分離するためのスプリッターカラム3と、冷却して凝縮した低沸点成分(3A)(又は低沸点成分(3A)の凝縮成分(3A’))を一時的にホールド又は貯蔵するためのデカンター4と、デカンター4から供給又は排出された低沸点成分(3A)(又は低沸点成分(3A)の凝縮成分(3A’))を一時的に貯蔵する(又は滞留させる)ためのバッファータンク5と、デカンター4又はバッファータンク5から供給又は排出された低沸点成分(3A)(又は低沸点成分(3A)の凝縮成分(3A’))を、アセトアルデヒドおよびヨウ化メチルを含む低沸点成分(4A)と、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、酢酸などを含む高沸点成分(4B)とに分離するための蒸留塔(アセトアルデヒド分離塔)6と、この蒸留塔6において分離された高沸点成分(4B)を一時的に貯蔵する(又は滞留させる)ためのバッファータンク7と、低沸点成分(4A)から抽出(例えば、水抽出)によりアセトアルデヒドを分離し、ヨウ化メチルをリサイクルするための抽出装置又は抽出器8と、これらの装置に各成分を供給又は循環させるための各種ラインとを備えている。
【0035】
以下、より詳細に、図1のプロセスを説明する。
【0036】
反応器1には、液体成分としてのメタノールが、所定速度で連続的に供給されるとともに、気体反応成分としての一酸化炭素が、連続的に供給される。また、前記反応器1には、カルボニル化触媒系(ロジウム触媒などの主たる金属触媒成分と、ヨウ化リチウム及びヨウ化メチルなどの助触媒とで構成された触媒系)を含む触媒混合物(触媒液)及び水を供給してもよい。また、反応器1には、後続の工程からの低沸点成分や高沸点成分を含む流分(例えば、液状の形態で)を、ライン13及び/又はライン40を通じて反応器1に供給される。
【0037】
そして、反応器1内では、反応成分と金属触媒成分(ロジウム触媒及びヨウ化リチウム)などの高沸成分とを含む液相反応系と、一酸化炭素及び反応により生成した水素、メタン、二酸化炭素、並びに気化した低沸成分(ヨウ化メチル、生成した酢酸、酢酸メチルなど)などで構成された気相系とが平衡状態を形成しており、メタノールのカルボニル化反応が進行する。反応器1内の圧力(反応圧、一酸化炭素分圧、水素分圧など)を一定に保つため、反応器1の塔頂から、蒸気を抜き出し、排出してもよい。なお、反応器1から抜き出した蒸気は、さらに熱交換器により冷却して、液体成分(酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、水などを含む)と気体成分(一酸化炭素、水素などを含む)とを生成させ、得られた前記液体成分を、反応器1にリサイクルしてもよく(図示せず)、前記気体成分(排ガス)を排出してもよい。
【0038】
なお、前記反応器1には、触媒活性を高めるため、必要により水素を供給してもよい。水素は、一酸化炭素とともに供給してもよく、別途供給してもよい。また、前記反応系は、発熱を伴う発熱反応系であるため、前記反応器1は、反応温度を制御するための除熱ユニット又は冷却ユニット(ジャケットなど)などを備えていてもよい。
【0039】
反応器1で生成した反応混合物(反応粗液)中には、酢酸、酢酸よりも沸点の低い低沸成分又は低沸不純物(助触媒としてのヨウ化メチル、酢酸とメタノールとの反応生成物である酢酸メチル、副反応生成物であるアセトアルデヒド、ヨウ化ヘキシルなどの高級ヨウ化物など)、及び酢酸よりも沸点の高い高沸成分又は高沸不純物[金属触媒成分(ロジウム触媒など)、助触媒としてのヨウ化リチウム、プロピオン酸、水など]などが含まれる。
【0040】
上記反応混合物から主に金属触媒成分などの高沸成分を分離するため、前記反応器1から反応混合物の一部を連続的に抜き取りつつ、供給ライン11を通じて反応混合物をフラッシャー(蒸留塔又は触媒分離塔)2に導入又は供給する。
【0041】
ここで、反応器1からフラッシャー2に供給される反応混合物の供給量は、液相に供給される一酸化炭素のスパージングによる圧力変動などにより、連続プロセスにおいて一定ではなく変動する。例えば、フラッシャー2に供給される反応混合物の流量(又は流速、以下、流量の記載において同じ)は、フラッシャー2に供給される反応混合物の平均流量を100とするとき、プロセス全体を通して98〜102程度である。なお、後述するように、このような供給量の変動は、閉鎖プロセスにおいては、後続の工程に伝播する態様で、デカンターに供給される低沸点成分の供給量の変動を生じさせる要因となる。
【0042】
そして、フラッシャー(フラッシュ蒸留塔)2では、反応混合物から、高沸点流分又は高沸点成分又は揮発生成物相(2B)(主に、ロジウム触媒及びヨウ化リチウムなどの金属触媒成分などを含む)と、低沸点流分又は低沸点成分(2A)(主に、生成物であり反応溶媒としても機能する酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、アセトアルデヒドなどを含む)とを分離し、前記高沸点成分(2B)を塔底から缶出ライン13を通じて缶出するとともに反応器1にリサイクルし、前記低沸点成分(2A)(酢酸流)をフラッシャー2の塔頂部又は上段部から供給ライン12を通じて留出させ、スプリッターカラム(又は蒸留塔)3に供給又は導入する。なお、前記高沸点成分(2B)には、金属触媒(ロジウム触媒)、ハロゲン化物塩(ヨウ化リチウム)の他、蒸発せずに残存したヨウ化メチル、酢酸メチル、水及び微量の酢酸なども含まれる。フラッシャー2において分離される低沸点成分(2A)の体積割合は、反応混合物全体の20〜40%程度である。
【0043】
なお、低沸点成分(2A)は、その一部を除熱して反応器にリサイクルしてもよい。図1の例では、揮発した低沸点成分(2A)の一部(例えば、10〜30体積%程度)を、ライン12aを通じて貯蔵器(ホールドタンク)及び/又は熱交換器9に供給しつつ除熱して凝縮させ、ライン12bを通じて反応器1にリサイクルしている。このように低沸点成分(2A)の一部を除熱して反応器に循環させることで、大型のプラントであっても、蒸留塔(スプリッターカラムなど)などの装置を小型化することができる。そのため、省資源省エネルギー型の設備で、高い収率で高純度の酢酸を製造できる。
【0044】
ここで、フラッシャー2からスプリッターカラム3に供給される低沸点成分(2A)の供給量もまた、フラッシャー2に供給される反応混合物の供給量の変動に伴って、連続プロセスにおいて変動する。例えば、スプリッターカラム3に供給される低沸点成分(2A)の流量は、スプリッターカラム3に供給される低沸点成分(2A)の平均流量を100とするとき、プロセス全体を通して98〜102程度である。
【0045】
スプリッターカラム3では、通常、低沸点成分(又はオーバーヘッド)(3A)(ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水、酢酸などを含む)を塔頂又は塔の上段部から留出ライン14を通じて分離するとともに、高沸点流分又は高沸点成分(3C)(酢酸、水、プロピオン酸などを含む成分)を、塔底又は塔の下段部から缶出ライン16を通じて分離(又は除去)する。なお、分離された高沸点成分(3C)は、ライン16を通じて排出してもよく、その一部又は全部をライン40を通じて反応器1にリサイクルしてもよい。そして、主に酢酸を含む側流又は酢酸相流(3B)(酢酸流)は、スプリッターカラム3から供給ライン15を通じてサイドカットさせることにより回収される。なお、サイドカットさせた酢酸を含む流分(3B)は、通常、ライン15を通じて、さらに別の蒸留塔(図示せず)に供給して蒸留し、精製してもよい(図示せず)。なお、スプリッターカラム3において分離される低沸点成分(3A)の割合は、低沸点成分(2A)全体の35〜50重量%程度である。なお、後述のように、スプリッターカラム3に後続の工程からのプロセス液を循環又はリサイクルする場合、スプリッターカラム3では、フラッシャー12から供給される成分と後続の工程からリサイクルされる成分との総量を蒸留に供し、低沸点成分(3A)として分離することとなる。
【0046】
ここで、スプリッターカラム3からデカンター4に供給される低沸点成分(3A)の供給量は、フラッシャー2に供給される反応混合物の供給量およびフラッシャー2からスプリッターカラム3に供給される低沸点成分(2A)の供給量の変動が伝播する形態で、連続プロセスにおいて変動する。例えば、デカンター4に供給される低沸点成分(3A)の流量は、デカンター4に供給される低沸点成分(3A)の平均流量を100とするとき、プロセス全体を通して、90〜110程度である(すなわち、低沸点成分(3A)の流量が0〜±10体積%程度の範囲で変動する)。このように比較的大きな変動量でデカンター4に低沸点成分(3A)が供給される。
【0047】
ライン14を通じて分離された低沸点成分(3A)は、冷却して凝縮されてデカンター(貯蔵器)4に連続的に供給され、一時的にホールド(貯蔵)される。デカンター4内では、凝縮した低沸点成分(凝縮液)(3A)が、水を含む上層(水層又は水相)と、下層(有機層又は有機相)とに分離する場合がある。分離した場合、アセトアルデヒドおよびヨウ化メチルは、いずれの層にも含まれている。なお、アセトアルデヒドは下層よりも上層(水層)に多く含まれる場合が多い。なお、デカンター4に供給される低沸点成分(3A)において、上層(又は上層成分)と、下層(下層成分)との体積割合は、例えば、前者/後者=0.5/1〜1.5/1(例えば、0.7/1〜1.3/1)程度であり、上層および下層において、供給量の変動は、前記と同様の範囲にある。
【0048】
そして、デカンター4内にホールドされた低沸点成分(凝縮液)(3A)は、供給ライン17及び/又は供給ライン18を通じて、アセトアルデヒド分離塔6に供給されるが、図1の例では、デカンター4に供給される低沸点成分(凝縮液)(3A)の流量変動に基づいて、低沸点成分(3A)の一部を、ライン17から分岐したライン17a(副ライン17a)又はライン18から分岐したライン18a(副ライン18a)を介して、反応系などに循環させる(又はリサイクルする)ことにより、デカンター4にホールドされる低沸点成分(凝縮液)(3A)の貯蔵量の変動(又は液面の高さの変動)が高いレベルで抑えられている。
【0049】
