【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
以下の実施例において、難燃剤マスターバッチを得るのに使用した(A)スチレン系樹脂、及びスチレン系難燃性樹脂組成物を得るのに使用したスチレン系樹脂(II)としては、下記の特性を有する、(A−1)、(A−2)及び/又は(A−3)を使用した。
(A−1):
ゴム状重合体にシス1、4結合を90モル%以上の比率で含有するハイシスポリブタジエンゴムを使用したゴム変性スチレン系樹脂である。このゴム変性スチレン系樹脂の組成は、マトリックス部分の還元粘度が0.75dl/gであり、ゴム状重合体の含有量が9.3質量%であり、ゴム状重合体のゲル含有量が27.0質量%であり、及びゴム状重合体の体積平均粒子径が2.53μmであり、更にゴム変性スチレン系樹脂中の流動パラフィン含有量が1.9質量%である。
(A−2):
ゴム状重合体にシローシスポリブタジエンゴムを使用したゴム変性スチレン系樹脂である。このゴム変性スチレン系樹脂の組成はマトリックス部分の還元粘度が0.58dl/gであり、並びにゴム状重合体の含有量が9.9質量%であり、ゴム状重合体のゲル含有量が30.5質量%であり、及びゴム状重合体の体積平均粒子径が2.50μmであり、更にゴム変性スチレン系樹脂中の流動パラフィン含有量が2.0質量%である。
(A−3):
還元粘度が0.70dl/gであり、スチレン系樹脂中の流動パラフィン含有量が2.5質量%であるスチレン重合体(GP)を使用した。
また、ゴム変性スチレン系樹脂に添加したスチレン−ブタジエン共重合体(G)には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製、商品名タフプレン315P)を使用した。
【0036】
本発明における、還元粘度、ゲル含有量、ゴム状重合体の含有量及び平均粒子径は以下の方法で測定した。尚、流動パラフィン含有量は仕込み量を示す。
【0037】
還元粘度(ηsp/C):
ゴム変性スチレン系樹脂1gにメチルエチルケトン15mlとアセトン15mlの混合溶媒を加え、温度25℃で2時間振とう溶解した。次いで、遠心分離で不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を取り出し、500mlのメタノールを加えて樹脂分を析出させ、不溶分を濾過乾燥した。同操作で得られた樹脂分をトルエンに溶解してポリマー濃度が0.4%(質量/体積)の試料溶液を調製した。この試料溶液、及び純トルエンを温度30℃の恒温でウベローデ型粘度計により溶液流下秒数を測定して、下式にて算出した。
ηsp/C=(t1/t0−1)/C
t0:純トルエン流下秒数
t1:試料溶液流下秒数
C:ポリマー濃度
【0038】
ゴム状重合体のゲル含有量:
1gのゴム変性スチレン系樹脂組成物をメチルエチルケトン15mlとアセトン15mlの混合溶媒に加え、温度25℃で2時間振とう溶解した。次いで、遠心分離して不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を除去して不溶分を得、温度70℃で15時間程度真空乾燥し、20分間デシケーター中で冷却した後、乾燥した不溶分の質量G(g)を測定して次の式でより求めた。
ゴム状重合体のゲル含有量(質量%)=(G/1)×100
【0039】
ゴム状重合体の含有量:
ゴム変性スチレン系樹脂をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置した。次いで、15質量/体積のヨウ化カリウム溶液と純水50mlを加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から算出した。
【0040】
(B)難燃剤には、(B−1)2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジンである第一工業製薬社製の商品名ピロガードSR245を使用した。また、比較用難燃剤として、(B−2)エチレンビスペンタブロモベンゼンであるアルベマール社製の商品名SAYTEX−8010(以下、S8010と略記する。)を使用した。
【0041】
(C)難燃助剤には、鈴裕化学社製、商品名AT−3CN(三酸化アンチモン)を使用した。
【0042】
(D)タルクには、富士タルク社製の商品名KPタルクを使用した。
【0043】
(E)酸化防止剤には、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン社製、商品名IRGANOX1076)を使用した。
【0044】
(F)カーボンブラックには、カーボンブラック含有量が40質量%である越谷化成社製の商品名RB962Pを使用した。
