【実施例】
【0039】
実施例A
根管シーラーを、40重量%の酸化ビスマスと、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム及び硫酸カルシウムの60重量%の混合物とを有するデンタルクリート(類似の組成物は、73重量%のケイ酸三カルシウム、17重量%のケイ酸二カルシウム、5重量%のアルミン酸三カルシウム、1重量%のテトラカルシウムフェライト、及び4重量%の硫酸カルシウムであった)を用いて配合した。この粉末と混合させる液体キャリアは、5重量%の部分加水分解ポリビニルアセテート、15重量%のn−ドデシル硫酸ナトリウム及び80重量%の水を含有するものとした。得られた根管シーラー製剤を、本実施例A及び
図1において「実験MTA」と特定した。
【0040】
実験MTAでシールした根管系(ヒトの歯)の微量漏洩(水力学的コンダクタンス)をin vitroで試験した。手術顕微鏡(OPMI pico(Carl Zeiss Surgical, Inc.(Thornwood, NY)))の下で歯の洗浄及び成形、並びに根管閉塞を行った。術前試験片のレントゲン写真資料、作業長、円錐嵌合、根管充填の術後状態を詳述する。各歯根セグメントに関して、根管の開通は、ISOサイズ#15 Flex−o−file(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いて達成した。作業長は、根尖部の1mm短い地点で確定した。根管の洗浄及び成形は、サイズ2〜4のGates Gliddenドリル及びProfileニッケルチタン回転器具(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いて、クラウンダウン法によって行った。全ての根管を、0.06テーパーのISOサイズ40に調製した。最適な切削効力を保証するために、新しい一揃いの回転器具を2つの歯根の成形に用いた。
【0041】
実験群
10個の歯を実験群として無作為に選択した。BioPure(登録商標)MTAD洗浄用針(ProRinse Needles;Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いて5mLの1.3%次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を2mm以内の作業長に供給し、根管を計測の合間に潅注させた。各根管につき、5mLのBioPure MTAD根管洗浄液(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を、製造業者の使用説明に従い、測定の完了後及び根管閉塞前の最後の清浄として5分間使用した。切除した根管は、複数のペーパーポイント(Lexicon AP0640、Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いて乾燥させた。サイズ#40 Lexicon 0.06テーパーのガッタパーチャマスターコーン(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を1mm以内の作業長に試適し、タグバック(tug-back)を得る必要があればさらに研削した。根管閉塞前にレントゲン写真によってコーンの嵌合を確認した。2:1の粉末対液体比率で粉末と液体とを均質に混合して均質な混合物とすることにより、本発明の実験根管シーラー組成物を根管閉塞それぞれについて新たに混合した。混合した実験根管シーラーをマスターガッタパーチャコーンと共に根管に導入し、根管壁に沿って可能な限り均等に広げた。
【0042】
対照群
