特許第5872553号(P5872553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5872553印刷インキ、転写、およびポリオレフィン製品の装飾の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872553
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】印刷インキ、転写、およびポリオレフィン製品の装飾の方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/023 20140101AFI20160216BHJP
   C09D 11/10 20140101ALI20160216BHJP
【FI】
   C09D11/023
   C09D11/10
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-521765(P2013-521765)
(86)(22)【出願日】2011年7月27日
(65)【公表番号】特表2013-539479(P2013-539479A)
(43)【公表日】2013年10月24日
(86)【国際出願番号】US2011001334
(87)【国際公開番号】WO2012015482
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2013年6月28日
(31)【優先権主張番号】12/804,794
(32)【優先日】2010年7月28日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020616
【氏名又は名称】スティーブンスン,マイケル,ジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リーブス,ロバート,エイ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンスン,マイケル,ジェイ
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−077580(JP,A)
【文献】 特開平11−310738(JP,A)
【文献】 特公昭29−006357(JP,B1)
【文献】 特開平10−297125(JP,A)
【文献】 特公昭49−036963(JP,B1)
【文献】 特表2005−504621(JP,A)
【文献】 特開昭62−143983(JP,A)
【文献】 特開昭62−143984(JP,A)
【文献】 特開昭62−054775(JP,A)
【文献】 特開2010−047670(JP,A)
【文献】 特開2001−076850(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/135763(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00〜C09D201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)0.94〜0.97gm/ccの密度を有する高分子量および超高分子量のポリエチレン粒子からなる部類から選択された細分化ポリオレフィン樹脂粒子を、単独に用い、または0.91〜0.94gm/ccの密度を有するポリエチレン粒子および0.9gm/cc以上の密度を有するポリプロピレン粒子と混合させた微細分化ポリオレフィン樹脂粒子であって、1ナノメートル〜150マイクロメートルの大きさを有し、ここで、該樹脂粒子は、15〜45重量%の量で存在する、微細分化ポリオレフィン樹脂粒子;
b)脂肪族および芳香族炭化水素からなる部類から選択された15〜45重量%の炭化水素溶媒であって、148.9℃〜260.0℃の範囲の温度において完全除去のために必要な揮発性を有する炭化水素溶媒;ならびに
c)0.05〜2.0重量%の分散剤であって、炭化水素溶媒中に樹脂粒子の分散液を安定化するのに十分な分散剤;ならびに
d)着色剤、金属粒子、鉱物粒子、およびそれらの混合物よりなる部類から選択される1〜69.95重量%の添加剤;
からなる印刷インキ。
【請求項2】
前記着色剤が顔料である請求項1に記載の印刷インキ。
【請求項3】
前記添加剤は5〜45重量%の濃度での鉱物である請求項1に記載の印刷インキ。
【請求項4】
