(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有効長1000m以上のポリエステル系熱収縮性フィルムをコアに巻き取ってなるフィルムロールであって、前記フィルムロールの巻き出し部表面を、落球式硬さ試験機を用いて前記熱収縮性フィルムの幅方向に20mm間隔で測定した際の平均硬さが300〜650の範囲であり、該平均硬さのばらつきが±200以内であり、前記巻き出し部から前記フィルムを500m単位で巻き出した後の前記平均硬さの増加率が0.25〜5.0%の範囲であり、かつ前記熱収縮性フィルムを80℃温水中に10秒間浸漬した後の主収縮方向の収縮率が少なくとも20%であり、前記主収縮方向がフィルムロールの幅方向であることを特徴とするポリエステル系熱収縮性フィルムロール。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス瓶やポリエチレンテレフタレートボトル(ペットボトル)に使用される収縮ラベルや食品包装用の収縮フィルムとしては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、またはポリエステルからなる延伸フィルムが主に使用されてきた。
【0003】
これらの熱収縮性フィルムは主としてテンター延伸法によりマスターロールを製膜し、その後、任意の幅でスリットしながらロール状に巻き取られ、ロールの形態で主として幅方向に1から4面のグラビア印刷にかけられる。その後、各面の幅にスリットし、ロール状に巻き取られた後、チューブ状に溶剤接着等の手法により、製袋され、またロール状に巻き取られる(ラベルロール)。
【0004】
製袋品は、その後、被覆物の長さにカットされた後、被覆物に被され、蒸気や熱風を吹き付けて収縮させる収縮トンネルを通過することにより、熱収縮させて被覆物に密着させる。
【0005】
近年の特徴としては、商品の多品種小ロット化に伴い、多数の版を作成せず色数も少なくでき、コスト的に有利な高精度写真印刷が増えてきた。また一方で、高度な意匠性を求めた6色を超えるグラビア印刷、グラデーション印刷等の高精度印刷も増えてきている。
【0006】
図5は、収縮フィルム印刷におけるグラビア印刷の工程を概略的に示す図である。
図5においては、図面左側に表されている巻き出しロール51から巻き出されたフィルム100は図面中央に示される、例えば6色のグラビア多色印刷機520(図面では、6色のうち、2色を印刷する部位が示され、他の4色を印刷する部位の図示は省略されている。)を経て、図面右側に表された巻き取りロール518に巻き取られる。グラビア印刷機520は、下部に配置されたインクリザーバ52a、52b中に例えば、赤、青のインクが貯められている。インクリザーバ52a、52bには、それぞれのインクに浸るようにインク巻き上げロール53a、53bが設けられている。それぞれその表面に印刷模様、文字が彫刻された版ロール53a、53bが配置され、さらにそれらの上方には、これら版ロールに接するように圧胴ロール55a、55bが配置されている。印刷機520の上部には、各インクリザーバ52a、52bに対応して、それぞれ3本の調整ロール511、512、513;514、515、516が配置されている。巻き出しロール51から水平方向に巻き出されたフィルム100は、方向変換ロール510を経て垂直上方の調整ロール511に至る。その後さらに2つの調整ロール512、513を経て、接触ロール55aに至る。ここでは、6色印刷機520の第1色目である赤のインクが貯留されたインクリザーバ52aに下部が浸漬されている版ロール53aが圧胴ロール55aと同周速に回転している。ロール53aはインクリザーバ52a内の赤インクをそのロール面に付着させて巻き上げ、巻き上げられた赤インクはロール側部に配置されたドクターブレード56aにより、ロール表面において彫刻以外の部分は掻き落とされる。版ロール53a表面の赤インクは、圧胴ロール55aに巻きつけられて走行しているフィルム100表面に転写され、当該フィルム100上に赤インクの印刷が完了する。続いてフィルム100は圧胴ロール55aから40〜70℃に調整された乾燥ゾーン530を経た後、調整ロール514、515、516を経て、6色印刷機520の第2色目である青インクの転写を受ける圧胴ロール55bに至る。青インクリザーバ52b、版ロール53bの構成および作用は赤インクの部位におけるものと同様である。その後の4色についても同様の構成となっており、フィルム100は最終的に
図5の右側に示される方向転換ロール517により下向きから水平方向に向きを変えられて、巻き取りロール518により巻き取られる。このようにしてフィルム100に対する6色インクによる多色印刷が行われる。
【0007】
かかる多色印刷工程においては、各色の版ロールがフィルム100の所定位置に来るように多くのロール間を走行するフィルム100の位置を調整することが重要である。フィルム100には
図6に示すように、所定ピッチごとに幅方向両端部あるいは片端部に、一対のマーク61、61(「トンボ」といわれることもある。)が記されている。
【0008】
例えば、青インク印刷の部位では、走行するフィルム100が、圧胴ロール55aを通過する前後にセンサ57a、57aが配置されている。センサ57a、57aは、走行しているフィルム100に所定ピッチごとに記されているマーク61、61の位置を感知し不図示のコントローラにその情報を送信する。コントローラは、色ごとに配設されたセンサによる情報を得て、フィードバックあるいはフィードフォワードの制御により、6色の印刷がフィルム100の表面上に揃うように、調整ロール511、512、513;514、515、516を上下させ、あるいは傾けるよう動作指令を発する。
【0009】
この制御機構は、金属圧延における自動板圧調整(AGC)、あるいは自動平坦度調整(AFC)におけるものと類似するが、金属圧延板と比べ、樹脂フィルムは剛性の点で劣るため、制御の結果が系に反映されるまで時間がかかる。また、印刷が高速であるほど、制御遅れが出て、正確な制御を行うことがより困難なものとなる。結果として、ピッチズレが修正されないまま、別の色の印刷が重ねられることになる。ここでの「ピッチズレ」とは、
図6において、マーク61が本来あるべき位置から紙面左右方向、あるいは紙面上下方向に変位することである。なお、紙面厚み方向のズレは、ロール間で発生するバタツキであり、ロール位置において修正されるが、ロール間においては、系に振動を与える要因となり、共振を伴うような場合、印刷の制御を不安定なものにさせる。
【0010】
印刷時の縦横のピッチズレ(各版ロールの見当ズレ)が発生すると、印刷物自体がぼやけたり、グラデーションの諧調が段になったりして鮮明性が損なわれ、商品価値が損なわれる。また、印刷のピッチズレが発生すると、発生後数10mの区間はピッチズレが続き、その部分は意匠性が劣るため、製品として使用できないといった問題がある。
【0011】
また上記のような不良が発生した場合、その区間を人手により取り除かねばならず、工数が増大する。また上記の作業は不良部を取り除いた後でフィルムを継ぐためラベルロールに継ぎ目が発生する。ラベルロールの継ぎ目の入った最終製品は取り除く必要があるので、最終製品の歩留まりも低下する。さらに継ぎ目部がラベル装着機内にてツマリを起こすことがあり、最終製品の生産トラブルにつながることも問題視されていた。
【0012】
特に、上記のような状況は製膜、スリット、巻き上げ後、半年から1年にわたる常温長期保管(20℃〜25℃にて保管。なお、以下、本明細書において「A〜B」と表記(A、Bは数値である。)するときは、A以上、かつB以下であることを表すものとする。)を行ったフィルムロールにて発生頻度が高く問題視されていた。また、熱収縮性フィルムは80℃〜200℃程度の熱をかけることで収縮を起こす特性を持つために、わずかではあるが常温の領域でも長時間に亘る保管時には自然収縮を起こす。そのため、経時によるロールフォーメーションの変化が少なく高精度印刷を歩留良く施すことができるフィルムロールが望まれていた。
