特許第5872583号(P5872583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872583
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】光周波数整流用の方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20160216BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20160216BHJP
   H02M 7/06 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
   H01L31/10 Z
   G01J1/02 R
   !H02M7/06 E
【請求項の数】3
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-544505(P2013-544505)
(86)(22)【出願日】2011年11月22日
(65)【公表番号】特表2014-510389(P2014-510389A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】US2011061843
(87)【国際公開番号】WO2012087482
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年11月19日
(31)【優先権主張番号】12/973,262
(32)【優先日】2010年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513115383
【氏名又は名称】サイテック・アソシエイツ・ホールディングス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ポール・エイチ・カトラー
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0308443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/20
G01J 1/02
H02M 7/06
H01Q 1/00−1/52
IEEE Xplore
CiNii
ACS PUBLICATIONS
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射放射を受信してDC電流に変換するための方法であって、
鋭い縁を備えた末端のチップを有し、幾何学的に非対称なトンネル接合の一部であり、且つ前記入射放射を受信可能なアンテナであって、前記アンテナ上にプラズモン層が積層されるアンテナの適切な実施形態を選択するステップと、
前記入射放射の放射スペクトルを決定するステップと、
前記放射スペクトルが狭帯域であるか広帯域であるかに応じて前記チップの形状及び材質に対する一組の幾何学的パラメータ及び物質パラメータを求めるステップと、
前記放射スペクトルの最高周波数に応答するのに十分小さなギャップ距離を決定するステップであって、前記ギャップ距離を決定するステップにおけるギャップは、前記プラズモン層の末端部によって画された面とコレクタ電極によって画された面とを備える、ステップと、
前記ギャップ距離が放射スペクトルの最高周波数に応答するのに十分小さい時に、前記入射放射による前記アンテナへの光子の吸収により前記アンテナの長手方向に沿ってAC電流を誘起し、続いて幾何学的に非対称なトンネル接合においてAC電圧を誘起するステップと、
誘起されたAC電圧が電界放出用に十分大きいかどうかを計算するステップと、
誘起されたAC電圧が正の正味のDC電流を生成するのに十分大きい時に、幾何学的に非対称なトンネル接合に順方向バイアス及び逆方向バイアスをかけるステップと、
前記正の正味のDC電流を前記コレクタ電極によって収集するステップと、
正の正味のDC電流を外部回路に伝えるステップとを備えた方法。
【請求項2】
前記アンテナがパッチアンテナである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アンテナがウィスカアンテナである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2010年1月4日に出願された米国仮出願第61/335201号の優先権を主張し、その全内容は参照として本願に組み込まれる。
【0002】
[選択図]
図1A
【0003】
本発明は、光周波数整流を行って、赤外線から可視光までの放射をより効率的に収集するための方法に関する。特に、本発明は、アンテナチップの幾何学的非対称性、又はパッチアンテナ等の他の形状の縁に基づいた光周波数整流の方法に関する。
【背景技術】
【0004】
マイクロ波領域におけるパワー伝達及び検出用のレクテナの使用には長い歴史がある。その応用として、長距離パワービーム、信号検出、無線制御システムが挙げられる。マイクロ波パワーの効率的な受信及び整流用の最初の受信デバイスは1960年台前半に開発された。
【0005】
点接触デバイス(つまりウィスカダイオード)は、可視スペクトルの緑色領域までの絶対周波数の測定において使用されていて、従来のMIMダイオードよりも数桁速いフェムト秒オーダでの応答時間を実現している。ウィスカアンテナについてのナノワイヤの幾何学的形状に加えて、パッチアンテナ(例えば、マイクロストリップアンテナ)の使用は、実際のデバイスにおけるよりロバストな安定性を提供する中実及び中空の幾何学的形状(例えば、正方形、矩形、リング等)を拡張させることができてきた。
