特許第5872577号(P5872577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5872577難燃剤マスターバッチ及びそれを使用したスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872577
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】難燃剤マスターバッチ及びそれを使用したスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20160216BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20160216BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20160216BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20160216BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C08J3/22CET
   C08L25/04
   C08K3/34
   C08K3/22
   C08K5/3492
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-539492(P2013-539492)
(86)(22)【出願日】2011年10月21日
(86)【国際出願番号】JP2011074355
(87)【国際公開番号】WO2013057841
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2014年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(72)【発明者】
【氏名】大胡 寛己
(72)【発明者】
【氏名】伊野 卓幸
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−281327(JP,A)
【文献】 特開2011−011415(JP,A)
【文献】 特開2003−335950(JP,A)
【文献】 特開平10−007855(JP,A)
【文献】 特開平08−109269(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/010561(WO,A1)
【文献】 特開2008−050582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)スチレン系樹脂75乃至25質量部、
(B)2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン15乃至50質量部、
(C)三酸化アンチモン2乃至8質量部、及び
(D)タルク5乃至17質量部を含有し、
かつ、(A)乃至(D)の合計100質量部に対し、更に
(E)酸化防止剤0.5乃至2.0質量部を含有することを特徴とする難燃剤マスターバッチ。
【請求項2】
前記(A)乃至(D)の合計100質量部に対し、更に、(F)カーボンブラック1.7質量部未満(但し0は含まず。)を含有する請求項1に記載の難燃剤マスターバッチ。
【請求項3】
(A)スチレン系樹脂65乃至30質量部、
(B)2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン25乃至50質量部、
(C)三酸化アンチモン3乃至8質量部、及び
(D)タルク7乃至17質量部である請求項1又は2に記載の難燃剤マスターバッチ。
【請求項4】
(A)スチレン系樹脂が、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及び/又はランダム共重合体を含有したゴム変性スチレン系樹脂である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の難燃剤マスターバッチ。
【請求項5】
(E)酸化防止剤が、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の難燃剤マスターバッチ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の難燃剤マスターバッチ(I)30乃至85質量部と、スチレン系樹脂(II)70乃至15質量部とを、溶融混合するスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の難燃剤マスターバッチ(I)30乃至60質量部と、スチレン系樹脂(II)70乃至40質量部とを溶融混合するスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
難燃剤マスターバッチ(I)とスチレン系樹脂(II)の合計量100質量部に対して、更にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を0.4質量部以下(但し0は含まず。)を添加して溶融混合する請求項6又は7に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
単軸押出機で溶融混合する請求項6乃至8のいずれか1項に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
