(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
非常に多くの種類の材料が、タバコ煙用のフィルター材として使用されている。最も一般的に使用されているフィルター材は、セルロースアセテートトウである。しかしながら、セルロースアセテートは、タバコ煙をろ過する能力には優れているが、他の材料より分解するのに時間が掛かり、従って環境的に望ましくないという欠陥を有する。
【0003】
不織シート材および紙からなるフィルター材が知られている。好適なシート材としてはポリビニルアルコール、再生タバコ、スターチおよびポリ乳酸などがある。これらの材料は、セルロースアセテートトウよりはるかに分解しやすいが、いくつかの欠陥がある。特に不織シート材および紙からフィルターエレメントを構成する際、所望の構造的剛性を得るためにフィルター材は、一般的に密に詰められ、このことはこれらのフィルターエレメントがセルロースアセテートからなるフィルターエレメントと全く異なる特徴を有することを意味する。これらのフィルターエレメントは、煙流に対して抵抗が大きく、従来のセルロースアセテート(CA)フィルターより圧力降下が高くなり、ユーザーは喫煙品をより強く吸引しなければならなくなる。おそらくより顕著にはこのようなフィルター材を通して吸引された煙は、従来のセルロースアセテートフィルター材を通して吸引された煙と比較して異なる味特性を有するということが判っている。さらにはフィルター材として不織シート材または紙を含むフィルターエレメントは、従来のセルロースアセテートトウフィルター材より半揮発性化合物の選択的除去に著しく劣るということが示されている。
【0004】
トリアセチン(グリセリントリアセタート)、TEC(クエン酸トリエチル)およびPEG400(低分子ポリエチレングリコール)などの添加剤をセルロースアセテートフィルターに使用することが知られている。これらの添加剤は、可塑剤として機能し、一般的にセルロースアセテートフィルターに使用して、紙巻きタバコの製造および使用の際にフィルターロッドに充分な硬さを与える。いくつかの可塑剤は、セルロースアセテートトウのタバコ煙からフェノール、o−クレゾール、p−クレゾールおよびm−クレゾールといった半揮発性化合物を選択的に除去する性能を向上させるという別の利点を有する。
【0005】
これらの可塑剤は、室温で液状であり、セルロースアセテートトウに噴霧することができる。可塑剤は、トウ内の個々の繊維をコートし、時間が経過するにつれて、隣接する繊維を互いにその接触点で結合または融合させ、これによりフィルター材の硬度または剛性を向上させて、フィルターの芯に所望の構造的強度を与える。しかしながら、この可塑剤の作用様式は、セルロースアセテートトウフィルター材に含有することができる量に上限があることを意味する。フィルターの重量で約7%を超える可塑剤を含有させた場合、可塑剤がセルロースアセテートトウに有害な作用を与え始め、これにより穴が形成され、ろ過性能が損なわれる。
【0006】
トリアセチン、TECまたはPEG400などの可塑剤をCAフィルターに含有させることは比較的一般に行われることであるが、不織シートおよび紙のフィルター材にこれらを含有させることはあまり注目されていない。第1に可塑剤は、繊維を結合するためにCAフィルターに使用され、可塑剤は不織シート材または紙(繊維がすでにシート構造体内で結合している)に加えた際にはこのような有利な効果が明らかに得られないからである。第2にこれらの一般的に使用されている可塑剤は、液体であり、これらを不織シートおよび紙フィルター材に塗布することは、不織シートおよび紙フィルター材を湿らせ、その構造的完全性が失われるので、限界があるからである。最も一般的に使用されているシート状のフィルター材である紙は、濡れると崩壊し始め、従ってユーザーの許容度が小さい。さらにポリビニルアルコールおよびポリ乳酸を含む多くのシート材は、可溶性であり、従って水溶性の添加剤を加えると材料が部分的に崩壊してしまう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、喫煙品に組み入れるためのフィルターエレメントの製造方法に関し、この方法は、添加剤をフィルター材に塗布することを含み、この添加剤は室温で固体であり、さらにこの方法は、添加剤を溶融させるために加熱することを含む。
