特許第5872514号(P5872514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5872514-接地抵抗測定システム 図000007
  • 特許5872514-接地抵抗測定システム 図000008
  • 特許5872514-接地抵抗測定システム 図000009
  • 特許5872514-接地抵抗測定システム 図000010
  • 特許5872514-接地抵抗測定システム 図000011
  • 特許5872514-接地抵抗測定システム 図000012
  • 特許5872514-接地抵抗測定システム 図000013
  • 特許5872514-接地抵抗測定システム 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872514
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】接地抵抗測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/20 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   G01R27/20
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-198746(P2013-198746)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-64297(P2015-64297A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2014年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 寛快
(72)【発明者】
【氏名】坂井 良明
(72)【発明者】
【氏名】川相 裕二
(72)【発明者】
【氏名】福原 聡
(72)【発明者】
【氏名】宮地 博也
(72)【発明者】
【氏名】小坂 光宏
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−109615(JP,A)
【文献】 特開2012−133532(JP,A)
【文献】 特開2008−176957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線の高圧系統と、位置ごとに接地工事の種別を記憶した高圧系統記憶手段と、
前記高圧系統に配設された電気設備位置情報を記憶した設備台帳記憶手段と、
前記接地工事の種別ごとの接地抵抗規定値を記憶した接地抵抗規定値記憶手段と、
前記高圧系統に配設され、接地抵抗値を測定する接地抵抗測定手段と、
前記高圧系統記憶手段と、前記設備台帳記憶手段と、前記接地抵抗規定値記憶手段とに基づいて、前記電気設備の接地抵抗規定値を、当該電気設備が配設された前記高圧系統の位置に応じて取得する接地抵抗規定値取得手段と、
前記接地抵抗規定値取得手段で取得した接地抵抗規定値と、接地抵抗測定手段で測定した接地抵抗値とに基づいて、前記接地抵抗値が、前記接地抵抗規定値を満たしているか否かを判定する接地抵抗良否判定手段と、
を備えることを特徴とする接地抵抗測定システム。
【請求項2】
前記接地抵抗良否判定手段で判定した判定結果を記憶する判定結果記憶手段と、
前記高圧系統記憶手段と、前記設備台帳記憶手段と、前記判定結果記憶手段とに基づいて、前記高圧系統や地域ごとの接地抵抗良否判定結果の特徴的な傾向を解析する傾向解析手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の接地抵抗測定システム。
【請求項3】
前記接地抵抗良否判定手段は、前記高圧系統記憶手段に記憶された前記高圧系統に変更があった場合、または、前記設備台帳記憶手段に記憶された前記情報に変更があった場合には、前記接地抵抗規定値取得手段を起動して、前記接地抵抗良否判定手段を起動する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の接地抵抗測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力機器が配設されている配電系統や地域などに応じて接地抵抗の規定値が異なる場合であっても適切に接地抵抗測定する接地抵抗測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