10個の歯を対照群として無作為に選択した。ProRinse洗浄用針(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いて5mLの2.6%次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を2mm以内の作業長に供給し、各根管を計測の合間に潅注させた。5mLの17%(0.5M;pH=7.4)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を、測定の完了後及び根管閉塞前の最後の清浄として1分間使用した。切除した根管は、複数のペーパーポイント(Lexicon AP0640、Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いて乾燥させた。実験群と同様に、サイズ#40 Lexicon 0.06テーパーのガッタパーチャマスターコーン(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を1mm以内の作業長に試適し、タグバックを得る必要があればさらに研削した。根管閉塞前にレントゲン写真によってコーンの嵌合を確認した。
【0043】
Kerr Corp.(Orange, CA)から入手可能な比較用根管シーラー(粉末基剤と液体触媒とを有する酸化亜鉛ユージノールシーラー)を製造業者の使用説明に従って混合し、マスターガッタパーチャコーンと共に対照群の歯の根管に導入した。
【0044】
対照及び実験
200℃のシステムB熱源を用いた連続波加圧法(continuous wave condensation technique:垂直加圧法)により根管を同じように塞ぎ、この際、23ゲージのCalamus(登録商標)Flow Singlesガッタパーチャカートリッジを用いたCalamus Flow Obturation Delivery System(Dentsply Tulsa Dental Specialties)で裏込めした。
【0045】
試験
実験群及び対照群の両方による充填された試験片を7日間37℃及び100%相対湿度で貯蔵し、シーラーを硬化させた。特許文献7によってこれまでに報告されているプロトコルの変法である改変した流体濾過研究デザインを用いて、各群(N=10)における充填された歯根の漏洩を評価した。
【0046】
簡潔には、初めに、長さの短い18ゲージステンレススチールチューブを、Plexiglasの2cm×2cm×0.6cm部材に作られたセンター穴に挿入することによって、Plexiglas接続プラットフォームを構築した。チューブはPlexiglasの上から1mm突出させた。次に、2mm深さの窩洞を、速度の遅いタングステンカーバイドバーを用いて各歯根セグメントの歯冠端から作製した。この変法により、突出した金属チューブを挿入させるためのリザーバを作製した。この改変プロトコルの原理は、この技法により金属チューブの詰まりを解決し且つ不当な芳しくない結果を防止した近年実施されたパイロット研究に基づくものである。歯セグメントをPlexiglasプラットフォームに取り付け、シアノアクリレート接着剤(Zapit、Dental Ventures of America, Inc.(Anaheim Hills, CA))でシールした。充填された歯根をそれぞれ、歯冠の根管開口が金属チューブの開口の中心になるように、ZapitでPlexiglasプラットフォームにセメント接合させた。その後、流体濾過装置との歯根セグメントのアタッチメントのレントゲン写真を撮影し、歯根セグメントの歯冠部に沿って作製されたリザーバに挿入されるよう金属チューブが調整されていることを保証した。
【0047】
微量漏洩を測定するために、各Plexiglas−歯根アセンブリを、特許文献8によってこれまでに記載されているように且つ改変されたように、流体濾過装置に取り付けた。ポリエチレンチューブ(Fisher Scientific(Pittsburg, PA))を用いて、蓄圧器を25μLマイクロピペット(Microcaps、Fisher Scientific)に接続した。さらなるチューブを用いて、マイクロピペットを、マイクロシリンジ(Gilmont instruments, Inc.(Great Lakes, NY))及び歯根が取り付けられたPlexiglasに接続した。少量(1μL〜2μL)の気泡を引き続きマイクロシリンジを用いて系に導入し、マイクロピペットに送った。その後、窒素ガスを使用して改変圧力釜内部のリン酸緩衝液含有リザーバに69kPa(すなわち、10psi)の圧力をかけた。リン酸緩衝液は、根管充填中の間隙を通じて送られ、マイクロピペット中の気泡が移動する。マイクロピペットにおける気泡の移動を観測することによって単位時間当たりの流体の流れの定量化を行った。ミリメートル単位の気泡の線形移動は、伸張したポリエチレンチューブが完全に弛緩することが可能となる流体濾過系の平衡の10分後に記録された。マイクロピペットにおける線形流体移動は15分間行われた。これはmm/分単位で表した。これらの15分の測定を各歯根セグメントについて3回行い、平均線形流体移動を導いた。各歯根セグメントの流体の平均流量は、平均線形流体移動をマイクロピペットの内径(0.386mm