前記ポリエチレン樹脂粒子は0.1から100マイクロメートルの大きさを有する請求項1に記載の印刷インキ。
【請求項5】
前記ポリオレフィン樹脂が0.1〜10g/10分のメルトインデックスを有する請求項1に記載の印刷インキ。
【請求項6】
前記ポリエチレン粒子が15〜45重量%の範囲の量存在する請求項1に記載の印刷インキ。
【請求項7】
前記添加剤が1〜45重量%の濃度での着色剤である請求項1に記載の印刷インキ。
【請求項8】
前記添加剤が染料である請求項7に記載の印刷インキ。
【請求項9】
a)0.94〜0.97gm/ccの密度を有する高分子量および超高分子量のポリエチレン粒子からなる部類から選択された細分化ポリオレフィン樹脂粒子を、0.91〜0.94gm/ccの密度を有するポリエチレン粒子および0.9gm/cc以上の密度を有するポリプロピレン粒子と混合させた微細分化ポリオレフィン樹脂粒子であって、1ナノメートル〜150マイクロメートルの大きさを有し、ここで、該樹脂粒子は、15〜45重量%の量で存在する、微細分化ポリオレフィン樹脂粒子;
b)脂肪族および芳香族炭化水素からなる部類から選択された15〜45重量%の炭化水素溶媒であって、148.9℃〜260.0℃の範囲の温度において完全除去のために必要な揮発性を有する炭化水素溶媒;
c)0.05〜2.0重量%の分散剤であって、炭化水素溶媒中に樹脂粒子の分散液を安定化するのに十分な分散剤;ならびに
d)着色剤、金属粒子、鉱物粒子、およびそれらの混合物よりなる部類から選択された1〜69.95重量%の添加剤;
からなる印刷インキ。
【請求項10】
前記樹脂粒子は、0.91〜0.94gm/ccの範囲の中密度ポリエチレン粒子および前記高分子量および超高分子量のポリエチレン粒子を等しい重量含む請求項9に記載の印刷インキ。
【請求項11】
1〜10重量%の鉱物を、インキの粘度を印刷にとって最適な値に調節するために十分な量含む請求項1に記載の印刷インキ。
【請求項12】
1〜10重量%の前記鉱物を、インキの粘度を印刷にとって最適な値に調節するために十分な量含む請求項11に記載の印刷インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、印刷インキ、該印刷インキにより作成される熱転写物、およびポリオレフィンの製品を装飾するための熱転写物を使用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2.先行技術の簡単な記述
非常に多くの様々な製品は、射出成形、ブロー成形、回転成形および熱成形などの製造技術によって、ポリオレフィン樹脂、特にポリエチレンおよびポリプロピレン樹脂から成形されている。樹脂は接着剤コーティングに耐性をもつため、これらの樹脂から成形された製品のラベルを含む装飾は、しばしば、永久的ではない。適用されたコーティングの密着性を向上させるための一般的な手法は、被膜の適用前に、これらの樹脂よりなる成形品の表面を酸化するものである。この酸化処理は、いくつかの成功を収めているが、それは成形品の製造時間とコストを増加させる。
【0003】
ポリオレフィン樹脂から成形された製品の未処理の表面へのラベルの接着性を改善する試みは、例えば米国特許第7,622,171号明細書に開示されるような、酢酸ビニル樹脂の、粘着付与された炭化水素樹脂のおよびマイクロクリスタリンワックスの接着層による転写物として製品に適用される、熱活性化ラベルの使用が含まれている。この手法は、しかし、製品表面にラベルを粘着的に結合するものである。ラベルは、表面と一体ではなく、表面の上部に位置し、摩損や剥離しやすい。
【0004】
回転成形によってポリオレフィン樹脂から製造された製品の装飾に関連した問題は、そのまま成形サイクルでポリオレフィン製品の表面にかたどられるインモールド転写として、および予備成形されたポリオレフィン製品の表面に適用されたオンモールド転写として使用されてきた、オイルやワックスにおける顔料や染料を用いて印刷される転写が、排除されていることである。米国特許第4,252,762号、同第4,519,972号、同第5,840,142号、同第6,613,830号、同第7,128,970号および同第7,641,842号明細書を参照。これらの転写では回転成形品の表面に融着させる装飾的な層によって恒久的な装飾を成功裏に達成しているが、それらは大量生産ポリオレフィン製品の高速印刷および装飾のために使用される機器と容易には適合しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,622,171号明細書
