特許第5872596号(P5872596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5872596水系材料を用いた歯髄及び充填される根管の処置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872596
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】水系材料を用いた歯髄及び充填される根管の処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/02 20060101AFI20160216BHJP
   A61K 6/08 20060101ALI20160216BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20160216BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20160216BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20160216BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20160216BHJP
   A61C 5/02 20060101ALI20160216BHJP
   A61C 5/04 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   A61K6/02
   A61K6/08 H
   A61K31/155
   A61P1/02
   A61P31/00
   A61P31/04
   A61C5/02
   A61C5/04
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-4834(P2014-4834)
(22)【出願日】2014年1月15日
(62)【分割の表示】特願2009-549132(P2009-549132)の分割
【原出願日】2008年2月8日
(65)【公開番号】特開2014-98001(P2014-98001A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2014年2月10日
(31)【優先権主張番号】60/900,475
(32)【優先日】2007年2月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590004464
【氏名又は名称】デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100102808
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 憲通
(74)【代理人】
【識別番号】100128646
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】プリムス,キャロリン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】グットマン,ジェームス,エル.
(72)【発明者】
【氏名】ブロイアー,ミクロス,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー,スティーヴン,アール.
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0045678(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/087178(WO,A1)
【文献】 米国特許第05454867(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0159618(US,A1)
【文献】 特表2006−507361(JP,A)
【文献】 特表2002−517425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00−6/10
A61C 5/02
A61C 5/04
A61K 31/155
A61P 1/02
A61P 31/00
A61P 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯内の根管を処置するための組成物であって、
前記組成物が、
(a)前記組成物の重量に対して1〜80重量%の粒状材料であって、前記粒状材料が、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、鉄アルミン酸四カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物から成る群から選択される、粒状材料、並びに
(b)前記組成物の重量に対して1〜50重量%の液体キャリアであって
(i)水溶性ポリマー、及び
(ii)水、
を含む液体キャリア、
からなり、
前記粒状材料及び/又は前記液体キャリアがさらに、硫酸アルキル、アルキルエーテルスルフェート、アルキルサルコシネート及びそれらの混合物から成る群から選択される界面活性剤を含み、
前記界面活性剤と前記水溶性ポリマーの比率が6対1以下であり、
前記粒状材料及び/又は前記液体キャリアがさらに、湿潤剤若しくはヒドロキシアパタイト、又は湿潤剤とヒドロキシアパタイトの両方を含み、及び
前記粒状材料と前記液体キャリアを共に混合すると、固化し得る水和物ゲルが形成される、
ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、部分加水分解ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ヒアルロン酸、水溶性ポリサッカライド、ポリアミノ酸、並びにそれらのコポリマー及び混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1重量%〜30重量%のヒドロキシアパタイトをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1重量%〜60重量%の放射線不透過性成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記放射線不透過性成分が、酸化ビスマス、硫酸バリウム、酸化タンタル、酸化セリウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム化合物、及びタンタル、バリウム及びストロンチウムを含有する放射線不透過性ガラス、並びにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記粒状材料が、ケイ酸三カルシウム粒子とケイ酸二カルシウム粒子との混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記粒状材料が、20重量%〜80重量%のケイ酸三カルシウム、20重量%〜50重量%のケイ酸二カルシウム、1重量%〜20重量%のアルミン酸三カルシウム、1重量%〜8重量%の鉄アルミン酸四カルシウム、1重量%〜15重量%の硫酸カルシウム二水和物、及び1重量%〜50重量%の放射線不透過性成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記粒状材料が、1μm〜40μmの範囲の平均粒径を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記粒状材料が、1μm〜15μmの範囲の平均粒径を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
抗菌剤及び/又は抗微生物剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗微生物剤がクロルヘキシジングルコネートを含む、請求項10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的に、歯内の歯髄及び根管を処置するための改良された歯科用組成物に関する。この組成物は、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、水酸化カルシウム及びヒドロキシアパタイト等の粒状材料と、種々の有機水溶性高分子材料と、高分子材料と相互作用する界面活性剤との混合物からなる。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2007年2月9日の出願日を有する米国仮特許出願第60/900,475号明細書の利益を主張するものであり、この内容は全て参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