【0013】
さらに、通常は、一本のフィルムロールから、同一の最終製品用ラベル、袋などを加工するので一本のフィルムロールに巻かれたフィルムの印刷性の変動が大きい場合、製品として使用できない部分が大量に発生することにもなり、問題視されていた。
【0014】
上記の問題について特許文献1では不活性粒子を含有する芳香族ポリアミド系樹脂、あるいは芳香族ポリイミド系樹脂を用いたフィルムにおいて、その含有する不活性粒子の大きさなどと共に巻き硬度の範囲を規定した技術が開示されている。この特許文献1に記載された技術はベースのフィルムが熱固定された(熱収縮性ではない)フィルムに関するものであり、且つ2軸に延伸され熱固定されたフィルムに関するものである。従って、該技術は収縮などの経時による形状の変化を起こしにくいフィルムに関するものであり、フィルムロールフォーメーションの経時変化に関しては考慮されていない。また、磁気記録媒体などのベースフィルムとして使用されることを前提として考えられており、高精度印刷に対する適正性に関しては何ら考えられてはいないものである。また、熱収縮性フィルムは横方向へ収縮を起こすだけではなく、通常長手方向への延伸がなく縦方向への引っ張り強度が2軸延伸フィルムに比べて劣るため、印刷時の縦方向への伸びが激しい。本発明はこの点において、高精度印刷を行うために発明された内容であり特許文献1とは異なる技術思想に基づくものである。
【0015】
また特許文献2では熱可塑性樹脂フィルムロールに関して、その表面粗さと共に巻き硬さが規定されているが、特許文献2も特許文献1と同様に熱固定された(熱収縮性ではない。)フィルムに関するものであり、且つ2軸に延伸され熱固定されたフィルムに関するものである。そもそも、特許文献2にかかる発明は、収縮などの経時による形状の変化を起こしにくいフィルムに対して考えられたものであり、経時に関しては大きくは考慮されていない。且つ磁気記録媒体などのベースフィルムとして使用されることを前提として考えられており、高精度印刷に対する適正性に関しては何ら考慮されてはいない。本発明は、経時変化が少ない熱固定された2軸配向フィルムとは異なり、経時変化が大きい横一軸熱収縮性フィルムにおいて、高精度印刷を行うために発明された内容であり特許文献2とも明らかに異なる技術思想に基づくものである。
【0016】
また、上記の2件の特許文献は、1本のロール全般に亘って印刷時の不具合を取り除けるものではなく、本発明の目的と異なる目的を有する発明である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のポリエステル系熱収縮性フィルムロール(以下、「本発明のフィルムロール」ともいう。)は、有効長1000m以上のポリエステル系熱収縮性フィルムをコアに巻き取ってなるフィルムロールであって、
(1)前記フィルムロールの巻き出し部表面を、落球式硬さ試験機を用いてフィルムの幅方向に20mm間隔で測定した際の平均硬さが300〜
650の範囲であり、
(2)該平均硬さのばらつきが±200以内であり、
(3)前記巻き出し部から前記フィルムを500m単位で巻き出した後の前記平均硬さの増加率が0.25〜5.0%の範囲である、ポリエステル系熱収縮性フィルムロールである。
【0034】
本発明のフィルムロールは常温保管経時後のポリエステル系熱収縮性フィルムロールであっても、9色を超えるような多色の高精度印刷、または印刷速度200m/minを超えるグラデーション印刷などの精度の高い印刷時に発生しがちな微妙なズレ(見当ズレ:0.3mm以内)を抑えることができる。
【0035】
以下に、本発明のフィルムロールの硬さに関する上記3つの規定が、当該フィルムロールの、構造、機能、特性にどのように関係しているか、その技術的意義について説明する。併せて、「長期保管後も、高精度印刷適性がポリエステル系熱収縮性フィルムロール全般に亘って良好であり、高速印刷性、シール性にも追従できる熱収縮性フィルムロールを提供する。」という本発明の課題と、フィルムロールの硬さに関する上記3つの規定との関係を明らかにする。なお、硬さはプロセオ社(スイス)製落球式硬さ試験機パロテスター2を用いてフィルムロール幅方向に20mmの間隔で測定を行うものとする。
【0036】
(硬さの規定とその作用効果)
本発明のフィルムロール巻き出し部表面(フィルムロール外部)の平均硬さは300〜800の範囲であることが必要である。また、本発明のフィルムロール表面部平均硬さは、望ましくは400〜700の範囲であり、さらに好ましくは400〜650である。平均硬さが300以上の場合ロールを動かした際に、巻きが崩れることなく安定して搬送、加工等することができる。加えて、巻きズレの発生も少なくなり、印刷時のフィルムの走行が安定し、印刷不良が抑制される。また平均硬さが800以下の場合、室温保管経時後もフィルムのブロッキングが発生する確率が低く、印刷時の巻き解きの際にブロッキングに起因する異音(剥離音;パリパリ音)や破断の発生を防止することができる。平均硬さが400以上の場合、印刷にかける際に斜めに吊り上げられた場合でも巻きが崩れることなく、安定して取り扱うことができる。また平均硬さが700以下の場合、印刷時の巻き解きの際に発生する剥離音が少なくなると共に、それに伴う静電気の発生が減少し印刷が安定する。さらに平均硬さが650以下の場合はフィルムロール巻き解きに必要となるテンションが安定するため、さらに印刷速度を高くすることができる。
【0037】
本発明のフィルムロールの平均硬さのばらつきは±200以内である必要がある。硬さのばらつきは、好ましくは±150以内、さらに好ましくは±100以内である。ばらつきが±200以内の場合、経時変化による自然収縮が発生しても均等な応力がかかるため、幅方向への物性振れを印刷に問題ない程度にまで少なくすることができる。また、ばらつきが±150以内の場合、経時後の幅方向へのズレを抑え、安定した印刷を確保することができる。また、ばらつきが±100以内の場合、上記に加えて印刷時のフィルムのバタツキを抑えることができ、印刷速度をさらに高速にすることができる。
【0038】
本発明のフィルムロールは巻き出し部から巻芯に向かって徐々に硬さを増加させる必要がある。500m毎に測定した増加率は0.25〜5.0%、好ましくは0.25〜4.0%、さらに好ましくは0.25〜2.5%の範囲にあることが必要である。増加率が0.25%以上の場合、経時変化による巻き締まりによって巻き芯に近い部分にしわが入る現象を防止することができる。また増加率が5%以下の場合、フィルムロールを動かした際に、巻芯部だけが抜け落ちる巻芯部脱落現象を防止することができる。また増加率が4.0%以下の場合、印刷時の巻き崩れが全くなくなり、安定した印刷を行うことができる。また増加率が2.5%以下の場合、巻芯部における紙管継ぎあとの軽減を行うことができ、常温保管経時後であってもフィルムロール巻芯部の皺入りの確率を大きく下げることができる。
【0039】
500m毎に測定した増加率が0.25〜5.0%とは、測定点毎に平均硬さが上昇することを意味し、A→B→Cの測定点においては、平均硬さは、A(平均硬さH
1)→B(平均硬さH
2(=H
1×1.0025〜1.05))→C(平均硬さH
3(=H
2×1.0025〜1.05)と上昇する。より具体的には、有効長1,000mで、平均硬さの増加率が1.0%のとき、巻き出し部の平均硬さを500とすると、巻き出し部から500m内側の部分の平均硬さは、500×1.01=505となり、巻き出し部から1,000m内側の部分つまり巻き芯部の平均硬さは505×1.01=510となる。
【0040】
(硬さをコントロールする具体的方法)
本発明のフィルムロールの硬さを上記規定の範囲とする方法について以下に説明する。
【0041】
1.製造工程の条件によりコントロールする方法