すなわち、デカンター4に連続的に供給される低沸点成分(3A)の量(例えば、単位時間あたりに供給される量)は、連続反応において、一定ではなく、前記のように、カルボニル化反応、フラッシュ蒸留、ヨウ化メチルのリサイクルを経て変動する(例えば、単位時間に供給される低沸点成分(3A)の量が大きくなったり小さくなったりする)。そのため、デカンター4に低沸点成分(3A)をそのまま供給すると、デカンター4内に凝縮されて貯蔵される低沸点成分(凝縮液)(3A)の液面の高さが大きく変動し、この変動の大きさによっては運転ができなくなる。このような変動を緩和するため、デカンター4から、アセトアルデヒド分離塔6に流量の変動を緩和できるだけの十分な流量で低沸点成分(3A)を供給することも考えられるが、このような供給では、アルデヒド分離塔6での処理が十分に行えなくなる。
【0050】
そこで、図1の例では、デカンター4に供給される低沸点成分(3A)の流量変動に基づいて、低沸点成分(凝縮液)(3A)の一部を、デカンター4から蒸留塔6に供給することなく分離・リサイクル工程とは異なる工程(図1の例では反応器1及び/又はスプリッターカラム3)にリサイクルすることで、デカンター4にホールドされる低沸点成分(凝縮液)(3A)の量を調整又は制御している。
【0051】
詳細には、図1の例では、低沸点成分(凝縮液)(3A)は、デカンター4内の上層および下層から、それぞれ、ライン17およびライン18を介して排出するが、デカンター4に供給される低沸点成分(3A)の流量が変動しても、上層および下層の液面高さがそれぞれ一定(又はほぼ一定)となるように、デカンター4から排出する低沸点成分(凝縮液)(3A)の流量を調整している。すなわち、デカンター4は、上層および下層にそれぞれ対応し、液面の変動を検知する液面レベルセンサー(図示せず)を備えている。そして、このセンサーにより検知された液面レベルの情報に基づいて、所定の液面高さを保持するように、デカンター4内の上層および下層から排出する低沸点成分(凝縮液)(3A)の量を調整している。より具体的には、液面レベルセンサーの情報などに基づき、デカンターに供給される流量が大きい場合には、液面レベルが高くなるのを防ぐため、排出する低沸点成分(凝縮液)(3A)の流量を大きくし、デカンターに供給される流量が小さい場合には、排出する低沸点成分(凝縮液)(3A)の流量を小さくするなどの流量制御をプロセス全体を通じて行うことにより、デカンター4内の低沸点成分(凝縮液)(3A)の液面の高さ(上層および下層の液面の高さ)を一定又はほぼ一定に保持(例えば、平均液面高さを100とするとき、液面高さをプロセス全体を通してそれぞれ99〜101程度、すなわち、液面の変動をプロセス全体で最大で1%程度に)している。
【0052】
さらに、ライン17およびライン18から排出された低沸点成分(3A)は、ライン17bおよびライン18bから供給される低沸点成分(3A)の総量としてライン19に供給されるが、ライン17a及び/又はライン18aを介して循環させる低沸点成分(3A)の量を調整することにより、ライン19に供給される低沸点成分(3A)の流量が一定又はほぼ一定となるように制御されている。すなわち、図1の例では、デカンター4内の上層および下層から排出する低沸点成分(3A)の量は、それぞれ、前記のように、デカンター4内の液面が一定又はほぼ一定となるように変動するが、その変動に対応させて低沸点成分(3A)をライン17a及び/又はライン18aを介して循環させる量を変動させることにより、ライン19に供給される低沸点成分(3A)の流量の変動を生じさせない(又はほとんど生じさせない)ように(例えば、ライン19に供給される低沸点成分(3A)の平均流量を液体の体積換算で100とするとき、プロセス全体を通して低沸点成分(3A)の流量を98〜102程度、すなわち、流量の変動をプロセス全体で最大で2%程度に)調整している。なお、図1の例では、ライン19に供給される低沸点成分(3A)の流量変動は、主に、循環させる低沸点成分(3A)の量を変動させることにより抑制できるが、デカンター4内での低沸点成分(3A)の滞留時間の調整によっても流量変動をより一層抑制することができる。
【0053】
なお、ライン19に供給される低沸点成分(3A)の流量の調整は、ライン17a及び/又はライン18aに循環させる低沸点成分(3A)の流量を変動させて行えばよく、ライン19に供給される流量に大きな変動を生じさせない範囲であれば、ライン17a又はライン18aに循環させる低沸点成分(3A)の流量を固定化して(すなわち、ライン17b又はライン18bに供給する低沸点成分(3A)の流量を変動させて)もよい。
【0054】
また、図1の例では、ライン17およびライン18を介して、低沸点成分(3A)を排出しているが、いずれか一方のラインのみから低沸点成分(3A)を排出し、その一部を循環させることにより、ライン19に供給される低沸点成分(3A)の流量を調整してもよい。また、上層、下層に関係なく、単一のラインを介して、供給又は排出してもよい。
【0055】
なお、ライン17aに供給される低沸点成分(3A)は、ライン17a1を介してライン30に供給され、スプリッターカラム3に循環させてもよく、ライン17a2を介してライン40に供給され、反応器1にリサイクルして(戻して)もよく、これらの両ライン17a1および17a2を介してリサイクルしてもよい。また、ライン18aに供給される低沸点成分(3A)は、ライン40に供給され、反応器1にリサイクルされる。
【0056】
そして、ライン19に供給された低沸点成分(3A)は、前記のように、流量の変動が著しく抑制されているため、直接的に、蒸留塔6に供給してもよいが、図1の例では、さらに、より一層流量の変動を緩和するため、バッファー機能を備えた貯蔵器(バッファータンク)5を介して蒸留塔6に供給される。すなわち、ライン19に供給された低沸点成分(3A)は、バッファータンク5に供給されたのち、ライン20を介して蒸留塔6に供給される。このようにバッファータンク5に一時的に低沸点成分(3A)を滞留させることにより、バッファータンク5からライン20に供給する量を一定(又はほぼ一定)としても、バッファータンク5においてライン19から供給された低沸点成分(3A)の流量変動を効率よく緩和できる。
【0057】
ここで、このようなバッファータンク5の流量変動緩和機能を十分に発揮するため、バッファータンク5は、低沸点成分(3A)を保持し、流量変動をより一層緩和できるだけの十分な容量を有していることが重要である。なお、このような容量は、流量変動の大きさにもよるが、概ねバッファータンク5内での低沸点成分(3A)の滞留時間に関連させて表すことができ、概ね、低沸点成分(3A)の滞留時間が1分以上(例えば、好ましくは3分以上、さらに好ましくは6分以上)となるよう、流量に対してバッファータンクの容量を調整することができる。なお、バッファータンク5は上記の時間、低沸点成分(3A)を滞留させることができるのが好ましいが、前記のように低沸点成分(3A)をリサイクルしたり、後述のようにデカンターでの十分な滞留時間を保持することで、ライン17に供給される低沸点成分(3A)の流量変動が予め抑えられている場合には、上記範囲よりも滞留時間が短くなるようなバッファータンクを選択しても、安定運転可能である。なお、滞留時間(概ねの滞留時間)は、流量(又は流速)とバッファータンクの容量とを用いて算出でき、例えば、バッファータンク5に供給される低沸点成分(3A)の平均流量をAm/時間とし、バッファータンク5にホールドされている平均貯蔵量をBmとするとき、(B/A)時間として算出することができる。
【0058】
蒸留塔6に供給された低沸点成分(3A)は、蒸留塔6において、アセトアルデヒドの他、微量のヨウ化メチル、一酸化炭素、水素などを含む低沸点流分又は低沸点成分(又は第2のオーバーヘッド)(4A)と、ヨウ化メチルの他、酢酸メチル、水、酢酸などを含む高沸点流分又は高沸点成分(4B)とに分離される。
【0059】
そして、分離された低沸点成分(4A)は、塔頂又は塔上段部からライン(排出ライン)21を通じて、アセトアルデヒド抽出装置(水抽出カラム)8に供給され、低沸点成分(4A)からアセトアルデヒドが水抽出され、抽出されたアセトアルデヒド(アルデヒド水溶液)はライン21bを通じて排出される。なお、低沸点成分(4A)は、その一部をライン21aを通じて蒸留塔6に戻してもよい。また、微量のヨウ化メチルなどを含む抽残液は、系外に排出してもよいが、図1の例では、ライン24から排出された抽残液は、ライン24aを通じて蒸留塔6に供給されるか、及び/又はライン24bを通じてライン40に供給されて反応器1にリサイクルされる。このように抽残液を蒸留したり、リサイクルすることにより、より一層、ヨウ化メチルの回収率を向上させることができる。
【0060】
また、分離された高沸点成分(4B)は、ライン22を通じて、分離液(缶出液又は塔底液)として、反応器1やスプリッターカラム3に通じるライン40に供給される。このように、ヨウ化メチルを含む有用成分が、反応系などに循環(リサイクル)される。ここで、高沸点成分(4B)は、ライン22を通じて、直接的にライン40に供給してもよいが、図1の例では、バッファータンク7を介してライン23を通じて、ライン40に供給している。すなわち、ライン22を通じて供給される高沸点成分(4B)の流量変動は、前記のように、蒸留塔6に供給される低沸点成分(3A)の高度な流量制御に伴い抑制されているが、前記アセトアルデヒドの抽出後の抽残液のリサイクルなどによりやや変動する場合がある。しかし、ライン22から供給される高沸点成分(4B)をバッファータンク7に一時的に滞留させることにより、高沸点成分(4B)の流量が変動しても、バッファータンク7内でその変動を緩和でき、ライン23に供給する高沸点成分(4B)の流量を一定(又はほぼ一定)として、ライン40に供給することができ、そのため、リサイクルする高沸点成分(4B)の流量変動を抑えることができる。
【0061】
なお、ライン40に供給された高沸点成分(4B)は、その一部又は全部をライン40aを介して、スプリッターカラム3にリサイクルしてもよく、ライン40aに供給された高沸点成分(4B)は、蒸留塔6における安定運転を担保できる範囲であれば、その一部又は全部をライン40a1を介して、蒸留塔6に供給してもよい。
【0062】
図2は、本発明の酢酸の製造方法(又は製造装置)のさらに他の例を説明するためのフロー図である。図2のプロセス(又は装置)は、図1におけるデカンター4に代わりに、バッファー機能を備えたデカンター4Aを使用し、低沸点成分(3A)をライン17を介して直接的に蒸留塔6に供給すること以外は、図1の同様のプロセス(又は装置)である。
【0063】
