特許第5872519号(P5872519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000002
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000003
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000004
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000005
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000006
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000007
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000008
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000009
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000010
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000011
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000012
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000013
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000014
  • 特許5872519-間接活線作業用ラチェット工具 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872519
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】間接活線作業用ラチェット工具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20160216BHJP
   B25B 13/46 20060101ALI20160216BHJP
   B25B 13/48 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   H02G1/02
   B25B13/46 Z
   B25B13/48 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-217141(P2013-217141)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-80363(P2015-80363A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2014年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】津森 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸一
(72)【発明者】
【氏名】梶屋 敏昭
(72)【発明者】
【氏名】坂根 一浩
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−198900(JP,A)
【文献】 特開2004−017277(JP,A)
【文献】 実開平06−009875(JP,U)
【文献】 特開2001−347465(JP,A)
【文献】 実開昭61−042259(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/00− 1/10
B25B 13/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁操作棒の先端側に連結保持部を介して連結され、前記絶縁操作棒の操作によって前記連結保持部を中心に回動可能な間接ラチェットレンチと、
前記間接ラチェットレンチの前記連結保持部と反対側に位置する自由端側に組込まれ、締付け回転方向が一方向に制限されるラチェット機構部と、
前記ラチェット機構部の軸方向の一側に連結され、電線接続用のボルトの頭部と嵌合可能なソケット部と、
前記ラチェット機構部の軸方向の他側に連結され、前記ラチェット機構部を介して前記ソケット部を回動させることが可能な入力軸部と、
前記入力軸部に連結され、前記絶縁操作棒と別の絶縁操作棒により外周縁部が把持可能な径を有する円盤を備え、前記の別の絶縁操作棒により前記円盤が把持されて回動操作された場合に、前記ラチェット機構部を介して前記ソケット部を回動させることが可能な回動盤と、
を備えたことを特徴とする間接活線作業用ラチェット工具。
【請求項2】