二軸押出機で溶融混合する請求項6乃至8のいずれか1項に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記スチレン系難燃性樹脂組成物のUL―94に基づく難燃性の評価がV−0である請求項6乃至10のいずれか1項に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂に難燃性を付与するために使用される難燃剤マスターバッチ及び、この難燃剤マスターバッチとスチレン系樹脂を使用したスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法及びその成形品の製造方法に関するものである。特に、UL難燃規格V−0であるスチレン系難燃性樹脂組成物を得るための難燃剤マスターバッチとそれを使用したスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂は、その特性を生かして広範囲な用途に使用されている。中でも高度な難燃性を付与したスチレン系難燃性樹脂は、ワープロ、パーソナルコンピュータ、プリンター、複写機等のOA機器、液晶テレビ、VTR、オーディオ等の家電製品等を始めとする多岐の分野で使用されている。
【0003】
昨今、OA機器や家電製品の分野では、プラスチック部品の大型化に対応するため、大型成形機を使用したホットランナー成形法やガスアシストインジェクション法等が適用される。このため、使用される樹脂には、難燃性以外に優れた成形性が要求される。
このように、多岐の分野に使用されるので、UL難燃規格の難燃性レベルでも5V,V−0、V−1、V−2、HBのいずれが要求されるのか、加えて耐熱性、流動性、耐衝撃性等の全て物性が一定の水準以上を満たさなければならないのか、あるいはこれらの特性の中で難燃性に加えて特に耐熱性が必要なのか、さらに耐衝撃性が必要になるのか、など用途によって多様な特性が必要とされる。
【0004】
従来から、スチレン系樹脂に難燃性を付与するために、種々の難燃剤が提案されている。中でも、安価で物性バランスに優れているハロゲン含有有機化合物が難燃剤として多く使用されている。代表的なものとしては、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエタン、臭素化トリアジン、臭素化エポキシ、又は臭素化エポキシ樹脂のエポキシ基をトリブロモフェノールで封鎖したものが使用される。中でも耐熱性、流動性、及び物性バランスが良好である臭素化トリアジン系の2,4,6−トリス(2,4,6−トリスブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジンの難燃性樹脂への使用が増えている。
これらの難燃剤がスチレン系樹脂に使用されている例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4などが挙げられる。
【0005】
しかしながら、この2,4,6−トリス(2,4,6−トリスブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジンは顆粒状でスチレン系樹脂ペレットよりも小さい形状で、また大きい比重を有しているので、この難燃剤とスチレン系樹脂ペレットが分級し易く均一に混合し難い問題を有している。このため均一に混合させるためにはすべての押出機本体に別フィードを設置し、均一に溶融混合させる必要があり、簡便な単軸又は二軸押出機では製造し難い問題を有している。
【0006】
また、スチレン系難燃性樹脂組成物の耐熱性及び剛性を向上させるためにタルクを配合するのが効果的であることが知られている。しかし、タルクは微粉末であり、粉塵の問題を有している。溶融混合させる際に粉塵問題を解決するためにすべての押出機に集塵機を備える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本特開平8−269275号
【特許文献2】日本特開2002−97328号公報
【特許文献3】日本特開2002−3688号公報
【特許文献4】日本特表2008−501849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記問題を解決し、難燃剤マスターバッチを製造し、その難燃剤マスターバッチを溶融混合することによってスチレン系難燃性樹脂組成物を製造する方法を提供することにある。
すなわち、それぞれ多岐に渡るスチレン系難燃樹脂組成物を別フィード・集塵機付きの二軸押出機を大小多数備えることなく、難燃剤の分散性が良好で、所望の難燃特性を有し、しかも、機械物性など、ポリスチレン系樹脂本来の特性が実質上低下せず、耐熱性、流動性等などのそれぞれの目的にあったスチレン系難燃性樹脂組成物を特に単軸押出機でも提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記の特定の組成を有する難燃剤入りマスターバッチと、このマスターバッチを使用するスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法と、を見出すことにより本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
1.(A)スチレン系樹脂75乃至25質量部、(B)2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン15乃至50質量部、(C)三酸化アンチモン2乃至8質量部、及び(D)タルク5乃至17質量部を含有し、
