(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記弁軸内流路を上記流路から相違させて上記散水口からの吐出を止めたときに、上記空気混入孔が上記シャワー本体の流路に対し非連通状態になることを特徴とする請求項1または2記載のシャワー装置。
【背景技術】
【0002】
従来のシャワー装置においては、特許文献1のように、内部に湯水が通過する流路を形成し、この流路の先端に湯水を吐出する散水口を形成したシャワー本体を有して、流路中に内径を絞ったオリフィス部を設けるとともに空気を流路中の湯水に混入する空気混入孔をオリフィス部の下流に設けたことにより、湯水に空気を混合して散水することができるものがあった。
【0003】
特許文献1のシャワー装置では、さらにシャワー本体の外面に内部へ空気を導入する第1空気導入孔を設け、第1導入孔からシャワー本体内に取り込んだ空気を空気混入孔から流路に導入するとともに、空気混入孔の断面積を第1空気導入孔よりも小さく形成することにより、空気の導入に伴って発生する空気音を低減することができた。
【0004】
しかし、特許文献1のシャワー装置では、第1空気導入孔を設ける外側の部材と、空気混入孔を設ける内側の部材との二重構造になり、シャワー装置が大型化してしまうとともに、部品点数が増えて材料コストおよび加工コストが大きくなっていた。
また、第1空気導入孔が外部に露出しており、外観を損なうとともに、使用者がシャワー装置を使用する際に手で第1空気導入孔を塞いでしまうことがあるため、安定的な空気の混入を行うことができなかった。
【0005】
また、特許文献2には、オリフィス部および空気混入孔を設けた空気混入部材と、空気混入部材の下流に取り付けられ縮小テーパ部および拡大テーパ部を順に設けた略砂時計形のテーパ部材と、テーパ部材の下流に取り付けられるシャワー本体とからなるシャワー装置が記載されている。
特許文献2のシャワー装置では、散水中にはテーパ部材により空気混入部材への湯水の逆流を防止することができる。
【0006】
しかし、空気混入部材およびテーパ部材がシャワー本体に着脱可能に取り付けられているため、一時止水用の止水弁を有するシャワー本体に付け替えた場合に、止水弁を閉じると、シャワー本体の湯水がテーパ部材を通過して空気混入部材に逆流し、空気混入孔から漏出するおそれがあった。
また、空気混入孔と連通する空気導入孔が外部に露出しており、外観を損なうとともに、使用者がシャワー装置を使用する際に手で第1空気導入孔を塞いでしまうことがあるため、安定的な空気の混入を行うことができなかった。
【0007】
また、特許文献3には、外部に露出して空気を導入する空気導入孔と、この空気導入孔に連通して流路の湯水に空気を混入する空気混入孔との間に、湯水の漏出を防止する特別の逆止弁を設けたものがあった。
しかし、この逆止弁は、弁座を形成する部材と、弁体と、弁体を弁座へ付勢する付勢部材とからなるため、シャワー装置が大型化してしまうとともに、部品点数が増えて材料コストおよび加工コストが大きくなっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、湯水に空気を混合して散水するシャワー装置等において、低コストで空気音を低減しまたは空気混入孔からの湯水の漏出を防止できるシャワー装置および流路構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明において、上記課題が解決される手段は以下の通りである。
第1の発明は、内部に湯水が通過する流路を形成し、この流路の先端に上記湯水を吐出する散水口を形成したシャワー本体を有するシャワー装置において、内部を貫通する弁軸内流路を形成した弁軸を上記流路中に操作可能に配置し、上記弁軸内流路を上記流路に合致させることによって上記散水口からの吐水を行い、上記弁軸内流路を上記流路から相違させることによって上記散水口からの吐水を止める止水弁を設けるとともに、上記弁軸には外気に連通して上記流路に空気を導入する空気混入孔を形成したことを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、上記弁軸には手動操作用の操作ボタンが取り付けられ、上記空気混入孔がこの操作ボタンに遮蔽されて外部から視認できなくなっていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