【0006】
また、パッチアンテナは、アンテナの性能及び出力の増強をもたらすことができる(非特許文献1を参照)。更に、アイダホ国立研究所において、金製のこのようなアンテナアレイがフレキシブル基板上に製造された。平坦な構造はより単純な製造を要する。最近、Gupta及びWillisによって、ナノメートルギャップ接合のアレイを製造することの技術的問題が、原子層堆積(ALD,atomic layer deposition)を用いて解決された。Cu‐真空‐Cuトンネル接合の平坦なアレイが、従来のリソグラフィ法及びこれに続くALDを用いてシリコンウェーハ上に製造されて、略1nmのトンネル接合が得られた。
【0007】
Agチップ、Auチップ及びCuチップを用いたMVMトンネル接合の光照射の最近の3次元量子力学コンピュータシミュレーションは、可視スペクトルのエネルギー緑色領域に対応する略3eVでのこれらの物質における表面プラズモン共鳴による整流及び電流出力の増強を予測している。タングステンやモリブデンやアルミニウム等の下方のアンテナ構造上にこれらの金属の薄層を堆積させても同じ結果が得られる。
【0008】
従来の平坦なMIMダイオードとは異なり、提案されたデバイスにおける整流プロセスは、尖ったナノワイヤ/mCNTチップの幾何学的非対称性のみに(及び/又は主に)よるものであり得る。マイクロストリップ上に形成されたカミソリ状の縁、又は他の形状のパッチアンテナも、整流プロセスに必要な固有の幾何学的非対称を提供することができる。
【0009】
スペクトルの光周波数領域のエネルギーの効率的な収集における主な課題の一つは、赤外線(IR,infrared)から、太陽光エネルギースペクトルの最大部分を有する略1015Hzのスペクトルの可視領域までの整流を行う広帯域デバイスの開発である。現在のシリコンベースのエネルギー変換デバイス(光起電)は、狭帯域デバイスであり、電磁スペクトルのより低いエネルギー領域の収集に限られている。
【0010】
この光周波数整流の方法は、以下の応用を有するがこれらに限られるものではない。光起電(光子エネルギーを電気エネルギーに変換)、太陽光エネルギーを電気に変換する太陽電池(APPARATUS AND SYSTEM FOR A SINGLE ELEMENT SOLAR CELLとの名称で2010年9月21に発行されたPaul H.Cutlerの特許文献1(その全内容は参照として本願に組み込まれる)を参照)、熱又は化学エネルギー、ナノフォトニクス、近接場光学系、医薬及び化学センサを含むIR感知及びイメージング(非特許文献2及び非特許文献3を参照)。更なる応用は、情報及びエネルギー変換の光周波数送信及び受信である。送信される情報の密度はより高い周波数において大きくなるので、これは重要である。実際、密度は、周波数の二乗に比例する。大気中の送信では、周波数が上昇すると、損失が減少する。
【0011】
従って、収集における本質的に重要な側面の一つは、電磁スペクトルの可視領域における光整流を達成する性能である。現状の整流デバイスでは、高速周波数応答はIRに限られている。本発明者等は、光整流の新たなパラダイムを開発しており、長らく求められてきた電磁スペクトルの可視領域の実践的な整流デバイス用の実現性を理論的及び実験的に実証してきた。
【0012】
従来技術は、上述の複数の問題に対処しようとしてきた。例えば、DEVICE FOR CONVERSION OF LIGHT POWER TO ELECTRIC POWERとの名称で1984年4月24日に発行されたAlvin M.Marksの特許文献2は、光パワーを電力に直接変換するためのデバイスを提案している。特許文献2は光子を吸収するために複数のダイポールアンテナを使用しているという点において本願発明と異なる。光子の交流電場用いて、ダイポールアンテナ内の電子を共鳴させて電力を吸収させる。DC電力が、複数のアンテナ及び関連した整流回路から導電性バスバー上に蓄積される。
【0013】
また、FEMTO DIODE AND APPLICATIONSとの名称で1988年1月19日に発行されたMarksの特許文献3は、一端においてMIMダイオードに取り付けられたサブミクロンサイズのダイポールアンテナから成るフェムト秒整流デバイスを開示している。特許文献3のデバイスは、幾何学的形状ではなくて物質の選択に依る従来の平坦なMIMダイオードである。特許文献3のMIM整流デバイスでは、デバイスの応答時間は、物質の選択によって制限され、IRを超えては拡張されない点に留意されたい。
【0014】
更に、ORDERED DIPOLAR LIGHT‐ELECTRIC POWER CONVERTERとの名称で1986年3月4日に発行されたMarksの特許文献4は、光吸収導電性粒子が埋め込まれたシートを備えた光‐電力変換器を教示している。粒子は金属であるか、又は共役炭素鎖等の導電性分子であり得る。特許文献4の電極は、in‐situ(インサイチュ、その場)で形成され、金属に還元された塩を備え、所定のパターンを形成している。
【0015】
従来技術で検討されていないのは、現状のシリコンベースのエネルギー変換デバイス(光起電)はスペクトルの低エネルギー領域に対する収集及び変換に制限された狭帯域デバイスであるという点である。一般的に、従来のレクテナは、ダイポールアンテナと、MIM又はショットキーダイオード等の別個の整流デバイスという二つの別個の素子から成る。従って、収集の本質的に重要な側面の一つは、太陽光スペクトルの可視領域における光整流を達成する性能である。現状の整流デバイスでは、高速周波数応答はIRに限られている。