【特許文献2】米国特許第4,252,762号明細書
【特許文献3】米国特許第4,519,972号明細書
【特許文献4】米国特許第5,840,142号明細書
【特許文献5】米国特許第6,613,830号明細書
【特許文献6】米国特許第7,128,970号明細書
【特許文献7】米国特許第7,641,842号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の目的
ポリオレフィン樹脂、特にポリエチレンとポリプロピレン樹脂の成形品の壁に適し融着できるラベル、リボンまたは箔のような熱転写物を印刷するために使用可能なインキを提供することが本発明の目的である。
【0007】
また、ポリオレフィン成形品の表面に融着させることができるインディシア(indicia)層を有する熱転写物を提供することが本発明の目的である。
【0008】
同様に、予備成形されたポリオレフィンの製品にラベルを適用するために従来使用される熱および圧力アプリケーターで使用することができる熱転写物を提供することが本発明の目的である。
【0009】
さらに、実質的にすべてリサイクル可能な成分を含んでいることで、環境に配慮した印刷インキを提供することが本発明のさらなる目的である。
【0010】
成形サイクルが形成されているようなポリオレフィン製品の壁に融着させるためにインモールド転写として使用することができる熱転写物を提供することは本発明のもう一つの目的である。
【0011】
ポリオレフィン製品の表面にインディシアを融着させる感熱印刷で使用できる熱転写箔を形成するために用いることができるインキを提供することが本発明のもう一つの目的である。
【0012】
他のおよび関連する目標は、本発明に関する以下の説明から明らかになるであろう。
【0013】
発明の簡単な説明
本明細書で用いる、「インキ」は、インキにより形成されるコーティングに不透明性または物理的特性を付与するための、顔料、染料や鉱物などの分散添加剤を含有する液体ないし半液体ビヒクルの組成物を意味するものとする。当然のことながら用語は、着色または色の液体またはペーストの慣用の定義および、耐摩耗性および難燃性成分などの特性を向上させる添加剤を含む液体またはペーストもまた含む。
【0014】
本発明のインキは、微細分化ポリエチレン粉末の混合物、脂肪族または芳香族炭化水素溶剤、分散剤、染料または顔料のようなインディシア用添加剤および/またはアルミナ、ガラスビーズ、シリカ、金属フレーク等などの物性を向上させる添加剤を含む。好ましくは高分子量および超高分子量のポリエチレンが、単独でまたは低密度ポリエチレンとの混合物で、インキの25〜45重量%の量で使用される。ポリエチレンは、1ナノメートル〜150ミクロン、好ましくは0.1〜100ミクロンの粒子サイズを有することができる。
【0015】
印刷インキは、単一の印刷工程での単色転写用または複数の印刷工程での多色転写用のキャリアシート上に印刷された装飾層を有する転写物を提供するために使用することができる。複数の印刷工程が使用される場合、それぞれの工程からの印刷された層は次の、続く層の印刷前の炭化水素溶媒を除去するため熱処理される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適な実施形態の説明
インキ:
本発明の印刷インキは、1ナノメートル〜150ミクロン、好ましくは0.1〜100ミクロンの粒子サイズを有する、非常に微細分化されたポリオレフィン樹脂、特に粉末ポリエチレンまたはポリプロピレン樹脂の分散液である。ポリエチレンならびに、ポリエチレンの共重合体例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレンアクリル酸メチル共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体などのポリエチレンの共重合体もまた、単独で、またはポリエチレンまたはポリプロピレンとの混合物として使用することができる。好ましい樹脂はポリエチレン、特に、0.94〜0.97g/ccの密度および低圧ないし中圧でポリオレフィン成形品に適用される熱転写物を印刷するため、狭い分子量分布を有する、高分子量のならびに超高分子量のポリエチレンである。インキが中圧ないし高圧で適用される熱転写物の製造のために使用される場合、0.91〜0.94g/ccの中密度を有する低分子量ポリエチレンが単独または高密度樹脂の等量との混合物で、使用することができる。ポリプロピレンは単独で、またはポリエチレンとの混合物で、使用することができる。ポリプロピレンは0.9g/ccより大きい高密度ポリプロピレンが好ましい。