すなわち、図1の例のように、通常、デカンターでは、スプリッターカラム3から供給される低沸点成分(3A)の流量変動を緩和しきれないが、図2の例では、流量変動を緩和できるほどの十分に大きな容量を有するデカンター4Aを用い、このデカンター4A内で流量変動を緩和することで、ライン17に排出する流量を一定又はほぼ一定と(例えば、ライン14を通じて供給される低沸点成分(3A)の平均流量を液体の体積換算で100とするとき、プロセス全体を通してライン17にそれぞれ排出又は供給される低沸点成分(3A)の流量を98.5〜101.5程度、すなわち、流量の変動をプロセス全体で最大で1.5%程度に)することができる。
【0064】
詳細には、図2の例では、図1の例のように、ライン17(およびライン18)から排出される低沸点成分(3A)の流量を変動させるのではなく、一定又はほぼ一定となるように固定化する。ここで、通常、このように流量を固定化すると、安定運転できなくなるが、十分な容量のデカンター4Aを用いることで、デカンター4A内では、流量変動によりホールドされる低沸点成分(3A)の量が変動するものの、その変動を緩和できるだけの容量をデカンター4Aが備えていることにより、安定運転が可能となる。この場合においても、前記図2の例の場合と同様に、デカンター4Aの容量が重要となり、デカンター4A内における低沸点成分(3A)の滞留時間を、概ね、前記と同様の範囲(例えば、1分以上、好ましくは3分以上、さらに好ましくは6分以上)とすることにより、安定運転が可能となる場合が多い。
【0065】
なお、図2の例では、低沸点成分(3A)を上層に対応するライン17を介して蒸留塔6に供給しているが、図1の例における下層に対応するライン18を介して供給してもよく、ライン17およびライン18を介して供給してもよい。また、上層、下層に関係なく、単一のラインを介して、供給してもよい。
【0066】
(反応工程)
反応工程(カルボニル化反応工程)では、触媒系の存在下、メタノールを一酸化炭素でカルボニル化する。なお、メタノールは、新鮮なメタノールを直接又は間接的に反応系へ供給してもよく、また、各種蒸留工程から留出するメタノール又はその誘導体を、リサイクルすることにより、反応系に供給してもよい。
【0067】
触媒系は、通常、金属触媒と、助触媒と、促進剤とで構成することができる。金属触媒としては、遷移金属触媒、特に、周期表第8族金属を含む金属触媒、例えば、コバルト触媒、ロジウム触媒、イリジウム触媒などが例示できる。触媒は、金属単体であってもよく、また、金属酸化物(複合酸化物を含む)、金属水酸化物、金属ハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、カルボン酸金属塩(酢酸塩など)、無機酸金属塩(硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩など)、金属錯体などの形態でも使用できる。このような金属触媒は、一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい金属触媒は、ロジウム触媒及びイリジウム触媒(特に、ロジウム触媒)である。
【0068】
また、金属触媒は反応液中で可溶な形態で使用するのが好ましい。なお、ロジウムは、通常、反応液中で錯体として存在しているため、ロジウム触媒を用いる場合には、触媒は、反応液中で錯体に変化可能である限り、特に制限されず、種々の形態で使用できる。このようなロジウム触媒としては、特に、ロジウムヨウ素錯体(例えば、RhI、RhI(CO)、[Rh(CO)など)、ロジウムカルボニル錯体などが好ましい。また、触媒は、ハロゲン化物塩(ヨウ化物塩など)及び/又は水を添加することにより反応液中で安定化させることができる。
【0069】
金属触媒の濃度は、例えば、反応器内の液相全体に対して10〜5000ppm(重量基準、以下同じ)、好ましくは100〜4000ppm、さらに好ましくは200〜3000ppm、特に300〜2000ppm(例えば、500〜1500ppm)程度である。
【0070】
触媒系を構成する助触媒又は促進剤としては、ハロゲン化物塩(ヨウ化物塩など)が使用される。ヨウ化物塩は、特に低水分下でのロジウム触媒の安定化と副反応抑制等のために添加される。ヨウ化物塩としては、反応液中で、ヨウ素イオンを発生するものであれば特に限定されず、例えば、金属ハロゲン化物[例えば、ヨウ化物アルカリ金属塩(ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウムなど)、ヨウ化物アルカリ土類金属塩(ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウムなど)、ヨウ化物の周期表3B属元素塩(ヨウ化ホウ素、ヨウ化アルミニウムなど)などの金属ヨウ化物、これらに対応する臭化物、塩化物など]、有機ハロゲン化物[例えば、ヨウ化物のホスホニウム塩(例えば、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどとの塩)、ヨウ化物のアンモニウム塩(三級アミン、ピリジン類、イミダゾール類、イミド類などとヨウ化物との塩など)などの有機ヨウ化物、これらに対応する臭化物、塩化物など]が挙げられる。なお、ヨウ化物アルカリ金属塩(ヨウ化リチウムなど)は、カルボニル化触媒(例えば、ロジウム触媒など)の安定剤としても機能する。これらのハロゲン化物塩は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのハロゲン化物塩のうち、ヨウ化リチウムなどのヨウ化物アルカリ金属塩が好ましい。
【0071】
ハロゲン化物塩(ヨウ化物塩など)の反応器の反応系(反応液)における濃度は、反応器内の液相全体に対して、例えば、1〜25重量%、好ましくは2〜22重量%、さらに好ましくは3〜20重量%程度である。さらに、反応系におけるヨウ化物イオンの濃度は、例えば、0.07〜2.5モル/リットル、好ましくは0.25〜1.5モル/リットルであってもよい。
【0072】
前記触媒系を構成する促進剤としては、ヨウ化アルキル(例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピルなどのヨウ化C1−4アルキルなど)、特にヨウ化メチルが利用される。促進剤の濃度は、高いほど反応が促進されるため、促進剤の回収、回収した促進剤を反応器へ循環する工程の設備規模、回収や循環に必要なエネルギー量などを考慮し、経済的に有利な濃度を適宜選択できる。ヨウ化アルキル(特にヨウ化メチル)の反応系における濃度は、反応器内の液相全体に対して、例えば、1〜20重量%、好ましくは5〜20重量%、さらに好ましくは6〜16重量%(例えば、8〜14重量%)程度である。
【0073】
連続反応であるため、反応液は、酢酸メチルを含んでいる。酢酸メチルの含有割合は、反応液全体の0.1〜30重量%、好ましくは0.3〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%(例えば、0.5〜6重量%)程度の割合であってもよい。
【0074】
反応系に供給する一酸化炭素は、純粋なガスとして使用してもよく、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、二酸化炭素など)で希釈して使用してもよい。また、後続の工程から得られる一酸化炭素を含む排ガス成分を反応系にリサイクルしてもよい。反応器中の一酸化炭素分圧は、例えば、2〜30気圧、好ましくは4〜15気圧程度であってもよい。
【0075】
前記カルボニル化反応では、一酸化炭素と水との反応によりシフト反応が起こり、水素が発生するが、反応系に水素を供給してもよい。反応系に供給する水素は、原料となる一酸化炭素と共に混合ガスとして反応系に供給することもできる。また、後続の蒸留工程(蒸留塔)で排出された気体成分(水素、一酸化炭素などを含む)を、必要により適宜精製して反応系にリサイクルすることにより、水素を供給してもよい。反応系の水素分圧は、絶対圧力で、例えば、0.5〜250kPa、好ましくは1〜200kPa、さらに好ましくは5〜150kPa(例えば、10〜100kPa)程度であってもよい。
【0076】
なお、反応系の一酸化炭素分圧や水素分圧は、例えば、反応系への一酸化炭素及び水素の供給量又はこれらの成分の反応系へのリサイクル量、反応系への原料基質(メタノールなど)の供給量、反応温度や反応圧力などを適宜調整することにより調整することができる。
【0077】
カルボニル化反応において、反応温度は、例えば、150〜250℃、好ましくは160〜230℃、さらに好ましくは180〜220℃程度であってもよい。また、反応圧力(全反応器圧)は、副生成物の分圧を含めて、例えば、15〜40気圧程度であってもよい。
【0078】
反応は溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。反応溶媒としては、反応性や、分離又は精製効率を低下させない限り特に制限されず、種々の溶媒を使用できるが、通常、生成物である酢酸を用いる場合が多い。
【0079】
反応系に含まれる水濃度は、特に制限されないが、低濃度であってもよい。反応系の水濃度は、反応系の液相全体に対して、例えば、15重量%以下(例えば、0.1〜12重量%)、好ましくは10重量%以下(例えば、0.1〜8重量%)、さらに好ましくは0.1〜5重量%程度であり、通常1〜15重量%(例えば、2〜10重量%)程度であってもよい。反応系において、各成分、特にヨウ化物塩(ヨウ化リチウム)及び水濃度を特定の濃度に保持して反応させることにより、蒸発槽に供給する液中の一酸化炭素の溶解度を低下させ、一酸化炭素のロスを低減できる。
【0080】
前記カルボニル化反応では、酢酸が生成するとともに、生成した酢酸とメタノールとのエステル(酢酸メチル)、エステル化反応に伴って、水、さらにはアセトアルデヒド、プロピオン酸などが生成する。
【0081】
なお、アセトアルデヒドは、後述のアセトアルデヒド分離工程により分離されるため、連続反応ではあるが、反応器におけるアセトアルデヒドの濃度は比較的小さく抑えられている。例えば、反応器(又は反応系)におけるアセトアルデヒド濃度は、プロセス全体を通して、反応器内の液相全体の1000ppm以下(例えば、0又は検出限界〜700ppm)、好ましくは400ppm以下(例えば、5〜300ppm)であってもよい。
【0082】
また、反応器内では、アセトアルデヒド由来の副生成物(例えば、アセトアルデヒドのアルドール縮合で生成する還元性物質のクロトンアルデヒド、クロトンアルデヒドの水素化物とアセトアルデヒドのアルドール縮合で生成する2−エチルクロトンアルデヒド、アセトアルデヒド3分子がアルドール縮合し、水素化、ヨウ素化を経て生成するヨウ化ヘキシルなど)も生成する。本発明では、反応器内におけるアセトアルデヒドの濃度の変動も抑えられているため、上記低濃度のアセトアルデヒド濃度と相まって、このようなアセトアルデヒド由来の副生成物の生成も著しく抑制することができる。すなわち、これらの副生成物は、アセトアルデヒド濃度の2〜3乗に比例して副生する場合が多く、アセトアルデヒドの濃度および変動を抑えることで、効率よく副生成物の発生を抑制することができる。
