特許第5872527号(P5872527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5872527LNG受入可否判定プログラム、LNG受入可否判定システムおよびLNG受入可否判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872527
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】LNG受入可否判定プログラム、LNG受入可否判定システムおよびLNG受入可否判定方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20160216BHJP
【FI】
   G06Q50/06
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-257590(P2013-257590)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-114924(P2015-114924A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2014年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】末永 大史
【審査官】 塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−358439(JP,A)
【文献】 特開2013−164672(JP,A)
【文献】 特表2004−514138(JP,A)
【文献】 特開2007−115203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 50/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長期間使用実績がある積地以外の積地からのLNGの受入の可否を判定する、LNG受入可否判定プログラムであって、LNGの組成値と比重と発熱量とWobbe指数とをLNGの特定性状値とし、
コンピュータを、
受入対象のLNGの組成値と比重を入力する入力手段と、
前記入力手段で入力された組成値と比重に基づいて、前記受入対象のLNGの発熱量とWobbe指数とを算出する算出手段と、
前記長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値を記憶する性状値記憶手段と、
前記性状値記憶手段に記憶された特定性状値に基づいて、受入可能なLNGの特定性状値の基準値を設定する基準値設定手段と、
前記受入対象のLNGの特定性状値が、前記基準値設定手段で設定された基準値内であるか否かに基づいて、前記受入対象のLNGを受入可能か否か判定する判定手段、
として機能させ、前記基準値設定手段による設定方法が選択可能となっていることを特徴とするLNG受入可否判定プログラム。
【請求項2】
請求項に記載のLNG受入可否判定プログラムにおいて、
前記性状値記憶手段は、LNGを使用する使用設備ごとに、前記長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値を記憶し、
前記判定手段は、前記使用設備ごとに前記判定を行う、ことを特徴とする。
【請求項3】
LNGを使用する各使用設備に設けられた使用設備コンピュータと、管理センタに設けられた管理コンピュータとが通信自在に接続され、長期間使用実績がある積地以外の積地からのLNGの受入の可否を判定する、LNG受入可否判定システムであって、LNGの組成値と比重と発熱量とWobbe指数とをLNGの特定性状値とし、
前記管理コンピュータは、前記使用設備コンピュータに対して、受入対象のLNGの組成値と比重を送信し、
前記使用設備コンピュータは、
受信した組成値と比重に基づいて、前記受入対象のLNGの発熱量とWobbe指数とを算出する算出手段と、
前記長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値を記憶する性状値記憶手段と、
前記性状値記憶手段に記憶された特定性状値に基づいて、受入可能なLNGの特定性状値の基準値を設定する基準値設定手段と、
前記受入対象のLNGの特定性状値が、前記基準値設定手段で設定された基準値内であるか否かに基づいて、前記受入対象のLNGを受入可能か否か判定する判定手段と、
を備え、前記基準値設定手段による設定方法が選択可能となっていることを特徴とするLNG受入可否判定システム。
【請求項4】
請求項に記載のLNG受入可否判定システムにおいて、
前記性状値記憶手段は、該使用設備で長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値を記憶する、ことを特徴とする。
【請求項5】
長期間使用実績がある積地以外の積地からのLNGの受入の可否を判定する、LNG受入可否判定方法であって、LNGの組成値と比重と発熱量とWobbe指数とをLNGの特定性状値とし、