【0017】
粉末ポリオレフィン樹脂またはそれらの混合物は、ASTM D−1238標準規格試験において約0.1〜100、好ましくは0.1〜10g/10分の低いメルトインデックスを有するのがよい。ポリオレフィン樹脂粉末は、インキ組成物中15〜約70重量%好ましくは15〜45重量%の濃度で使用される。
【0018】
ポリオレフィン樹脂粉末は、印刷温度で不揮発性であり、および印刷されたイメージの熱処理の温度で実質的に全除去のために十分な揮発性を有している、脂肪族または芳香族炭化水素溶剤中に分散している。炭化水素溶媒は、インキの連続相を形成する。好ましくは、溶媒は透明で、明るい外観とセーボルト色30以上である必要がある。最も好ましくは、脂肪族炭化水素溶剤が使用される。炭化水素溶媒は、インキ組成物中25〜約45重量%、好ましくは30〜40重量%の濃度のポリエチレンとポリプロピレン樹脂粉末(樹脂と溶剤のほぼ等しい重量部)の安定な分散液を形成するのに十分な濃度で使用される。
【0019】
分散剤は、炭化水素溶媒中のポリオレフィン樹脂粉末、顔料、染料、及び添加剤の分散を促進し、安定させるために添加される。これは、液体ないしチキソトロープペースト稠度を有するインキを形成する。炭化水素溶媒中の染料および顔料を分散させるために有用であるとして認められる多数の作用物質、例えばロジン誘導体、フッ素化ポリエステル、アクリル樹脂、リン酸ポリエステル、エチレンアミン、例えばジエチレントリアミンエチレンジアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、蒸留トール油脂肪酸などのマンガン石鹸などを使用することができる。米国特許5,792,730号明細書は、ヒドロカルビル置換無水コハク酸またはその反応性等価物とアルキレンポリアミンとの縮合生成物であって、該アルキレンポリアミンが縮合アミンであるものとして有用な分散剤を記載する。好ましい分散剤は、スクシンイミド分散剤である。分散剤はまた、顔料や鉱物などの他の添加剤が存在する場合でも、樹脂粉末の炭化水素溶媒中での分散を促進し、安定させるために必要である濃度で使用されている。分散剤の典型的な濃度は、インキ組成物中約0.05ないし2.0重量%である。
【0020】
インキ組成物はまた、インキの使用目的のために選択される添加剤を含んでいる。任意の添加剤の粒子サイズはポリオレフィン粒子と同じ大きさの範囲にあることが好ましい。添加剤は、添加剤の選択に依存して限定される濃度、1〜70重量%の濃度で使用されている。インキはグラフィックまたは英数字層の製造のための印刷インキとして使用する場合は、着色剤が、1〜45重量%の濃度で添加される。印刷インキのための有用な着色剤はフレークやボール状の顔料や染料並びに金属粒子であってもよい。好ましい顔料は、淡黄色、黄色、黄褐色、褐色、サーモンおよび黒などの色相の、二酸化チタン(ルチル アナターゼ)、酸化亜鉛、酸化鉄;淡黄色ないし赤橙色の着色のためのクロム酸鉄とモリブデン酸鉄;クロム酸鉛、硫酸鉛、モリブデン酸鉛、クロムイエローおよびオレンジ、様々な黄色の、オレンジ、赤およびえび茶色の、純粋なカドミウムカラーまたは硫化バリウムまたは硫セレン化カドニウム、ニッケルおよび二酸化チタンとの混合物としての、カドミウム顔料;フェリフェロシアン化物のナトリウム、カリウムもしくはアンモニウムの配位化合物;群青(陶土、炭酸ナトリウム、シリカ、硫黄と還元剤の焼成混合物);アルミン酸コバルト(コバルトブルー);酸化クロム;アルミニウム亜鉛銅ホウ酸塩粉末のような金属粉末顔料;メタリックシルバー顔料;塩基性炭酸鉛、ビスマスオキシクロライドおよびチタン被覆ウンモ等の真珠光沢と真珠箔フレーク等々、などの無機顔料である。各種有機顔料は、アゾ顔料、例えばベンズイミダゾロン顔料、ピラゾリル顔料、銅フタロシアニン、キナクリゾン、アントラキノン類、縮合顔料、テトラクロロイソインドリノン、カーボンブラック等を使用することができる。使用することができる他の顔料は、真珠光沢顔料;昼光蛍光顔料(プラスチックマトリックス中に溶解した蛍光染料);および蛍光インキベースである。
【0021】
本発明のインキにおいて使用のため選択される顔料または染料は、転写物のインディシア層が成形品の壁に融着されるような高温に加熱されるので、高温、例えば最大約500°Fで安定であるべきである。
【0022】