かつ、(A)乃至(D)の合計100質量部に対し、更に(E)酸化防止剤0.5乃至2.0質量部を含有することを特徴とする難燃剤マスターバッチ。
2.前記(A)乃至(D)の合計100質量部に対し、更に、(F)カーボンブラック
1.7質量部未満(但し0は含まず。)を含有する前記1に記載の難燃剤マスターバッチ。
3.(A)スチレン系樹脂65乃至30質量部、(B)2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン25乃至50質量部、(C)三酸化アンチモン3乃至8質量部、及び(D)タルク7乃至17質量部である前記1又は2に記載の難燃剤マスターバッチ。
4.(A)スチレン系樹脂が、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及び/又はランダム共重合体を含有したゴム変性スチレン系樹脂である前記1乃至3のいずれかに記載の難燃剤マスターバッチ。
5.(E)酸化防止剤が、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートである前記1乃至4のいずれかに記載の難燃剤マスターバッチ。
6.前記1乃至前記5のいずれかに記載の難燃剤マスターバッチ(I)30乃至85質量部と、スチレン系樹脂(II)70乃至15質量部と、を溶融混合するスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法。
7.前記1乃至前記5のいずれかに記載の難燃剤マスターバッチ(I)30乃至60質量部と、スチレン系樹脂(II)70乃至40質量部と、を溶融混合するスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法。
【0011】
8.難燃剤マスターバッチ(I)とスチレン系樹脂(II)の合計量100質量部に、更にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を0.4質量部以下(但し0は含まず。)を添加して溶融混合する前記6又は7に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法。
9.単軸押出機で溶融混合する前記6乃至8のいずれかに記載のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法。
10.二軸押出機で溶融混合する前記6乃至8のいずれかに記載のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法。
11.前記スチレン系難燃性樹脂組成物のUL―94に基づく難燃性の評価がV−0である前記6乃至10のいずれかに記載のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定の難燃剤マスターバッチを使用することによって、それぞれ多岐に渡るスチレン系難燃樹脂組成物を別フィード・集塵機付きの二軸押出機を大小多数備えることなく、また単軸押出機でもそれぞれの目的にあったスチレン系難燃性樹脂組成物を提供するものである。
すなわち、得られたスチレン系難燃性樹脂組成物は、難燃性、衝撃強度、耐熱性、流動性等の物性バランスに優れ、溶融混合に単軸押出機を使用して得た組成物でも容易に目的の成形品が得られ、成形品の外観も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の難燃剤マスターバッチは、(A)スチレン系樹脂、(B)2,4,6−トリス(2,4,6−トリスブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、(C)三酸化アンチモン、(D)タルク、及び(E)酸化防止剤を含有する。
【0014】
本発明の難燃剤マスターバッチに使用する(A)スチレン系樹脂は、ゴム変性スチレン系樹脂を使用するのが好ましい。ゴム変性スチレン系樹脂とは、例えば芳香族ビニル単量体と不活性溶媒の混合液にゴム状重合体を溶解し、攪拌して塊状重合、懸濁重合、溶液重合等を行うことにより得られる、芳香族ビニル重合体のマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体を言う。マトリックス部分の分子量については特に制限はないが、難燃剤マスターバッチを製造する際又は難燃剤マスターバッチとしての機能を発揮する際に、マトリックス部分の還元粘度(ηsp/C)が、0.55乃至0.85であることが好ましい。ゴム含有量については特に制限はないが、ゴム変性スチレン系樹脂に一般的に使用される5乃至15質量%が好ましい。また、ゴム状重合体の平均粒子径については特に制限はないが、0.4乃至6.0μmが好ましい。これらの数値範囲を逸脱することは、難燃剤マスターバッチとしての機能が発揮されにくいので好ましくない。
更には、芳香族ビニル単量体と不活性溶媒の混合液にゴム状重合体を溶解して得られた重合体に、別途得られた芳香族ビニル重合体を混合した混合物であってもよい。
【0015】
上記に挙げた芳香族ビニル単量体としては、主にスチレンであり、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、又はこれらの混合物を挙げることができる。特に、スチレンが最も好適である。
【0016】