【0083】
反応系における目的カルボン酸(酢酸)の空時収量は、例えば、5〜50mol/Lh、好ましくは8〜40mol/Lh、さらに好ましくは10〜30mol/Lh程度であってもよい。
【0084】
なお、反応器の圧力の調整などを目的とし、反応器の塔頂から蒸気成分を抜き出してもよく、抜き出された蒸気成分は、反応熱の一部を除熱するために、コンデンサーや熱変換器などにより冷却してもよい。冷却された蒸気成分は、液体成分(酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、水などを含む)と気体成分(一酸化炭素、水素などを含む)とに分離し、液体成分を反応器にリサイクルしてもよい。
【0085】
(フラッシュ蒸発工程)
フラッシュ蒸発工程(蒸発槽)では、前記反応工程又は前記反応器からフラッシャー(蒸発槽、フラッシュ蒸留塔)に供給された反応混合物から、少なくとも高沸点触媒成分(金属触媒成分、例えば、ロジウム触媒及びハロゲン化物塩)を含む高沸点成分(2B)を液体として分離するとともに、酢酸およびヨウ化メチルを含む低沸点成分(2A)を蒸気として分離する。
【0086】
前記のように、フラッシャーに供給される反応混合物の供給量は変動する。その変動の程度は、例えば、フラッシャーに供給される反応混合物の平均流量(液体の体積換算、特に断りのない限り、他の記載においても同じ)を100とするとき、プロセス全体を通して、フラッシャーに供給される反応混合物の流量が90〜110(例えば、93〜107)、好ましくは95〜105(例えば、97〜103)、さらに好ましくは98〜102(例えば、98.5〜101.5)程度である。
【0087】
金属触媒成分の分離(フラッシュ蒸留)は、慣用の分離方法又は分離装置により行うことができるが、通常、フラッシュ蒸留塔を利用して行うことができる。また、フラッシュ蒸留と、工業的に汎用されるミストや固体の捕集方法とを併用して、金属触媒成分を分離してもよい。
【0088】
フラッシュ蒸発工程では、反応混合物を加熱してもよく、加熱することなく蒸気成分と液体成分とを分離してもよい。例えば、断熱フラッシュにおいては、加熱することなく減圧することにより反応混合物から蒸気成分と液体成分とに分離でき、恒温フラッシュでは、反応混合物を加熱し減圧することにより反応混合物から蒸気成分と液体成分とに分離でき、これらのフラッシュ条件を組み合わせて、反応混合物を分離してもよい。これらのフラッシュ蒸留は、例えば、反応混合物を80〜200℃程度の温度で圧力(絶対圧力)50〜1000kPa(例えば、100〜1000kPa)、好ましくは100〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPa程度で行うことができる。
【0089】
触媒の分離工程は、単一の工程で構成してもよく、複数の工程を組み合わせて構成してもよい。このようにして分離された高沸点触媒成分(金属触媒成分)は、前記図の例のように、通常、反応系にリサイクルしてもよい。
【0090】
また、低沸点成分(2A)の一部は、前記のように、反応器又は反応系にリサイクルしてもよい。リサイクルする低沸点成分(2A)は、適当な方法(熱交換器やコンデンサーを用いる方法など)で除熱および凝縮させて反応器にリサイクルしてもよい。リサイクルする低沸点成分(2A)の割合は、例えば、1〜50体積%(例えば、5〜45体積%)、好ましくは10〜40体積%、さらに好ましくは10〜30体積%程度であってもよい。
【0091】
分離された低沸点成分(2A)は、生成物である酢酸の他に、ヨウ化水素、ヨウ化メチルなどの助触媒、酢酸メチル、水、副生成物(アセトアルデヒドなどのアルデヒドやプロピオン酸など)を含んでおり、酢酸を回収するための蒸留塔に供給される。なお、反応混合物のうち、酢酸回収工程に供給される低沸点成分(2A)の割合は、反応混合物全体に対して、例えば、5〜50重量%、好ましくは8〜40重量%、さらに好ましくは10〜35重量%(例えば、12〜30重量%)程度であってもよい。
【0092】
(酢酸回収工程)
酢酸回収工程では、低沸点成分(2A)を蒸留塔(スプリッターカラム)に供給し、ヨウ化メチルおよび副生したアセトアルデヒドを含む低沸点成分(3A)と、酢酸を含む流分(3B)とに分離して、酢酸を回収する。詳細には、蒸留塔では、フラッシャーから供給された低沸点成分(2A)(酢酸流)から、ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水などを含む低沸点成分(3A)(オーバーヘッド)を蒸気として分離し、酢酸を含む液状流分(3B)(サイドカット流分、側流)をサイドカットにより留出させる。なお、蒸留塔では、酢酸、水、プロピオン酸、飛沫同伴により混入した金属触媒成分、ハロゲン化物塩などを含む高沸点成分(3C)を分離してもよい。このような高沸点成分(3C)は、蒸留塔の塔底から除去(缶出)してもよく、金属触媒成分、蒸発せずに残存した酢酸などの有用成分を含んでいるため、前記図の例のように、反応器(又は反応工程)やフラッシュ蒸発工程(又は蒸留塔)などにリサイクルしてもよい。なお、リサイクルに先立って、製品酢酸の品質を低下させるプロピオン酸などを除去してもよい。なお、酢酸流(粗酢酸液)は、通常、次の蒸留塔で脱水され、さらに高沸分と低沸分を分離蒸留するための酢酸製品塔に導入され、製品酢酸となる。
【0093】
また、リサイクルする高沸点成分(3C)は、後述のように、バッファー機能を有する貯蔵器を介して反応系などにリサイクルしてもよい。
【0094】
前記のように、蒸留塔に供給される低沸点成分(2A)の供給量もまた、反応器からの供給量の変動が伝播する形で変動する。変動の程度は、例えば、蒸留塔に供給される低沸点成分(2A)の平均流量を100とするとき、プロセス全体を通して、蒸留塔(2A)に供給される低沸点成分(2A)の流量が90〜110(例えば、93〜107)、好ましくは95〜105(例えば、97〜103)、さらに好ましくは98〜102(例えば、98.5〜101.5)程度である。
【0095】
なお、蒸留塔(スプリッターカラム)において、供給される低沸点成分(2A)の供給口の位置は、特に制限されず、例えば、蒸留塔の上段部、中段部、下段部のいずれであってもよい。また、蒸留塔において酢酸流をサイドカットする側流口に対して、上方及び下方のいずれから供給してもよい。さらに、酢酸流をサイドカットする側流口の位置は、蒸留塔の上段部、中段部、及び下段部のいずれであってもよいが、通常、蒸留塔の中段部又は下段部であるのが好ましい。
【0096】
蒸留塔としては、慣用の蒸留塔、例えば、棚段塔、充填塔、フラッシュ蒸留塔などが使用できるが、通常、棚段塔、充填塔などの精留塔を使用してもよい。なお、蒸留塔の材質は特に制限されず、ガラス製、金属製、セラミック製などが使用できるが、通常、金属製の蒸留塔を用いる場合が多い。
【0097】
蒸留塔における蒸留温度及び圧力は、蒸留塔の種類や、低沸点成分及び高沸点成分のいずれを重点的に除去するかなどの条件に応じて適宜選択できる。例えば、蒸留塔において、塔内温度(通常、塔頂温度)は、塔内圧力を調整することにより調整でき、例えば、20〜180℃、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは100〜140℃程度であってもよい。
【0098】
また、棚段塔の場合、理論段は、特に制限されず、分離成分の種類に応じて、5〜50段、好ましくは7〜35段、さらに好ましくは8〜30段程度である。また、蒸留塔で、アセトアルデヒドを高度に(又は精度よく)分離するため、理論段を、10〜80段、好ましくは20〜60段、さらに好ましくは25〜50段程度にしてもよい。さらに、蒸留塔において、還流比は、前記理論段数に応じて、例えば、0.5〜3000、好ましくは0.8〜2000程度から選択してもよく、理論段数を多くして、還流比を低減してもよい。
【0099】
分離された低沸点成分(3A)は、ヨウ化メチル、アセトアルデヒドの他、酢酸メチル、水、酢酸などを含んでいる場合が多い。なお、低沸点成分(2A)のうち、凝縮工程又はデカンターに供給される低沸点成分(3A)の割合は、低沸点成分(2A)全体に対して、例えば、5〜70体積%、好ましくは10〜65体積%、さらに好ましくは12〜60体積%(例えば、15〜50体積%)程度であってもよい。
【0100】
(凝縮・排出工程)
凝縮・排出工程(単に、凝縮工程などということがある)では、分離された低沸点成分(又は凝縮液)(3A)を、凝縮させつつデカンター(又は貯蔵器)に一時的にホールド(又は貯蔵)し、その後、少なくともアセトアルデヒド分離工程に供するために排出する。そして、本発明では、この凝縮・排出工程において、ホールドする低沸点成分(3A)の量(又は排出する低沸点成分(3A)の量)を、プロセス全体を通じて、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の流量の変動に基づいて調整(又は制御)する。
【0101】
すなわち、前記のように、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の供給量は、一連の工程を経て、大きく変動する。このような変動は、例えば、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の平均流量を100とするとき、プロセス全体を通して、デカンターに供給される低沸点成分(又は凝縮液)(3A)の流量が、80〜120(例えば、85〜115)、好ましくは90〜110(例えば、93〜107)、さらに好ましくは95〜105となる程度の大きな変動である。そこで、本発明では、この流量変動を緩和するようにデカンターにホールドする低沸点成分(3A)の量を調整する。
【0102】
ホールドする低沸点成分(3A)の量を調整(又は制御)する具体的な方法としては、(1)デカンター内にホールドする低沸点成分(3A)の量又は液面高さの変動を抑えるように低沸点成分(3A)を排出する方法(図1の方法など)、(2)デカンターとしてバッファー機能を備えたデカンターを使用し、低沸点成分(3A)の供給量の変動をデカンター内で緩和する方法(図2の方法など)などが挙げられる。なお、これらの方法は、組み合わせてもよい。
【0103】