2)に乗じることによって算出し、μL min
−169kPa
−1で表した。
【0048】
正の対照及び負の対照に関する流体の流量の測定
上記のプロトコルを、正の対照群及び第2の負の対照群における流体の流量の測定に使用した。第1の正の対照群(すなわち、充填されていない根管)には、極端に急速な流体移動では、泡をマイクロピペット内に流すことによる線形流体移動の記録が認められないため、プロトコルの改変が必要であった。したがって、歯根セグメントを流体濾過装置に接続した後で、事前に秤量したプラスチックビーカーをこの群の歯根セグメントの根尖上に設けた。根尖を通じて生じるリン酸緩衝液をプラスチックビーカー内に回収した。記録時間も10分から1分に削減された。1分間の間に69kPaの圧力において回収された水の重量を容量(mL)に変換した。第1の正の対照群における流量は同様にμL min
−169kPa
−1で表した。
【0049】
データ処理及び統計学的解析
10psi圧力をcm水圧に変換し(705cm)、全ての群における流体の平均流量(すなわち、水力学的コンダクタンス)をμL min
−1cmH
2O
−1で表した。実験群及び対照群による水力学的コンダクタンスデータを統計学的に解析した。
【0050】
概略的なグラフを
図1に提示する。示されるように、ガッタパーチャを用いた実験MTAシーラーの微量漏洩は、対照(Kerr社のPulp Canal Sealerを用いたガッタパーチャのマスターコーン)と統計学上異ならなかった。しかしながら、各群から大きく外れたデータ点を除くと、対照材料の水力学的コンダクタンスは、本発明の新規な根管シーラー組成物よりも28日の時点でかなり大きくなった。このため、本発明の組成物(実験MTA)は根管をシールする上で有効である。組成物は、根管への流体の透過に耐性を有するバリアを形成することができる。組成物は、根管系と周囲の組織との流体経路を密封することができる。
【0051】
実施例B
実施例Aに記載された粉砕された粒状材料を、各種液体キャリアと共に用いて、本実施例Bにおいて組成物を調製した。詳細には、粉末を、以下の表1に挙げられる液体と混合して種々の組成物を調製した。組成物中の粉末の濃度は、約67重量%〜約80重量%の範囲とした。粉末を約20%の液体と混合すると、パテ状の組成物が得られた。この組成物は、根管閉塞、根端の修復、穿孔修復、又は他の処置に使用することができた。n−ドデシル硫酸ナトリウムによって、取扱特性が改善されたものの、硬化は促進されなかった。ポリビニルアセテートは、単独で使用されると硬化を妨げる可能性がある。PVAとSDSとの組み合わせにより、いくらかの歯科用途に望ましい弾性がもたらされた。得られた混合物は、水の流れに伴う流失に耐性を有し、且つ臨床医がその部位の被覆及び処置の完了を進めるのに十分速く固化した。種々の粘度が得られたが、調製された組成物はそれぞれ、根管閉塞、根端(root-endroot-end)の修復、及び穿孔修復における使用に申し分のないものであると考えられる。約33%の液体を添加した場合には、弾性軟度(elastic consistency)が得られ、組成物は根管シーラー材料としての使用に好適なものとなった。
【0052】
驚くべきことに、ポリビニルアルコール又は加水分解ポリビニルアセテートと、n−ドデシル硫酸ナトリウムとの組み合わせは相乗効果を有しており、これらの成分を含有する液体キャリアを粉末と混合すると、得られた組成物は、この材料が根管シーラーとして使用されることを可能にする弾性軟度を有していた。水溶性ポリマーのこの組み合わせはまた、粉末/液体混合物の見かけの硬化時間を減少し且つこの耐流失性を増大させた。単独では、水中のいずれのポリマーも満足のいくものではなかった。種々のポリビニルアルコールを試験すると、全てが種々の粘度の好適な混合物を成していた。部分加水分解ポリビニルアセテートは、完全加水分解ポリビニルアルコール同様に有効なものであった。最良の液体キャリアの組み合わせは、界面活性剤と水溶性ポリマーとの比率が6対1であるサンプル4の組み合わせであった。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例C