【0015】
本発明の1つの実施態様では、添加剤は、フィルターロッド形成の前に固体、例えば粉の形体でフィルター材に塗布される。形成されたフィルターロッドは、その後添加剤を溶融するために加熱されるが、フィルター材とは接触したままである。添加剤をその後冷却し、再度固体にすると、安定性および剛性、改善された煙味特性および改善された半揮発性化合物の選択的除去の内の1つ以上を有するフィルター材およびフィルターエレメントが形成される。
【0016】
本発明の別の実施態様ではフィルター材がフィルターロッドに形成されるに添加剤を溶融し、溶融または液体の状態でフィルター材に塗布する。添加剤をその後冷却し、再度固体にすると、安定性および剛性、改善された煙味特性および改善された半揮発性化合物の選択的除去の内の1つ以上を有するフィルター材およびフィルターエレメントが形成される。
【0017】
本発明による方法は、繊維性フィルター材または喫煙品フィルターに現在広く使用されている従来のセルロースアセテートトウなどのトウを含むあらゆる種類のフィルター材に添加剤を加えるために使用してもよい。しかしながら本発明方法は、シート材、例えば不織シート材または紙から構成されるフィルター材などの従来とは別のフィルター材に添加剤を加えるために使用した場合に特に効果的であると考えられている。
【0018】
紙のフィルター材は、通常、ギャザー紙、プリーツ紙、クリンプ紙、クレープ紙を含み、さらには細断紙であってもよい。紙フィルター材は、低空気透過性で、塩基性のpHを示す傾向があり、フィルターエレメントを形成するために容易にしわ寄せまたは成形することができる。本発明のフィルターエレメントの好ましいフィルター材は、ギャザー紙またはプリーツ紙である。好適な紙の例としては、Puracel(商品名)およびMyria(商品名)紙(Filtrona plc、英国)が挙げられる。
【0019】
その他に不織シート材をフィルター材として使用してもよい。不織材は、機械的、熱的あるいは化学的にまたはこれらを2つ以上組み合わせて繊維またはフィラメントを絡ませることによって結合させたシートまたはウェブ構造体として広義に定義される。これらは、別々の繊維から直接製せされる平坦な多孔性シートになりやすい。これらは織るまたは編むなどして製せられるものではなく、繊維を糸に変える必要もない。本発明で使用される不織シート材は、容易に生分解するものであることが好ましい。その材料としては、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリ乳酸またはポリラクチド(PLA)、ポリ(e‐カプロラクトン)(PCL)、ポリ(1−4ブタンジオールスクシナート)(PBS)およびポリ(ブチレンアジペート‐co‐テレフタレート)(PBAT)などがある。他の好適なフィルター材としては、スターチ繊維およびアルギン酸カルシウムなどがある。
【0020】
不織シート材および紙は、セルロースアセテートトウに比べてより容易に生分解する。しかしながらこれらは、現在、フィルター材として使用した際にいくつかの問題点を有する。不織シート材および紙からフィルターエレメントを構成する際に所望の構造的剛性を得るためにはフィルター材を極めて密に充填しなければならず、このことはこれらのフィルターエレメントが、セルロースアセテートからなるフィルターエレメントとは全く異なる特徴を有することを意味する。これらのフィルターエレメントは、煙流に対してより大きな抵抗を示し、その結果圧力降下が従来のセルロースアセテートフィルターより大きくなり、ユーザーは、喫煙品をより強く吸引しなければならなくなる。
【0021】
本発明の方法で使用されるシート材は、紙、ポリビニルアルコール、再生タバコ、スターチまたはポリ乳酸を含んでもよい。シートフィルター材は、紙であることが好ましい。
【0022】
好ましい不織シート材は、約0.05mm超の厚さを有し、好ましくは約0.06mmから約0.08mmの厚さを有する。紙フィルター材は、坪量が約15g/m
2から約40g/m
2、好ましくは約20g/m
2から約35g/m
2の紙を含んでもよい。
【0023】
