(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872537
(24)【登録日】2016年1月22日
    
      
        (45)【発行日】2016年3月1日
      
    (54)【発明の名称】柔軟な袋に含まれる液体サンプルを採取するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01N   1/10        20060101AFI20160216BHJP        
【FI】
   G01N1/10 V
【請求項の数】8
【全頁数】6
      (21)【出願番号】特願2013-501694(P2013-501694)
(86)(22)【出願日】2011年4月1日
    
      (65)【公表番号】特表2013-524180(P2013-524180A)
(43)【公表日】2013年6月17日
    
      (86)【国際出願番号】EP2011001648
    
      (87)【国際公開番号】WO2011120710
(87)【国際公開日】20111006
    【審査請求日】2014年3月31日
      (31)【優先権主張番号】1001376
(32)【優先日】2010年4月1日
(33)【優先権主張国】FR
    
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】511217485
【氏名又は名称】ビー.ブラウン  メディカル  エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】B.BRAUN  MEDICAL  SAS
          (74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】ボルドー,ジェローム
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】コリン,レミ
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】プレゼリン,アンソニー
              
            
        
      
    
      【審査官】
        長谷  潮
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          実開昭53−058492(JP,U)      
        
        【文献】
          米国特許出願公開第2007/0227270(US,A1)    
        
        【文献】
          特表2000−511635(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2000−074909(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2001−130596(JP,A)      
        
        【文献】
          国際公開第2009/038505(WO,A1)    
        
        【文献】
          米国特許第05465768(US,A)      
        
        【文献】
          特開2001−091420(JP,A)      
        
        【文献】
          特表2008−504547(JP,A)      
        
        【文献】
          特表2010−538737(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N      1/10,33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  柔軟な袋から液体のサンプルを取得するための装置であって、
  前記装置は、
  第1の底面と、前記第1の底面から突出する、前記柔軟な袋を穿孔するための穿孔素子とを有する第1の部分と、
  前記第1の部分の前記穿孔素子を受けるように適合された空洞を囲む第2の底面を有する第2の部分とを備え、
  前記第1の部分は、前記穿孔素子を囲む第1の接着面を有し、前記第2の部分は、前記空洞を囲む第2の接着面を有し、
  前記第1及び第2の部分のうちの1つは開口部を有し、前記開口部の一端は、前記第1及び第2の接着面のうちの1つに囲まれる、前記第1の底面、前記第2の底面、前記穿孔素子及び前記空洞のうちの1つと連通し、前記開口部の他端は、前記第1及び第2の部分のうちの前記1つの、前記第1及び第2の接着面のうちの前記1つに向かい合う側と連通する、装置。
【請求項2】
  前記第1及び第2の接着面は、リングの形態で形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
  前記第1及び第2の接着面は、本質的に同じ大きさを有する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
  前記開口部は、前記第1の部分に配置され、前記穿孔素子は、前記開口部の周囲に配置された管である、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
  前記穿孔素子は、前記第1の部分において、前記穿孔素子が前記第1の底面から突出しない、または実質的に突出しない第1の位置と、前記穿孔素子が前記第1の底面から明らかに突出する第2の位置との間に、スライド可能である、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
  管または注射器のためのコネクタをさらに備え、前記コネクタは、前記第1及び第2の部分のうちの前記1つの、前記第1及び第2の接着面のうちの前記1つに向かい合う前記側に配置される、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
  前記第1及び第2の部分のうちの前記1つに配置される前記開口部の前記他端は、穿孔可能または再封止可能な膜によって閉じられる、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
  前記第1及び第2の部分は、連結方式によって、互いに接続される、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、医療分析および/または生物学的分析の分野に関する。より正確には、本発明は柔軟な閉じた容器、たとえば尿または血液を集めるための袋に含まれる液体のサンプルを採取することに関する。
 