本実施例Cでは、実施例Aに記載された粉砕された粒状材料を使用し、種々の液体キャリアを表2に示すように試験した。組成物中の粉末の濃度は、約67重量%〜約75重量%の範囲とした。粘度はサンプルによって様々な値をとるが、各サンプルは歯科用途に申し分のないものであった。Steol材料は、n−ドデシル硫酸ナトリウムの好適な代替物であった。ポリビニルピロリドンも、ポリビニルアセテートの代わりに使用するのに好適な材料であった。しかしながら、単独で使用する場合、ポリビニルピロリドンは弾性混合物を作り出さないものの、硬化を促進し、また混合物に強度を早くにもたらすと考えられた。
【0055】
【表2】
【0056】
実施例D
実施例Aに記載された粉砕された粒状材料を用いて、本実施例Dにおける組成物を調製した。表3に挙げられる有機成分を含有する種々の液体キャリアを試験した。組成物中の粉末の濃度は、約67重量%〜約75重量%の範囲とした。これらの液体は、粉末を硬化させることができるが、デンタルクリートと混合した場合には、実施例A、実施例B及び実施例Cの液体よりも水の流れによる流失に対する耐性が低かった。
【0057】
【表3】
【0058】
実施例E
本実施例Eでは、実施例Aに記載された粉砕された粒状材料を用いた。表4に挙げられる有機成分を含有する種々の液体キャリアを試験した。組成物中の粉末の濃度は、約67重量%〜約75重量%の範囲とした。これらの成分としては、ポリビニルピロリドン及びグリセロールが挙げられる。これらのグリセロール化合物は、材料を適切に使用することができないほど粉末の硬化を遅延させるものであった。
【0059】
【表4】
【0060】
グリセロールを含有しない上記の表4における組成物9を、微量漏洩について試験し、歯内治療術中の逆根管充填に使用される従来の材料と同等又はそれよりも優れていることを見出した。この組成物は、本実施例E及び
図2において「ホスクリート」と称される。漏洩を、2つの市販の頻繁に提唱される逆根管充填材であるWhite ProRoot MTA(Dentsply Tulsa Dental Specialties)及びSuper EBA(Bosworth Company(Skokie, IL))と比較した。
【0061】
試験手順において、洗浄及び成形した単根歯を、シーラーを用いずに単一のガッタパーチャコーンで充填し、それらの根端で切断した。42個の最近抜歯したヒトの単根歯を、細菌生育を防ぐために0.02%アジ化ナトリウムを含有する0.9%NaCl溶液中に使用するまで貯蔵した。計測は、1mmのF3 ProTaperファイルチップが根尖孔を越えて突出するまで、ProTaperニッケルチタン回転器具(Dentsply Tulsa Dental Specialties)を用いたクラウンダウン法によって行った。根管を計測の合間に10mLの6.15%次亜塩素酸ナトリウムで清浄した後、最後の清浄に5mLの17%エチレンジアミン四酢酸を用いた。計測した各歯根の尖端3mmを、縦軸に対して10度の斜面で切除した。超音波チップを用いて3mmの深さに根端標本を作製した。
【0062】
顕微手術プラガーを用いて混合材料を根端標本内に詰め、充填させた歯を37℃及び100%相対湿度の加湿装置に24時間放置した後、10mLのリン酸緩衝生理食塩水を含有する別個のシンチレーションバイアルで貯蔵した。これらの歯をリン酸緩衝生理食塩水中でエージングさせた。漏洩は、3日及び42日目に評価した。逆根管充填の漏洩は、流体濾過デザインを用いて評価した。流体の流れの定量化(μL/分)は、Flodec装置のガラスキャピラリー管内部の水泡の移動を感光性フォトダイオードを介してモニタリングすることによって行った。データの回収は、Flodecソフトウェアを用いて1.04秒毎に行い、結果を