前記回動盤は、前記入力軸部に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の間接活線作業用ラチェット工具。
【請求項3】
前記盤は、透明アクリル板からなることを特徴とする請求項1または2に記載の間接活線作業用ラチェット工具。
【請求項4】
前記円盤は、外周縁部に沿って配置される複数の把持板を有しており、前記把持板は前記円盤に対して回動自在に保持されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の間接活線作業用ラチェット工具。
【請求項5】
前記絶縁操作棒は、各種工具が装着可能な共用操作棒から構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の間接活線作業用ラチェット工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、絶縁操作棒を用いた間接活線工法によって電線接続用のボルトを締付けるための間接活線作業用ラチェット工具に関する。
【背景技術】
【0002】
架空配電用高圧線に高圧引下げ線を接続する作業は、絶縁操作棒を用いた間接活線工法によって行われている。
【0003】
図12ないし図15は、架空配電用高圧線に高圧引下げ線を接続する従来の作業を示している。図12に示すように、架空配電用高圧線110に高圧引下げ線を接続する際は、引下線用コネクタ111が使用される。引下線用コネクタ111の下端には、高圧引下げ線(図示略)が接続されている。引下線用コネクタ111は、クランプ金具111a、111bを有しており、ボルト112の締付けにより架空配電用高圧線110をクランプ金具111a、111bで挟持することで、高圧引下げ線が架空配電用高圧線110に接続されるようになっている。
【0004】
高圧引下げ線の架空配電用高圧線110への接続作業は、絶縁操作棒としての共用操作棒100を用いて行われる。共用操作棒100の上部には、ロックネジ103を介して連結保持部2が着脱可能に装着されている。連結保持部2には、間接ラチェットレンチ3が軸心P1を中心として回動可能に保持されている。間接ラチェットレンチ3は、ラチェット機構部31を有している。ラチェット機構部31は、締付け回転方向が一方向に制限されており、逆回転させると空回りするようになっている。ラチェット機構部31の一側には、ボルト12の頭部が嵌合可能なソケット部4が連結されている。
【0005】
高圧引下げ線の架空配電用高圧線110への接続時には、ソケット部4をボルト112の頭部に嵌合させた状態で、共用操作棒100を矢印F3に示すように上下方向に操作するとともに、共用操作棒100の上端側を矢印F4に示すように円を描くように操作する。これにより、間接ラチェットレンチ3は軸心P2周りに回動し、引下線用コネクタ111のボルト12が間接ラチェットレンチ3を介して締付けられることにより、高圧引下げ線は引下線用コネクタ111を介して架空配電用高圧線110に接続される。
【0006】
本願発明の先行技術の一例として、間接活線用張線装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この装置では、張線器と掴線器を有しており、張弛調整機構の端部にラチェットレンチが装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−62960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図12ないし図15に示す高圧引下げ線の架空配電用高圧線への接続作業では、ボルト112が緩んでいる状態では、引下線用コネクタ111のラチェット機構部31がラチェットの機能を発揮することができず、ラチェット機能を利用してボルト112を締付けることができない。そのため、従来では矢印F4に示すように、共用操作棒100の上端側を何度も大きく回転させ、軸心P2を中心にボルト112を締付け方向に回転させているが、この状態では架空配電用高圧線110が大きく搖動するため、操作中に間接ラチェットレンチ3のソケット部4がボルト112の頭部から外れることがある。すなわち、図13に示すように、共用操作棒100の上端側を何度も大きく回転させると、下線用コネクタ111と接続される架空配電用高圧線110が大きく搖動するので、図14に示すように、ボルト112と嵌合状態のソケット部4がボルト112の頭部から外れることになり、作業が円滑に進まなくなるという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、絶縁操作棒の上端側を何度も大きく回転させることなく、緩んでいる状態のボルトをラチェット機構部がラチェットの機能を発揮することができる状態まで回転させることが可能な間接活線作業用ラチェット工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、絶縁操作棒の先端側に連結保持部を介して連結され、前記絶縁操作棒の操作によって前記連結保持部を中心に回動可能な間接ラチェットレンチと、前記間接ラチェットレンチの前記連結保持部と反対側に位置する自由端側に組込まれ、締付け回転方向が一方向に制限されるラチェット機構部と、前記ラチェット機構部の軸方向の一側に連結され、電線接続用のボルトの頭部と嵌合可能なソケット部と、前記ラチェット機構部の軸方向の他側に連結され、前記ラチェット機構部を介して前記ソケット部を回動させることが可能な入力軸部と、前記入力軸部に連結され、前記絶縁操作棒と別の絶縁操作棒により外周縁部が把持可能な径を有する円盤を備え、前記の別の絶縁操作棒により前記円盤が把持されて回動操作された場合に、前記ラチェット機構部を介して前記ソケット部を回動させることが可能な回動盤と、を備えたことを特徴とする間接活線作業用ラチェット工具である。
【0011】
この発明によれば、間接ラチェットレンチを静止させた状態で、別の絶縁操作棒によって円盤の外周縁部を把持して回動盤を回動させることにより、ラチェット機構部を介してソケット部が回転することになり、緩んだ状態のボルトは、ラチェット機構部がラチェットの機能を発揮することができる状態に至るまで締付けられる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の間接活線作業用ラチェット工具において、前記回動盤は、前記入力軸部に対して着脱可能であることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の間接活線作業用ラチェット工具において、前記円盤、透明アクリル板からなることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の間接活線作業用ラチェット工具において、前記円盤は、外周縁部に沿って配置される複数の把持板を有しており、前記把持板は前記円盤に対して回動自在に保持されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の間接活線作業用ラチェット工具において、前記絶縁操作棒は、各種工具が装着可能な共用操作棒から構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、別の絶縁操作棒によって回動盤を回動させることにより、緩んでいる状態のボルトをラチェット機構部がラチェットの機能を発揮することができる状態まで回転させることができるので、従来のように絶縁操作棒の上端側を何度も大きく回転させる操作が不要となり、ボルトを介して接続される電線の搖動を抑制することができる。これにより、ボルトの頭部が嵌合されるソケット部がボルトの頭部から外れるのを防止することができ、ボルトの締付け作業を円滑に進めることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、回動盤は入力軸部に対して着脱可能であるので、回動盤が不要な作業工程では、回動盤を入力軸部から離脱させることができ、間接活線作業用ラチェット工具の軽量化を図ることができる。したがって、間接活線作業用ラチェット工具が軽量化された分、絶縁操作棒の操作の負担を軽減することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、回動盤は別な絶縁操作棒による操作によって回動可能な透明アクリル板からなる円盤を有しているので、絶縁操作棒の操作者は、円盤を介してボルトの位置を確認することができ、ボルトの頭部とソケット部との位置合わせが容易となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、円盤の外周縁部に沿って配置される把持板は、円盤に対して回動自在に保持されているので、別な絶縁操作棒によって把持板を把持した状態で円盤を回動させても、円盤の回動に伴う把持板と別な絶縁操作棒との間での摩擦力を低減することができ、円盤を円滑に回動させることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、絶縁操作棒は各種工具が装着可能な共用操作棒から構成されるので、専用の絶縁操作棒を新たに製作する必要がなく、コストの低減が図れる。また、間接活線工法で使い慣れた共用操作棒の操作によってボルトの締付けができるので、作業を円滑に進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1に係わる間接活線作業用ラチェット工具の正面図である。
図2図1の間接活線作業用ラチェット工具の斜視図である。
図3図1の間接活線作業用ラチェット工具における入力軸部と回動盤との連結構造を示す正面図である。
図4図3のA−A線に沿う拡大断面図である。
図5図3のB−Bに沿う拡大断面図である。
図6図1の間接活線作業用ラチェット工具における回動盤の正面図である。
図7図1の間接活線作業用ラチェット工具における回動盤の部分拡大断面図である。
図8図1の間接活線作業用ラチェット工具を引下線用コネクタのボルトに接近させた状態を示す正面図である。
図9図1の間接活線作業用ラチェット工具を引下線用コネクタのボルトに装着させ別の共用操作棒を回動盤に接近させた状態を示す正面図である。