感電防止や、漏電防止、保護装置の確実な動作などのために、配電系統や、配電系統に配設された避雷器などの保護装置を含む電力機器は接地工事を施して接地する必要がある。接地工事には、機器を設置する機器接地、配電系統を接地する系統接地がある。
【0003】
接地工事後は、機器などが正しく接地されているか否かを確認するために、定期的に接地抵抗測定を行い、接地抵抗が規定値以下であることを確認する必要がある。この接地抵抗測定作業と接地抵抗良否判定作業は、配電系統に配設されたすべての電力機器について行うため、作業は手間と時間とを要するものである。
【0004】
ところで、一般家庭などの絶縁測定を行うための絶縁測定システムであって、住宅に設置されているスマートメータを使用する絶縁測定システムに関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この絶縁測定システムは、活線の漏洩電流を測定する活線絶縁測定部と、通信網から測定指示を受け取ると、測定した漏洩電流を表す測定データを送信する監視制御部と、測定データを受け取ると、あらかじめ設定されている規定値と、測定データが示す漏洩電流との比較により、絶縁劣化の良否を判定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−055393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
接地抵抗値は、電力機器が配設されている配電系統や地域などに応じて接地抵抗の規定値が異なるものであるため、電力機器ごとに適切な接地抵抗の規定値を取得することができれば、作業に要する手間と時間とを削減することができる。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、絶縁測定をするためのものであり、電力機器が配設されている配電系統や地域などに応じて接地抵抗の規定値が異なるような接地抵抗測定はできないものである。
【0007】
また、配電系統や接続されている電気機器が変更された場合に、自動的に接地抵抗測定作業と接地抵抗良否判定作業を実施することができれば、いつでも適切に接地抵抗測定をすることができる。
【0008】
さらに、接地抵抗良否判定によって得られた結果を解析して傾向を把握することができれば、例えば、接地抵抗が不良の傾向にある配電系統や地域については、予め対策を施すが可能になる。
【0009】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、電力機器が配設されている配電系統や地域などに応じて接地抵抗の規定値が異なる場合でも適切に接地抵抗測定することが可能な接地抵抗測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、配電線の高圧系統と、位置ごとに接地工事の種別を記憶した高圧系統記憶手段と、前記高圧系統に配設された電気設備位置情報を記憶した設備台帳記憶手段と、前記接地工事の種別ごとの接地抵抗規定値を記憶した接地抵抗規定値記憶手段と、前記高圧系統に配設され、接地抵抗値を測定する接地抵抗測定手段と、前記高圧系統記憶手段と、前記設備台帳記憶手段と、前記接地抵抗規定値記憶手段とに基づいて、前記電気設備の接地抵抗規定値を、当該電気設備が配設された前記高圧系統の位置に応じて取得する接地抵抗規定値取得手段と、前記接地抵抗規定値取得手段で取得した接地抵抗規定値と、接地抵抗測定手段で測定した接地抵抗値とに基づいて、前記接地抵抗値が、前記接地抵抗規定値を満たしているか否かを判定する接地抵抗良否判定手段と、を備えることを特徴とする接地抵抗測定システムである。
【0011】