【背景技術】
【0002】
  この種の液体を分析するために、たとえば、細胞細菌学の尿試験を実行するために、まず必要なのは、サンプルが集められる工程によって汚染されない方法で、尿サンプルを集めることである。尿あるいはより一般的には分析対象の液体、が閉じた採取袋に含まれており、必要な無菌条件でのサンプルの単純な収集を可能にする排出のラインをその袋が有していないならば、理論的には、針を有する注射器でサンプルを採取することが可能である。袋の表面の適切な領域を、たとえばアルコールで拭くことにより消毒した後、注射器の針は、袋の壁を突き刺すため、および必要な量の尿をくみ出すために用いられる。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
  しかしながら、この操作方法は、注射器の針による思いがけない突き刺しのリスクを含み、尿または血液が汚染される可能性があり、したがって針が操作者を汚染する可能性があるので、リスクはより一層深刻となる。さらに、注射器の針で袋の壁を突き破ることにより、針は、尿サンプルをくみ出すために袋の中に留まらずに、代わりに袋の第2の壁を容易に通り抜けるであろう。
【0004】
  本発明の目的は、柔軟で閉じた容器に含まれる尿、血液または任意の他の液体のサンプルを容易に集めることを可能にし、注射器の針の場合のような外傷性の可能性がなく、複雑でコストの高い材料に頼ることのない装置を、医療従事者に提供することである。
【0005】
  外傷性のない対象物とは、たとえば、針のない注射器のノズルである。しかしながら針がなければ、注射器のノズルは、容器の壁を突き刺して、取得されるべき液体に接触(access)することができない。
【0006】
  解決しようとする課題は、切断されていない部分で容器の壁を突き通す一方、液体に接触するための正確で清潔な開口を得るとともに、意図しない液体の流出あるいは漏れを防ぐことに関する。
 
【課題を解決するための手段】
【0007】
  課題は本発明に従って解決され、本発明は柔軟な袋に含まれている液体のサンプルを採取するための装置であって、次の点を特徴とする。装置は、底面およびその底面から突出するフィルム穿孔素子を有する第1の部分を備える。本発明に従う装置は、さらに、空洞を囲む底面を有する第2の部分を備え、空洞は第1の部分のフィルム穿孔素子を受けるように適合される。第1の部分は、フィルム穿孔素子を囲む接着面を有し、第2の部分は、空洞を囲む接着面を有する。さらに、2つの部分のうちの1つは、接着面の内側に、底面における開口部を有する。
【0008】
  液体を受けるための柔軟な袋、特に尿または血液の袋に接触することを、この種の装置により確立することができる。この目的のため、袋は装置の2つの部分の間に配置される。2つの部分は、第1の部分のフィルム穿孔素子が第2の部分の空洞へと向けられるように、一方が他方に向かうように配置される。2つの部分は、したがって、互いに向かって動かされる。装置の第2の部分による、袋の1つの壁の結合は、まず第1に、第2の部分の接着面によって得られ、袋のフィルムは、その結合により第2の部分の空洞に対してしっかりと保たれる。他の壁のフィルムは上を覆い、フィルム穿孔素子は、第2の部分の空洞への貫通の間に、2つの壁を突き刺す。接着による接続が、装置の第1の部分の底面に配置された接着面の接触の間に、袋の接着壁で確立される。装置の2つの部分の接着面は穴のあいた袋をシールする。袋の内容物への接触は、2つの部分のうちの1つにおける開口により得られる。
【0009】
  任意の柔軟な袋の内部にある液体のサンプルを取得するための接触は、本発明に従う装置により、単純かつ確実な方法で作ることができる。装置は、たとえば袋の内容物と袋自身の配置とを別々に配置するために、素早く、効率的および清潔な方法で液体の袋を空にするために用いることができる。装置の2つの部分のうちの1つに配置された開口部は、対応する大きさに選ばれなければならない。
【0010】
  接着面は好ましくはリングの形態で形成され、特に、両方の部分で等しい大きさとなる。確実な接着および確実な封じが、したがって一方の部分を他方の上部に押し付けることによって得ることができる。
【0011】
  穴があくべき領域における袋の表面を、たとえばアルコールを用いることによって清潔にすることは、液体の無菌のサンプリングのため、および、袋の表面を接着面で確実に結合するために望まれる。
【0012】
  本発明の1つの実施の形態において、開口部は第1の部分に設けることができ、フィルム穿孔素子は、その開口部の周りに配置された管とすることができる。管は、したがって好ましくは傾きのついた先端を有することができる。この方法によれば、確実な方法でフィルムに穴をあけることができ、液体が妨害されることなく集められることができるように、袋に形成された開口部は装置の第1の部分の開口に一致する。
【0013】
  発明の好ましい改善例において、フィルム穿孔素子は、第1の部分において、第1の部分の底面から突出していない、あるいは実質的に突き刺されていない第1の位置と、明らかに底面から突出している第2の位置との間でスライド可能である。このことは、第1の位置におけるフィルム穿孔素子により、確実な方法で、装置を袋に接着して固定することができる。フィルム穿孔素子は、結合、すなわち穴が開くべき袋の領域の封止の後にのみ第2の位置へとスライドされる。したがって、袋に穴が開けられて接触が確立される。孔をあける前に、装置に注射器または管を接続することも可能である。あるいは、液体が流れ出すことを防ぐために、開口に閉鎖部材が設けられてもよい。
【0014】
  対応する接続部、特にメスルアー(Luer)コネクタが、開口が設けられた装置の部分に配置可能であり、ダクトまたは注射器の接続のために、接着面と反対側に配置されることができる。
【0015】
  有利に、2つの部分のうちの1つにおける開口は、装置の位置決めの間の封じを確実にするために、または液体の繰返しのサンプリングを可能にするために、穿孔可能または再封止可能な薄膜で閉じることができる。
【0016】
  2つの部分は、好ましくは、連結方式で一緒に合わせることができる。
  本発明の好ましい実施の形態が、添付の図面により、より詳細に説明される。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に従う装置の好ましい実施の形態の概観図である。
 