、上記弁軸は、上記空気混入孔の形成位置よりも上流側の上記弁軸内流路に、上記湯水を高速化するオリフィス部を有し、上記弁軸と上記シャワー本体との間の水漏れを防止するシール部材が、上記オリフィス部より上流のシャワー本体の流路に配置されることを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、上記弁軸内流路を上記流路から相違させて上記散水口からの吐出を止めたときに、上記空気混入孔が上記シャワー本体の流路に対し非連通状態になることを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、上記弁軸が、上記シャワー本体に対して着脱可能に取り付けられていることを特徴する。
【0015】
第6の発明は、上記空気混入孔より下流の上記流路中に留水室を設け、上記シャワー本体を定置すべき所定のシャワーハンガーに取り付けた姿勢において、上記留水室に湯水が溜まり、上記空気混入孔がこの湯水に水没することを特徴とする。
【0016】
第7の発明は、上記空気混入孔は、上記シャワー本体と上記弁軸の操作ボタンとの間隙に連通し、この間隙から外気が取り入れられることを特徴とする。
【0017】
第8の発明に係る流路構造は、湯水が通過する流路を形成し、内部を貫通する弁軸内流路を形成した弁軸を上記流路中に操作可能に配置し、上記弁軸内流路を上記流路に合致させることによって湯水を通過させ、上記弁軸内流路を上記流路から相違させることによって上記散水口からの吐水を止める止水弁を設けるとともに、上記弁軸には外気に連通して上記流路に空気を導入する空気混入孔を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、内部を貫通する弁軸内流路を形成した弁軸を上記流路中に操作可能に配置し、上記弁軸内流路を上記流路に合致させることによって上記散水口からの吐水を行い、上記弁軸内流路を上記流路から相違させることによって上記散水口からの吐水を止める止水弁を設けるとともに、上記弁軸には外気に連通して上記流路に空気を導入する空気混入孔を形成したことにより、湯水に空気を混合させるために特別の部品を設けて部品点数を増やすことがなく、シャワー装置を小型化することができるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0019】
第2の発明によれば、上記弁軸には手動操作用の操作ボタンが取り付けられ、上記空気混入孔がこの操作ボタンに遮蔽されていることにより、空気を湯水に混入する際の空気音が外部に漏れるのを低減させることができる。また、操作ボタンによって空気混入孔が外部から視認できなくなっていることにより、シャワー装置の外観を損なうことがない。
【0020】
第3の発明によれば、上記弁軸は、上記空気混入孔の形成位置よりも上流側の上記弁軸内流路に、上記湯水を高速化するオリフィス部を有し、上記弁軸と上記シャワー本体との間の水漏れを防止するシール部材が、上記オリフィス部より上流のシャワー本体の流路に配置されることにより、上記弁軸内流路を上記流路から相違させることによって上記散水口からの吐水を止めたときに、上流の流路から供給される湯水がオリフィス部やその下流の流路に流れ込むことを確実に防止することができる。
【0021】
第4の発明によれば、上記弁軸内流路を上記流路から相違させて上記散水口からの吐出を止めたときに、上記空気混入孔が上記シャワー本体の流路に対し非連通状態になることにより、上流および下流の流路の湯水が空気混入孔から漏出することを防止することができる。このため、空気混入孔からの湯水の漏出防止のために特別な装置を設ける必要がなく、シャワー装置を小型化することができるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0022】
第5の発明によれば、上記弁軸が、上記シャワー本体に対して着脱可能に取り付けられていることにより、弁軸をシャワー本体から取り外して、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0023】
第6の発明によれば、上記空気混入孔より下流の上記流路中に留水室を設け、上記シャワー本体を定置すべき所定のシャワーハンガーに取り付けた姿勢において、上記留水室に湯水が溜まり、上記空気混入孔がこの湯水に水没することにより、空気混入孔に不純物が付着して目詰まりを起こすことを防止することができる。