請求項1の発明では、接地抵抗規定値取得手段によって、高圧系統記憶手段と、設備台帳記憶手段と、接地抵抗規定値記憶手段とに基づいて、電気設備の接地抵抗規定値が、当該電気設備が配設された前記高圧系統の位置に応じて取得される。また、接地抵抗良否判定手段によって、接地抵抗規定値取得手段で取得した接地抵抗規定値と、接地抵抗測定手段で測定した接地抵抗値とに基づいて、接地抵抗値が、接地抵抗規定値を満たしているか否かが判定される。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の接地抵抗測定システムにおいて、前記接地抵抗良否判定手段で判定した判定結果を記憶する判定結果記憶手段と、前記高圧系統記憶手段と、前記設備台帳記憶手段と、前記判定結果記憶手段とに基づいて、前記高圧系統や地域ごとの接地抵抗良否判定結果の特徴的な傾向を解析する傾向解析手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の接地抵抗測定システムにおいて、前記接地抵抗良否判定手段は、前記高圧系統記憶手段に記憶された前記高圧系統に変更があった場合、または、前記設備台帳記憶手段に記憶された前記情報に変更があった場合には、前記接地抵抗規定値取得手段を起動して、前記接地抵抗良否判定手段を起動する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、高圧系統記憶手段と、設備台帳記憶手段と、接地抵抗規定値取得手段で取得した接地抵抗規定値と、接地抵抗測定手段で測定した接地抵抗値とに基づいて、接地抵抗値が、接地抵抗規定値を満たしているか否かを判定するので、電力機器が配設されている高圧系統や地域などに応じて接地抵抗の規定値が異なる場合でも適切に接地抵抗を測定して、良否を判定することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、接地抵抗良否判定結果の高圧系統や地域などの傾向を解析するので、例えば、接地抵抗が不良の傾向にある配電系統や地域については、予め対策を施すが可能になる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、配電系統や、接続されている電力機器に変更があった場合には、変更後の接地抵抗値が、変更後の接地抵抗規定値を満たしているか否かを判定するので、いつでも、電力機器が配設されている配電系統や地域などに応じて適切に接地抵抗測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の実施の形態に係る接地抵抗測定システムを示す概略図である。
図2図1の接地抵抗測定システムにおいて電力会社に設置されているシステムの概略図である。
図3図1の接地抵抗測定システムにおいて高圧系統データベースに記憶されている高圧系統を示す系統図である。
図4図1の接地抵抗測定システムにおける設備台帳管理データベースを示すデータ構成図である。
図5図1の接地抵抗測定システムにおける接地抵抗規定値データベースを示すデータ構成図である。
図6図1の接地抵抗測定システムにおける接地抵抗規定値取得タスクの処理を示すフローチャートである。
図7図1の接地抵抗測定システムにおける処理を示すフローチャートである。
図8図1の接地抵抗測定システムにおいて接地抵抗測定装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態に基づいて説明する。
【0019】
図1ないし図8は、この発明の実施の形態を示している。接地抵抗測定システム1は、図1に示すように、電力会社Cに配設された高圧系統管理システム2と、設備台帳管理システム3と、接地抵抗測定システム4と、電柱Pに配設された接地抵抗測定装置5とが、通信網NWを介して相互に通信可能に接続されている。ここで、電柱Pに配設された接地抵抗測定装置5は、電線E1を介して接地され、電線E2を介して接地網GNに接続されている。また、電力機器Aは、電線E3を介して接地抵抗測定装置5と接続されている。ここで、電力機器Aは、例えば、保護装置などのことである。
【0020】
高圧系統管理システム2は、図2に示すように、高圧系統記憶手段としての高圧系統データベース21aを有している。高圧系統データベース21aは、配電線の高圧系統を格納しており、図3に示すような系統図を記憶している。この実施の形態では、A変電所−B変電所間は、4つの配電系統D1〜D4で構成されており、隣接する配電系統D1とD2、配電系統D1とD3、配電系統D1とD4、配電系統D2とD4、配電系統D3とD4は、それぞれ開閉器を介して接続されている。A変電所は、変圧器A1、A2を有しており、配電線A1−1、A1−2、・・・、A2−1、A2−2が接続され、B変電所は、変圧器B1、B2を有しており、配電線B1−1、B1−2、・・・、B2−1、B2−2が接続されている。そして、各配電線A1−1、・・・、B2−2は、ケーブルを介して、電線と接続されている。電線は、図3に示すように位置(区域)ごとに接地工事の種類(A種接地工事〜D種接地工事)が定義されている。また、高圧系統データベース21aは、電柱の配設位置も記憶している。この高圧系統データベース21aは、高圧系統が変更された際に、変更されるようになっている。