また、ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン等が挙げられ、中でもポリブタジエン、又はスチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。なお、ハイシスポリブタジエンゴムとは、シス−1、4結合を90モル%以上の比率で含有するポリブタジエンゴムを意味する。また、ローシスポリブタジエンゴムとは、1,4−シス結合含量が好ましくは10乃至40質量%であるポリブタジエンゴムを意味する。ゴム状重合体としては、いずれも使用することが出来る。
【0017】
また、必要に応じて、ゴム変性スチレン系樹脂に、ランダム構造のスチレン−ブタジエン樹脂、ブロック構造のスチレン−ブタジエン樹脂などを混合して使用してもよい。スチレン−ブタジエン樹脂の混合量は、スチレン−ブタジエン樹脂に依存するゴム含有量が、ゴム変性スチレン樹脂における全ゴム含有量中に占める割合として、その25質量%以下となるように混合することが好ましい。なお、先に記載したように、全ゴム含有量はゴム変性スチレン系樹脂中では、5乃至15質量%であるのが好ましい。
【0018】
本発明で使用する(A)スチレン系樹脂の含有量は、難燃剤マスターバッチにおける前記(A)乃至(D)の合計100質量部に対し、25乃至75質量部が好ましく、さらに好ましくは30乃至65質量部である。含有量が25質量部未満であると難燃剤が多くなり、スチレン系難燃性樹脂組成物とした場合、シャルピー衝撃強度、及び熱変形温度が劣るようになる。含有量が75質量部を超えると樹脂成分が多くなり、難燃性能が劣ることになる。その結果、スチレン系難燃性樹脂組成物を得るのに難燃剤マスターバッチの添加量を増やさなければならないので、難燃剤マスターバッチとしての効率が劣ることになる。
【0019】
また、本発明では、(B)2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジンを難燃剤として使用する。
難燃剤マスターバッチにおける前記(A)乃至(D)の合計100質量部に対し、該(B)難燃剤の含有量は、難燃剤マスターバッチとしての機能性、経済性の観点から、15乃至50質量部が好ましく、さらに好ましくは25乃至50質量部である。含有量が15質量部未満であれば難燃性能が劣り、難燃剤マスターバッチの添加量を増やさなければスチレン系難燃性樹脂組成物の難燃性が劣ることになり、難燃剤マスターバッチとしての経済効果が低い。含有量が50質量部を超えると難燃剤が多くなり、スチレン系難燃性樹脂組成物とした場合、シャルピー衝撃強度、及び熱変形温度が劣るようになる。また、樹脂成分が少なくなり、難燃剤マスターバッチとしてスチレン系樹脂と溶融混合してスチレン系難燃性樹脂組成物を製造する際に、難燃剤の分散不良を発生しやすく好ましくない。
【0020】
さらに、本発明において使用される難燃化助剤である(C)三酸化アンチモンは、(B)含臭素系難燃剤の難燃効果をさらに高める働きをする。難燃化助剤は、さらに、三酸化アンチモンともに、例えば、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等の酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、無水ホウ酸亜鉛、無水ホウ酸等のホウ素系化合物、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛等のスズ系化合物、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム等のモリブデン系化合物、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム等のジルコニウム系化合物、硫化亜鉛等の亜鉛系化合物を使用してもよい。
本発明で、難燃剤マスターバッチにおける前記(A)乃至(D)の合計100質量部に対し、(C)三酸化アンチモンの含有量は、2乃至8質量部であり、好ましくは3乃至8質量部である。含有量が2質量部未満であれば、スチレン系難燃性樹脂組成物とした場合、難燃効果を高める効果が小さい。含有量が8質量部を超えると、スチレン系難燃性樹脂組成物とした場合、シャルピー衝撃強度も劣るようになり、燃焼時のグローイング挙動を高めるので好ましくない。
【0021】
さらに、本発明では、(D)タルクを使用する。(D)タルクの使用により、スチレン系難燃性樹脂組成物の耐熱性及び剛性を向上させるとともに、難燃剤マスターバッチとして、スチレン系樹脂と溶融混合して樹脂組成物を製造する際に、二軸押出機は無論のこと単軸押出機でも容易に目的のスチレン系難燃物性樹脂組成物を得ることができる。
難燃剤マスターバッチにおける前記(A)乃至(D)の合計100質量部に対し、(D)タルクの含有量は、5乃至17質量部であり、好ましくは7乃至17質量部である。含有量が5質量部未満であれば、得られたスチレン系難燃性樹脂組成物の耐熱性及び剛性を低下させるので難燃剤マスターバッチとしての効果が低い。含有量が17質量部を超えると、スチレン系難燃性樹脂組成物のシャルピー衝撃強度、耐熱性を低下させるので好ましくない。
【0022】
更に、本発明では、難燃剤マスターバッチに(E)酸化防止剤を使用する。
例えばオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤が使用される。また、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系酸化防止剤と併用してもよい。なかでも、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを使用することが好ましい。
難燃剤マスターバッチにおける前記(A)乃至(D)の合計100質量部に対し、これらの酸化防止剤の添加量は0.5乃至2.0質量部であり、1.0乃至2.0質量部であることが好ましい。酸化防止剤の添加量が0.5質量部未満であると本発明の難燃剤マスターバッチを使用してスチレン系難燃性樹脂組成物を得た場合、シャルピー衝撃強度が発現し難くなる。また2.0質量部を超えると、耐熱性の低下を招き易くなる。
本発明の難燃性マスターバッチにおいて、前記(A)乃至(D)の配合割合としては、(A)スチレン系樹脂65乃至30質量部、(B)2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン25乃至50質量部、(C)三酸化アンチモン3乃至8質量部、及び
(D)タルク7乃至17質量部であるのが好ましい。
【0023】
また、本発明の難燃剤マスターバッチを得るのに、さらに添加剤として着色剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤及び帯電防止剤等を目的に合わせて混合することができる。
【0024】
例えば、スチレン系難燃性樹脂組成物は、着色成形品として黒色物が多いので、本発明では、顔料として()カーボンブラックを必要に応じて混合して難燃性マスターバッチとすることができる。尚、スチレン系難燃性樹脂組成物中の()カーボンブラックの含有量はUL規格によって0.5質量%未満となる。従って、難燃性マスターバッチに添加出来る()カーボンブラックは、難燃剤マスターバッチにおける前記(A)乃至(D)の合計100質量部に対し、1.7質量部未満であるのが好ましく、1.5質量部以下であるのがより好ましい。




【0025】
また、難燃剤マスターバッチを製造する際の製造の容易性、また難燃剤マスターバッチを使用してスチレン系難燃性樹脂組成物を製造する際の製造の容易性、強度アップ等の観点から、滑剤としてポリオレフィン系ワックス、高級脂肪酸アミド、及び高級カルボン酸金属塩等を適宜使用することができる。
【0026】
本発明の難燃剤マスターバッチの製造には、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等の方法を採用することが可能である。しかしながら、難燃剤マスターバッチを得る際には、難燃剤2,4,6−トリス(2,4,6−トリスブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジンを均一混合させるために、押出機本体に他の原料とは別のフィーダーを使用して均一に溶融混合させるのが好ましい。また、タルクを配合する場合はタルクの粉塵対策用に集塵機を備えるのが好ましい。
【0027】
次に、本発明のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法について述べる。
なお、スチレン系難燃性樹脂組成物を得るのに使用するスチレン系樹脂をスチレン系樹脂(II)、また、これまで詳述した難燃剤マスターバッチを難燃剤マスターバッチ(I)と以下称する。
スチレン系難燃性樹脂組成物を得るのに使用するスチレン系樹脂(II)は、難燃剤マスターバッチ(I)で詳述した(A)スチレン系樹脂と同様のものが使用出来るが、同一組成、同一種類のものである必要はない。勿論同一のものであっても良い。ゴム変性スチレン系樹脂及び/又は芳香族ビニル重合体が好ましく使用される。
【0028】
難燃剤マスターバッチ(I)とスチレン系樹脂(II)の配合比は、得られるスチレン系難燃性樹脂組成物に要求される難燃性のクラス等により変量することができる。なかでも、難燃剤マスターバッチ(I)30乃至85質量部とスチレン系樹脂(II)70乃至15質量部の割合で配合することが好ましい。特に、難燃剤マスターバッチ(I)30乃至60質量部とスチレン系樹脂(II)70乃至40質量部の割合で配合することが好ましい。更に、このスチレン系難燃性樹脂組成物に対して、他の添加剤を配合することができる。
本発明の製造方法で得られるスチレン系難燃性樹脂組成物の難燃性は、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ社のサブジェクト94号(以下、UL−94とも略記する。)の垂直燃焼試験方法に準拠する評価において、V−0であるのが好ましい。
【0029】
また、スチレン系難燃性樹脂組成物を得るのに一般的に使用する添加剤として難燃助剤、着色剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤及び帯電防止剤等を目的に合わせて、そのままの形態で、或いは難燃剤マスターバッチに事前に添加して供給することもできる。
【0030】