【0024】
第7の発明によれば、上記空気混入孔は、上記シャワー本体と上記弁軸の操作ボタンとの間隙に連通し、この間隙から外気が取り入れられることにより、空気を取り入れる間隙が塞がれることが防止され、安定的に湯水に空気を混合することができる。
【0025】
第8の発明によれば、湯水が通過する流路を形成し、内部を貫通する弁軸内流路を形成した弁軸を上記流路中に操作可能に配置し、上記弁軸内流路を上記流路に合致させることによって湯水を通過させ、上記弁軸内流路を上記流路から相違させることによって上記散水口からの吐水を止める止水弁を設けるとともに、上記弁軸には外気に連通して上記流路に空気を導入する空気混入孔を形成したことにより、湯水に空気を混合させるために特別の部品を設けて部品点数を増やすことがなく、流路構造を簡素化することができるとともに、製造コストを低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係るシャワー装置1について説明する。
図1、
図3に示すように、シャワー装置1は、内部に湯水の流路2を形成し、流路2の先端に散水口3を形成したシャワー本体に、止水弁を具備してなる。
本明細書において、湯水とは、湯、水、または湯水の混合水を意味する。
【0028】
図2に示すように、シャワー本体は、把持部4と、頭部5と、散水板6と、散水板止めリング7とからなる。
止水弁は、弁軸8と、止水ボタン9と、吐水ボタン10と、2つのOリング11、11とを組み立ててなり、把持部4の流路2中に操作可能に配置される。
【0029】
シャワー本体の各部品や、弁軸8、止水ボタン9、吐水ボタン10の材料には、金属や樹脂を使用することができ、低コストである樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂の中でも、成形容易性の観点から熱可塑性樹脂を用いることがより好ましい。また、熱可塑性樹脂の中でも、剛性に優れるABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合)樹脂を用いることが特に好ましい。
第一実施形態では、各部品にABS樹脂を使用した。
【0030】
図3に示すように、把持部4と止水弁との間には水漏れ防止用の円筒状のシール部材12が配置され、把持部4と頭部5との間にも水漏れ防止用のOリング13が配置される。
シール部材12の材料には、各種の樹脂およびゴムを使用することができるが、耐塩素性に優れたEPDM(エチレン−プロピレンゴム)が好ましい。
【0031】
図2に示すように、把持部4は湾曲した筒状の部材であって、上流端にホース等と接続する接続部を形成し、下流端に頭部5と接続する接続筒部14を形成している。
また、把持部4の下流端の近傍には、流路2に交差する弁収納筒16を形成している。弁収納筒16は、把持部4の腹部から背部へと把持部4を上下に貫通している。
【0032】
図2、
図3に示すように、頭部5は、把持部4に外嵌する接続筒部15と、この接続筒部15の下流にドーム状の中空部17を有する部材であって、中空部17の下部は開放されて、散水板6を取り付けることができるようになっている。
散水板6は、頭部5の下部を覆う大きさの円板状に形成され、多数の小孔からなる散水口3が形成されている。散水板6の外縁には頭部5の中空部17に内接する筒状の立ち上がり部18が設けられるとともに、この立ち上がり部18から外方に突出する環状のフランジ部19が設けられている。
散水板止めリング7は、頭部の外周にネジ結合される円筒状の部材であって、内方に支持部20を突出させている。この支持部20と頭部5の下部との間に、散水板6のフランジ部19を挟持することによって散水板6を頭部5に固定することができる。
【0033】
止水弁は、シャワー装置1の吐水状態と止水状態とを切り換えることができるとともに、吐水状態のときに流路2の湯水に空気を混合して散水することができる。
図4に示すように、止水弁の弁軸8は円柱状に形成された部材であって、径方向に貫通する弁軸内流路21を有するとともに、この弁軸内流路21中に流路断面積を絞るオリフィス部22を4つ形成している(
図4(c)(e))。オリフィス部22は、小さな楕円状に形成され、弁軸8をシャワー本体に取り付けた状態で、左右に並ぶように配置されている(