図10図1の間接活線作業用ラチェット工具による引下線用コネクタのボルトの締付け作業を示す正面図である。
図11図1の間接活線作業用ラチェット工具が装着された共用操作棒の全体を示す正面図である。
図12】従来の間接活線作業用ラチェット工具による引下線用コネクタのボルトの締付け作業を示す斜視図である。
図13図12の間接活線作業用ラチェット工具の操作状態を示す正面図である。
図14図12の間接活線作業用ラチェット工具が引下線用コネクタのボルトから外れた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0023】
図1ないし図11は、本発明の実施の形態を示している。図11は、本発明に係る間接活線作業用ラチェット工具1を絶縁操作棒としての共用操作棒100に装着した状態を示している。図11において、共用操作棒100は、連結軸101と、連結ピン102と、ロックネジ103と、連結部105と、操作棒本体106と、絶縁傘部107を有している。連結軸101は、共用操作棒100の最上部に位置しており、間接活線作業用ラチェット工具1側の連結保持部2が嵌合される部位であり、円柱状に形成されている。連結ピン102は、連結軸101に固定されており、共用操作棒100の軸心に対して直交する方向に延びている。連結ピン102は、間接活線作業用ラチェット工具1側の連結保持部2に形成されたロック溝の終端部と係合可能となっている。
【0024】
ロックネジ103は、連結軸101の下方に形成されたネジ部(図示略)と螺合しており、連結ピン102と係合状態にある間接活線作業用ラチェット工具1の連結保持部2を上方に押圧する機能を有している。連結保持部2は、ロックネジ103の押圧によって、連結軸101に対して上下方向および共用操作棒100の軸心周りへの動きが阻止されている。連結部105は、連結軸101と操作棒本体106とを連結している。操作棒本体106は、電気的絶縁性の高い部材から構成されており、上下方向に延びている。操作棒本体106の軸方向の途中には、円錐台状の絶縁傘部107が複数設けられている。絶縁傘部107は、操作棒本体106の上端部に付着した雨が操作棒本体106の下端側に流下するのを阻止する機能を有している。
【0025】
図1は、間接活線作業用ラチェット工具1を示している。図1に示すように、間接活線作業用ラチェット工具1は、引下線用コネクタ111のボルト112を締付けるために使用される。図1に示すように、架空配電用高圧線110に高圧引下げ線(図示略)を接続する際は、引下線用コネクタ111が使用される。高圧引下げ線は、引下線用コネクタ111の下端に接続されている。高圧引下げ線は、高圧幹線側から低圧幹線側へ電力を供給するための電線であり、高圧引下げ線の末端は例えば電圧を変換するための柱上変圧器側に接続される。引下線用コネクタ111は、クランプ金具111a、111bを有しており、ボルト112の締付けにより架空配電用高圧線110をクランプ金具111a、111bで挟持することで、高圧引下げ線が架空配電用高圧線110に接続されるようになっている。
【0026】
図1に示すように、間接活線作業用ラチェット工具1は、連結保持部2と、間接ラチェットレンチ3と、ソケット部4と、入力軸部5と、回動盤6とを備えている。連結保持部2は、回動軸2aと保持部2bを有している。回動軸2aは、共用操作棒100に対して横方向に延びており、軸心P1が共用操作棒100の軸心に対して直交している。回動軸2aは、軸心P1周りに回動自在となっており、自由端側の端部には、保持部2bが固定されている。保持部2bは、間接ラチェットレンチ3の一端部を保持する機能を有している。
【0027】
図1に示すように、間接ラチェットレンチ3は、ラチェットレンチ本体3aと切換えレバー3bを有している。間接ラチェットレンチ3は、共用操作棒100の操作により連結保持部2の回動軸2aの軸心P1を中心に回動可能となっている。間接ラチェットレンチ3は、ラチェット機構部31を有している。ラチェット機構部31は、ラチェットレンチ本体3aにおける連結保持部2の保持部2bと反対側に位置する自由端側に組込まれている。ラチェット機構部31は、締付け回転方向が一方向に制限されており、逆回転させると空回りするようになっている。この実施の形態においては、ラチェット機構部31は、締付け対象のボルト112が緩んでいる状態では、ラチェットの機能を発揮することができないが、ボルト112が一定のトルクで締付けられた状態になると、ラチェット機能を発揮するようになっている。
【0028】
ラチェット機構部31の軸方向の一側には、ソケット部4が連結されている。ソケット部4は、連結軸4aとソケット本体部4bから構成されている。ソケット本体部4bは、ボルト112の頭部と嵌合可能となっている。ソケット本体部4bは円筒状に形成されており、内面側がボルト112の頭部と嵌合可能な6角形に形成されている。ソケット本体部4bの軸方向の一端は、連結軸4aと連結されている。連結軸4aは、ラチェット機構部31に対して着脱可能に連結されている。これにより、ソケット部4は、ラチェット機構部31に対して着脱可能となっており、ラチェット機構部31には、ボルト112以外の形状のボルトを締付けるための別のソケット部が装着可能となっている。