1−1 ポリエステル系熱収縮性フィルムロールの製造工程
本発明のフィルムロールは、以下に示す3工程を経て得ることができる。
【0042】
(a)押出工程(未延伸フィルムの作製)
未延伸フィルムは、ポリエステル系樹脂組成物の樹脂ペレット単体、または異なる種類の複数の樹脂ペレットを混合し、押出しを行うことにより得ることができる。ペレット形成、溶融押出に関しては、公知の従来技術と同様な手法にて行うことが可能であり、例えば、原料となる前記樹脂組成物をあらかじめ200〜300℃の温度で溶融押出し、カッティングしてペレット状とし、次いで該ペレット状樹脂組成物を200〜300℃の温度で溶融押出しすることができる。
押出方法としては、特に限定されず、Tダイ法、チューブラー法等を用いることができる。一例として、
図3の左側には、押出機31、Tダイ32、およびキャスティングロール33がこの順に配置されたフィルムの製造装置例が示されている。Tダイ法の場合には、押出後、表面温度が15〜80℃のキャスティングロール上で急冷し、厚さ30〜300μmの未延伸フィルムを形成することができる。
【0043】
(b)縦延伸工程(縦延伸フィルムの作製)
その後、未延伸フィルムに温調ロールや赤外線ヒータなどで熱を与えつつロール周速差をもって縦延伸を行う(
図3においてAで示される範囲)。縦延伸ロールを使用し、未延伸フィルムを、ロール温度60〜120℃、好ましくは60〜80℃、延伸倍率1.0〜1.3倍、好ましくは1.0〜1.1倍の条件で延伸した縦延伸フィルムを得る。
なお、本明細書において「縦方向」はフィルムロールの長手方向、「横方向」はフィルムロールの幅方向と同義であり、「縦延伸」とは、フィルムロールの長手方向(熱収縮性フィルムの流れ方向)の延伸を、「横延伸」とは、フィルムロールの幅方向(熱収縮性フィルムの流れ方向の垂直方向)の延伸をそれぞれ意味する。
【0044】
(c)横延伸工程及びワインダー工程
縦延伸工程にて得られたフィルムを、テンター装置34(
図3参照)により、テンター延伸法を用いて延伸することによって横延伸フィルムを得ることができる。上記縦延伸フィルムを、延伸温度55〜100℃、好ましくは70〜90℃、延伸倍率1.7〜7.0倍、好ましくは4.0〜7.0倍の条件下、横延伸した後、60〜120℃、好ましくは70〜110℃の温度で熱処理し、ワインダー装置37により、テンションをかけつつ、タッチロール36の押圧を得ながらマスターロール35として巻き取られる。
【0045】
(d)スリット工程
その後、
図4に示すように、マスターロール35は巻き出されてスリッター40にかけられ、任意の幅にスリットされる。
図4の例では、3分割されたフィルムは、長手方向1000〜20000m、好ましくは1000〜10000m、さらに好ましくは1000m〜8000mの長さで巻き取られ、本発明のフィルムロール41〜43となる。なお、ここでも巻き取りに際し、フィルムにテンションがかけられ、巻き取られつつあるフィルムロール41〜43には、それぞれタッチロール44〜46による押圧(以下において「接圧」という。)が与えられる。
【0046】
上記各工程の内、フィルムロールの硬さに影響するのは、主に延伸工程と、スリット工程である。以下にこれら2工程におけるフィルムロール硬さのコントロールにつき説明する。
【0047】
1−2 延伸工程におけるフィルムロール硬さのコントロール
幅方向に偏った熱履歴をかけないようにする必要がある。フィルムロールの、幅方向の硬さのばらつきを抑えるためである。このため、縦延伸区間でかけているドローを最適値に調整したり、熱処理後のフィルム内歪みを解除するため、弛緩率が最適になるようテンターレール幅を変更したり、フィルム幅方向で均等な温度に達するようにテンター熱風量を幅方向に均一化させたりする工程が必要となる。
【0048】
1−3 スリット工程におけるフィルムロール硬さのコントロール
スリッターにおいてフィルムにかける張力、およびフィルムロールに与えるタッチロールの接圧は、フィルムロールの硬さに直接影響を与える。スリッターにおける張力は、30〜100N/mとすることが好ましい。張力が少なすぎると、フィルムロールの硬さが小さくなり過ぎて、本発明の規定する硬さの範囲からはずれてしまう虞がある。この結果、輸送時の振動でズレが発生し、印刷時にフィルムが蛇行し印刷ズレが発生することがある。
一方張力が大きすぎると、フィルムロールの硬さが大きくなり過ぎて、本発明の規定する硬さの範囲からはずれてしまう虞がある。この場合には、ロール保管中にフィルムブロッキングが発生し、印刷のため巻出す際にフィルムがばたつき、センサの感知を妨げることにより印刷ズレが発生することがある。
【0049】
巻硬さの増加率を本発明の規定する範囲に収めるために、巻き始めから巻き終わりまでの張力を一定とせず、巻き径に準じて変更することで対応することができる。例えば巻き径が大きくなるに従って、張力を減少するパターンがある。その場合、張力は、巻き始めの初期値に対する巻き終わりでの値の比率(以下において「張力制御率」という。)が40〜60%であることが好ましい。張力制御率が低すぎると、巻き上がったフィルムロールの平均硬さ増加率も本発明の規定する数値より低いものとなり、結果として、半年在庫後の印刷評価が劣ったものとなってしまう。張力制御率が低すぎると、保管と共にフィルムの巻き硬さの柔らかい部分(フィルムとフィルムの間)に空気が入り込み、その後輸送や印刷のためにロールを動かしたり傾けたりした際に、上巻き部分がずれることがある。その場合、印刷時にフィルム蛇行が発生し印刷ズレにつながることが多いからである。
一方、張力制御率が高すぎると、巻き上がったフィルムロールの平均硬さ増加率も本発明の規定する数値より高いものとなり、結果として、こちらも半年在庫後の印刷評価が劣ったものとなってしまう。収縮フィルムは保管と共に巻締まりが発生するが、張力制御率が高すぎると、巻締まり発生による巻下部への影響が大きく、下巻きフィルム上にシワが入ったり、湾曲が増大することが起こり、印刷ズレが発生したりすることがあるからである。
【0050】
スリッターにおけるフィルムロールに与えるタッチロールの接圧は、本来、上記張力との組み合わせで最適値が決せられるべき性質のものであるが、敢えて接圧のみに着目すれば、その値として、
80〜
210N/mであることが好ましい。フィルムロールに与える接圧が少なすぎると、フィルムロールの硬さが小さくなり過ぎて、本発明の規定する硬さの範囲からはずれてしまう虞がある。一方、与える接圧が大きすぎると、フィルムロールの硬さが大きくなり過ぎて、本発明の規定する硬さの範囲からはずれてしまう虞がある。
【0051】
巻硬さの増加率を本発明の規定する範囲に収めるために、巻き始めから巻き終わりまでのタッチロールによる接圧を一定とせず、巻き径に準じて変更することで対応することができる。例えば巻き径が大きくなるに従って、接圧を増加してゆくパターンがある。その場合、接圧は、巻き始めの初期値に対する巻き終わりでの値の比率(以下において「接圧制御率」という。)が150〜250%であることが好ましい。接圧制御率が低すぎると、巻き上がったフィルムロールの平均硬さ増加率も本発明の規定する数値より低いものとなり、結果として、半年在庫後の印刷評価が劣ったものとなってしまう。一方、接圧制御率が高すぎると、巻き上がったフィルムロールの平均硬さ増加率も本発明の規定する数値より高いものとなり、結果として、こちらも半年在庫後の印刷評価が劣ったものとなってしまう。
【0052】
1−4 湾曲のコントロール
なお、さらに印刷精度を上げるためには巻き硬さの調整に加えて湾曲を少なくするという手法をとることもできる。湾曲の発生要因としては、一般にプラスチックフィルムは、幅方向に偏った応力や歪みが残存したまま、ロールで巻き取られると、巻き取った直後もしくは巻き出して使用する段階で、上記残存が経時緩和され、歪みが生じ、湾曲が発生すると考えられる。
【0053】
