(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872536
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
F02M 35/12 20060101AFI20160216BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20160216BHJP
F02M 35/024 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
F02M35/12 Z
F02M35/10 101F
F02M35/10 301D
!F02M35/024 501D
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-501112(P2013-501112)
(86)(22)【出願日】2012年2月23日
(86)【国際出願番号】JP2012054354
(87)【国際公開番号】WO2012115178
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2015年1月9日
(31)【優先権主張番号】特願2011-39918(P2011-39918)
(32)【優先日】2011年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000223034
【氏名又は名称】株式会社ROKI
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】市川 高行
(72)【発明者】
【氏名】小池 扇智子
(72)【発明者】
【氏名】青山 達也
【審査官】
安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−019839(JP,A)
【文献】
特開2010−270662(JP,A)
【文献】
特開2010−285871(JP,A)
【文献】
特開平08−042417(JP,A)
【文献】
特開平11−324836(JP,A)
【文献】
実開平05−010775(JP,U)
【文献】
実開平01−095566(JP,U)
【文献】
特開2005−139998(JP,A)
【文献】
特開2002−317716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/024
F02M 35/10
F02M 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端がエアクリーナに接続され、他端に外気を導入する開口部を有する筒状に形成されるとともに、壁部に内部と外部とを連通するチューニングホールを備える吸気ダクトにおいて、
前記吸気ダクトは、前記壁部の内壁面の底面から対向する天面に向けて突出する突部を備え、
前記チューニングホールは、前記突部の先端に形成されていることを特徴とする吸気ダクト。
【請求項2】
請求項1に記載の吸気ダクトにおいて、
前記突部の先端は、前記天面から所定の間隔を有していることを特徴とする吸気ダクト。
【請求項3】
請求項2に記載の吸気ダクトにおいて、
前記間隔は、前記吸気ダクトの延設方向と直交する断面における前記チューニングホールの開口距離以上であることを特徴とする吸気ダクト。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の吸気ダクトにおいて、
前記突部は、前記天面に溶着される補強部を備えることを特徴とする吸気ダクト。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸気ダクトにおいて、
前記突部は、整流板として形成されていることを特徴とする吸気ダクト。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸気ダクトにおいて、
前記突部は、補強リブとして形成されていることを特徴とする吸気ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ダクトに係り、特に、車両用内燃機関へ外気を導入するために、エアクリーナの上流側に設置される吸気ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関用の吸気ダクトとして、内燃機関の吸気音等の騒音を抑制しようとする要望が多く、下記特許文献に記載されているように、内燃機関の吸気音を抑制するための対策として、管壁にチューニングホールと呼ばれる大気連通孔を穿孔したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−95566号公報
【0004】
特許文献1に記載された吸気ダクトは、エアクリーナに外気を導入する吸気管中央の管壁に一定径の消音用通孔を設けるとともに、該消音用通孔と上記吸気管の外気導入用開口との間の中央の管壁に新たな消音用通孔を設け、順次新たな消音用通孔と上記開口との間の中央の管壁にさらに新たな消音用通孔を設けて、上記吸気管に少なくとも二個以上の消音用通孔を設けている。
【0005】