図4(a))。
弁軸8の外周面では、弁軸内流路21の上下に、水漏れ防止用のOリング11、11を取り付ける溝が刻設されている。
【0034】
また、オリフィス部22のやや下流には、下流側に向けて2つの空気混入孔23を開口させており、空気を導入するための空気導入路24がそれぞれの空気混入孔23から弁軸8の軸方向に延設されている(
図4(c)(d))。
弁軸8は、止水ボタン9に取り付けられる下端部が細く形成され、吐水ボタン10に取り付けられる上端部にはフランジが形成されている。
図5(a)(b)に示すように、下端部の周面には止水ボタン9に形成された1本の凸条26aに対応する位置に1本の凹溝25aが形成されている。下端面には、空気導入路24から径方向に延びる通気溝27、27が形成されている。
上端部の周面には吐水ボタン10に形成された2本の凸条26b、26cに対応する位置に2本の凹溝25b、25cが形成されている。上端面には空気導入路24からこの凹溝25b、25cへ延びる通気溝27、27が形成されている。
下端部の1本の凹溝25aおよび上端部の2本の凹溝25b、25cは全て位置や形状が異なり、それぞれを取り付けるべき凸条26a、26b、26c以外の凸条には取り付けることができないため、組み立てミスを防止することができる。
【0035】
また、
図5(c)(d)に示すように、弁軸8の下端面付近および上端面付近は径方向にわずかに膨出した膨出部28、28を設け、止水ボタン9および吐水ボタン10の対応する位置に設けられた溝29、29に嵌合することによって抜け止めされる。
弁軸8、止水ボタン9および吐水ボタン10は弾性変形可能な材料で形成されているため、強く引っ張ると弾性変形して嵌合を解除することができる。
【0036】
図5(a)(b)に示すように、止水ボタン9は有底の筒状に形成され、弁軸8の下側に取り付けられる。細い弁軸の下端部に外接できるように、止水ボタンの外筒の内側には内筒30が形成されている。内筒30の内周面には、弁軸の凹溝25aに対応する1本の凸条26aが形成されている。
吐水ボタン10は有蓋の筒状に形成され、弁軸8の上側に取り付けられる。吐水ボタン10の内周面には、弁軸8の2本の凹溝25b、25cにそれぞれ対応する2本の凸条26b、26cが形成されている。
また、
図5に示すように、止水ボタン9の底部の中心および吐水ボタン10の蓋部の中心には、弁軸8の空気導入路24、24に連通するボタン空気導入孔31が形成されている。
【0037】
止水ボタン9および吐水ボタン10の外径(直径)は、8〜40mmに設定することが好ましい。
上記外径を8mm未満にすると、止水ボタン9および吐水ボタン10が薄肉になってしまい、強度が不足してしまう。上記外径を10mm以上にするのがより好ましく、12mm以上にするのが特に好ましい。
また、上記外径を40mmよりも大きくすると、シャワー装置が大型化してしまう。上記外径を35mm以下にするのがより好ましく、30mm以下にすることが特に好ましい。
【0038】
また、止水ボタン9および吐水ボタン10の軸方向の長さは、30〜70mmに設定することが好ましい。
上記長さを30mm未満に設定すると、止水ボタン9および吐水ボタン10のシャワー本体からの突出量が小さすぎて、押し込むときに力が入りにくくなってしまう。上記長さを35mm以上とするのがより好ましく、45mm以上にするのが特に好ましい。
上記長さを70mmよりも大きく設定すると、止水ボタン9および吐水ボタン10のシャワー本体からの突出量が大きすぎて、指がかかりにくくなってしまう。上記長さを65mm以下とするのがより好ましく、60mm以下にするのが特に好ましい。
【0039】
図6に示すように、把持部4の弁収納筒16の外周面には、止水ボタン9および吐水ボタン10の凸条26a、26b、26c、26d、26eにそれぞれ対応する位置に摺動溝32を形成している。
凸条26b、26c、26d、26eと摺動溝32とが、止水ボタン9および吐水ボタン10と把持部4との間で回転を防止するため、弁軸内流路21を把持部4の流路2に平行に保つことができる。
さらに、止水ボタン9および吐水ボタン10の凸条26b、26c、26d、26eと摺動溝32との係合により、シャワー本体に対して止水弁を上下逆に取り付けることができなくなるため、組み立てミスを防止することができる。
【0040】
