【文献】
H. Zhao et al. ,"Maternally Inherited Aminoglycoside-Induced and Nonsyndromic Deafness Is Associated with the Novel C1494T Mutation in the Mitochondrial 12S rRNA Gene in a Large Chinese Family",The American Journal of Human Genetics,2004年,Vol. 74,p. 139-152,Published online 12 December 2003
【文献】
Y. M. Shlyapnikov et al.,"Detection of microarray-hybridized oligonucleotides with magnetic beads",Analytical Biochemistry,2010年,Vol. 399,p. 125-131,Published online 28 December 2009
【文献】
C. X. Li et al.,"Construction of a Multiplex Allele-Specific PCR-Based Universal Array (ASPUA) and its Application to Hearing Loss Screening",HUMAN MUTATION,2008年,Vol. 29,p. 306-314,Published online 27 December 2007
【文献】
J. Rodriguez-Paris et al.,"Genotyping with a 198 Mutation Arrayed Primer Extension Array for Hereditary Hearing Loss: Assessment of its Diagnostic Value for Medical Practice",PLoS One,2010年 7月26日,Vol. 5,p. e11804
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
標的分子が化学基、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチドおよび炭水化物からなる群から選択される分子によって修飾されている、請求項1または2に記載の方法。
発光団で標識され、粒子に連結された標的分子および該標的分子に結合したマイクロアレイ上に固定されたプローブ分子を含む組成物であって、該標的分子がポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチドおよび炭水化物からなる群から選択される、前記組成物。
請求項1−11および14のいずれか一項に記載の方法であって、ここでマイクロアレイが、配列番号1−20で示したタグ配列の少なくとも2種類を含むユニバーサルタグアレイを含む、方法。
【背景技術】
【0002】
[0002] 近年、マイクロアレイ技術は数万に及ぶ分子相互作用を高スループット様式で同時に評価することを可能にしている。DNAマイクロアレイに基づくアッセイは、創薬、疾患診断、および法廷で用いる目的に関して、遺伝子発現分析、変異に関する遺伝子型解析、一塩基多型(SNP)、および短いタンデム反復(STR)に関する適用を含め、広く用いられてきた(Heller, Ann Rev Biomed Eng (2002) 4: 129-153; Stoughton, Ann Rev Biochem (2005) 74: 53-82; Hoheisel, Nat Rev Genet (2006) 7: 200-210)。マイクロアレイ上に固定された予め決定された特異的なオリゴヌクレオチドプローブは、溶液中で行われた並行反応からの生成物を空間的に選別するための逆多重化(de−multiplexing)手段の役目を果たすことができ(Zhu et al., Antimicrob Agents Chemother (2007) 51: 3707-3713)、より一般的な手段、すなわち、汎用マイクロアレイにおいて用いられる設計および最適化された人工のタグまたはそれらの相補的配列であることさえできる(Gerrey et al., J Mol Biol (1999) 292: 251-262; Li et al., Hum Mutat (2008) 29: 306-314)。従って、多重PCR法と組み合わせて、SNPおよび遺伝子変異、例えば欠失、挿入およびインデルに関するマイクロアレイに基づくアッセイを、型にはまった遺伝学および診断実験室において実施することができる。
【0003】
[0003] 一方、タンパク質および化合物マイクロアレイはプロテオミクスの分野における2つの重要な手段として登場した(Xu and Lam, J Biomed Biotechnol (2003) 5: 257-266)。今では特異的なタンパク質、抗体、小分子化合物、ペプチド、および炭水化物を固体表面上に固定してまさにDNAマイクロアレイのようなマイクロアレイを形成することができる。次いでこれらの分子のアレイを単純な分子の組成物または複雑な分析物を用いて調べる(probed)ことができる。
【0004】
[0004] 分析物および固定された分子のアレイの間の相互作用は、いくつかの異なる検出系を用いて評価される。典型的には、マイクロアレイの商業的な使用は蛍光、化学発光または酵素標識による光学的検出、酵素、フェロセンまたは他の電気活性標識による電気化学的検出、ならびに表面プラズモン共鳴または微小重量分析技法に基づく無標識検出を用いる(Sassolas et al., Chem Rev (2008) 108: 109-139)。アッセイのプロトコルをさらに単純化し、関連設備への依存を低減するため、アッセイの結果を電荷結合素子(CCD)に補助されるカメラを用いて撮影する、または低倍率顕微鏡下で見ることができるように、磁気ビーズ標識が用いられ(Guo et al., J Anal Sci (2007) 23: 1-4; Li et al., 上記; Shlyapnikov et al., Anal Biochem (2010) 399: 125-131)、磁場または剪断流を適用することにより交差反応性接触または非特異的結合を迅速に排除することさえできる(Mulvaney et al., Anal Biochem (2009) 392: 139-144)。従って、マイクロアレイとハイブリダイズしたDNAの磁気ビーズを用いた検出は、溶液中のDNA濃度の正確な測定を必要としない型にはまったハイブリダイゼーションアッセイへの新しい道を開く。
【0005】
[0005] 発光団は、それらが標的−プローブ分子複合体の結合の結果としてもたらされる放出スペクトルのシグナル強度の変動を示すため、マイクロアレイに基づくアッセイにおける標的−プローブ結合の検出を向上させる。理論上、発光団標識を磁気ビーズと統合してマイクロアレイに基づくアッセイのプロセスを促進することができる。発光団で標識された分子を磁気ビーズに連結することができ、そのそれぞれが大量の発光団を同時に集合させ、高い強度の発光をもたらす。そうして分子相互作用の高感度検出が可能になる。
【0006】
[0006] さらに、特に臨床設定における様々なSNPおよび遺伝子変異の検出に関して、マイクロアレイに基づくアッセイの感度および特異性の両方をさらに向上させることが依然として非常に望ましい。これを達成する上での主な障害は、標識された核酸標的の表面に固定されたオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションがマイクロアレイ上での核酸の検出における中心的な事象であるため(Riccelli et al., Nucleic Acids Res (2001) 29: 996-1004)、DNA産物の2つの鎖の一方のみがこれらのプローブとハイブリダイズするために利用可能であり、一方で他方の鎖はその標的に関してプローブと競合し、厳しい緩衝因子として作用することである。従って、一本鎖DNA(ssDNA)を濃縮する(enriched)べきであり、単純性および対費用効果を考えると、いくつかの最も一般的な方法を比較した後、我々の以前の研究において非対称なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が推奨され、我々の要求を満たすその高められた感度および特異性を有する精製プロセスなしの1工程非対称PCRもうまく開発された(Gao et al., Anal Lett (2003) 33: 2849-2863; Zhu et al., 上記; Li et al., 上記)。
【0007】
[0007] 稀な臨床試料およびそれらの検出における正確さの極度の重要性のため、その1工程非対称PCRに基づくアッセイは、その低い感度のため、扱うことができない。以前の研究において我々が推奨しなかった代替法は、マイクロスフィア、好ましくは常磁性マイクロスフィアをそれらの取り扱いの容易さおよび優れた生体適合性のために用いることであり、それは感度に関してさらに向上させることができる(Gao et al., 上記)。二本鎖DNA断片をマイクロスフィアを用いて捕捉し、望まれない鎖を変性法により除去することにより、得られたssDNA産物をマイクロアレイとハイブリダイズさせた。理論上、そのssDNA産物をより純粋かつより豊富に作ることができるほど、よりよい感度が達成されると予想される。一般的な対照的PCRは、非対称PCRと比較して増幅効率がはるかに高く、多重化の設計がより容易であるというその特性を有するため、対照的PCRおよびこの方法により調製されたssDNAの組み合わせは上記の要求を満たすことが予想される。
【発明の概要】
【0009】
[0008] 本発明は、分子相互作用を分析するための、例えば医薬化合物間の相互作用の多重研究、ならびに発光団および粒子、特に微粒子と組み合わせたマイクロアレイに基づく技術を用いた遺伝情報の多重検出のための組成物および方法に向けられている。
【0010】
[0009] 1観点において、本発明はマイクロアレイを用いて標的分子を検出するための方法を提供し、その方法は以下の工程を含む:a)その標的分子を発光団で標識し;b)その標的分子を粒子に連結し;c)その発光団で標識されており、粒子に連結されている、または粒子から分離している標的分子を、そのマイクロアレイ上に固定されたプローブ分子に結合させ;そしてd)その標的分子およびそのプローブ分子の間の相互作用を検出し、ここでその標的分子はポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチドおよび炭水化物からなる群から選択される。
【0011】
[0010] あらゆる適切な発光団を本方法において用いることができる。標的分子は、蛍光体(fluorophore)、リン光体(phosphor)または発色団で標識することができる。蛍光体は、量子ドット、タンパク質(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP))、または小分子色素であってよい。その小分子色素は、キサンテン誘導体(フルオレセイン、ローダミン、Oregon green、エオシン、texas red等)、シアニン誘導体(シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン、メロシアニン等)、ナフタレン誘導体(ダンシルおよびプロダン誘導体)、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体(ピリジルオキサゾール(pyridyloxazole))、ニトロベンゾオキサジアゾール、ベンゾオキサジアゾール等)、ピレン誘導体(cascade blue等)、BODIPY、オキサジン誘導体(ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット、オキサジン170等)、アクリジン誘導体(プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー等)、アリールメチン(arylmethine)誘導体(オーラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン等)、CF色素、Alexa Fluor、AttoおよびTracy、テトラピロール誘導体(ポルフィン、フタロシアニン、ビリルビン等)、cascade yellow、アズールB、アクリジンオレンジ、DAPI、Hoechst33258、ルシファーイエロー、ピロキシカム、キニン、アントラキノン(anthraqinone)、スクアリリウム、およびオリゴフェニレンからなる群から選択されてよい。リン光体は、様々なタイプの遷移金属化合物または希土類化合物である。発色団は、レチナール色素、食品着色料、ファブリック色素(アゾ化合物)、リコペン、β−カロテン、アントシアニン類、クロロフィル、ヘモグロビン、ヘモシアニン、色を有する鉱物(マラカイト、アメジスト等)からなる群から選択されてよい。
【0012】
[0011] その標的分子は直接または間接的に発光団で標識されてよい。その標的分子は、化学基、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチドおよび炭水化物からなる群から選択される修飾により発光団で標識されてよい。二本鎖標的分子、例えば二本鎖DNAに関して、粒子に連結される鎖が発光団で標識されるべきである。その標的分子は、マイクロアレイ上に固定されたプローブ分子への結合の前にその粒子から分離されてよい。
【0013】
[0012] あらゆる適切な粒子を本方法において用いることができる。それぞれの粒子は少なくとも1個の標的分子と連結されてよい。1態様において、その粒子は微粒子である。別の態様において、その微粒子は常磁性マイクロスフィアである。一部の態様において、その微粒子は約0.1マイクロメートルから約10マイクロメートルまでの直径を有する。
【0014】
[0013] その粒子は官能基または機能性部分によりコートされていてよい。1態様において、その官能基または機能性部分は、化学基、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチドおよび炭水化物からなる群から選択されてよい。別の態様において、その化学基はアルデヒド、ヒドロキシル、カルボキシル、エステル、アミン、スルホ、またはスルフヒドリルであってよい。さらに別の態様において、その官能基はストレプトアビジン、neutravidinおよびアビジンからなる群から選択されてよい。さらに別の態様において、そのポリヌクレオチドはポリdTまたはポリdAである。
【0015】