歯の内部には、軟質の生体組織、すなわち歯の「髄質」を含有する歯髄腔が包含される。髄質には、結合組織、血管、細胞及び神経終末が含まれる。歯髄腔は、上方の髄室と、顎に向けて歯の根尖部すなわち尖端部へとより深く伸びる根管とから成る。歯の外(可視)部は歯冠と称され、エナメル質の被覆を有している。硬いエナメル質は、歯の上部にあるより軟らかい象牙質組織を保護している。エナメル質は、硬いカルシウム系物質であるヒドロキシフルオロアパタイトから構成されている。象牙質組織は、歯髄を取り囲み且つ保護するコラーゲン線維が空間を満たすヒドロキシアパタイト細管の基質を含有する。歯根の外(非可視)部は、シャーピー線維を介して歯根を周囲の骨と結合させるセメント質の薄く硬い組織で被覆されている。虫歯すなわち齲蝕は、歯に蓄積してバイオフィルム(プラーク)を形成する細菌によって起きる。バイオフィルムは、歯のヒドロキシアパタイトを溶解して弱化させる酸を生成することによって虫歯を引き起こす。
【0004】
齲蝕が歯のエナメル質部分に見られる場合、歯科専門家は、齲蝕を取り除いてさらなる虫歯を防止する。その後、複合レジン材料充填又はアマルガム充填により窩洞を「充填」する。しかしながら、場合によっては、齲蝕が、象牙質組織に貫入するほど深いことがある。この時点で、細菌及び他の微生物は歯髄組織へと急速に移動して、感染及び炎症を起こす可能性がある。その結果、膿瘍又は炎症が、歯髄、最終的には根尖を取り囲む根尖周囲組織に生じるおそれがある。歯の疾患があまりにも進行していれば、歯科専門家は根管治療術を用いて、感染組織を歯から除去して、不活性な生体適合材料に置き換える。別法としては、抜歯が必要となることもある。
【0005】
歯の根管系は複雑であるため、患者の症状及び開業医のアプローチに応じて多くの治療法が用いられ得る。一般的に、根管治療法は、初めに、歯の歯冠に穴をあけて歯髄腔とアクセスさせることを伴う。その後、歯内療法学的なファイル(file)を用いて、歯髄を除去してきれいにし、根管を造形する。ファイルは薬剤と共に用いられる。ファイルを使用した後、薬剤を用いて、ファイルによって生じるスメア層を除去することもある。シーラーで根管の壁を覆った後、根管を充填材で充填する。歯根のこのシールは理想的には、細菌及び他の微生物が再び入り、根端を取り囲む生体組織の感染が起きないようにするものである。最終工程として、充填材等の歯科用修復材で髄室及び歯冠の穴をシールする。好ましくは、永久クラウンを歯の穴に被せる。かかるクラウンは、金属、ほうろう金属、高分子被覆金属(polymer-veneered metal)又はセラミックから成る。クラウンの安定性のためにポストを歯根に設置してもよいが、通常、根管治療術後且つクラウンを作製する前に行う。
【0006】
根管を充填する一方法は、ゴムの異性体である天然又は合成ガッタパーチャを使用することを伴う。先細円錐形状を有するガッタパーチャポイントを調製することができ、これらのポイントを根管内に嵌合させることができる。歴史的に、古くからある一治療法は、ガッタパーチャの単一コーンを使用することを伴う。この方法では、酸化亜鉛ユージノールセメントシーラーを初めに根管に設ける。その後、ガッタパーチャの単一非加熱コーンを根管内に嵌合させる。根管シーラーを管壁に設けた後に複数のガッタパーチャコーンを根管内に加圧する低温側方加圧を伴う新規の技法も開発されている。より最近では、ガッタパーチャが管内微小空間、側方管、副根管及び他の管の凹凸内に移動し得るようにガッタパーチャを流動させる、加熱したガッタパーチャを使用する処置が用いられている。このような一技法では、ガッタパーチャの層でコーティングされた金属又はプラスチックのキャリアが使用される。キャリアは、円錐形ハンドルから延びるテーパー先端を有する金属又はプラスチックシャフトを備える。キャリアは、ガッタパーチャを根管の作業長(working length)に運び、ガッタパーチャを側方管及び副根管に加圧する。キャリアが根管内で安定化したら、上方のハンドル部分及びシャフトを、歯科用バー又は他の鋭器を用いて根管の口の位置で切断する。シャフト下部は、硬化ガッタパーチャで充填される管内に残る。他の加温ガッタパーチャ技法は、根管シーラーを設けた後に管内に押し出されるガッタパーチャの加圧を含む。低温ガッタパーチャ技法及び加温ガッタパーチャシール技法の組み合わせも用いることができる。
【0007】
他の根管治療法は、医原性穿孔等の歯根の欠陥を修復するのに、又は根尖の手術を行う際に根端を充填するのにポルトランドセメントを使用することを伴う。一般的に、ポルトランドセメントは、カルシア、シリカ、アルミナ及び酸化鉄材料を含有する。ポルトランドセメントは通例、灰色であるが、鉄含量が低いと白いことが知られている。ポルトランドセメントを水と合わすと、根管欠陥に導入させるスラリー状組成物が形成する。この組成物は、凝固して根管をシールする。ポルトランドセメント材料を、根管を充填又はシールするのに用いる場合、セメント粒子は小さい粒径を有していなければならない。セメントの粉末度は、表面積で表され、且つその一測定値は、セメントの粒子表面積と、その重量との比率(1グラム当たりの表面の平方センチメートル)を示すブレーン値(Blaine Number)である。
【0008】
特許文献1及び特許文献2は、4000cm/g〜5500cm/gの範囲のブレーン値を有するポルトランドセメント組成物を、根管をシールすること、根尖切除を行うこと、及び根管穿孔を修復することを含む様々な外科的及び非外科的根管治療術に用いることを記載している。特許文献1及び特許文献2は、ポルトランドセメントを水と合わせて、根管に導入する組成物を形成することを開示している。水溶性高分子材料と、界面活性剤と、ポルトランドセメントとを含有する組成物を製造するような開示は特許文献1及び特許文献2にない。
【0009】
ポルトランドセメントに加えて、他の生物医学的なセメントが医学用途及び歯科用途に関して開発されている。例えば、特許文献3は、少なくとも1つのリン酸化合物と、如何なるアルミニウム化合物又はマグネシウム化合物も含有しない少なくとも1つのケイ酸カルシウム化合物とを含有する生物医学的なセメントを開示している。好ましくは、セメントは、45重量%〜80重量%の酸化カルシウム、10重量%〜35重量%のシリカ、及び1重量%〜30重量%のリン酸塩を含有する。水溶性高分子材料はセメントに添加されない。ヒドロキシアパタイトを添加すると、in situにおいて室温でヒドロキシアパタイト/ケイ酸カルシウム水和物ゲルが形成され得る。
【0010】
特許文献4は、覆髄、基材の裏装(base lining)、根管充填、及び他の用途に使用され得る歯科用セメントを開示している。この組成物は二成分から成る。成分Aは、少なくとも2つの粉末である、酸化カルシウム及びアルミナを含有する100重量部の粉末と、2重量部〜70重量部の水酸化カルシウム粉末とを含む。特許文献4によれば、粉末粒子を有機酸及び/又は無機酸で表面処理し、混合中の粒子の流動性を増大させることが重要である。成分Bは、0.01重量%〜70重量%の水溶性高分子量物質(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ナトリウム及びポリメタクリル酸ナトリウム)を含有する水溶液を含む。粉末粒子と、水溶性高分子材料と、界面活性剤とを含有する歯科用セメントは特許文献4に開示されていない。
【0011】
特許文献5は、覆髄、根管充填、シール、歯槽骨の再生等に使用され得るアルミナセメントの組成物を開示している。アルミナセメントは、他の材料と混合することができる産業用セメントである。組成物は、a)産業用アルミン酸カルシウム粉末と、b)水酸化カルシウム、塩化カルシウム又は酸化カルシウム等のカルシウム型粉末硬化遅延剤、及びc)ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアガム、アクリル酸、グリセリン、メタケイ酸ナトリウム、低分子量脂肪酸又は疎水性天然レジン等の水溶性ポリマーとから成る。特許文献5によれば、硬化遅延剤、好ましくは水酸化カルシウムを混合物に添加することが重要である。カルシウム硬化遅延剤は、アルミナセメント粉末100重量部に対して1重量部〜20重量部の割合で添加される。粉末粒子と、水溶性高分子材料と、界面活性剤とを含有する組成物は特許文献5に記載されていない。
【0012】
特許文献6は、覆髄材、歯根修復材料、根管シーラー、及び他の臨床学的な製品として本質的に使用することができるカルシウム系セメントのポリマー浸潤構造体を開示している。セルフエッチング/セルフプライミング歯科用接着剤を、未硬化の歯科用セメント材料の表面に塗布すると、ポリマー浸潤構造体が形成することができる。表面浸潤により、完全に硬化する前にセメントが安定化される。別の例では、40,000〜1,300,000の分子量を有する2%〜10%のポリビニルピロリドンの溶液と混合させるようなポルトランドセメント材料が記載されている。組成物中にいずれかの界面活性剤を使用するという開示はない。
【0013】