特に、スチレン系難燃性樹脂組成物が燃焼した時の溶融滴下防止の目的でポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用する場合、難燃剤マスターバッチ(I)とスチレン系樹脂(II)の合計量100質量部に対し、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を好ましくは0.4質量部以下(但し0は含まず。)、より好ましくは0.1乃至0.3質量部を添加して溶融混合するのが好ましい。この場合、難燃剤マスターバッチ(I)、スチレン系樹脂(II)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを予備混合してから溶融することが好ましい。事前に、難燃剤マスターバッチにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合すると、スチレン系難燃性樹脂組成物を得る際に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の劣化を促進するので好ましくない。
【0031】
本発明のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法で使用する溶融混合の方法としては、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等の方法を採用することが可能であるが、単軸押出機、又は二軸押出機の溶融押出機を使用することが好ましい。溶融押出におけるシリンダー温度は、一般的なスチレン系難燃性樹脂組成物を押し出す際に使用する温度で行なうことができ、特にこだわるものではないが、200乃至250℃が好ましく、210乃至240℃がより好ましい。
【0032】
本発明の難燃剤マスターバッチ(I)とスチレン系樹脂(II)とを溶融押出機に供給する方法としては、タンブラーやVブレンダー等の公知の装置を使用して予備混合したものを供給する方法や、押出機の供給口に両材料を別々に定量的に供給する方法を採用することができる。
【0033】
更に、単軸押出機のスクリューは、最も汎用性の高いフルフライトスクリューを使用することができるが、より混練性の高いダルメージタイプ、ピンタイプ、又はマドックタイプのスクリューを使用することもできる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
以下の実施例において、難燃剤マスターバッチを得るのに使用した(A)スチレン系樹脂、及びスチレン系難燃性樹脂組成物を得るのに使用したスチレン系樹脂(II)としては、下記の特性を有する、(A−1)、(A−2)及び/又は(A−3)を使用した。
(A−1):
ゴム状重合体にシス1、4結合を90モル%以上の比率で含有するハイシスポリブタジエンゴムを使用したゴム変性スチレン系樹脂である。このゴム変性スチレン系樹脂の組成は、マトリックス部分の還元粘度が0.75dl/gであり、ゴム状重合体の含有量が9.3質量%であり、ゴム状重合体のゲル含有量が27.0質量%であり、及びゴム状重合体の体積平均粒子径が2.53μmであり、更にゴム変性スチレン系樹脂中の流動パラフィン含有量が1.9質量%である。
(A−2):
ゴム状重合体にシローシスポリブタジエンゴムを使用したゴム変性スチレン系樹脂である。このゴム変性スチレン系樹脂の組成はマトリックス部分の還元粘度が0.58dl/gであり、並びにゴム状重合体の含有量が9.9質量%であり、ゴム状重合体のゲル含有量が30.5質量%であり、及びゴム状重合体の体積平均粒子径が2.50μmであり、更にゴム変性スチレン系樹脂中の流動パラフィン含有量が2.0質量%である。
(A−3):
還元粘度が0.70dl/gであり、スチレン系樹脂中の流動パラフィン含有量が2.5質量%であるスチレン重合体(GP)を使用した。
また、ゴム変性スチレン系樹脂に添加したスチレン−ブタジエン共重合体(G)には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製、商品名タフプレン315P)を使用した。
【0036】
本発明における、還元粘度、ゲル含有量、ゴム状重合体の含有量及び平均粒子径は以下の方法で測定した。尚、流動パラフィン含有量は仕込み量を示す。
【0037】
還元粘度(ηsp/C):
ゴム変性スチレン系樹脂1gにメチルエチルケトン15mlとアセトン15mlの混合溶媒を加え、温度25℃で2時間振とう溶解した。次いで、遠心分離で不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を取り出し、500mlのメタノールを加えて樹脂分を析出させ、不溶分を濾過乾燥した。同操作で得られた樹脂分をトルエンに溶解してポリマー濃度が0.4%(質量/体積)の試料溶液を調製した。この試料溶液、及び純トルエンを温度30℃の恒温でウベローデ型粘度計により溶液流下秒数を測定して、下式にて算出した。
ηsp/C=(t1/t0−1)/C
t0:純トルエン流下秒数
t1:試料溶液流下秒数
C:ポリマー濃度
【0038】
ゴム状重合体のゲル含有量:
1gのゴム変性スチレン系樹脂組成物をメチルエチルケトン15mlとアセトン15mlの混合溶媒に加え、温度25℃で2時間振とう溶解した。次いで、遠心分離して不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を除去して不溶分を得、温度70℃で15時間程度真空乾燥し、20分間デシケーター中で冷却した後、乾燥した不溶分の質量G(g)を測定して次の式でより求めた。
ゴム状重合体のゲル含有量(質量%)=(G/1)×100
【0039】
ゴム状重合体の含有量:
ゴム変性スチレン系樹脂をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置した。次いで、15質量/体積のヨウ化カリウム溶液と純水50mlを加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から算出した。
