特許第5872576号(P5872576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス)の特許一覧 ▶ ユニベルシテ、ジョセフ、フーリエ‐グルノーブル、1の特許一覧

特許5872576アルケン単位およびチオールクリック化学カップリング反応を含む多糖誘導体
<>
  • 特許5872576-アルケン単位およびチオールクリック化学カップリング反応を含む多糖誘導体 図000031
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872576
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】アルケン単位およびチオールクリック化学カップリング反応を含む多糖誘導体
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/02 20060101AFI20160216BHJP
   C08B 37/08 20060101ALI20160216BHJP
   C08B 37/16 20060101ALI20160216BHJP
   A61K 9/06 20060101ALN20160216BHJP
   A61K 8/73 20060101ALN20160216BHJP
   A61K 8/02 20060101ALN20160216BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
   C08B37/02
   C08B37/08 Z
   C08B37/16
   !A61K9/06
   !A61K8/73
   !A61K8/02
   !A61Q19/00
【請求項の数】21
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2013-539287(P2013-539287)
(86)(22)【出願日】2011年11月18日
(65)【公表番号】特表2013-543043(P2013-543043A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】EP2011070483
(87)【国際公開番号】WO2012066133
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年10月27日
(31)【優先権主張番号】1059465
(32)【優先日】2010年11月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594016872
【氏名又は名称】サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス)
(73)【特許権者】
【識別番号】510066248
【氏名又は名称】ユニベルシテ、ジョセフ、フーリエ‐グルノーブル、1
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE JOSEPH FOURIER−GRENOBLE 1
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(72)【発明者】
【氏名】ラシェル、オーザリー
(72)【発明者】
【氏名】ジミー、メルジ
(72)【発明者】
【氏名】エリック、バイマ‐プシ
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/011284(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/046200(WO,A1)
【文献】 J Incl Phenom Macrocycl Chem,2010年,67,pp.303〜315
【文献】 J Incl Phenom Macrocycl Chem,2007年,57,pp.343〜348
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
A61K
A61Q
CAPLUS/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖のヒドロキシルまたはアミン官能基においてグラフト化された少なくとも1つのアルケン単位を有する多糖の製造方法であって、該アルケン単位は、次に示す化学式A’
【化1】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、かつ、
R、R’およびR”はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、特に、R、R’およびR”はそれぞれ、水素原子である)に対応し、
該方法は、
a)次に示す化学式A
【化2】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、かつ、
R、R’およびR”はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基である)の酸無水物を、
水と極性非プロトン性溶媒または極性プロトン性溶媒とからなる液体有機溶媒中で、少なくとも1つの多糖と反応させる工程と、
b)グラフト化されたアルケン単位を含む該多糖を回収する工程と、を含んでなる、方法。
【請求項2】
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、ベンジル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)が、水/DMF、水/DMSO、または水/イソプロパノール混合物中で行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)がpH6〜11で行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、前記モルグラフト率が、加える無水物の量によって調節される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記多糖が、ポリ(ガラクツロナート)、ヘパリンとその誘導体、ヒアルロン酸とその誘導体、コンドロイチン硫酸、ペクチンとその誘導体、アルギン酸塩、および、中性多糖から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記多糖が、セルロース、デキストラン、プルラン、澱粉、マルトデキストリンとその誘導体、キチンおよびキトサンとその誘導体から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
多糖であって、
該多糖が、次に示す化学式Bに対応するヒアルロン酸であることを特徴とする、前記多糖。
【化3】
(式中、
n’は10〜10,000、
はHまたはNaであり、
Ra、Rb、RcおよびRdはそれぞれ、独立して、Hまたは次に示す式A’の単位であり、
【化4】
式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、かつ、
R、R’およびR”はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基である。)
【請求項9】
多糖のヒドロキシルまたはアミン官能基においてグラフト化された少なくとも1つのチオエーテル単位によって官能化された多糖の製造方法であって、
該単位は、次に示す化学式C
【化5】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、
RおよびR’はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、特に、Rおよび/またはR’は、水素原子であり、
またはRの一方は水素原子であり、他方はRthio‐S‐であって、Rthioが、少なくとも1個の炭素原子を有した基である)に対応し、
該方法は、
a)請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法の前記多糖のヒドロキシルまたはアミン官能基においてグラフト化された少なくとも1つのアルケン単位を有する多糖を製造する工程と、
b)ラジカル反応によって、前の工程で得られた前記多糖とチオール化合物Rthio‐SHとを反応させる工程と、
c)官能化された多糖を回収する工程と、を含んでなる、
前記方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
工程b)の前記ラジカル反応が、
重合されるか、または、
UV光を使用せずに、水溶性開始剤によって開始されることを特徴とする、
前記方法。
【請求項11】
工程b)の前記ラジカル反応が、4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)フェニル‐(2-ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトンによって光重合されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程b)の前記ラジカル反応が、アゾビス-(2‐メチルロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、または2、2’‐アゾビス[2(2‐イミダゾリン‐2‐イル)プロパン]ジヒドロクロリドにより開始されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
工程b)が、水、または水/エタノール、水/イソプロパノール、水/DMFもしくは水/DMSO混合物から選択される溶媒中で行われることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記多糖が、ポリ(ガラクツロナート)、ヘパリンとその誘導体、ヒアルロン酸とその誘導体、コンドロイチン硫酸、ペクチンとその誘導体、アルギン酸塩、および中性多糖から選択される請求項9〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記多糖が、セルロース、デキストラン、プルラン、澱粉、マルトデキストリンとその誘導体、キチンおよびキトサンとその誘導体から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