外科的及び非外科的根管治療術に使用される別の材料は、Dentsply Tulsa Dental Specialties(Tulsa, OK)から入手可能なProRoot(登録商標)MTA歯根修復材料である。ProRoot MTA材料は、ポルトランドセメントに似た組成を有し、如何なる水溶性高分子材料も含有しない。詳細には、MTA材料は、水と合わせるとセメント状材料を形成する、ケイ酸二カルシウム、ケイ酸三カルシウム、アルミン酸三カルシウム、鉄アルミン酸四カルシウム、硫酸カルシウム二水和物及び酸化ビスマスの親水性微粒子を含む。MTA材料は、灰色及び白色の製剤に利用可能である。MTA粉末中に用いられる酸化物は、重金属を含まず且つ身体において用いられることが保証される最高純度のものである。MTA根管修復材料は、多種多様な臨床用途に用いられる。特に、セメント状材料は、根管の治療の際に根管穿孔を修復し、根端を充填し、覆髄及び歯髄切断として知られる処置において損傷を受けた歯髄を治療し、且つ歯根吸収を修復するのに使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,769,738号
【特許文献2】米国特許第5,415,547号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0098811号
【特許文献4】米国特許第4,647,600号
【特許文献5】米国特許第4,689,080号
【特許文献6】国際公開第2005/087178号
【特許文献7】Pashley DH, Depew DD. Effects of the Smear Layer, Copalite and Oxalate on Microleakage, Oper Dent 1986; 11: 95-102
【特許文献8】Wu MK, de Gee AJ, Wesselink PR, Moorer WR. Fluid Transport and Bacterial Penetration Along Root Canal Fillings, Int Endod J 1993; 26: 203-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
MTA材料は一般的に、外科的及び非外科的根管治療術において有効であるが、歯科文献によっては、低い取扱特性及び砂のような感触のためにこれらの材料を批判している。取扱特性及び配置特性が改善された組成物が求められる。この組成物は、歯科開業医が材料をより効果的に取り扱い且つ配置し得るような、且つ好ましくは、歯科処置が完了する前に材料が硬化し始めるような良好な作業時間を有する必要がある。理想的には、材料は、歯髄組織若しくは根管端を取り囲む組織の治癒又は修復を促すものでなければならない。材料はまた、根管にわたる細菌の移動を防止するような根管象牙質に対する密封をもたらす。本発明はかかる改良された材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、歯内の歯髄及び根管を処置するための改良された組成物を提供する。該組成物は、根管穿孔の修復、根端の充填、損傷を受けた歯髄の治療、及び歯根吸収の修復を含む種々の用途に使用することができる。概して、該組成物は、粉末粒状材料と、水溶性ポリマー、界面活性剤及び水を含む液体キャリアとから成る。種々の粒状材料、高分子材料及び界面活性剤を、本発明に従って使用することができる。例えば、粒状材料は、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、鉄アルミン酸四カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物から成る群から選択され得る。粉末状粒子は、ヒドロキシアパタイト(リン酸カルシウムの一形態)及び放射線不透過性物質等の他の化合物と任意に配合される。好ましくは、粒子は、少なくとも0.5m/g、及びより好ましくは0.9m/gを超える表面積を有する。組成物に使用され得る好適な水溶性高分子材料の例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、部分加水分解ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリアクリル酸(PAA)及びポリメタクリル酸(PMA)、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0017】
水溶性ポリマーと相互作用して、所望の流動学的性質を組成物に与える錯体を形成するため、界面活性剤を添加することは重要である。好適な界面活性剤の例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))、C10〜C24側鎖を有する脂肪酸塩(例えば、ステアリン酸ナトリウム)、アルキルエーテルスルフェート、アルキルサルコシネート、アルキルベタイン、並びにアルキル側鎖を有する他の陰イオン性、陽イオン性及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。好ましくは、組成物中の界面活性剤とポリマーとの比率は6:1以下である。本発明の組成物は多くの有益な性質を有する。感染が起こっている場合には、根端を取り囲む新たな骨及び組織の成長を促す。また、この生体適合性組成物は、歯の根管系における細菌及び流体の漏洩に対する安定なバリアを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】比較用の根管シーラー材料に対して、本発明の第1の組成物で処置された根管系における流体の微量漏洩データを示す棒グラフである。
図2】比較用の根管シーラー材料に対して、本発明の第2の組成物で処置された根管系における流体の微量漏洩データを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、罹患した歯を治癒する上で用いられるのに好適な新規な組成物を提供する。該組成物は特に、根管を治療する上で用いられるのに好適である。また、組成物は、齲蝕歯の窩洞の裏装若しくは覆髄、損傷を負った歯の治療、又は歯冠領域と根尖領域との間の細菌の漏洩を最小限に抑える任意の処置に使用され得る。
【0020】
本発明の組成物は二成分から成る。生成物の成分Aは、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、鉄アルミン酸四カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物から成る群から選択される粒状材料である。かかる粒状材料及びそれらの混合物は、本明細書中で「デンタルクリート(dentalcrete)」粒子と称することがある。デンタルクリート粒子は任意に、ヒドロキシアパタイト(リン酸カルシウムの一形態)粒子と配合することができる。デンタルクリートとヒドロキシアパタイト粒子との組み合わせを含有する組成物は、本明細書中で「ホスクリート(phoscrete)」粒子と称することがある。他の化合物、例えば、酸化ビスマス、硫酸バリウム、酸化タンタル、酸化セリウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、及びランタニド又はアクチニド化合物、タンタル、バリウム又はストロンチウムを含有する放射線不透過性ガラスを、デンタルクリート粉末状粒子と配合して、以下でさらに記載するようにX線に対してより不透過性にすることができる。
【0021】
粒状材料は好適なサイズの粒子を含有していなければならない。微粉材料を作製するために、粒子を従来の空気摩擦法及び固体媒体摩擦法にかけることができる。これにより、粒子の表面積が増大し、且つ粒径が小さくなる。本発明の組成物に用いられる粉末状粒子は好ましくは、0.5m/g以上、及びより好ましくは0.9m/g以上の表面積を有する。粒子は概して、0.5m/g〜3.0m/g、及びより好ましくは0.9m/g〜3.0m/gの範囲の表面積を有する。好ましい一実施形態において、個々の粒子の最大直径及び平均直径が40μm未満、より好ましくは15μm未満、及び最も好ましくは10μm未満となるように、粉末の粒径を小さくする。場合によっては、粒子は、1μm未満の平均粒径を有するほど微細であってもよい。粒子の平均粒径は好ましくは、従来のポルトランドセメント粒子の10分の1の範囲のものである。産業及び建築グレードのセメントは、本発明の組成物に対して大き過ぎる平均粒径を有する粒子を含有している。また、かかる産業用セメントでは粒子の実質的な凝集及び凝結が生じる傾向にある。対照的に、本発明の製剤に使用される粉末状粒子は、実質的に凝集又は凝結しない離散的な別個の粒子から成る。これらの粒子は、小さい粒径及び大きい表面積を有することを特徴とする。組成物中の小さい離散的な別個の粒子は、産業用セメント粒子よりも優れた利点をいくらかもたらす。
【0022】
例えば、このような微粒子を使用することは、水硬性コロイドゲル粒子が歯内の象牙質細管及び側方根管に対応する規模でより多量に存在することを意味する。歯根における象牙質細管は、微視的な(直径1μm〜3μm)線状、且つ1平方ミリメートル当たり800〜57000の密度を有して多量に存在するものである。次に、微粒子は、組成物の他の成分と容易且つ均質に配合することができる。小さい粒子は、レジンマトリックス中で一様に混合及び分配される。対照的に、いくらかの従来の歯科用セメント、例えば上記の特許文献4に記載されているセメントに使用される粒子は、他の成分と混合する前に、初めに無機酸又は有機酸で表面処理を施す必要がある。