[0014] 発光団で標識する他に、その標的分子は別の部分で修飾されていてよい。その部分は、化学基、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチドおよび炭水化物からなる群から選択されてよい。一部の態様において、その化学基はアルデヒド、ヒドロキシル、カルボキシル、エステル、アミン、スルホ、またはスルフヒドリルであってよい。一部の他の態様において、そのポリペプチドはストレプトアビジン、neutravidinおよびアビジンであってよい。さらに他の態様において、そのポリヌクレオチドはポリdTまたはポリdAであってよい。一部の態様において、その標的分子はその粒子にその標的分子の修飾およびその粒子上の官能基または機能性部分の間の相互作用により連結されている。一部の他の態様において、その相互作用はストレプトアビジン−ビオチン相互作用、neutravidin−ビオチン相互作用、アビジン−ビオチン相互作用、またはポリdT/ポリdA相互作用である。
【0016】
[0015] その標的ポリヌクレオチドは、二本鎖または一本鎖であってよい。一部の態様において、その一本鎖標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部は、そのマイクロアレイ上に固定されたオリゴヌクレオチドプローブの少なくとも一部に完全に、または実質的に相補的である。他の態様において、その一本鎖標的ポリヌクレオチドは、そのマイクロアレイ上に固定されたオリゴヌクレオチドプローブに完全に相補的である。
【0017】
[0016] その標的ポリヌクレオチドに対して、一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチド断片を生成することができるインビトロ操作を行うことができる。その標的ポリヌクレオチドは、そのインビトロ操作の前に、そのインビトロ操作の間に、またはそのインビトロ操作の後に発光団で標識されてよい。1態様において、物理的処理はレーザー、超音波処理、熱、マイクロ波、ピエゾ電気、電気泳動、誘電泳動、固相付着、濾過および流体的応力(fluidic stress)である。別の態様において、そのインビトロ操作は、酵素消化、PCR増幅、逆転写、逆転写PCR増幅、アレル特異的PCR(ASPCR)、一塩基伸長(SBE)、アレル特異的プライマー伸長(ASPE)、制限酵素消化、鎖置換増幅(SDA)、転写媒介増幅(TMA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、プライマー伸長、ローリングサークル増幅(RCA)、自家持続配列複製法(3SR)、Qベータレプリカーゼの使用、ニック翻訳、およびループ媒介等温増幅法(LAMP)からなる群から選択される。
【0018】
[0017] 二本鎖標的ポリヌクレオチドに関して、それらはあらゆる適切な方法、例えば化学反応、酵素反応もしくは物理的処理、例えば加熱、またはそれらの組み合わせにより、発光団による標識および粒子との連結の前または後に変性させてよい。一部の態様において、その化学反応は尿素、ホルムアミド、メタノール、エタノール、水酸化ナトリウム、またはそれらの組み合わせを用いる。一部の態様において、酵素的方法にはエキソヌクレアーゼおよびウラシル−N−グリコシラーゼ処理が含まれる。他の態様において、その二本鎖標的ポリヌクレオチドは約30℃から約95℃までの適切な温度で熱変性される。
【0019】
[0018] 1態様において、そのマイクロアレイは少なくとも2種類のプローブ分子を含む。別の態様において、そのマイクロアレイは多数のオリゴヌクレオチドプローブを含む。さらに別の態様において、そのプローブ分子はポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチドおよび炭水化物からなる群から選択される。
【0020】
[0019] 1態様において、得られた一本鎖標的ポリヌクレオチドは、人工的に設計され、最適化されたポリヌクレオチド配列、例えばタグ配列を含んでいてよい。さらに別の態様において、そのマイクロアレイはユニバーサルタグアレイを含む。さらに別の態様において、そのタグ配列はそのユニバーサルタグアレイ上のオリゴヌクレオチドプローブに相補的または実質的に相補的である。
【0021】
[0020] 異なるタグ配列間のTmの差は、あらゆる適切な範囲、例えば約5℃以下に設定することができる。一部の態様において、そのタグ配列はそれら自体の間で交差ハイブリダイゼーションを有しない。一部の他の態様において、そのタグ配列はその種のゲノムDNAに低い相同性を有する。好ましい態様において、そのタグ配列はヘアピン構造を有しない。1態様において、そのタグ配列は一本鎖オリゴヌクレオチドまたは修飾された類似体である。別の態様において、そのタグ配列はロックド核酸(LNA)、ジップ核酸(ZNA)またはペプチド核酸(PNA)である。さらに別の態様において、そのタグ配列はその標的ヌクレオチドにインビトロ操作の間に導入される。
【0022】
[0021] そのマイクロアレイはあらゆる適切な方法により作ることができる。一部の態様において、そのマイクロアレイは、鋭くとがったピンを用いた印刷、予め作製されたマスクを用いたフォトリソグラフィー、ダイナミックマイクロミラー(dynamic micromirror)装置を用いたフォトリソグラフィー、インクジェット印刷、マイクロコンタクトプリンティング、および微小電極アレイ上での電気化学からなる群から選択される技術を用いて製作される。そのマイクロアレイの支持物質は、シリコン、ガラス、プラスチック、ヒドロゲル、アガロース、ニトロセルロースおよびナイロンからなる群から選択されてよい。
【0023】
[0022] そのマイクロアレイ上に固定されたプローブ分子は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチドおよび炭水化物からなる群から選択されてよい。そのプローブはマイクロアレイにあらゆる適切な様式、例えばインサイチュ合成、非特異的吸着、特異的結合、非特異的化学的ライゲーション、または化学選択的ライゲーションで付着させることができる。そのプローブおよびマイクロアレイ間の結合は、共有結合または物理的接着であってよい。そのマイクロアレイの支持物質は、あらゆる適切な材料、例えばシリコン、ガラス、プラスチック、ヒドロゲル、アガロース、ニトロセルロースおよびナイロンであってよい。そのマイクロアレイ上のスポットはあらゆる適切な大きさを有していてよい。1態様において、そのマイクロアレイ上のスポットは直径約10マイクロメートルから約5000マイクロメートルまでの範囲である。別の態様において、そのオリゴヌクレオチドプローブは一本鎖オリゴヌクレオチドまたは修飾された類似体である。さらに別の態様において、そのオリゴヌクレオチドプローブはLNA、ZNAまたはPNAである。その標的分子およびプローブ分子の間の結合は、非共有結合性、可逆的共有結合性または不可逆的共有結合性相互作用であってよい。
【0024】
[0023] その標的分子およびプローブ分子の間の結合の効率および有効性を高めるために、磁力および誘電泳動力が含まれる外力を適用してその粒子またはマイクロスフィアを操作することができる。その結果はあらゆる適切な手段、例えば発光に関するマイクロアレイ走査装置を用いて検出することができる。1態様において、そのマイクロアレイ走査装置は蛍光標識、リン光体標識、発色団標識、または化学発光標識を用いた光学的検出を用いることができる。別の態様において、そのマイクロアレイ走査装置は表面プラズモン共鳴、磁力、巨大磁気抵抗または微小重量分析技法に基づく無標識検出を用いることができる。
【0025】
[0024] 1態様において、その標的分子は真菌、細菌、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア、ウイルスおよび原虫からなる群から選択される感染性または病原性因子により引き起こされる疾患と関係している。別の態様において、その標的分子は性行為感染症、癌、脳血管疾患、心疾患、呼吸器疾患、冠動脈性心疾患、糖尿病、高血圧、アルツハイマー病、神経変性疾患、慢性閉塞性肺疾患、自己免疫疾患、嚢胞性線維症、脊髄性筋萎縮症、ベータサラセミア、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ欠損症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、または遺伝性聴力損失(hearing loss)と関係している。さらに別の態様において、その標的分子は遺伝性聴力損失と関係している。
【0026】
[0025] 別の観点において、本発明は、標的分子を検出するための方法を提供し、その方法は以下の工程を含む:a)その標的分子を発光団で標識し;b)その標的分子を粒子に連結し;c)その発光団で標識されており、その粒子に連結されている、またはその粒子から分離している標的分子を、そのマイクロアレイ上に固定されたプローブ分子に結合させ;d)その標的分子およびそのプローブ分子の間の相互作用を検出し、ここでその標的分子は遺伝情報と関係しており、その標的分子はポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチドおよび炭水化物からなる群から選択される。
【0027】
[0026] 本方法によりあらゆる適切な遺伝情報を検出することができる。例えば、その遺伝情報は、置換、挿入、欠失およびインデルからなる群から選択される変異であってよい。1態様において、その遺伝情報は一塩基多型(SNP)である。別の態様において、その遺伝情報は、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチドおよび炭水化物が含まれる標的分子と関係している。
【0028】
[0027] その遺伝性聴力損失と関係する遺伝情報は、あらゆる適切な標的遺伝子、例えばGJB2(Cx26)、SLC26A4(PDS)、または12S rRNA(MTRNR1)内にあってよい。1態様において、そのGJB2中の遺伝情報は、c.35delG、c.176_191del16、c.235delC、およびc.299_300delATからなる群から選択される。別の態様において、そのSLC26A4中の遺伝情報はc.2168A>Gおよびc.919−2A>Gからなる群から選択される。さらに別の態様において、その12S rRNA中の遺伝情報は、m.1494C>Tおよびm.1555A>Gからなる群から選択される。
【0029】
[0028] その遺伝情報を含有する、または含有すると疑われる標的ポリヌクレオチドは、検出の前に増幅されてよい。例えばASPCRを用いてその遺伝情報を増幅してよい。その遺伝情報を含有する、または含有すると疑われる標的ポリヌクレオチドの増幅において、プライマーのあらゆる適切な、または適切なセットを用いることができる。1態様において、そのASPCRのためのプライマーのセットには少なくとも2種類のアレル特異的プライマーおよび1種類の共通プライマーが含まれる。別の態様において、そのアレル特異的プライマーおよびその共通プライマーは、表2において示したような配列を有する。さらに別の態様において、そのアレル特異的プライマーはSNP/変異部位で終結する。さらに別の態様において、そのアレル特異的プライマーはさらに野生型の配列に対する人為的なミスマッチを含む。さらなる態様において、そのアレル特異的プライマーは天然ヌクレオチドまたはその類似体を含む。一部の態様において、そのアレル特異的プライマーはタグ配列を含む。一部の他の態様において、そのASPCRは3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有しないDNAポリメラーゼを用いる。
【0030】
[0029] 多数の遺伝情報を検出することができる。1態様において、その遺伝情報を増幅するために多重PCRが用いられる。そのマイクロアレイ上に固定されたオリゴヌクレオチドプローブの位置は、逆多重化手段の役目を果たすことができる。一部の態様において、遺伝物質は組織、細胞、体液、毛髪、爪および射出精液から単離され、それには唾液試料、痰試料、精子試料、卵子試料、接合子試料、リンパ液試料、血液試料、間質液試料、尿試料、バッカルスワブ試料、チューインガム試料、吸い殻試料、封筒試料、切手試料、出生前試料、または乾燥血液スポット試料が含まれる。
【0031】
[0030] さらに別の観点において、本発明は、発光団で標識され、粒子に連結された標的分子およびその標的分子に結合したマイクロアレイ上に固定されたプローブ分子を含む組成物を提供し、ここでその標的分子はポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチドおよび炭水化物からなる群から選択される。
【0032】
[0031] 1態様において、そのオリゴヌクレオチドプローブは表1で示したようなタグ配列を含む。別の態様において、そのユニバーサルタグアレイは表1で示したタグ配列の少なくとも2種類を含む。さらに別の態様において、そのユニバーサルタグアレイは表1で示したタグ配列の少なくとも4種類を含む。さらに別の態様において、そのユニバーサルタグアレイは表1で示したタグ配列の少なくとも8種類を含む。さらに別の態様において、そのユニバーサルタグアレイは表1で示したタグ配列の全てを含む。
【0033】
[0032] 本明細書において、表2でタグ配列なしで示したような配列、5’末端におけるビオチン化ユニバーサルプライマー配列、またはCy3標識を含むプライマーがさらに提供され、そのプライマーは完全長cDNAまたは完全長ゲノムDNAではなく、t1494C>T−WT、t1494C>T−MU、および1494C>T−RBからなる群から選択される。1態様において、そのプライマーは本質的に、表2でタグ配列なしで示したような配列、5’末端におけるビオチン化ユニバーサルプライマー配列、またはCy3標識で構成され、そのプライマーはt1494C>T−WT、t1494C>T−MU、および1494C>T−RBからなる群から選択される。別の態様において、そのプライマーは、表2でタグ配列なしで示したような配列、5’末端におけるビオチン化ユニバーサルプライマー配列、またはCy3標識で構成され、そのプライマーはt1494C>T−WT、t1494C>T−MU、および1494C>T−RBからなる群から選択される。一部の態様において、そのプライマーは表2で示したような配列を含み、そのプライマーはt35delG−WTまたはt35delG−MUではない。一部の他の態様において、そのプライマーは発光団で標識されていてよい。
【0034】
[0033] 本明細書において、表2で示したような2種類のアレル特異的プライマーおよび共通プライマーを含む、遺伝情報のASPCR増幅のためのプライマーのセットも提供される。
【0035】
[0034] さらなる観点において、本発明は、表1で示したようなタグ配列の少なくとも2種類を含むユニバーサルタグアレイを含む、遺伝情報の検出に有用なキットを提供する。そのキットは取り扱い説明書を含んでいてよい。1態様において、そのキットはさらに表2でタグ配列なしで示したような配列、5’末端におけるビオチン化ユニバーサルプライマー配列、またはCy3標識を含むプライマーを含み、そのプライマーは完全長cDNAまたは完全長ゲノムDNAではなく、t1494C>T−WT、t1494C>T−MU、および1494C>T−RBからなる群から選択される。別の態様において、そのキットは表2で示したような2種類のアレル特異的プライマーおよび共通プライマーを含む、遺伝情報のASPCR増幅のためのプライマーのセットを含む。
【0036】