歪みを無くすためにも幅方向に偏った熱履歴をかけないようにする必要があり、縦延伸区間でかけているロール間の集束差(ドロー)を最適値に調整したり、熱処理後のフィルム内の歪みを開放するため、弛緩率が最適になるようテンターレール幅を変更したり、フィルム幅方向で均等な温度に達するようにテンター熱風量を幅方向に均一化させたりする工程が必要となる。
【0054】
なお、具体的には縦延伸倍率をかけない縦延伸の各ロール間(予熱/低速ロール間、高速/冷却ロール間)の弛み取りにて0.980〜1.020が好ましい。0.980以上となると、湾曲に関与する訳ではないが、フィルムのシワ、並びにフィルム走行の蛇行の発生を抑えることができる。1.020以下になると、縦方向に延伸配向といった歪みがロール周期で変動しながら生じ、フィルム幅振れにも影響するといった問題が発生しにくい。
【0055】
また、横延伸の各テンターゾーンは予熱、延伸、熱処理後に弛緩、冷却を行うが、弛緩を行わない場合、熱処理の歪みを残したままとなるため弛緩ゾーンにて弛緩率を0.5〜3.0%あるいは−0.5〜−3.0%にすることが好ましい。弛緩率を、−0.5%以下、あるいは+0.5%以上とすると、残留応力を解放し、ボーイング現象で発生する湾曲を抑えることができる。また弛緩率を、−3.0%以上、あるいは+3.0%%以下にした場合、テンター出口のフィルムの弛みが抑えられ、均一な巻き上がりを実現することができる。
【0056】
なお、予熱/延伸/熱処理/弛緩/冷却、各テンターゾーンの熱風吹き出し速度はフィルムの温度を一定にするために10m/秒以上が良く、幅方向での熱風速度差±3m/秒以内であることが望ましい。上記の場合、非接触温度計で計ったフィルム温度幅が3℃以内となる。なお、計測のフィルム端は、クリップ端から50mm離れた位置から幅方向に測定する。50mm以内であるとクリップ輻射熱の影響を受けて、正確なフィルム温度を計測することができないためである。なお、フィルム幅方向での温度が均等で温度幅が3℃以内であれば、湾曲だけでなく巻き硬さのバラツキも抑えることができる。
【0057】
また、テンター出口後、両端耳をスリットして外し、原反をワインダーにて巻き取るが、ワインダー張力は30〜100N/mであることが好ましい。また、ワインダー接圧は巻きズレを起こさない程度に5〜70N/mでかけることが好ましい。
【0058】
なお、場合によっては、巻き始めから巻き終わりまでの張力並びに接圧は一定とせず、巻き径に準じて変更することが湾曲を抑えることにつながる。湾曲を抑える具体例としては巻き径が大きくなるに従って、張力を減少させ、接圧を増加するパターンが好ましく、巻き始めの張力に対し、終わりの張力が60〜95%、接圧は、巻き始めの初期値に対する巻き終わりの値が100〜300%に調整することでマスターロールの湾曲値をコントロールすることができる。
【0059】
2.フィルムの物性によりコントロールする方法
フィルムロールを構成するフィルムに適度な表面滑り性を付与することで、コア巻き付け部から巻き出し部にかけて徐々に巻硬さが下がるフィルムロールを製造することができ、且つ他の物性を確保することもできる。具体的には、フィルムを構成する樹脂組成物中に、フィラーや、帯電防止剤を添加する手法をとる。
【0060】
2−1 フィラーの添加
フィルムを構成する樹脂組成物は、熱収縮フィルムにした際に、耐ブロッキング性および易滑性を付与できるという点から、無機および/または有機の微粒子(フィラー)を含有していることが好ましい。ブロッキングは印刷工程におけるフィルムロールの巻き出し時に、ロールから巻き出されるフィルムが、ロール側の最外層フィルムに接着して、異音を発するほか、バタツキや、張力の変動要因となり、印刷を不安定なものとするので好ましくない。フィルムに易滑性を与えた場合、ロールへのフィルムの巻き取り、巻き出し時に、フィルムとロール本体側との間に、位置的な自由度が増し、円滑な巻き取り、巻き出しが可能となる。微粒子の含有量はフィルム全体に対して、0.005〜1質量%の範囲であることが好ましく、さらには0.01〜0.7質量%の範囲、特には0.02〜0.5質量%の範囲であることが好ましい。
【0061】
微粒子含有率が0.005質量%以上であれば、滑り性が適度に付与され、極度なブロッキングの発生を抑えることができる。0.01質量%以上であれば、滑り性が付与され、縦延伸ロール、テンター温度の幅方向において完全な均一性でないことによって生じる縦厚み振れの発生した厚い箇所がフィルム同士でブロッキングし、ロール巻き芯部に近づくにつれて巻き圧がかかり、弛みが発生し、湾曲が増長されることを抑えることができる。0.02質量%以上であれば、さらに滑り性が付与され、押出機、冷却キャストロール等の設備に由来する周期的に発生した僅かな縦厚み振れの厚い箇所がフィルム同士でブロッキングし、ロール巻き芯部に近づくにつれて巻き圧がかかり、弛みが発生し、湾曲が増長されることを抑えることができる。
【0062】
微粒子含有率が1質量%以下であれば、フィルム表面全体の極端な凹凸が抑えられ、インキ抜けを抑えることができ、巻きズレの発生頻度を低減させることができる。0.7質量%以下であれば、微粒子の分散性が上がり、部分的なインキ抜けを抑えることができる。0.5質量%以下であれば、フィルム表面全体の凹凸を制御でき、印刷版の浅いドットのインキ抜けを抑えることができる。
【0063】
無機微粒子としては、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、フッ化リチウム、カーボンブラック、および、ポリエステル重合時のアルカリ金属、アルカリ土類金属、燐化合物等の触媒等に起因する析出物等が、また、有機微粒子としては、例えば、各種架橋ポリマー等が挙げられる。
【0064】
これらの微粒子の平均粒子径としては、前述した効果の観点から、0.1〜6.0μmの範囲であることが好ましく、さらには0.5〜5.0μmの範囲、特には1.0〜4.0μmの範囲であることが好ましい。なお、ここで平均粒子径とは、レーザー回折法、動的光散乱法等の電磁波散乱法、遠心沈降式等の光透過法などの方法で測定した50%体積平均粒子径(d50)を意味する。測定方法によって差異が生じる場合は、レーザー回折法による値を用いる。
【0065】
微粒子の平均粒子径が1μm以上であれば、滑り性が適度に付与され、ブロッキングの発生を抑えることができる。0.5μm以上であれば、滑り性が付与され、縦延伸ロール、テンター温度の幅方向において完全な均一性でないことによって生じる縦厚み振れの発生した厚い箇所がフィルム同士でブロッキングし、ロール巻き芯部に近づくにつれて巻き圧がかかり、弛みが発生し、湾曲が増長されることを抑えることができる。1.0μm以上であれば、さらに滑り性が付与され、押出機、冷却キャストロール等の設備に由来する周期的に発生した僅かな縦厚み振れの厚い箇所がフィルム同士でブロッキングし、ロール巻き芯部に近づくにつれて圧がかかることによって発生する、弛みを抑えることができる。6.0μm以下であれば、フィルム表面全体の極端な凹凸が抑えられ、インキ抜けを抑えることができ、巻きズレの発生頻度を低減させることができる。5.0μm以下であれば、微粒子の分散性が上がり、部分的なインキ抜けを抑えることができる。4.0μm以下であれば、フィルム表面全体の凹凸を制御でき、印刷版の浅いドットのインキ抜けを抑えることができる。
【0066】
また、該微粒子の混合方法としては特に限定されず、樹脂の重合過程で添加することもでき、且つ、樹脂組成物の製造過程や、熱収縮性フィルムの成形過程で混合することもできる。またロール巻き芯部に近づくにつれて皺が入りやすくなる場合には、微粒子の径を大きくする方向、または量を増やす方向で配合すると皺の発生を抑えることができる。
【0067】
2−2 帯電防止剤の付与