【0023】
そのような小さい粒径を有する粉末粒子を使用することにより、以下でさらに記載される最終的な組成物の粘度及び取扱特性が有意に改善される。好ましい粉末は、ケイ酸二カルシウム、ケイ酸三カルシウム、アルミン酸三カルシウム、鉄アルミン酸四カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム及び水酸化カルシウム、並びにそれらの組み合わせから選択される粒子を含む。粉末は、アルミン酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、ケイ酸三カルシウム、鉄アルミン酸四カルシウム、水酸化カルシウム及び硫酸カルシウム二水和物の化合物等の、様々な量のカルシウム相(最大量から最小量のカルシウム相が挙げられる)を含有し得る。
【0024】
上記粒子(デンタルクリート)は、本発明によれば他の粒状粉末と混合することができる。このような例では、粉末状材料のそれぞれの粒径が実質的に等しい。レジンマトリックス中に分散される粒子は全て、実質的に同じ粉末度を有しているものとする。例えば、好ましい一変形形態において、粒子はヒドロキシアパタイトと混合して、以下でさらに記載されるようなホスクリートを形成する。別の好ましい実施形態では、粒子を、微粉砕した放射線不透過性物質、例えば、酸化ビスマス、酸化スズ、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、バリウム若しくはストロンチウム含有ガラス、又はランタニド及びアクチニドを含む他の原子番号の大きい無毒性金属化合物と混合する。X線放射を吸収するかかる放射線不透過性物質を使用することによって、組成物が歯科用X線で見えるようになる。取り除かれた歯構造に取って代わる組成物がX線像で見えるようになる。これにより、覆髄、歯髄切断、非外科的又は外科的歯根処置後に、組成物が歯の正しい位置に配置されていることを臨床医が確認することを助ける。
【0025】
ホスクリート混合物を形成するために、リン酸カルシウム化合物であるヒドロキシアパタイトを、デンタルクリートにおいてカルシウム化合物の混合物に添加する。一般的に、自原性骨は2つの基本的な成分である有機成分及び無機成分を有する。自原性骨の無機成分は主にヒドロキシアパタイトであり、且つ有機成分は主にコラーゲンである。ヒドロキシアパタイト粉末は、根端を取り囲むか又は歯髄組織と接触する骨及び組織の治癒及び修復を促すことを助けると考えられる。ヒドロキシアパタイトは、デンタルクリートのカルシウム化合物と適合性であり、且つ骨及び組織の修復のための安定で非吸収性プラットフォームを提供する。本発明のヒドロキシアパタイト含有デンタルクリート組成物では、ヒドロキシアパタイト成分は、人骨と同じミネラル組成を有することにより、骨及び組織の再生のための天然の骨格を提供する。しかしながら、アパタイトがカーボネートで部分的に置き換えられるか、又はヒドロキシルがフルオライドで部分的に置き換えられる、ヒドロキシアパタイト組成物における変種も同様に好適である。また、カルシウムがストロンチウム又はバリウムで部分的に置き換えられる組成変種も同様の発明の精神におけるものである。本発明の組成物は全て良好な寸法安定性を有するため、歯に膨張及び応力をもたらすことなく、また細菌の移動を可能にする収縮も起こさない。
【0026】
生成物の成分Bは、水溶性ポリマー及び界面活性剤及び水を含む液体キャリアである。本明細書中で使用される用語「水溶性ポリマー」とは、水中で膨潤するか又は溶解する高分子量の任意の物質を意味する。水溶性ポリマーは、無毒性であり且つ組成物の他の成分と適合性である。好適な水溶性ポリマーの例としては、非イオン性ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)及びそのコポリマー、部分加水分解ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、水溶性ポリサッカライド(例えば、キサンタンガム)、ポリエチレングリコール及びそれらの水溶性誘導体、ポリプロピレングリコール及びそれらの水溶性誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。上記残基を含有する種々の水溶性コポリマーも使用することができる。水溶性ポリマーのさらなる例としては、陰イオン性ポリマー、例えば、ポリアクリル酸(PAA)、それらの水溶性塩、誘導体及びコポリマー、ポリメタクリル酸(PMA)、それらの水溶性塩、誘導体及びそれらの水溶性コポリマー、マレイン酸残基を含有する水溶性コポリマー、ポリグルクロン酸、ポリグルタミン酸及びそれらの水溶性塩、ポリアスパラギン酸(poly-aspertic acid)及びそれらの水溶性塩、ヒアルロン酸及びそれらの水溶性塩及び誘導体、ポリスチレンスルホン酸、それらの塩及びそれらのコポリマーが挙げられる。
【0027】
好ましい実施形態において、水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、部分加水分解ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリアクリル酸(PAA)及びポリメタクリル酸(PMA)、並びにそれらの混合物から成る群から選択される。好ましくは、水溶性ポリマーの分子量は20,000〜2,000,000の範囲であり、より好ましくは、水溶性ポリマーの分子量は80,000〜2,000,000の範囲であり、好ましくは、水溶性ポリマーの濃度は、組成物の重量に基づき約5重量%〜約40重量%の範囲である。
【0028】
組成物中に使用される界面活性剤は、医学的に許容可能であり、且つ歯科用途における使用に好適である必要がある。界面活性剤を添加することにより、安定性及び取扱特性が改善される。界面活性剤は水溶性ポリマーと相互作用して、所望の流動学的性質及び他の物理特性を組成物に与える錯体を形成する。詳細には、得られる組成物は、粉末と混合するとより高い「弾性」且つ「ストリング様」粘稠性(consistency)を有する。重要なことは、界面活性剤と水溶性ポリマーとの相互作用により、これらを粉末と混合させると、組成物の弾性が改善されることである。これは、組成物を他のレジン状根管材料と同様に使用することができることを意味する。さらに、ポリマーによって硬化が促進されることに起因して、混合材料は、局所的な治療領域から容易に流出しない。好適な界面活性剤の例としては、硫酸アルキル(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))、C10〜C24側鎖を有する脂肪酸塩、(例えば、ステアリン酸ナトリウム)、アルキルエーテルスルフェート、アルキルサルコシネート、アルキルベタイン、並びにヒトが使用するのに好適なアルキル側鎖を有する他の陰イオン性、陽イオン性及び非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、界面活性剤は、硫酸アルキル、アルキルエーテルスルフェート及びアルキルサルコシネート、並びにそれらの混合物から成る群から選択される。好ましくは、界面活性剤の濃度は、組成物の重量に基づき約1重量%〜約40重量%の範囲である。界面活性剤とポリマーとの比率は6対1以下でなければならない。好ましい一実施形態において、組成物中の界面活性剤とポリマーとの比率は、3:1以下、及びより好ましくは0.5:1である。
【0029】
例えば可塑剤、軟化剤、湿潤剤、安定化剤及び抗菌剤等の種々の添加剤も混合物に添加することができる。しかしながら、水酸化カルシウム等のカルシウム種粉末硬化剤を必要とするいくらかの従来のセメント材料とは異なり、このような硬化剤を本発明の組成物に添加する必要はない。水酸化カルシウム粒子を任意に本製剤に添加してもよいが、必要とされるものではない。それどころか、本明細書中に記載される製剤は、単独で且つそれ自体が、十分な強度及び他の所望特性を有する。当然のことながら、粉末状粒子を液体キャリアと混合して反応させると、水酸化カルシウムが反応生成物として形成され得ることを理解されたい。例えば、粉末状粒子は、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム及びアルミン酸三カルシウム水和物の粒子を含有し得る。これらの化合物が水と反応すると、水酸化カルシウムを含む何種類かの反応生成物が生成される。
【0030】