本発明の方法で使用されるシート材は、さらにまたはこれとは別にポリビニルアルコール(PVOH)を含んでもよい。PVOHは、例えば二酸化炭素および水などの小さい分子に完全に生分解する唯一の生分解性の炭素−炭素骨格を有するポリマーであるという点で他のものとは異なる。
【0024】
本発明の方法は、ポリ乳酸のシート材を使用してもよい。PLAを製する乳酸塩は、農業副産物の発酵によって得ることが可能である。
【0025】
しかしながらPVOHおよびPLAの吸湿性により、従来試みられたこのような材料の処理では、フィルターロッドが柔らかくなりすぎ、高速で作動する紙巻きタバコ製造機械において効率的に処理できなくなる。さらにPVOHおよびPLAから形成された紙巻きタバコフィルターエレメントは、充分に安定した多孔性マトリックスを供することができず、よって適当な吸引特性が得られずそして使用時の崩壊を防ぐことができない。添加剤を塗布するための本発明の方法を使用することによって、これらのシート材の質を変性してフィルターエレメントの使用に好適なものにすることができる。
【0026】
室温で液体の添加剤(低分子PEG、トリアセチンおよびTECなどの従来のセルロースアセテートフィルターによく使用されている可塑剤を含む)を使用するのとは対照的に、室温で固体の添加剤は、フィルター材を湿らせてフィルター材に損傷を与えることなくフィルターに強度および剛性を付与する。
【0027】
実際には不織シートまたは紙フィルター材を弱くするというよりは、本発明の方法は、溶融しているが、室温で再度固体化し、フィルター材を部分的に結合させる固体添加剤を使用している。従ってこの添加剤は、フィルター材の構造的完全性および剛性を実際に向上させるという利点を有する。シートフィルター材の場合、本発明による方法によって固体添加剤を加えることで、フィルターエレメントに使用するフィルター材の量を減らすことができる。これによりフィルターエレメントを形成する際の所望の硬さおよび剛性を得るために必要とされるフィルター材の量に関し、自由に選択することが可能になる。そしてこれにより製造者は、フィルターエレメントの圧力降下を調整することが可能になる。その結果、本発明によるフィルターエレメントは、従来のCAフィルターエレメントの特徴に極めて近い特徴を有するように設計することが可能になる。
【0028】
従って本発明の方法によってフィルター材に固体添加剤を加えることで、シートフィルター材の使用によって現在生じるとされている欠陥をフィルターの剛性を向上させ、煙の味を改善しかつ半揮発性化合物の選択的除去量を増加させることによって解消することができる。さらにフィルター材と固体添加剤の組み合わせにより、フィルターエレメントの分解、分散および/または生分解性を広く向上させることができる。
【0029】
本発明の方法は、不織シートおよび紙フィルター材の特徴を細かく調整することができ、これにより得られるフィルターエレメントの性能をセルロースアセテートフィルターエレメントの性能に極めて類似させることができる。またこれらの添加剤は、シートフィルター材の有益な生分解性の特徴を維持しつつ、シート材により大きな自由度およびより広い範囲の用途を与えることができる。
【0030】
本発明の1つの実施態様では添加剤は、室温で固体の高分子ポリエチレングリコールを含む。好適なPEGは、PEG600およびそれより分子量が大きいもの、好ましくはPEG1000およびそれより分子量が大きいものである。
【0031】
高分子ポリエチレングリコールは、半揮発性化合物の選択的除去に関しさらなる利点を有する。PEGをフィルターエレメントに加えることによって供されるこの半揮発性化合物の選択的除去性能は、含有されるPEGの量に比例する。室温で固体のPEGを使用する本発明の方法(以前フィルターに使用されていたPEGと対照的に)は、液状のPEGを使用した場合に加えることができる量より多い量のPEGの添加を可能にするといった自由度が得られる。これは半揮発性化合物を選択的に取り除くというフィルターエレメントの能力を望ましいレベルに簡単に調整することができるということを意味する。このことは、可塑剤として低分子PEGをセルロースアセテートフィルターに加えた場合と対照的である。セルロースアセテートフィルターは、一般に10%未満の可塑剤を含むものとして説明されている、というのはこれより多く可塑剤を含有することは、セルロースアセテートトウに悪影響を与え、穴が形成されるからである。従ってセルロースアセテートフィルターにおいて半揮発性化合物の選択的除去を行うのに利用可能な可塑剤の量は、制限される。