[0035] さらに別の態様において、本発明は、発光団、粒子および表1で示したようなタグ配列の少なくとも2種類を含むユニバーサルタグアレイを含む、分子相互作用の検出に有用なキットを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[0042] 本発明は、マイクロアレイに基づくアッセイを粒子および発光団で標識された標的分子と組み合わせる方法を提供する。一部の態様において、その方法は、発光団で標識された標的核酸断片を濃縮し、次いで粒子を標的−プローブハイブリダイゼーションによりマイクロアレイスポットに連結し、最後に逆多重化することにより、マイクロアレイに基づくアッセイを粒子と組み合わせる。一部の他の態様において、その方法は、発光団で標識された二本鎖核酸断片を濃縮し、一本鎖核酸断片を回収し、次いで粒子を標的−プローブハイブリダイゼーションによりマイクロアレイスポットに連結し、最後に逆多重化することにより、マイクロアレイに基づくアッセイを粒子と組み合わせる。
【0039】
[0043] 高い感度および特異性を確実にする以外に、マイクロアレイに基づくアッセイを粒子および発色団標識と組み合わせることは、適切な装置によるアッセイ結果の検査を容易にする。その組み合わせ的方法を試すため、遺伝性聴力損失に関するSNP/変異の検出を例として実施し、多重化遺伝子解析に関する、特に臨床試料の診断および疾患関連遺伝子検査に関するそのような方法の高い特異性および高い感度の特性を実証した。
【0040】
[0044] 本発明を詳細に記述する前に、この発明は記述された特定の方法論、装置、溶液または器具に、そのような方法、装置、溶液または器具は当然様々であることができるため、限定されないことは理解されるべきである。本明細書で用いられる用語法は特定の態様を記述することのみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図していないことも理解されるべきである。
【0041】
[0045] 別途定義しない限り、または文脈が明確に他の意味を指示しない限り、本明細書で用いられている全ての技術的および科学的用語はこの発明が属する技術の当業者により一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で記述される方法および材料に類似の、または均等なあらゆる方法および材料を本発明の実施または試験において用いることができるが、好ましい方法および材料はここで記述されている。
【0042】
[0046] 本明細書で言及される全ての刊行物を、それに関してその参考文献が引用されている特定の材料および方法論を開示および記述する目的で、本明細書に援用する。本明細書で論じられている刊行物は、本出願の出願日の前にそれらの開示のためにのみ提供されている。本明細書中のいずれも、本発明が先行発明によりそのような開示に先行する権利がないという自認として解釈されるべきではない。
【0043】
A.定義
[0047] 本明細書で用いられる際、単数形“a”、“an”、および“the”には、別途示さない限り複数への言及が含まれる。例えば、“a”2量体には1個以上の2量体が含まれる。
【0044】
[0048] 用語“分子”は、本明細書においてあらゆる化学的または生化学的構造をさして用いられており、それにはポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチドおよび炭水化物が含まれるが、それらに限定されない。
【0045】
[0049] “標的”分子は、本発明において、記述される方法により検出されるべき分子を指す。二本鎖ポリヌクレオチドの場合、その標的分子はその相補鎖のどちらかまたは両方を指してよい。
【0046】
[0050] 用語“発光団”は、本明細書において、発光を示す化合物中の原子または原子団を指す。
[0051] 用語“粒子”または“微粒子”は、小さい粒子、本明細書において好ましくは直径約0.01マイクロメートルから約1000マイクロメートルまでの小さい粒子を指すことを意味する。一部の態様において、“粒子”または“微粒子”には、それぞれの粒子または微粒子の特定の群に属するものとしての同定を可能にする固有の特性(例えば磁化、蛍光等)が含まれる。用語“マイクロスフィア”は、好ましくは球状で通常約0.01マイクロメートルから約1000マイクロメートルまでの範囲内の粒子を指すことを意味する。一部の態様において、マイクロスフィアは、ポリマー、ガラス、または他の母材、コーティング等と一緒に形成された1種類以上の同定タグ(例えば磁化、蛍光等)で構成されていてよい。用語“磁性マイクロスフィア”は、1個以上の磁性領域がポリマー、ガラス、または他の母材、コーティング等と共に含まれる、約0.01マイクロメートルから約1000マイクロメートルまでの範囲内の粒子を指すことを意味する。用語“マイクロスフィア”または“磁性マイクロスフィア”のいずれも球状以外の形状を除外することを意味しておらず、そのような用語は他の形状、例えば球形、平面等を含むことを意味する。
【0047】
[0052] 用語“マイクロアレイ”は、本明細書において、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは化合物マイクロアレイを指して用いられている。特定のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチド、および炭水化物を固体表面上に固定してマイクロアレイを形成することができる。
【0048】
[0053] 用語“結合”は、本明細書において、結果としてその中でその分子が互いに近接している安定な会合をもたらす2分子間の吸引相互作用を指す。分子結合は以下のタイプに分類することができる:非共有結合性、可逆的共有結合性および不可逆的共有結合性。分子結合に参加することができる分子には、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、および小さい有機分子、例えば医薬的化合物が含まれる。他の分子と安定な複合体を形成するポリペプチドはしばしば受容体と呼ばれ、一方でそれらの結合パートナーはリガンドと呼ばれる。ポリヌクレオチドは、それら自体と、または他のものと安定な複合体、例えばDNA−タンパク質複合体、DNA−DNA複合体、DNA−RNA複合体を形成することもできる。
【0049】
[0054] 用語“ポリペプチド”は、本明細書において、天然源から単離されたものであろうと、組み換え技法により生成されたものであろうと、または化学的に合成されたものであろうと、タンパク質、タンパク質の断片、およびペプチドを指して用いられている。ポリペプチドは1個以上の修飾、例えば翻訳後修飾(例えば糖鎖付加等)またはあらゆる他の修飾(例えばPEG化等)を有していてよい。そのポリペプチドは、1個以上の非天然存在アミノ酸(例えば側鎖の修飾を有するアミノ酸)を含有していてよい。本発明のポリペプチドは、典型的には少なくとも約10アミノ酸を含む。
【0050】
[0055] 用語“ポリヌクレオチド”、“オリゴヌクレオチド”、“核酸”および“核酸分子”は、本明細書においてあらゆる長さのヌクレオチドのポリマー形態を指して互換的に用いられており、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、それらの類似体、またはそれらの混合物を含んでよい。この用語はその分子の一次構造のみを指す。従って、その用語には三本鎖、二本鎖および一本鎖デオキシリボ核酸(“DNA”)、ならびに三本鎖、二本鎖および一本鎖リボ核酸(“RNA”)が含まれる。それにはそのポリヌクレオチドの修飾された形態、例えばアルキル化により、および/またはキャッピングにより修飾された形態、および未修飾の形態も含まれる。より詳細には、用語“ポリヌクレオチド”、“オリゴヌクレオチド”、“核酸”および“核酸分子”には、(2−デオキシ−D−リボースを含有する)ポリデオキシリボヌクレオチド類、tRNA、rRNA、hRNA、およびスプライシングされた、またはスプライシングされていないmRNAが含まれる(D−リボースを含有する)ポリリボヌクレオチド類、プリンまたはピリミジン塩基のN−またはC−配糖体であるポリヌクレオチドのあらゆる他のタイプ、ならびに非ヌクレオチド性(normucleotidic)主鎖を含有する他のポリマー、例えばポリアミド(例えばペプチド核酸(“PNA”))およびポリモルホリノ(商業的にAnti−Virals,Inc.(オレゴン州コーバリス)からNeugeneとして入手可能である)ポリマー、ならびにそのポリマーがDNAおよびRNAにおいて見られるような塩基対合および塩基の積み重ねを可能にする配置の核酸塩基を含有することを提供する他の合成配列特異的核酸ポリマーが含まれる。従って、これらの用語には、例えば3’−デオキシ−2’,5’−DNA、オリゴデオキシリボヌクレオチドN3’>P5’アミド亜リン酸エステル、2’−O−アルキル置換RNA、DNAおよびRNAの間のハイブリッドまたはPNAおよびDNAもしくはRNAの間のハイブリッドが含まれ、既知のタイプの修飾、例えば標識、アルキル化、“キャップ”、1個以上のヌクレオチドの類似体による置換、例えば無電荷の結合(例えばメチルホスホネート類、ホスホトリエステル類、アミド亜リン酸エステル類、カルバメート類等)による、負に荷電した結合(例えばホスホロチオネート類、ホスホロジチオネート類等)による、および正に荷電した結合(例えばアミノアルキルホスホルアミデート類、アミノアルキルホスホトリエステル類)によるヌクレオチド間(intemucleotide)修飾のようなヌクレオチド間修飾、例えばタンパク質(酵素(例えばヌクレアーゼ類)、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシン等が含まれる)のようなペンダント部分を含有する修飾、インターカレーター(例えばアクリジン、ソラレン等)による修飾、キレート剤(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化性金属等のキレート剤)を含有する修飾、アルキル化剤を含有する修飾、修飾された結合による修飾(例えばアルファアノマー核酸等)、ならびにそのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの未修飾の形態が含まれる。
【0051】
[0056] 本明細書で用いられる際、用語“ヌクレオシド”および“ヌクレオチド”には既知のプリンおよびピリミジン塩基だけでなく修飾されている他の複素環式塩基も含有するそれらの部分が含まれるであろうことは理解されるであろう。そのような修飾には、メチル化プリンもしくはピリミジン、アシル化プリンもしくはピリミジン、または他の複素環が含まれる。修飾されたヌクレオシドまたはヌクレオチドには、例えばそのヒドロキシル基の1個以上がハロゲン、脂肪族の基により置換されている、またはエーテル類、アミン類等として官能基付与されている(functionalized)糖部分上の修飾も含まれ得る。用語“ヌクレオチド単位”は、ヌクレオシドおよびヌクレオチドを含むことを意図している。
【0052】
[0057] “核酸プローブ”および“プローブ”は互換的に用いられており、対応する標的に結合することができる核酸配列を含有する上記で定義したようなポリヌクレオチドを含む構造を指す。プローブのポリヌクレオチド領域は、DNAおよび/またはRNAおよび/または合成ヌクレオチド類似体からなっていてよい。
【0053】
[0058] 本明細書で用いられる際、“相補的な、またはマッチした”は、2個の核酸配列が少なくとも50%の配列の同一性を有することを意味する。好ましくは、その2個の核酸配列は少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列の同一性を有する。“相補的な、またはマッチした”は、2個の核酸配列が低い、中程度の、および/または高いストリンジェンシーの条件(単数または複数)下でハイブリダイズすることができることも意味する。配列の同一性または相同性の百分率は、基準配列の対応する位置に整列させた際に1つの配列を別の配列に対して比較することにより計算される。
【0054】
[0059] 本明細書で用いられる際、“実質的に相補的な、または実質的にマッチした”は、2個の核酸配列が少なくとも90%の配列の同一性を有することを意味する。好ましくは、その2個の核酸配列は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列の同一性を有する。あるいは、“実質的に相補的な、または実質的にマッチした”は、2個の核酸配列が高いストリンジェンシーの条件(単数または複数)下でハイブリダイズすることができることを意味する。配列の同一性または相同性の百分率は、基準配列の対応する位置に整列させた際に1つの配列を別の配列に対して比較することにより計算される。
【0055】
[0060] 一般に、ハイブリッドの安定性はイオン濃度および温度の関数である。典型的には、ハイブリダイゼーション反応はより低いストリンジェンシーの条件下で実施され、続いて異なる、しかしより高いストリンジェンシーの洗浄が行われる。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーションは、プローブのような核酸分子が相補的な核酸分子に結合することを可能にする条件を指す。ハイブリダイズした核酸分子は一般に少なくとも60%の同一性を有し、それには例えば少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性のいずれかが含まれる。中程度にストリンジェントな条件は、42℃における50%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、5×SSPE、0.2%SDS中でのハイブリダイゼーション、続いて42℃における0.2×SSPE、0.2%SDS中での洗浄に均等な条件である。高いストリンジェンシーの条件は、例えば42℃における50%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、5×SSPE、0.2%SDS中でのハイブリダイゼーション、続いて65℃における0.1×SSPE、および0.1%SDS中での洗浄により提供することができる。低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、22℃における10%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、6×SSPE、0.2%SDS中でのハイブリダイゼーション、続いて37℃における1×SSPE、0.2%SDS中での洗浄に均等な条件を指す。デンハルト溶液は、1% Ficoll、1%ポリビニルピロリドン、および1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する。20×SSPE(塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))は、3M塩化ナトリウム、0.2Mリン酸ナトリウム、および0.025M EDTAを含有する。他の適切な中程度のストリンジェンシーおよび高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション緩衝液および条件は当業者に周知であり、例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Press, ニューヨーク州プレインビュー(1989);およびAusubel et al., Short Protocols in Molecular Biology, 第4版, John Wiley & Sons (1999)において記述されている。