実際には、臨床医が、粉末状材料(成分A)をパッド上に分散させ、液体キャリア(成分B)を添加し、且つスパチュラを用いてこれらの成分を共に混合して、本発明の組成物を形成することができる。組成物中の粉末粒子の濃度は概して約1重量%〜約80重量%の範囲であり、且つ液体キャリアの濃度は概して約1重量%〜約50重量%の範囲である。外科的組成物又は修復組成物を調製するために、粒状粉末を好ましくは3対1の比率で液体キャリアと混合させる。すなわち、好ましい一実施形態において、組成物は、約75重量%の粒子と、25重量%の液体キャリアとを含有する。他の例では、粒状粉末を、例えば4対1又は5対1等の種々の比率で液体キャリアと混合することができる。組成物を根管シーラーに使用することが意図される場合には、粉末及び液体は好ましくは、1:1〜2.5:1の範囲の比率で混合される。最終組成物において、含水量は概して、約1重量%〜約50重量%、好ましくは15重量%〜30重量%の範囲であり、且つ水溶性ポリマーは概して、約1重量%〜約50重量%、好ましくは5重量%〜40重量%の量で存在する。ヒドロキシアパタイトは、存在する場合、好ましくは約1重量%〜約30重量%の濃度である。放射線不透過性成分は、存在する場合、好ましくは約1重量%〜約60重量%の濃度である。
【0031】
粒状粉末を液体キャリアと混合すると、親水性である粒子は液体と反応して水和物を形成する。例えば、粒状粉末は好ましくは、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム及びアルミン酸三カルシウムの粒子を含有する。これらの化合物が水と反応すると、ケイ酸三カルシウム水和物、ケイ酸二カルシウム水和物、水酸化カルシウム及びアルミン酸三カルシウム水和物を生成する。各ミネラル化合物は、異なる速度で反応する。例えば、ケイ酸三カルシウムは比較的迅速に反応するのに対し、ケイ酸二カルシウム水和物はそれよりも遅い。水和反応から生成される材料はコロイド水和物ゲルである。好ましくは、ゲル中に分散する粒子は、上記のような非常に小さい粒径を有する。この生成物が、固化し始め、最終的には凝固することにより、粒子の大半が水和した高圧縮強度を有する材料を形成する。混合材料が、流失及び移動に対する良好な耐性を有するため、粒状材料は、水と反応して、in situで比較的高い圧縮強度(30MPa超)を有する物質を形成する。材料は、外科的処置を完了するために根管系を水又は他の流体で洗浄しても流失に耐えることができる。
【0032】
界面活性剤は水溶性ポリマーと相互作用して、錯体を形成する。界面活性剤がポリマーと相互作用すると、ポリマーの流動学的性質及び他の物理特性が変わる。さらに、組成物は好ましい特性を発揮し、特に、組成物の取扱特性及び配置特性が高まる。歯科臨床医は、硬化して根管に岩状物質が形成する前に、より効率的に水和ゲルを用いて作業を行い、またこれを扱うことができる。特に、組成物は、好適な流動学的性質(例えば、粘度、硬化時間、弾性、粘稠性等)を有して、生活歯及び失活歯を治療するのに効果的に使用され得る。良好な弾性は根管シーラーにとって非常に重要なものである。組成物は、良好な安定性を有し且つ粒子を所定位置に保持する。これは外科的処置に非常に重要である。概して、粉末組成物と液体キャリア組成物との組み合わせは、以下でさらに記載されるようなパテ状又はシロップ状の粘稠性を有する。
【0033】
上記のように粉末状材料を、(水溶性ポリマー、界面活性剤及び水を含有する)液体キャリアと混合させることは、本発明の組成物を調製する可能な一方法であるに過ぎないことを理解されたい。他の方法を用いることができる。例えば、成分Aは、粉末状粒子を界面活性剤と配合することによって調製することができ、成分Bは、ポリマーを水に溶解することによって調製することができる。その後、成分Aと成分Bとを合わせて、歯科治療に使用される組成物を形成することができる。別の技法は、粉末状粒子を水と混合させることを伴い(成分A)、その後、この混合物を、予め調製しておいた水溶性ポリマーと界面活性剤との混合物(成分B)と合わせることを伴う。
【0034】
根管治療の場合によっては、ガッタパーチャ及び根管シーラー材料を歯の根尖を越えて押し出すことがある。これらの材料は、刺激物であり、数ヶ月又は数年の間、身体が材料を吸収するか又は封入するまで不快感を残すおそれがある。本発明の組成物は、根管系との良好な生体適合性を有し、且つ特に材料のいずれかが根尖を越えて押し出されても、根端を取り囲む骨及び組織の正常な治癒を促す。組成物は、感染が存在しても根端を取り囲む新たな骨及び組織の成長を促し、且つ細菌と接触するときに抗菌性を示す。生理活性ヒドロキシアパタイト粉末を添加することにより、これらの現象はさらに増強され、材料の用途に応じてセメント質又は補てつ象牙質の成長が促される。
【0035】
本発明の改良された組成物は、ガッタパーチャ及び象牙質に対する高い付着性をもたらす。象牙質又はガッタパーチャに対するシーラーの付着性は、塞がれた根管治療された歯における細菌の移動の防止に関わる歯内治療医の大きな関心事であった。ケイ酸カルシウム化合物及びアルミン酸カルシウム化合物の親水性は、湿潤象牙質との本発明の組成物の反応性を高める。また、本発明の製剤は、部分加水分解ポリビニルアセテート及び/又は使用される他のポリマー中の疎水性側鎖の存在のために、ガッタパーチャに対する高い付着性を有する。疎水性側鎖は、ガッタパーチャに対する親和性を有する。それらの改善された付着特性のために、組成物は、歯の根管系における細菌及び流体の漏洩に対して改善されたバリアを提供する。組成物は根管シーラー、閉塞材料として、逆根管充填(root-end filling)、アペキシフィケーション、穿孔修復、又は歯根吸収に用いられる場合に、歯冠から根尖部への連通経路を効果的に密封する。結果的に、根管系への細菌の移動が低減又は防止される。
【0036】
本発明の改良された組成物の粘度は、パテ又はシロップのようなものである。組成物は、パテ状材料形態である場合に、歯根端切除術、アペキシフィケーション、穿孔修復、閉塞、歯髄切断法又は歯根吸収修復等の根管への適用に使用することができる。組成物は、蜂蜜のような粘稠性を有する弾性材料形態である場合に、根管のシール、又は閉塞に使用することができる。粉末−液体組み合わせの流動学的性質(粘度、弾性等)は、粉末の粒径分布、液体の組成、及び粉末と液体との比率によって求められる。粉末がより微細であり、液体がより粘性であり、ポリマーがより多量であり、且つ粉末と液体との比率がより高いほど、覆髄、窩洞裏装、逆根管充填、閉塞、歯髄切断法、アペキシフィケーション、又は穿孔若しくは歯根吸収の治療に用いられるより良好なパテ状材料が作製される。本発明の組成物は、歯冠又は根尖孔から歯に導入される。
【0037】
例えば、組成物は、歯の少なくとも一部をシールし、歯根穿孔を修復し、歯根吸収を修復し、根端を充填し、且つ表出している歯髄の少なくとも一部を覆うのに使用することができる。組成物はまた、歯髄が表出する可能性がある窩洞作製部を裏装するのに使用することことができる。さらに、本発明の材料を用いて根管の完全な閉塞を行うことができる。また、歯髄切断を行った後、組成物は、歯根において歯根アクセス穴を被覆するのに使用することができる。さらに別の例において、組成物は、ガッタパーチャを根管に導入した後に根管をシールするのに使用することができる。
【0038】
以下の実施例に記載される組成物によって本発明をさらに示すが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるものではない。
【実施例】
【0039】
実施例A
根管シーラーを、40重量%の酸化ビスマスと、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム及び硫酸カルシウムの60重量%の混合物とを有するデンタルクリート(類似の組成物は、73重量%のケイ酸三カルシウム、17重量%のケイ酸二カルシウム、5重量%のアルミン酸三カルシウム、1重量%のテトラカルシウムフェライト、及び4重量%の硫酸カルシウムであった)を用いて配合した。この粉末と混合させる液体キャリアは、5重量%の部分加水分解ポリビニルアセテート、15重量%のn−ドデシル硫酸ナトリウム及び80重量%の水を含有するものとした。得られた根管シーラー製剤を、本実施例A及び図1において「実験MTA」と特定した。
【0040】
実験MTAでシールした根管系(ヒトの歯)の微量漏洩(水力学的コンダクタンス)をin vitroで試験した。手術顕微鏡(OPMI pico(Carl Zeiss Surgical, Inc.(Thornwood, NY)))の下で歯の洗浄及び成形、並びに根管閉塞を行った。術前試験片のレントゲン写真資料、作業長、円錐嵌合、根管充填の術後状態を詳述する。各歯根セグメントに関して、根管の開通は、ISOサイズ#15 Flex−o−file(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いて達成した。作業長は、根尖部の1mm短い地点で確定した。根管の洗浄及び成形は、サイズ2〜4のGates Gliddenドリル及びProfileニッケルチタン回転器具(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いて、クラウンダウン法によって行った。全ての根管を、0.06テーパーのISOサイズ40に調製した。最適な切削効力を保証するために、新しい一揃いの回転器具を2つの歯根の成形に用いた。
【0041】
実験群