【0032】
本発明の方法ではPEGは、フィルターエレメントのフィルター材にフィルターエレメントの重量で最大で約30%、好ましくは最大で約20%、より好ましくは約5から10%の量で含有される。
【0033】
PEGは水溶性なので、フィルターエレメントに含有させる場合は、製品の生分解に悪影響を与えないようにしなければならない。しかしながら実際には不織シート材または紙をフィルター材として含むフィルターエレメントにPEGを加えることによって、生分解性を高めるという驚異的な発見をした。
【0034】
紙フィルター材および添加剤を使用した場合の生分解性への影響を評価する研究を行った。環境条件下の紙巻きタバコの吸い殻の崩壊性を評価した。サンプルは、添加剤を含まないPuracel(商品名)(7mg)からなるフィルターおよび7%のPEG400を含むPuracel(商品名)からなるフィルターを使用した。その結果は、添加剤としてPEGを含有させた場合、芝生表面での吸い殻の生分解速度が極めて速いことを示している。これは吸い殻を餌にする微生物、昆虫などの存在およびこれらを吸い殻に引きつけるPEG添加剤の存在によるものであると推測される。高分子PEGを添加剤として使用した場合も同じような効果が観察されると推測される。
【0035】
本発明の方法で使用されるその他の添加剤としては、MPEG750、1000、2000、3000および5000などの高分子メトキシポリエチレングリコール(MPEGs)および蜜蝋、カルナバ、セラック、キャスターワックス、パラフィンおよび種々の合成ワックスなどの室温で固体のワックスなどがある。
【0036】
必要であれば本発明の方法は、さらにタバコ抽出物、グリセリン、メンソール、炭素繊維、炭素粒子などの添加剤をシートフィルター材に組み込むことを含んでもよい。
【0037】
本発明の方法のさらなる利点は、本発明の方法を使用して添加剤が塗布されたフィルターエレメントが、その後に液状添加剤などの添加剤を添加しても安定しているということである。シート材を湿らさずにシート材に塗布すするのが困難である液状添加剤などのその他の添加剤をフィルターロッドに添加して、必要とされるフィルターの特徴を調整したり、または風味を向上させるための風味剤などの特性をフィルターエレメントに付与することができる。
【0038】
本発明による方法は、フィルター材に添加剤を塗布するための異なる方法を包含する。
【0039】
1つの実施態様では本発明の方法は、液状の添加剤をフィルター材に塗布することを含む。これを行うためには添加剤は、加熱し、噴霧しなければならず、またはそうでなければフィルター材がフィルターエレメントからなるフィルターロッドまたはコアに形成される前にフィルター材に塗布される。
【0040】
この実施態様は、従来のフィルター製造装置にほとんどを変更を加える必要がないので、注目されている。実際に必要な変更は、添加剤が溶融状態になり、その状態でフィルター材に塗布されるように添加剤を加熱する手段を設けるだけである。加熱は、比較的簡単に制御および監視することができる。また熱は主に添加剤だけに加えられるので、その他のフィルターエレメントの成分は局所的な熱に晒されなくてすむ。
【0041】
この方法は、繊維性トウフィルター材および不織シート材および紙に適用可能である。このようなシート材は、ある程度の張力下で供給されるが、液状添加剤を塗布しても問題になるようなシート構造を弱体化することがない。
【0042】
別の実施態様では本発明の方法は、フィルター材がフィルターエレメントからなるフィルターロッドまたはコアに形成される前に固体、例えば粉状の添加剤をフィルター材に塗布することを含む。フィルターロッドが形成されると、フィルターロッドは、加熱され、添加剤を溶融する。添加剤は溶融し、その後再度固体化され、フィルター材を湿らせずに結合させる。
【0043】
この方法は、添加剤を制御された均一な方法で添加剤の無駄を最小限に抑えてフィルター材に塗布することができる。また液体をフィルター材に塗布することに関連して生じ得る不利益を防ぐことになる。例えばシートフィルター材の場合、この実施態様は、液体を塗布することによって起こりえるシート構造の弱体化を防ぐことができる。