このように特許文献1に記載された吸気ダクトは、管壁にチューニングホールとしての消音用通孔を穿孔することで、吸気音を抑制することができるので、簡単な構成で吸気音を抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の吸気ダクトの構成によると、特許文献1に記載された吸気ダクトは、チューニングホールが大気連通孔であるため、大気中のダストや車輪によって跳ね上げられた水がチューニングホールから吸気ダクト内に侵入し、エアクリーナのフィルタエレメントを損傷したり、フィルタエレメントの交換サイクルを長く設定できないといった問題があった。また、チューニングホールから外気が吸い込まれることによる気流音が生じたり、管壁にチューニングホールが穿孔されていることから、内燃機関で生じた脈動音がチューニングホールから放射され、その放射音も大きくなるといった問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、簡便な構成でチューニングホールからの水やダストなどの異物の侵入を防止することができ、チューニングホールから外気が吸い込まれることによる気流音の発生を抑制し、内燃機関で生じた脈動音の放射音を小さくすることができる吸気ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る吸気ダクトは、一端がエアクリーナに接続され、他端に外気を導入する開口部を有する筒状に形成されるとともに、壁部に内部と外部とを連通するチューニングホールを備える吸気ダクトにおいて、前記吸気ダクトは、前記壁部の内壁面の底面から対向する天面に向けて突出する突部を備え、前記チューニングホールは、前記突部の先端に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る吸気ダクトにおいて、前記突部の先端は、前記天面から所定の間隔を有していると好適である。
【0010】
また、本発明に係る吸気ダクトにおいて、前記間隔は、前記吸気ダクトの延設方向と直交する断面における前記チューニングホールの開口距離以上であると好適である。
【0011】
また、本発明に係る吸気ダクトにおいて、前記突部は、前記天面に溶着される補強部を備えると好適である。
【0012】
また、本発明に係る吸気ダクトにおいて、前記突部は、整流板として形成されていると好適である。
【0013】
また、本発明に係る吸気ダクトにおいて、前記突部は、補強リブとして形成されていると好適である。
【0014】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る吸気ダクトは、チューニングホールが壁部の内壁面の底面から対向する天面に向けて突出する突部の先端に形成されているので、吸気ダクトの外部からダストや水等の異物の侵入を防止することができ、気流音の発生を抑制し、内燃機関で生じた脈動音の放射音を小さくすることができる。
【0016】
また、本発明に係る吸気ダクトは、突部の先端が吸気ダクトの天面から所定の間隔を有し、この間隔が、吸気ダクトの延設方向と直交する断面におけるチューニングホールの開口距離以上に形成されているので、低周波領域の消音効率が向上し、レゾネータなどを併用して全帯域の消音を行うにあたり、レゾネータなどの容積を小さくすることができ、省スペースで消音対策を施すことができる。
【0017】
また、本発明に係る吸気ダクトは、突部が天面に溶着される補強部を備えているので、吸気ダクトの面剛性を高めることができる。
【0018】
また、本発明に係る吸気ダクトは、突部が整流板として形成されているので、吸気ダクト内を流通する外気の円滑な流通を促進することができ、通気抵抗を低減することができる。
【0019】
また、本発明に係る吸気ダクトは、突部が補強リブとして形成されているので、吸気ダクトの面剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る吸気ダクトの概要を説明するための斜視図。
【
図2】本実施形態に係る吸気ダクトの構成を説明するための図。
【
図4】(A)は本実施形態に係る吸気ダクトの断面図、(B)は従来の吸気ダクトの断面図。
【
図5】本実施形態に係る吸気ダクトと従来の吸気ダクトの消音量を比較したグラフ。
【
図6】チューニングホールから天面までの間隔とチューニングホールの開口距離との関係と消音量を比較したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
図1は、本実施形態に係る吸気ダクトの概要を説明するための斜視図であり、
図2は、本実施形態に係る吸気ダクトの構成を説明するための図であり、
図3は、
図2におけるA−A断面図であり、
図4は、(A)は本実施形態に係る吸気ダクトの断面図、(B)は従来の吸気ダクトの断面図であり、
図5は、本実施形態に係る吸気ダクトと従来の吸気ダクトの消音量を比較したグラフであり、
図6は、チューニングホールから天面までの間隔とチューニングホールの開口距離との関係と消音量を比較したグラフである。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る吸気ダクト10は、筒状部材を半割に分割したケース12aとカバー13aの開口部を互いに組み合わせて筒状に形成されており、一端がエアクリーナに接続されるとともに、他端に外気を導入する開口部11が形成されている。吸気ダクト10は、エアクリーナの接続側は略円筒状の円筒部15が形成されており、開口部11側は、前記円筒部15から水平方向に広がるように略扇状の拡口部16が形成されている。
【0024】
ケース12aとカバー13aは、係止手段14によって互いに組み合わされている。係止手段14は、ケース12a又はカバー13aのいずれか一方に形成した凹部とケース12a又はカバー13aのいずれか他方に形成した凸部とが係合する凹凸係合を構成している。なお、ケース12a及びカバー13aは、合成樹脂によって形成されており、具体的には、夫々ポリプロピレン系樹脂やポリアミド系樹脂等の熱可塑性の合成樹脂が好適に用いられる。
【0025】