【0016】
また、従来技術の他の欠点は、従来の平坦なMIMダイオードの制限された周波数応答の問題(寄生キャパシタンス効果によって制限される)である。
【0017】
特許文献1では、入射放射を受信してDC電流に変換するのに必要な効率に大部分対処することができている。本発明は、アンテナチップの幾何学的非対称性、又はパッチアンテナ等の他の形状の縁に基づいて、光起電及び他の応用のための光整流の方法を改善する必要性に対処することによって、特許文献1の成功を拡張するものである。更に、従来の平坦なMIMダイオードの制限された周波数応答の問題を解消するため、点接触ナノワイヤ/mCNTの使用、及び他の縁の鋭いデバイス(パッチアンテナ等)、これら固有の高速応答時間が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第7799988号明細書
【特許文献2】米国特許第4445050号明細書
【特許文献3】米国特許第4720642号明細書
【特許文献4】米国特許第4574161号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】K.R.Carver、J.W.Mink、IEEE Trans.Antennas and Prop、第29巻、第1号、p.2、1981年
【非特許文献2】J.Alda、J.Rico‐Garcia、J.Lopez‐Alonso、G.Boreman、“Optical antennas for nano‐photonic applications”、Nanotechnology、第16巻、pp.S230‐4、2005年
【非特許文献3】Palash Bharadwaj、Brad Deutsch、Lukas Novotny、“Optical Antennas”、Adv.Opt.Phton.、第1巻、p.438−483
【非特許文献4】R.Gupta、B.G.Willis、Appl.Phys.Lett.、第90巻、p.253102、2007年
【非特許文献5】Hung Quang Nguyen、“Experimental and Theoretical Studies of Tunneling Phenomena Using Scanning Tunneling Microscopy and Spectroscopy”、博士学位論文、Bell and Howell Information and Learningから入手可能、1989年
【非特許文献6】A.Mayer、M.S.Chung、B.L.Weiss、N.M.Miskovsky、Paul H.Cutler、“Three−Dimensional Analysis of the Geometrical Rectifying Properties of Metal−Vacuum−Metal Junctions and Extension for Energy Conversion”、Phys.Rev.B、第77巻、p.085411、2008年2月8日
【非特許文献7】Krzysztof Kempa、Jakub Rybczynski、Zhongping Huang、Keith Gregorczyk、Andy Vidan、Brian Kimball、Joel Carlson、Glynda Benham、Yang Wang、Andrzej Herczynski、Zhifeng Ren、“Carbon Nanotubes as Optical Antennae”、Adv.Mater.、第19巻、p.421−426、2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の一側面は、赤外線(IR)から可視スペクトルまでの範囲の放射をDC電流に変換するための効率的な新規装置を提供することである。
【0021】
本発明の他の側面は、ナノワイヤ、他の適切な形状のアンテナ、又は金属型カーボンナノチューブ(mCNT,metallic carbon nanotube)製の単一素子レクテナ(つまり、マイクロ波領域において初めて使用されるアンテナ及び整流ダイオードの組み合わせ)を提供することである。
【0022】
本発明の他の側面は、受信アンテナ及び点接触又は縁の鋭い整流デバイスの両方として同時に機能するレクテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、入射放射を受信してDC電流に変換するための方法及び装置に関する。特に、本発明は、アンテナチップの幾何学的非対称性、又はパッチアンテナ等の他の形状の縁に基づいた光周波数整流の方法に関する。本方法は、末端のチップを有するアンテナの選択で始まる。チップは鋭い縁を有し、アンテナは入射放射を受信することができる。レクテナは、チップによって終端された一つの縁、又は幾何学的に非対称なトンネル接合の一部である縁の鋭い構造を備えた受信アンテナ(例えば、パッチアンテナやナノワイヤやmCNT)から成る。
【0024】
本発明の一実施形態によると、入射放射を受信してDC電流に変換するための方法及び装置が提供される。本方法は複数のステップを備え、末端のチップを有するアンテナに対する適切な実施形態を選択するステップで開始する。チップは鋭い縁を有し、そのアンテナは入射放射を受信することができる。アンテナは、適切な実施形態を形成するように積層可能である。
【0025】