インキ組成物中の着色剤の濃度は、着色剤の選択に依存して、大幅に変わる。通常、濃度は1〜45重量%、好ましくは約25〜35重量%であろう。
【0023】
単独または着色剤との組み合わせで使用することができる他の添加剤は、鉱物、例えば長石、石英、雲母、ヘマタイト、マグネタイト、クロマイトスピネル、ルチル、タルク、方解石、蛍石、燐灰石、正長石、石英、コランダムならびに、合成鉱物例えば、炭化ケイ素、アルミナ、二酸化ジルコニウム、すりガラス粒子、ガラスビーズ、溶融シリカ粒子またはビーズおよび結晶性シリカ、これらは白色または無色のコーティングのために好ましく:タルクの粒子、炭酸カルシウム、ベントナイト粘土:セラミックス例えばシリカ−アルミナセラミックスおよびアルカリアルミノケイ酸塩セラミックスを含む。これらの添加剤は、インキ組成物の物性を調整するために使用され、意図された印刷操作の最適値へインキの粘度を調整するよう必要に応じた濃度でインキに添加することができる。鉱物はまた、転写層の収縮を低減するためまたは溶融転写の耐摩耗性を高めるために添加することができる。
【0024】
鉱物添加剤の典型的な濃度は、1〜70重量%好ましくは5〜40重量%である。従来のスクリーン印刷用の粘度は、スクリーン印刷に適する10,000〜20,000センチポイズ秒からの粘度を有するチキソトロピー性液体を提供するために、1〜10重量%の濃度に添加剤で調整される。他の印刷方法は、例えば、オフセット印刷では、異なる粘度のインキを必要する。
【0025】
電気回路は、例えば、添加剤としてアルミニウム、ニッケル、銀、銅などの金属粒子の使用による転写を含めることができる。金属粒子はまた、本発明のインキ中の増粘剤としての役割を果たす。金属フレークが好ましくおよびその優れた電気伝導性のために銅フレークは最も好ましい。このように、RFID回路はポリエチレン成形品の表面に融着させることができる。
【0026】
インキ組成物は全く着色剤を有していないクリアコーティングを印刷するために使用することができる。そのような無色のコーティングでは添加剤の濃度は、粘度、収縮および磨耗制御を調整するために15〜70重量%の範囲にできる。
【0027】
本発明のインキは、ワックスを含まないし接着剤を含まないが、これらの添加剤は、印刷イメージの物理的特性を損なうためである。インキは、完全に再利用可能で、適用されるポリオレフィン表面へ再利用できない成分を追加しないので、環境に配慮した組成物である。
【0028】
好適な印刷方法:
転写物を製造するために各種印刷法が使用でき、例えばエッチングまたは彫刻クロムメッキまたは銅ロールによるグラビア印刷;柔軟な印刷版によるフレキソ印刷、およびスクリーン印刷である。好ましい方法は、紙やプラスチックフィルム、例えば、好ましくは透明であるポリエステルフィルムであってよいキャリアシート上へのグラフィックのスクリーン印刷である。
【0029】
キャリアシートは、その貯蔵、輸送及び取扱い中に印刷された転写物を支持する働きをし、および転写物がポリエチレン成形品に適用されるときに取り除かれる。多種多様なシート、ロールまたはリボンがキャリアシートとして使用することができ、紙、合成紙、プラスチックフィルム例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等のキャストフィルム、インフレーションフィルム、カレンダーフィルムまたは押出フィルムなどから形成することができる。好適なフィルムはポリエステルフィルムである。
【0030】
スクリーン印刷用の便利なスクリーンはナイロンとポリエステル糸からなるものであってよく、しかし、鋼製スクリーンを使用することもまたできる。スクリーンの領域は、印刷するイメージをネガにしたものであるステンシルを形成する非透過性の材料で遮断され、つまり、オープンスペースは、インキが現れる場所である。スクリーンは1インチ当たりのスレッドの数(tpi)であるメッシュカウントで規定されている。スクリーン印刷のための一般的なメッシュカウントは85tpi〜355tpiの範囲である。メッシュカウントの選択は、印刷することができるインキ堆積の厚さおよびハーフトーンのサイズを決定する。ファインメッシュ(230〜300メッシュ)のスクリーン印刷は、印刷イメージの写真品質を得るためのハーフトーン作品のために好ましい。
【0031】