本発明のフィルムロールには帯電防止剤を塗布することができる。例えばテンターにて横延伸する前の縦延伸後のフィルムに塗布ロール速度を、ライン速度に対して0.1〜1.5倍の速度であるロールで帯電防止剤を掻き揚げながら塗布することで、フィルムに帯電防止効果を付与することができる。
【0068】
塗布型の帯電防止剤は主として界面活性剤であり、界面活性剤の種類には、カチオン系界面/アニオン系/混合イオン系など多種の帯電防止剤があるが、塗布のし易さから特にカチオン系、混合イオン系が多用される。ロール巻き芯部に近づくにつれて僅かな厚み振れの差が幅方向での巻き硬さの差に影響し、フィルムの厚い箇所がブロッキング気味になる場合には、帯電防止剤の塗布量を多くすることによってフィルム同士の滑り性を上げ、ブロッキングを防止できる。また、厚み振れなどで発生した過剰な巻き硬さを緩和することができ、湾曲の差を小さくすることができる。
【0069】
次に、本発明のフィルムロールを構成するフィルムの樹脂組成につき説明する。本発明のフィルムロールを構成する樹脂組成は、ポリエステル系樹脂であり、以下にこれらにつき詳述する。
【0070】
<熱収縮性ポリエステル系フィルムロールの樹脂組成>
本発明における熱収縮性ポリエステル系フィルムロールの樹脂組成としては、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、多価アルコール成分として、エチレングリコール、つまりエチレンテレフタレートユニットを主たる構成ユニットとすることが望ましい。
【0071】
さらには、多価アルコール成分100モル%中、エチレンテレフタレートユニットを形成するため、エチレングリコールが用いられる。その他、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどのアルキレングリコール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物なども併用可能である。
【0072】
上記脂環式ジオール成分は、ジカルボン酸化合物とジオール化合物とを反応させてポリエステル樹脂を得る際に、ジオール化合物中に脂環式ジオール化合物を一部混合させることにより、単一の共重合体として含有させることができる。また、ジカルボン酸化合物と脂環式ジオール化合物とを反応させたポリエステル樹脂を合成しておき、ジカルボン酸化合物と脂環式ジオール化合物以外のエチレングリコール等のジオール化合物とを反応させたポリエステル樹脂に混合することにより含有させることもできる。
【0073】
多価カルボン酸成分100モル%中、エチレンテレフタレートユニットを形成するため、テレフタル酸が用いられる。その他、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸なども併用可能である。芳香族ジカルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタレン−1,4−若しくは−2,6ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、オルトフタル酸、フェニレンジオキシジ酢酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸、ダイマー酸、マロン酸またはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0074】
上記芳香族ジカルボン酸成分は、ジカルボン酸化合物とジオール化合物とを反応させてポリエステル樹脂を得る際に、ジカルボン酸化合物中に芳香族ジカルボン酸化合物を一部混合させることにより、単一の共重合体として含有させることができる。また、芳香族ジカルボン酸化合物とジオール化合物とを反応させたポリエステル樹脂を合成しておき、ジオール化合物と芳香族ジカルボン酸化合物以外のテレフタル酸等のジカルボン酸化合物とを反応させたポリエステル樹脂に混合することにより含有させることもできる。
【0075】
本発明に係るポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の慣用の製造方法、すなわち、直接重合法またはエステル交換法などにより、回分式または連続式によって製造することができる。ここで、任意の共重合成分は、重縮合反応過程の任意の段階で添加することができる。また、ジカルボン酸化合物とジオール化合物から低重合度のオリゴマーを製造しておき、これと任意の共重合成分とを重縮合させてポリエステル樹脂を製造することもできる。
【0076】
重縮合反応により得られた樹脂は、通常、重縮合反応槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷しながら若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状とされる。さらに、この重縮合後のペレットを加熱処理して固相重縮合させることにより、さらに高重合度化させ得ると共に、反応副生物のアセトアルデヒドや低分子オリゴマー等を低減化することもできる。
【0077】
前記製造方法において、エステル化反応は、必要に応じて、例えば、三酸化二アンチモンや、アンチモン、チタン、マグネシウム、カルシウム等の有機酸塩や有機金属化合物等のエステル化反応触媒の存在下でなされ、エステル交換反応は、必要に応じて、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、チタン、亜鉛等の有機酸塩や有機金属化合物等のエステル交換反応触媒の存在下でなされる。
【0078】
また、重縮合反応は、例えば、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸、およびこれらのエステルや有機酸塩等の燐化合物の存在下、および、例えば、三酸化二アンチモン、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等の金属酸化物、あるいは、アンチモン、ゲルマニウム、亜鉛、チタン、コバルト等の有機酸塩や有機金属化合物等の重縮合触媒の存在下でなされる。これらの重縮合触媒のうち、特にテトラブトキシチタネート、三酸化二アンチモン、二酸化ゲルマニウムから選択される1種以上が好適に使用される。また、重縮合過程での消泡を促進するため、シリコーンオイル等の消泡剤を添加することもできる。
【0079】
本発明に係るポリエステル樹脂においては、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比1対1)の混合溶媒中、30℃で測定した固有粘度が、通常0.4〜1.5dl/gの範囲であることが好ましい。固有粘度が0.4dl/g以上であると十分な機械的特性が得られ、また1.5dl/g以下であると成形が容易である。これらの観点から、上記条件での固有粘度は0.6〜1.2dl/gの範囲であることがさらに好ましい。
【0080】
本発明に係る樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂を混合していてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの無水マレイン酸変性物、アイオノマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー等である。
【0081】
さらに、該樹脂組成物はフェノール系、リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ヒンダードアミン系、シアノアクリレート系等の光安定剤、無機系または有機系の結晶核剤、分子量調整剤、耐加水分解剤、帯電防止剤、滑材、離型剤、可塑剤、難燃剤、難燃補助剤、発泡剤、着色剤、分散助剤などの添加剤やガラス繊維、カーボンファイバー、マイカ、チタン酸カリファイバー等の強化材を含有していてもよい。
【0082】
<フィルムの層構成>