多糖であって、
該多糖が、次に示す化学式Dに対応するヒアルロン酸であることを特徴とする、前記多糖。
【化6】
(式中、
n’は10〜10,000であり、
はHまたはNaであり、かつ、
Ra’、Rb’、Rc’およびRd’はそれぞれ、独立して、Hまたは次に示す式Cの単位であり、
【化7】
式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、
RおよびR’はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を含む直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、
またはRの一方は水素原子であり、他方はRthio‐Sであって、Rthioが、少なくとも1個の炭素原子を有した基である。)
【請求項17】
ヒアルロン酸の架橋方法であって、該方法は、
a)請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法によるヒアルロン酸の少なくとも1つのヒドロキシル官能基においてグラフト化された少なくとも1つのアルケン単位を有したヒアルロン酸を製造する工程と、
b)前の工程で得られたヒアルロン酸と、複数のチオール官能基を含む化合物とを反応させる工程と、
c)架橋されたヒアルロン酸を回収する工程と、を含んでなる、
前記方法。
【請求項18】
前記複数のチオール官能基を含む化合物が、ポリ(エチレングリコール)ジチオール、およびポリ(エチレン)テトラチオールから選択される、請求項17に記載のヒアルロン酸の架橋方法。
【請求項19】
工程b)には、UV光による照射が含まれる、請求項17または18に記載のヒアルロン酸の架橋方法。
【請求項20】
ヒアルロン酸を水和して、ヒドロゲルを形成することがさらに含まれる、請求項17〜19のいずれか一項に記載のヒアルロン酸の架橋方法。
【請求項21】
少なくとも1つのチオエーテル単位によって官能化された架橋ヒアルロン酸の製造方法であって、該方法には、請求項9〜15のいずれか一項に記載の製造方法によって官能化されたヒアルロン酸の製造と、請求項17〜20のいずれか一項に記載のヒアルロン酸の架橋と、が含まれることを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト化され、任意により官能化された多糖、該多糖を得るための方法、および、かかる多糖を含む材料の分野に関する。本発明によって、ヒドロゲルなどの新しい種の材料を得ることができると共に、生物学、医学、製薬、および化粧料の分野における様々な適用が可能になり得る。
【背景技術】
【0002】
生体材料工学は、過去15年で顕著な進歩がみられ、ベクター化および組織修復の分野における新しい用途の発生に特に関係している。
【0003】
たとえば、標的器官への薬剤の送達、または組織を修復することを意図した、これらの材料の効果は、これらの環境と連通するこれらの性能に特に基づく。
【0004】
この効果は、生物系との類似性によって、材料の化学的性質および機械的性質、ならびに、外部刺激(pH、温度、生体分子の存在)に反応するこれらの性能を含む、複数のパラメーターに関係がある場合がある。
【0005】
かかる系を生じるために使用されるポリマーの中で、天然由来の多糖(PS)は選択候補である。これらは、一般に、十分な生体適合性および生物分解性を有し、さらに生物活性を示し得る。
【0006】
これらの化学的複雑性は、構造および/または特性の点から複数の選択肢を提供し、また、これらが天然由来ということから、環境的、毒性的、および/または商品的観点から極めて魅力的なものとなり得る。
【0007】
したがって、特に、新しいまたは改良された特性を有する化合物(たとえば、増粘剤、ゲル化剤、もしくは分散剤)を得るために、改良された多糖などの天然由来の新しい改良されたポリマーを得ることが特に望ましい。
【0008】
これらの改良ポリマーまたはこれらのポリマーの誘導体は、更に、化粧料、医薬または生物医学の分野において、多く使用することができる。
【0009】
これらの理由のすべては、多くのグラフト化および/または官能化された多糖の合成が文献に記載されているということである。
【0010】
たとえば、国際公開公報第2009/063082号は、銅(I)触媒の存在下で、アルキン基によって官能化された多糖要素(グア)とアジド官能基(azide functional group)を有するポリエーテルの間の付加環化反応(いわゆるHuisgen反応)について記載する。この反応によって、位置選択的な方法で、本質的に1‐4‐二置換1,2,3‐トリアゾールを形成することが可能になる。
【0011】
とりわけ、糖およびタンパク質の化学官能基を含む、他の化学官能基とのこの反応の実施容易性および適合性は、「クリック化学」と命名された(M. Meldal et al., Chem Rev. (2008), 108, 2952)。
【0012】
また、この付加環化反応も、ヒアルロン酸系三次元網目構造を製造するために、国際公開公報第2008/031525号にてCrescenziらによって用いられた。
【0013】
特に、これは、1つまたは両方がヒアルロン酸である1組の多糖を使用する。多糖(PS)およびヒアルロン酸はそれぞれ、たとえば末端のアジドまたはアルキン基を有する反応性単位を伴い、1,3‐二極性付加環化機構により、三次元網目構造の形成をもたらす。
【0014】
しかしながら、このクリック化学反応は、一態様において、特に、インビボで毒性のあるCu(I)の除去により、たとえば、毒性および/または実施容易性の点から、不十分である場合がある。
【0015】
欧州特許第1564220号は、ヒアルロン酸を化学架橋するための、および、ヒアルロン酸に関心対象の基をカップリングするための方法について記載する。ヒドラジル基またはアミノ基は、ヒアルロン酸のカルボキシル基を、アミド基またはN置換エステルに変換することによって、ヒアルロン酸重合体上に導入される。その後、このように得られたヒアルロン酸は、メルカプト基または不飽和結合を含む基によって誘導される。この反応は、水中で自発発生する場合があるが、該反応は比較的遅く(数時間)、定量することができない。該反応は、ラジカルの存在下で活性化され、収率を向上させることができるが、重合が生じ、架橋ゲルが得られる。この反応によっては、ポリマー(特に、線状ヒアルロン酸)を得ることはできず、グラフト率は制御されない。
【0016】
このように、多くのグラフト化および/または官能化された多糖の合成が文献に記載されていても、これらは、得られたグラフト型および/または官能化、収率、実施容易性、特に、使用される溶媒および/または試薬の安全性、コスト、生態学、多価および/または効果の点から満足のゆくものではない。
【0017】
さらに、記載された改良多糖は、機能性、コスト、純度、反応性、および/または使用の点から不十分であることを示し得る。
【0018】
したがって、多糖において、活性のある分子をグラフト化するためおよび/または水性もしくは液体有機媒体中で該多糖を化学的に架橋するための、簡単で、効果的で、選択的な方法の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上述する問題のすべてもしくは一部を解決することを可能にする、特に活性のある分子によって、多糖を官能化するための方法、または、該多糖を架橋するための方法を特に提案する。
【0020】
また、本発明は、産業規模で容易にかつ経済的に得ることができる、反応性単位を有した新しい多糖誘導体も提供する。
【0021】
本発明の別の目的は、分子または巨大分子(特に、活性があり、改良された)によって、反応性単位を有する多糖を効果的にかつ選択的に官能化し、および/または、該多糖を化学架橋することである。
【0022】
また、本発明は、緩やかな条件下、および/または、ほとんどグラフト化されないか、もしくはまったくグラフト化されないようにPSおよび分子のモル質量に影響を与える条件下でこれらの2つの反応工程を行うことも目的とする。
【0023】
そして、本発明はまた、生物医学、医薬または化粧料の用途のための、グラフト化直鎖状ポリマーまたはヒドロゲルの形態の改良された多糖を含む生体材料を提供することも目的とする。
【0024】
本発明の方法には、多糖および特にヒアルロン酸のヒドロキシルまたはアミン官能基において、非結合アルケンをグラフト化することが含まれる。この反応は、ラジカルの存在下を含む制御反応であり、該反応によって、非常に良好な収率を得ることが可能になる。さらに、グラフト率または置換度(DS)は、試薬の量を変化させることによって制御することができる。
【0025】
多糖における非結合アルケンのグラフト化後、チオールクリック化学作用によるカップリングによって、チオール官能基を含む種々の基でこの多糖を官能化することができる。有利に、疎水基または他の関心対象の基で、多糖(特に、ヒアルロン酸)を特に官能化することができる。
【0026】
複数のチオール官能基を含む化合物と、非結合アルケン(特に、ヒアルロン酸)を有する多糖とを反応させることによって、多糖の制御された架橋を得ることができる。これによって、特に、架橋されたヒアルロン酸ヒドロゲルを得ることが可能になる。
【0027】
当然、本発明の方法によって、多糖の官能化と架橋化を組み合わせることができる。
【0028】
特に、本発明は、チオールクリック化学作用によって種々の関心対象の基で官能化された、架橋されたヒアルロン酸ヒドロゲルに関する。
【0029】
したがって、本発明は、上述する問題をすべてまたは一部において解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、前記多糖のヒドロキシルまたはアミン官能基においてグラフト化された少なくとも1つのアルケン単位を有する多糖の製造方法に関し、該アルケン単位は、次に示す化学式A’