【0056】
[0061] あるいは、実質的な相補性は、RNAまたはDNA鎖が選択的ハイブリダイゼーション条件下でその相補鎖(complement)にハイブリダイズするであろう場合に存在する。典型的には、選択的ハイブリダイゼーションは、少なくとも14〜25ヌクレオチドの長さにわたって少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90%の相補性が存在する場合に起こるであろう。M. Kanehisa Nucleic Acids Res. 12:203 (1984)参照。
【0057】
[0062] 用語“相同な”、“実質的に相同な”、および“実質的相同性”は、本明細書で用いられる場合、少なくとも50%、60%、70%、80%または90%の同一性を有するアミノ酸配列を意味し、ここで1つの配列が基準アミノ酸配列に対して比較される。配列の同一性または相同性の百分率は、その基準配列の対応する部分に整列させた際に1つの配列を別の配列に対して比較することにより計算される。
【0058】
[0063] “多重化”または“多重化されたアッセイ”は、本明細書において、そのそれぞれが少なくとも1つの異なる検出特徴、例えば蛍光特徴(例えば励起波長、発光波長、発光強度、FWHM(ピークの高さの最大値の半分における全幅)、または蛍光寿命)を有する1種類より多くの捕捉プローブコンジュゲートを用いることにより多数の標的分子の存在を同時にアッセイすることができるアッセイまたは他の分析法を指す。
【0059】
[0064] 本明細書で記述される発明の観点および態様には、観点および態様“からなる”、および/または“から本質的になる”が含まれることは理解されている。
[0065] 本発明の他の目的、利点および特徴は、添付の図面と合わせて受け取られる以下の明細書から明らかになるであろう。
【0060】
B.発光団
[0066] 発光団は、発光を示す化合物中の原子または原子団である。有機性および無機性発光団が存在する。発光団は2つの下位カテゴリー:蛍光体およびリン光体に分けることができる。これらの2つの下位カテゴリーに属する発光団の間の違いは、光子の放出の原因である励起した状態の性質に由来する。しかし、一部の発光団は排他的に蛍光体またはリン光体として分類することができず、中間のどちらとも言えない領域に存在する。そのような場合には、その発光が励起した(名目上三重項の)金属から配位子への電荷移動(MLCT)状態から来る遷移金属錯体(例えばルテニウム トリス−2,2’−ビピリジン)が含まれるが、それはその定義の厳密な意味での真の三重項状態ではない。ほとんどの発光団は、π共役系または遷移金属錯体からなる。純粋に無機性の発光団、例えば希土類金属イオンでドープされた硫化亜鉛、他の希土類金属イオンでドープされた希土類金属オキシ硫化物、希土類金属イオンでドープされた酸化イットリウム、マンガンイオンでドープされたオルトケイ酸亜鉛等が存在する。
【0061】
[0067] 発色団は、2つの異なる分子軌道の間のエネルギーの差が可視スペクトルの範囲内に入る分子中の領域である。従って、発色団に当たった可視光は、電子をその基底状態から励起状態へと励起することにより吸収され得る。光エネルギーを捕捉または検出する役目を果たす生物学的分子において、発色団は光が当たった際にその分子の立体構造変化を引き起こす部分である。発色団はほとんど常に2つの形態:π共役系および金属錯体の1つで生じる。前者において、電子が間をジャンプするエネルギーレベルは、一連の交互の単結合および二重結合により作り出された、しばしば芳香族系中の延長されたπ軌道である。一般的な例には、レチナール(眼において光を検出するために用いられる)、様々な食品着色料、ファブリック染料(アゾ化合物)、リコペン、β−カロテン、およびアントシアニン類が含まれる。金属錯体発色団は、遷移金属の配位子への結合によるd軌道の分裂に起因する。そのような発色団の例は、クロロフィル(植物により光合成のために用いられる)、ヘモグロビン、ヘモシアニン、色を有する鉱物、例えばマラカイトおよびアメジストにおいて見ることができる。
【0062】
[0068] 蛍光体は、発色団に類似して、分子を蛍光性にする分子の構成要素である。それは、特定の波長のエネルギーを吸収して異なる(が同じく特定の)波長で再放出するであろう分子中の官能基である。その放出されるエネルギーの量および波長は、その蛍光体およびその蛍光体の化学的な環境の両方に依存する。この技術は、生化学およびタンパク質研究の分野において、例えば免疫蛍光および免疫組織化学において特別な重要性を有する。フルオレセインの反応性誘導体であるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)は、さまざまな適用のための新規の蛍光分子を作り出すために他の非蛍光分子に化学的に結合させる最も一般的な蛍光体の1つとなっている。他の一般的な蛍光体には、ローダミンの誘導体(TRITC)、クマリン、シアニン、CF色素、FluoProbe類、DyLight Fluor類、Oyester(色素)、Atto色素、HiLyte Fluor類、およびAlexa Fluor類が含まれる。
【0063】
[0069] これらの蛍光体は、量子ドット、タンパク質(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP))、または小分子であることができる。一般的な小分子色素ファミリーには、以下のものが含まれる:キサンテン誘導体(フルオレセイン、ローダミン、Oregon green、エオシン、texas red等)、シアニン誘導体(シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン、メロシアニン等)、ナフタレン誘導体(ダンシルおよびプロダン誘導体)、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体(ピリジルオキサゾール(pyridyloxazole))、ニトロベンゾオキサジアゾール、ベンゾオキサジアゾール等)、ピレン誘導体(cascade blue等)、BODIPY(Invitrogen)、オキサジン誘導体(ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット、オキサジン170等)、アクリジン誘導体(プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー等)、アリールメチン(arylmethine)誘導体(オーラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン等)、CF色素(Biotium)、Alexa Fluor(Invitrogen)、AttoおよびTracy(Sigma)、テトラピロール誘導体(ポルフィン、フタロシアニン、ビリルビン等)、および他のもの(cascade yellow、アズールB、アクリジンオレンジ、DAPI、Hoechst33258、ルシファーイエロー、ピロキシカム、キニンおよびアントラキノン(anthraqinone)、スクアリリウム、オリゴフェニレン等)。
【0064】
[0070] リン光体は、様々なタイプの遷移金属化合物または希土類化合物である。物質は、白熱によるか(全ての原子が放射する)、または発光によるか(放射中心(emission centers)または発光中心と呼ばれる小さい割合の原子のみが光を放射する)のどちらかで光を放射することができる。無機性リン光体では、結晶構造におけるこれらの不均一性は、通常はアクチベーターと呼ばれる痕跡量のドーパント、不純物の添加により作り出される。(稀な場合では、転位または他の結晶欠陥がその不純物の役割を果たすことができる。)その放射中心により放射される波長は、その原子自体に、および周囲の結晶構造に依存する。
【0065】
[0071] 無機材料中のシンチレーションプロセスは、その結晶中に見られる電子帯構造によるものである。入ってくる粒子は電子を価電子帯から伝導帯または励起子帯(伝導帯のすぐ下に位置し、エネルギーギャップにより価電子帯から分離されている)のどちらかに励起させることができる。これは関係する正孔を後に、価電子帯中に残す。不純物はその禁止ギャップ(forbidden gap)において電子準位を作り出す。励起子は緩く結合した電子−正孔対であり、それはそれらが不純物中心により全体として捕捉されるまでその結晶格子を通ってさまよう。次いでその格子はシンチレーション光を放射することにより急速に脱励起する(速い構成要素)。無機シンチレーターの場合、活性化因子である不純物は典型的には放射される光が光電子増倍管が有効である可視範囲または近紫外中にあるように選択される。伝導帯中の電子と関係する正孔は、後者とは無関係である。それらの正孔および電子は不純物中心によりうまく捕捉され、それはその励起子に接近することができない特定の準安定状態を励起する。それらの準安定不純物状態の遅延した脱励起は、低い見込みの禁止機構(low−probability forbidden mechanism)への依存により減速され、再び結果として光の放射をもたらす(遅い構成要素)。
【0066】
C.マイクロアレイ
[0072] 高スループット様式において、マイクロアレイ技術は数万に及ぶ分子相互作用を同時に評価することを可能にする。マイクロアレイは、生物学、医学、創薬に重大な影響を及ぼしてきた。DNAマイクロアレイに基づくアッセイは、遺伝子発現分析、変異に関する遺伝子型解析、一塩基多型(SNP)、および短いタンデム反復(STR)に関する適用を含め、広く用いられてきた。そして、ポリペプチドおよび化合物マイクロアレイはプロテオミクスの分野における2つの重要な手段として登場した。コンビナトリアルライブラリーの1形態である化合物マイクロアレイは、リードの同定、ならびにこれらのリードの最適化のために用いることもできる。このバイオテロリズムの時代において、環境中の多くの生物学的または化学的薬剤を検出することができるマイクロアレイの開発は、法執行機関にとって非常に興味深いであろう。
【0067】
[0073] 本発明の一部の態様に従って、分子相互作用の分析のためのアッセイ法が提供される。本発明の一部の態様に従って、標的ポリヌクレオチドの多重化分析のためのアッセイ法が提供される。本発明の技術は、マイクロアレイに基づくアッセイの特異性および感度を向上させる一方で、遺伝子アッセイを実施する費用を低減する。
【0068】
[0074]
図1は、概略図により、マイクロアレイに基づくアッセイのための、発光団で標識され、粒子と連結された標的分子の発明を示す。その標的分子には、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチド、および炭水化物が含まれる。
【0069】
[0075] 当業者は認識するであろうように、この発明は、特に医薬開発および診断のためのアッセイおよび技法において莫大な数の適用を有する。例えば、真菌、細菌、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア、ウイルスおよび原虫が含まれる多くの感染性もしくは病原性因子のいずれかと関係するポリヌクレオチド分子を検出するための、または性行為感染症、肺障害、胃腸障害、心血管障害等と関係するポリヌクレオチド断片を検出するためのアッセイを設計することができる。
【0070】
[0076] マイクロアレイは、分子生物学および医学において広く用いられている多重化された技術である。マイクロアレイは、鋭くとがったピンを用いた印刷、予め作製されたマスクを用いたフォトリソグラフィー、ダイナミックマイクロミラー装置を用いたフォトリソグラフィー、インクジェット印刷、マイクロコンタクトプリンティング、または微小電極アレイ上での電気化学が含まれる様々な技術を用いて製作することができる。標準的なマイクロアレイでは、そのプローブ分子を表面工学により支持物質の固体表面に付着させ、それにはガラス、シリコン、プラスチック、ヒドロゲル、アガロース、ニトロセルロースおよびナイロンが含まれる。
【0071】
[0077]
図2が示すように、蛍光標識された標的分子の検出に関するマイクロアレイの結果を、3種類の異なる方法を用いて、すなわち明視野でのCCDにより(左のパネル)、蛍光顕微鏡下で(中央のパネル)、および商業的な蛍光マイクロアレイスキャナーにより疑似カラー処理を用いて(右のパネル)観察することができる。
【0072】
[0078] DNAマイクロアレイに関して、それはプローブとして知られるDNAオリゴヌクレオチドの顕微鏡レベルのスポットの整列した系列を含む、またはそれで構成される。これは遺伝子または他のDNA要素の短い区画であることができ、それはストリンジェントな条件の下で相補的なポリヌクレオチド試料(標的と呼ばれる)にハイブリダイズさせるために用いられる。溶液中の標的は通常、マイクロアレイ上にハイブリダイズした蛍光体−、銀−、または化学発光標識された標的の検出により検出および定量化される。アレイは数千〜数万のプローブを含有することができるため、マイクロアレイ実験は多くの遺伝子検査を並行して成し遂げることができる。
【0073】
[0079] 本明細書で記述される系は、同じ標的ポリヌクレオチドを検出する2種類以上のプローブを含んでいてよい。例えば、その系がマイクロアレイである一部の態様において、そのプローブはそのマイクロアレイ上に多数(例えば2、3、4、5、6、7、またはより多くの数のいずれか)コピー存在していてよい。一部の態様において、その系は、同じ標的ポリヌクレオチドを検出する異なるプローブを含む。例えば、これらのプローブはその標的ポリヌクレオチドの異なる(重複する、または重複しない)領域に結合してよい。
【0074】
[0080] 標的ポリヌクレオチドのレベルを決定することができるあらゆるプローブを用いることができる。一部の態様において、そのプローブはオリゴヌクレオチドである。標的ポリヌクレオチドの検出に関してある程度の配列の変動が許容できることが理解されている。従って、そのオリゴヌクレオチドの配列(またはそれらの相補的配列)は、本明細書で記述される標的ポリヌクレオチドの配列とわずかに異なっていてよい。そのような配列の変動は標的ポリヌクレオチドレベルを決定するそのオリゴヌクレオチドの能力に著しく影響を及ぼさない配列中の変動であることは、当業者には理解されている。例えば、これらのオリゴヌクレオチド分子の相同体および変異体は、標準的な方法を用いて整列させた際に比較的高い程度の配列の同一性を有する。本発明に含まれるオリゴヌクレオチドの配列は、本明細書で記述される標的ポリヌクレオチドの配列に対して少なくとも40%の配列の同一性を有し、それには例えば少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%のいずれかの、またはより高い配列の同一性が含まれる。一部の態様において、そのオリゴヌクレオチドは、その標的ポリヌクレオチドを検出するための部分および別の部分を含む。そのような他の部分は、例えばそのオリゴヌクレオチドを支持体に付着させるために用いることができる。一部の態様において、その他の部分は、その相補的配列部分およびその支持体の表面の間の距離を増大させるための非特異的配列(例えばポリTまたはポリdT)を含む。