受入対象のLNGの組成値と比重に基づいて、前記受入対象のLNGの発熱量とWobbe指数とを算出する算出ステップと、
前記長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値に基づいて、受入可能なLNGの特定性状値の基準値を設定する基準値設定ステップと、
前記受入対象のLNGの特定性状値が、前記基準値設定ステップで設定された基準値内であるか否かに基づいて、前記受入対象のLNGを受入可能か否か判定する判定ステップと、
を備え、前記基準値設定ステップにおける設定方法が選択可能となっていることを特徴とするLNG受入可否判定方法。
【請求項6】
請求項に記載のLNG受入可否判定方法において、
前記判定ステップにおいて、LNGを使用する使用設備ごとに、該使用設備で長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値と、前記受入対象のLNGの特定性状値とに基づいて、前記判定を行う、ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LNGの受入可否を判定するプログラム等に関し、特に、新規契約等の積地・産地からのLNGを受入可能か否か判定する、LNG受入可否判定プログラム、LNG受入可否判定システムおよびLNG受入可否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LNGを発電所等で受け入れる際に、LNGの積地・産地が長期契約されている積地である場合には、長期間にわたっての使用実績があるため、詳細な調査、検討を行わずにLNGを受け入れるのが通例である。これに対して、新規契約あるいはスポット的な契約の積地からのLNGの場合には、詳細な調査、検討を行って、受入可能・使用可能なLNGか否かを判定する必要がある。この際、過去に行った調査、検討事項や受入実績があるLNGの性状データなどを参考にして、検討、判定を行っていた。
【0003】
一方、混炭した石炭について、火力プラント等での使用の適否を容易に得られるようにする、という技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この技術は、個々の石炭炭種の性状値と配合割合とに基づいて混炭後の性状値を算出し、この性状値が基準値内に収まっているか否かを判定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−115203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、長期契約している積地からLNGを受け入れることがほとんどであり、新規契約やスポット契約の積地からLNGを受け入れることは希であった。このため、詳細な調査、検討を行って受入可否を判定する機会が少なく、調査、検討の内容や判定基準・指標などが明確でなかったり、周知、統一されていなかったりするおそれがあった。このため、受入可否の判定に長時間を要するばかりでなく、適正な判定が行えなかったり、担当者によって判定が異なったり、さらには、LNGの受け入れ等に関する経験が少ない担当者では判定が困難であったりするおそれがあった。
【0006】
しかも、近年においては、新規契約やスポット契約の積地からLNGを受け入れるケースが増加しており、受入可否を適正に判定できる技術の確立が求められている。一方、特許文献1の技術は、混炭した石炭を判定対象とするものであり、新規契約等の積地からのLNGの受入可否を判定できるものではない。
【0007】
そこでこの発明は、長期間使用実績がある積地以外の積地からのLNGの受入可否を適正に判定可能な、LNG受入可否判定プログラム、LNG受入可否判定システムおよびLNG受入可否判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、長期間使用実績がある積地以外の積地からのLNGの受入の可否を判定する、LNG受入可否判定プログラムであって、LNGの組成値と比重と発熱量とWobbe指数とをLNGの特定性状値とし、コンピュータを、受入対象のLNGの組成値と比重を入力する入力手段と、前記入力手段で入力された組成値と比重に基づいて、前記受入対象のLNGの発熱量とWobbe指数とを算出する算出手段と、前記長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値を記憶する性状値記憶手段と、前記性状値記憶手段に記憶された特定性状値に基づいて、受入可能なLNGの特定性状値の基準値を設定する基準値設定手段と、前記受入対象のLNGの特定性状値が、前記基準値設定手段で設定された基準値内であるか否かに基づいて、前記受入対象のLNGを受入可能か否か判定する判定手段、として機能させ、前記基準値設定手段による設定方法が選択可能となっていることを特徴とするLNG受入可否判定プログラムである。
【0009】
この発明によれば、入力手段によって受入対象のLNGの組成値と比重が入力されると、算出手段によって受入対象のLNGの発熱量とWobbe指数とが算出される。そして、入力手段で入力された組成値と比重と、算出手段で算出された発熱量とWobbe指数からなる、受入対象のLNGの特定性状値と、長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値とに基づいて、判定手段によって受入対象のLNGを受入可能か否かが判定される。