図2に示す。3日の試験期間に関して、同じ大文字記号(例えば、B及びB)を有する材料間の差異は、統計学上有意なものではない(p>0.05)。42日の試験期間に関して、同じ小文字記号(例えば、b及びb)を有する材料間の差異は統計学上有意なものではない(p>0.05)。各逆根管充填材について、黒い水平バーで結ばれたサブグループは、流体の漏洩における有意な差異を示している(p<0.05)。
【0063】
両試験期間とも、Super EBAグループの漏洩が、互いに差異がない他の2つのグループ(
図2中のWhite ProRoot MTA及び本発明のホスクリート実験シーラー)よりも有意に高かった。各材料について、42日目における漏洩は、3日目における漏洩よりも有意に低かった。実験の逆根管充填ホスクリート材料は優れたシールをもたらした。
【0064】
実施例F
実施例Aに記載された粉砕された粒状材料を本実施例Fにおいて用いた。組成物中の粉末の濃度は、約67重量%〜約75重量%の範囲とした。表5に挙げられる種々の有機成分(ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート及びn−ドデシル硫酸ナトリウムを含む)を含有する種々の液体キャリアを試験した。これらの液体は粉末を硬化させることができ、且つ水の流れによる流失に対する高い耐性を有した。驚くべきことに、これらの組み合わせは、個々に試験される材料のいずれよりも流失に対してより高い耐性を有した。
【0065】
【表5】
【0066】
表5に記載された成分を有する液体キャリアは、粒状粉末と混合させて本発明の組成物を作製するのに最も好ましい液体であると考えられる。液体中の成分の濃度は、例えば、表5に示されるように調節することができ、且つ得られる組成物は種々の歯内への適用における使用に好適であることが見出された。これらの用途としては、例えば、根管シール、根管閉塞、歯根の修復、及び生活歯髄の治療が挙げられる。
【0067】
実施例G
本実施例Gでは、種々の粉砕された粒状材料を調製及び試験した。実施例Gの粉末は、異なるポリマーを添加することによって、実施例Aに記載される粉末とは異なるものとした。水を実施例Gの粉末に添加した。以下の表6は成分をより詳細に記載している。実施例Gの得られる組成物は、実施例Fの組成物に比べて低い取扱特性及び硬化性を有した。
【0068】
【表6】
【0069】
実施例H
本実施例Hでは、ヒドロキシアパタイト又は硫酸カルシウムを含むように粉末成分を変えた。実施例Fの液体キャリアをこの粉末と共に用いた。詳細には、4対1の粉末対液体比率(80%粉末)で液体をこの粉末と混合した。液体キャリア番号4(実施例F)と、以下の表7中の粉末混合物番号1との組み合わせは、本実施例における好ましい組成物であった。組成物の粘稠性はパテ状であった。ISO 6876における方法に従い測定した組成物の放射線不透過性は、9mm〜10mmのアルミニウムに等しかった。
【0070】
【表7】
【0071】
実施例I
本実施例Iでは、実施例Aに記載された粉末成分を用いた。以下の表8に記載される液体をこの粉末と混合した。シリカゾルによって、組成物の取扱特性(handling)は改善されたが、硬化速度は上がらなかった。炭酸カリウムは組成物の硬化を促進させたが、組成物の耐流失性が要求されるほど強くなかった。歯科医業では洗い流すことにより、閉鎖する前に術部又は血液領域を洗浄する。これは通常、滅菌水又は滅菌溶液で行われる。このため、組成物が洗い流されないような良好な耐流失性を有することが重要である。
【0072】
【表8】
【0073】
実施例J
本実施例Jでは、表9に記載された種々の有機成分を、(実施例Aに記載される)粉末状粒子に添加し、水と混合して組成物を調製した。
【0074】
【表9】
【0075】
これらの組成物は、水のみを含有する組成物に比べて粉末の硬化を促進させたが、実施例Fにおける液体がもたらす耐流失性を有しなかった。
【0076】
実施例K