【0021】
設備台帳管理システム3は、図2に示すように、設備台帳記憶手段としての設備台帳データベース31aを有している。設備台帳データベース31aは、高圧系統に配設された電気設備を記憶したものであり、図4に示すように、電気設備を識別する設備ID311ごとに、設備名称312、設備種類313、設備仕様314、製造年月日315、電柱番号316、緯度・経度317、住所318、その他319を有している。設備名称312には、電気設備の名称が記憶され、設備種類313には、例えば、「開閉器」、「変圧器」、「避雷器」、「接地抵抗測定装置」のように記憶されている。ここで、設備種類313「接地抵抗測定装置」とは、後述する接地抵抗測定装置5のことである。設備仕様314には、例えば、遮断器の場合には遮断に要する時間や、使用電圧を含む当該電気設備の仕様が記憶され、製造年月日315には、当該電気設備の製造年月日が記憶されている。電柱番号316には、当該電気設備が配設されている電柱を識別するための番号が記憶され、緯度・経度317には、当該電気設備の配設位置、すなわち、電柱番号316の配設位置を示す緯度・経度が記憶され、住所318には、当該電気設備の配設位置、すなわち、電柱番号316の配設位置を示す住所が記憶されている。この設備台帳データベース31aは、電気設備が追加、更新、撤去された際に、変更されるようになっている。
【0022】
接地抵抗測定システム4は、図2に示すように、主として、これらを制御などする制御部40と、記憶部41と、通信部42と、接地抵抗規定値記憶手段としての接地抵抗規定値データベース43aと、判定結果記憶手段としての判定結果データベース44aと、接地抵抗測定タスク45と、接地抵抗規定値取得手段としての接地抵抗規定値取得タスク46と、B種接地抵抗算出タスク47と、接地抵抗良否判定手段としての接地抵抗良否判定タスク48と、傾向解析手段としての傾向解析タスク49とを有している。
【0023】
記憶部41は、接地抵抗測定システム1に必要な各種データやプログラム、タスクを記憶している。記憶部41は、各電力機器Aに定められた接地抵抗の測定期間や、傾向解析タスク49の実行タイミングを記憶している。
【0024】
通信部42は、通信網NWを経由したデータ通信を可能にし、高圧系統管理システム2や、設備台帳管理システム3、接地抵抗測定装置5とデータなどの送受信を行うものである。
【0025】
接地抵抗規定値記憶手段43は、接地工事の種別ごとの接地抵抗規定値を接地抵抗規定値データベース43aとして格納している。接地抵抗規定値データベース43aは、図5に示すように、接地工事の種類431ごとに、接地抵抗値432が記憶されている。具体的には、接地工事の種類431が「A種接地工事」の場合は、接地抵抗値432は「10Ω」と記憶されている。接地工事の種類431が「C種接地工事」の場合は、接地抵抗値432は「10Ω(低圧電路において、当該電路に地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を設置する場合は、500Ω)」と記憶されている。接地工事の種類431が「D種接地工事」の場合は、接地抵抗値432は「100Ω(低圧電路において、当該電路に地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を設置する場合は、500Ω)」と記憶されている。また、接地工事の種類431が「B種接地工事」の場合は、接地抵抗値432は「変圧器の高圧側又は特別高圧側の電路の1線地絡電流のアンペア数で150(変圧器の高圧側の電路または仕様電圧が35,000V以下の特別高圧側の電路と低圧側の電路との混触により低圧電路の対地電圧が150Vを超えた場合に、1秒を超え2秒以内に自動的に高圧電路または仕様電圧が35,000V以下の特別高圧電路を遮断する装置を設けるときは300、1秒以内に自動的に高圧電路または使用電圧が35,000V以下の特別高圧電路を遮断する装置を設けるときは600)を除した値に等しいオーム数」と記憶されている。