積層ステップは、基板を選択するステップと、第一のコーティングが基板の近位縁からその長手方向に沿って部分的に延在するように第一のコーティングを基板上に積層する第一の積層ステップとを備える。第一の電極が、第一のコーティングの近位縁から第一のコーティングの長手方向に沿って部分的に延在するように第一のコーティング上に積層される。次に、金属アンテナが、第一の電極の遠位縁から第一のコーティングの遠位縁を超えて延在するように第一のコーティング上に積層される。アンテナ用の金属は、タングステン、モリブデン、ニッケル、金、アルミニウム、銅、及び銀からなる群から選択される。
【0026】
次に、金、銅、銀、又は所望の特性を備えた他の適切な物質製のプラズモン層を、第一の電極の遠位縁から金属アンテナの遠位縁を超えて延在し、且つ金属アンテナを覆うようにその遠位縁において下方に延在するように、金属アンテナの上に加える。プラズモン層及び第一のコーティングの末端部によって一方の側が区切られ、第二の電極及び第二のコーティングによって他方の側が区切られたギャップが形成される。第二の電極は第二のコーティング上に積層されて、第二のコーティング自体は基板上に積層される。
【0027】
一組のAC電流をアンテナの長手方向に沿って誘起する。本方法は、結果として誘起されたAC電圧が電界放出用に十分大きいかどうかを計算しなければならない。電圧が十分に大きい場合、アンテナチップにおける幾何学的非対称性に基づいて、順方向バイアス及び逆方向バイアスをかける。そして、正の正味のDC電流が外部回路に向けられる。
【0028】
本発明の上記及び他の側面、特徴及び利点は、同様の参照番号が同じ要素を指称している添付図面を参照して以下の説明を読むことで明らかとなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A】トンネル接合の非対称性を提供するように構成されたレクテナの斜視図であり、入射放射と共に、点接触ナノワイヤ/mCNT接合(又は図1Bにより明確に示される縁の鋭いパッチアンテナ)が示されている。
図1B】トンネル接合の非対称性を提供するように構成されたレクテナの斜視図であり、縁の鋭いパッチアンテナ接合が入射放射と共に示されている。
図2A】EM放射がアンテナに入射する本発明の方法のフローチャートである。
図2B図2Aのフローチャートの続きである。
図2C】順方向バイアスの下での本発明の例示的な実施形態のトンネル接合の図を示す。
図2D】逆方向バイアスの下での本発明の例示的な実施形態のトンネル接合の図を示す。
図2E】本発明の例示的な実施形態の点接触接合を電気力線と共に示す。
図3】パッチアンテナを用いた図1のレクテナの電極及びコレクタ電極のアセンブリのブロック図である。
図4】パッチアンテナを用いた図1のレクテナの電極から電極までの流れのブロック図である。
図5】パッチアンテナを用いた本発明の積層基板を例示するアンテナチップの側面図である。
図6】入射波長が点接触接合に当たる際の入射波長の影響の図であり、図面を単純化するため、一つのナノワイヤ/mCNTのみが示されている。
図7】整流方法の使用によるアンテナの先端における光エネルギーの変換の修正回路図である。
図8】本発明を用いてアンテナにおいて捕獲された入射放射の修正関係図であり、複数のナノワイヤ/mCNTと外部負荷と共に示されている。
図9】アンテナチップ‐サンプルの距離と、チップにおいて発生した整流電流との間の関係を示す点分散グラフである。
図10】整流比に対するチップ半径の影響のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面に示される本発明の複数の実施形態について詳細に説明する。可能であれば、同じ又は同様の参照番号を図面において用いて、その説明は同じ又は同様の部分又はステップを指称するものである。図面は単純化されていて正確に縮尺通りではない。簡単のため及び明確性のためのみにおいて、頂部、底部、上、下、上方、下方等の方向を示す用語を図面において使用する。こうした又は同様の方向を示す用語は、本発明の範囲を何ら限定するものではない。“接続”、“結合”及び屈折形態論に関する同様の用語は、必ずしも直接的な接続を指称するものではなく、中間素子又はデバイスを介した接続も含むものである。
【0031】
まず、図1A及び図1Bを参照すると、本発明を支持可能なアンテナが示されている。本発明では、単一素子が受信アンテナ及び整流デバイスの両方として機能し、その整流デバイスは、電磁スペクトルの可視領域の複数の部分内に応答時間を有することが実証されている。図1Aでは、この点接触状デバイスは、平坦な基板上のナノワイヤ/mCNTから成る(図6及び図8を参照)。本発明は、こうした点接触状デバイスの波長に依存したサイズの垂直アレイを利用する。提案される点接触デバイスでは、ナノワイヤ又はmCNTが、収集電極を備えたMVM又はMIM接合障壁を形成する。障壁を通り抜ける電荷輸送はトンネリングによって生じる。図1Bでは、レクテナは、整流トンネル接合を備えた縁の鋭いパッチアンテナである。
【0032】
図1A及び図1Bに関して、レクテナデバイス140は、複数のナノワイヤ/mCNT190を有する。整流されたDC電流を利用及び/又は貯蔵するため、外部負荷196がレクテナ140に接続される。
【0033】
入射放射180からの光子がナノワイヤ/mCNT190に到達すると、光子が吸収される。赤外及び光学領域では、点接触ナノワイヤ/mCNT190の長さが入射放射180よりも数波長大きく(略1〜10波長のオーダで大きい)、ナノワイヤ/mCNTが適切な長さ(入射放射の波長の四分の一等)であると、ナノワイヤ/mCNT190が効率的なアンテナとして機能する。
【0034】
ダイオードアンテナの長さ、導電率、光反射率及び負荷インピーダンスの適切な選択を用いて、高周波ダイオードの受信性能を改善して、パワー吸収、つまりは電流放出強度、又はこれに対応するレクテナ140の出力を最適化することができる。