本実施例Kでは、本発明により作製される材料(4:1の粉末対液体比率で実施例Fにおける液体キャリア番号4と混合される実施例Hにおける組成物番号1)、及び市販のWhite ProRoot MTAシーラー/水の歯内療法学的な生体適合性を試験した。4匹のイヌを根管治療に関する本プロトコルの被検体とした。4本の上顎前歯である上顎第2及び第3小臼歯、並びに下顎第2、第3及び第4小臼歯を実験デザインに用いた。XCPレントゲン写真システムを用いて又は咬合型口腔内フィルムにより、上顎前歯及び下顎小臼歯の術前及び術後レントゲン写真を撮影した。上顎第2及び第3小臼歯において歯髄切断法を行った。実験材料又は対照材料を直接歯冠歯髄断端に置いた。下顎第2、第3及び第4小臼歯について、これまでの標準化プロトコルに続けて、歯の意図的な医原性穿孔に分岐状穿孔を作製した。これらの穿孔を、対照材料又は実験材料で修復した。逆根管充填のための処理を行った歯について、根管治療を行った。逆根管充填に使用される材料で全ての根管を塞いだ。根管閉塞の完了後、外科的処置を行った。
【0077】
60日の終わりに、イヌ被検体を犠牲にした。歯根を含有する顎のブロックセクション(Block sections)を切断しレントゲン写真を撮る。次に、ブロックセクションを組織学的検査のための加工にかけた。歯を、分離し且つ組織学的な切片形成用に配向させ、脱水し、且つパラフィンブロックに包埋した。Leitz 1512回転式ミクロトームを用いた光学顕微鏡検査には、頬舌縦方向配向(longitudinal orientation)における5ミクロン〜7ミクロン厚の一連の切片を用意した。切片はヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色した。根管組織応答は、組織学の知識を有する一歯内治療医である検査員によって独立的且つ盲目的に(すなわち、材料が何であるかを知らずに)等級分けした。各歯切片のスコアを記録した後、平均した。
【0078】
本試験の実験材料の取扱特性及び硬化性は、対照材料よりも著しく改善されていた。新規な材料は、全ての処置に関して混合及び配置が大いに容易となった。処理後の骨成長のレントゲン写真の証拠により見られるように、治癒は有意なものであった。
【0079】
以下の表10及び10Aは組織学的な評価結果を示す。
【0080】
【表10】
【0081】
【表11】
【0082】
評価される組織学的切片において、サンプルの大部分は炎症を示さなかった(1未満の平均スコア(ゼロのスコア)は、治療を伴わないと考えられる健常組織を示す)。術部及び根端に隣接して再生される骨の質も、検査されたサンプルの大部分において正常であった。術部に嵌入し、表面上で新たな骨芽細胞によって取り囲まれる新たな骨の有意な成層があった。無機基質(状来の骨形成細胞)の新たな成層は明白であった。破骨細胞はわずかしか見られず、材料の吸収は見られなかった。切除された象牙質表面の大部分にセメント質の堆積が見られた。平均スコアはERTM1に関して1.8であり、これは、歯根の孔の50%近くが、種々の厚み及び形態学的特徴の、歯根の孔を被覆するセメント質の様々な層で被覆されていることを示している。尖端歯周靭帯形成は、全てのケースで正常であった。機能配向されたコラーゲン線維は、多くの切片において根端を取り囲んでいた。サンプルの大部分では、これらの線維が治癒中に形成した新たなセメント質又は骨に挿入されていた。歯根表面の吸収の存在は極めて限定的なものであった(スコア=実験材料に関する0.2)。見てみると、吸収自体が実験材料付近に存在することはなかった。分岐部におけるいくらかの細胞破壊が、破壊的な口腔環境への分岐部の曝露に起因して見られた。しかしながら、かかる曝露から防護した場合には、良好な治癒が観測された。分岐がイヌの解剖学的構造において非常に多い場合、いくらかの分岐状穿孔部がサンプルのデコロネーション(decoronation)中になくなった。
【0083】
歯髄切断試験片の等級分けにおいて、ケースの大部分が、最小値から炎症なしまでを示した。正常組織から象牙芽細胞層のいくらかの崩壊まで、歯髄組織モルフォロジの全体的な崩壊までの範囲の広範な歯髄モルフォロジが示された。しかしながら、歯髄組織の全体的な崩壊がある場合であっても、実験材料の下に硬質組織堆積の穏やかな形成の形跡が見られた。この硬質組織は、歯髄崩壊が試験片調製時の人為的な結果であったとされ得ることを示している。象牙質形成は60日でよく体系化されたことを示すわずかなケースもあるが、形成した硬質組織バリアは、側方境界にいくらかの正常な象牙質形成(管状象牙質の形成)を伴って高密度且つ厚みがある。