方法(1)では、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の変動に対応させて、低沸点成分(3A)の排出量を変動させる。このような方法では、例えば、デカンターにホールドされる低沸点成分(3A)の平均液面高さを100とするとき、デカンターにホールドされる低沸点成分(3A)の液面高さを、プロセス全体を通して、80〜120(例えば、85〜115)、好ましくは90〜110(例えば、93〜107)、さらに好ましくは95〜105(例えば、98〜102)程度に調整してもよい(又は低沸点成分(3A)の排出量を調整してもよい)。また、デカンターにホールドされる低沸点成分(3A)が層分離(分液)する場合、平均界面高さを100とするとき、デカンターにホールドされる低沸点成分(3A)の界面高さ(例えば、下層の液面高さ)を、プロセス全体を通して、80〜120(例えば、85〜115)、好ましくは90〜110(例えば、93〜107)、さらに好ましくは95〜105(例えば、98〜102)程度に調整してもよい(又は低沸点成分(3A)の排出量を調整してもよい)。
【0104】
また、方法(1)では、デカンターにホールドする低沸点成分(3A)の平均量を液体の体積基準で100とするとき、プロセス全体を通してデカンターにホールドされる低沸点成分(3A)の量を、一定又はほぼ一定となるように[例えば、80〜120(例えば、85〜115)、好ましくは90〜110(例えば、93〜107)、さらに好ましくは95〜105(例えば、98〜102)程度に]調整してもよい。
【0105】
なお、方法(1)において、液面高さなどは、前記のセンサー(液面レベルセンサー)などを利用して調整してもよく、所定の液面高さに達した時に低沸点成分(3A)を排出するための適当な手段をデカンターに設けて調整してもよい。
【0106】
方法(2)において、バッファー機能を備えたデカンターは、低沸点成分(3A)の供給量の変動を十分に緩和できるだけの容量を有していればよい。このようなデカンターの選択は、前記のように、概ね、デカンターにおける低沸点成分(3A)の滞留時間を十分に保持できる範囲{例えば、滞留時間(又は平均滞留時間)1分以上[例えば、2分以上(例えば、2.5分〜3時間)、好ましくは3分以上[例えば、4分以上(例えば、5〜60分)]、さらに好ましくは6分以上(例えば、8〜50分)、特に12分以上(例えば、15〜40分程度)]を指標として選択できる。このような十分な滞留時間を担保できるデカンターを用いることにより、低沸点成分(3A)の供給量が変動しても、デカンター内でその変動を緩和することができ、安定運転が可能となる。なお、後述のように、低沸点成分(3A)が上層と下層とに分離する場合、層全体の滞留時間が上記範囲となればよい。また、上層の滞留時間と下層の滞留時間は、必ずしも同じである必要はなく、一方の層の滞留時間を長く(又は短く)してもよい。
【0107】
なお、方法(1)において、デカンターにおける低沸点成分(3A)の滞留時間は、特に限定されず、例えば、5秒以上(例えば、10秒以上)、好ましくは15秒以上(例えば、20秒以上)、さらに好ましくは30秒以上であってもよい。また、方法(1)において、方法(2)で使用可能なバッファー機能を備えたデカンターを使用し、十分な滞留時間を保持してもよい。
【0108】
なお、低沸点成分(3A)は、デカンター内では、前記のように、上層と下層に分離する場合がある。このような場合、低沸点成分(3A)の排出は、上層、下層のいずれから行ってもよく、両層から行ってもよい。なお、デカンターに供給される低沸点成分(3A)において、上層と下層との体積割合は、前者/後者=0.2/1〜5/1(例えば、0.3/1〜3/1)程度の範囲から選択でき、例えば、0.5/1〜1.5/1、好ましくは0.6/1〜1.4/1、さらに好ましくは0.7/1〜1.3/1程度であってもよい。上層および下層において、供給量の変動は、前記と同様の範囲にある。また、方法(1)において、上層および下層に分離する場合、全体として液面の高さ(又はホールド量)の変動を前記範囲となるように抑制すればよいが、前記両層の液面の高さ(又はホールド量)の変動を前記範囲となるように抑制してもよい。例えば、前記図1の例のように、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の流量の変動に対応させて、上層および下層のそれぞれから排出する低沸点成分(3A)の流量を変動させることにより、上層および下層両層の液面の変動を抑えることができる。
【0109】
デカンターから排出した低沸点成分(3A)は、アセトアルデヒド分離工程(又はアセトアルデヒド分離塔)に供給されるが、流量制御することなくそのまま供給すると、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の量の変動に伴って、安定してアセトアルデヒドの分離を行うことができなくなる場合がある。そのため、本発明では、デカンターにホールドする低沸点成分(3A)の量に加えて、さらに、分離・リサイクル工程に供給される低沸点成分(3A)の量を調整してもよい。
【0110】
具体的には、分離・リサイクル工程に供給される低沸点成分(3A)の平均流量を100とするとき、プロセス全体を通して、分離・リサイクル工程に供給される低沸点成分(3A)の流量を、一定又はほぼ一定となるように[例えば、90〜110(例えば、93〜107)、好ましくは95〜105(例えば、97〜103)、さらに好ましくは98〜102、特に98.5〜101.5程度に]調整(すなわち、実質的に固定化)してもよい。
【0111】
このような分離・リサイクル工程に供給する低沸点成分(3A)の供給量の調整又は制御方法としては、例えば、(a)デカンターから排出した低沸点成分(3A)の一部を、分離・リサイクル工程とは異なる工程(特に、少なくとも反応器又は反応工程)に循環させる方法(図1の例など)、(b)デカンターから排出した低沸点成分(3A)をバッファー機能を備えた貯蔵器を介して、分離・リサイクル工程に供給する方法(図1の例など)、(c)デカンターから排出する低沸点成分(3A)の量を一定(又はほぼ一定)とする方法(図2の例など)などが挙げられ、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0112】
方法(a)では、排出した低沸点成分(3A)の一部を、分離・リサイクル工程に供することなく、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の量の変動に対応させて循環(リサイクル)することにより、分離・リサイクル工程に供給される低沸点成分(3A)の量を一定又はほぼ一定となるように調整できる。すなわち、デカンターから排出される低沸点成分(3A)の量が変動する場合には、この循環させる低沸点成分(3A)の量を変動させることにより、分離・リサイクル工程に供給される低沸点成分(3A)の変動を高いレベルで抑制できる。低沸点成分(3A)をリサイクルする工程(又は装置)は、分離・リサイクル工程(又はアセトアルデヒド分離塔)でない限り特に限定されず、反応器(又は反応工程)、酢酸回収工程(又は蒸留塔)などのいずれであってもよく、複数の工程にリサイクルさせてもよいが、特に、少なくとも反応工程にリサイクルしてもよい。
【0113】
方法(a)において、循環させる量は、アセトアルデヒド分離塔の処理能力や、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の変動の大きさなどに応じて選択できるが、例えば、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の平均流量の2%以上(例えば、3〜99%)、好ましくは5%以上(例えば、7〜95%)、さらに好ましくは10%以上(例えば、12〜90%)、特に20%以上(例えば、20〜90%)程度であってもよい。特に、比較的多量[例えば、デカンターに供給される低沸点成分(3A)の平均流量の40%以上(例えば、40〜90%)、好ましくは50〜90%(例えば、55〜85%)、さらに好ましくは60〜80%程度、通常55〜90%(例えば、65〜85%)]の低沸点成分(3A)を循環させると、安定運転とアセトアルデヒドの除去とを効率よく両立させることができる。
【0114】
なお、反応系(又は反応工程又は反応器)に循環させる低沸点成分(3A)(又は低沸点成分(3A)の平均流量)の割合は、循環させる低沸点成分(3A)全体に対して、5〜100体積%、好ましくは10〜90体積%、さらに好ましくは15〜80体積%、特に20〜75体積%(例えば、25〜70体積%)程度であってもよい。また、反応器と酢酸回収工程(又は蒸留塔)とに低沸点成分(3A)を循環させる場合、これらの循環させる量の割合は、前者/後者(体積比)=95/5〜5/95(例えば、90/10〜10/90)、好ましくは85/15〜15/85(例えば、80/20〜20/80)、さらに好ましくは75/25〜25/75(例えば、70/30〜30/70)、特に65/35〜35/65(例えば、60/40〜40/60)程度であってもよい。さらに、反応器に循環させる低沸点成分(3A)(又はその平均流量)と、分離・リサイクル工程に供給する低沸点成分(3A)(又はその平均流量)との割合は、前者/後者(体積比)=95/5〜10/90(例えば、90/10〜15/85)、好ましくは85/15〜20/80(例えば、80/20〜25/75)、さらに好ましくは75/25〜35/65(例えば、70/30〜40/60)、特に70/30〜45/55(例えば、65/35〜50/50)程度であってもよい。
【0115】
なお、デカンター内で低沸点成分(3A)が上層と下層とに分離する場合、上層(上層の一部又は全部)、下層(下層の一部又は全部)のいずれの層をリサイクルしてもよく、特に、両層を反応系にリサイクルしてもよい。なお、両層をリサイクルする場合、リサイクルする上層の低沸点成分(3A)と、リサイクルする下層の低沸点成分(3A)との体積割合は、前者/後者=99/1〜1/99、好ましくは95/5〜5/95、さらに好ましくは90/10〜10/90程度であってもよい。また、上層の一部をリサイクルする場合、上層の低沸点成分(3A)全体に対して、例えば、3〜90体積%、好ましくは5〜80体積%(例えば、10〜75体積%)、さらに好ましくは15〜65体積%(例えば、20〜60体積%)程度をリサイクルしてもよい。さらに、下層の一部をリサイクルする場合、下層の低沸点成分(3A)全体に対して、例えば、5〜95体積%、好ましくは10〜90体積%(例えば、15〜85体積%)、さらに好ましくは20〜80体積%(例えば、25〜75体積%)程度をリサイクルしてもよい。