【0045】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には、三井・デュポンフロロケミカル社製の商品名PTFE31−JRを使用した。これを(H)と略記する。
【0046】
次に、本発明の難燃剤マスターバッチの混合方法を述べる。(A)スチレン系樹脂、(B)難燃剤、(C)難燃助剤、(D)タルク、(E)酸化防止剤、(F)カーボンブラック、及び(G)スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体を表1、表2、表3に示す配合量(質量部)にて、形状別に、ペレット状と粉体状に分けて、それぞれの形状の成分をヘンシェルミキサー(三井三池化工社製、FM20B)にて予備混合した。予備今後物を、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)にペレット状成分と粉体状成分とを別フィード供給してストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。この際、シリンダー温度200℃、供給量50kg/時間とした。
【0047】
なお、上記予備混合時に、ソジウムアルミノシリケートとA型ゼオライトの混合物及びカルシウムステアレートも同時添加した。
【0048】
本発明で検討に使用した難燃マスターバッチの組成物を下記の表1、表2、表3に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
また、上記で得られた難燃剤マスターバッチ(I)、スチレン系樹脂(II)、及び(H)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を表4、表5、表6に示す配合量(質量部)にて、全成分をタンブラーにて予備混合した。予備混合物を、単軸押出機(IKG社製 PMS40−28)及び二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)に供給してストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。この際、二軸押出機はシリンダー温度230℃、供給量30kg/時間とした。また、単軸押出機はシリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpmとした。なお、(H)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)はPTFE純量が配合量となるように添加した。
【0053】
また、(A)スチレン系樹脂、(B)難燃剤、(C)難燃助剤、(D)タルク、(E)酸化防止剤、(F)カーボンブラック、(G)スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、及び(H)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を表7に示す配合量(質量部)にて難燃剤マスターバッチ(I)を使用せずにスチレン系難燃性樹脂組成物を得た。
二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)を使用した場合は、形状がペレット状と粉体状の物を分けて、それぞれの形状成分をヘンシェルミキサー(三井三池化工社製、FM20B)にて予備混合し、別フィード供給してストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。この際、シリンダー温度230℃、供給量30kg/時間とした。
単軸押出機(IKG社製 PMS40−28)を使用した場合は、全成分をタンブラーにて予備混合し、ストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。この際、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpmとした。なお、(H)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)はPTFE純量が配合量となるように添加した。
【0054】
なお、実施例、比較例に示された各種測定は以下の方法により実施した。
【0055】
(1)難燃性の測定
難燃性の測定は、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ社のサブジェクト94号の垂直燃焼試験方法に準拠し、試験片厚さ1.5mmの燃焼性を評価した。評価結果は下記の様に表記した。
NG:V−0でない燃焼性(V−1、V−2、又はHB)を示すもの。
【0056】
(2)シャルピー衝撃強度の測定
シャルピー衝撃強度は、JIS K 7111−1に基づき測定を行った。
測定装置:シャルピー試験機(東洋精機社製)