10個の歯を実験群として無作為に選択した。BioPure(登録商標)MTAD洗浄用針(ProRinse Needles;Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いて5mLの1.3%次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を2mm以内の作業長に供給し、根管を計測の合間に潅注させた。各根管につき、5mLのBioPure MTAD根管洗浄液(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を、製造業者の使用説明に従い、測定の完了後及び根管閉塞前の最後の清浄として5分間使用した。切除した根管は、複数のペーパーポイント(Lexicon AP0640、Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いて乾燥させた。サイズ#40 Lexicon 0.06テーパーのガッタパーチャマスターコーン(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を1mm以内の作業長に試適し、タグバック(tug-back)を得る必要があればさらに研削した。根管閉塞前にレントゲン写真によってコーンの嵌合を確認した。2:1の粉末対液体比率で粉末と液体とを均質に混合して均質な混合物とすることにより、本発明の実験根管シーラー組成物を根管閉塞それぞれについて新たに混合した。混合した実験根管シーラーをマスターガッタパーチャコーンと共に根管に導入し、根管壁に沿って可能な限り均等に広げた。
【0042】
対照群
10個の歯を対照群として無作為に選択した。ProRinse洗浄用針(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いて5mLの2.6%次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を2mm以内の作業長に供給し、各根管を計測の合間に潅注させた。5mLの17%(0.5M;pH=7.4)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を、測定の完了後及び根管閉塞前の最後の清浄として1分間使用した。切除した根管は、複数のペーパーポイント(Lexicon AP0640、Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いて乾燥させた。実験群と同様に、サイズ#40 Lexicon 0.06テーパーのガッタパーチャマスターコーン(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を1mm以内の作業長に試適し、タグバックを得る必要があればさらに研削した。根管閉塞前にレントゲン写真によってコーンの嵌合を確認した。
【0043】
Kerr Corp.(Orange, CA)から入手可能な比較用根管シーラー(粉末基剤と液体触媒とを有する酸化亜鉛ユージノールシーラー)を製造業者の使用説明に従って混合し、マスターガッタパーチャコーンと共に対照群の歯の根管に導入した。
【0044】
対照及び実験
200℃のシステムB熱源を用いた連続波加圧法(continuous wave condensation technique:垂直加圧法)により根管を同じように塞ぎ、この際、23ゲージのCalamus(登録商標)Flow Singlesガッタパーチャカートリッジを用いたCalamus Flow Obturation Delivery System(Dentsply Tulsa Dental Specialties)で裏込めした。
【0045】
試験
実験群及び対照群の両方による充填された試験片を7日間37℃及び100%相対湿度で貯蔵し、シーラーを硬化させた。特許文献7によってこれまでに報告されているプロトコルの変法である改変した流体濾過研究デザインを用いて、各群(N=10)における充填された歯根の漏洩を評価した。
【0046】
簡潔には、初めに、長さの短い18ゲージステンレススチールチューブを、Plexiglasの2cm×2cm×0.6cm部材に作られたセンター穴に挿入することによって、Plexiglas接続プラットフォームを構築した。チューブはPlexiglasの上から1mm突出させた。次に、2mm深さの窩洞を、速度の遅いタングステンカーバイドバーを用いて各歯根セグメントの歯冠端から作製した。この変法により、突出した金属チューブを挿入させるためのリザーバを作製した。この改変プロトコルの原理は、この技法により金属チューブの詰まりを解決し且つ不当な芳しくない結果を防止した近年実施されたパイロット研究に基づくものである。歯セグメントをPlexiglasプラットフォームに取り付け、シアノアクリレート接着剤(Zapit、Dental Ventures of America, Inc.(Anaheim Hills, CA))でシールした。充填された歯根をそれぞれ、歯冠の根管開口が金属チューブの開口の中心になるように、ZapitでPlexiglasプラットフォームにセメント接合させた。その後、流体濾過装置との歯根セグメントのアタッチメントのレントゲン写真を撮影し、歯根セグメントの歯冠部に沿って作製されたリザーバに挿入されるよう金属チューブが調整されていることを保証した。
【0047】
微量漏洩を測定するために、各Plexiglas−歯根アセンブリを、特許文献8によってこれまでに記載されているように且つ改変されたように、流体濾過装置に取り付けた。ポリエチレンチューブ(Fisher Scientific(Pittsburg, PA))を用いて、蓄圧器を25μLマイクロピペット(Microcaps、Fisher Scientific)に接続した。さらなるチューブを用いて、マイクロピペットを、マイクロシリンジ(Gilmont instruments, Inc.(Great Lakes, NY))及び歯根が取り付けられたPlexiglasに接続した。少量(1μL〜2μL)の気泡を引き続きマイクロシリンジを用いて系に導入し、マイクロピペットに送った。その後、窒素ガスを使用して改変圧力釜内部のリン酸緩衝液含有リザーバに69kPa(すなわち、10psi)の圧力をかけた。リン酸緩衝液は、根管充填中の間隙を通じて送られ、マイクロピペット中の気泡が移動する。マイクロピペットにおける気泡の移動を観測することによって単位時間当たりの流体の流れの定量化を行った。ミリメートル単位の気泡の線形移動は、伸張したポリエチレンチューブが完全に弛緩することが可能となる流体濾過系の平衡の10分後に記録された。マイクロピペットにおける線形流体移動は15分間行われた。これはmm/分単位で表した。これらの15分の測定を各歯根セグメントについて3回行い、平均線形流体移動を導いた。各歯根セグメントの流体の平均流量は、平均線形流体移動をマイクロピペットの内径(0.386mm)に乗じることによって算出し、μL min−169kPa−1で表した。
【0048】
正の対照及び負の対照に関する流体の流量の測定
上記のプロトコルを、正の対照群及び第2の負の対照群における流体の流量の測定に使用した。第1の正の対照群(すなわち、充填されていない根管)には、極端に急速な流体移動では、泡をマイクロピペット内に流すことによる線形流体移動の記録が認められないため、プロトコルの改変が必要であった。したがって、歯根セグメントを流体濾過装置に接続した後で、事前に秤量したプラスチックビーカーをこの群の歯根セグメントの根尖上に設けた。根尖を通じて生じるリン酸緩衝液をプラスチックビーカー内に回収した。記録時間も10分から1分に削減された。1分間の間に69kPaの圧力において回収された水の重量を容量(mL)に変換した。第1の正の対照群における流量は同様にμL min−169kPa−1で表した。
【0049】
データ処理及び統計学的解析
10psi圧力をcm水圧に変換し(705cm)、全ての群における流体の平均流量(すなわち、水力学的コンダクタンス)をμL min−1cmH−1で表した。実験群及び対照群による水力学的コンダクタンスデータを統計学的に解析した。
【0050】
概略的なグラフを図1に提示する。示されるように、ガッタパーチャを用いた実験MTAシーラーの微量漏洩は、対照(Kerr社のPulp Canal Sealerを用いたガッタパーチャのマスターコーン)と統計学上異ならなかった。しかしながら、各群から大きく外れたデータ点を除くと、対照材料の水力学的コンダクタンスは、本発明の新規な根管シーラー組成物よりも28日の時点でかなり大きくなった。このため、本発明の組成物(実験MTA)は根管をシールする上で有効である。組成物は、根管への流体の透過に耐性を有するバリアを形成することができる。組成物は、根管系と周囲の組織との流体経路を密封することができる。
【0051】
実施例B