【0116】
なお、反応系などに循環させる低沸点成分(3A)は、必要に応じて、慣用の方法(例えば、後述の抽出法など)により、アセトアルデヒドを分離して循環させてもよい。
【0117】
方法(b)では、デカンターから排出した低沸点成分(3A)を、分離・リサイクル工程に供給する前に、バッファー機能を備えた貯蔵器(バッファータンクなど)内で低沸点成分(3A)を滞留させる。このような貯蔵器に一時的に低沸点成分(3A)を滞留させることで、流量の変動を貯蔵器内でより一層緩和し、分離・リサイクル工程に流量を一定又はほぼ一定として低沸点成分(3A)を供給でき、安定運転が可能となる。
【0118】
バッファー機能を備えた貯蔵器は、前記と同様に、流量の変動の程度などに基づいて選択できるが、低沸点成分(3A)の滞留時間を目安に選択してもよい。貯蔵器において、低沸点成分(3A)の滞留時間は、特に制限されないが、例えば、0.5分以上[例えば、1分以上(例えば、1.5分〜3時間)]、好ましくは2分以上[例えば、3分以上(例えば、4〜60分)]、さらに好ましくは6分以上(例えば、8〜50分)、特に12分以上(例えば、15〜40分程度)であってもよい。
【0119】
なお、デカンターにおいてある程度流量変動を抑制することができれば、貯蔵器の滞留時間を短くすることもできる。そのため、貯蔵器の滞留時間は、デカンターの滞留時間と関連づけて決定してもよく、例えば、デカンターにおける滞留時間と貯蔵器における滞留時間との総時間が、1分以上[例えば、1.5分以上(例えば、2分〜3時間)]、好ましくは3分以上[例えば、4分以上(例えば、5〜60分)]、さらに好ましくは6分以上(例えば、8〜50分)、特に12分以上(例えば、15〜40分程度)となるように貯蔵器を選択してもよい。
【0120】
なお、バッファー機能を備えた貯蔵器は、分離・リサイクル工程よりも前の工程に設置すればよく、後述のアセトアルデヒド分離塔の塔底部に設けてもよい。
【0121】
方法(c)では、デカンターから排出する低沸点成分(3A)の量そのものを一定(又はほぼ一定)[例えば、デカンターから排出する低沸点成分(3A)の平均流量を100とするとき、プロセス全体を通してデカンターから排出する低沸点成分(3A)の量を90〜100(例えば、95〜105)、好ましくは98〜102、さらに好ましくは98.5〜101.5程度]にする。この方法(c)では、デカンターからの低沸点成分(3A)の排出量を実質的に固定化するため、安定運転のためには、デカンター内において流量変動を緩和できる方法(例えば、前記方法(2)など)と好適に組み合わせてもよい。
【0122】
なお、デカンターから低沸点成分(3A)を排出する位置(排出口の位置)は、特に制限されず、デカンターの上部、中部、下部、底部などのいずれであってもよく、これらを複数組み合わせて排出口を設けてもよい。また、デカンター内で、低沸点成分(3A)が、上層、下層に分離する場合、上層に対応する位置、下層に対応する位置、これらの両位置のいずれから排出してもよい。
【0123】
(分離・リサイクル工程)
分離・リサイクル工程では、凝縮工程により、凝縮した状態(液体状態)で排出又は供給された低沸点成分(3A)からアセトアルデヒドを分離するとともに、このアセトアルデヒドが分離された分離液を反応系からアセトアルデヒドの分離に至るまでの工程にリサイクルする。
【0124】
なお、排出された低沸点成分(3A)は、反応器の塔頂から蒸気成分を抜き出した成分、高沸点成分(3C)などをさらに含んでいてもよい。分離に供される低沸点成分(3A)には、アセトアルデヒド、ヨウ化メチルの他、酢酸メチル、水、その他カルボニル不純物(クロトンアルデヒド、ブチルアルデヒドなど)を含んでいる場合が多い。このような低沸点成分(3A)において、アセトアルデヒドの割合は0.05〜50重量%程度であってもよく、ヨウ化メチルの割合は0.5〜90重量%程度であってもよく、酢酸メチルの割合は0〜15重量%程度であってもよく、酢酸の割合は0〜80重量%程度であってもよく、水の割合は0.1〜40重量%程度であってもよい。
【0125】
アセトアルデヒドの分離方法としては、アセトアルデヒドを分離した分離液が得られる方法であれば特に限定されず、抽出、蒸留(アセトアルデヒドを含むプロセス液を一本又は複数の蒸留塔で分離蒸留する方法など)、これらの組み合わせ、抽出蒸留などの慣用の方法が利用できる。
【0126】
代表的には、低沸点成分(3A)を蒸留塔(アセトアルデヒド分離塔)に供給し、蒸留により、アセトアルデヒドを含む低沸点成分(4A)と、アセトアルデヒドが分離された分離液(缶出液又は塔底液)とに分離する方法を好適に利用できる。なお、蒸留塔に水を仕込み、圧力または/および蒸留温度を上げて、パラアルデヒド、メタアルデヒドの生成を抑制してもよい。さらに、蒸留条件を変えることでパラアルデヒド、メタアルデヒドを積極的に発生させて蒸留塔缶出からパラアルデヒド、メタアルデヒドの形でアセトアルデヒドを分離除去してもよい。この場合、塔内にメタノールなど、メタアルデヒドを溶解させる溶剤を仕込み、メタアルデヒドの結晶化によるつまりを抑制してもよい。
【0127】
通常、アセトアルデヒドが蒸留により分離された分離液は、有用成分であるヨウ化メチルを含む分離液(高沸点成分(4B))として分離され、リサイクルされる。なお、アセトアルデヒドの分離に先立って、コンデンサーや冷却器などを利用することによりオフガス成分を予め除去してもよい。
【0128】
アセトアルデヒド分離塔としては、例えば、慣用の蒸留塔、例えば、棚段塔、充填塔、フラッシュ蒸留塔などが使用できるが、通常、棚段塔、充填塔などの精留塔を使用してもよい。
【0129】
アセトアルデヒド分離塔において、温度(塔頂温度)及び圧力(塔頂圧力)は、アセトアルデヒドと他の成分(特にヨウ化メチル)との沸点差を利用して、低沸点成分(3A)から、少なくともアセトアルデヒドを低沸点成分(4A)として分離可能であれば特に制限されず、アセトアルデヒド及びヨウ化メチル並びに蒸留塔の種類などに応じて選択できる。例えば、棚段塔の場合、塔頂圧力は、絶対圧力で、10〜1000kPa、好ましくは10〜700kPa、さらに好ましくは100〜500kPa程度である。塔内温度(塔頂温度)は、例えば、10〜80℃、好ましくは20〜70℃、さらに好ましくは40〜60℃程度である。理論段は、例えば、5〜80段、好ましくは8〜60段、さらに好ましくは10〜50段程度であってもよい。
【0130】
アセトアルデヒド分離塔において、還流比は、前記理論段数に応じて、1〜1000、好ましくは10〜800、さらに好ましくは50〜600(例えば、100〜600)程度から選択できる。
【0131】
アセトアルデヒドが分離された分離液(又は高沸点成分(4B))のリサイクルは、反応系からアセトアルデヒドの分離に至るまでの工程であれば特に限定されず、反応工程(又は反応器)、フラッシュ蒸留工程(又はフラッシュ蒸留塔)、酢酸回収工程(又は蒸留塔)などのいずれであってもよく、前記図の例のように、アセトアルデヒド分離塔にリサイクルしてもよく、これらを組み合わせてリサイクルしてもよい。通常、アセトアルデヒドが分離された分離液(又は高沸点成分(4B))は、少なくとも反応器にリサイクルする場合が多い。
【0132】
分離液(又は高沸点成分(4B))は、直接的にリサイクルしてもよく、バッファー機能を備えた貯蔵器(バッファータンクなど)を介してリサイクルしてもよい。このようなバッファー機能を備えた貯蔵器を用いることにより、分離液の流量が変動する場合であっても、貯蔵器内で流量変動を緩和して、一定又はほぼ一定の流量で分離液をリサイクルしやすく、そのため、リサイクルに供する工程に及ぼす流量変動の影響を低減することができる。
【0133】
なお、分離液(高沸点成分(4B))の流量の変動は、例えば、分離液の平均流量を100とするとき、プロセス全体を通して、分離液の流量が、85〜115(例えば、90〜110)、好ましくは93〜107(例えば、94〜106)、さらに好ましくは95〜105となる程度であってもよい。
【0134】
バッファー機能を備えた貯蔵器は、前記凝縮工程の場合と同様に、流量の変動の程度などに基づいて選択できるが、分離液の滞留時間を目安に選択してもよい。貯蔵器において、分離液の滞留時間は、特に制限されないが、例えば、1分以上(例えば、2分〜3時間)、好ましくは3分以上(例えば、4〜60分)、さらに好ましくは12分以上(例えば、15〜40分程度)であってもよい。
【0135】
バッファー機能を備えた貯蔵器を介して分離液をリサイクルする場合、分離液(高沸点成分(4B))の流量の変動を小さくすることができ、例えば、分離液の平均流量を100とするとき、プロセス全体を通して、分離液の流量を、90〜110(例えば、93〜107)、好ましくは95〜105、さらに好ましくは96〜104(例えば、97〜103)程度とすることができる。
【0136】
なお、分離液(高沸点成分(4B))をアセトアルデヒド分離塔にリサイクルする場合、分離塔での流量変動を高レベルで抑えるため、分離塔にリサイクルする高沸点成分(4B)の流量を一定又はほぼ一定[例えば、分離液の平均流量を100とするとき、プロセス全体を通して、分離塔にリサイクルする分離液の流量を95〜105、好ましくは97〜103、さらに好ましくは98〜102(例えば、99〜101)程度]としてもよい。
【0137】
分離されたアセトアルデヒドを含む低沸点成分(4A)は、そのまま排出してもよいが、ヨウ化メチルなどの有用成分を含む場合がある。そのため、さらに、低沸点成分(4A)から回収したヨウ化メチル(又はヨウ化メチルを含む成分、例えば、ヨウ化メチル、酢酸メチルなどを含む成分)をリサイクルしてもよい。
【0138】
低沸点成分(4A)から、アセトアルデヒドと、ヨウ化メチル(又はヨウ化メチルを含む成分)とを分離する方法としては、特に限定されず、慣用の方法(例えば、抽出、蒸留など)を用いることができる。代表的には、(i)低沸点成分(4A)を蒸留し、ヨウ化メチルとアセトアルデヒドを分離する方法、(ii)アセトアルデヒドが水と混和し、ヨウ化メチルが水と混和しない性質を利用し、ヨウ化メチルとアセトアルデヒドの分離に水抽出を用いる方法などが挙げられる。メタアルデヒドなどの生成を抑制するという観点からは、水抽出する方法(ii)が好ましい。この方法は、エステルなどの分解などによる蒸留液中の水素イオン濃度の上昇により、パラアルデヒド、メタアルデヒドの生成を抑制できるため、効率よくアセトアルデヒドを高濃度に濃縮、除去できる。
【0139】