【0011】
この発明によれば、長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値に基づいて、基準値設定手段によって受入可能なLNGの特定性状値の基準値が設定され、受入対象のLNGの特定性状値がこの基準値内であるか否かに基づいて、判定手段によって受入対象のLNGを受入可能か否かが判定される。
【0012】
請求項の発明は、請求項に記載のLNG受入可否判定プログラムにおいて、前記性状値記憶手段は、LNGを使用する使用設備ごとに、前記長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値を記憶し、前記判定手段は、前記使用設備ごとに前記判定を行う、ことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、判定手段によってLNGを使用する使用設備ごとに、この使用設備で長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値と、受入対象のLNGの特定性状値とに基づいて、受入対象のLNGを受入可能か否かが判定される。
【0014】
請求項の発明は、LNGを使用する各使用設備に設けられた使用設備コンピュータと、管理センタに設けられた管理コンピュータとが通信自在に接続され、長期間使用実績がある積地以外の積地からのLNGの受入の可否を判定する、LNG受入可否判定システムであって、LNGの組成値と比重と発熱量とWobbe指数とをLNGの特定性状値とし、前記管理コンピュータは、前記使用設備コンピュータに対して、受入対象のLNGの組成値と比重を送信し、前記使用設備コンピュータは、受信した組成値と比重に基づいて、前記受入対象のLNGの発熱量とWobbe指数とを算出する算出手段と、前記長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値を記憶する性状値記憶手段と、前記性状値記憶手段に記憶された特定性状値に基づいて、受入可能なLNGの特定性状値の基準値を設定する基準値設定手段と、前記受入対象のLNGの特定性状値が、前記基準値設定手段で設定された基準値内であるか否かに基づいて、前記受入対象のLNGを受入可能か否か判定する判定手段と、を備え、前記基準値設定手段による設定方法が選択可能となっていることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、管理コンピュータから使用設備コンピュータに対して、受入対象のLNGの組成値と比重が送信されると、使用設備コンピュータの算出手段によって受入対象のLNGの発熱量とWobbe指数とが算出される。そして、管理コンピュータから送信された組成値と比重と、算出手段で算出された発熱量とWobbe指数からなる、受入対象のLNGの特定性状値と、長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値とに基づいて、判定手段によって受入対象のLNGを受入可能か否かが判定される。
【0017】
請求項の発明は、請求項に記載のLNG受入可否判定システムにおいて、前記性状値記憶手段は、該使用設備で長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値を記憶する、ことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、各使用設備コンピュータによって使用設備ごとに、この使用設備で長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値に基づいて、受入対象のLNGを受入可能か否かが判定される。
【0019】
請求項の発明は、長期間使用実績がある積地以外の積地からのLNGの受入の可否を判定する、LNG受入可否判定方法であって、LNGの組成値と比重と発熱量とWobbe指数とをLNGの特定性状値とし、受入対象のLNGの組成値と比重に基づいて、前記受入対象のLNGの発熱量とWobbe指数とを算出する算出ステップと、前記長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値に基づいて、受入可能なLNGの特定性状値の基準値を設定する基準値設定ステップと、前記受入対象のLNGの特定性状値が、前記基準値設定ステップで設定された基準値内であるか否かに基づいて、前記受入対象のLNGを受入可能か否か判定する判定ステップと、を備え、前記基準値設定ステップにおける設定方法が選択可能となっていることを特徴とする。
【0021】