【0075】
[0081] 本明細書で記述される系のためのオリゴヌクレオチドには、例えばDNA、RNA、PNA、ZNA、LNA、それらの組み合わせ、および/またはそれらの修飾された形態が含まれる。それらには修飾されたオリゴヌクレオチド主鎖も含まれてよい。一部の態様において、そのオリゴヌクレオチドは、本明細書で記述される標的ポリヌクレオチドの全部または一部に相補的な、または同一の、少なくとも約5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個のいずれかの、またはより多くの連続したオリゴヌクレオチドを含む。1個のオリゴヌクレオチドが2個以上のそのような相補的配列を含んでいてよい。一部の態様において、オリゴヌクレオチドを支持体に付着させるために、そのオリゴヌクレオチドの5’または3’末端に結合した反応基(例えばアミン)が存在していてよい。
【0076】
[0082] 一部の態様において、そのプローブはオリゴヌクレオチドである。そのアレイを形成するオリゴヌクレオチドは、以下の方法が含まれるがそれらに限定されないいくつかの方法のいずれか(any number of ways)により支持体に付着させることができる:(i)フォトリソグラフィーの技法を用いたインサイチュ合成(例えば高密度オリゴヌクレオチドアレイ);(ii)ガラス、シリコン、ナイロンまたはニトロセルロース上での中〜低密度でのスポッティング/印刷;(iii)マスキング;および(iv)ナイロンまたはニトロセルロースハイブリダイゼーション膜上でのドットブロッティング。オリゴヌクレオチドは、流体相中で、例えばマイクロタイターウェル、マイクロチャンネルまたは毛細管中でアンカーに結合させることにより、非共有結合的にその支持体上で固定することもできる。
【0077】
[0083] ポリヌクレオチドを固体支持体、例えばガラススライドに付着させるためのいくつかの技法が、当技術において周知である。1つの方法は、固体支持体に付着することができる部分、例えばアミン基、アミン基の誘導体、または正電荷を有する別の基を含有する修飾された塩基または類似体を、増幅されたポリヌクレオチド中に組み込むことである。次いでその増幅産物を、増幅産物上にある反応基と共有結合を形成することができるアルデヒドまたは別の反応基でコートされていてよい固体支持体、例えばガラススライドと接触させ、そのガラススライドに共有結合的に付着した状態にする。増幅産物を含むマイクロアレイは、Biodot(BioDot,Inc. カリフォルニア州アーバイン)スポッティング装置およびアルデヒドでコートされたガラススライド(CEL Associates,テキサス州ヒューストン)を用いて製作することができる。増幅産物をそのアルデヒドでコートされたスライド上にスポットし、公開された手順に従って処理することができる(Schena et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1995), 93:10614-10619)。アレイはロボット工学によりガラス、ナイロン(Ramsay, G., Nature Biotechnol. (1998), 16:40-44)、ポリプロピレン(Matson, et al., Anal Biochem. (1995), 224(1):110-6)、およびシリコンスライド(Marshall and Hodgson, Nature Biotechnol. (1998), 16:27-31)上に印刷することもできる。アレイの組み立てのための他のアプローチには、電場内での微細なマイクロピペッティング(Marshall, and Hodgson, Nature Biotechnol. (1998), 16:27-31)、およびそのポリヌクレオチドを正電荷でコートされたプレート上に直接スポッティングすることが含まれる。アミノプロピルシリコン表面化学を用いる方法のような方法も、http://cmgm.stanford.edu/pbrown/において開示されているように、当技術で既知である。
【0078】
[0084] 本発明のアッセイは、多重化された形式で実施することができる。多重化された方法は、対応する異なる標的ポリヌクレオチドからの増幅産物に関するアッセイに同時に用いることができる2種類、3種類、4種類、5種類、10種類、15種類、20種類、25種類、50種類、100種類、200種類、500種類、1000種類、またはより多くの異なる捕捉プローブを用いて提供される。一部の態様において、多重化された方法は、増幅手順を経ていないポリヌクレオチド標的配列に関するアッセイに用いることもできる。多重化を適用できる方法、例えば本明細書で教示した方法は、より小さい試料からのより大量の情報の獲得を可能にする。より小さい標本しか必要としないことは、研究者が集団中のより大きな数の個人から試料を得る、新規のアッセイを検証する、または単により侵襲性の低い技法が必要とされる際にデータを獲得する能力を増大させる。
【0079】
[0085] 異なる支持体が多重化されたアッセイにおいて捕捉プローブコンジュゲートの一部として含まれる場合、その異なる支持体はそれらを識別することができるようにコード化されていることができる。あらゆるコード化スキームを用いることができ;好都合には、そのコード化スキームは1種類以上の異なる蛍光体を用いることができ、それは蛍光性半導体ナノ結晶であることができる。高密度スペクトルコード化スキームを用いることができる。
【0080】
[0086] スペクトル的にコード化された捕捉プローブコンジュゲートの1個以上の異なる集団を作り出すことができ、それぞれの集団は、1種類以上の半導体ナノ結晶または蛍光性ナノ粒子を含む既知の、または決定可能なスペクトルコードを含む支持体に付着させた1種類以上の異なる捕捉プローブを含む。そのコンジュゲートの異なる集団、従って異なるアッセイは、一緒にブレンドすることができ、そのアッセイはそのブレンドされた集団の存在下で実施することができる。その個々のコンジュゲートはそれらのスペクトル特性に関して走査され、それはそのスペクトルコードが復号化されることを可能にし、そうしてその支持体を同定し、従ってそれが結合している捕捉プローブ(単数または複数)を同定する。識別することができる異なる半導体ナノ結晶および蛍光性ナノ粒子ならびにそれらの組み合わせの数が多いため、多数の異なる捕捉プローブおよび増幅産物を同時に調べることができる。
【0081】
D.粒子
[0087] 本発明は、マイクロアレイに基づくアッセイのために用いるための粒子、微粒子またはビーズ、好ましくは磁性ビーズを提供する。粒子またはビーズは、ポリスチレン、架橋されたポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド コグリコリド)、ポリ無水物、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリシロキサン類、ポリマー性シリカ、ラテックス類、デキストランポリマー類およびエポキシ類が含まれるがそれらに限定されない様々な異なるポリマーから調製することができる。その物質は膨潤および多孔度に関して様々な異なる特性を有し、それは当技術において十分に理解されている。好ましくは、そのビーズはおおよそ10ナノメートル〜1ミリメートル、好ましくは100ナノメートル〜10マイクロメートルの範囲の大きさであり、溶液中で懸濁された際に通常の溶液技法を用いて操作することができる。用語“粒子”、“ビーズ”、“スフィア”、“微粒子”、“マイクロビーズ”および“マイクロスフィア”は、本明細書において互換的に用いられている。
【0082】
[0088] 磁性粒子のための適切な化学組成物は強磁性物質であってよく、それには例えば鉄−コバルト、鉄−プラチナ、サマリウム−コバルト、ネオジム(neodynium)−鉄−ホウ化物等のような希土類含有物質が含まれる。他の磁性物質、例えば超常磁性物質、例えば酸化鉄(Fe
3O
4)も同様に用いることができる。好ましい磁性物質の中には鉄−コバルトが含まれ、これはそのような物質が一般により容易に磁化され、より強い磁化(約1.7テスラ)を有し、より腐食を受けづらいためである。
【0083】
[0089] 粒子の使用のため、結果に関する高価な読み取り装置は必要ではない可能性がある。マイクロアレイのスポット上の粒子は、これらのスポットの直径での大きさが0.03ミリメートルより大きい場合、裸眼で直接見ることができる。別の方法では、直径0.01ミリメートルから5ミリメートルまでのあらゆるスポットの大きさを有するアッセイの結果を普通のカメラを用いて撮影することができ、または適切な倍率の顕微鏡の下で見ることができる。
【0084】
E.標的ポリヌクレオチド
[0090] その標的ポリヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、またはより高次(higher order)であることができ、線状または環状であることができる。典型的な一本鎖標的ポリヌクレオチドには、mRNA、rRNA、tRNA、hnRNA、マイクロRNA、ssRNAまたはssDNAウイルスゲノムおよびウイロイドが含まれるが、これらのポリヌクレオチドは内部に相補的配列および著しい二次構造を含有していてよい。典型的な二本鎖標的ポリヌクレオチドには、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、dsRNAまたはdsDNAウイルスゲノム、プラスミド、ファージ、shRNA(小さいヘアピンRNAまたは短いヘアピンRNA)、およびsiRNA(小さい/短い干渉性RNA)が含まれる。その標的ポリヌクレオチドは、組み換えにより、合成により調製することができ、または生物学的源から精製することができる。その標的ポリヌクレオチドは、その試料の1種類以上の望まれない構成要素を除去する、もしくは減らすために、またはその標的ポリヌクレオチドを増幅の前に濃縮するために精製することができる。逆に、その標的ポリヌクレオチドが特定のアッセイに関して濃縮されすぎている場合、その標的ポリヌクレオチドをまず希釈してよい。
【0085】
[0091] 試料の収集ならびに任意の核酸抽出および精製の後、その標的ポリヌクレオチドを含む試料の核酸部分に対して1種類以上の予備的処理を行うことができる。これらの予備的処理には、インビトロ転写(IVT)、標識、断片化、増幅および他の反応が含まれ得る。mRNAをまず逆転写酵素およびその標的に非相補的な領域を含む第1プライマーであることができるプライマーを用いて処理してcDNAを作製した後、検出および/またはさらなる増幅を行うことができ;これは抽出もしくは精製されたmRNAを用いてインビトロで、またはインサイチュで、例えばスライドに貼り付けられた細胞もしくは組織中で行うことができる。核酸増幅は目的の配列のコピー数を増大させ、標識されたプライマーまたは標識されたヌクレオチドを用いて標的ポリヌクレオチドから生成された増幅産物中に標識を組み込むために用いることができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、転写媒介増幅(TMA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、自家持続配列複製法(3SR)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅(RCA)、ループ媒介等温増幅法(LAMP)、Qベータレプリカーゼの使用、逆転写、ニック翻訳等が含まれる様々な増幅法、特に標識された増幅産物を生成し、本明細書で教示する方法において利用することができる増幅法が使用に適している。
【0086】
[0092] あらゆるヌクレオチドを本装置および方法により検出することができる。そのようなヌクレオチドの例には、AMP、GMP、CMP、UMP、ADP、GDP、CDP、UDP、ATP、GTP、CTP、UTP、dAMP、dGMP、dCMP、dTMP、dADP、dGDP、dCDP、dTDP、dATP、dGTP、dCTPおよびdTTPが含まれる。
【0087】
[0093] 一部の態様において、その標的ポリヌクレオチドはその配列中に直接組み込まれた標識を有しない。その標的ポリヌクレオチドが直接組み込まれた標識を伴って作られる場合、または標識をその標的ポリヌクレオチドに直接結合させることができるように、この標識は捕捉プローブコンジュゲート支持体および/またはレポート部分標識(report moiety label)の検出に干渉しない標識である。
【0088】
[0094] その標的ポリヌクレオチドが一本鎖である場合、増幅の第1サイクルはその標的ポリヌクレオチドに相補的なプライマー伸長産物を形成する。その標的ポリヌクレオチドが一本鎖RNAである場合、そのRNAをDNAに逆転写するために最初の増幅において逆転写酵素が用いられ、そのプライマー伸長産物をコピーするために追加の増幅サイクルを実施することができる。PCRのためのプライマーは、当然、増幅可能な断片を生成するであろうそれらの対応する鋳型中の領域にハイブリダイズするように設計されなければならず;従って、それぞれのプライマーは、その3’ヌクレオチドが、その相補的な鋳型鎖の合成の起点となる(prime)ために用いられるプライマーの3’ヌクレオチドから3’側に位置するその対応する鋳型鎖中のヌクレオチドと塩基対合するようにハイブリダイズしなければならない。
【0089】
[0095] その標的ポリヌクレオチドは、その標的ポリヌクレオチドの1個以上の鎖をプライマーおよび適切な活性を有するポリメラーゼと接触させ、そのプライマーを伸長し、その標的ポリヌクレオチドをコピーして完全長の相補的なポリヌクレオチドまたはそのより小さい部分を生成することにより増幅することができる。その標的ポリヌクレオチドをコピーすることができるポリメラーゼ活性を有するあらゆる酵素を用いることができ、それにはDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、1つより多くのタイプのポリメラーゼ活性を有する酵素が含まれる。そのポリメラーゼは熱不安定性または熱安定性であることができる。酵素の混合物を用いることもできる。典型的な酵素には以下のものが含まれる:DNAポリメラーゼ、例えばDNAポリメラーゼI(“Pol I”)、Pol Iのクレノウ断片、T4、T7、Sequenase(商標)T7、Sequenase(商標)バージョン2.0 T7、Tub、Taq、Tth、Pfx、Pfu、Tsp、Tfl、Tliおよびパイロコッカス種のGB−D DNAポリメラーゼ;RNAポリメラーゼ、例えば大腸菌、SP6、T3およびT7 RNAポリメラーゼ;ならびに逆転写酵素、例えばAMV、M−MuLV、MMLV、RNアーゼHマイナスMMLV(SuperScript(商標))、SuperScript(商標)II、ThermoScript(商標)、HIV−1、およびRAV2逆転写酵素。これらの酵素は全て商業的に入手可能である。多重特異性を有する典型的なポリメラーゼには、RAV2およびTli(エキソ−)ポリメラーゼが含まれる。典型的な熱安定性ポリメラーゼには、Tub、Taq、Tth、Pfx、Pfu、Tsp、Tfl、Tliおよびパイロコッカス種のGB−D DNAポリメラーゼが含まれる。