ノッチタイプ:タイプA
打撃方向:エッジワイズ
測定環境:23℃
【0057】
(3)荷重たわみ温度(HDT)
荷重たわみ温度は、JIS K 7191に基づき測定を行った。
測定装置:No.148−HD−PC−3(安田精機社製)
応力:1.80MPa
支点間距離:64mm
試験片サイズ:長さ80mm 幅10mm 高さ4mm フラットワイズ
【0058】
(4)メルトフローレート(MFR)
メルトフローレート(MFR)は、得られたペレットをJIS K 7210に基づき測定を行った。
試験温度:200℃
試験荷重:49.03N
【0059】
(5)外観
射出成形機(日本製鋼所社製、J100E−P)にて90mm角板(厚み2mm)に成形し、成形品の表面に成形不良(ブツ・フラッシュ等)の有無を観察して外観を評価した。この際、シリンダー温度230℃、金型温度30℃とした。
○:成形品表面の不良(ブツ・フラッシュ)が見られないもの。
×:成形品表面の不良(ブツ・フラッシュ)が見られたもの。
【0060】
各種試験の試験片の作製条件
シャルピー衝撃強度用試験片、及び荷重たわみ温度試験片として、射出成形機(日本製鋼所社製、J100E−P)にて、JIS K 7139に記載のA型試験片(ダンベル)を作製した。成形条件はJIS K 6926−2に準拠して行った。シャルピー衝撃強度用試験片は、該ダンベル片の中央部より切り出し、切削でノッチ(タイプA、r=0.25mm)を入れ、試験に用いた。また、荷重たわみ温度試験片は、該ダンベル片の中央部より切り出し、試験に用いた。
【0061】
燃焼性の評価用試験片は、射出成形機(日本製鋼所社製、J100E−P)にて、127×12.7×1.5mmの燃焼用試験片を成形した。この際、シリンダー温度190℃、金型温度30℃とした。
【0062】
難燃マスターバッチを使用したスチレン系難燃性樹脂組成物の溶融混合方法及びそれらの物性値を以下の表4、表5、表6に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
難燃性マスターバッチを使用しないで単軸押出機で押出したスチレン系難燃性樹脂組成物の評価結果を表7に示す。
【0067】
【表7】
【0068】
上記の実施例にみられるように、本発明の難燃剤マスターバッチを使用し、本発明の製造方法で得られたスチレン系難燃性樹脂組成物は、難燃性、衝撃強度、耐熱性、流動性のバランスが良く、更に外観も良好であることがわかる。
しかし、本発明の要件を満足しない比較例で得られたスチレン系難燃性樹脂組成物は、難燃性、衝撃強度、耐熱性、流動性の何れかに優れることはあっても、その全てに優れていることはないことがわかる。
【0069】
例えば、難燃剤マスターバッチの(A)スチレン系樹脂が規定量より多いと難燃性が劣り(比較例1)、少ないとシャルピー衝撃強度及び耐熱性が低い(比較例2)。また、難燃剤マスターバッチの(B)難燃剤が規定量より多いとシャルピー及び耐熱性が低く(比較例3)、少ないと難燃性に劣りUL94燃焼試験でのV−0レベルが確保できなくなり(比較例4)、難燃剤種をS8010にするとシャルピー、流動性が低い(比較例16)。また、難燃剤マスターバッチの(C)難燃助剤が規定量より多いとUL94燃焼試験でグローイング時間が延びてV−0レベルが確保できなくなり、シャルピーも低く(比較例5)、少ないと難燃性に劣りUL94燃焼試験でのV−0レベルが確保できなくなる(比較例6)。
【0070】
また、難燃剤マスターバッチの(D)タルクが規定量より多いと難燃性に劣りUL94燃焼試験でのV−0レベルが確保できなくなり、シャルピーも低く(比較例7)、少ないと耐熱性が低い(比較例8)。また、難燃剤マスターバッチの(E)酸化防止剤を添加しないとシャルピーが低い(比較例9乃至11)。また、難燃剤マスターバッチが規定量のものを使用しても、難燃剤マスターバッチ配合量が規定量より少ないと難燃性に劣りUL94燃焼試験でのV−0レベルが確保できなくなり(比較例12)、多いと耐熱性が低い(比較例13)。また、難燃剤マスターバッチが規定量のものを使用しても、(H)PTFEが規定量より多いとUL94燃焼試験でグローイング時間が延びてV−0レベルが確保できなくなる(比較例14)。また、難燃剤マスターバッチを使用し、溶融混合は単軸押出機・二軸押出機どちらも同じ物性になり容易に単軸押出機でスチレン系難燃性樹脂組成物を得ることができる(実施例10、11、比較例14、15)。
【0071】
また、難燃剤マスターバッチ(I)を使用せずにスチレン系難燃性樹脂組成物を単軸押出機で溶融混合するとシャルピー、耐熱性、外観が劣る(比較例17乃至19)。難燃剤マスターバッチを使用して得たスチレン系難燃性樹脂組成物は表4、表5の実施例に示したとおり難燃性、衝撃強度、耐熱性、流動性のバランスが良く、更に外観も良好である。