抽出温度および抽出時間は、特に限定されず、例えば、温度0℃〜100℃で、1秒〜1時間程度抽出してもよい。抽出圧力は、特に限定されず、コスト的側面などから有利な条件を選ぶことができる。抽出器としては、例えば、ミキサーとセトラーの組み合わせ、スタティックミキサーとデカンターの組み合わせ、RDC(rotated disk contactor)、Karr塔、スプレー塔、充填塔、多孔板塔、邪魔板塔、脈動塔などを用いることができる。
【0140】
ヨウ化メチル(又はヨウ化メチルを含む成分)のリサイクルは、反応系からアセトアルデヒドの分離に至るまでの工程であれば特に限定されず、反応工程(又は反応器)、フラッシュ蒸留工程(又はフラッシュ蒸留塔)、酢酸回収工程(又は蒸留塔)などのいずれであってもよく、前記図の例のように、アセトアルデヒド分離塔にリサイクル(高沸点成分(4B)としてリサイクル)してもよく、これらを組み合わせてリサイクルしてもよい。
【実施例】
【0141】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0142】
(実施例1)
図1の装置(又はプロセス)において、バッファータンク5を介することなく、低沸点成分(3A)をアセトアルデヒド分離塔6に供給したこと以外は、図1の通りに、連続的に酢酸製造プロセスを行った。以下にプロセスの詳細を示す。
【0143】
反応器1に、ヨウ化メチル13重量%、水8重量%、酢酸メチル1.3重量%、酢酸73.6重量%、ヨウ化リチウム5重量%、ロジウム800重量ppmの組成の反応液を仕込んでプロセスを開始した。プロセスを通じて、反応器1からフラッシャー2に供給される反応液の流量は、平均流量に対して±1.6%程度の範囲で変動した。フラッシャー2において、反応液全体の27重量%程度を低沸点成分(2A)としてスプリッターカラム3に供給し(平均流量に対して±1%の範囲で流量が変動し)、残りの高沸点成分(2B)は反応器1にそのままリサイクルした。なお、揮発した低沸点成分(2A)の一部(約19体積%)は、ホールドタンク9に供給して除熱し、反応器1にリサイクルした。
【0144】
スプリッターカラム3では、蒸留により、低沸点成分(3A)(約50体積%)と、酢酸を含む流分(3B)と、高沸点成分(3C)とに分離し、酢酸を含む流分(3B)はサイドカットされ、高沸点成分(3C)はそのまま反応器にリサイクルした。なお、スプリッターカラム3では、ライン12を通じて供給された成分と、後述するライン30を通じて供給された成分との総量を蒸留し、低沸点成分(3A)として分離した。
【0145】
一方、低沸点成分(3A)は、デカンター4に供給されたが、その際、平均流量(48.5m/時間)に対して±5%の範囲で流量が変動した。低沸点成分(3A)の組成は、ヨウ化メチル61重量%、酢酸メチル6重量%、酢酸6重量%、水24重量%、アセトアルデヒド0.27重量%であった。
【0146】
デカンター4内では、低沸点成分(3A)が、上層と下層とに分離した(前者/後者(体積比)=1.1/1)。そして、デカンター4内にホールドされる低沸点成分(3A)の液面レベルおよび界面レベルをほぼ一定(液面高さの変動が平均液面高さの±1%程度、界面高さ(又は下層の液面高さ)の変動が平均界面高さの±1%程度)に保持するように、前記低沸点成分(3A)をライン17およびライン18を介して排出した。すなわち、ライン17およびライン18に排出する低沸点成分(3A)の流量を、デカンター4に供給される低沸点成分(3A)の流量変動に対応させて変動させること、及びデカンター4内での低沸点成分(3A)の滞留時間を調整することにより、デカンター4内の液面レベルおよび界面レベルをほぼ一定に保持した。
【0147】
排出した低沸点成分(3A)は、その一部をライン17aおよびライン18aを通じて、リサイクルすることにより、その流量がほぼ一定(流量の変動が平均流量に対して±1.5%程度)となるように、ライン19(又はライン20)に供給され、そのまま蒸留塔6に供給された。ライン19に供給する流量は、ライン17aおよびライン18aを通じて反応系(反応器)に循環する低沸点成分(3A)の量を変動させること、及びデカンター4内での低沸点成分(3A)の滞留時間を調整することにより調整した。なお、デカンター4における上層の滞留時間は13分、下層の滞留時間は6分であった。すなわち、ライン17aおよびライン18aの流量をデカンター4から排出される低沸点成分(3A)の流量変動に対応させて変動させることにより、ライン17bおよびライン18bに供給される低沸点成分(3A)の量はほぼ一定とすることができた。例えば、ライン18aに供給される低沸点成分(3A)の流量は±10%程度の範囲で変動した。そのため、ライン19に供給する低沸点成分(3A)の流量(さらには蒸留塔6に供給する低沸点成分(3A)の流量)をほぼ一定とできた。
【0148】
なお、上層の低沸点成分(3A)のうち、ライン19(又はライン17b)に供給した低沸点成分(3A)の割合はデカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の13.5体積%(上層全体の25体積%に相当)であり、下層の低沸点成分(3A)のうち、ライン19(又はライン18b)に供給した低沸点成分(3A)の割合はデカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の13.5体積%(下層全体の28体積%に相当)であった。
【0149】
すなわち、デカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の27体積%をライン19(又は蒸留塔6)に供給し、デカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の73体積%をリサイクルした。なお、リサイクルの内訳は、反応器1にデカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の34体積%[上層から0体積%、下層から34体積%(下層全体の72体積%に相当)]、スプリッターカラム3にデカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の39体積%(上層全体の75体積%に相当)であった。
【0150】
なお、蒸留塔6に供給される低沸点成分(3A)の組成は、ヨウ化メチル46重量%、酢酸メチル6重量%、酢酸10重量%、水37重量%、アセトアルデヒド0.3重量%、ヨウ化水素0.01重量%であった。
【0151】
蒸留塔6(80段の蒸留塔、還流比170、仕込み段:上から70段目、塔頂温度54℃、塔底温度82℃)では、塔頂から低沸点成分(3A)の0.3体積%を低沸点成分(4A)として抜き取り、残部を高沸点成分(4B)として塔底からバッファータンク7を介することなく、全量を反応器1にリサイクルした。なお、塔頂から抜き出した低沸点成分(4A)の組成は、ヨウ化メチル42重量%、水2重量%、アセトアルデヒド56重量%であった。
【0152】
また、塔頂から抜き取った低沸点成分(4A)は、抽出器8において、水抽出によりアセトアルデヒドが除去され、ヨウ化メチルを含む抽残液として分離された。そして、抽残液は、蒸留塔6の塔底(10段目)と反応器1とに分けてそのままリサイクルした。なお、蒸留塔6にリサイクルする量は一定とした。なお、低沸点成分(4A)のアセトアルデヒド抽出率は98%であった。前記80段蒸留塔の塔頂抜取液全量34kg/hrを処理することにより、19kg/hrのアセトアルデヒドを除去できた。これにより、反応器でのアセトアルデヒド生成量32kg/hrの59%を除去できた。
【0153】
以上のプロセスを連続的に行ったが、プロセスを安定的に運転できた。なお、所定の時間(200時間)運転を行ったのち、反応器内のアセトアルデヒド濃度を測定したところ、390ppmであり、アセトアルデヒドを高いレベルで除去しつつ安定運転できたことがわかった。この結果、得られる製品酢酸の過マンガン酸タイムは240分であった。
【0154】
(実施例2)
実施例1において、デカンター4から排出した低沸点成分(3A)をリサイクルすると共に蒸留塔6に供給するまでの工程を以下のようにしたこと以外は、実施例1と同様にした。
【0155】
上層の低沸点成分(3A)のうち、ライン19(又はライン17b)に供給した低沸点成分(3A)の割合はデカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の0体積%とし(すなわち、上層の低沸点成分(3A)はライン19又はライン17bに供給することなく、すべてリサイクルし)、下層の低沸点成分(3A)のうち、ライン19(又はライン18b)に供給した低沸点成分(3A)の割合はデカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の27体積%(下層全体の57体積%に相当)とした。
【0156】
すなわち、デカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の27体積%をライン19(又は蒸留塔6)に供給し、デカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の73体積%をリサイクルした。リサイクルの内訳は、反応器1にデカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の34体積%[上層から13体積%(上層全体の25体積%に相当)、下層から21体積%(下層全体の43体積%に相当)]、スプリッターカラム3にデカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の39体積%(上層全体の75体積%に相当)であった。
【0157】
上記工程により、排出した低沸点成分(3A)は、その一部をライン18aを通じて、リサイクルすることにより、その流量がほぼ一定(流量の変動が平均流量に対して±2.5%程度)となるように、ライン19(又はライン20)に供給され、そのまま蒸留塔6に供給された。ライン19に供給する流量は、ライン18aを通じて反応系(反応器)に循環する低沸点成分(3A)の量を変動させることより調整した。すなわち、ライン18aの流量をデカンター4から排出される低沸点成分(3A)の流量変動に対応させて変動させることにより、ライン18bに供給される低沸点成分(3A)の量はほぼ一定とすることができた(ライン18aに供給される低沸点成分(3A)の流量は±17%程度の範囲で変動した)。そのため、ライン19に供給する低沸点成分(3A)の流量(さらには蒸留塔6に供給する低沸点成分(3A)の流量)をほぼ一定とできた。