【0035】
ナノワイヤ/mCNT190によって吸収されたエネルギーは、電荷キャリアをナノワイヤ/mCNT190の鋭い端に向けて移動させて、この電荷が、ナノワイヤ/mCNT190内のAC電圧を設定する。点接触接合188の幾何学的非対称性は、トンネル接合を通り抜けるAC電流の整流を生じさせる。電流が整流されると、コレクタ電極198の透明導電層が整流されたDC電流を収集する。コレクタ電極198から、DC電流は、利用可能なエネルギーを使用及び/又は貯蔵するための外部負荷196に結合される。このようにして、金属ナノワイヤ/mCNT190が、放射を吸収する受信アンテナとして機能して、ナノワイヤ/mCNT190内に交流電圧を発生させて、その交流電圧は、点接触接合188において整流されて、DC電圧を生じさせる。
【0036】
図2Aは、EM放射がアンテナに入射する本発明の方法のフローチャートである。
【0037】
本方法は、可視放射の整流を開始するステップ200で開始する。ステップ200から、本方法は、入射放射をレクテナに向けるステップ202に進む。レクテナは、受信アンテナ(例えば、その三つの主寸法によって特徴付けられるパッチアンテナ)で構成され、その受信アンテナは、アンテナによって収集される放射用の幾何学的に非対称な金属真空/金属接合(ギャップ距離sを有する)である縁の鋭い構造又はチップによって終端された一つの縁を有する。
【0038】
ステップ204において、パッチアンテナ、ウィスカアンテナ、縁の鋭いコーティング(ダイヤモンド、BN、GaN、AlN、AlGaN、Cs等)を備えたレクテナ等の適切な実施形態の選択が行われる。コーティングは順方向トンネル障壁の大きさを減少させて電子放出を増強する。ウィスカアンテナで採用されるナノワイヤの幾何学的形状に加えて、他の実施形態はパッチアンテナを用い、IR及びより高い周波数において動作し、拡張された中実及び中空の幾何学的形状(例えば、正方形、矩形、n角形等)を有することができる。こうしたレクテナデバイスはよりロバストな安定性を提供する。
【0039】
更に、パッチアンテナは、アンテナの動作特性及び出力の増強をもたらす。アイダホ国立研究所において、このような金製のアンテナアレイがフレキシブル基板上に製造された。最近、ナノメートルギャップ接合のアレイを製造することの技術的問題が、原子層堆積(ALD)を用いることによって解決された。Cu‐真空‐Cuトンネル接合の平坦なアレイが、従来のリソグラフィ法及びこれに続くALDを用いてシリコンウェーハ上に製造されて、略1nmのトンネル接合が得られた(非特許文献4を参照)。
【0040】
ステップ204から、本方法は、ステップ208における質問に進む前にアンテナを確立するステップ206に進む。
【0041】
ステップ208において、本方法は、放射スペクトルが狭いかどうかについて質問する。質問に対する回答が“YES”である場合、本方法は、幾何学的パラメータを共鳴に一致させてピーク波長を求めるステップ212に進む。ステップ212から、本方法は、ステップ214に進む。しかしながら、質問に対する回答が“NO”である場合、本方法は、ステップ214に進む前に、幾何学的パラメータをエネルギー吸収及びエネルギー密度に基づかせるステップ210に進む。
【0042】
ステップ214において、ギャップを、入射放射が示すスペクトルの最高周波数に応答するのに十分小さくする。場の反転前に電子が障壁を通り抜けるのにトンネル時間が十分になるように、ギャップ距離が設計される。ナノワイヤ/mCNT及び他の縁の鋭い幾何学的形状のデバイスは、固有の高速応答時間(最大1フェムト秒)を有する。レクテナデバイスは、こうしたレクテナの波長に依存したサイズのアレイを用いる。レクテナデバイスにおいて、ナノワイヤ/mCNT又は他の実施形態は、収集電極を備えた点接触又は縁の鋭いMVM又はMIM接合障壁を形成する。障壁を通り抜ける電荷輸送はトンネリングによるものである。寄生キャパシタンス効果によって制限される従来の平坦なMIMダイオードの周波数応答の問題が、このように面積の減少した点接触ナノワイヤ/mCNT、又は縁の鋭いデバイスの使用によって解消される。
【0043】
ステップ214から、本方法は、アンテナの長手方向に沿ってAC電流を誘起するステップ216に進む。本方法は、経路Aに沿って進み、図2Bに示されるようにステップ218へと続く。
【0044】
図2Bを参照すると、図2Aのフローチャートの続きが示されていて、経路Aがステップ218に進む。ステップ218において、AC電流は、幾何学的に非対称なトンネル接合の頂部又は縁において振動電荷を発生させて、ステップ220において、チップ又は縁の制約された幾何学的形状による場の増強をもたらす。ステップ222において、トンネル接合内の振動電荷は、ギャップにわたるAC電圧を誘起する。
【0045】
本方法は、ステップ222から、誘起場が電界放出用に十分大きいかどうかを質問するステップ224に進む。質問に対する回答が“NO”である場合、経路Bに沿って図2Aに示されるようにステップ204に進む前に、ステップ226において実施形態が修正される。しかしながら、質問に対する回答が“YES”である場合、本方法は、幾何学的非対称性によって、整流をもたらす順方向及び逆方向バイアス用にポテンシャル障壁間の差が存在するステップ228に進む。
【0046】
ステップ230から、本方法は、バイアスが順方向であるか逆方向であるかに応じてステップ232又はステップ234のいずれかに進む前に、ステップ230において“バイアス参照”を行う。ステップ230におけるバイアス参照は、後述の図2C図2B及び図2Dに見て取ることができる。