請求項の発明は、請求項に記載のLNG受入可否判定方法において、前記判定ステップにおいて、LNGを使用する使用設備ごとに、該使用設備で長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値と、前記受入対象のLNGの特定性状値とに基づいて、前記判定を行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1、3、5の発明によれば、受入対象のLNGの組成値と比重に基づいて発熱量とWobbe指数とが算出されて、受入対象のLNGの特定性状値が得られ、この特定性状値と長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値とに基づいて、受入対象のLNGを受入可能か否かが判定される。このようにして、長期間使用実績がある積地以外の積地からのLNG、つまり、新規契約やスポット契約の積地からのLNGであっても、長期間使用実績があるLNGの特定性状値に基づいて、受入可否を適正に、しかも誰でも容易にかつ統一的に判定することが可能となる。
【0023】
また、受入対象のLNGの特定性状値が、受入可能なLNGの特定性状値の基準値内であるか否かに基づいて、受入対象のLNGを受入可能か否かが判定されるため、受入可否をより適正に判定することが可能となる。つまり、基準値内であれば受入可能と判断されるため、より適正な判定が可能となる。しかも、長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値に基づいて基準値が設定されるため、適正な基準値が設定され、この結果、受入可否をより適正に判定することが可能となる。また、受入対象のLNGの特定性状値が基準値内であるか否かによって判定すればよいため、誰でも容易にかつ統一的に判定することが可能となる。
【0024】
請求項2、4、6の発明によれば、LNGを使用する使用設備ごとに、この使用設備で長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値と、受入対象のLNGの特定性状値とに基づいて、受入対象のLNGの受入可否が判定される。つまり、LNGを受け入れる使用設備で長期間使用実績があるLNGの特定性状値に基づいて受入可否を判定するため、この使用設備に適合した特定性状値に基づく判定が行われ、受入可否をより適正に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の実施の形態に係るLNG受入可否判定システムを示す概略構成図である。
図2図1のシステムの使用設備コンピュータの概略構成ブロック図である。
図3図2の使用設備コンピュータの集約データベースに記憶されている、長期契約積地からのLNGの特定性状値の例を示す図である。
図4図2の使用設備コンピュータの集約データベースに記憶されている、スポット契約積地からのLNGの特定性状値の例を示す図である。
図5図2の使用設備コンピュータの算出タスクの算出結果の例などを示す図である。
図6図2の使用設備コンピュータの基準値タスクで設定された基準値や、判定タスクによる判定結果などを示す図である。
図7図1のシステムによるLNG受入可否判定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0027】
図1は、この発明の実施の形態に係るLNG受入可否判定システム1を示す概略構成図である。このLNG受入可否判定システム1は、長期間使用実績がある積地(産地)以外の積地からのLNGの受入の可否を判定するシステムであり、LNGを使用する各発電所(使用設備)Pに設けられた使用設備コンピュータ3と、電力会社のLNG契約部署(管理センタ)Hに設けられた管理コンピュータ2とが、通信網NWを介して通信自在に接続されている。ここで、LNGの組成値と比重と発熱量とWobbe指数とを、LNGの特定性状値として以下に説明する。
【0028】
管理コンピュータ2は、LNGの契約、受入に関する処理等を行うコンピュータであり、長期契約しており長期間使用実績がある積地(以下、適宜「長期契約積地」という)からのLNGを受け入れる際には、このLNGの特定性状値を各使用設備コンピュータ3に通知・送信する。すなわち、長期間の使用実績があり受入に問題がないため、受入対象のLNGの特定性状値を通知するだけとし、受入の可否については問い合わせない。ここで、特定性状値のうちの一部、例えば、組成値と比重のみを通知し、発熱量やWobbe指数は、使用設備コンピュータ3で算出するようにしてもよい。
【0029】
一方、長期契約積地以外の積地からのLNGを受け入れる際には、積地名や船便の識別情報と、受入対象のLNGの組成値と比重を含む「判定要求」を各使用設備コンピュータ3に送信する。すなわち、長期間の使用実績がないため、このLNGを受入可能か否か、つまり使用可能か否かを各発電所Pに問い合わせるものである。この際、すべての使用設備コンピュータ3に「判定要求」を送信してもよいし、各発電所PのLNG保有量などに応じて、一部の使用設備コンピュータ3のみに送信するようにしてもよい。
【0030】
ここで、長期契約積地とは、LNGの供給に関して電力会社と長期的な契約を締結しており、長期間にわたって安定的にこの電力会社にLNGを供給している実績がある積地・産地である。また、長期契約積地以外の積地には、新規契約の積地やスポット的(一時的・臨時的)な契約の積地を含み、この実施の形態では、適宜、「スポット契約積地」という。