【0044】
固体添加剤が本明細書で述べた不織シート材および紙などのシート材に塗布される場合、シートがフィルターロッド形状に維持されつつ、確実に固体添加剤がシートフィルター材と接触した状態を維持するためのいくつかの工程を行う必要が生じる。これは、なんらかの接着剤の塗布または特別なシート材の配向を必要とする。
【0045】
シート材を含むフィルターエレメントは、通常、シート材をクリンプし、その後ギャザリングして円筒状のフィルターロッドを形成する工程を含む方法を使用して製造される。添加剤は、クリンプ工程前または中に加えられるか、またはシート材がクリンプされた後にシート材に加えてもよい。添加剤をクリンプされた材料にそれがギャザリングされてフィルターロッドに形成される際に加えてもよく、これによりロッド内にすぐに含有され、接着する必要がないという効果が得られる。
【0046】
添加剤は、あらゆる好適な接着剤、例えば液体スターチ接着剤またはEVAおよびPVA接着剤を使用してフィルター材に接着させてもよい。
【0047】
固体添加剤は、粉またはフレークまたはペレットなどのそれより大きいピースとしてシートフィルター材に塗布してもよい。
【0048】
添加剤は当業者に知られているあらゆる好適な方法でフィルター材に塗布してもよい。例えば粉状の添加剤をフィルター材に噴霧してもよく、またはフィルター材と直接物理的に接触するまたは接触しないアプリケーターで塗布してもよい。添加剤はばらばらの状態でフィルター材に塗布してもよく、例えば噴霧または撒き散らしてもよく、またはフィルター材にプレスしたりこすりつけたりなどしてある程度の力を利用して塗布してもよい。
【0049】
特定の実施態様ではフィルター材は、フィルター材上または内に埋め込まれた固体添加剤によって形成される。このようにして室温で固体の添加剤をフィルター材に塗布することによって本発明の方法を単純化することができる。フィルター材がフィルターロッドに形成されると、ロッドを加熱して添加剤を溶融させ、その後再度固体化させる。
【0050】
不織シート材および紙などのシート材上またはシート材内に種々の材料を添加することが知られている。例えば添加剤をシート材にその製造工程中または製造後の処理工程の一部として塗布してもよい。このようにして添加剤は、シート内に組み込まれる、またはシート材の片面または両面へのコーティングとして組み込まれる。添加剤は、シート内または表面に均一に存在してもよく、あるいはシート材に設けられたパッチまたはストリップなどの分散した領域に存在してもよい。
【0051】
繊維性フィルター材は、繊維全体に分散した固体添加剤粒子を使用して調製してもよい。このような粒子は、繊維に接着させる必要がない。これとは別に繊維材が充分に密な状態にある場合に粒子を隣接する繊維間に捕捉させてもよい。
【0052】
液状の添加剤をフィルター材に塗布する場合、本発明の方法の加熱工程は、充分な熱を添加剤に加えて確実に添加剤が溶融して選択された用途の様式に好適な粘度になるようにすることを含む。溶融したまたは液状の添加剤は、噴霧またはプリントしてもよく、あるいはフィルター材を液体添加剤を浸してもよい。
【0053】
1つの実施態様では溶融または液状添加剤をフィルター材に塗布するシステムは、添加剤が液状に保持される加熱チェンバーとポンプとフィルターに形成される前にフィルター材に液滴を噴霧するように構成された1つ以上のノズルを有するホースとを含む。
【0054】
溶融または液状の添加剤をフィルター材に塗布するための好適な多くのシステムが知られている。このようなシステムは、SPI Developments、C.B.Kaymich&Co.LtdまたはKohl Maschinenbau GmbHから入手可能である。
【0055】
フィルター材がロッドまたはコアに形成された後に添加剤が溶融される場合、ロッド全体に亘って分散している添加剤全てを確実に溶融するために充分な熱を加える必要がある。
【0056】
フィルター材および全てのラッパー(紙である場合が多くそして高温に晒されると焼けたりまたは焦げたりする場合がある)などのフィルターロッドの他の部材に有害な作用を与える場合があるので、形成されたフィルターロッドの加熱は慎重に行わなければならない。