実施例Aに記載された粉砕された粒状材料を、各種液体キャリアと共に用いて、本実施例Bにおいて組成物を調製した。詳細には、粉末を、以下の表1に挙げられる液体と混合して種々の組成物を調製した。組成物中の粉末の濃度は、約67重量%〜約80重量%の範囲とした。粉末を約20%の液体と混合すると、パテ状の組成物が得られた。この組成物は、根管閉塞、根端の修復、穿孔修復、又は他の処置に使用することができた。n−ドデシル硫酸ナトリウムによって、取扱特性が改善されたものの、硬化は促進されなかった。ポリビニルアセテートは、単独で使用されると硬化を妨げる可能性がある。PVAとSDSとの組み合わせにより、いくらかの歯科用途に望ましい弾性がもたらされた。得られた混合物は、水の流れに伴う流失に耐性を有し、且つ臨床医がその部位の被覆及び処置の完了を進めるのに十分速く固化した。種々の粘度が得られたが、調製された組成物はそれぞれ、根管閉塞、根端(root-endroot-end)の修復、及び穿孔修復における使用に申し分のないものであると考えられる。約33%の液体を添加した場合には、弾性軟度(elastic consistency)が得られ、組成物は根管シーラー材料としての使用に好適なものとなった。
【0052】
驚くべきことに、ポリビニルアルコール又は加水分解ポリビニルアセテートと、n−ドデシル硫酸ナトリウムとの組み合わせは相乗効果を有しており、これらの成分を含有する液体キャリアを粉末と混合すると、得られた組成物は、この材料が根管シーラーとして使用されることを可能にする弾性軟度を有していた。水溶性ポリマーのこの組み合わせはまた、粉末/液体混合物の見かけの硬化時間を減少し且つこの耐流失性を増大させた。単独では、水中のいずれのポリマーも満足のいくものではなかった。種々のポリビニルアルコールを試験すると、全てが種々の粘度の好適な混合物を成していた。部分加水分解ポリビニルアセテートは、完全加水分解ポリビニルアルコール同様に有効なものであった。最良の液体キャリアの組み合わせは、界面活性剤と水溶性ポリマーとの比率が6対1であるサンプル4の組み合わせであった。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例C
本実施例Cでは、実施例Aに記載された粉砕された粒状材料を使用し、種々の液体キャリアを表2に示すように試験した。組成物中の粉末の濃度は、約67重量%〜約75重量%の範囲とした。粘度はサンプルによって様々な値をとるが、各サンプルは歯科用途に申し分のないものであった。Steol材料は、n−ドデシル硫酸ナトリウムの好適な代替物であった。ポリビニルピロリドンも、ポリビニルアセテートの代わりに使用するのに好適な材料であった。しかしながら、単独で使用する場合、ポリビニルピロリドンは弾性混合物を作り出さないものの、硬化を促進し、また混合物に強度を早くにもたらすと考えられた。
【0055】
【表2】
【0056】
実施例D
実施例Aに記載された粉砕された粒状材料を用いて、本実施例Dにおける組成物を調製した。表3に挙げられる有機成分を含有する種々の液体キャリアを試験した。組成物中の粉末の濃度は、約67重量%〜約75重量%の範囲とした。これらの液体は、粉末を硬化させることができるが、デンタルクリートと混合した場合には、実施例A、実施例B及び実施例Cの液体よりも水の流れによる流失に対する耐性が低かった。
【0057】
【表3】
【0058】
実施例E
本実施例Eでは、実施例Aに記載された粉砕された粒状材料を用いた。表4に挙げられる有機成分を含有する種々の液体キャリアを試験した。組成物中の粉末の濃度は、約67重量%〜約75重量%の範囲とした。これらの成分としては、ポリビニルピロリドン及びグリセロールが挙げられる。これらのグリセロール化合物は、材料を適切に使用することができないほど粉末の硬化を遅延させるものであった。
【0059】
【表4】
【0060】
グリセロールを含有しない上記の表4における組成物9を、微量漏洩について試験し、歯内治療術中の逆根管充填に使用される従来の材料と同等又はそれよりも優れていることを見出した。この組成物は、本実施例E及び図2において「ホスクリート」と称される。漏洩を、2つの市販の頻繁に提唱される逆根管充填材であるWhite ProRoot MTA(Dentsply Tulsa Dental Specialties)及びSuper EBA(Bosworth Company(Skokie, IL))と比較した。
【0061】
試験手順において、洗浄及び成形した単根歯を、シーラーを用いずに単一のガッタパーチャコーンで充填し、それらの根端で切断した。42個の最近抜歯したヒトの単根歯を、細菌生育を防ぐために0.02%アジ化ナトリウムを含有する0.9%NaCl溶液中に使用するまで貯蔵した。計測は、1mmのF3 ProTaperファイルチップが根尖孔を越えて突出するまで、ProTaperニッケルチタン回転器具(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いたクラウンダウン法によって行った。根管を計測の合間に10mLの6.15%次亜塩素酸ナトリウムで清浄した後、最後の清浄に5mLの17%エチレンジアミン四酢酸を用いた。計測した各歯根の尖端3mmを、縦軸に対して10度の斜面で切除した。超音波チップを用いて3mmの深さに根端標本を作製した。
【0062】
顕微手術プラガーを用いて混合材料を根端標本内に詰め、充填させた歯を37℃及び100%相対湿度の加湿装置に24時間放置した後、10mLのリン酸緩衝生理食塩水を含有する別個のシンチレーションバイアルで貯蔵した。これらの歯をリン酸緩衝生理食塩水中でエージングさせた。漏洩は、3日及び42日目に評価した。逆根管充填の漏洩は、流体濾過デザインを用いて評価した。流体の流れの定量化(μL/分)は、Flodec装置のガラスキャピラリー管内部の水泡の移動を感光性フォトダイオードを介してモニタリングすることによって行った。データの回収は、Flodecソフトウェアを用いて1.04秒毎に行い、結果を図2に示す。3日の試験期間に関して、同じ大文字記号(例えば、B及びB)を有する材料間の差異は、統計学上有意なものではない(p>0.05)。42日の試験期間に関して、同じ小文字記号(例えば、b及びb)を有する材料間の差異は統計学上有意なものではない(p>0.05)。各逆根管充填材について、黒い水平バーで結ばれたサブグループは、流体の漏洩における有意な差異を示している(p<0.05)。
【0063】
両試験期間とも、Super EBAグループの漏洩が、互いに差異がない他の2つのグループ(図2中のWhite ProRoot MTA及び本発明のホスクリート実験シーラー)よりも有意に高かった。各材料について、42日目における漏洩は、3日目における漏洩よりも有意に低かった。実験の逆根管充填ホスクリート材料は優れたシールをもたらした。
【0064】
実施例F
実施例Aに記載された粉砕された粒状材料を本実施例Fにおいて用いた。組成物中の粉末の濃度は、約67重量%〜約75重量%の範囲とした。表5に挙げられる種々の有機成分(ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート及びn−ドデシル硫酸ナトリウムを含む)を含有する種々の液体キャリアを試験した。これらの液体は粉末を硬化させることができ、且つ水の流れによる流失に対する高い耐性を有した。驚くべきことに、これらの組み合わせは、個々に試験される材料のいずれよりも流失に対してより高い耐性を有した。
【0065】
【表5】
【0066】
表5に記載された成分を有する液体キャリアは、粒状粉末と混合させて本発明の組成物を作製するのに最も好ましい液体であると考えられる。液体中の成分の濃度は、例えば、表5に示されるように調節することができ、且つ得られる組成物は種々の歯内への適用における使用に好適であることが見出された。これらの用途としては、例えば、根管シール、根管閉塞、歯根の修復、及び生活歯髄の治療が挙げられる。
【0067】
実施例G
本実施例Gでは、種々の粉砕された粒状材料を調製及び試験した。実施例Gの粉末は、異なるポリマーを添加することによって、実施例Aに記載される粉末とは異なるものとした。水を実施例Gの粉末に添加した。以下の表6は成分をより詳細に記載している。実施例Gの得られる組成物は、実施例Fの組成物に比べて低い取扱特性及び硬化性を有した。
【0068】
【表6】
【0069】
実施例H
本実施例Hでは、ヒドロキシアパタイト又は硫酸カルシウムを含むように粉末成分を変えた。実施例Fの液体キャリアをこの粉末と共に用いた。詳細には、4対1の粉末対液体比率(80%粉末)で液体をこの粉末と混合した。液体キャリア番号4(実施例F)と、以下の表7中の粉末混合物番号1との組み合わせは、本実施例における好ましい組成物であった。組成物の粘稠性はパテ状であった。ISO 6876における方法に従い測定した組成物の放射線不透過性は、9mm〜10mmのアルミニウムに等しかった。
【0070】
【表7】
【0071】
実施例I
本実施例Iでは、実施例Aに記載された粉末成分を用いた。以下の表8に記載される液体をこの粉末と混合した。シリカゾルによって、組成物の取扱特性(handling)は改善されたが、硬化速度は上がらなかった。炭酸カリウムは組成物の硬化を促進させたが、組成物の耐流失性が要求されるほど強くなかった。歯科医業では洗い流すことにより、閉鎖する前に術部又は血液領域を洗浄する。これは通常、滅菌水又は滅菌溶液で行われる。このため、組成物が洗い流されないような良好な耐流失性を有することが重要である。
【0072】
【表8】
【0073】
実施例J