【0029】
ラチェット機構部31の軸方向の他側には、入力軸部5が連結されている。入力軸部5は、ラチェット機構部31を介してソケット部4を回動させる機能を有している。図5に示すように、入力軸部5は、軸方向の一端側が円筒状に形成されており、内面には雌スプライン5bが形成されている。入力軸部5の軸方向の他端側は、中実状の連結軸5aに形成されており、連結軸5aはラチェット機構部31に連結されている。入力軸部5の雌スプライン5bの内面側には、外れ止めの機能を果たす係合穴5cが形成されている。
【0030】
入力軸部5には、回動盤6が着脱可能に連結されている。図1に示すように、回動盤6は、共用操作棒100と別の共用操作棒200による操作によってラチェット機構部31を介してソケット部4を回動させる機能を有している。回動盤6は、嵌合軸部61と、円盤62と、把持板63を有している。嵌合軸部61は、図4に示すように、入力軸部5と嵌合可能な軸本体61aを有しており、軸本体61aの外周面には雄スプライン61bが形成されている。雄スプライン61bは、入力軸部5の雌スプライン5bと嵌合可能となっている。雄スプライン61bと雌スプライン5bは、軸方向に対して摺動可能となっており、軸心P2周り方向にのみ係合するようになっている。軸本体61aの雄スプライン61bの外周面側には、係合ボール61cが出没可能に取付けられている。係合ボール61cは、圧縮コイルスプリング61dによって一部が雄スプライン61bの外周面に突出するように構成されている。入力軸部5と回動盤6が連結した状態では、係合ボール61cは、入力軸部5の係合穴5cに進入し、係合穴5cと係合するようになっている。
【0031】
円盤62は、透明アクリル板から構成されている。円盤62の中心部には、嵌合軸部61が位置しており、嵌合軸部61に円盤62が連結されている。円盤62には、外周縁部62aに沿って複数の把持板63が配置されている。図7に示すように、把持板63は、例えば摩擦係数の高い材料、例えばゴムから構成されている。把持板63は、把持板は円盤62に対して回動自在に保持されている。把持板63は、円盤62に形成された保持穴62bに挿通される保持軸63aと、保持軸63aに連結され円盤62の両側面側に位置する把持部63bを有している。把持板63は、保持軸63aを中心として円盤62に対して回動可能となっている。
【0032】
つぎに、間接活線作業用ラチェット工具1を用いた高圧引下げ線の接続作業の手順および作用について説明する。
【0033】
図8は、架空配電用高圧線110に高圧引下げ線を接続する作業におけるボルト112を締付ける直前の状態を示している。図8に示すように、架空配電用高圧線110に高圧引下げ線を接続する際は、引下線用コネクタ111が使用される。架空配電用高圧線110の引下線用コネクタ111が取付けられる部位は、絶縁被覆が既に除去されている。絶縁被覆が除去され部位は、クランプ金具111a、111bで挟持されており、クランプ金具111a、111bにはボルト112が挿入されている。この状態では、図8に示すように、間接活線作業用ラチェット工具1がボルト112に接近するように、共用操作棒100が操作者によって操作され、ソケット部4がボルト112の頭部と対向する位置に位置決めされる。ソケット部4がボルト112の頭部との位置合わせが行われると、つぎに、ソケット部4がボルト112側に移動するように共用操作棒100が操作され、ソケット部4をボルト112の頭部に嵌合させる。
【0034】
図9は、ソケット部4がボルト112の頭部に嵌合した状態を示している。ソケット部4がボルト112の頭部に嵌合した状態では、同じ操作者によって別の共用操作棒200が回動盤6に向かうように操作され、共用操作棒200の先端部に装着されたヤットコとこと呼ばれるクランプ部201が回動盤6の直下に位置するようになる。つぎに、図1に示すように、回動盤6の円盤62が共用操作棒200のクランプ部201によって把持され、矢印F1に示すように、回動盤6は共用操作棒200の操作によって軸心P2周りに回動することになる。回動盤6が回動すると、この回動力が入力軸部5とラチェット機構部31を介してソケット部4に伝達される。この状態では、矢印F2に示すように、ソケット部4が軸心P2周りに回転し、ソケット部4と嵌合しているボルト112を回転させる。これにより、緩んでいる状態のボルト112を、ラチェット機構部31がラチェットの機能を発揮することができるトルクに至るまで回転させることが可能となる。
【0035】
ここで、回動盤6の円盤62には、外周縁部62aに沿って複数の把持板63が配置されているので、各把持板63をクランプ部201によって把持した状態で共用操作棒200を操作することにより、回動盤6は軸心P2を中心として円滑に回転することになる。すなわち、各把持板63は、保持軸63aを中心として円盤62に対して回動可能となっているので。把持板63をクランプ部201によって把持した状態で円盤62を回転させても、円盤12とクランプ部201との間の摩擦力を低減することができ、円盤62を円滑に回転させることが可能となる。これにより、共用操作棒200を操作する際の労力が軽減される。