単色グラフィックスは単一の工程で印刷される。多色グラフィックスは、通常、各色が別々に印刷されるので複数の印刷工程で印刷される。あるいは、2つ以上のステンシルを、単一の工程で2色以上の印刷を可能にする、バット位置合わせ(butt registration)に配置することができる。グラフィックス用の背景層を、背景のために選択される顔料、例えば、白い背景に使用される二酸化チタン粉末を含有するインキを使用して、インディシア印刷層の上に印刷することができる。グラフィックまたはインディシア層は、0.5〜約2ミル好ましくは約1ミルの厚さで印刷される。
【0032】
好ましいスクリーン印刷法は、周囲温度で実践されている。グラフィックや背景を印刷するのに最適なスクリーン印刷のために、インキは、印刷温度で10,000〜20,000センチポイズ秒の粘度を持っている必要がある。
【0033】
印刷イメージは、実質的にすべての炭化水素溶剤を除去するために熱的処理される。これは、キャリアシートおよび印刷されたイメージを輸送する連続ベルトコンベアを有するガス焚きまたは電気赤外線加熱乾燥オーブンにおいて、実質的にすべての炭化水素溶媒を揮発するのに十分な、例えば、通常、300゜F〜500°Fの温度におけるオーブンでおよび例えば、30秒〜数分の時間を介して好ましく達成される。オーブンは、炭化水素溶媒を回収して再利用する、揮発性物質回収装置を備えることができる。
【0034】
印刷層の移行を回避するには、後続のまたは隣接層の印刷前に印刷された各層を熱処理することが好ましい。
【0035】
転写物の適用
ホットスタンプ:
転写物は部品の壁に転写物を融着するための適当な熱、圧力、および時間による成形ポリエチレン又はポリプロピレン部品の表面へ適用される。この適用のため、転写物は、固定プラテンを横切って成形品の供給を受けおよび、450°F〜650°F好ましくは475°F〜550°Fの温度に転写物を加熱しおよび成形品を500〜1000psigまで調整された圧力で転写物を加圧して、転写物を溶融および融着する、往復式の加熱プラテンを有する商業的なホットスタンピング、往復式プレスによって適用される、等間隔の転写物を有するロールに巻かれたキャリアシートの連続ストリップ上に、印刷することができる。加熱および加圧は2〜15秒好ましくは6〜10秒の時間(滞留時間)の成形品の表面に転写を溶融するのに十分な維持される。プレスは、1時間あたり最大1200個までの能力で射出成形品への転写を適用するための自動インデクサーを取り付けることができる。
【0036】
熱転写:
転写物はまた装飾される成形品の表面に対して配置されるプリントされる側をもつ各転写物を適用することにより、成形品に適用することができる。成形品表面は適当な熱源例えば強制空気乾燥器、直火、または赤外線ヒーターで予熱することができる。温度80〜140°F(転写適用温度)で転写を適用することが好ましく、それはキャリアシートから印刷層の解放を可能する。転写物が適用された後、転写物や成形品表面の加熱が継続され、転写物が成形品表面に対して好ましくは、キャリアシートが擦られるバニシングツールとともにプレスされて、取り去られるキャリアシートから転写物を取り外しおよび転写物の印刷されたイメージが成形品の表面に融着される。この適用法は、ホットスタンプ法の適用が適当でない中空型製品を装飾するまたはラベル貼りのために使用することができる。好ましくは、この適用のための転写物は、中密度ないし高密度樹脂、例えば、0.91〜0.94g/ccおよび低いメルトインデックス、例えば0.1〜10g/10分を有するポリエチレン粉末で製造される。
【0037】
ポリオレフィン製品への転写物の適用は最後に印刷された、すなわち最上部の転写物のフィルムの上または、転写物の適用の前にポリオレフィン成形品の上に接着剤やワックスのトップコーティングを含むことによって容易に行うことができる。有用な接着剤は脂肪族および芳香族炭化水素粘着付与剤を含みならびに有用なワックスはマイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスおよび合成ワックスを含む。トップコートは、0.5〜約5ミルの厚さで適用されおよびキャリアシートからポリエチレン成形品に印刷された転写物を転写する、および転写物とポリエチレン成形品の表面間からいずれかの閉塞された空気を除去する助けとして機能する。
【0038】
トップコートまたはポリオレフィン成形品上のコーティングとして使用される接着剤やワックスは成形品の表面との相溶性が必要である。相溶性のための簡単なテストは、コーティング候補のトップコートでサンプル転写物を準備して、ポリオレフィン表面へ該転写物を適用し、ポリオレフィン表面への該転写物を融着し、任意の接着剤やワックス残渣に対して表面を点検し、ASTM D3359試験手順に従い、適用された転写物における剥離試験を実施するものである。