【0047】
ステップ232において、順方向バイアスは、対電極に対して突出したチップ又は縁における場の増強をもたらし、均一場の場合と比較して凹状の障壁をもたらす。ステップ234において、逆方向バイアスは、チップにおける場の幾何学的に必要とされる落ち込みをもたらし、これは、均一場の場合と比較して凸状の障壁をもたらす。
【0048】
平坦な幾何学的形状は1の整流比を有する。ステップ232において、順方向バイアスは、凹状のポテンシャル障壁をもたらす一方、ステップ234において、ポテンシャル障壁は凸状であり、順方向及び逆方向のトンネル電流における非対称性、つまりは1よりも大きな整流比をもたらす。勿論、整流プロセスは、温度又は物質の非対称性、他の幾何学的要因によっても増強され得る。
【0049】
ステップ232及びステップ234から、本方法は、順方向電流が逆方向電流を超えて、正味のDC電流及び電力が外部回路に伝えられるステップ236に進む。本方法は、ステップ238において終了する。
【0050】
ナノワイヤ/mCNT点接触ダイオード140における整流は、ダイオード構造の幾何学的非対称性並びに非類似の物質の使用に起因している。この幾何学的非対称性は、図2C及び図2Dに示されていて、印加電気バイアスに対して、順方向及び逆方向のバイアスは等しくない(同一の金属に対しても)。何故ならば、幾何学的に誘起された非対称なトンネル障壁が、非対称な順方向及び逆方向トンネル電流をもたらすからである。図2C及び図2Dに示されるように、順方向バイアスに対して、凹状のポテンシャル障壁32は、縁34とベース30との間において逆方向バイアスの凸状のポテンシャル障壁36と対称ではない。この整流は、縁34及びベース30の物質の非対称性を提供することによって、また、縁の半径や、縁とベース(アノード)との間の間隔等の接合の他の物理的パラメータを変更することによって、更に増強され得る。これは、接合内の真空間隔の原子スケールでの制御を有するまさに点接触ダイオードであるSTMのI‐V特性を測定することによって実験的に確かめられる。
【0051】
図2Eは、ナノワイヤ/mCNT40(鋭い縁42を有する)と金属電極46との間に配置された絶縁/真空薄層48を有する点接触接合を示す。破線44は、点接触接合内の電場を表す。この構造は、ナノワイヤ/mCNTの長手方向の沿った入射放射誘起表面電流の減衰の小さな伝播を可能にする。吸収された太陽光放射によって誘起された表面電荷は縁42に蓄積する。この電荷分布が、縁42と金属電極層46(つまり、アノード又は透明導電層)との間のACバイアス電圧を設定する。
【0052】
図3を参照すると、アンテナ56の電極及びコレクタ電極のアセンブリのブロック図が示されている。この点接触状デバイスは、平坦な基板上に水平に配向したナノワイヤ/mCNT又はパッチアンテナから成る。本発明は、こうした点接触状デバイスの水平に配向したナノワイヤ/mCNT又は波長に依存したサイズのパッチアンテナの形状を利用する。提案される点接触デバイスでは、パッチアンテナ又はナノワイヤ若しくはmCNTは、収集電極60としてMVM又はMIM接合障壁を形成する。障壁を通り抜ける電荷輸送は、62で示される接合距離を有する整流トンネル接合58におけるトンネリングによって生じる。
【0053】
一組のアンテナ56は、電極50によって固定され、基板Si52の上のSiO54の上に堆積されて、所定の波長の放射64を有する。アンテナ56の幅66は、略50〜300nmの範囲内であり、54における基板上のSiOは、略20〜100nmの幅を有する。
【0054】
図4は、図3のアンテナ56の電極から電極までの流れのブロック図である。電極82は、基板80上に積層されて、プラズモン層でコーティングされた金属アンテナ84に接続する。障壁を通り抜ける電荷輸送は収集電極88に向けられる。
【0055】
図3及び図4の斜視図の一変形例として、図5は、アンテナチップの側面図であり、本発明の積層基板を示す。電極108は、基板100のSiOコーティング106上に積層され、プラズモン層110でコーティングされた金属アンテナ114に隣接する。接合ギャップ112は、プラズモン層110とコレクタ電極104との間に存在する。障壁を通り抜ける電荷輸送は、基板100のSiOコーティング102の上に位置する収集電極104に向けられる。
【0056】
図6を参照すると、透明カバー層128を介して入射放射130を受信する高周波整流デバイス1が示されている。透明カバー層128は、少なくとも一つのナノワイヤ/mCNTベースの高周波ダイオード140の上に位置する。ナノワイヤ/mCNTベースの高周波ダイオード140は、ナノワイヤ/mCNT整流アンテナ132を含み(平坦なMIM又はMVMダイオードデバイスの代わりに)、そのナノワイヤ/mCNT整流アンテナ132は、基板120と接触して積層された金属電極ベース122上に支持される。
【0057】
ナノワイヤ/mCNTは、一方の側において金属電極126に近接していて(略1〜10ナノメートルのオーダ)、整流コンタクト134を形成する。金属電極層126は、透明導電層を含み、インジウム錫酸化物又は他の適切な透明導体製であり得る。絶縁薄層124が、金属電極層126とナノワイヤ/mCNT132との間に存在し、適切な電気絶縁層(真空層を含む)製であり得る。接触領域134におけるナノワイヤ/mCNT132の端部は、ナノワイヤ/mCNT132の鋭い縁であり、絶縁層124と共に点接触接合134を形成する。
【0058】