【0040】
(B)難燃剤には、(B−1)2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジンである第一工業製薬社製の商品名ピロガードSR245を使用した。また、比較用難燃剤として、(B−2)エチレンビスペンタブロモベンゼンであるアルベマール社製の商品名SAYTEX−8010(以下、S8010と略記する。)を使用した。
【0041】
(C)難燃助剤には、鈴裕化学社製、商品名AT−3CN(三酸化アンチモン)を使用した。
【0042】
(D)タルクには、富士タルク社製の商品名KPタルクを使用した。
【0043】
(E)酸化防止剤には、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン社製、商品名IRGANOX1076)を使用した。
【0044】
(F)カーボンブラックには、カーボンブラック含有量が40質量%である越谷化成社製の商品名RB962Pを使用した。
【0045】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には、三井・デュポンフロロケミカル社製の商品名PTFE31−JRを使用した。これを(H)と略記する。
【0046】
次に、本発明の難燃剤マスターバッチの混合方法を述べる。(A)スチレン系樹脂、(B)難燃剤、(C)難燃助剤、(D)タルク、(E)酸化防止剤、(F)カーボンブラック、及び(G)スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体を表1、表2、表3に示す配合量(質量部)にて、形状別に、ペレット状と粉体状に分けて、それぞれの形状の成分をヘンシェルミキサー(三井三池化工社製、FM20B)にて予備混合した。予備今後物を、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)にペレット状成分と粉体状成分とを別フィード供給してストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。この際、シリンダー温度200℃、供給量50kg/時間とした。
【0047】
なお、上記予備混合時に、ソジウムアルミノシリケートとA型ゼオライトの混合物及びカルシウムステアレートも同時添加した。
【0048】
本発明で検討に使用した難燃マスターバッチの組成物を下記の表1、表2、表3に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
また、上記で得られた難燃剤マスターバッチ(I)、スチレン系樹脂(II)、及び(H)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を表4、表5、表6に示す配合量(質量部)にて、全成分をタンブラーにて予備混合した。予備混合物を、単軸押出機(IKG社製 PMS40−28)及び二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)に供給してストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。この際、二軸押出機はシリンダー温度230℃、供給量30kg/時間とした。また、単軸押出機はシリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpmとした。なお、(H)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)はPTFE純量が配合量となるように添加した。
【0053】
また、(A)スチレン系樹脂、(B)難燃剤、(C)難燃助剤、(D)タルク、(E)酸化防止剤、(F)カーボンブラック、(G)スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、及び(H)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を表7に示す配合量(質量部)にて難燃剤マスターバッチ(I)を使用せずにスチレン系難燃性樹脂組成物を得た。
二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)を使用した場合は、形状がペレット状と粉体状の物を分けて、それぞれの形状成分をヘンシェルミキサー(三井三池化工社製、FM20B)にて予備混合し、別フィード供給してストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。この際、シリンダー温度230℃、供給量30kg/時間とした。
単軸押出機(IKG社製 PMS40−28)を使用した場合は、全成分をタンブラーにて予備混合し、ストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。この際、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpmとした。なお、(H)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)はPTFE純量が配合量となるように添加した。
【0054】
なお、実施例、比較例に示された各種測定は以下の方法により実施した。
【0055】
(1)難燃性の測定