【0090】
[0096] 適切な反応条件は、pH、緩衝剤、イオン強度、1種類以上の塩類の存在および濃度、ヌクレオチドおよびマグネシウムおよび/または他の金属イオンのような反応物および補助因子の存在および濃度、任意の共溶媒、温度、ポリメラーゼ連鎖反応を含む増幅スキームに関する熱サイクルプロフィールを含め、標的ポリヌクレオチドの増幅を可能にするように選択され、用いられるポリメラーゼならびにその試料の性質に部分的に依存してよい。共溶媒には、ホルムアミド(典型的には約2から約10%まで)、グリセロール(典型的には約5から約10%まで)、およびDMSO(典型的には約0.9から約10%まで)が含まれる。増幅スキームにおいて、増幅の間に生成される偽陽性またはアーティファクトの生成を最小限にするための技法が用いられてよい。これらには、“タッチダウン”PCR、ホットスタートの技法、ネステッドプライマーの使用、またはPCRプライマーをそれらがプライマーダイマーが形成された場合にステムループ構造を形成し、従って増幅されないように設計することが含まれる。PCRを速めるための技法、例えばその試料内のより大きな対流を可能にする遠心PCR(centrifugal PCR)、ならびにその試料の急速な加熱および冷却のための赤外線加熱工程を含めることを用いることができる。1回以上の増幅サイクルを実施することができる。過剰な一方のプライマーを用いて過剰な一方のプライマー伸長産物をPCRの間に生成することができ;好ましくは、その過剰に生成されるプライマー伸長産物は検出されるべき増幅産物である。複数の異なるプライマーを用いてその試料内の特定のポリヌクレオチドの異なる領域を増幅することができる。その増幅反応がPCRにおけるように多サイクルのポリメラーゼによる増幅を含む場合、所与のサイクルで形成されたプライマー伸長産物(単数または複数)をそれらの鋳型(単数または複数)から解離させるのが望ましい。従って、その反応条件は、そのような解離に有利であるようにサイクルの間で変更され;典型的にはこれはその反応混合物の温度を上げることにより行われるが、他の反応条件を解離を有利にするように変更する、例えばその二本鎖ポリヌクレオチドが溶解している溶液の塩濃度を下げる、および/またはpHを上げることができる。その解離は増幅反応混合物中で実施されるのが好ましいが、そのポリヌクレオチドをまずあらゆる有効な技法を用いて分離し、解離のための異なる溶液に写し、次いで追加の増幅サイクルのための増幅反応混合物中に再導入してもよい。
【0091】
[0097] このアッセイは多重化することができ、すなわち、無関係な標的、または同じ座位からの異なるアレルもしくはアレルの亜集団、または同じ座位における染色体再配置であることができる異なる標的に向けられた異なるプライマーの対を用いることにより、多数の別個のアッセイを同時に行うことができる。これは、試料中の多数の標的ポリヌクレオチド(例えばcDNAライブラリー中の特定の遺伝子)の存在の定量化を可能にする。必要とされる全ては、そのようなアッセイにおける異なる第2のポリヌクレオチド伸長産物を独特の捕捉配列または独特の標識のどちらかにより独特に同定する能力である。
【0092】
[0098] 増幅された標的ポリヌクレオチドに対して増幅後処理を行うことができる。例えば、一部の場合において、より容易に接近可能であり、ループ形成(looping)および/または多数の捕捉プローブへのハイブリダイゼーションを回避する断片を提供するために、その増幅産物をポリヌクレオチドアレイとのハイブリダイゼーションの前に断片化することが望ましい可能性がある。そのポリヌクレオチドの断片化は、実施されているアッセイにおいて有用な大きさの断片を生成するあらゆる方法により実施することができ;適切な物理的、化学的および酵素的方法は当技術において既知である。
【0093】
[0099] 増幅された標的ポリヌクレオチドは、直接またはそのポリヌクレオチドおよび/またはその粒子への修飾を通してのどちらかでその粒子に連結することもできる(
図3)。一部の態様において、その標的ポリヌクレオチドは、例えばビオチン化により修飾される。一部の他の態様において、その粒子は官能基、例えばストレプトアビジン、neutravidinおよびアビジン等で修飾される。その標的ポリヌクレオチドは、そのような修飾および官能基を通してその粒子に連結することができる。二本鎖ポリヌクレオチドに関して、その標的ポリヌクレオチドのその粒子への連結の後、その粒子に連結されている間に、化学反応、酵素もしくは加熱、またはそれらの組み合わせによる変性法により一本鎖標的ポリヌクレオチドを調製することができる。一部の態様において、その化学反応は、尿素、ホルムアミド、メタノール、エタノール、酵素、またはNaOHを用いる。一部の態様において、酵素的方法にはエキソヌクレアーゼおよびウラシル−N−グリコシラーゼが含まれる。一部の他の態様において、その二本鎖標的ポリヌクレオチドは約30℃から約95℃までの適切な温度で熱変性される。
【0094】
[0100] 本発明の方法は、試料中の多数の標的ポリヌクレオチドの均質な多重化された分析における使用に適している。多数の標的ポリヌクレオチドは、多数の増幅オリゴヌクレオチドプライマーまたはプライマーのセットによる試料の増幅により生成することができ、それぞれのプライマーまたはプライマーのセットは特定のポリヌクレオチド標的配列の増幅に特異的である。例えば、試料を、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、パルボウイルスB19、西ナイルウイルス、ハンタウイルス、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)等が含まれる多数のウイルス標的配列のそれぞれの増幅に特異的なプライマーを用いた増幅により、多数のウイルスポリヌクレオチド標的配列の存在に関して分析することができる。
【0095】
[0101] 標的ポリヌクレオチドを含む、または含むことが疑われる試料の部分は、細胞、組織または体液、ならびにウイルス、マイコプラズマ、および化石が含まれるその生物により残された沈着物を含め、生きた生物から直接または間接的に得ることができる、ポリヌクレオチドを含む生物学的物質のあらゆる源であることができる。その試料は、全体が、または部分的に合成的手段により調製された標的ポリヌクレオチドも含むことができる。典型的には、その試料は主に水性媒体として得られ、または水性媒体中に分散している。その試料の限定的でない例には、血液、血漿、尿、精液、乳汁、痰、粘液、バッカルスワブ、腟スワブ、直腸スワブ、吸引液、穿刺生検、例えば手術または検死により得られた組織の切片、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚、気道、腸管、および尿生殖路の外分泌物、涙、唾液、腫瘍、器官、インビトロ細胞培養成分の試料(細胞の細胞培養培地中での増殖の結果得られた馴化培地、ウイルスに感染していると推定される細胞、組み換え細胞、および細胞の構成要素が含まれるが、それに限定されない)、ならびにポリヌクレオチド配列を含む組み換えによる源、例えばライブラリーが含まれる。
【0096】
[0102] その試料は、標的ポリヌクレオチドまたはその代用物を含有することが既知である陽性対照試料であることができる。標的ポリヌクレオチドを含有することが期待されないがそれを含有することが疑われる陰性対照試料も用いることができ、それは所与のアッセイにおいて用いられる試薬のその標的ポリヌクレオチドによる汚染がないことを確証するために、ならびに所与のアッセイ条件のセットが偽陽性(試料中の標的ポリヌクレオチドの非存在下でさえ生じる陽性シグナル)を生成するかどうかを決定するために試験される。
【0097】
[0103] その試料は、存在するあらゆる標的ポリヌクレオチドを可溶化および/または精製するために、またはそれが増幅スキームにおいて用いられる試薬に、もしくは検出試薬に接近できるようにするようにするために、希釈する、溶解させる、懸濁する、抽出する、または他の方法で処理することができる。その試料が細胞を含有する場合、その細胞内のポリヌクレオチドを放出させるために、その細胞を溶解する、または透過処理することができる。透過処理緩衝液を用いて細胞を溶解することができ、それはさらなる工程、例えばポリメラーゼ連鎖反応を溶解後に直接実施することを可能にする。
【0098】
F.遺伝情報
[0104] あらゆる種類の遺伝情報は、本明細書で特許請求するマイクロアレイに基づく分析の方法の対象であることができる。例えば、その遺伝情報は、置換、挿入、欠失およびインデルからなる群から選択される変異であることができる。1態様において、その遺伝情報は一塩基多型(SNP)である。1態様において、その遺伝情報は遺伝子である。1態様において、その遺伝情報は、ポリペプチド、抗体、小分子化合物、ペプチドおよび炭水化物が含まれる遺伝子産物である。別の態様において、その遺伝情報は、真菌、細菌、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア、ウイルスおよび原虫からなる群から選択される感染性または病原性因子により引き起こされる疾患と関係している。さらに別の態様において、その遺伝情報は、性行為感染症、癌、脳血管疾患、心疾患、呼吸器疾患、冠動脈性心疾患、糖尿病、高血圧、アルツハイマー病、神経変性疾患、慢性閉塞性肺疾患、自己免疫疾患、嚢胞性線維症、脊髄性筋萎縮症、ベータサラセミア、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ欠損症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、または遺伝性聴力損失と関係している。さらに別の態様において、その遺伝情報は遺伝性聴力損失と関係している。
【0099】
[0105] その標的遺伝子のアレルは、一塩基の置換、挿入、もしくは欠失により、または多数塩基の置換、挿入もしくは欠失により、またはインデルにより引き起こされてよい。さらに、ヌクレオチド単位への修飾には、それぞれの相補的なピリミジンまたはプリンに対して水素結合を形成するプリンまたはピリミジン塩基上の官能基に関する再編成、付加(appending)、置換、または他の方式での変更が含まれる。その結果として生じる修飾されたヌクレオチド単位は場合により、他のそのような修飾されたヌクレオチド単位と塩基対を形成するがA、T、C、GまたはUとは塩基対を形成しなくてよい。そのポリヌクレオチドの機能を妨げない塩基部位を組み込むことができる。ポリヌクレオチド中の残基の一部または全部を場合により1種類以上の方法で修飾することができる。
【0100】
[0106] 標準的なA−TおよびG−C塩基対は、チミジンのN3−HおよびC4−オキシならびにアデノシンのN1およびC6−NH2それぞれの間での、ならびにシチジンのC2−オキシ、N3およびC4−NH2ならびにグアノシンのC2−NH2、N’−HおよびC6−オキシそれぞれの間での水素結合の形成を可能にする条件の下で形成される。従って、例えば、グアノシン(2−アミノ−6−オキシ−9−O−D−リボフラノシル−プリン)を修飾してイソグアノシン(2−オキシ−6−アミノ−9−β−−D−リボフラノシル−プリン)を形成することができる。そのような修飾は結果としてもはやシトシンとの標準的な塩基対を有効に形成しないであろうヌクレオシド塩基をもたらす。しかし、イソシトシン(1−β−D−リボフラノシル−2−アミノ−4−オキシ−ピリミジン)を形成するようなシトシン(1−β−D−リボフラノシル−2−オキシ−4−アミノ−ピリミジン)の修飾は、結果としてグアノシンと有効に塩基対合しないであろうがイソグアノシンと塩基対を形成するであろう修飾されたヌクレオチドをもたらす(米国特許第5,681,702号)。イソシトシンはSigma Chemical Co.(ミズーリ州セントルイス)から入手可能であり;イソシチジンはSwitzer et al. (1993) Biochemistry 32:10489-10496およびその中で引用されている参考文献により記述されている方法により調製することができ;2’−デオキシ−5−メチル−イソシチジンはTor et al. (1993) J. Am. Chem. Soc. 115:4461-4467およびその中で引用されている参考文献の方法により調製することができ;ならびにイソグアニンヌクレオチドはSwitzer et al. (1993)(上記)、およびMantsch et al. (1993) Biochem. 14:5593-5601により記述されている方法を用いて、または米国特許第5,780,610号において記述されている方法により調製することができる。他の非天然(normatural)塩基対は、Piccirilli et al. (1990) Nature 343:33-37において2,6−ジアミノピリミジンおよびその片割れ(complement)(1−メチルピラゾロ−[4,3]ピリミジン−5,7−(4H,6H)−ジオン)の合成に関して記述されている方法により合成することができる。独特の塩基対を形成する他のそのような修飾されたヌクレオチド単位、例えばLeach et al. (1992) J. Am. Chem. Soc. 114:3675-3683およびSwitzer et al.(上記)において記述されている修飾されたヌクレオチド単位が既知である。
【0101】
[0107] 本明細書で定義されるような多型領域は、少なくとも1個の多型部位により特性付けられる遺伝子座の一部である。遺伝子座は、遺伝子、身体的特徴、または表現型の形質と関係している染色体上の位置である。多型部位は、集団中で少なくとも2種類の別の配列が観察されている遺伝子座内の位置である。本明細書で定義される多型領域は、多型部位に“相当する”と言われ、すなわち、その領域はその多型部位に、その部位の5’側またはその部位の3’側において隣接していてよく、あるいはその多型部位を含有していてよい。多型領域はその多型部位を含むポリヌクレオチドのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含み、約100から約5000塩基対までの長さを有していてよい。例えば、多型領域は、制御領域、例えばプロモーター、5’UTR、3’UTR、イントロン、エキソン等の全部または一部であってよい。多型または対立遺伝子変異型は、多型を含むヌクレオチドまたはアミノ酸配列を有するゲノムDNA、cDNA、mRNAまたはポリペプチドである。多型は多型部位において観察される配列の変動であり、それにはヌクレオチド置換(一塩基多型またはSNP)、挿入、欠失、インデルおよびマイクロサテライトが含まれる。多型は結果として遺伝子発現、タンパク質構造、またはタンパク質機能における検出可能な違いをもたらす可能性があり、またはもたらさない可能性がある。好ましくは、本発明の多型領域は約1000塩基対の長さを有する。さらに好ましくは、本発明の多型領域は約500塩基対の長さを有する。最も好ましくは、本発明の多型領域は約200塩基対の長さを有する。