他の例示的な実施形態では、鋭い縁は、ニードル状のチップであり得る。更に他の例示的な実施形態では、鋭い縁はカミソリ状の縁であり得る。また、更に他の例示的な実施形態では、鋭い縁は、シリンダーの上端等の円形であり得る。レクテナの鋭い縁は、ダイヤモンド、BN、GaN、AlN、AlGaN、Cs等の物質でコーティング可能である。こうしたコーティングは順方向トンネル障壁の大きさを減少させ電子放出を増強する。
【0059】
隣接するナノワイヤ/mCNT132の間隔は、入射放射の長さの略2倍又は3倍のオーダであり得て、実際には略300〜2000ナノメートルであるが、実行可能な収集効率を保証するため、分離距離は、略数百ナノメートルのオーダよりも大きくてはいけないと考えられる。
【0060】
次に図7を参照すると、整流方法の使用によるアンテナ154のチップにおける光エネルギーの変換の修正回路図が示されている。チップと基板150との間の接触領域152を可能な限り小さくして(略50〜200nmのオーダ)、また、縁に対して低抵抗金属(タングステン、モリブデン、ニッケル、金、銀が挙げられるがこれらに限定されるものではない)を用いることによって、略100〜1000THzのオーダの周波数に対応する光学領域内の応答時間を有する点接触ダイオード整流器が得られる。ナノワイヤ/mCNT点接触ダイオード140内の整流は、ダイオード構造の幾何学的非対称性並びに非類似の物質の使用に起因するものであり得る。
【0061】
Nguyen等は、金属ウィスカダイオードに対する入射放射の整流について研究した。Nguyen等の実験では、IR照射されたチップから整流されたDC電流が得られており、特筆すべきものである。後述のように、この実験は、最初の原理の証明である。
【0062】
1989年のこの実験(図7を参照)によって、IR放射で照射された際のSTM MVM接合障壁を通り抜ける有効トンネリング又は透過時間が求められた。この実験では、λlaser=1.06μmに対して、チップとコレクタとの間隔の関数として、略1nAの整流されたDC電流が測定された。この実験結果は、適切なトンネルギャップ距離dに対するIR周波数の整流を実証している。平均トンネル速度がフェルミ速度(v)であると仮定すると、νcutoff=v/dとなる。この分析は、1nmのギャップが、UV近くまでの放射を整流することができることを予測している。
【0063】
サンプル保持ゲート160が、フィードバック回路とSTM接合との間に配置され、そのフィードバック回路は、チップとサンプルの間隔を制御する164及び166から成る。また、トンネル電流は、12ビットのアナログ・デジタル変換器(ADC,analog‐to‐digital converter)158を介してコンピュータによって自動的に記録される。測定は二段階プロセスで行われた。初期又はサンプル段階において、アンテナ154と基板150との間の印加バイアスと、フィードバック回路内の参照電流とを用いて、チップとサンプルの間隔sを設定した。162は回路接合である。
【0064】
図7を参照すると、場の反転の前に電子が障壁を通り抜けるのに十分なトンネル時間となるように、ギャップ距離が設計される。ナノワイヤ/mCNT190、他の縁の鋭い幾何学的形状のデバイスは、固有の高速応答時間(最大1フェムト秒)を有する。166におけるAC電流は、アンテナの長手方向に沿って誘起され、ゲート156を通過した後に、幾何学的に非対称なトンネル接合の頂部又は縁に振動電荷を発生させる。トンネル接合内の振動電荷は、ギャップにわたるAC電圧を誘起する。幾何学的非対称によって、順方向及び逆方向バイアスに対するポテンシャル障壁間に差ができて、整流をもたらす。
【0065】
次に図8を参照すると、本発明のレクテナデバイス140が、複数のナノワイヤ/mCNT190を有するものとして示されている。更に、図8は、整流されたDC電流を利用及び/又は貯蔵するためにレクテナ140に接続された外部負荷196を示す。複数のナノワイヤ/mCNTは、複数のパッチアンテナに置換可能である。
【0066】
図6及び図8において、入射放射130からの光子がナノワイヤ/mCNT132に到達すると、ナノワイヤ/mCNT132が光子を吸収する。赤外線領域及び光学領域においては、点接触ナノワイヤ/mCNT132の長さが入射放射130よりも数波長分大きく(略1〜10波長分大きいオーダ)、ナノワイヤ/mCNTが入射放射の波長の1/4等の適切な長さに等しいと、ナノワイヤ/mCNT132は効率的なアンテナとして機能する。
【0067】
ダイオードのアンテナ長さ、導電率、光反射率、及び負荷インピーダンスの適切な選択を用いて、高周波ダイオードの受信性能を改善して、パワー吸収、つまりは電流放出強度、又はこれに対応するレクテナ140の出力を最適化することができる。例示的な実施形態では、ナノワイヤ190の長さは、入射放射180の波長の1/4である。
【0068】
ナノワイヤ/mCNT190によって吸収されたエネルギーは、電荷キャリアを、ナノワイヤ/mCNT190の鋭い縁に向けて移動させて、この電荷が、ナノワイヤ/mCNT190内のAC電圧を設定する。後述のように、点接触接合134の幾何学的非対称性は、トンネル接合134を通り抜けるAC電流の整流を生じさせる。電流が整流されると、透明導電層184が、整流されたDC電流を収集する。この透明導電層184(又はアノード)から、DC電流が外部負荷196に結合されて、利用可能なエネルギーを使用及び/又は貯蔵する。このようにして、金属ナノワイヤ/mCNTが放射を吸収する受信アンテナとして機能して、ナノワイヤ/mCNT内に交流電圧を発生させて、これが点接触接合188において整流されて、透明導電層184上にDC電圧を発生させる。
【0069】