【0026】
判定結果記憶手段としての判定結果データベース44aは、後述する接地抵抗良否判定タスク48で判定した接地抵抗の良否判定結果を記憶するものである。判定結果データベース44aは、電気設備を識別する設備IDごとに、接地抵抗、規定値、判定結果、判定年月日を含む判定結果が記憶されている。判定結果データベース44aは、接地抵抗良否判定タスク48が実行される度に、最新の判定結果を記憶するようになっている。
【0027】
接地抵抗測定タスク45は、後述する接地抵抗測定装置5に対して、測定対象の電力機器Aの接地抵抗を測定するための測定信号を送信する機能を有するプログラム、タスクである。まず、測定対象の電力機器(当該電力機器)Aが配設されている電柱の電柱番号316を設備台帳データベース31aから取得する。そして、当該電柱に配設されている接地抵抗測定装置5を特定する。すなわち、取得した当該電柱番号316と同一の電柱番号316で、かつ、設備種類313が「接地抵抗測定装置」である設備ID311を設備台帳データベース31aから取得する。そして、当該設備ID311に該当する接地抵抗測定装置5に対して、接地抵抗の測定信号を送信する。
【0028】
接地抵抗規定値取得手段としての接地抵抗規定値取得タスク46は、高圧系統データベース21aと、設備台帳データベース31aと、接地抵抗規定値データベース43aとに基づいて、電気設備の接地抵抗規定値を、当該電気設備が配設された前記高圧系統の位置に応じて取得する機能を有するプログラム、タスクである。接地抵抗規定値取得タスク46は、具体的には、図6に示すフローチャートに基づいた処理を行う。この接地抵抗規定値取得タスク46は、図7に示すように、接地抵抗測定タスク45に続いて起動されるように、制御部40によって制御されている。
【0029】
まず、当該電力機器AがB種接地工事の対象であるか否かを判定する(ステップS11)。すなわち、当該電力機器Aについて、設備台帳データベース31aから電柱番号316、緯度・経度317、住所318を取得し、高圧系統データベース21aから当該電柱番号316の電柱が配設されている場所における接地工事の種類を取得する。具体的には例えば、図3に示す系統図の配電系統D1において、配電線A1−1に接続されているケーブル側は「A種接地工事」、開閉器側は「B種接地工事」である。
【0030】
そして、当該電力機器AがB種接地工事の対象ではない場合、すなわち、A種接地工事、C種接地工事、D種接地工事の対象である場合(「NO」の場合)は、接地抵抗規定値データベース43aから接地抵抗値432を取得して(ステップS12)、このタスクの処理を終了する。
【0031】
そして、当該電力機器AがB種接地工事の対象である場合(「YES」の場合)は、B種接地抵抗算出タスク47を起動する。
【0032】
B種接地抵抗算出タスク47は、1線地絡電流を実測または計算式によって算出して、接地抵抗値を算出する機能を有するプログラム、タスクである。1線地絡電流は、高圧系統データベース21aと、設備台帳データベース31aとに基づいて、実測値または計算式によって算出する。具体的には、予め、高圧系統ごとに、1線地絡電流を実測値とするか、計算式によって算出するかが定義されており、当該電力機器Aの接続されている高圧系統に基づいて、1線地絡電流を実測値とするか、計算式によって算出するかを判定する。
【0033】
1線地絡電流を計算式によって算出する場合は、(1)〜(5)のいずれかによって算出する。この計算式は、中性点の接地方式ごとに定義されており、当該電力機器Aが接続されている配電系統において、変圧器の高圧側また特別高圧側の電路が中性点非接地式高圧電路の場合は(1)〜(3)、中性点接地式高圧電路の場合は(4)、中性点リアクトル接地式高圧電路の場合は(5)によって算出する。
【0034】
(1)当該電力機器Aについて、変圧器の高圧側または特別高圧側について、電線にケーブル以外のものを使用する電路である場合は、1線地絡電流は数式1によって算出する。
【数1】
【0035】