【0031】
使用設備コンピュータ3は、当該発電所PにおけるLNGの受入や使用・消費などを管理するコンピュータであり、図2に示すように、主として、入力部(入力手段)31と、通信部32と、性状データベース(性状値記憶手段)33と、算出タスク(算出手段)34と、基準値タスク(基準値設定手段)35と、判定タスク(判定手段)36と、これらを制御などする中央処理部37とを備えている。
【0032】
入力部31は、各種情報・データや指令などを入力するためのインターフェイスであり、例えば、各タスク34〜36を起動する指令を入力したり、スポット契約積地からの受入対象のLNGの組成値と比重を入力したりする。
【0033】
通信部32は、管理コンピュータ2を含む外部装置と通信するための通信インターフェイスであり、例えば、管理コンピュータ2から「判定要求」を受信したり、後述する「判定結果」を管理コンピュータ2に送信したりする。
【0034】
性状データベース33は、この発電所Pで長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値などを記憶するデータベースである。すなわち、例えば図3に示すように、3つの長期契約積地A〜Cが存在する場合、各長期契約積地A〜CからのLNGの組成値(各成分とその割合)と液比重とが記憶されている。さらに、組成値と液比重とに基づいて算出された発熱量とWobbe指数とが記憶されている。
【0035】
ここで、各長期契約積地A〜CからLNGを受け入れるごとに各特定性状値を記憶、蓄積してもよいし、各長期契約積地A〜Cに対してLNGの特定性状値の平均値を算出、記憶するようにしてもよい。また、この実施の形態では、窒素(N)の組成値(窒素濃度)については、他の組成値に基づいて算出している。
【0036】
さらに、性状データベース33には、スポット契約積地からのLNGの特定性状値も記憶されている。すなわち、管理コンピュータ2から「判定要求」を受信すると、図4に示すように、この「判定要求」内の積地名等とLNGの組成値と比重が記憶されるとともに、後述するようにして算出された発熱量とWobbe指数とが記憶される。
【0037】
算出タスク34は、管理コンピュータ2から受信した組成値と比重に基づいて、受入対象のLNGの発熱量とWobbe指数とを算出するプログラム・タスクである。すなわち、管理コンピュータ2から「判定要求」を受信した場合に、「判定要求」内の組成値と比重とに基づいて、スポット契約積地からのLNGの発熱量とWobbe指数とを算出する。ここで、この実施の形態では、低位発熱量(真発熱量)を発熱量として算出するが、高位発熱量(総発熱量)を発熱量として算出してもよい。また、Wobbe指数(ウォッベ指数)とは、ガス・燃料の燃焼性を判断するための重要な指数であり、ガスの発熱量と比重によって決定される値である。
【0038】
具体的には、図5に示すように、各組成成分(CH、C等)に対して、所定の計算式に従って低位発熱量を算出し、これらを合算・合計してLNG全体の低位発熱量を算出するとともに、所定の計算式に従ってWobbe指数を算出する。ここで、図5中網掛けされている数値が、入力値である。
【0039】
基準値タスク35は、性状データベース33に記憶された長期契約積地からのLNGの特定性状値に基づいて、受入可能なLNGの特定性状値の基準値(判定基準)を設定するプログラム・タスクである。すなわち、長期契約積地からのLNGは、受入、使用に問題がないため、このLNGの特定性状値に基づいて、受入可能(使用可能)なLNGを判定するための基準値を設定するものである。
【0040】
この実施の形態では、この発電所Pで長期間使用実績がある積地からの全LNGの特定性状値から、特定性状値の最小値と最大値を割り出し、この最小値と最大値とから基準値を設定する。具体的には、図6に示すように、長期契約積地からのLNGのWobbe指数の最小値WSをWobbe指数の基準値とし、この基準値以上でなければならないものとする。同様に、長期契約積地からのLNGの低位発熱量(合計)の最小値HSを低位発熱量の基準値とし、この基準値以上でなければならないものとする。また、長期契約積地からのLNGの窒素濃度(組成値)の最大値NSを窒素濃度の基準値とし、この基準値以下でなければならないものとする。さらに、長期契約積地からのLNGの液比重の最小値GS1と最大値GSを液比重の基準値とし、この基準値内(最小値GS1以上最大値GS以下)でなければならないものとする。
【0041】
ここで、性状データベース33に記憶された長期契約積地からのLNGの特定性状値、つまり、この発電所Pの長期契約積地のLNGの特定性状値に基づいて基準値を設定しているが、この発電所Pで長期間の使用実績がない積地を含めたすべての長期契約積地のLNGの特定性状値に基づいて基準値を設定してもよい。この場合、性状データベース33に全長期契約積地のLNGの特定性状値を記憶して、上記のような基準値の設定を行う。また、この発電所Pの長期契約積地のLNGのうち、一部のLNGのみに対して使用実績がある場合に、使用実績があるLNGの特定性状値のみに基づいて基準値を設定するようにしてもよい。これにより、この発電所Pの使用実績に基づいて、より適正な基準値を設定することが可能となる。