このシャワー装置を組み立てるには、まず把持部4の接続筒部14からシール部材12を弁収納筒16の上流まで挿入し、次にOリング11、11を取り付けた弁軸8を弁収納筒16に収容して上下から止水ボタン9および吐水ボタン10を取り付ける(
図2参照)。
次いで、把持部4の接続筒部14にOリング13を取り付けて、頭部5の接続筒部15に接続する。その後、頭部5の下部の開口から把持部4の接続筒部14にCリング33を取り付けて、把持部4と頭部5とを抜け止めする。
最後に、パッキン34および散水板6を間に挟み込んで散水板止めリング7を頭部5に取り付ける。
【0041】
シャワー装置において、シール部材12の流路P1(
図8参照)の断面積は、7mm
2以上に設定するのが好ましい。P1の断面積を7mm
2未満にすると、流路抵抗が大きくなりすぎて、散水量が不足してしまう。P1の断面積は、10mm
2以上にするのがより好ましく、15mm
2以上にするのが特に好ましい。
第一実施形態では、シール部材12の内径(直径)を5.5mmとし、P1の断面積を23.76mm
2とした。
【0042】
弁軸内流路21において、オリフィス部22より上流の流路P2(
図8参照)の内径(直径)は、シール部材12の内径以上で、かつ、シール部材12と接触して水漏れを防止するためにシール部材12の外径以下となるようにすることが好ましい。
第一実施形態では、P2の内径を6.5mmとした。
【0043】
4つのオリフィス部22の流路P3(
図8参照)の断面積の合計は、散水口3の断面積の合計以下になるように設定することが好ましい。P3の断面積の合計が散水口3の断面積の合計よりも大きくなると、オリフィス部22から散水口3までの流路2の水圧が大きくなり、空気混入孔23から湯水が漏出するおそれがある。
また、散水口3が目詰まりして上記流路2の水圧が大きくなった場合にも湯水が空気混入孔23から漏出するのを防止するために、P3の断面積の合計は散水口3の断面積の合計の80%以下となるようにすることがより好ましい。
【0044】
P3の断面積の合計は、7mm
2以上となるようにするのが好ましい。P3の断面積の合計を7mm
2未満にすると、流路抵抗が大きくなりすぎて散水量が不足してしまう。
また、P3の断面積の合計は、P2の断面積よりも小さく形成することが好ましい。P3の断面積の合計をP2の断面積以上にすると、オリフィス部22で湯水を高速化することができない。
第一実施形態では、P3の断面積の合計を10.72mm
2とした。
【0045】
オリフィス部22と下流の弁軸内流路21とが接続する位置P4(
図8参照)では、オリフィス部22出口のふちと下流の弁軸内流路21の内壁面との間に、0.5〜1.5mmの距離が開いていることが好ましい。
水が流出するオリフィス部22と、空気混入孔23が形成される弁軸内流路21の内壁面との間に上記のような距離を設けることで、空気混入孔23から確実に空気を混入させることができる。
第一実施形態では、P4でオリフィス部22出口のふちと下流の弁軸内流路21の内壁面との間に1.2mmの距離を設けた。
【0046】
把持部の接続筒部14の流路P5(
図8参照)の内径は、組み立て時にシール部材12を挿入できるように、シール部材12の外径以上に設定することが好ましい。
第一実施形態では、P5の内径を、シール部材12の外径以上の10mmに設定した。
【0047】
空気混入孔23、23の断面積の合計は、確実に空気を湯水に混入させるために、可能な限り大きく設定することが好ましい。
第一実施形態では空気混入孔23、23の断面積の合計を、5.58mm
2とした。
【0048】
図7において、白抜き矢印は湯水の流れを示し、破線矢印は空気の流れを示している。
このシャワー装置では、
図7(a)に示すように、上側の吐水ボタン10を押し込むと、把持部4の流路2に弁軸内流路21が合致し、散水口3から吐水を行うことができる。
このとき、湯水がオリフィス部22を通過して高速化し、オリフィス部22の下流で発生する負圧によって空気混入孔23から空気を湯水に混合し、肌の感触のよい散水を行うことができるとともに、湯水の消費量を見かけよりも少なくして節水することができる。
【0049】
また、
図7(b)に示すように、下側の止水ボタン9を押し込むと、弁軸内流路21が流路2から相違して、散水口3からの吐水を止めることができる。