【0102】
[0108] 本明細書で定義されるようなハプロタイプは、染色体対中の染色体の一方の上の遺伝子座内の定められた領域中の多型変異型の組み合わせの表現である。遺伝子型は、本明細書で用いられる際、多型部位に存在する多型変異型の表現である。
【0103】
[0109] 当業者は、本明細書で記述される多型領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、プライマー伸長に基づく配列決定法、制限部位分析、核酸増幅法、リガーゼに基づく配列決定法、ミスマッチに基づく配列決定法、マイクロアレイに基づく配列決定法等で用いられるストリンジェンシーの条件のようなストリンジェンシーの条件下でその多型領域にハイブリダイズすることができなければならないことを認識しているであろう。
【0104】
[0110] 先天性聴力損失は生産児1,000人中1人を冒し、これらの症例のおおよそ50%が遺伝性である。中国の障害者の中で、聴力損失の人口は2番目に多い。GJB2、SLC26A4および12S rRNAにおけるSNP/変異は遺伝性聴力損失の一般的な原因である。この発明は、さまざまな難聴(deafness)の患者またはさらには健康な人からのSNP/変異の検出の必要性を満たすことができ、それはこの革新的技術の適用可能性を支持する例としても役立つ。
【0105】
G.標的ポリヌクレオチドの増幅のためのオリゴヌクレオチドプライマー
[0111] 特定の観点において、本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における、または他の核酸増幅法における使用に適したオリゴヌクレオチドプライマー対においても具体化される。当業者は、当技術ですぐに入手できる知識を本明細書における教示との組み合わせで用いて、適切なオリゴヌクレオチドプライマー対を設計することができるであろう。この態様の具体的なオリゴヌクレオチドプライマー対には表2で示したオリゴヌクレオチドプライマー対が含まれ、それはGJB2、SLC26A4および12S rRNA中の多型部位に相当する多型領域を増幅するのに適している。当業者は、GJB2、SLC26A4および12S rRNA中の多型領域を増幅するのに適した他のオリゴヌクレオチドプライマー対を過度の実験なしで設計することができることを認識しているであろう。
【0106】
[0112] 一部の変形において、SNP/変異は少なくとも2種類のアレル特異的プライマーに対応する。1つのアレル特異的プライマーはそのSNP/変異座位を含有する標的断片の野生型アレルの領域に同一または相補的な配列を含む。その他のアレル特異的プライマーのそれぞれは、そのSNP/変異座位を含有する標的断片の変異体アレルの領域に同一または相補的な配列を含む。そのアレル特異的プライマーは、そのSNP/変異座位においてそれらの3’末端で終結してよい。標的遺伝子の野生型および変異体アレルの間の識別の能力を増大させるため、そのアレル特異的プライマー中に人為的なミスマッチを導入することができる。その人為的なミスマッチは、天然塩基またはヌクレオチド類似体であることができる。本発明のPCRプライマー対のそれぞれは、あらゆるPCR法において用いることができる。例えば、本発明のPCRプライマー対は、米国特許第4,683,195号;第4,683,202号、第4,965,188号;第5,656,493号;第5,998,143号;第6,140,054号;WO01/27327;WO01/27329;等で開示されている方法において用いられてよい。本発明のPCRプライマー対は、PCRを実施する商業的に入手できる機械のいずれか、例えばApplied Biosystemsから入手可能なGeneAmp(登録商標)Systemのいずれかにおいて用いることもできる。
【0107】
[0113] 本プライマーは、あらゆる適切なタイプの核酸、例えばDNA、RNA、PNAまたはそれらの誘導体を含むことができる。好ましくは、そのプライマーはヌクレオチド配列、またはその相補鎖を含み、それは表2において示されている。やはり好ましくは、そのプライマーは例えば化学的、酵素的、免疫原性、放射性、蛍光、発光およびFRET標識で標識されている。
【0108】
[0114] そのオリゴヌクレオチドプライマーは、あらゆる適切な方法により製造することができる。例えば、そのプライマーは、化学的に合成する(一般にAusubel (編者) Current Protocols in Molecular Biology, 2.11. Synthesis and purification of oligonucleotides, John Wiley & Sons, Inc. (2000)を参照)、天然源から単離する、組み換え法により製造する、またはそれらの組み合わせによることができる。合成オリゴヌクレオチドは、Matteucci et al., J. Am. Chem. Soc., 3:3185-3191 (1981)のトリエステル法を用いることにより調製することもできる。あるいは、例えばApplied Biosynthesis DNA合成機上でのシアノエチルホスホラミダイト化学を用いる自動化された合成が好ましい可能性がある。好ましくは、そのプライマーは化学的に合成される。
【0109】
[0115] 本発明のオリゴヌクレオチドプライマーを調製するための適切な塩基は、天然存在ヌクレオチド塩基、例えばアデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、およびチミンから選択されてよい。それは非天然存在または“合成”ヌクレオチド塩基、例えば8−オキソ−グアニン、6−メルカプトグアニン、4−アセチルシチジン、5−(カルボキシヒドロキシエチル)ウリジン、2’−O−メチルシチジン、5−カルボキシメチルアミノ−メチル−2−チオリジン(5−carboxymethylamino−methyl−2−thioridine)、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’−O−メチルプソイドウリジン、ベータ−D−ガラクトシルクエオシン(beta−D−galactosylqueosine)、2’−Oメチルグアノシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデノシン、1−メチルアデノシン、1−メチルプソイドウリジン、1−メチルグアノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、3−メチルシチジン、5−メチルシチジン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、ベータ−D−マンノシルクエオシン、5−メトキシカルボニルメチルウリジン、5−メトキシウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、N−((9−.ベータ.−D−リボフラノシル−2−メチルチオプリン−6−イル)カルバモイル)スレオニン、N−((9−ベータ−D−リボフラノシルプリン−6−イル)N−メチルカルバモイル)スレオニン、ウリジン−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウリジン−5−オキシ酢酸、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウリジン、クエオシン、2−チオシチジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジン、2−チオウリジン、5−メチルウリジン、N−((9−ベータ−D−リボフラノシルプリン−6−イル)カルバモイル)スレオニン、2’−O−メチル−5−メチルウリジン、2’−O−メチルウリジン、ワイブトシン、および3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウリジンから選択されてもよい。
【0110】
[0116] 同様に、オリゴヌクレオチドの化学的類似体(例えば、そのホスホジエステル結合が改変されて例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、またはアミド亜リン酸エステルになっているオリゴヌクレオチド)を用いることもできる。分解からの保護は、それによりそのオリゴヌクレオチドの3’末端においてホスホジエステル結合がヌクレアーゼ耐性結合で置換される“3’末端キャップ”戦略の使用により達成することができる(Shaw et al., Nucleic Acids Res., 19:747 (1991))。アミド亜リン酸エステル、ホスホロチオエート、およびメチルホスホネート結合は、全てこの様式で十分に機能する。ホスホジエステル主鎖のより広範囲に渡る修飾が安定性を与えることが示されており、オリゴヌクレオチドの高められた親和性および増大された細胞浸透を可能にする可能性がある(Milligan et al., J. Med. Chem., 36:1923 (1993))。ホスホジエステル主鎖全体を新規の結合で置き換えるために、多くの異なる化学的戦略が用いられてきた。主鎖の類似体には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、アミド亜リン酸エステル、ボラノホスフェート、ホスホトリエステル、ホルムアセタール(formacetal)、3’−チオホルムアセタール、5’−チオホルムアセタール、5’−チオエーテル、カーボネート、5’−N−カーボネート、サルフェート、スルホネート、スルファメート、スルホンアミド、スルホン、サルファイト、スルホキシド、スルフィド、ヒドロキシルアミン、メチレン(メチルイミノ)(MMI)またはメチレンオキシ(メチルイミノ)(MOMI)結合が含まれる。ホスホロチオエートおよびメチルホスホネートで修飾されたオリゴヌクレオチドは、自動化されたオリゴヌクレオチド合成によるそれらの入手可能性のため、特に好まれている。そのオリゴヌクレオチドは、(Milligan et al., J. Med. Chem., 36:1923 (1993))により記述されているような“ペプチド核酸”であってよい。唯一の必要条件は、そのオリゴヌクレオチドプライマーが、その少なくとも一部が標的配列の一部に結合することができる配列を有するべきであることである。
【0111】
[0117] その標的ポリヌクレオチドは、二本鎖または一本鎖であってよい。一部の態様において、その一本鎖標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部は、そのマイクロアレイ上に固定されたオリゴヌクレオチドプローブの少なくとも一部に完全に、または実質的に相補的である。他の態様において、その一本鎖標的ポリヌクレオチドは、そのマイクロアレイ上に固定されたオリゴヌクレオチドプローブに完全に相補的である。
図3は、発光団で標識された二本鎖標的ポリヌクレオチドの検出のための粒子と統合されたマイクロアレイに基づくアッセイの本発明に従う概略図である。
【0112】
[0118] PCR、(RNA分子に関して)RT−PCRまたは他の方法を用いて、目的のポリヌクレオチド分子/薬剤を核酸断片に変換し、ビオチン、ジゴキシンまたは類似のもので標識することができ、次いでそれは粒子/ビーズの表面上の部分と結合する。粒子またはビーズへの連結により、溶液中のこれらの核酸断片が濃縮される。二本鎖核酸断片に関しては、それらを変性させて一本鎖核酸断片にする。次いでビーズを特定のマイクロアレイスポットに標的−プローブハイブリダイゼーションにより連結し、それは直接、またはさらなる修飾を通して、高価でない装置または一般的な商業的マイクロアレイスキャナーを用いた結果の検出を容易にする。特定の遺伝子、SNPまたは遺伝子変異、例えば欠失、挿入、およびインデルがそうして同定される。SNP/変異に関して、それらは生物医学研究に、および医薬化合物の開発または医学的診断に価値がある。SNPは進化的に安定でもあり−世代間であまり変化しない−これはそれらを集団研究において追跡するのに好都合なものにしている。
【0113】
[0119] 本発明のこの工程において、そのポリヌクレオチドをアッセイするために、すなわち多型部位を決定するためにあらゆる方法を用いることができる。例えば、上記で記述したプライマー伸長に基づく方法、リガーゼに基づく配列決定法、ミスマッチに基づく配列決定法、またはマイクロアレイに基づく配列決定法を、本発明に従って用いてよい。あるいは、制限断片長多型(RFLP)検出、一本鎖高次構造多型検出(SSCP)、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)、PCRに基づくアッセイ、例えばTaqman(登録商標)PCRシステム(Applied Biosystems)のような方法を用いてよい。
【0114】
[0120] アレル特異的PCR(ASPCR)は、増幅抵抗性変異システム(amplification refractory mutation system)(ARMS)またはPCR配列特異的プライマー(PCR−SSP)等として知られている。高い正確性により、ASPCRは遺伝子配列中の既知のSNP/変異を分析するのに適しており、それは、特異的プライマーの3’末端がその鋳型にマッチしない場合にそのプライマーを伸長することができず、そのPCR反応が遮断されるように、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有しないDNAポリメラーゼを用いる。多重PCRを利用して、多数の座位を同時に増幅し、次いでDNAマイクロアレイにより識別することができる。そのPCR増幅は、1個のチューブ中で、または異なるチューブ中で実施されてよい。
【0115】
[0121] ユニバーサルアレイの技術を用いることにより、タグ配列がプライマーとコンジュゲートされ、それらの最終産物はそのタグプローブと容易にハイブリダイズすることができる。マイクロアレイはここでまさに復号手段としての役目を果たす。そのタグ配列は人工的に設計され、重要な選別(filtering)を受け、それらは対応する相補配列であるcタグ配列を有する。タグおよびcタグのそれぞれの組み合わせは、その標的遺伝子中のSNP/変異のアレルに対応する。異なるタグ配列間のTmの差は5℃以下であり、そのタグ配列はそれら自体の間での、またはプライマーの群との交差ハイブリダイゼーションを有さず、その試料のゲノムDNAの種に対して低い相同性を有し、ヘアピン構造を有しない。遺伝子または遺伝子型の決定は、そのPCR産物とハイブリダイズしたマイクロアレイ上のタグプローブのハイブリダイゼーションシグナルおよび位置に基づく。
【0116】
[0122]