本実施例Jでは、表9に記載された種々の有機成分を、(実施例Aに記載される)粉末状粒子に添加し、水と混合して組成物を調製した。
【0074】
【表9】
【0075】
これらの組成物は、水のみを含有する組成物に比べて粉末の硬化を促進させたが、実施例Fにおける液体がもたらす耐流失性を有しなかった。
【0076】
実施例K
本実施例Kでは、本発明により作製される材料(4:1の粉末対液体比率で実施例Fにおける液体キャリア番号4と混合される実施例Hにおける組成物番号1)、及び市販のWhite ProRoot MTAシーラー/水の歯内療法学的な生体適合性を試験した。4匹のイヌを根管治療に関する本プロトコルの被検体とした。4本の上顎前歯である上顎第2及び第3小臼歯、並びに下顎第2、第3及び第4小臼歯を実験デザインに用いた。XCPレントゲン写真システムを用いて又は咬合型口腔内フィルムにより、上顎前歯及び下顎小臼歯の術前及び術後レントゲン写真を撮影した。上顎第2及び第3小臼歯において歯髄切断法を行った。実験材料又は対照材料を直接歯冠歯髄断端に置いた。下顎第2、第3及び第4小臼歯について、これまでの標準化プロトコルに続けて、歯の意図的な医原性穿孔に分岐状穿孔を作製した。これらの穿孔を、対照材料又は実験材料で修復した。逆根管充填のための処理を行った歯について、根管治療を行った。逆根管充填に使用される材料で全ての根管を塞いだ。根管閉塞の完了後、外科的処置を行った。
【0077】
60日の終わりに、イヌ被検体を犠牲にした。歯根を含有する顎のブロックセクション(Block sections)を切断しレントゲン写真を撮る。次に、ブロックセクションを組織学的検査のための加工にかけた。歯を、分離し且つ組織学的な切片形成用に配向させ、脱水し、且つパラフィンブロックに包埋した。Leitz 1512回転式ミクロトームを用いた光学顕微鏡検査には、頬舌縦方向配向(longitudinal orientation)における5ミクロン〜7ミクロン厚の一連の切片を用意した。切片はヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色した。根管組織応答は、組織学の知識を有する一歯内治療医である検査員によって独立的且つ盲目的に(すなわち、材料が何であるかを知らずに)等級分けした。各歯切片のスコアを記録した後、平均した。
【0078】
本試験の実験材料の取扱特性及び硬化性は、対照材料よりも著しく改善されていた。新規な材料は、全ての処置に関して混合及び配置が大いに容易となった。処理後の骨成長のレントゲン写真の証拠により見られるように、治癒は有意なものであった。
【0079】
以下の表10及び10Aは組織学的な評価結果を示す。
【0080】
【表10】
【0081】
【表11】
【0082】
評価される組織学的切片において、サンプルの大部分は炎症を示さなかった(1未満の平均スコア(ゼロのスコア)は、治療を伴わないと考えられる健常組織を示す)。術部及び根端に隣接して再生される骨の質も、検査されたサンプルの大部分において正常であった。術部に嵌入し、表面上で新たな骨芽細胞によって取り囲まれる新たな骨の有意な成層があった。無機基質(状来の骨形成細胞)の新たな成層は明白であった。破骨細胞はわずかしか見られず、材料の吸収は見られなかった。切除された象牙質表面の大部分にセメント質の堆積が見られた。平均スコアはERTM1に関して1.8であり、これは、歯根の孔の50%近くが、種々の厚み及び形態学的特徴の、歯根の孔を被覆するセメント質の様々な層で被覆されていることを示している。尖端歯周靭帯形成は、全てのケースで正常であった。機能配向されたコラーゲン線維は、多くの切片において根端を取り囲んでいた。サンプルの大部分では、これらの線維が治癒中に形成した新たなセメント質又は骨に挿入されていた。歯根表面の吸収の存在は極めて限定的なものであった(スコア=実験材料に関する0.2)。見てみると、吸収自体が実験材料付近に存在することはなかった。分岐部におけるいくらかの細胞破壊が、破壊的な口腔環境への分岐部の曝露に起因して見られた。しかしながら、かかる曝露から防護した場合には、良好な治癒が観測された。分岐がイヌの解剖学的構造において非常に多い場合、いくらかの分岐状穿孔部がサンプルのデコロネーション(decoronation)中になくなった。
【0083】
歯髄切断試験片の等級分けにおいて、ケースの大部分が、最小値から炎症なしまでを示した。正常組織から象牙芽細胞層のいくらかの崩壊まで、歯髄組織モルフォロジの全体的な崩壊までの範囲の広範な歯髄モルフォロジが示された。しかしながら、歯髄組織の全体的な崩壊がある場合であっても、実験材料の下に硬質組織堆積の穏やかな形成の形跡が見られた。この硬質組織は、歯髄崩壊が試験片調製時の人為的な結果であったとされ得ることを示している。象牙質形成は60日でよく体系化されたことを示すわずかなケースもあるが、形成した硬質組織バリアは、側方境界にいくらかの正常な象牙質形成(管状象牙質の形成)を伴って高密度且つ厚みがある。
【0084】
実験材料は、歯周組織を含む歯根周囲組織の修復に寄与した。損傷を与える歯髄切断において歯髄を保護した象牙質バリアが形成された。材料の吸収は見られなかった。
【0085】
要約すると、実験材料は、60日後においてこれらのイヌ被検体の根尖周囲組織及び歯髄組織に生体適合性であった。材料は、これらの組織と接するように用いて組織の治癒及び修復を誘起するのに好適なものであった。試験された特定の指標は、レントゲン写真及び組織学の両方において満足のいくものであった。
【0086】
取扱特性
本発明の組成物は最適な取扱特性を有する。ケイ酸カルシウム及びアルミン酸カルシウムは、粗粒子が取り除かれていれば扱いやすく、本明細書中に述べられる水溶性物質と組み合わされる。取扱特性の改善により、臨床医がこれらの水硬性材料を歯科処置に使用して、それらを疾患又は外傷位置に配することがかなり容易となる。
【0087】
作業時間及び硬化時間
本発明の組成物は最適な作業時間及び硬化時間を有する。作業時間は、歯科標準ISO9917又はISO 6876(水系歯科用セメント)に従って測定され、且つこれは、成分の最初の混合から材料が固化し始める時間までの測定時間であり、すなわち、材料は、材料の性質に悪影響を伴うことなくこの時間中に処理され得る。正味硬化時間も歯科標準ISO−9917に従って測定され、且つこれは、成分の混合終了から材料が硬化した時間までの測定時間である。より詳細には、正味硬化時間は、材料をモールドにキャストすることによって測定される。混合が完了した後、圧子装置をセメントの表面上に鉛直に降ろし、そこで5秒間停止させる。予試験を行い、2×倍率で見たときに針が完全に円形の圧痕をセメントにつけなくなるまで30秒間隔の圧入を繰り返して近似的な硬化時間を求める。必要であれば圧入の合間に針を洗浄する。このプロセスを繰り返して、上記のようにして求めた近似的な硬化時間前30秒で圧入を開始し、10秒間隔で圧痕をつける。正味硬化時間は、混合終了から針が完全に円形の圧痕をセメントにつけなくなるまでの経過時間として記録される。同様の試験手順(ISO 6876(根管シーラー))も、組成物の作業及び硬化時間を測定するのに用いることができる。
【0088】
概して、本発明の組成物は、約5分〜約60分の範囲の作業時間を有する。組成物の正確な作業時間はその特定の製剤に依存する。上記のように、種々の製剤が、根管歯根端切除術、アペキシフィケーション、穿孔修復、閉塞、歯髄切断法、覆髄、窩洞裏装、根端吸収修復、及び根管シールに使用することができる。最終的な硬化時間は一般的に約90分〜約12時間の範囲内である。この作業時間の短縮により、歯科開業医が材料をより効果的に取り扱い且つ配することが可能になる。臨床医は、根管を充填又は修復して、材料が固化し始めるのを観察し、且つ岩状物質を形成することができる。臨床医は、より良好に作業し、材料を成形することができる。臨床医が材料を治療領域に塗布した後、材料は適切な位置に保持される。材料は良好な粘稠性を有するため、その領域から移動することはない。これにより、臨床医は、外科的治療術又は生活歯髄療法術を実施し且つ血液が存在する際に洗い流すことによって清掃することが可能となる。さらに、修復用複合材等のさらなる歯科用材料を、根管充填/シール材料が硬化を開始するときにその上に配することができる。覆髄処置又は窩洞裏装処置に使用される場合、配される根管充填/シール材料は、歯根象牙質と、好ましくは、根管を充填するか又は生活歯髄を治療するのに用いられる任意の他の材料(例えば、ガッタパーチャ又は歯科用複合材)と結合する。根管充填/シール組成物は、硬化及び固化する場合、根管系における細菌及び流体の漏洩に対する固体バリアを提供する。根管系と周囲の組織との流体経路は密封される。さらに、根管充填/シール材料は殺菌性である。
【0089】
当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、種々の変更が例示される実施形態及び本明細書中の説明でなされ得ることを理解するであろう。本発明の精神及び範囲内の全てのこのような変更は添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
図1
図2