難燃性の測定は、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ社のサブジェクト94号の垂直燃焼試験方法に準拠し、試験片厚さ1.5mmの燃焼性を評価した。評価結果は下記の様に表記した。
NG:V−0でない燃焼性(V−1、V−2、又はHB)を示すもの。
【0056】
(2)シャルピー衝撃強度の測定
シャルピー衝撃強度は、JIS K 7111−1に基づき測定を行った。
測定装置:シャルピー試験機(東洋精機社製)
ノッチタイプ:タイプA
打撃方向:エッジワイズ
測定環境:23℃
【0057】
(3)荷重たわみ温度(HDT)
荷重たわみ温度は、JIS K 7191に基づき測定を行った。
測定装置:No.148−HD−PC−3(安田精機社製)
応力:1.80MPa
支点間距離:64mm
試験片サイズ:長さ80mm 幅10mm 高さ4mm フラットワイズ
【0058】
(4)メルトフローレート(MFR)
メルトフローレート(MFR)は、得られたペレットをJIS K 7210に基づき測定を行った。
試験温度:200℃
試験荷重:49.03N
【0059】
(5)外観
射出成形機(日本製鋼所社製、J100E−P)にて90mm角板(厚み2mm)に成形し、成形品の表面に成形不良(ブツ・フラッシュ等)の有無を観察して外観を評価した。この際、シリンダー温度230℃、金型温度30℃とした。
○:成形品表面の不良(ブツ・フラッシュ)が見られないもの。
×:成形品表面の不良(ブツ・フラッシュ)が見られたもの。
【0060】
各種試験の試験片の作製条件
シャルピー衝撃強度用試験片、及び荷重たわみ温度試験片として、射出成形機(日本製鋼所社製、J100E−P)にて、JIS K 7139に記載のA型試験片(ダンベル)を作製した。成形条件はJIS K 6926−2に準拠して行った。シャルピー衝撃強度用試験片は、該ダンベル片の中央部より切り出し、切削でノッチ(タイプA、r=0.25mm)を入れ、試験に用いた。また、荷重たわみ温度試験片は、該ダンベル片の中央部より切り出し、試験に用いた。
【0061】
燃焼性の評価用試験片は、射出成形機(日本製鋼所社製、J100E−P)にて、127×12.7×1.5mmの燃焼用試験片を成形した。この際、シリンダー温度190℃、金型温度30℃とした。
【0062】
難燃マスターバッチを使用したスチレン系難燃性樹脂組成物の溶融混合方法及びそれらの物性値を以下の表4、表5、表6に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
難燃性マスターバッチを使用しないで単軸押出機で押出したスチレン系難燃性樹脂組成物の評価結果を表7に示す。
【0067】
【表7】
【0068】
上記の実施例にみられるように、本発明の難燃剤マスターバッチを使用し、本発明の製造方法で得られたスチレン系難燃性樹脂組成物は、難燃性、衝撃強度、耐熱性、流動性のバランスが良く、更に外観も良好であることがわかる。
しかし、本発明の要件を満足しない比較例で得られたスチレン系難燃性樹脂組成物は、難燃性、衝撃強度、耐熱性、流動性の何れかに優れることはあっても、その全てに優れていることはないことがわかる。
【0069】
例えば、難燃剤マスターバッチの(A)スチレン系樹脂が規定量より多いと難燃性が劣り(比較例1)、少ないとシャルピー衝撃強度及び耐熱性が低い(比較例2)。また、難燃剤マスターバッチの(B)難燃剤が規定量より多いとシャルピー及び耐熱性が低く(比較例3)、少ないと難燃性に劣りUL94燃焼試験でのV−0レベルが確保できなくなり(比較例4)、難燃剤種をS8010にするとシャルピー、流動性が低い(比較例16)。また、難燃剤マスターバッチの(C)難燃助剤が規定量より多いとUL94燃焼試験でグローイング時間が延びてV−0レベルが確保できなくなり、シャルピーも低く(比較例5)、少ないと難燃性に劣りUL94燃焼試験でのV−0レベルが確保できなくなる(比較例6)。
【0070】
また、難燃剤マスターバッチの(D)タルクが規定量より多いと難燃性に劣りUL94燃焼試験でのV−0レベルが確保できなくなり、シャルピーも低く(比較例7)、少ないと耐熱性が低い(比較例8)。また、難燃剤マスターバッチの(E)酸化防止剤を添加しないとシャルピーが低い(比較例9乃至11)。また、難燃剤マスターバッチが規定量のものを使用しても、難燃剤マスターバッチ配合量が規定量より少ないと難燃性に劣りUL94燃焼試験でのV−0レベルが確保できなくなり(比較例12)、多いと耐熱性が低い(比較例13)。また、難燃剤マスターバッチが規定量のものを使用しても、(H)PTFEが規定量より多いとUL94燃焼試験でグローイング時間が延びてV−0レベルが確保できなくなる(比較例14)。また、難燃剤マスターバッチを使用し、溶融混合は単軸押出機・二軸押出機どちらも同じ物性になり容易に単軸押出機でスチレン系難燃性樹脂組成物を得ることができる(実施例10、11、比較例14、15)。
【0071】
また、難燃剤マスターバッチ(I)を使用せずにスチレン系難燃性樹脂組成物を単軸押出機で溶融混合するとシャルピー、耐熱性、外観が劣る(比較例17乃至19)。難燃剤マスターバッチを使用して得たスチレン系難燃性樹脂組成物は表4、表5の実施例に示したとおり難燃性、衝撃強度、耐熱性、流動性のバランスが良く、更に外観も良好である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の難燃剤マスターバッチは、スチレン系難燃性樹脂組成物の製造に利用できる。