本発明のフィルムロールを構成するポリエステル系熱収縮性フィルムは、単層に限定することなく、異質材料または同質材料からなる他層を積層した多層フィルムとすることができる。多層フィルムは、2種2層、2種3層、3種5層、4種7層といった用途に応じた複数の層で構成できる。
【0083】
<フィルムロールのサイズ>
本発明におけるフィルムロールは、コアに任意のテンションをかけながら巻き取られたフィルムであり、幅0.3m以上であることが好ましく、有効長さ1000m以上である。なお、フィルムの長さの上限は特に限定はないが、ハンドリング等の観点から、20000m以下、好ましくは15000m以下、より好ましくは10000m以下、さらに好ましくは8000m以下である。
【0084】
<コア>
本発明のフィルムロールに用いるコアは、特に限定されるものではなく、紙管、金属管、プラスチック管などを使用することができる。これらの中でも、ハンドリングの容易さやコストの観点から、紙管が最も汎用的であり、入手のし易さからみて好ましい。さらに、コアごとフィルムロールをスリットできるという、加工上の利点もある。コアとして紙管を使用する場合、紙管の万能材料試験機で計測した扁平耐圧強度が1800〜3000N/100mm幅であることが好ましい。紙管の扁平耐圧強度を1800N/100mm幅以上とすることにより、多少の巻き締まりがあってもコアの変形が少なく、コア変形による巻きズレを防止することができる。また、紙管の扁平耐圧強度を3000N/100mm幅以下とすることにより、巻き始め部分の耳立ちを抑えることができる。コア強度の調整は様々な方法が考えられるが、ポリウレタン系の樹脂などの熱可塑性樹脂コーティングなどによる強度アップが有効である。
【0085】
<熱収縮性>
本発明のフィルムロールを構成する熱収縮性フィルムは、少なくとも80℃温水に10秒間浸漬した際の収縮率が20%、望ましくは30%、さらに望ましくは40%である必要がある。フィルムの厚みは、10〜100μmの範囲であることが好ましい。熱収縮性フィルムの該収縮率が20%以上であると一般包装用途として用いることができる。また30%以上であると一般的な耐熱PETボトルの肩ラベルとして使用することができる。さらに、収縮率が40%以上であると収縮の際の温度域を下げられるため非耐熱のPETボトルの肩ラベルとして使用することができる。また、厚さが10μm以上であると二次加工が容易であるという利点があり、100μmを超えるフィルムは加工性に劣る傾向がある。なお、本発明のフィルムロールにより作成されたラベルを加熱収縮させる際の加熱方法は、主として蒸気による加熱が挙げられるが、これによらず熱風や赤外線などの加熱方法によっても収縮加工することができる。
【0086】
<フィルムの用途>
本発明のフィルムロールにより作成されたラベルを被せる被覆物は、内容物充填時の熱に耐え、且つ上記熱収縮の際の熱に耐えるものである必要がある。例えばガラス瓶やスチール缶、ポリエチレン製やポリプロピレン製のカップやトレー、ポリエステル製のボトルなどが挙げられる。また内容物としては例えば弁当や油、牛乳、ジュース、ビールなどの食品、化粧品や医薬品、文房具類などが挙げられる。
【実施例】
【0087】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら制限されるものではない。以下に実施例、比較例に使用した樹脂原料、フィルム樹脂組成、評価方法、評価結果等について詳述する。
【0088】
<<樹脂原料の分析>>
後述する8種の樹脂原料について、以下の方法で組成分析、固有粘度、灰分の測定を行った。
【0089】
(ポリエステル樹脂の組成分析)
ポリエステル樹脂溶液試料を、核磁気共鳴装置(NMR)により1Hをモニターすることにより分析し、ジカルボン酸成分に関しては全ジカルボン酸成分に対するモル%を、ジオール成分に関しては全ジオール成分に対するモル%を求めた。
【0090】
(固有粘度(dl/g)の測定)
ポリエステル樹脂約0.25gを、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒約25mlに1.0質量%となるように110℃で溶解させた後、30℃まで冷却し、全自動溶液粘度計(中央理化製「2CH型DJ504」)にて30℃で測定した。
【0091】
(灰分の測定)
試料約10gを700℃のマッフルにて焼成を行い、焼成前後の質量を測定して、粒子物の含有量を算出した。
【0092】
<<樹脂原料>>
各実施例、
参考例、比較例のフィルムロールのフィルム製造に使用される樹脂のペレット原料として以下のポリエステル系樹脂8種(PET1〜8)を使用した。
【0093】
(1)ポリエステル系樹脂1(PET1)
イーストマン・ケミカル社製「EASTAR PETG Copolyester6763」を使用した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分がテレフタル酸(以下、「TPA」と略記する。)であり、ジオール成分は、エチレングリコール(以下、「EG」と略記する。)が全ジオールに対して68モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、「CHDM」と略記する。)が全ジオールに対して32モル%であるポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.78dl/gであった。
【0094】
(2)ポリエステル系樹脂2(PET2)
以下に記載する製造例1の方法にて、ポリエステル樹脂を製造した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分は、TPAが全ジカルボン酸に対して70モル%、イソフタル酸(以下、「IPA」と略記する。)が全ジカルボン酸に対して30モル%であり、ジオール成分がEGであるポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.72dl/gであった。
−製造例1−
スラリー調製槽、エステル化反応槽、重縮合槽、およびペレット化装置を備えた回分式重合装置を用い、TPAとIPAの混合物(モル比4:1)とEGのエステル化反応物1トンを入れたエステル化反応槽に、あらかじめスラリー調製槽にて調製したTPA:605kg(3.64キロモル)、IPA:259kg(1.56キロモル)およびEG:388kg(5.20キロモル)(ジカルボン酸とジオールのモル比は1:1.2)のスラリーを314kg/hrの速度で連続的に添加してエステル化反応を行った。エステル化反応は、反応温度250℃、常圧の条件下、エステル化反応触媒としてポリエステル樹脂の理論収量に対して200質量ppmの三酸化アンチモンを添加し、生成する水を連続的に留出させながら、反応率95%に達するまでエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、エステル化反応物の1トンをエステル化反応槽に残し、エステル化反応物を重縮合槽に移送した。
引き続いて、エステル化反応物が移送された重縮合槽に、安定剤として正リン酸を添加し、重合触媒として酢酸コバルトと三酸化二アンチモンを添加した(いずれもEG溶液として添加)。正リン酸、酢酸コバルト、三酸化二アンチモンの添加量はそれぞれ、ポリエステル樹脂の理論収量に対して、60質量ppm、150質量ppm、200質量ppmとした。
その後約100分かけて常圧から1.33×10
2Pa(1mmHg)まで減圧すると共に、内温を約250℃から約280℃まで上昇させ、EGを留出させながら溶融重縮合反応を行った。減圧開始後4時間経過したところで復圧し、重縮合反応を終了した。重縮合槽を復圧後、槽下部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。また、ポリエステル系樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.72dl/gであった。