【0039】
熱転写印刷:
本発明のインキはまた、熱転写印刷のために有用であるキャリアシートのリボンにコートするのに使用することができる。この適用では、インキの、薄く連続的なコーティングが、適当な厚さ例えば、1ないし5ミル好ましくは2〜4ミルで、好ましくはポリエステルフィルムのリボンに適用される。前述したように、インキは好ましくはオーブンで加熱することにより硬化され、硬化したリボンは、熱転写プリンタで便利なロール状に巻かれる。プリンタは、リボンと接触しそしてその下にある基材にイメージを転写するための、例えばバーコードのイメージを形成するための、またはラベルを印刷するための、制御機構によって活性化されるサーマルプリントヘッドを持っている。ラベルを印刷するために使用する際は、プリントヘッドがリボンからラベル基材にイメージを転写するために加熱または冷却される領域(ピクセル)を備えている。
【0040】
パッド転写印刷
この方法は、ディンプル加工外面を持っているゴルフボールのように凹凸模様のまたは不規則な表面を有する成形品を印刷するために使用される。印刷プラテンは、ゴルフボールの球面に適合するように起伏のある面(contoured surface)を持っており、パッドがボールに対して圧迫されるときにゴルフボールに転写されるインキイメージが刷り込まれている圧縮性発泡体で形成されたパッドを備えている。
【0041】
以下の実施例では、印刷インキの適用および本発明により得られる結果を説明するのに役立つであろう。
【実施例1】
【0042】
印刷インキは、脂肪族炭化水素溶媒168重量部にスクシンイミド分散剤5重量部を添加し、次いで10〜30ミクロンのサイズ範囲を有するポリエチレン粉体167重量部を加えることによって調製される。混合物を10分間攪拌して、溶媒中にポリエチレン粉末の分散体を形成する。次いで、15重量部カーボンブラックを添加し、混合物を10分間撹拌し、およびシリカ5重量部を添加して、スクリーン印刷に適したインキを取得するために粘度を調整する。
【0043】
英数字インディシアの転写物は220tpiのポリエステルステンシルスクリーンを備えたポリエステルキャリアシート上に印刷される。転写物は次いで、電気赤外線ヒーターの連続ベルトコンベヤ上にそれを置くことによって、熱処理されそして実質的に炭化水素溶媒をすべて揮発するのに十分なように、300°Fの温度に加熱したオーブンの中を40秒の滞留時間で通して、印刷されたイメージを乾燥させる。
【実施例2】
【0044】
実施例1の手順を、実施例1と同様に調製した英数字イメージの上に白い背景を重ね刷りする追加の工程とともに再び行う。背景層に使用する印刷インキは、実施例1におけるインキ中のカーボンブラックを二酸化チタン粉末に置き換えて、実施例1のインキ調製方法に従って調製される。二酸化チタン粉末は、インキ組成物中に20重量%の濃度で使用される。背景は280tpiのポリエステルスクリーンを介して転写物上のイメージの上に印刷される。転写物は、次に印刷された背景層から炭化水素溶媒を除去するため300°Fの電気赤外線ヒーターの連続ベルトコンベヤ上にそれを置くことによって、熱処理される。
【実施例3】
【0045】
転写物は、カーボンブラック顔料の、二酸化ケイ素粉末7重量部への置換を除いて実施例1と同様に作成された印刷インキでキャリアシート上に印刷された保護クリアコーティングを有するように製造される。保護クリアコーティングは、220tpiスクリーンを使用して透明なポリエステルキャリアシート上に印刷され、そして印刷層は実施例1に記載の方法で、電気オーブンで炭化水素系溶媒を除去することにより乾燥させる。
【0046】
英数字インディシアは、実施例1で調製したインキを使用して220tpiポリエステルステンシルスクリーンを用いて保護クリアコーティング上に印刷され、そしてインディシア層は実施例1に記載したように電気オーブンで炭化水素溶媒を除去することにより乾燥させる。
【0047】
最後に白い背景層が乾燥された英数字インディシア層の上に印刷され、そして実施例2の手順に従って、電気オーブンで乾燥させる。
【実施例4】
【0048】