このとき、弁軸内流路21および空気混入孔23は弁収納筒16の内周面によって塞がれ、上流および下流の流路2に連通しないため、水が空気混入孔23、空気導入路24を通過してボタン空気導入孔31から漏出することがない。
【0050】
浴室等において、このシャワー装置を定置すべき所定のシャワーハンガー(図示せず)に取り付けると、頭部が上側に位置し、把持部が下側に位置する姿勢になる(
図1参照)。
このとき、頭部5に残った湯水は、弁軸8の空気混入孔23の下流に形成された留水室35(
図4(d)参照)に溜まり、空気混入孔23がこの湯水に水没する。留水室35は、オリフィス部22や、オリフィス部22の上流の弁軸内流路21よりも広く形成されている。留水室35の湯水は、表面張力によってオリフィス部22や空気混入孔23から漏れ出すことなく留水室35に留まる。
【0051】
第一実施形態のシャワー装置1では、吐水と止水とを切り換える止水弁の弁軸8にオリフィス部22と空気混入孔23とを設けたことにより、湯水に空気を混合させるために特別の部品を設けて部品点数を増やすことがなく、シャワー装置1を小型化することができるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0052】
また、弁軸8にオリフィス部22が設けられ、弁軸8より上流のシャワー本体内にシール部材12が配置されていることにより、止水弁を操作して止水状態としたときに、上流の流路2から供給される湯水が弁軸内流路21、オリフィス部22、頭部5、または空気混入孔23に流れ込むことを確実に防止することができる。
【0053】
さらに、弁軸内流路21をシャワー本体の流路2から相違させて湯水の吐出を止めたときに、空気混入孔23がシャワー本体の流路2に対して非連通状態になることにより、止水弁を止水状態にするだけで上流および下流の流路2の湯水が空気混入孔23から漏出することを防止することができる。このため、空気混入孔23からの湯水の漏出防止のために特別な装置を設ける必要がなく、シャワー装置1を小型化することができるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0054】
また、止水ボタン9または吐水ボタン10を弁軸8に着脱することにより、弁軸8をシャワー本体に対して着脱可能に取り付けることができるため、弁軸8をシャワー本体から取り外して、清掃や、破損した際の交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0055】
また、シャワー本体を所定のシャワーハンガーに取り付けた姿勢において、留水室35に湯水が溜まり、空気混入孔23がこの湯水に水没することにより、水溶性の不純物は留水室35に溜まった湯水に溶出し、水より軽い固形の不純物はこの湯水に浮くため、空気混入孔23やオリフィス部22に不純物が付着して目詰まりを起こすことを防止することができる。
【0056】
さらに、止水ボタン9および吐水ボタン10にボタン空気導入孔31を形成したことにより、外気から空気混入孔23までに空気が通過する通路の抵抗が小さくなり、効率的に空気を湯水に混合することができる。
【0057】
<第二実施形態>
第一実施形態では散水板止めリング7によって散水板6を頭部5に取り付けていたのに対し、第二実施形態のシャワー装置1は、
図9に示すように、散水板6の中心を貫通する止めネジ36によって散水板6を頭部5に取り付けている。
このため、第二実施形態の散水板6の中心には止めネジ36を通すための孔が穿設されている。また、頭部5のドーム状の中空部17には、止めネジ36に螺合する雌ネジを内面に刻設した雌ネジ筒(図示せず)が天面から下垂されている。
頭部5の下方から散水板6を当て、止めネジ36を散水板6に通して雌ねじ筒に螺合することにより、止めネジ36の笠部37が下方から散水板6を支持して頭部5に固定することができる。
【0058】
また、第一実施形態では止水ボタン9および吐水ボタン10に設けた凸条26a、26b、26cと弁軸8に設けた凹溝25a、25b、25cとによって位置決めしていたのに対し、第二実施形態の止水弁では、
図11に示すように、弁軸8に設けた凸条39a、39b、39c、39d、39e、39fと止水ボタン9および吐水ボタン10に設けた切り欠き38a、38b、38c、38d、38e、38fとによって位置決めしている。