金属ウィスカアンテナに基づいたトンネルダイオードは非常に高い周波数応答を有することが示されている(非特許文献5を参照)。この高周波応答は、標準的な平坦なMIMダイオードのより低い周波数応答と比較して優れていると考えられる。従って、こうしたタイプのものが、本発明の高周波光整流デバイスにおける使用のために適合される。
【0070】
標準的なレクテナとは異なり、整流プロセスは、鋭いCNT/ナノワイヤの縁の幾何学的非対称性のみによる又は主にこれによるものであり得る。整流プロセスは、非特許文献6(参照により本願に組み込まれる)で議論されているように、物質及び温度の非対称性によっても増強可能である。
【0071】
ナノワイヤ/mCNTベースのレクテナ140の効率の一要因は、寄生キャパシタンスを最少化することによってナノワイヤ/mCNT190から誘起電流を生じさせる性能である。これは、トンネル接合134を通り抜けるAC電流の整流を生じさせる点接触接合134によって達成可能である。ナノワイヤ/mCNT190の接触領域は非常に小さくて、略50〜200nmのオーダである。光周波数領域における周波数応答は、平坦なMIMダイオードと比較して二桁のオーダで改善され、デバイスが、入射放射180から吸収された電磁波をDC電流に変換することができる。
【0072】
非特許文献7には、略1〜20ナノメートルのオーダの半径を有して、略1〜10マイクロメートルのオーダの長さを有する多層CNTが、光学アンテナの特性を有することが示されている。
【0073】
非特許文献6では、同様のサイズのナノワイヤが、光学領域におけるアンテナ及び整流器の特性を示すことが予測されている。
【0074】
図9は、アンテナチップ‐サンプル距離とチップに発生した整流電流との間の関係を示す点分散グラフである。このグラフは、多様なチップ‐アノード間隔に対する整流の実験結果を示し、制限的な周波数応答を決定している(非特許文献5を参照)。
【0075】
図10は、整流比に対するチップ半径の効果のグラフである(非特許文献5を参照)。計算は、2nmの分離に対して、参照用に含まれるρ=∞つまり平坦な接合(実線)、(b)ρ=10nm(点線)、(c)ρ=2nm(破線)、(d)ρ=1nm(一点鎖線)、(e)ρ=0.5nm(二点鎖線)に対して行われた。
【0076】
次に、図11を参照すると、入射放射と共に点接触ナノワイヤ/CNT(m)整流デバイスの概略図が示されていて、図12は、入射放射と点接触又は縁の鋭いパッチアンテナ199の概略図である。
【0077】
図11及び図12を参照すると、レクテナデバイス140は複数のナノワイヤ/mCNT190を有する。整流されたDC電流の利用及び/又は貯蔵のために、外部負荷196がレクテナ140に接続される。
【0078】
入射放射180からの光子がナノワイヤ/mCNT190に到達すると、ナノワイヤ/mCNT190が光子を吸収する。赤外及び光学領域では、点接触ナノワイヤ/mCNT190の長さが入射放射180よりも数波長大きく(略1〜10波長のオーダで大きい)、ナノワイヤ/mCNTが適切な長さ(入射放射の波長の四分の一等)であると、ナノワイヤ/mCNT190が効率的なアンテナとして機能する。
【0079】
ダイオードアンテナの長さ、導電率、光反射率及び負荷インピーダンスの適切な選択を用いて、高周波ダイオードの受信性能を改善して、パワー吸収、つまりは電流放出強度、又はこれに対応するレクテナ140の出力を最適化することができる。
【0080】
ナノワイヤ/mCNT190によって吸収されたエネルギーは、電荷キャリアをナノワイヤ/mCNT190の鋭い端に向けて移動させて、この電荷が、ナノワイヤ/mCNT190内のAC電圧を設定する。点接触接合188の幾何学的非対称性は、トンネル接合を通り抜けるAC電流の整流を生じさせる。電流が整流されると、コレクタ電極198の透明導電層が整流されたDC電流を収集する。コレクタ電極198から、DC電流は、利用可能なエネルギーを使用及び/又は貯蔵するための外部負荷196に結合される。このようにして、金属ナノワイヤ/mCNT190が、放射を吸収する受信アンテナとして機能して、ナノワイヤ/mCNT190内に交流電圧を発生させて、その交流電圧は、点接触接合188において整流されて、DC電圧を生じさせる。
【0081】
特許請求の範囲において、ミーンズ又はステップ・プラス・ファンクションの記載は、請求項に記載された機能を行うものとして本願で開示又は示唆された構造、構造的等価物、等価構造をカバーするものである。従って、例えば、クギは木製部品とシリンダー状表面との間の摩擦に因るものであり、ネジの螺旋状表面は木製部品に積極的に係合するものであり、ボルトのヘッド及びナットは木製部品を両側から圧縮するものであるという点において、釘、ネジ、ボルトは構造的等価物ではないかもしれないが、木製部品を固定するという点において、当業者には、クギ、ネジ、ボルトが等価構造であると容易に理解されるものである。
【0082】
添付図面を参照して、本発明の少なくとも一つの好ましい実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの正確な実施形態に限定されるものではなく、多様な変更、修正及び適合が、添付の特許請求の範囲に定められるような本発明の範囲又は精神から逸脱せずに、当業者によって実現され得る点を理解されたい。
【符号の説明】
【0083】
140 レクテナ
180 入射放射
188 点接触接合
190 ナノワイヤ、ナノチューブ
196 外部負荷
198 コレクタ電極
199 パッチアンテナ
図2E
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10