【0057】
明らかにフィルターロッドが加熱される温度および加熱時間は、添加剤の融点によって決まる。好ましい添加剤であるPEG1000の融点は、約37°Cであり、従ってこの場合フィルターロッドは、37°Cを越える温度に加熱される。フィルターロッドは、40°Cを越える温度に、好ましくは45°Cを越える温度に、最も好ましくは50°Cを越える温度に加熱される。さらに外方領域だけでなくロッド全体が確実に加熱されるように充分な時間加熱されなければならない。
【0058】
加熱はあらゆる好適な手段を使用して行われる。例えばフィルターロッドまたはフィルターエレメントを加熱エレメントに極めて接近させてもよい。これとは別にまたは加えてフィルターロッドまたはフィルターエレメントを熱空気またはスチームなどの熱気体流によってまたはマイクロ波放射などの放射を利用して加熱してもよい。
【0059】
熱は、フィルターロッドが形成されるとすぐにフィルターロッドに加えてもよい。言い換えれば、フィルターロッドの加熱は、ガーニチャーでのフィルターロッドの形成およびフィルターロッドがセクションに分けられる切断との間のある段階で行ってもよい。ロッドの加熱は、ロッドが機械内を直線状に移動するので、通常、1秒未満といった非常に短い時間で行われる。明らかに現在のフィルターロッドは加熱工程を経ずに形成されるので、フィルターロッドの形成および加熱を同時に行う場合には現行の装置に高額な変更を必要とする。
【0060】
このためフィルターロッドは、後の段階で加熱されるのが好ましく、そしてこの加熱は、フィルターロッドを形成する装置とは基本的に別のヒーターを使用して行われる。加熱は、数本分の長さのフィルターロッドが、確実に全ての添加剤が溶融し、フィルター材に結合するように長い時間、高温に維持される別個のコンディショニング工程で行われるのが好ましい。
【0061】
本発明の方法は、プラグラッパーなどの好適なラッパーにフィルターロッドを包むことをさらに含んでもよい。この場合、フィルターロッドが包まれる前に加熱が行われる。これとは別にフィルターロッドを包んでから加熱してもよい。
【0062】
いくつかの実施態様では組み立てられたフィルターは、添加剤を溶融するために加熱されるが、この方法はフィルター材の断熱性によって複雑になる。さらにフィルターの製造速度は、フィルターを加熱するのに利用できる時間が限られていることを意味する。それでもやはり組み立てられたフィルターの加熱は、種々の方法で行うことが可能である。例えばフィルターロッドを熱空気が存在する加熱されたドラム上などの伝導による熱に晒してもよい。これとは別にフィルターロッドのトレイ(トレイ1つ当たり4,000本のフィルター)を熱空気が存在する加熱されたトンネルまたはそれと類似の構造のものの中を通過させてもよい。フィルタートレイは、これとは別にマイクロ波放射などの放射を利用して加熱してもよい。
【0063】
本発明の方法は、フィルターエレメント内に粒状材を組み込む工程をさらに含んでもよい。好適な粒状材としては、吸着剤(例えば活性炭、チャコール、シリカゲル、セピオライト、アルミナ、イオン交換材などから選択される)、pH変性剤(例えばNa
2CO
3などのアルカリ性材、酸性材)、風味剤、他の固体添加剤およびこれらの混合物などがある。
【0064】
粒状材は、高度な特異性を有さずに煙成分を吸着することができる比較的に表面積の大きい一群の材料から選択されると有利である。好適な一般的な吸着剤は、カーボン、活性炭、活性チャコール、活性ヤシカーボン、活性コール系カーボンまたはチャコール、ゼオライト、シリカゲル、海泡石、酸化アルミニウム(活性化されたまたはされていない)、炭素樹脂またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0065】
本発明の方法で使用可能な粒状材の一種として、カーボン、例えば活性炭またはチャコールまたは他の炭素性吸着材などがある。好ましい種類の活性炭は、活性ヤシカーボンである。
【0066】
粒状材は、粒状材がフィルターエレメント全体にまたはフィルターエレメントのいくつかの部分(全てではなく)に散りばめられるようにフィルターエレメントに組み入れてもよい。粒状材は、コアの長手方向の全長に亘って散りばめてもよい。これとは別に粒状材をコアの一端から他端の手前のセクションまで散りばめてもよい。これとは別に粒状材は、コアの端部から延びていない分散した領域またはコアの端部にあってもよい。異なる領域が異なる充填量の粒状材および/または異なる種類の粒状材を含んでもよい。