図11(a)(b)に示すように、弁軸8の空気導入路24の内周面には、上部と下部で各3本の凸条39a、39b、39c、39d、39e、39fを形成している。上部の3本の凸条39a、39b、39cと下部の3本の凸条39d、39e、39fとでは、形成される位置および軸方向長さが異なり、弁軸8の上部には吐水ボタン10を正しい角度でしか取り付けられず、弁軸8の下部には止水ボタン9を正しい角度でしか取り付けられないようになっている。
止水ボタン9および吐水ボタン10には、弁軸8に内嵌する内筒40、41をそれぞれ形成している。それぞれの内筒40、41は、弁軸8の凸条39a、39b、39c、39d、39e、39fを取り付けるべき位置に切り欠き38a、38b、38c、38d、38e、38fを形成している。
【0059】
また、
図11(c)(d)に示すように、止水ボタン9および吐水ボタン10の内筒40、41の外周面には、各2つの突起42、42、42、42が設けられ、弁軸8の周面の対応する位置に開口された嵌合孔43、43、43、43に嵌合することによって抜け止めされる。
第一実施形態と同様に、弁軸8、止水ボタン9および吐水ボタン10は弾性変形可能な材料で形成されているため、強く引っ張ると弾性変形して嵌合を解除することができる。
このように弁軸8と止水ボタン9および吐水ボタン10とが着脱可能であることにより、第一実施形態と同様に、弁軸8その他の止水弁の部品をシャワー本体に対して着脱可能に取り付けることができ、容易にメンテナンスや交換をすることができる。
【0060】
また、
図11(a)(b)、
図12(b)(c)に示すように、止水ボタン9および吐水ボタン10の外周面は、一部が軸方向に延長された延長部44a、44bが形成され、止水弁を組み立てると、止水ボタン9および吐水ボタン10の延長部44a、44bが把持部4の流路2の周囲を覆うようになっている。延長部44a、44bは、弁軸内流路21の上流側にあたる側面だけに形成されている。
図12に示すように、把持部4では、シャワー装置1組み立て時にこの延長部44a、44bが位置する箇所の左右に凸条45、45を設けているため、把持部4と止水弁との回転が防止され、弁軸内流路21を把持部4の流路2に平行に保つことができる。
また、把持部4では、シャワー装置1組み立て時にこの延長部44a、44bが位置する箇所の反対側に突起46、46を設けている。止水弁の上流および下流を逆にして把持部4に取り付けようとすると、延長部44a、44bがこの突起46、46にぶつかって組み立てることができないため、組み立てミスを防止することができる。
【0061】
また、第一実施形態では弁軸8の弁軸内流路21に2つのオリフィス部22を形成したのに対し、
図10(a)(e)に示すように、第二実施形態では弁軸8の弁軸内流路21に5つのオリフィス部22を形成している。
第二実施形態の弁軸のオリフィス部22は、第一実施形態のオリフィス部よりも小さく細長い楕円状に形成されている。弁軸8をシャワー本体に取り付けた状態で、5つのオリフィス部22が左右に並ぶように配置されている点は、第一実施形態と同様である。
【0062】
また、第一実施形態では弁軸8の外周面に刻設した溝にOリング11、11を外嵌していたのに対し、第二実施形態の止水弁では、
図9、
図13に示すように、弁軸8の外周面にOリング用の溝は刻設されず、Oリング11、11はOリング押さえ部材47、47によって把持部4の弁収納筒16に保持される。
図9、
図13に示すように、第二実施形態では、弁収納筒16の上端に刻設された溝にOリング11が収容され、Oリング押さえ部材47によって上方に外れないように押さえられる。また、弁収納筒16の下端に刻設された溝にもOリング11が収容され、Oリング押さえ部材47によって下方に外れないように押さえられる。
各Oリング押さえ部材47は、弁軸8を通すことができるとともにOリング11を通さない内径の環状部48と、この環状部48から軸方向に延びる2本の取付アーム部49とを有し、取付アーム部49先端の突出部が頭部5に形成された溝(図示せず)に嵌合することによってシャワー本体に取り付けられる。
【0063】
図13において、白抜き矢印は湯水の流れを示し、破線白抜き矢印は空気の流れを示している。
第一実施形態では空気混入孔23に連通するボタン空気導入孔31を止水ボタン9および吐水ボタン10に穿設していたのに対し、第二実施形態の止水弁では、