実施例1で調製した黒インキは、フィルムストリップがラベルインディシアのためのステンシルパターンが付いた350tpiスクリーンの下に渡される、連続ストリップスクリーンプリンタを使用して、ポリエステルフィルムのストリップ上へのラベルのスクリーン印刷のために使用される。フィルムストリップは瞬時にスクリーンの下に配置されて一時停止し、インキ層はスクリーンを通して、インディシア層を付着するフィルムストリップ上にスクリーニングされる。新たに印刷されたラベルは、次いで印刷層を300°Fで加熱する赤外線ヒーターの下に25秒間通して炭化水素溶剤を揮発させ、そしてポリエステルフィルム上で均等に付着されおよび間隔をあけた転写物を有する連続ストリップを製造する。印刷されたストリップは、525°Fに各ラベルを加熱しそしてポリエチレン成形品に対して615psiの圧力で6〜7秒の滞留時間それを押し付けて、ラベルを融解しそして成形品の表面にそれを溶着する、往復式の加熱プラテンを備える市販のホットスタンピングプレスで使用される、スプールに連続的に巻き取られる。
【0049】
本発明を、例証されたおよび目下の好ましい実施形態を参照して説明してきた。なお、本発明は、目下好ましい実施形態の本開示によって不当に限定されるものではない。その代わりに、本発明は以下の特許請求の範囲に記載の手段と手順、およびそれらの明白な均等物によって、定義されることが意図される。
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項1)
本質的に:
a)1ナノメートル〜150ミクロンの大きさを有する微細分化ポリオレフィン樹脂粒子15〜45重量%;
b)脂肪族および芳香族炭化水素からなる部類から選択された炭化水素溶媒15〜45重量%;ならびに
c)炭化水素溶媒中に樹脂粒子の分散液を安定化するのに十分な分散剤0.05〜2.0重量%;ならびに
d)本質的に着色剤、金属粒子、鉱物粒子、およびそれらの混合物よりなる部類から選択される添加剤1〜70重量%;からなる印刷インキ。
(項2)
前記添加剤は1〜45重量%の濃度での着色剤である項1に記載の印刷インキ。
(項3)
前記着色剤が顔料である項1に記載の印刷インキ。
(項4)
前記着色剤が染料である項2に記載の印刷インキ。
(項5)
前記添加剤は5〜45重量%の濃度での鉱物である項1に記載の印刷インキ。
(項6)
前記ポリオレフィン樹脂粒子は0.1から100ミクロンの大きさを有する項1に記載の印刷インキ。
(項7)
前記ポリオレフィン樹脂はポリエチレンである項1に記載の印刷インキ。
(項8)
前記ポリエチレンは0.94〜0.97g/ccの密度を有する項7に記載の印刷インキ。
(項9)
印刷のための最適値にインク粘度を調整するのに十分な鉱物1〜10重量%を含む、項1に記載の印刷インキ。
(項10)
印刷のための最適値にインクの粘度を調整するのに十分な前記鉱物1〜10重量%を含む項9に記載の印刷インキ。
(項11)
前記ポリオレフィン樹脂が0.1〜10g/10分のメルトインデックスを有する項1に記載の印刷インキ。
(項12)
転写物を製造する方法であって:
a)紙またはプラスチックフィルムの柔軟性シートで形成されたキャリア基材上へ本質的に項1に記載の印刷インキよりなる印刷層を印刷すること;および
b)前記基材と印刷層を、該印刷層から実質的にすべての炭化水素溶媒が揮発するのに十分な時間、300°Fないし500°Fの温度にそれを加熱することにより熱処理すること、および本質的に前記ポリオレフィン樹脂および添加剤よりなる転写層で被覆されたキャリア基材を含む転写物を回収することを含む方法。
(項13)
前記転写物が1〜45重量%の濃度で着色剤を含有する印刷インキで印刷されている項12に記載の方法。
(項14)
前記転写物の前記転写層上へ少なくとも一つの別の印刷層を印刷しおよび該別の印刷層から実質的にすべての炭化水素溶媒が揮発するのに十分な時間、300゜F〜500゜Fの温度に該転写物を加熱することによって該第二印刷層を熱処理し、およびそれぞれが本質的にポリオレフィン樹脂と添加剤よりなる複数の転写層の転写物で被覆されたキャリア基材を含む転写物を回収する工程を含む項12に記載の方法。
(項15)
項12に記載の方法により製造された熱転写物。
(項16)
項14に記載の方法により製造された熱転写物。
(項17)
項15に記載の転写物でポリオレフィン製品をホットスタンピングする方法であって、前記製品の表面の選択された領域に対して前記転写層を有する転写物を適用すること、前記製品に対して転写物を500〜1000psiの圧力で押し付けることおよび前記製品の表面に転写物を融着させるのに十分な2から15秒間450°F〜650°Fの温度に転写物を加熱すること、該圧力を解放することおよび基材キャリアを取り外すことを含む方法。