【0084】
実験材料は、歯周組織を含む歯根周囲組織の修復に寄与した。損傷を与える歯髄切断において歯髄を保護した象牙質バリアが形成された。材料の吸収は見られなかった。
【0085】
要約すると、実験材料は、60日後においてこれらのイヌ被検体の根尖周囲組織及び歯髄組織に生体適合性であった。材料は、これらの組織と接するように用いて組織の治癒及び修復を誘起するのに好適なものであった。試験された特定の指標は、レントゲン写真及び組織学の両方において満足のいくものであった。
【0086】
取扱特性
本発明の組成物は最適な取扱特性を有する。ケイ酸カルシウム及びアルミン酸カルシウムは、粗粒子が取り除かれていれば扱いやすく、本明細書中に述べられる水溶性物質と組み合わされる。取扱特性の改善により、臨床医がこれらの水硬性材料を歯科処置に使用して、それらを疾患又は外傷位置に配することがかなり容易となる。
【0087】
作業時間及び硬化時間
本発明の組成物は最適な作業時間及び硬化時間を有する。作業時間は、歯科標準ISO9917又はISO 6876(水系歯科用セメント)に従って測定され、且つこれは、成分の最初の混合から材料が固化し始める時間までの測定時間であり、すなわち、材料は、材料の性質に悪影響を伴うことなくこの時間中に処理され得る。正味硬化時間も歯科標準ISO−9917に従って測定され、且つこれは、成分の混合終了から材料が硬化した時間までの測定時間である。より詳細には、正味硬化時間は、材料をモールドにキャストすることによって測定される。混合が完了した後、圧子装置をセメントの表面上に鉛直に降ろし、そこで5秒間停止させる。予試験を行い、2×倍率で見たときに針が完全に円形の圧痕をセメントにつけなくなるまで30秒間隔の圧入を繰り返して近似的な硬化時間を求める。必要であれば圧入の合間に針を洗浄する。このプロセスを繰り返して、上記のようにして求めた近似的な硬化時間前30秒で圧入を開始し、10秒間隔で圧痕をつける。正味硬化時間は、混合終了から針が完全に円形の圧痕をセメントにつけなくなるまでの経過時間として記録される。同様の試験手順(ISO 6876(根管シーラー))も、組成物の作業及び硬化時間を測定するのに用いることができる。
【0088】
概して、本発明の組成物は、約5分〜約60分の範囲の作業時間を有する。組成物の正確な作業時間はその特定の製剤に依存する。上記のように、種々の製剤が、根管歯根端切除術、アペキシフィケーション、穿孔修復、閉塞、歯髄切断法、覆髄、窩洞裏装、根端吸収修復、及び根管シールに使用することができる。最終的な硬化時間は一般的に約90分〜約12時間の範囲内である。この作業時間の短縮により、歯科開業医が材料をより効果的に取り扱い且つ配することが可能になる。臨床医は、根管を充填又は修復して、材料が固化し始めるのを観察し、且つ岩状物質を形成することができる。臨床医は、より良好に作業し、材料を成形することができる。臨床医が材料を治療領域に塗布した後、材料は適切な位置に保持される。材料は良好な粘稠性を有するため、その領域から移動することはない。これにより、臨床医は、外科的治療術又は生活歯髄療法術を実施し且つ血液が存在する際に洗い流すことによって清掃することが可能となる。さらに、修復用複合材等のさらなる歯科用材料を、根管充填/シール材料が硬化を開始するときにその上に配することができる。覆髄処置又は窩洞裏装処置に使用される場合、配される根管充填/シール材料は、歯根象牙質と、好ましくは、根管を充填するか又は生活歯髄を治療するのに用いられる任意の他の材料(例えば、ガッタパーチャ又は歯科用複合材)と結合する。根管充填/シール組成物は、硬化及び固化する場合、根管系における細菌及び流体の漏洩に対する固体バリアを提供する。根管系と周囲の組織との流体経路は密封される。さらに、根管充填/シール材料は殺菌性である。
【0089】
当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、種々の変更が例示される実施形態及び本明細書中の説明でなされ得ることを理解するであろう。本発明の精神及び範囲内の全てのこのような変更は添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。