【0042】
また、長期契約積地のLNGの特定性状値の最小値と最大値とから基準値を設定しているが、他の手法・設定方法によって基準値を設定してもよい。例えば、長期契約積地のLNGの特定性状値の平均値や偏差(3σ)を算出し、算出した平均値や偏差を基準値とし、平均値以下でなければならない、平均値以上でなければならない、あるいは偏差以内でなければならない、としてもよい。さらに、このような設定方法を入力部31で選択・入力可能にしてもよい。
【0043】
判定タスク36は、性状データベース33に記憶され、この発電所Pで長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値と、受入対象のLNGの特定性状値とに基づいて、受入対象のLNGを受入可能か否か判定するタスク・プログラムである。具体的には、受入対象のLNGの特定性状値、つまり、管理コンピュータ2から受信した組成値と比重と算出タスク34で算出された発熱量とWobbe指数が、基準値タスク35で設定された基準値内であるか(判定基準を満たすか)否かに基づいて、受入対象のLNGを受入可能か否か判定する。
【0044】
すなわち、図6に示すように、受入対象であるスポット契約積地のLNGのWobbe指数が最小値WS以上であるか否かを判定し、以上であれば受入可(〇)と判定する。同様に、受入対象のLNGの低位発熱量が最小値HS以上であるか否かを判定し、以上であれば受入可(〇)と判定する。また、受入対象のLNGの窒素濃度が最大値NS以下であるか否かを判定し、以下であれば受入可(〇)と判定する。さらに、受入対象のLNGの液比重が最小値GS1以上最大値GS以下であるか否かを判定し、この範囲内であれば受入可(〇)と判定する。
【0045】
このように、基準値タスク35で設定された基準値に基づいて判定しており、基準値タスク35では、この発電所Pの長期契約積地のLNGの特定性状値に基づいて基準値を設定しているため、この発電所Pで長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値に基づいて、受入可否を判定することとなる。これに対して、上記のように、基準値タスク35において、この発電所Pで長期間の使用実績がない積地を含めたすべての長期契約積地のLNGの特定性状値に基づいて基準値を設定する場合には、いずれかの発電所Pで長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値に基づいて、受入可否を判定することとなる。これにより、より多くの長期契約積地のLNGの特定性状値に基づいた判定が可能となる。
【0046】
さらに、基準値タスク35において、この発電所Pの長期契約積地のLNGのうち、使用実績があるLNGの特定性状値のみに基づいて基準値を設定する場合には、この発電所Pで使用実績があるLNGの特定性状値に基づいて、受入可否を判定することとなる。これにより、この発電所Pの使用実績に基づいた判定が可能となる。このように、基準値タスク35における設定基準のLNGによって、判定タスク36の判定基準値が変わるが、設定基準のLNGを入力部31で選択可能にしてもよい。
【0047】
次に、このような構成のLNG受入可否判定システム1の作用・動作および、LNG受入可否判定システム1によるLNG受入可否判定方法について説明する。
【0048】
まず、各発電所Pの使用設備コンピュータ3において、所定のタイミングで基準値タスク35が起動され(ステップS1)、基準値設定ステップとして上記のようにして、受入可能なLNGの特定性状値の基準値が設定される。ここで、所定のタイミングとは、性状データベース33に記憶される長期契約積地のLNGの特定性状値が更新・変更された場合や、入力部31で基準値タスク35が起動入力された場合などであり、あるいは定期的に基準値タスク35を起動してもよい。
【0049】
次に、LNG契約部署Hにおいてスポット契約積地からのLNGの受入、使用を検討する場合、管理コンピュータ2から各発電所Pの使用設備コンピュータ3に対して、この積地名や受入対象のLNGの組成値と比重などを含む「判定要求」が送信される(ステップS2)。これを受けて各使用設備コンピュータ3で算出タスク34が起動され(ステップS3)、算出ステップとして、受入対象のLNGの発熱量とWobbe指数とが算出される。
【0050】
続いて、各使用設備コンピュータ3において判定タスク36が起動され(ステップS4)、判定ステップとして上記のようにして、長期契約積地のLNGの特定性状値と、受入対象のLNGの特定性状値とに基づいて、受入対象のLNGの受入可否が判定される。このような判定は、使用設備コンピュータ3ごと、つまり発電所Pごとに行われ、受入可能か否か(良否)を示す「判定結果」が、各使用設備コンピュータ3から管理コンピュータ2に送信されるものである。
【0051】