数式1においては、右辺の第2項の値は小数点以下は切り上げ、Iが2未満となる場合は2とする。
【0036】
(2)当該電力機器Aについて、電線にケーブルを使用する電路である場合は、1線地絡電流は数式2によって算出する。
【数2】
【0037】
数式2においては、右辺の第2項の値は小数点以下は切り上げ、Iが2未満となる場合は2とする。
【0038】
(3)当該電力機器Aについて、電線にケーブル以外のものを使用する電路と電線にケーブルを使用する電路とからなる電路である場合は、1線地絡電流は数式3によって算出する。
【数3】
【0039】
数式3において、右辺の第2項および第3項の値は、それぞれの値が負となる場合は0とする。Iの値は、小数点以下は切り上げ、2未満となる場合は2とする。ここで、Iは、1線地絡電流であり、Vは、電路の公称電圧を1.1で除した電圧であり、Lは、同一母線に接続される高圧電路の電線延長であり、L’は、同一母線に接続される高圧電路の線路延長である。
【0040】
(4)当該電力機器Aについて、中性点接地式高圧電路及び大地から絶縁しないで使用する電気ボイラー、電気炉などを直接接続する中性点非接地式高圧電路である場合は、1線地絡電流は数式4によって算出する。
【数4】
【0041】
数式4において、小数点以下は切り上げるものとする。ここで、Iは、1線地絡電流であり、Iは、前号により計算した1線地絡電流であり、Vは、電路の公称電圧であり、Rは、中性点に使用する抵抗器の電気抵抗値(中性点の接地工事の接地抵抗値を含む)。
【0042】
(5)当該電力機器Aについて、中性点リアクトル式高圧電路である場合は、1線地絡電流は数式5によって算出する。
【数5】
【0043】
数式5において、小数点以下は切り上げ、Iが2未満となる場合は2とする。ここで、Iは、1線地絡電流であり、Iは、第一号により計算した電流値であり、Vは、電路の公称電圧であり、Rは、中性点に使用するリアクトルの電気抵抗値(中性点の接地工事にの接地抵抗値を含む)。Xは、中性点に使用するリアクトルの誘導リアクタンスの値である。
【0044】
このように、実測値による1線地絡電流、または、(1)〜(5)によって算出した1線地絡電流と、接地抵抗規定値データベース43aの接地抵抗値432に基づいて、
(イ)下記の(ロ)、(ハ)に該当しない場合は、1線地絡電流で150を除した値に等しいオーム数
(ロ)変圧器の高圧側の電路または仕様電圧が35,000V以下の特別高圧側の電路と低圧側の電路との混触により低圧電路の対地電圧が150Vを超えた場合に、1秒を超え2秒以内に自動的に高圧電路または仕様電圧が35,000V以下の特別高圧電路を遮断する装置を設けるときは、1線地絡電流で300を除した値に等しいオーム数
(ハ)変圧器の高圧側の電路または仕様電圧が35,000V以下の特別高圧側の電路と低圧側の電路との混触により低圧電路の対地電圧が150Vを超えた場合に、1秒以内に自動的に高圧電路または使用電圧が35,000V以下の特別高圧電路を遮断する装置を設けるときは、1線地絡電流で600を除した値に等しいオーム数
として算出する。
【0045】
接地抵抗良否判定手段としての接地抵抗良否判定タスク48は、接地抵抗規定値取得タスク46で取得した接地抵抗規定値と、接地抵抗測定タスク45で測定した接地抵抗値とに基づいて、当該電力機器Aの接地抵抗値が、接地抵抗規定値を満たしているか否かを判定する機能を有するプログラム、タスクである。この接地抵抗良否判定タスク48は、図7に示すように、接地抵抗規定値取得タスク46に続いて起動されるように、制御部40によって制御されている。
【0046】
接地抵抗良否判定タスク48によって、接地抵抗が不良と判定された場合は、当該電力機器Aの管理担当者宛てにメールなどでその旨を通知する。
【0047】
傾向解析手段としての傾向解析タスク49は、高圧系統データベース21aと、設備台帳データベース31aと、判定結果データベース44aとに基づいて、接地抵抗良否判定結果の高圧系統や地域ごとなどの傾向を解析する機能を有するプログラム、タスクである。具体的には、判定結果データベース44aに基づいて、以下の(A)〜(C)のようにデータを抽出して傾向を解析する。
(A)判定結果データベース44aから、判定結果の不良が他より多い高圧系統や地域を抽出
(B)判定結果データベース44aから、判定結果の不良が増加している高圧系統や地域を抽出