【0095】
(3)ポリエステル系樹脂3(PET3)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製「NOVADURAN 5008」をポリエステル系樹脂3として使用した。ポリエステル系樹脂3の組成を上記方法で分析した結果、ジカルボン酸成分がTPAであり、ジオール成分が1,4−ブタンジオール(以下、「BD」と略記する。)であるポリエステル系樹脂であった。また、ポリエステル系樹脂3の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.85dl/gであった。
【0096】
(4)ポリエステル系樹脂4(PET4)
以下に記載する製造例2の方法にて、ポリエステル樹脂を製造した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で灰分分析並びに、組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分はTPAであり、ジオール成分は、EGが全ジオールに対して68モル%、CHDMが全ジオールに対して32モル%であり、灰分分析を行った結果、有機物でない無機微粒子が10質量%含有しているポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.76dl/gであった。
−製造例2−
上記ポリエステル系樹脂PET1を90質量部、富士シリシア化学製の平均粒子径が3.1μmの「サイリシア420」を10質量部配合し、同方向二軸押出機で押出後、口金部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。
【0097】
(5)ポリエステル系樹脂5(PET5)
以下に記載する製造例3の方法にて、ポリエステル樹脂を製造した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で灰分分析並びに、組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分はTPAであり、ジオール成分は、EGが全ジオールに対して68モル%、CHDMが全ジオールに対して32モル%であり、灰分分析を行った結果、有機物でない無機微粒子が10質量%含有しているポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.74dl/gであった。
−製造例3−
上記ポリエステル系樹脂PET1を90質量部、富士シリシア化学製の平均粒子径が2.7μmの「サイリシア320P」を10質量部配合し、同方向二軸押出機で押出後、口金部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。
【0098】
(6)ポリエステル系樹脂6(PET6)
以下に記載する製造例4の方法にて、ポリエステル樹脂を製造した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で灰分分析並びに、組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分はTPAであり、ジオール成分は、EGが全ジオールに対して68モル%、CHDMが全ジオールに対して32モル%であり、灰分分析を行った結果、有機物でない無機微粒子が10質量%含有しているポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.70dl/gであった。
−製造例4−
上記ポリエステル系樹脂PET1を90質量部、富士シリシア化学製の平均粒子径が4.1μmの「サイリシア430」を10質量部配合し、同方向二軸押出機で押出後、口金部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。
【0099】
(7)ポリエステル系樹脂7(PET7)
スラリー調製槽、エステル化反応槽、重縮合槽、およびペレット化装置を備えた回分式重合装置を用い、TPAとEGとネオペンチルグリコールの混合物とのエステル化反応物1トンを入れたエステル化反応槽に、あらかじめスラリー調製槽にて調製したTPA:820kg、NPG:128kgおよびEG:291kgのスラリーを314kg/hrの速度で連続的に添加してエステル化反応を行った。エステル化反応は、反応温度250℃、常圧の条件下、エステル化反応触媒としてポリエステル樹脂の理論収量に対して200質量ppmの三酸化アンチモンを添加し、生成する水を連続的に留出させながら、反応率95%に達するまでエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、エステル化反応物の1トンをエステル化反応槽に残し、エステル化反応物を重縮合槽に移送した。
引き続いて、エステル化反応物が移送された重縮合槽に、安定剤として正リン酸を添加し、重合触媒として酢酸コバルトと三酸化二アンチモンを添加した(いずれもEG溶液として添加)。正リン酸、酢酸コバルト、三酸化二アンチモンの添加量はそれぞれ、ポリエステル樹脂の理論収量に対して、60質量ppm、150質量ppm、200質量ppmとした。
その後約100分かけて常圧から1.33×10
2Pa(1mmHg)まで減圧すると共に、内温を約250℃から約280℃まで上昇させ、EGを留出させながら溶融重縮合反応を行った。減圧開始後4時間経過したところで復圧し、重縮合反応を終了した。重縮合槽を復圧後、槽下部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。また、ポリエステル系樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.70dl/gであった。
【0100】
(8)ポリエステル系樹脂8(PET8)
日本ユニペット社製「RT−523C」を使用した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分がTPAであり、ジオール成分は、EGが全ジオールに対して98モル%、ジエチレングリコール(以下「DEG」と略記する)が全ジオールに対して2モル%であるポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.70dl/gであった。
【0101】
<<フィルムロールの作製>>
以上の樹脂原料8種を用いて、以下の実施例1
、2、4〜6、8〜11、
参考例1〜3、比較例1〜7のフィルムロールを得た。配合の一覧を表1に、フィルムの製造条件一覧を表2に示す。
【0102】
(実施例1)
原料ポリエステル樹脂PET1を54.5質量部、ポリエステル樹脂PET2を27質量部とポリエステル樹脂PET3を15質量部、ポリエステル樹脂PET4を3.5質量部配合し、270℃の同方向二軸押出機で真空ベントを引きながら溶融混練し、Tダイ口金から冷却ロール上に押出し、厚さ250μmの未延伸フィルムを得た。その後、上記フィルムを縦延伸機の低速−高速ロール間の縦延伸をかけるところは1.1倍で縦倍率をかけ、上記ロール間以外のドローは0.98倍とした。その後、テンターにて101℃で予熱し、延伸温度79℃、延伸速度3000%/分でキャスティング押出方向に対して、垂直方向の横方向に5倍延伸を行い、熱処理温度92℃で処理後、テンター弛緩率0.4%にて厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。なお、テンター熱風の吹出に関して、平均速度は10m/秒、フィルム幅方向の速度差は3m/秒であり、テンター出口のフィルム幅方向における温度幅は3℃であった。また、ワインダーにてフィルムを巻き取る張力は50N/m、フィルムをガイドするゴムロールの接圧は30N/m、巻き始めの初期値に対する巻き終わりの最終値が、張力、接圧ともに75%、200%に調整した。さらにスリッターにてフィルムを巻き取る張力は60N/m、フィルムをガイドするメタルロールの接圧は150N/m、巻き始めの初期値に対する巻き終わりの最終値が、張力、接圧ともに45%、180%に調整して、0.98m幅にスリットし、1000m巻き取り、実施例1にかかるフィルムロールを得た。