【化1】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基(特に、ベンジル)であり、かつ、
R、R’およびR”はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、特に、R、R’およびR”はそれぞれ、水素原子である)に対応し、
該方法は、次に示す工程を含んでなる:
a)次に示す化学式A
【化2】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基(特に、ベンジル)であり、かつ、
R、R’およびR”はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基である)の酸無水物を、
水と極性非プロトン性溶媒または極性プロトン性溶媒とからなる液体有機溶媒中で、少なくとも1つの多糖と反応させる工程、
b)グラフト化されたアルケン単位を含む多糖を回収する工程。
【0031】
本発明の方法において、工程a)は、水および/または極性非プロトン性溶媒からなる溶媒であって、該極性非プロトン性溶媒が、DMFおよびDMSOから選択される溶媒中で行うことができる。
【0032】
本発明の方法において、工程a)は、水/DMF、水/DMSO、または水/イソプロパノール混合物中で行われることが好ましい。
【0033】
本発明の方法において、工程a)は、水/DMFまたは水/DMSO混合物中で、とりわけ5/1から1/2、特に3/2から1/1の容積比で行われることが好ましい。
【0034】
本発明の方法において、工程a)は、pH6〜11、とりわけ7〜10、特に8〜9で行われることが好ましい。
【0035】
本発明の方法において、工程a)では、モルグラフト率は、加える無水物の量によって調節されることが好ましい。
【0036】
該多糖は、ポリ(ガラクツロナート)(poly(galacturonate))、ヘパリンとその誘導体、ヒアルロン酸とその誘導体、コンドロイチン硫酸、ペクチンとその誘導体、アルギン酸塩、および、セルロース、デキストラン、プルラン、澱粉、マルトデキストリンとその誘導体、キチン、キトサンとその誘導体などの中性多糖から選択されることが好ましい。
【0037】
また、本発明は、前記多糖のヒドロキシルまたはアミン官能基においてグラフト化された少なくとも1つのアルケン単位を有する多糖にも関し、該単位は、次に示す化学式A’
【化3】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基(特に、ベンジル)であり、かつ、
R、R’およびR”はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、特に、R、R’およびR”は、水素原子である)に対応する。
【0038】
該多糖のモルグラフト率は、多糖反復単位当たり0.5〜(多糖反復単位当たりの遊離ヒドロキシル官能基の数)×100%であることが好ましい。
【0039】
該多糖は、ポリ(ガラクツロナート)、ヘパリンとその誘導体、ヒアルロン酸とその誘導体、コンドロイチン硫酸、ペクチンとその誘導体、アルギン酸塩、および、セルロース、デキストラン、プルラン、澱粉、マルトデキストリンとその誘導体、キチン、キトサンとその誘導体などの中性多糖から選択されることが好ましい。
【0040】
好ましい実施態様において、該多糖は、次に示す化学式B
【化4】
(式中、
n’は10〜10,000(特に、15〜7,000)であり、
はHまたはNaであり、
Ra、Rb、RcおよびRdはそれぞれ、独立して、Hまたは上に定義する式A’の単位である)に対応するヒアルロン酸である。
【0041】
また、本発明は、多糖のヒドロキシルまたはアミン官能基においてグラフト化された少なくとも1つのチオエーテル単位によって官能化された多糖の製造方法にも関し、該単位は、次に示す化学式C
【化5】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、
RおよびR’はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、特に、Rおよび/またはR’はそれぞれ、水素原子であり、
またはRの一方は水素原子であり、他方はRthio‐S‐であって、Rthioが、少なくとも1個の炭素原子を有した基である)に対応し、
該方法は、次に示す工程を含んでなる:
a)上述の製造方法の前記多糖の少なくとも1つのヒドロキシルまたはアミン官能基においてグラフト化された少なくとも1つのアルケン単位を有する多糖を製造する工程、
b)ラジカル反応によって、前の工程で得られた多糖とチオール化合物Rthio‐SHとを反応させる工程、
c)官能化された多糖を回収する工程。
【0042】
工程b)のラジカル反応は、
特に、4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)フェニル‐(2-ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトンによって光重合されるか、または、
UV光を使用せずに、アゾビス-(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、もしくは2、2’‐アゾビス[2(2‐イミダゾリン‐2‐イル)プロパン]ジヒドロクロリドなどの水溶性開始剤によって開始されることが好ましい。
【0043】
本発明の方法において、工程b)は、水、または水/エタノール、水/イソプロパノール、水/DMFもしくは水/DMSO混合物から選択される溶媒中で行われることが好ましい。
【0044】
本発明に使用される多糖は、ポリ(ガラクツロナート)、ヘパリンとその誘導体、ヒアルロン酸とその誘導体、コンドロイチン硫酸、ペクチンとその誘導体、アルギン酸塩、および、セルロース、デキストラン、プルラン、澱粉、マルトデキストリンとその誘導体、キチン、キトサンとその誘導体などの中性多糖から選択されることが好ましい。
【0045】
また、本発明は、前記多糖のヒドロキシルまたはアミン官能基においてグラフト化された少なくとも1つのチオエーテル単位によって官能化された多糖にも関し、該単位は、次に示す化学式C
【化6】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、
RおよびR’はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を含む直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、特に、Rおよび/またはR’は、水素原子であり、
またはRの一方は水素原子であり、他方はRthio‐S‐であって、Rthioが、少なくとも1個の炭素原子を有した基である)に対応する。
【0046】
本発明の多糖のグラフト率は、多糖反復単位当たり0.5〜(多糖反復単位当たりの遊離ヒドロキシル官能基の数)×100%であることが好ましい。
【0047】
thio‐S‐は、次に示すものから選択される化合物からなる。
アルキルチオール、特に、直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル(たとえば、ペンタンチオールもしくはデカンチオール)、
たとえば窒素原子および/または硫黄原子を有する、アリールチオール(特に、ヘテロアリール)、
特に、少なくとも1つのチオール官能基を有するポリ(エチレングリコール)、少なくとも1つのチオール官能基を有するプルロニックスなどのポリエーテルのファミリー、少なくとも1つのチオール官能基を有するポリ(N‐アルキルアクリルアミド)(ポリ(N‐(イソプロピルアクリルアミド))のファミリーに属する、合成高分子、
たとえば、オリゴ糖鎖もしくは多糖鎖の還元末端で、または該鎖に沿って、少なくとも1つのチオール官能基を有する、単糖、オリゴ糖、もしくは多糖、
少なくとも1つのチオール官能基を有するペプチド、
少なくとも1つのチオール官能基を有するオリゴヌクレオチド、
少なくとも1つのチオール官能基を有する活性化合物(特に、医薬としての活性化合物)、
ステロイド、
シクロデキストリン、
少なくとも2つの(特に、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つの)チオール官能基を有する化合物、ならびに、
特に鎖末端で少なくとも1つのチオール官能基を有する、ポリ(エチレングリコール)。
【0048】
該多糖は、ポリ(ガラクツロナート)、ヘパリンとその誘導体、ヒアルロン酸とその誘導体、コンドロイチン硫酸、ペクチンとその誘導体、アルギン酸塩、および、セルロース、デキストラン、プルラン、澱粉、マルトデキストリンとその誘導体、キチン、キトサンとその誘導体などの中性多糖から選択されることが好ましい。
【0049】
好ましい実施態様において、該多糖は、次に示す化学式D
【化7】
(式中、
n’は10〜10,000(特に、15〜7,000)であり、
はHまたはNaであり、かつ、
Ra’、Rb’、Rc’およびRd’はそれぞれ、独立して、Hまたは上に定義する式Cの単位である)に対応するヒアルロン酸である。
【0050】
また、本発明は、次に示す工程を含んでなるヒアルロン酸の架橋方法にも関する:
a)上述の製造方法の前記ヒアルロン酸の少なくとも1つのヒドロキシル官能基においてグラフト化された少なくとも1つのアルケン単位を有したヒアルロン酸を製造する工程、
b)前の工程で得られたヒアルロン酸と、複数のチオール官能基を含む化合物とを反応させる工程、
c)架橋された多糖を回収する工程。
【0051】
該複数のチオール官能基を含む化合物は、ポリ(エチレングリコール)ジチオール、およびポリ(エチレン)テトラチオールから選択されることが好ましい。
【0052】
工程b)には、UV光による照射が含まれることが好ましい。
【0053】
好ましい実施態様において、HA架橋方法には、ヒアルロン酸を水和して、ヒドロゲルを形成することがさらに含まれる。
【0054】
また、本発明は、本発明の方法によって得ることができる架橋ヒアルロン酸、および、本発明の方法によって得ることができるヒアルロン酸ヒドロゲルにも関する。
【0055】
さらに、本発明は、本発明の製造方法によって官能化されたヒアルロン酸の製造と、本発明のヒアルロン酸の架橋とを含んでなる、少なくとも1つのチオエーテル単位によって官能化された架橋ヒアルロン酸の製造方法にも関する。