図2に示すように、ケース12aの内壁面は、底面12が形成されており、カバー13aの内壁面は、該底面12と対向する天面13が形成されている。底面12には、天面13に向けて突出する突部20が形成されており、突部20の先端にはチューニングホール21が穿孔され、該チューニングホール21によって、吸気ダクト10の内部と外部とが連通されている。突部20は開口部11から導入される外気の通気方向に沿って形成されており、外気導入の際の整流板として作用する。
【0026】
図3に示すように、チューニングホール21は、突部20の長手方向に沿った長孔形状に形成されている。このように、チューニングホール21を突部20の先端に形成したことにより、ケース12aの外面には、溝部17が形成されており、チューニングホール21は、吸気ダクト10の外面から見た場合、この溝部17の最深部に形成されている。
【0027】
また、突部20には、天面13に溶着される補強部22,22が形成されている。この補強部22,22によって、底面12と天面13とが互いに溶着され、吸気ダクト10の面剛性が向上している。なお、補強部22,22と天面13とは、振動溶着、超音波溶着等種々の溶着方法によって溶着されている。
【0028】
図4に示すように、チューニングホール21と天面13とは、所定の間隔Yを有して形成されている。この間隔Yは、チューニングホール21における吸気ダクト10の延設方向と直交する断面における開口距離X以上に形成されている。
【実施例】
【0029】
図5は、本実施形態に係る吸気ダクトと、従来のチューニングホールが形成された吸気ダクト(比較例1)及びチューニングホールが形成されていない吸気ダクト(比較例2)の周波数と消音量の解析結果である。
【0030】
図5から明らかなように、本実施形態に係る吸気ダクトは、従来のチューニングホールが形成された吸気ダクトと同様に、チューニングホールが形成されていない吸気ダクトに比べて全ての周波数帯において、消音量が大きくなっていることが確認できた。なお、
図5において縦軸は消音量を表し、数値が大きいほど消音効果が高いことを示している。
【0031】
次に、
図6を参照して、間隔Yと開口距離Xとの関係が消音量に与える影響について解析した結果について説明を行う。なお、
図6においても
図5と同様に縦軸は消音量を表し、数値が大きいほど消音効果が高いことを示している。
【0032】
図6のグラフは、チューニングホールが形成されていない吸気ダクト(比較例3)、チューニングホールを突部に形成し、間隔Yを5mmに形成した吸気ダクト(実施例2)、間隔Yを10mmに形成した吸気ダクト(実施例3)、間隔Yを20mmに形成した吸気ダクト(実施例4)、間隔Yを30mmに形成した吸気ダクト(実施例5)の周波数と消音量を比較したデータである。なお、チューニングホールの開口距離Xは全て20mmに形成した。
【0033】
図6から明らかなように、本実施形態に係る吸気ダクトは、チューンニングホールが形成されていない従来の吸気ダクト(比較例3)よりも消音量が大きく、より低い周波数帯の消音が可能であることを示している。一般的に低周波数帯域の消音を行う場合、レゾネータなどの消音器の容積が大きくなってしまい、低周波数帯域の消音は省スペースで対策を行うことが難しい。本実施形態に係る吸気ダクトは、低周波数帯域の消音量が大きいので、レゾネータなども併用して全帯域での消音効率を考えた場合、従来の吸気ダクトに比べてより省スペースで消音対策を行うことが可能となる。
【0034】
また、
図6から明らかなように、突部にチューニングホールを形成した場合、間隔Yが小さくなるに従って、低周波数の消音量が小さくなっていることが確認できた。消音量と周波数帯域の関係とを考慮すると、実施例4および実施例5の解析結果が示すように、開口距離Xと間隔Yとの関係は、間隔Yが開口距離X以上に形成することが好ましい。
【0035】
このように、本実施形態に係る吸気ダクト10は、溝部17の最深部にチューニングホール21が形成されているので、大気中のダストや車輪によって跳ね上げられた水がチューニングホール21から吸気ダクト10内へ侵入することを防止できる。
【0036】
また、溝部17の最深部にチューニングホール21が形成されているので、チューニングホール21を介して吸気ダクト10の外部から内部に外気が入り込みづらい構成となっており、外気の吸入によって生じる気流音を抑制することができる。
【0037】
さらに、
図4(A)に示すように、内燃機関で生じた脈動音の放射音が生じた場合でも、溝部17の最深部にチューニングホール21が形成されていることにより、放射音の測定点Mからチューニングホール21までの測定距離Lが、
図4(B)に示すように、従来の吸気ダクトのように、吸気ダクトの管壁にチューニングホールを穿孔した場合の測定距離L´に比べて大きくすることができ、放射音を低減することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る吸気ダクト10では、突部20を整流板として形成した場合について説明したが、突部20は、リブを複数配置した形態に形成しても構わない。リブの数は求められる吸気ダクトの面剛性に応じて適宜変更することができる。また、本実施形態に係る吸気ダクト10では、ケース12aとカバー13aとを係止手段14によって係合した場合について説明したが、ケース12aとカバー13aはそれぞれ
溶着によって組み合わせても良いし、ケース12aとカバー13aとを樹脂成型によって一体に形成しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0039】
10 吸気ダクト, 11 開口部, 12 底面, 12a ケース, 13 天面, カバー 13a, 14 係止手段, 15 円筒部, 16 拡口部, 17 溝部, 20 突部, 21 チューニングホール, 22 補強部, X 開口距離, Y 間隔, L,L´ 測定距離, M 測定点。