【0036】
回動盤6の操作によって、緩んでいる状態のボルト112をラチェット機構部31がラチェットの機能を発揮することができる状態まで回転させると、共用操作棒100によるボルト112の締付けが行われる。図10は、共用操作棒100によるボルト112の締付け作業を示している。回動盤6の操作によって、緩んでいる状態のボルト112が所定のトルクで締めつけられた状態では、ラチェット機構部31がラチェットの機能を発揮することが可能となり、図10に示すように、共用操作棒100を矢印F3方向に操作し、共用操作棒100の先端部が円を描くように矢印F4方向に操作することにより、ソケット部4は間接ラチェットレンチ3を介して軸心P2周りに回転することになり、ボルト112の締付けが行われる。
【0037】
この実施の形態におけるラチェット機構部31は、トルクリミッタ機能を有しており、所定のトルクを超えた場合は空回りするので、ボルト112が過度に締めつけられることはなく、ボルト112を所定のトルクで締付けることができる。また、ボルト112は、回動盤6の操作によってある程度締めつけられた状態になっているので、間接ラチェットレンチ3を使用して締付ける量は少ないので、従来のように共用操作棒100の先端部を大きく何回も回転させる必要がなく、ソケット部4がボルト112の頭部から外れることはなくなる。
【0038】
このように、別の共用操作棒200によって回動盤6の円盤62を回動させることにより、緩んでいる状態のボルト112をラチェット機構部31がラチェットの機能を発揮することができる状態まで回転させることができるので、従来のように共用操作棒100の上端側を何度も大きく回転させる操作が不要となり、ボルト112を介して接続される架空配電用高圧線110の搖動を抑制することができる。これにより、ボルト112の頭部が嵌合されるソケット部4がボルト112の頭部から外れるのを防止することができ、ボルト112の締付け作業を円滑に進めることができる。
【0039】
また、回動盤6は入力軸部5に対して着脱可能であるので、回動盤6が不要な作業工程では、回動盤6を入力軸部5から離脱させることができ、間接活線作業用ラチェット工具1の軽量化を図ることができる。したがって、間接活線作業用ラチェット工具1が軽量化された分、共用操作棒100の操作の負担を軽減することができる。さらに、回動盤6は別な共用操作棒200による操作によって回動可能な透明アクリル板からなる円盤62を有しているので、共用操作棒200の操作者は、円盤62を介してボルト112の位置を確認することができ、ボルト112の頭部とソケット部4との位置合わせが容易となる。
【0040】
円盤62の外周縁部62aに沿って配置される把持板63は、円盤62に対して回動自在に保持されているので、別な共用操作棒200によって把持板63を把持した状態で円盤62を回動させても、円盤62の回動に伴う把持板63と共用操作棒200のクランプ部201との間での摩擦力を低減することができ、円盤62を円滑に回動させることができる。
【0041】
また、絶縁操作棒は各種工具が装着可能な共用操作棒100、200から構成されるので、専用の絶縁操作棒を新たに製作する必要がなく、コストの低減が図れる。そして、間接活線工法で使い慣れた既存の共用操作棒100、200の操作によってボルト112の締付けができるので、作業を円滑に進めることができる。
【0042】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、この実施の形態においては、回動盤6を入力軸部5に対して着脱可能としているが、回動盤6を入力軸部5に連結したままの構成としてもよい。また、この実施の形態においては、雌スプライン5bを入力軸部5側に形成し、雄スプライン61bを回動盤6側に形成したが、雌スプライン5bを回動盤6側に形成し、雄スプライン61bを入力軸部5側に形成する構成としてもよい。さらに、間接活線作業用ラチェット工具1は、間接活線工法で使用される各種の工具が装着可能な共用操作棒100によって操作される例を示したが、間接活線作業用ラチェット工具1を専用の絶縁操作棒に装着して使用する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 間接活線作業用ラチェット工具
2 連結保持部
3 間接ラチェットレンチ
31 ラチェット機構部
4 ソケット部
5 入力軸部
5b 雌スプライン
6 回動盤
61b 雄スプライン
61c 係合ボール
62 円盤
63 把持板
100 共用操作棒(絶縁操作棒)
110 架空配電用高圧線(電線)
111 引下線用コネクタ
112 ボルト
200 別の共用操作棒(別の絶縁操作棒)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14