【0056】
さらにまた、本発明は、本発明の方法によって得ることができる官能化架橋ヒアルロン酸、ならびに、かかる官能化架橋ヒアルロン酸、もしくは本発明の多糖、もしくは本発明のヒアルロン酸ヒドロゲルを含んでなる制御放出医薬または化粧料組成物にも関する。
【0057】
第1の態様によれば、本発明は、炭素‐炭素二重結合を含む単位によってグラフト化された多糖(特に、ヒアルロン酸)の製造方法に関する。
【0058】
第2の態様によれば、本発明は、炭素‐炭素二重結合を含む単位によってグラフト化された多糖(特に、ヒアルロン酸)に関する。
【0059】
第3の態様によれば、本発明は、チオエーテル単位によって官能化された炭素‐炭素二重結合を含む単位によってグラフト化された多糖(特に、ヒアルロン酸)の製造方法に関する。
【0060】
第4の態様によれば、本発明は、チオエーテル単位によって官能化された炭素‐炭素二重結合を含む単位によってグラフト化された多糖(特に、ヒアルロン酸)に関する。
【0061】
第5の態様によれば、本発明は、炭素‐炭素二重結合を含む単位によってグラフト化された多糖、および/または、チオエーテル単位により官能化された炭素‐炭素二重結合を含む単位によってグラフト化された多糖を含んでなる、組成物に関する。
【0062】
第6の態様によれば、本発明は、炭素‐炭素二重結合を含む単位によってグラフト化された少なくとも1つの多糖を含んでなる材料、チオエーテル単位により官能化された炭素‐炭素二重結合を含む単位によってグラフト化された少なくとも1つの多糖を含んでなる材料、少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を含む単位によってグラフト化された多糖、および/または、チオエーテル単位により官能化された炭素‐炭素二重結合を含む単位によってグラフト化された多糖を含んだ少なくとも1つの組成物を含んでなる材料に関する。
【発明を実施するための形態】
【0063】
(発明の詳細な説明)
本明細書において、「炭素‐炭素二重結合を含む単位」という表現は、「アルケン単位」という表現と同等である。「炭素‐炭素二重結合を含む単位によってグラフト化された」という表現は、「グラフト化されたアルケン」という表現と同等である。「チオエーテル単位によって官能化された炭素‐炭素二重結合を含む単位」という表現は、「チオエーテルグラフト化アルケン単位」という表現と同等である。また、「チオエーテル単位により官能化された炭素‐炭素二重結合を含む単位によって官能化された」という表現は、「チオエーテル官能化グラフト化アルケン」または「チオエーテル単位によって官能化された」という表現と同等である。
【0064】
本発明は、前記多糖のヒドロキシルまたはアミン官能基においてグラフト化された少なくとも1つのアルケン単位を有する多糖の製造方法に関し、該アルケン単位は、次に示す化学式A’
【0065】
【化8】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基(特に、ベンジル)であり、かつ、
R、R’およびR”はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、特に、R、R’およびR”はそれぞれ、水素原子である)に対応し、
該方法は、次に示す工程を含んでなる:
a)次に示す化学式A
【化9】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基(特に、ベンジル)であり、かつ、
R、R’およびR”はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基である)の酸無水物を、
水と極性非プロトン性溶媒または極性プロトン性溶媒とからなる液体有機溶媒中で、少なくとも1つの多糖と反応させる工程、
b)グラフト化されたアルケン単位を含む多糖を回収する工程。
【0066】
第1の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位によってグラフト化された多糖(PSとも称する)の製造方法に関し、該方法は、少なくとも次に示すものからなる工程を含んでなる:
a)次に示す化学式A
【化10】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、任意により置換されたアリール基、またはアリールアルキル基(特に、ベンジル)であり、かつ、
R、R’およびR”はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、任意により置換されたアリール基、またはアリールアルキル基(特に、ベンジル)である)の酸無水物を、
水および/または極性非プロトン性溶媒を含むか、または該水および/または極性非プロトン性溶媒からなる液体有機溶媒(特に、該極性非プロトン性溶媒が、DMFおよびDMSOから選択される)中で、少なくとも1つの多糖と反応させる工程、ならびに、
b)少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位によってグラフト化された多糖を回収する工程。
【0067】
本発明の方法において、該酸無水物は、酸塩化物または対応する混合無水物と代わることができる。
【0068】
前述の酸塩化物は、次に示す化学式a
【化11】
(式中、R、R’、R”、Xおよびmは、式Aの無水物において上に定義するとおりである)に対応し得る。
【0069】
前述の混合無水物は、次に示す化学式a’
【化12】
(式中、
R”は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基であり、特に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルから選択され、かつ、
R、R’、R”、Xおよびmは、式Aの無水物において上に定義するとおりである)に対応し得る。
【0070】
該酸無水物は、mが2〜6の整数(特に、4または5)である、式Aに対応し得る。
【0071】
該酸無水物は、XがCHである式Aに対応し得る。
【0072】
該酸無水物は、R、R’およびR”がそれぞれ水素原子である、式Aに対応し得る。
【0073】
特定の実施態様によれば、該酸無水物は、式Aに対応し、
式中、
mは2〜6の整数(特に、4または5)であり、
XはCHであり、かつ、
R、R’およびR”はそれぞれ水素原子である。
【0074】
該無水物は、特に、アルコール官能基(ヒドロキシル基)および/またはアミン官能基(好ましくは第一級アミン官能基)において、多糖と反応させることができる。したがって、少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位(アルケン単位)は、エステルまたはアミド結合によって多糖に結合することができる。
【0075】
本発明の方法において、工程a)は、水および/または極性非プロトン性溶媒からなる溶媒であって、該極性非プロトン性溶媒が、DMFおよびDMSOから選択される溶媒中で行うことができる。
【0076】
本発明の方法において、工程a)は、水/DMF、水/DMSO、または水/イソプロパノール混合物中で行われることが好ましい。
【0077】
特に、工程a)は、水/イソプロパノール混合物中で、5/1から1/2、好ましくは3/2から1/1、より優先的には3/2の容積比で行われる。
【0078】
特に、工程a)は、水/DMFまたは水/DMSO混合物中で、特に5/1から1/2、好ましくは3/2から1/1、より優先的には3/2の容積比で行われる。
【0079】
工程a)の反応は、pH6〜11、とりわけpH7〜10、特に8〜9で行うことができる。
【0080】
工程a)の反応は、0〜50℃、特に約4〜20℃の温度で行うことができる。
【0081】
モルグラフト率は、多糖反復単位当たり0.5〜(多糖反復単位当たりの遊離ヒドロキシル官能基の数)×100%、特に0.5〜400%、とりわけ2〜250%、特に5〜100%、特に7〜75%、さらに7〜50%であり得る。
【0082】
特に、最大モルグラフト率は、多糖反復単位当たりの遊離ヒドロキシル官能基の数の100倍である。
【0083】
モルグラフト率は、多糖反復単位のモル当たりのグラフト単位のモル数から導き出される。
【0084】
本発明の方法において、工程a)では、モルグラフト率は、加える無水物の量によって調節されることが好ましい。
【0085】
該多糖は、ポリ(ガラクツロナート)、ヘパリンとその誘導体、ヒアルロン酸とその誘導体、コンドロイチン硫酸、ペクチンとその誘導体、アルギン酸塩、および、セルロース、デキストラン、プルラン、澱粉、マルトデキストリンとその誘導体、キチン、キトサンとその誘導体などの中性多糖から選択することができる。
【0086】
本明細書において、「誘導体」とは、単純な添加または置換によって別のものが生じる化合物をいう。本事例において、多糖2から誘導された多糖1は、ヒドロキシル官能基または修飾されたヒドロキシル官能基を他の官能基に置換することができた。たとえば、ヒドロキシル官能基は、エステルもしくはアミド官能基に変換することができるか、または、ヒドロキシル官能基は、特に、Greenの「Protective Groups in Organic Synthesis(第4版)」に定義されるように、特に保護基によって、保護することができる。特に、誘導体には、修飾された官能基の数の20%未満が含まれる。
【0087】
該多糖の反復単位は、10〜25,000、特に15〜15,000であり得る。
【0088】
該多糖は、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸誘導体であることが好ましい。
【0089】
特定の実施態様によれば、該製造方法には、少なくとも次に示すものからなる工程が含まれる:
a’)次に示す化学式A
【化13】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、任意により置換されたアリール基、またはアリールアルキル基(特に、ベンジル)であり、