以上のように、本LNG受入可否判定システム1および本LNG受入可否判定方法によれば、スポット契約積地からの受入対象のLNGの組成値と比重に基づいて発熱量とWobbe指数とが算出されて、受入対象のLNGの特定性状値が得られ、この特定性状値と長期契約積地のLNGの特定性状値とに基づいて、受入対象のLNGを受入可能か否かが判定される。このようにして、スポット契約積地からのLNGであっても、長期間使用実績があるLNGの特定性状値に基づいて、受入可否を適正に、しかも誰でも容易にかつ統一的に判定することが可能となる。
【0052】
また、受入対象のLNGの特定性状値が、受入可能なLNGの特定性状値の基準値内であるか否かに基づいて、受入対象のLNGを受入可能か否か判定することで、受入可否をより適正に判定することが可能となる。つまり、基準値内であれば受入可能と判断されるため、より適正な判定が可能となる。しかも、長期契約積地のLNGの特定性状値に基づいて基準値が設定されるため、適正な基準値が設定され、この結果、受入可否をより適正に判定することが可能となる。また、受入対象のLNGの特定性状値が基準値内であるか否かによって判定すればよいため、誰でも容易にかつ統一的に判定することが可能となる。
【0053】
さらに、LNGを使用する発電所Pごとに、この発電所Pで長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値に基づいて受入可否を判定することで、この発電所Pに適合した特定性状値に基づく判定が行われ、受入可否をより適正に判定することが可能となる。
【0054】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、判定タスク36において、受入対象のLNGの特定性状値が、基準値タスク35で設定された基準値内であるか否かに基づいて、受入可否を判定しているが、その他の手法によって判定してもよい。例えば、受入対象のLNGの特定性状値と長期契約積地のLNGの特定性状値と差異が、所定の値以内であるか否かによって判定してもよい。
【0055】
また、基準値設定ステップにおいて、基準値タスク35によって基準値を設定する代わりに、次のようにして基準値を設定してもよい。すなわち、発電所Pでトラブルが発生した際のLNGの特定性状値に基づいて基準値を設定したり、ガスタービンが変わった際に、交換後のガスタービンに適合するLNGの特定性状値に基づいて基準値を設定したりしてもよい。さらに、各発電所Pの使用設備コンピュータ3において受入対象のLNGの発熱量とWobbe指数とを算出しているが、管理コンピュータ2において発熱量とWobbe指数とを算出し、受入対象のLNGの特定性状値を含む「判定要求」を各使用設備コンピュータ3に送信するようにしてもよい。
【0056】
一方、次のようなLNG受入可否判定プログラムを汎用のコンピュータにインストールすることで、使用設備コンピュータ3などを構成してもよい。
【0057】
すなわち、長期間使用実績がある積地以外の積地からのLNGの受入の可否を判定する、LNG受入可否判定プログラムであって、LNGの組成値と比重と発熱量とWobbe指数とをLNGの特定性状値とし、
コンピュータを、
受入対象のLNGの組成値と比重を入力する入力手段(入力部31)と、
前記入力手段で入力された組成値と比重に基づいて、前記受入対象のLNGの発熱量とWobbe指数とを算出する算出手段(算出タスク34)と、
前記長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値を記憶する性状値記憶手段(性状データベース33)と、
前記性状値記憶手段に記憶された特定性状値と、前記受入対象のLNGの特定性状値とに基づいて、前記受入対象のLNGを受入可能か否か判定する判定手段(判定タスク36)、
として機能させるためのLNG受入可否判定プログラム。
【0058】
また、コンピュータを、
前記性状値記憶手段に記憶された特定性状値に基づいて、受入可能なLNGの特定性状値の基準値を設定する基準値設定手段(基準値タスク35)、として機能させ、
前記判定手段は、前記受入対象のLNGの特定性状値が前記基準値内であるか否かに基づいて、前記判定を行う。
【0059】
このような受入可否判定プログラムを汎用のコンピュータにインストールすることで、スポット契約積地からの受入対象のLNGの組成値と比重を入力手段で入力するだけで、このLNGを受入可能か否かの判定結果を得ることができる。
【0060】
さらに、前記性状値記憶手段において、LNGを使用する使用設備(発電所P)ごとに、この使用設備で長期間使用実績がある積地からのLNGの特定性状値を記憶し、前記判定手段で、前記使用設備ごとに前記判定を行うことで、1つのコンピュータで、各使用設備における受入可否の判定を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 LNG受入可否判定システム
2 管理コンピュータ
3 使用設備コンピュータ
31 入力部(入力手段)
32 通信部
33 性状データベース(性状値記憶手段)
34 算出タスク(算出手段)
35 基準値タスク(基準値設定手段)
36 判定タスク(判定手段)
37 中央処理部
P 発電所(使用設備)
H LNG契約部署(管理センタ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7