(C)判定結果データベース44aから、高圧系統や地域ごとに判定結果に特徴的な傾向の有無を確認
【0048】
この傾向解析タスク49は、所定期間ごと、または、任意のタイミングで起動されるようになっている。
【0049】
制御部40は、図7に示すように、まず、接地抵抗測定タスク45を起動し、つぎに、接地抵抗規定値取得タスク46を起動し、そして、接地抵抗良否判定タスク48を起動するようにプログラミングされている。制御部40は、各電力機器Aに定められた測定期間ごとに、当該電力機器Aについての接地抵抗の測定信号を送信するようになっている。また、制御部40は、操作者の指定により、当該電力機器Aについての接地抵抗の測定信号を任意のタイミングで送信することができるようになっている。
【0050】
また、制御部40は、高圧系統管理システム2において高圧系統データベース21aに変更があった場合は、変更があった高圧系統に接続されている電力機器Aについて、まず、接地抵抗測定タスク45を起動し、つぎに、接地抵抗規定値取得タスク46を起動し、そして、接地抵抗良否判定タスク48を起動するようにプログラミングされている。設備台帳管理システム3の設備台帳データベース31aに変更があった場合も、変更があった電力機器Aについて、同様に処理する。
【0051】
さらに、制御部40は、所定期間ごと、または、任意のタイミングで、傾向解析タスク49を起動するように設定されている。
【0052】
接地抵抗測定手段としての接地抵抗測定装置5は、主として、図8に示すように、通信部51と、測定制御部52と、測定部53と、測定切換スイッチ54とを備えている。接地抵抗測定装置5は、通信部51を介して、電力会社Cの接地抵抗測定システム4と相互に通信可能となっており、接地抵抗測定システム4から測定開始信号や測定終了信号を受信する。この接地抵抗測定装置5は、設備台帳データベース31aに、設備種類313が「接地抵抗測定装置」として記憶されている。
【0053】
測定制御部52は、接地抵抗測定システム4から受信した測定開始信号や測定終了信号に基づいて、測定切換スイッチ54に対して入/切制御信号を送信するようになっている。
【0054】
測定部53は、クランプテスタ53a〜53cを有しており、クランプテスタ53a〜53cから送信される測定データを記憶して、測定制御部52に通知するようになっている。クランプテスタ53aは、接地された電線E1に配設されており、クランプテスタ53bは、接地網GNに接続された電線E2に配設されており、クランプテスタ53cは、機器Aに接続された電線E3に配設されている。クランプテスタ53a〜53cによって測定された測定データは、通信部51を介して、電力会社Cの接地抵抗測定システム4に送信されるようになっている。
【0055】
測定切換スイッチ54は、入/切制御信号に基づいて入切するようになっている。測定切換スイッチ54が「切」となっている場合は、クランプテスタ53aによって電線E1の接地抵抗を測定する。測定切換スイッチ54が電線E2側の接点に「入」となっている場合は、クランプテスタ53aによって電線E1の接地抵抗を測定し、クランプテスタ53bによって電線E2の接地抵抗を測定する。測定切換スイッチ54が電線E3側の接点に「入」となっている場合は、クランプテスタ53aによって電線E1の接地抵抗を測定し、クランプテスタ53cによって電線E3の接地抵抗を測定する。
【0056】
次に、このような構成の接地抵抗測定システム1における接地抵抗測定方法および解析方法、作用について説明する。
【0057】
高圧系統に電力機器Aを新設する場合について説明する。ここで、電力機器Aは、「B種接地工事」の対象であり、「電線にケーブル以外のものを使用する電路」であるものとする。
【0058】
高圧系統に電力機器Aが配設されると、設備台帳管理システム3の設備台帳データベース31aに当該電力機器Aの情報が登録される。また、当該電力機器Aが配設されている電柱Pに、接地抵抗測定装置5が取り付けられ、設備台帳管理システム3の設備台帳データベース31aに当該接地抵抗測定装置5の情報が登録される。そして、接地抵抗測定システム4の記憶部41に、当該電力機器Aに定められた接地抵抗の測定期間が記憶される。
【0059】