R、R’およびR”はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を含む直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、任意により置換されたアリール基、またはアリールアルキル基(特に、ベンジル)である)の酸無水物を、
水および/または極性非プロトン性溶媒を含むか、または該水および/または極性非プロトン性溶媒からなる液体有機溶媒(特に、該極性非プロトン性溶媒が、DMFおよびDMSOから選択される)中で、ヒアルロン酸と反応させる工程、ならびに、
b’)少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位によってグラフト化されたヒアルロン酸を回収する工程。
【0090】
反応条件は、上に定義するとおりであり得る。
【0091】
ヒアルロン酸の反復単位の数は、特に7〜15,000(特に、15〜7,000)であり得る。
【0092】
また、本発明は、本発明の方法により得ることができるアルケン単位によってグラフト化された多糖にも関する。
【0093】
本発明は、特に、多糖のヒドロキシルまたはアミン官能基(好ましくは第一級アミン)においてグラフト化された少なくとも1つのアルケン単位を有する多糖に関し、該単位は、次に示す化学式A’
【化14】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基(特に、ベンジル)であり、かつ、
R、R’およびR”はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、特に、R、R’およびR”はそれぞれ、水素原子である)に対応する。
【0094】
少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位は、mが2〜6(特に、4または5)の整数である、式A’に対応し得る。
【0095】
少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位は、XがCHである式A’に対応し得る。
【0096】
少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位は、R、R’およびR”がそれぞれ水素原子である、式A’に対応し得る。
【0097】
特定の実施態様によれば、少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位は、式A’に対応し、
式中、
mは2〜6の整数(特に、4または5)であり、
XはCHであり、かつ、
R、R’およびR”はそれぞれ水素原子である。
【0098】
少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位は、多糖において、特に、アルコール官能基および/またはアミン官能基(特に、第一級アミン官能基)において存在しうる。したがって、該単位は、エステルまたはアミド結合によって多糖に結合することができる。
【0099】
モルグラフト率は、多糖反復単位当たり0.5〜(多糖反復単位当たりの遊離ヒドロキシル官能基の数)×100%、特に0.5〜400%、とりわけ2〜250%、特に5〜100%、特に7〜75%、または7〜50%であり得る。
【0100】
モルグラフト率は、多糖反復単位のモル当たりの、少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する置換基のモル数から導き出される。
【0101】
該多糖は、ポリ(ガラクツロナート)、ヘパリンとその誘導体、ヒアルロン酸とその誘導体、コンドロイチン硫酸、ペクチンとその誘導体、アルギン酸塩、および、セルロース、デキストラン、プルラン、澱粉、マルトデキストリンとその誘導体、キチン、キトサンとその誘導体などの中性多糖から選択されることが好ましい。
【0102】
該多糖の反復単位の数は、10〜25,000、特に15〜15,000であり得る。
【0103】
好ましい実施態様によれば、該多糖は、デキストランまたはデキストラン誘導体である。
【0104】
好ましい実施態様によれば、該多糖は、特に7〜15,000、特に15〜7,000の反復単位の数を有するヒアルロン酸またはヒアルロン酸誘導体である。
【0105】
好ましい実施態様において、該多糖は、次に示す化学式B
【化15】
(式中、
n’は10〜10,000(特に、15〜7,000)であり、
はHまたはNaであり、
Ra、Rb、RcおよびRdはそれぞれ、独立して、Hまたは上に定義する式A’の単位である)に対応するヒアルロン酸である。
【0106】
また、本発明は、多糖のヒドロキシルまたはアミン官能基においてグラフト化された少なくとも1つのチオエーテル単位によって官能化された多糖の製造方法にも関し、該単位は、次に示す化学式C
【化16】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、
RおよびR’はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、特に、Rおよび/またはR’は、水素原子であり、
またはRの一方は水素原子であり、他方はRthio‐S‐であって、Rthioが、少なくとも1個の炭素原子を有した基である)に対応し、
該方法は、次に示す工程を含んでなる:
a)上述の製造方法の多糖の少なくとも1つのヒドロキシルまたはアミン官能基においてグラフト化された少なくとも1つのアルケン単位を有する多糖を製造する工程、
b)ラジカル反応によって、前の工程で得られた多糖とチオール化合物Rthio‐SHとを反応させる工程、
c)官能化された多糖を回収する工程。
【0107】
通常、工程b)の反応はラジカル反応である。有利に、工程b)のラジカル反応は、
特に、4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)フェニル‐(2-ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトンによって光重合されるか、または、
UV光を使用せずに、アゾビス-(2‐メチルロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、もしくは2、2’‐アゾビス[2(2‐イミダゾリン‐2‐イル)プロパン]ジヒドロクロリドなどの水溶性開始剤によって開始される。
【0108】
本発明の方法において、工程b)は、水、または水/エタノール、水/イソプロパノール、水/DMFもしくは水/DMSO混合物から選択される溶媒中で行われることが好ましい。
【0109】
工程b)は、精製後、特に、沈殿または限外ろ過によって、行うことができる。工程b)には、特に365nmの波長のUV光による照射が含まれ得る。工程b)のラジカル反応は、特に、Irgacure 2959という名称で販売されている、4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)フェニル‐(2‐ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトンによって、光重合することができるか、または、UV光を使用せずに、たとえば、V‐50(和光純薬工業株式会社製)という名称で販売されている、アゾビス-(2‐メチルロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、もしくは、V‐044(和光純薬工業株式会社製)という名称で販売されている、2、2’‐アゾビス[2(2‐イミダゾリン‐2‐イル)プロパン]ジヒドロクロリドなどの水溶性開始剤によって開始することができる。
【0110】
この反応は、水、または水/エタノール、水/イソプロパノール、水/DMF、もしくは水/DMSO混合物から選択される溶媒中で、特に4/1から1/1の容積比で行うことができる。
【0111】
光開始剤が使用される場合、工程b)の反応は、1〜120分間、特に1〜60分間、特に1〜20分間、行うことができる。
【0112】
反応が水溶性アゾ開始剤で開始される場合、該反応は、4〜24時間、行うことができる。
【0113】
少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位は、1以上のチオール化合物によって官能化することができる。複数のチオール化合物が使用される場合、これらは連続して加えることができるか、または、同時に加え反応させることができる。
【0114】
特に、2つまたは3つの「関心対象の」チオール化合物を使用することができる。特に、これらの関心対象のチオールは、特に、複数の成分による「複合の」官能化を得るために、グラフト化後、これら自身で相互作用することができる。
【0115】
特に、その反応性に応じて、該チオール化合物は、等モル量または過剰量(たとえば、炭素‐炭素二重結合に関して1〜3モルの等価物)で使用することができる。
【0116】
チオール化合物Rthio‐SHは、いずれかの型のチオールであり得る。Rthio‐SHは、少なくとも1個の炭素原子、特に、‐SH官能基に結合した少なくとも1個の炭素原子を有する基である。たとえば、Rthio‐SHは、次に示すものから選択することができる。
アルキルチオール、特に、直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル(たとえば、ペンタンチオールもしくはデカンチオール)、
たとえば窒素原子および/または硫黄原子を有する、アリールチオール(特に、ヘテロアリール)、
特に、少なくとも1つのチオール官能基を有するポリ(エチレングリコール)、少なくとも1つのチオール官能基を有するプルロニックスなどのポリエーテルのファミリー、少なくとも1つのチオール官能基を有する(ポリ(N‐(イソプロピルアクリルアミド))などのポリ(N‐アルキルアクリルアミド)のファミリーに属する、合成高分子、
たとえば、オリゴ糖鎖もしくは多糖鎖の還元末端で、または該鎖に沿って、少なくとも1つのチオール官能基を有する、単糖、オリゴ糖、もしくは多糖、
少なくとも1つのチオール官能基を有するペプチド、
少なくとも1つのチオール官能基を有するオリゴヌクレオチド、