【0067】
本発明の方法は、フィルターエレメントを好適なラッパーに包むことをさらに含んでもよい。
【0068】
フィルターエレメントのラッパーは、好ましくは紙のラッパーであり、最も好ましくは坪量が約20g/m
2から約35g/m
2、好ましくは約27g/m
2であるプラグラッパーなどの従来のプラグラッパーである。プラグラッパーは、多孔性または非孔性であってもよい。
【0069】
本発明の方法は、表面の1つ以上の部分に粒状材が接着したラッパーの使用を含む。好ましくは粒状材は、ラッパーの2つ以上の部分に接着され、これらの部分は互いに円周方向に離れて位置し、これらの部分の少なくとも1つは、ラッパーの長手方向の全長に亘って延びる。
【0070】
本発明の方法によって製造される喫煙品フィルターエレメントを喫煙品フィルターに組み入れてもよい。
【0071】
喫煙品フィルターは、本発明の方法によって製造されたフィルターエレメントを1つ含んでもよい。これとは別に喫煙品フィルターは、本発明の方法によって製造されたフィルターエレメントを2つ以上含んでもよい。言い換えればフィルターエレメントは、複合(または多成分)フィルターの一部を構成してもよい。好適には複合フィルターのフィルターエレメントは、各フィルターエレメントの端部が隣のフィルターエレメントの端部と当接した状態で互いの長手方向に配されている。複合フィルターは、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の個別のまたは分散したセクションを有してもよい。1つの実施態様ではフィルターは3つのセクションを有する3重フィルターである。別の実施態様ではフィルターは、2つのセクションを有する2重フィルターである。
【0072】
複合フィルターのフィルターセクションは、同じものであってもよく、または1つ以上のセクションは、他の1つのセクションまたは複数のセクションと異なる組成のものであってもよい。例えばいくつかの実施態様では1つ以上のセクションは、(i)セルロースアセテートフィルター材、(ii)クレープ、クリンプまたはギャザー紙材などの生分解性のフィルター材、(iii)1つ以上のカプセル化される吸着剤または風味剤などの添加剤および/または(iv)吸着剤などの粒状材を含むキャビティーを任意に含んでもよい。
【0073】
本発明の方法によって製造される喫煙品フィルターエレメントは、喫煙品に組み入れてもよい。このフィルターエレメントは、上述したような喫煙品フィルターの形状であってもよい。
【0074】
このフィルターエレメントおよび/またはこのフィルターエレメントを含むフィルターは、従来のチッピング上包によってラッパーに巻かれた喫煙可能な充填材ロッド(例えばラッパーに包まれたタバコロッド)に取り付けられ、喫煙品を形成し、この喫煙品は、紙巻きタバコであってもよい。
【0075】
好適には喫煙可能な充填材は、タバコ材またはタバコ代替材であってもよい。喫煙可能な材料は、タバコ材であることが望ましい。好適にはタバコ材は、葉柄、葉身およびタバコダストの内の1つ以上を含む。好ましくはタバコ材は次の種類、バージニアまたは熱風乾燥タバコ、バーレータバコ、オリエンタルタバコ、再生タバコの内の1つ以上を含む。また好ましくは喫煙可能な材料は、タバコ材のブレンドを含む。
【0076】
喫煙可能な充填材は、次の内の1つ以上を含む、燃焼添加剤、灰形成向上剤、無機充填材、有機充填材、エアロゾル発生手段、バインダー、風味付けおよび/または着色剤。
【0077】
チッピング上包は、換気または非換気処理された上包であってもよい。
【0078】
詳述した本発明の方法およびシステムの種々の変更および変型は、本発明の範囲から逸脱することなく可能であることは当業者には明らかである。本発明を特定の好ましい実施態様に関連づけて説明してきたが、当然のことながら特許請求の範囲に記載されている本発明は、このような特定の実施態様に限定されるものではない。勿論、本発明を実施するための上述した様式の当業者に自明である種々の変更は、以下の特許請求の範囲内に含まれる。