【0103】
(実施例2
、4〜6、8〜11、
参考例1〜3、比較例1〜7)
表1の配合表に従い配合した樹脂を実施例1と同様の条件で溶融押出し、250μmのフィルムを得た。なお、表1中の数値の単位は、質量部である。
上記フィルムを表2の条件にて延伸、巻き取り、スリットし、フィルムロールを得た。表2以外の条件は全て実施例1と同様に延伸、巻き取り、スリットを行った。
【0104】
なお、上記実施例、
参考例、比較例のフィルムロール製造条件は、以下の要領にて測定した。
(フィルム温度計測)
テンター出口のフィルム温度をTASCO製 非接触の赤外温度計『THI−440N』にて計測した。計測位置としては、フィルム中央/両端/左記間の5点とした。両端は、テンタークリップから50mm以内であるとクリップ輻射熱の影響を受けて、正確なフィルム温度を計測することができないため、クリップから50mm離れた位置とした。
(テンター弛緩率)
熱処理時の弛緩率を記録した。
(熱風吹き出し温度)
テンターノズルの熱風噴出し口にて風速計を使用して測定した。
(ワインダー張力)
ワインダーの初期張力(m幅当たり)を記録した。
(張力制御率)
初期張力に対する巻き終わり時の張力の割合(%)を記録した。
つまり、「張力制御率」=「巻き終わり時の張力」/「初期張力」である。
(ワインダー接圧)
ワインダーの初期接圧(m幅当たり)を記録した。
(接圧制御率)
初期接圧に対する巻き終わり時の接圧の割合(%)を記録した。
つまり、「接圧制御率」=「巻き終わり時の接圧」/「初期接圧」である。
なお、スリッター工程に関しても、上記ワインダー工程に順じて測定を行った。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
<<フィルムロールの評価方法>>
以下に、フィルムロールの評価方法を説明する。評価結果は表3にまとめて示した。
(1)80℃収縮率
各実施例
、参考例または比較例にて得られたフィルムを、測定延伸方向に150mm、これに対する直交方向に25mmの大きさに切り取り、試料を作成した。試料の延伸方向に100mm間隔の標線を付し、80℃の温水浴に10秒間浸漬させ、その後30秒間23℃冷水に浸漬した後の標線間隔(A(mm))を測定し、下式(1)により収縮率を算出した。
収縮率(%)=100×(100−A)/100・・・・式(1)
【0108】
(2)半年後の印刷評価
20℃に保った保冷倉庫にフィルムロールを半年間保管し、その後6色印刷機を用いて一般的に用いられるカラーチャート版を使用し150m/分の速度で非帯電防止面に6色印刷を行った。見当ズレ監視装置の見当ズレ精度を観測し、ロール全域にわたる見当ズレの平均を見当ズレの値とした。
○: 見当ズレが0.3mm未満
△: 0.3〜0.9mm
×: 見当ズレが0.9mmを超える。
見当ズレが0.3mm未満の場合には見た目にボヤケを感じられない。見当ズレが0.3〜0.9mmの場合にはわずかにぼやけるものの、商品としては問題がない。見当ズレが0.9mmを超える場合にはボヤケがひどく商品価値がなくなる。
【0109】
(3)フィルムロール硬さの測定方法
スイス、プロセオ社の硬さ試験機パロテスター2を使用した。従来、フィルムや紙のコイルの硬さを現場で計るには、棒でロールを叩き、その音によりロール硬さを推定する方法が行われていた。しかし、この方法では結果に個人差が出る欠点があるため、客観性を担保すべく本試験機を使用した。その原理は、特殊なバネの力でインパクトボディーがロール表面を打撃、反発した際の、インパクト装置のコイルと、インパクトボディーに内蔵された磁石とが働き、生じた誘導電圧を速度に正比例する値として関知するものである。インパクトボディーの反発速度をVa、打撃速度をVbとすると、下記式(2)により、硬さHを算出し、記録した。
H=(Va/Vb)×1000・・・・・式(2)
【0110】
フィルムロールの硬さが硬いほど、硬さ値は大きな値を示す。具体的な測定の手順は以下の通りである。スリッターで巻き取った本発明のフィルムロールを別のスリッターにて巻き解く。この際、巻き解く前の巻き出し側端部においてまずフィルムロール硬さを測定し、最大硬さ/最小硬さ/平均硬さを求め、その後、500m毎にスリッターを停止させ、フィルムロール硬さを測定し、最大硬さ/最小硬さ/平均硬さを求めた。
具体的には、フィルムロール巻き出し部の長さ方向端部から5m除去した部分を最外部の巻外として計測し、500mずつ巻き解きながら計測し、フィルムロール巻き芯側に少なくとも100mの長さを残している点までの長さまで計測する(有効長において巻外から500mおきの計測となる。)。
【0111】
「平均硬さのバラツキ」とは、平均硬さと、該平均硬さから最も離れた硬さとの数値差により表現した値である。具体的には、「最大硬さ−平均硬さ」、「最小硬さ−平均硬さ」、のいずれかのうち、絶対値が大きい方を「平均硬さのバラツキ」とする。
【0112】
(4)コア耐圧強度
図7に試験の概略を示す。紙管を幅方向100mmに裁断し、温度23℃、湿度50%雰囲気下に24時間、保管して試料70とした。島津製作所製 油圧サーボ『UH−10A』に、試料70を寝かせてセッティングし、圧縮速度10mm/minでサンプルを圧縮させたときの最大強度を計測し、「コア耐圧強度」として記録した。
【0113】
(5)湾曲評価
図8に示すように、水平平面である矩形湾曲台80に、フィルムロールの巻出部及びコア巻付部からそれぞれ長手方向に5m巻き出したフィルムを載せてシワ、弛みが発生しないように静置し、長手方向両端の幅方向端部同士を直線で結ぶ直線Lの中央において、フィルムエッジと直線Lからずれた距離|Wa|及び|Wb|のそれぞれの値(mm)を測定し、絶対値の大きい方の値を「湾曲」として記録した。また、以下に定義する測定値を「湾曲差」として記録した。
(湾曲差):1本のフィルムロールに巻かれていたフィルムの巻き始め側の端部から5m外側に巻いたところまでのフィルムを採取したものをコア「巻付部」とする。同様にフィルムの巻き終わり側の端部から5m内側に巻いたところまでのフィルムを採取したものを「巻出部」とする。フィルムロールのコア巻付部で測定した湾曲値と、前記フィルムロールの巻出部で測定した湾曲値との差を「湾曲差」とする。
なお、「湾曲」とは、0基準に対して±のある実際に計測した距離をいい、「湾曲値」とは、この「湾曲」を絶対値化した数値をいう。
【0114】
(6)巻きズレ
定板をフィルムロール端面に渡し、定板から端面までの距離をノギスで測定し、その最も大きい値を巻ズレ幅とした。
また、縦積みロールは横で平面に載置させ、横積みロールは横に平面で載置させたまま、前記巻きズレ幅を計測した値を「最初値」とした。さらに、前記の横に載置したロールを縦に平面から45°傾斜させて10秒間保持した後、前記フィルムロールを前記平面に戻して載置したときの最終の巻きズレ幅を計測した値を「最後値」とした。
【0115】
【表3】
【0116】
表3からも明らかなようにフィルムロール最外部の平均硬さが300〜800であり、且つバラツキが±200以内であり、500m単位で巻き解いた際の平均硬さの増加率が0.25〜5%のフィルムロールは半年の常温保管経時後の実用性に優れていることが明らかである。本発明のフィルムロールは今般増加しつつある高精度印刷用熱収縮性フィルムロールとしてフィルムロール全般に亘って高精度な印刷を施すことができ、印刷歩留を向上させることができる。また、本発明のフィルムロールは保管時の耐経時劣化に優れ、印刷加工性に優れたフィルムロールであるので非常に有用なものである。