少なくとも2つの(特に、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つの)チオール官能基を有する化合物、ならびに、
少なくとも1つのチオール官能基を有する活性化合物(特に、医薬としての活性化合物)。
【0117】
たとえば、該チオール化合物は、ステロイド、特に、α‐チオコレステロール、特にセリンを含むオリゴペプチドまたはポリペプチドであり得る。
【0118】
また、チオールRthio‐SHは、上に引用された化合物の誘導体だけでなく、たとえば、次に示すものの誘導体であり得る。
コレステロールなどのステロイド、
たとえば、アミノ酸配列、アルギニン‐グリシン‐アスパラギン酸(Arg‐Gly‐Asp)(より一般にRGDと称する)を含むペプチド、
6’‐アミノ‐6’‐デオキシシクロマルトヘプタオース(6'-amino-6'-deoxycyclomaltoheptaose)などのシクロデキストリン。
【0119】
特に、関心対象の分子であるチオール誘導体Rthio‐SHは、チオール官能基のグラフト化によって得ることができ、該グラフト化は、たとえば、
特に、カルボン酸官能基を有する化合物によって、システアミンをグラフト化すること、または、
特に、アルコールもしくはアミン官能基を有する化合物によって、メルカプトプロピオン酸をグラフト化することによるものである。
【0120】
多糖におけるこれらの反応性単位の存在によって、分子の水性媒体における効果的で制御されたグラフト化、または、「チオールクリック」反応による活性のある巨大分子および/またはその化学架橋の変化が可能になる。
【0121】
この反応は、種々の官能基に対して直交し、これによって、たとえば、生体分子もしくは複合生体高分子(薬剤、ペプチド)を、または、多糖系生体材料の合成時において反応混合物に細胞を物理的に導入することができる。
【0122】
別の態様によれば、本発明は、チオエーテル単位によって官能化されたグラフト化多糖の製造方法に関し、該方法は、少なくとも次に示すものからなる工程を含んでなる:
ラジカル反応によって、少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位によりグラフト化された多糖(特に、上述するグラフト化されたヒアルロン酸)と、チオール化合物Rthio‐SHとを反応させる工程、
特に式Cのチオエーテルによって官能化された多糖を回収する工程。
【0123】
特に、本方法は、上述する少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位によってグラフト化された多糖の製造方法に従って行われる。
【0124】
上述の方法に使用される多糖は、ポリ(ガラクツロナート)、ヘパリンとその誘導体、ヒアルロン酸とその誘導体、コンドロイチン硫酸、ペクチンとその誘導体、アルギン酸塩、および、セルロース、デキストラン、プルラン、澱粉、マルトデキストリンとその誘導体、キチン、キトサンとその誘導体などの中性多糖から選択されることが好ましい。該多糖の反復単位の数は、10〜25,000(特に、15〜15,000)であり得る。
【0125】
好ましい実施態様において、該多糖は、ヒアルロン酸とその誘導体、およびデキストランとその誘導体から選択される。
【0126】
特に、少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位によって官能化されたグラフト化ヒアルロン酸の製造方法に関し、該方法は、少なくとも次に示すものからなる工程を含んでなる:
c)少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有した単位を含む単位によってグラフト化されたヒアルロン酸(特に、上述するグラフト化されたヒアルロン酸)と、特に少なくとも3個の炭素原子を有する、チオール化合物(特に、Rthio‐SH)とを反応させる工程、
d)チオエーテル(特に、式Cのチオエーテル)によって官能化されたヒアルロン酸(特に、下の式Dのヒアルロン酸)を回収する工程。
【0127】
また、本発明は、多糖のヒドロキシルまたはアミン官能基においてグラフト化された少なくとも1つのチオエーテル単位によって官能化された多糖の製造方法にも関し、該単位は、次に示す化学式C
【化17】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、
RおよびR’はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、特に、Rおよび/またはR’は、水素原子であり、
またはRの一方は水素原子であり、他方はRthio‐S‐であって、Rthioが、少なくとも1個の炭素原子を有した基である)に対応する。
【0128】
別のその態様によれば、本発明は、チオエーテル基によって官能化された多糖グラフト化アルケンに関し、該アルケンは、次に示す化学式C
【化18】
(式中、
mは1〜10の整数であり、
XはCR単位であって、RおよびRはそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、任意により置換されたアリール基、またはアリールアルキル基(特に、ベンジル)であり、
RおよびR’はそれぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐もしくは環状アルキル基、任意により置換されたアリール基、またはアリールアルキル基(特に、ベンジル)であり、特に、Rおよび/またはR’は、水素原子であり、かつ、
またはRの一方は水素原子であり、他方はRthio‐S‐であって、Rthioが、少なくとも1個の炭素原子を有した基である)に対応するチオエーテル基によって官能化される。
【0129】
thio‐S‐基は、式Cのそれほど置換されていない炭素に存在することができ、特に、RはRthio‐S‐であり、RはHである。
【0130】
特に、前述のアルケンは、次に示す化学式C
【化19】
(式中、R、R’、R”、Rthio‐S‐、Xおよびmは、式Cにおいて上に定義するとおりである)に対応するチオエーテル基によって官能化される。
【0131】
特に、Rおよび/またはR’はHである。
【0132】
thio‐S‐は、本明細書に定義するチオール化合物から誘導された基であるか、またはポリマーであり得る。
【0133】
グラフト化され官能化された多糖は、式Cの官能化された炭素‐炭素二重結合を含む単位において、多糖反復単位当たり0.5〜(多糖反復単位当たりの遊離ヒドロキシル官能基の数)×100%、特に0.5〜400%、とりわけ2〜250%、特に5〜100%、特に7〜75%、さらに7〜50%のグラフト率を有し得る。
【0134】
特に、炭素‐炭素二重結合を含む単位はすべて官能化される。該官能化は、1以上の異なるチオールによって達成することができる。
【0135】
チオール化合物からなるRthio‐S‐基は、いずれかの型のチオールからなり得る。このチオール化合物からなるRthio‐S‐基は、上述する化合物、または次に示すものから選択される化合物からなり得る。
アルキルチオール、特に、直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル(たとえば、ペンタンチオールもしくはデカンチオール)、
たとえば窒素原子および/または硫黄原子を有する、アリールチオール(特に、ヘテロアリール)、
特に、少なくとも1つのチオール官能基を有するポリ(エチレングリコール)、少なくとも1つのチオール官能基を有するプルロニックスなどのポリエーテルのファミリー、少なくとも1つのチオール官能基を有する(ポリ(N‐アルキルアクリルアミド)(ポリ(N‐(イソプロピルアクリルアミド))のファミリーに属する、合成高分子、
たとえば、オリゴ糖鎖もしくは多糖鎖の還元末端で、または該鎖に沿って、少なくとも1つのチオール官能基を有する、単糖、オリゴ糖、もしくは多糖、
少なくとも1つのチオール官能基を有するペプチド、
少なくとも1つのチオール官能基を有するオリゴヌクレオチド、
少なくとも2つの(特に、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つの)チオール官能基を有する化合物、ならびに、
少なくとも1つのチオール官能基を有する活性化合物(特に、医薬としての活性化合物)。
【0136】
たとえば、チオール化合物からなるRthio‐S‐基は、ステロイド、特に、α‐チオコレステロール、オリゴペプチドまたはポリペプチドであり得る。
【0137】
また、該チオールは、上に引用された化合物の誘導体だけでなく、たとえば、次に示すものの誘導体であり得る。
コレステロールなどのステロイド、
たとえば、アミノ酸配列、アルギニン‐グリシン‐アスパラギン酸(Arg‐Gly‐Asp)(より一般にRGDと称する)を含むペプチド、
6’‐アミノ‐6’‐デオキシシクロマルトヘプタオースなどのシクロデキストリン。
【0138】
特に、関心対象の分子であるチオール誘導体は、チオール官能基のグラフト化によって得ることができ、該グラフト化は、たとえば、
特に、カルボン酸官能基を有する化合物によって、システアミンをグラフト化すること、または、
特に、アルコールもしくはアミン官能基を有する化合物によって、メルカプトプロピオン酸をグラフト化することによるものである。
【0139】
一般に、チオール化合物から誘導されたRthio‐S‐基は、特に本明細書に説明する、いずれかの型のチオールからなり得る
【0140】
該多糖は、本発明に定義するとおりである。該多糖は、デキストランまたはデキストラン誘導体であることが好ましい。該多糖は、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸誘導体であることが好ましい。
【0141】
好ましい実施態様において、該多糖は、次に示す化学式D
【化20】
(式中、
n’は10〜10,000(特に、15〜7,000)であり、
はHまたはNaであり、かつ、
Ra’、Rb’、Rc’およびRd’はそれぞれ、独立して、Hまたは上に定義する式Cの単位である)に対応するヒアルロン酸である。
【0142】
特に、前述の式Cの単位は、ヒアルロン酸反復単位当たり0.5〜400%、とりわけ2〜250%、特に5〜100%、特に7〜75%、さらに7〜50%のモルグラフト率で存在する。