【0158】
なお、蒸留塔6に供給される低沸点成分(3A)の組成は、ヨウ化メチル91重量%、酢酸メチル7重量%、酢酸1重量%、水0.3重量%、アセトアルデヒド0.1重量%、ヨウ化水素0.001重量%であった。
【0159】
蒸留塔6(80段の蒸留塔、還流比170、仕込み段:上から70段目、塔頂温度54℃、塔底温度82℃)では、塔頂から低沸点成分(3A)の0.3体積%を低沸点成分(4A)として抜き取り、残部を高沸点成分(4B)として塔底からバッファータンク7を介することなく、全量を反応器1にリサイクルした。なお、塔頂から抜き出した低沸点成分(4A)の組成は、ヨウ化メチル43重量%、水1重量%、アセトアルデヒド56重量%であった。
【0160】
また、塔頂から抜き取った低沸点成分(4A)は、抽出器8において、水抽出によりアセトアルデヒドが除去され、ヨウ化メチルを含む抽残液として分離された。そして、抽残液は、蒸留塔6の塔底(10段目)と反応器1とに分けてそのままリサイクルした。なお、蒸留塔6にリサイクルする量は一定とした。なお、低沸点成分(4A)のアセトアルデヒド抽出率は98%であった。前記80段蒸留塔の塔頂抜取液全量34kg/hrを処理することにより、20kg/hrのアセトアルデヒドを除去できた。これにより、反応器でのアセトアルデヒド生成量32kg/hrの63%を除去できた。
【0161】
以上のプロセスを連続的に行ったが、プロセスを安定的に運転できた。なお、所定の時間(210時間)運転を行ったのち、反応器内のアセトアルデヒド濃度を測定したところ、375ppmであり、アセトアルデヒドを高いレベルで除去しつつ安定運転できたことがわかった。この結果、得られる製品酢酸の過マンガン酸タイムは260分であった。
【0162】
(実施例3)
実施例1において、デカンター4から排出した低沸点成分(3A)をリサイクルすると共に蒸留塔6に供給するまでの工程を以下のようにしたこと以外は、実施例1と同様にした。
【0163】
実施例1と同様に、デカンター4内にホールドされる低沸点成分(3A)の液面レベルおよび界面レベルをほぼ一定(液面高さの変動が平均液面高さの±1%程度、界面高さ(又は下層の液面高さ)の変動が平均界面高さの±1%程度)に保持するように、前記低沸点成分(3A)をライン17を介してデカンター4の上部(上層に対応する部位)から排出した。すなわち、ライン17に排出する低沸点成分(3A)の流量を、デカンター4に供給される低沸点成分(3A)の流量変動と同様に、変動させることにより、デカンター4内の液面レベルおよび界面レベルをほぼ一定に保持した。
【0164】
ライン19に供給する流量は、ライン17aに供給する流量を変動させることで比較的小さくできた(平均流量に対して±1.5%程度)。
【0165】
上層の低沸点成分(3A)のうち、ライン19(又はライン17b)に供給した低沸点成分(3A)の割合はデカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の27体積%(上層全体の51体積%に相当)とし、下層の低沸点成分(3A)のうち、ライン19(又はライン18b)に供給した低沸点成分(3A)の割合はデカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の0体積%とし(下層全体の0体積%に相当、すなわち、下層の低沸点成分(3A)はライン19又はライン18bに供給することなく、すべてリサイクルし)た。
【0166】
すなわち、デカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の27体積%をライン19(又は蒸留塔6)に供給し、デカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の73体積%をリサイクルした。リサイクルの内訳は、反応器1にデカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の47体積%[上層から0体積%、下層から47体積%(下層全体の100体積%に相当)]、スプリッターカラム3にデカンター4に供給された低沸点成分(3A)全体の39体積%(上層全体の75体積%に相当)であった。
【0167】
そして、この排出された低沸点成分(3A)をバッファータンク5に供給し、滞留時間3分で滞留させることにより、バッファータンク5内で流量の変動を緩和し、低沸点成分(3A)を一定の流量として蒸留塔6に供給した。
【0168】
なお、蒸留塔6に供給される低沸点成分(3A)の組成は、ヨウ化メチル3重量%、酢酸メチル4重量%、酢酸19重量%、水73重量%、アセトアルデヒド0.5重量%、ヨウ化水素0.01重量%であった。
【0169】
また、蒸留塔6で分離された高沸点成分(4B)は、バッファータンク7を介して、その全量をスプリッターカラム3にリサイクルした。なお、蒸留塔6から分離された高沸点成分(4B)の流量は±4%程度変動したが、バッファータンク7を介することにより、ライン23を通じてリサイクルされる高沸点成分(4B)の流量をほぼ一定とすることができた。
【0170】
以上のプロセスを連続的に行ったが、プロセスを安定的に運転できた。
【0171】
(実施例4)
図1の装置(又はプロセス)の通りに、連続的に酢酸製造プロセスを行った。なお、バッファータンク5を経由すること以外、仕込みなどは実施例2と同じ条件とした。
【0172】
実施例2と同様に、デカンター4内にホールドされる低沸点成分(3A)の液面レベルおよび界面レベルをほぼ一定(液面高さの変動が平均液面高さの±1%程度、界面高さ(又は下層の液面高さ)の変動が平均界面高さの±1%程度)に保持するように、前記低沸点成分(3A)をライン18を介してデカンター4の下部(下層に対応する部位)から排出した。すなわち、ライン18に排出する低沸点成分(3A)の流量を、デカンター4に供給される低沸点成分(3A)の流量変動と同様に、変動させることにより、デカンター4内の液面レベルおよび界面レベルをほぼ一定に保持した。そして、この排出された低沸点成分(3A)をバッファータンク5に供給し、滞留時間3分で滞留させることにより、バッファータンク5内で流量の変動を緩和し、低沸点成分(3A)を一定の流量として蒸留塔6に供給した。
【0173】
なお、蒸留塔6に供給される低沸点成分(3A)の組成は、ヨウ化メチル91重量%、酢酸メチル7重量%、酢酸1重量%、水0.3重量%、アセトアルデヒド0.1重量%、ヨウ化水素0.001重量%であった。
【0174】
また、蒸留塔6で分離された高沸点成分(4B)は、バッファータンク7を介して、その約80体積%を反応器1に、約20体積%を蒸留塔6にリサイクルした。なお、蒸留塔6にリサイクルする高沸点成分(4B)の流量は一定とした。また、蒸留塔6から分離された高沸点成分(4B)の流量は±4%程度変動したが、バッファータンク7を介することにより、ライン23を通じてリサイクルされる高沸点成分(4B)の流量をほぼ一定とすることができた。
【0175】
以上のプロセスを連続的に行ったが、プロセスを安定的に運転できた。
【0176】
(比較例1)
実施例2において、下層の低沸点成分(3A)を全て、ライン18bから19を介して蒸留塔6に供給し、バッファータンク7を介することなく高沸点成分(4B)の全量を反応器1にリサイクルしたこと以外は実施例2と同様にしてプロセスを行ったところ、デカンター4の下層液面や蒸留塔6に供給される低沸点成分(3A)の流量が大きく変動し、スプリッターカラム3および蒸留塔6での安定運転の継続が困難となったため、やむなく運転を中止した。
【0177】
(比較例2)
実施例3において、バッファータンク5を介することなく、上層の低沸点成分(3A)を全て、ライン17bから19を介して蒸留塔6に供給し、バッファータンク7を介することなく高沸点成分(4B)をリサイクル(約10体積%を反応器1に、約20体積%を蒸留塔6に、残りをスプリッターカラム3にリサイクル)したこと以外は実施例3と同様にしてプロセスを行ったところ、デカンター4の上層液面や蒸留塔6に供給される低沸点成分(3A)の流量が大きく変動し、スプリッターカラム3および蒸留塔6での安定運転の継続が困難となったため、やむなく運転を中止した。
【0178】
(比較例3)
実施例2において、ライン18aの流量をデカンター4から排出される低沸点成分(3A)の流量変動に対応させて変動させることなく、下層の低沸点成分(3A)のうち57体積%をライン19(又はライン18b)に供給したこと以外は実施例2と同様にして酢酸製造プロセスを行った。なお、ライン19に供給した低沸点成分(3A)の流量は、57±5体積%の範囲で変動した。
【0179】
蒸留塔6(80段の蒸留塔、還流比170、仕込み段:上から70段目、塔頂温度53〜55℃、塔底温度82℃)では、塔頂から低沸点成分(3A)の0.3体積%を低沸点成分(4A)として抜き取り、残部を高沸点成分(4B)として塔底からバッファータンク7を介することなく、全量を反応器1にリサイクルした。なお、塔頂から抜き出した低沸点成分(4A)の組成は、ヨウ化メチル37〜49重量%、水約1重量%、アセトアルデヒド50〜62重量%であった。
【0180】
また、塔頂から抜き取った低沸点成分(4A)は、抽出器8において、水抽出によりアセトアルデヒドが除去され、ヨウ化メチルを含む抽残液として分離された。そして、抽残液は、蒸留塔6の塔底(10段目)と反応器1とに分けてそのままリサイクルした。なお、蒸留塔6にリサイクルする量は一定とした。なお、低沸点成分(4A)のアセトアルデヒド抽出率は98%であった。前記80段蒸留塔の塔頂抜取液全量34kg/hrを処理することにより、17〜21kg/hrのアセトアルデヒドを除去できた。これにより、反応器でのアセトアルデヒド生成量32kg/hrの53〜66%を除去できた。
【0181】
以上のプロセスを連続的に行ったが、プロセスは若干変動した。なお、所定の時間(200時間)運転を行ったのち、反応器内のアセトアルデヒド濃度を測定したところ、350〜435ppmで変動し、この結果、得られる製品酢酸の過マンガン酸タイムは200分に低下した。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明の製造方法は、アセトアルデヒドを効率よく分離除去しつつ、酢酸を安定的に製造するプロセスとして極めて有用である。
【符号の説明】
【0183】
1…反応器
2…フラッシャー(蒸発槽)
3…スプリッターカラム
4…デカンター
4A…バッファー機能を備えたデカンター
5,7…バッファータンク
6…アセトアルデヒド分離塔
8…抽出装置
9…ホールドタンク
図1
図2