制御部40によって、当該電力機器Aについて、図7に示すように、まず、接地抵抗測定タスク45が起動され、つぎに、接地抵抗規定値取得タスク46が起動され、そして、接地抵抗良否判定タスク48が起動される。
【0060】
具体的には、接地抵抗測定タスク45によって、当該電力機器Aが配設されている電柱の電柱番号316が設備台帳データベース31aから取得されて、当該電柱Pに配設されている接地抵抗測定装置5の設備ID311が特定される。そして、当該設備ID311に該当する接地抵抗測定装置5に対して、接地抵抗の測定信号が送信される。
【0061】
つぎに、接地抵抗規定値取得タスク46によって、ステップS11において、当該電力機器AはB種接地工事の対象であると判定される。そして、B種接地抵抗算出タスク47によって、当該電力機器Aの接続されている高圧系統が、1線地絡電流を計算式によって算出する場合は、数式1で1線地絡電流が算出されて、1線地絡電流で150を除して算出される。
【0062】
そして、接地抵抗良否判定タスク48によって、当該電力機器Aの接地抵抗値が、接地抵抗規定値を満たしているか否かが判定される。
【0063】
高圧系統に変更があった場合について説明する。高圧系統が変更されると、設備台帳管理システム3の設備台帳データベース31aが変更される。
【0064】
そして、制御部40によって、変更があった高圧系統に配設されているすべての電力機器Aについて、図7に示すように、まず、接地抵抗測定タスク45が起動され、つぎに、接地抵抗規定値取得タスク46が起動され、そして、接地抵抗良否判定タスク48が起動される。これにより、変更があった高圧系統に配設されているすべての電力機器Aについて、接地抵抗の良否が判定される。
【0065】
また、電力機器Aが新設されたり、撤去されたりした場合についても、同様に、制御部40によって、当該電力機器Aについて処理が行われる。
【0066】
例えば、判定結果の不良が他より多い高圧系統や地域が抽出された場合は、接地工事において対策を施したり、接地抵抗の測定間隔を通常よりも短く設定したりすることにより、接地抵抗の劣化を防ぐようにする。
【0067】
以上のように、この接地抵抗測定システム1によれば、高圧系統データベース21aと、設備台帳データベース31aと、接地抵抗規定値取得タスク46で取得した接地抵抗規定値と、接地抵抗測定タスク45で測定した接地抵抗値とに基づいて、接地抵抗値が、接地抵抗規定値を満たしているか否かを判定するので、電力機器Aが配設されている高圧系統や地域などに応じて接地抵抗の規定値が異なる場合であっても適切に接地抵抗を測定して、良否を判定することができる。
【0068】
また、傾向解析タスク49によって、接地抵抗良否判定結果について高圧系統や地域などの傾向を解析するので、例えば、接地抵抗が不良の傾向にある配電系統や地域については、接地工事の際に予め対策を施すことが可能になる。
【0069】
さらに、高圧系統や、接続されている電力機器Aに変更があった場合には、変更後の接地抵抗が、変更後の接地抵抗規定値を満たしているか否かを判定することができるので、いつでも、電力機器が配設されている配電系統や地域などに応じて適切に接地抵抗値を測定することができる。
【0070】
傾向解析タスク49によって、例えば、判定結果の不良が他より多い高圧系統や地域が抽出された場合は、接地工事において対策を施したり、接地抵抗の測定間隔を通常よりも短く設定したりすることにより、接地抵抗の劣化を防ぐようにする。
【0071】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、高圧系統は図4に図示したものを例として説明したが、図4に示す高圧系統に限定されないことはもちろんである。
【符号の説明】
【0072】
1 接地抵抗測定システム
2 高圧系統管理システム
21 高圧系統記憶手段
3 設備台帳記憶手段
31 設備台帳管理システム
4 接地抵抗測定システム
43 接地抵抗規定値記憶手段
44 判定結果記憶手段
45 接地抵抗測定タスク
46 接地抵抗規定値取得タスク(接地抵抗規定値取得手段)
48 接地抵抗良否判定タスク(接地抵抗良否判定手段)
49 傾向解析タスク(傾向解析手段)
5 接地抵抗測定装置(接地抵抗測定手段)
C 電力会社
P 電柱
A 電力機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8