【0143】
該官能化は、1以上の異なるチオールによって達成することができる。
【0144】
本発明の方法が複数のチオール官能基を含むチオール化合物によって行われる場合、該方法は多糖の架橋をもたらす。
【0145】
別の特定の実施態様によれば、チオール化合物Rthio‐SHには、複数の(特に、1つ、2つ、3つたは4つの)チオール官能基が含まれる。これらは、たとえば、Shearwater社(http://www.creativepegworks.com)によって販売されている、ポリ(エチレングリコール)誘導体であり得る。該チオール化合物は、次に示すものであり得る。
CZ4−r(O(CHCHO)CHCHSH)化合物(式中、Zは、H、もしくは、特に1〜18個の炭素原子を含むアルキル基であり、qは、2〜150(とりわけ4〜100、特に5〜75)の整数であり、かつ、rは1〜4の整数である)、または、
HSCHCHO(CHCHO)CHCHSH化合物(式中、Sは10〜500、特に20〜250、とりわけ25〜150の整数である)。
【0146】
したがって、本発明はまた、次に示す工程を含んでなるヒアルロン酸の架橋方法にも関する:
a)上述の製造方法のヒアルロン酸の少なくとも1つのヒドロキシル官能基においてグラフト化された少なくとも1つのアルケン単位を有するヒアルロン酸を製造する工程、
b)前の工程で得られたヒアルロン酸と、複数のチオール官能基を含む化合物とを反応させる工程、
c)架橋されたヒアルロン酸を回収する工程。
【0147】
複数のチオール官能基を含む化合物は、ポリ(エチレングリコール)ジチオール、およびポリ(エチレン)テトラチオールから選択されることが好ましい。
【0148】
有利に、工程b)は、ラジカル反応によって行われる。工程b)には、UV光による照射が含まれることが好ましい。
【0149】
好ましい実施態様において、HA架橋方法には、ヒアルロン酸を水和して、ヒドロゲルを形成することがさらに含まれる。
【0150】
また、本発明は、本発明の方法によって得ることができる架橋ヒアルロン酸、および、本発明の方法によって得ることができるヒアルロン酸ヒドロゲルにも関する。
【0151】
さらに、本発明は、本発明の製造方法によって官能化されたヒアルロン酸の製造と、本発明のヒアルロン酸の架橋とを含んでなる、少なくとも1つのチオエーテル単位によって官能化された架橋ヒアルロン酸の製造方法にも関する。
【0152】
さらにまた、本発明は、本発明の方法によって得ることができる官能化架橋ヒアルロン酸、ならびに、かかる官能化架橋ヒアルロン酸、本発明の官能化多糖、もしくは本発明のヒアルロン酸ヒドロゲルを含んでなる制御放出医薬または化粧料組成物にも関する。
【0153】
また、本発明は、少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位によってグラフト化された多糖、またはチオエーテル単位によって官能化された多糖を含んでなる組成物にも関する。この組成物には、保存剤も含まれ得る。したがって、本溶液には、酸化防止剤および/または抗菌剤(たとえば、マンニトール、ナトリウムのアジ化物)が含まれ得る。
【0154】
この組成物には、保存剤も含まれ得る。したがって、本溶液には、酸化防止剤および/または抗菌剤(たとえば、マンニトール、ナトリウムのアジ化物)が含まれ得る。
【0155】
また、本発明は、本発明の方法によって得ることができる多糖にも関する。
【0156】
別の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位によってグラフト化された少なくとも1つの多糖、および/または、チオエーテル単位によって官能化された少なくとも1つのグラフト化多糖を含んでなるか、または該多糖からなる組成物に関する。
【0157】
別の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位によってグラフト化された少なくとも1つの多糖、チオエーテル単位によって官能化された少なくとも1つのグラフト化多糖、少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する単位によってグラフト化された少なくとも1つの多糖を含んだ少なくとも1つの組成物、および/または、チオエーテル単位によって官能化された少なくとも1つのグラフト化多糖を含んでなる材料に関する。
【0158】
また、溶液中の化学ゲルも、特に1以上のチオール官能基を有する、官能化ポリマーと、炭素‐炭素二重結合を含んだ単位を有する多糖とを混合することによって得ることができる。この種のゲルは、任意により、特に生物医学の用途で、注入することができる。
【0159】
さらに、炭素‐炭素二重結合を含む単位によってグラフト化された多糖は、チオール官能基を有する活性化合物(特に、医薬としての活性化合物)もしくはこれらの化合物の誘導体、または生物活性高分子によって官能化することもできる。したがって、これらの材料によって、薬剤の細かいアドレシング(addressing)が可能になり得る。
【図面の簡単な説明】
【0160】
図1図1は、本発明の種々のHA‐ペンテノアート/PEG‐(SH)、およびHA‐ペンテノアート/PEG‐(SH)混合物の25℃における時間の関数としての、保存係数(G’)の変化を表す。
【実施例】
【0161】
次に示す実施例において、合成および分析は、18.2 MQ・cmの抵抗を有するElga Purelabシステムによって精製された水を使用して行った。
【0162】
改良多糖を、グラフト化および最終ポリマーの純度を確認するために、H NMRによって分析した。改良多糖のモル質量および平均モル質量分布を、三重検出排除クロマトグラフィー(示差屈折率検出器、毛細管粘度計、および多重角光散乱装置を装備した)によって測定した。
【0163】
Bruker Daltonics Autoflex分光計を使用して、低分解能MALDI‐TOF質量分析測定を行った。使用するマトリックスは、HO中の50 mg/mlの濃度の2,5‐ジヒドロキシ安息香酸(DHB)である。
【0164】
光レオメトリー(Photorheometry)測定を、UV照射セルを装備したAR2000Exレオメーター(TA Instruments社製)を使用して行った。
【0165】
実施例1:20%のグラフト率を有するHA‐ペンテノアート誘導体の合成
質量M=200,000 g/molのヒアルロン酸の初期バッチからのヒアルロン酸においてペンテノアート基をグラフト化するための手順。
200,000の重量平均モル質量(M、g/mol)(0.200g、0.50 mmol)を有するヒアルロン酸を、撹拌下で、超純水(10 ml)中に可溶化させる(2% w/v HA溶液)。
この溶液に、ジメチルホルムアミド(DMF、6.7 ml)を、撹拌下で加える(水/DMF混合物、3/2(v/v))。反応混合物のpHを、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えることによって、8.3(8<pH<9)に調整し、次いで、これを4℃に冷却する。
その後、1 mlのDMF中に予め可溶化させた4‐ペンテン酸無水物(0.091g、0.50 mmol)を、撹拌下で、該反応混合物に滴下する。
pHを8.3で4時間維持した後、混合物を4℃で一晩冷蔵する。
4℃で、一晩撹拌下で、反応媒体を整置した後に、溶液を、透析ろ過工程(Amicon YM10膜、10,000 Da遮断)のために移す。透過液が超純水と同等の伝導率となるまで、これを、20℃の水/エタノール混合物(3/2、v/v)により洗浄する。
その後、透過液を、エタノールの存在を除去するために、ロータリーエバポレータに移す。
最終ポリマーを、凍結乾燥後、96%の収率で単離する。H NMRによって決定した該最終ポリマーのグラフト率は、20%である。
H NMR(DO,400 MHz,80℃,δ(ppm)):1.94(HAアセチル基CH),2.32(m,CH‐CH=CH),2.48(m,CH‐CO),3.10‐4.00(m,HA主鎖の糖のプロトンの質量),4.38‐4.55(m,HAのアノマープロトン),5.01(m,CH=),5.83(m,CH=)。
SECによって測定した重量平均モル質量:M=370,000 g/mol。
【0166】
実施例2:20%のグラフト率を有するデキストラン‐ペンテノアート誘導体の合成
=200,000 g/molの質量のデキストランの初期バッチからのデキストランにおいてペンテノアート基をグラフト化するための手順。
200,000の重量平均モル質量(M、g/mol)(0.200g、1.23 mmol)を有するデキストランを、撹拌下で、超純水(10 ml)中に可溶化させる(2% w/v デキストラン溶液)。
この溶液に、DMF(6.7 ml)を、撹拌下で加える(水/DMF混合物、3/2(v/v))。反応混合物を4℃に冷却した後、このpHを、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えることによって、8.3(8<pH<9)に調整する。
1 mlのDMF中に予め可溶化させた4‐ペンテン酸無水物(0.091g、0.50 mmol)を、撹拌下で、該反応混合物に滴下する。
pHを8.3で4時間維持した後、混合物を4℃で一晩冷蔵する。
4℃で、一晩撹拌下で、反応媒体を放置した後に、溶液を、透析ろ過工程(Amicon YM10膜、10,000 Da遮断)のために移す。透過液が超純水と同等の伝導率になるまで、これを、20℃の水/エタノール混合物(3/2、v/v)により洗浄する。
その後、透過液を、エタノールの存在を除去するために、ロータリーエバポレータに移す。
最終ポリマーを、凍結乾燥後(24時間)、84%の収率で単離する。
H NMRによって決定した該最終ポリマーのグラフト率は、20%である。
H NMR(DO,400 MHz,80℃,δ(ppm)):2.34(m,CH‐CH=CH),2.53(m,CH‐CO),3.30‐4.10(m,デキストラン主鎖の糖のプロトンの質量),4.91(m,HAのアノマープロトン),5.07(m,CH=),5.82(m,CH=)。
【0167】