【
図2】液体の袋への接触を確立する前の、
図1の実施の形態を示す側面図である。
 
【
図3】液体の袋に接触する間におけるm
図1および
図2の実施の形態を示す断面図である。
 
【
図4】液体の袋への接触により、
図3の実施の形態を示した図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0018】
  本発明に従う装置の好ましい実施の形態が、
図1において概略図で示される。装置は、連結方式で互いに結び付けられる第1の部分20および第2の部分23を備える。この目的のため、2つの部分20,23は各々アーム29に結合される。2つのアーム29はそれらの他方端において関節30を形成する。装置の2つの部分20,23の各々は同一の大きさの円形の底面を有し、それらの各々には、接着円形面21,24が設けられる。接着面が互いに向かい合うように、2つの部分20,23は、アーム29および関節30によって互いに結合される。
 
【0019】
  空洞25が、装置の第2の部分23において、接着円形表面24の内側に配置される。装置の第1の部分20は接着面21の内側の底面に交差する開口部26を有する。管22は傾きのついた先端を有し、第1の部分の底面から突出しているが、この開口部26の周りに配置される。第2の部分23の空洞25は、空洞25が管22を受けることができる大きさを有している。
 
【0020】
  図1の装置の側面図が
図2に示される。
図2では、装置の2つの部分20,23の間に液体の柔軟な袋13,14を位置付ける方法が示される。袋の壁の外側は、穿孔される領域において消毒されている。袋の下側の壁14は、示されるように、上側の壁が接着面21に固定される前に、第2の部分23の接着面24に接着して固定される。
 
【0021】
  袋13,14に穴が開けられて、接触をどのようにして行なうかを示す方法が、
図3の断面表現において示される。この目的のため、装置の2つの部分20,23は関節30の周りに、互いに向かって動く。この段階で、袋のフィルム13,14は、管22によって一方が他方の上部へと押し付けられる。袋の中の液体がこの領域から押し戻される。下側のフィルム14は装置の第2の部分23の接着面24に固定され、したがって空洞25へと押込まれることができない。第1の部分20が第2の部分23の方向へとさらに動く場合に、2つのフィルム13,14は、管22の傾きの付いた先端によって穴が開けられる。空洞25は管22を受ける。等しい大きさを有する接着面21,24は袋の壁13,14に押し付けられる。装置の2つの部分20,23が接触したままとなっているので、図に示されるように、液体が袋から出ることができない。装置の第1の部分21は、接着面21に向かい合う側27における注射器のための通常のメスルアーコネクタ28を含み、そのコネクタは開口部26に対応するとともに、閉鎖キャップにより閉じられるか、あるいは注射器または管に結合される。
 
【0022】
  同じ装置が
図4において開いた状態で示される。2つの部分20,23は、もはや互いに接触していない。一般的な注射器のオスルアーコネクタ15がコネクタ28に接続される。液体は管22を通じて採取することができる。接着面21,24による袋の壁13,14の結合は、穴のあいた領域の周りで袋を封止し、同時に、壁がさらに裂けることを防ぐ。