図4は、遺伝性聴力損失に関する8種類のSNP/変異の逆多重化に関する例としてのユニバーサルタグアレイの設計であり、それは16種類のタグのみからなり、全てのタグプローブは5個の連続した1個に関して横に複製されている。そのユニバーサルアレイ上のそれぞれのタグプローブは、表1において示したタグ配列のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。一部の変形において、それぞれのタグプローブは5’−アミノ修飾されており、そのタグ配列の5’末端に連結された15ヌクレオチドのポリdTスペーサーを含む。QCおよびBCは、それぞれスポッティング効率の陽性および陰性対照を表す。PCおよびNCは、それぞれハイブリダイゼーションの陽性および陰性対照を表す。MCはそれらの標的と結合するマイクロスフィア表面の修飾された部分の陽性対照を表す。これらの考慮すべき事柄は、アッセイ手順内のそれぞれの工程が最終的な結果と同様に正確に実施されていることを確実にする。当然、特定の適用に関して、より多くの、またはより少ないタグ配列を、複製スポットありまたはなしで用いることができる。これらのタグ配列は、生物情報学の方法により設計することができる。タグプローブは、その標的遺伝子の種とは異なる生物種に由来することもできる。例えば、その標的の種がヒトからである場合、そのタグ配列は細菌の配列に由来することができる。そのタグ配列は、一本鎖オリゴヌクレオチドまたはペプチドオリゴヌクレオチドである。
【0117】
[0123] この発明におけるユニバーサルアレイは、一般的なマイクロアレイとは異なる。一般的なマイクロアレイに関して、そのアレイ上のプローブは、遺伝子特異的またはアレル特異的オリゴヌクレオチドであってよい。異なる標的遺伝子パネル(panel)またはSNP/変異パネルは異なるマイクロアレイの形式を必要とする。しかし、この発明におけるユニバーサルアレイは特異的に設計されたタグプローブからなり、従ってそれらはアレル特異的オリゴヌクレオチドまたはプライマーと関係ない。そのタグ配列は、異なる遺伝子または異なる種の異なるSNP/変異に関するコードとして用いることができる。ユニバーサルアレイの1つの形式は、あらゆる遺伝子または遺伝子型の検出のために用いることができる。従って、そのようなアレイは普遍的であり、検出のプロセスは一種の復号工程である。
【0118】
H.キット
[0124] 粒子、マイクロアレイおよびマイクロアレイ上に固定されたプローブ分子を含む、分子相互作用を検出するのに有用なキットをこの発明において本明細書により提供する。特定の観点において、本発明は、ユニバーサルタグアレイを含むキットにおいても具体化される。好ましくは、本発明のキットは、表2において示したような2種類のアレル特異的プライマーおよび共通プライマーを含む、遺伝情報のASPCR増幅のためのプライマーのセットを含む。本発明のキットは、重合剤(polymerizing agent)、例えば熱安定性核酸ポリメラーゼ、例えば米国特許第4,889,818号;第6,077,664号等において開示されている熱安定性核酸ポリメラーゼも含んでいてよい。本発明のキットは、鎖を伸長するヌクレオチド、例えばdATP、dTTP、dGTP、dCTP、およびdITPも含んでいてよく、それにはdATP、dTTP、dGTP、dCTP、およびdITPの類似体が、そのような類似体が熱安定性核酸ポリメラーゼに関する基質であり、成長している核酸鎖中に組み込まれ得る限り含まれる。好ましい態様において、本発明のキットは、少なくとも1個のオリゴヌクレオチドプライマー対、重合剤、および鎖伸長ヌクレオチドを含む。本発明のキットには、場合により緩衝剤、バイアル、マイクロタイタープレート、および使用のための説明書が含まれていてよい。
【0119】
I.典型的な態様
[0125] 以下の実施例は本発明を説明するために提供されているのであり、限定するために提供されているのではない。
【実施例】
【0120】
試料
[0126] 遺伝性難聴と関係する既知のSNP/変異を有する患者の血液試料、ならびにバッカルスワブおよび乾燥血液スポットが含まれる未知のSNP/変異を有する試料は、中国PLA総合病院により提供された。
【0121】
プライマー
[0127] 合計8種類のSNP/変異を分析するために用いられた多重PCRプライマーを、表2において列挙する。縦列において、変異のタイプ‘del’は欠失変異を表し、例えばc.35delGはGFB2のコード領域中の35位のGの欠失を意味し;‘>’は置換変異を表し、例えば2168A>GはSLC26A4(PDS)のコード領域中の2168位のAのGによる置換を意味する。‘WT’または‘MU’の接尾辞を有するプライマー名は、そのSNP/変異座位においてそれぞれ野生型または変異体アレルを特異的に増幅することができるアレル特異的プライマーを表す。‘RB’の接尾辞を有するプライマー名は、そのSNP/変異座位が含まれる標的遺伝子断片の野生型アレルおよび変異体アレルの両方を増幅することができる、5’末端においてビオチン化された共通プライマーを表す。その共通プライマーはまた、合成される間にCy3−dTTPで蛍光標識されており、それは表2において星印をつけてある。それぞれのSNP/変異座位に関して、その2種類のアレル特異的プライマーはそれぞれ共通プライマーと対になる。
【0122】
[0128] ユニバーサルアレイは、試料のスポッティングに関する陽性品質管理(QC)、試料のスポッティングに関する陰性品質管理(BC)、ハイブリダイゼーションに関する陽性品質管理(PC)、ハイブリダイゼーションに関する陰性品質管理(NC)、およびストレプトアビジンでコートされた粒子のビオチンで標識されたDNA断片との結合の陽性対照(MC)を除いて、多重PCR産物にハイブリダイズすることができる16種類のタグプローブで構成されている。QCは、そのアレイ上の試料のスポッティングおよび固定の有効性を監視するため、一方の末端において蛍光HEXで標識されており、他方の末端においてアミノ基(NH
2)により修飾されているオリゴヌクレオチドプローブである。BCは試料のスポッティングの間の交差汚染の品質管理のためのスポッティング緩衝液である。NCは、非特異的ハイブリダイゼーションの品質管理のための、アミノ基により修飾されたオリゴヌクレオチドプローブであり、それは理論上溶液中のあらゆる断片にハイブリダイズすることができない。PCは、PCRおよびハイブリダイゼーションの品質管理のための、ハウスキーピング遺伝子産物にハイブリダイズすることができるアミノ基により修飾されたオリゴヌクレオチドプローブである。MCは、ビオチン化されたDNA断片と結合するストレプトアビジンでコートされた粒子の品質管理のための、アミノ基により修飾されており、ビオチン化されているオリゴヌクレオチドプローブである。
【0123】
[0129] ユニバーサルアレイ上のタグプローブは、以下の形式に従って設計されている:NH2−TTTTTTTTTTTTTTT−タグX、ここでXは1〜16の自然数である。そのタグプローブは5’アミノ基修飾を有し、続いてポリdT15、続いてそれぞれ表1において列挙されている配列1〜16を有するタグ1〜タグ18を有する。タグプローブ中のタグ1〜タグ16のヌクレオチド配列は、それぞれそのプライマーのタグ1〜タグ16の対応する配列と同一である。
【0124】
多重アレル特異的PCR
[0130] 難聴の患者または難聴に関する高リスク家系からの全血試料、バッカルスワブおよび乾燥血液スポットから抽出されたゲノムDNAを鋳型として用いて、多重PCRを実施した。反応体積は20μlであり、0.2mM dNTP、1×Qiagen PCR緩衝液を含有し、2mMまでのMgCl
2、1単位の3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を欠くHotStartTaq DNAポリメラーゼ(Qiagen,ドイツ、ヒルデン)および10ngのゲノムDNA、および0.2μMのそれぞれの選択されたSNP/変異に関するプライマーを添加した。アッセイの検出限界を決定するため、5ngから100ngまでの範囲の異なる量のゲノムDNAを用いた。増幅はPTC−225サーマルサイクラー(MJ Research,マサチューセッツ州ウォータータウン)において実施された。増幅プログラムは以下の通りであった:最初に95℃で15分間;次いで94℃で30秒間、0.5℃/秒で温度変動(ramp)させて55℃まで下げ、55℃で30秒間ホールド、0.2℃/秒で温度変動させて70℃まで上げ、60℃で45秒間ホールド、10サイクル繰り返し;次いで90℃で30秒間、0.5℃/秒で温度変動させて55℃まで下げ、55℃で30秒間ホールド、0.2℃/秒で温度変動させて70℃まで上げ、70℃で45秒間ホールド、22サイクル繰り返し;最後に60℃で10分間ホールド;そして4℃に浸す。
【0125】
一本鎖DNAの単離
[0131] ビオチン標識されたPCR産物を捕捉することができる、ストレプトアビジンでコートされたMyOne Dynalビーズ(Invitrogen Dynal AS,ノルウェー、オスロ)を用いた。これらのビーズをまず供給業者からのプロトコルに従って前処理し、3μLのビーズを5μLのPCR産物に添加し、10分間保温した。次いで結合および洗浄緩衝液(5mMトリス−HCl pH7.5、0.5mM EDTA、1M NaCl)での2回の洗浄を続いて行った。アルカリ変性を、60μLの新しく調製した0.1 N NaOHを用いて2回、その都度10分間実施した。その後、15μLのハイブリダイゼーション緩衝液(9×SSC、7.5×デンハルト、37.5%(v/v)ホルムアミド、0.15% SDS)を添加した。
【0126】
ユニバーサルアレイハイブリダイゼーション
[0132] そのハイブリダイゼーション混合物をユニバーサルタグアレイの表面に添加した。そのスライドを50℃で1時間保温し、2タイプの洗浄緩衝液(タイプI:1×PBSおよび0.2% Tween−20;タイプII:0.03×SSC)中でそれぞれ室温で2分間洗浄した。常磁性粒子またはビーズを操作するために磁力が用いられる場合、30分間の期間がハイブリダイゼーションのために用いられた。最後に、そのスライドを遠心分離により乾燥させた。そのスライドを共焦点LuxScan 10Kスキャナー(CapitalBio,中国、北京)で走査し、得られた画像のデータを将来の分析のためにSpotDataソフトウェア(CapitalBio)で抽出した。レーザーパワーおよび光電子増倍管(PMT)指数はそれぞれ70%および700であった。
【0127】
実施例1
遺伝性聴力損失に関するSNP/変異の多重化された分析
[0133] 常磁性マイクロスフィアと統合されたマイクロアレイに基づくアッセイを、遺伝性聴力損失に関するSNP/変異の多重化された分析のために用いた。商業的な蛍光スキャナーを用いてその結果を検出し、それは多数のPCR産物をマイクロスフィアを用いて濃縮し、ssDNA断片を回収し、マイクロスフィアをユニバーサルタグアレイにハイブリダイゼーションにより連結し、それらをユニバーサルタグアレイから復号することにより成し遂げられた。
【0128】
[0134]
図4は、例として、遺伝性聴力損失に関する8種類のSNP/変異に対応するユニバーサルタグアレイの設計であり、ここでGJB2(Cx26)遺伝子、SLC26A4(PDS)遺伝子、および12S rRNA(MTRNR1)遺伝子におけるSNP/変異が選択された。‘W’または‘M’の接尾辞を有する名前は、それぞれSNP/変異座位における野生型または変異体アレルに対応するプローブを表している。そのアレイの左側上にあるのは野生型アレルに関するプローブであり、右側上にあるのは変異体アレルに関するプローブであり、それぞれのプローブは横に5個の複製スポットとして印刷されている。GJB2(Cx26)遺伝子中のc.35delG、c.176_191del16、c.235delC、およびc.299_300delAT、SLC26A4(PDS)遺伝子中のc.2168A>Gおよびc.919−2A>G(IVS7−2A>G)、ならびに12S rRNA遺伝子(MTRNR1、ミトコンドリア遺伝子に属する)中のm.1494C>Tおよびm.1555A>Gを検出するために、それぞれのSNP/変異に関するプライマーには表2において示したようなビオチンならびにCy3で標識された2種類のアレル特異的プライマーおよび1種類の共通プライマーが含まれていてよい。それぞれのアレル特異的プライマーは、それはそのSNP/変異座位を含有する標的遺伝子配列と同じ、またはそれに相補的であるヌクレオチド配列の5’末端に連結された独特のタグ配列を含む。そして、それぞれのアレル特異的プライマーは、共通プライマーと共に、PCR増幅によりそのSNP/変異座位を含有するDNA断片を生成する。アレル特異的プライマー中のそれらの対応するタグ配列と同一の配列を含むプローブが固体表面上に固定されてユニバーサルアレイを形成している。ストレプトアビジンでコートされた粒子を用いてビオチン標識されたDNA産物を捕捉することができ、ssDNAを回収した後、その標的−プローブハイブリダイゼーションを実施する。その結果は、連結された粒子の蛍光強度およびそのアレイ上の対応するタグプローブの位置により調べることができる。
【0129】
[0135] そのアッセイの検出限界を決定するため、臨床試料からの5ngから100ngまでの範囲の異なる量のゲノムDNA(9箇所の選択されたSNP/変異座位において全て野生型アレルを有する)を用いた。
図5において示したように、遺伝性聴力損失に関する8種類の選択されたSNP/変異が同時に分析され、
図4において計画されたユニバーサルタグアレイの設計に従って、そのアレイの左側上の野生型特異的プローブの全てが陽性シグナルを示し、一方でその右側上の変異体特異的プローブからはほとんどハイブリダイゼーションシグナルが検出されず、これは本発明のこの適用の現在の検出限界は5ngのゲノムDNAであったことを示している。
【0130】
[0136] 野生型に加えて、
図6において示したように、ホモ接合およびヘテロ接合の臨床試料からの8種類の選択されたSNP/変異に関する変異体アレルを調べた。5ngから100ngまでの範囲内で、あらゆる量のゲノムDNAがこのアッセイに適していた。‘MU’および‘HET’接尾辞は、それぞれホモ接合体およびヘテロ接合体を表す。ヘテロ接合の試料に関して、それらはSNP/変異部位において野生型および変異体アレルの両方を含有している。ミトコンドリア遺伝子中のSNP/変異部位、例えばm.1555A>Gに関して、‘HOM’および‘HET’接尾辞は、それぞれホモプラズミック(homoplasmic)およびヘテロプラズミック(heteroplasmic)変異状態を表す。他の遺伝子型決定法、例えばDNA配列決定の確認により、その結果は100%正確であり、これはそのようなプラットフォームが高い特異性を有し、臨床試料を遺伝子型決定することができたことを実証している。この遺伝子型決定プラットフォームの極めて高い感度により、それを稀な試料の検出に適用することもできる。実際、難聴に冒された家系からのバッカルスワブおよび乾燥血液スポットを収集し、DNA配列決定により確認した際に、それらのアッセイの結果は100%正確であった。その遺伝子型決定の成功は、この遺伝子型決定プラットフォームが多数の疾患ならびにそれらの対応するSNP/変異と関係する遺伝子解析および診断解析において広く適用されるための道を開く。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2-1】
【0133】
【表2-2】