実施例3:18%のβ‐シクロデキストリン(CD)グラフト率を有するHA‐シクロデキストリン誘導体の合成
a.6’‐メルカプトプロピオニルアミド‐6’‐デオキシシクロマルヘプタオース(6'-mercaptopropionylamido-6'-deoxycyclomaltoheptaose)の合成。
撹拌および窒素雰囲気下で、DMF(20 ml)中6’‐アミノ‐6’‐デオキシシクロマルトヘプタオース(SIGMA社製)(0.2g、0.17 mmol)の溶液に、DMF(1 ml)中N,N‐ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、0.029 ml、0.17 mmol)の溶液、さらに、DMF(1 ml)中1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、0.046g、0.34 mmol)およびN,N’‐ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(0.106 ml、0.68 mmol)の溶液を連続的に加える。次いで、メルカプトプロピオン酸(MPA、0.019 ml、0.22 mmol)を反応媒体に加える。その後、反応混合物を、窒素雰囲気下、一晩撹拌下で整置する。ロータリーエバポレータでほとんどのDMFが蒸発した後、生成物をアセトン(200 ml)中に沈殿させる。次いで、その沈殿物を、100 mlのアセトンで5の孔隙率を有するフリット上で3回洗浄し、その後、室温で一晩乾燥させる。6’‐メルカプトプロピオニルアミド‐6’‐デオキシシクロマルトヘプタオースを、88%の収率で、白色の粉末(0.181g、0.15 mmol)の形態で得る。
H NMR(DO,400 MHz,25℃,δ(ppm)):2.53(m,CH‐SH,MPA鎖),2.67(m,CH‐CO,MPA結合),3.13(m,1H,CD),3.52‐3.86(m,H‐2,H‐3,H‐4,H‐5,H‐6,6’,CD),5.0(m,アノマープロトン,CD)
MS‐MALDI‐TOF:C457435NSNaの[M+Na]の計算値:1244.11;測定値:1244.40
【0168】
b.20%のグラフト率を有するHA‐ペンテノアート誘導体と6’‐メルカプトプロピオニルアミド‐6’‐デオキシシクロマルトヘプタオースのカップリング
撹拌下で、超純水(2 ml)中20%のグラフト率を有する質量M=370,000 g/molのHA‐ペンテノアート誘導体(実施例1によって合成)の溶液(1% w/v HA‐ペンテノアート溶液)に、6’‐メルカプトプロピオニルアミド‐6’‐デオキシシクロマルトヘプタオース(0.012g、0.0096 mmol)を加える。次いで、その混合物に、PBS(0.1 ml、リン酸緩衝生理食塩水、0.15M NaCl、pH7.4)中1%(w/v)Irgacure 2959溶液を加える。その後、反応混合物を石英セルに移し、波長λ=365 nmで5分間照射する。
次いで、溶液を透析ろ過工程(Amicon YM10膜、10,000 Da遮断)のために移し、透過液が超純水と同等の伝導率になるまで、これを、20℃の超純水により洗浄する。
最終ポリマーを、凍結乾燥後、87%の収率で単離する。
H NMRによって決定した該最終ポリマーのグラフト率は、18%である。
H NMR(DO,400 MHz,80℃,δ(ppm)):1.59(m,CH,CO‐CHCH‐CH‐CH‐S),1.91(HAアセチルCH基),2.41(m,CO‐CH‐CH‐CHCH‐S,S‐CHCH‐CO‐NH),3.20‐4.00(m,HA主鎖およびCDの糖のプロトンの質量),4.35‐4.50(m,HAのアノマープロトン),4.97(m,CDのアノマープロトン)。
【0169】
実施例4:20%のRGDペプチド単位グラフト率を有するHA‐RGD誘導体の合成
撹拌下で、超純水(1.8 ml)中20%のグラフト率を有する質量M=370,000 g/molのHA‐ペンテノアート(実施例1によって合成)の溶液(1% w/v HA‐ペンテノアート溶液)に、RGDペプチド(Genecust社から入手したMPA‐gly‐arg‐gly‐asp‐ser、0.005g、0.0086 mmol)を加える。次いで、その混合物に、PBS(0.1 ml、リン酸緩衝生理食塩水、0.15M NaCl、pH7.4)中1%(w/v)Irgacure 2959溶液を加える。その後、反応混合物を石英セルに移し、波長λ=365 nmで5分間照射する。
次いで、溶液を透析ろ過工程(Amicon YM10膜、10,000 Da遮断)のために移し、透過液が超純水と同等の伝導率になるまで、これを、20℃の超純水により洗浄する。
最終ポリマーを、凍結乾燥後、76%の収率で単離する。
H NMRによって決定した該最終ポリマーのグラフト率は、20%である。
H NMR(DO,400 MHz,80℃,δ(ppm)):1.54‐1.67(m,3 CHアルギニン),2.53(m,CHCO,メルカプトプロピオンアミド),2.73(m,CHアスパラギン酸),3.11(t,CHS),3.20‐4.00(m,HA主鎖,CHグリシン,CHセリンの糖のプロトンの質量),4.24‐4.66(m,HA,CHアルギニン,CHアスパラギン酸,CHセリンのアノマープロトン)。
【0170】
実施例5:20%のペンタン鎖グラフト率を有するHA‐ペンタン誘導体の合成。
撹拌下で、超純水/エタノール混合物(3/2、v/v、5 ml)中20%のグラフト率を有するHA‐ペンテノアート(実施例1によって合成)の溶液(1% w/v HA‐ペンテノアート溶液)に、1‐ペンタンチオール(0.012g、0.119 mmol)を加える。次いで、その混合物に、水/エタノール混合物(3/2、v/v、0.1 ml)中1%(w/v)Irgacure 2959溶液を加える。その後、反応混合物を石英セルに移し、波長λ=365 nmで10分間照射する。
次いで、溶液を透析ろ過工程(Amicon YM10膜、10,000 Da遮断)のために移し、透過液が超純水と同等の伝導率になるまで、これを、20℃の超純水/エタノール混合物(3/2、v/v)により洗浄する。
最終ポリマーを、凍結乾燥後、75%の収率で単離する。
H NMRによって決定した該最終ポリマーのグラフト率は、20%である。
H NMR(DO,400 MHz,80℃,δ(ppm)):0.77(t,S‐(CHCH),1.23(m,S‐CH‐CHCH‐CH‐CH),1.50(m,CO‐CHCH‐CH‐CH‐S,S‐CHCH‐CH‐CH‐CH),1.91(HAアセチル基CH),2.48(m,CO‐CH‐CH‐CHCH‐S,S‐CH‐CH‐CH‐CH‐CH),3.10‐4.00(m,HA主鎖の糖のプロトンの質量),4.34‐4.55(m,HAのアノマープロトン)。
【0171】
実施例6:10%のβ‐シクロデキストリン(CD)グラフト率を有するデキストラン‐シクロデキストリン誘導体の合成。
撹拌下で、超純水(2 ml)中20%のグラフト率を有する質量M=200,000 g/molのデキストラン‐ペンテノアート(実施例2によって合成)の溶液(1% w/v デキストラン‐ペンテノアート溶液)に、6’‐メルカプトプロピオニルアミド‐6’‐デオキシシクロマルトヘプタオース(0.027g、0.00224 mmol)を加える。次いで、その混合物に、PBS(0.1 ml、リン酸緩衝生理食塩水、0.15M NaCl、pH7.4)中1%(w/v)Irgacure 2959溶液を加える。その後、反応混合物を石英セルに移し、波長λ=365 nmで5分間照射する。
次いで、溶液を透析ろ過工程(Amicon YM10膜、10,000 Da遮断)のために移し、透過液が超純水と同等の伝導率になるまで、これを、20℃の超純水により洗浄する。
最終ポリマーを、凍結乾燥後、100%の収率で単離する。
H NMRによって決定した該最終ポリマーのグラフト率は、10%である。
H NMR(DO,400 MHz,80℃,δ(ppm)):1.64(m,CO‐CH‐CH‐CH‐CH‐S),2.40‐2.50(m,CO‐CH‐CH‐CHCH‐S,S‐CH‐CH‐CO‐NH),2.72(m,S‐CHCH‐CO‐NH),3.20‐4.00(m,デキストラン主鎖およびCDの糖のプロトンの質量),4.88(m,デキストランのアノマープロトン),4.99(m,β‐CDのアノマープロトン)。
【0172】
実施例7:ヒアルロン酸を含む化学ヒドロゲルの合成。
HA‐ペンテノアート誘導体を、次に示す式の、複数のチオール官能基を有する化合物、ポリ(エチレングリコール)ジチオール(PEG‐(SH)、M=3.600 g/mol、Shearwater社製)
【化21】
または、次に示す式の、ポリ(エチレングリコール)テトラチオール(PEG‐(SH)、M=2,200 g/mol、Shearwater社製)と結合させる場合、
【化22】
UV照射による化学ヒドロゲルの形成がみられる。これは、図1に示す光レオロジー(photorheology)(AR2000Exレオメーター、TA Instruments社製)による結果となった。
図1は、8%のグラフト率を有するHA‐ペンテノアート誘導体(HA‐pent(DS=0.08)という)、または25%のグラフト率を有するHA‐ペンテノアート誘導体(HA‐pent(DS=0.25)という)から製造された、種々のHA‐ペンテノアート/PEG‐(SH)、およびHA‐ペンテノアート/PEG‐(SH)混合物の25℃における時間の関数としての、保存係数(G’)の変化を表す。PEG‐(SH)(M=2,200 g/mol)およびPEG‐(SH)(M=3,600 g/mol)誘導体は、Shearwater社から入手する。UV照射は、1 Hzの周波数で行った保存係数G’の測定開始1分後に、活性化される。PBS中HA‐ペンテノアート(M=200,000 g/mol)の初期濃度は、15 g/lである。
この図1によれば、鎖間の化学架橋の確立を表す保存係数(弾性係数)G’は、UV照射(λ=365 nm、力:144 mW/cm)の活性化から急激になり、5分後に、一定値に達する。保存係数の値は、チオール/ペンテノアートモル比、HA‐ペンテノアートの置換度、チオール誘導体の性質、およびHA‐ペンテノアート濃度の関数として調節することができる。
図1