図13に示すように、止水ボタン9および吐水ボタン10にボタン空気導入孔は設けられず、空気は、止水ボタン9または吐水ボタン10とシャワー本体との間隙から取り入れられ、止水ボタン9または吐水ボタン10と弁軸8との間隙、通気溝27、弁軸8の空気導入路24を順次経由して、空気混入孔23から流路2の湯水に混合される。
このため、止水ボタン9および吐水ボタン10によって、弁軸8やその空気導入路24、空気混入孔23が遮蔽されて外部から視認することができない。
【0064】
第二実施形態のシャワー装置では、止水ボタン9および吐水ボタン10によって空気混入孔23や空気導入路24が遮蔽されることによって、空気混入孔23で空気を湯水に混入する際の空気音が外部に漏れるのを低減させることができる。
また、弁軸8やその空気導入路24、空気混入孔23が遮蔽されて外部から視認することができないため、シャワー装置1の外観を損なうことがない。
【0065】
さらに、外気が、止水ボタン9または吐水ボタン10とシャワー本体(把持部4および頭部5)との間隙から取り入れられることにより、通常の使用方法では止水ボタン9または吐水ボタン10と把持部4との間隙を全て手で塞ぐことができないため、使用者が意図せずに手で空気の取り入れ口を塞いでしまうことがなく、安定的に湯水に空気を混合することができる。
また、止水ボタン9または吐水ボタン10と把持部4との間隙にゴミ等が詰まっても、把持部4に対して止水ボタン9または吐水ボタン10が移動することでゴミ等を除去することができ、安定的に湯水に空気を混合することができる。
【0066】
<その他の変形例>
散水口3は、第一実施形態や第二実施形態のようにシャワー状の散水を行うものには限られず、ストレート状の散水を行うものや、その他の形状の散水を行うものであってもよい。
また、第一実施形態や第二実施形態では弁軸8を上下に移動させる止水弁を設けたが、弁軸を軸回りに回転させることにより、弁軸内流路を把持部の流路に合致させたり相違させる止水弁を設けてもよい。
【0067】
また、オリフィス部22の形状は、第一実施形態や第二実施形態のように、楕円状、長円状等の長孔を左右一列に配置したもの(
図14(b))のほか、円形の孔を左右一列に配置してもよい(
図14(a))。
また、長孔と円形の孔とを混在させて左右一列に配置してもよい(
図14(c))。このとき、それぞれのオリフィス部の高さの中央は揃えて配置する。
また、図に示すように、中心に円形の孔を設け、その左右に円弧状の孔を配置してもよい(
図14(d))。
このほかにも、各種の形状の孔を採用してよく、また、それぞれの孔を適宜上下左右にずらして配置してもよい(
図14(e))。
【0068】
また、止水弁よりも上流の把持部の流路に浄化材を交換可能に収容できるようにしてもよい。これにより、浄化材で不純物がろ過され、浄水を散水することができるとともに、オリフィス部や空気混入孔、散水口が不純物で目詰まりすることを防止することができる。
また、湯水に空気を混合することにより節水することができるため、浄水器の寿命を長期化することができる。
【0069】
<第三実施形態>
第三実施形態は、
図7、
図13に示すような第一実施形態、第二実施形態、または変形例の止水弁を有する流路構造を含んだ継手である。
この継手は、内部に湯水が通過する流路2を形成し、この流路2の上流端および下流端に他の部材との接続部を有している。この接続部としては、ネジ結合用のネジ溝のほか、あらゆる取付構造を採用してよい。
【0070】
流路2中には、
図7、
図13に示すような弁軸8を操作して流路2を開閉することができる止水弁を設けている。
この弁軸8の弁軸内流路21には、オリフィス部22と、外気に連通して空気を導入する空気混入孔23が形成されている。これにより、流路2を通過する湯水に空気を混合することができる。
【0071】
この継手は、たとえば、湯水に空気を混入する機構や止水弁を有しないシャワーヘッド(シャワー装置)の根元と、ホース等の先端に設けられた別のホース継手との間に介在させて取り付けることができる。
これにより、湯水に空気を混入する機構や止水弁を有しないシャワーヘッド等の水栓や吐水装置に、後からこれらの機能を付加することができる。
【0072】
また、流路2を開閉する止水弁の弁軸8にオリフィス部22と空気混入孔23とを設けたことにより、湯水に空気を混合させるために特別の部品を設けて部品点数を増やすことがなく、流路構造を簡素化することができるとともに、製造コストを低減させることができる。