【実施例】
【0026】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0027】
図3に示す配合のウレタン発泡体原料およびウレタンゲル原料から、実施例のクッション体をモールド法によって製造した。その
図3におけるウレタン発泡体原料およびウレタンゲル原料の詳細を以下に示す。
・ポリオール(ウレタン発泡体原料およびウレタンゲル原料);ポリプロピレングリコール、商品名:FA−703、三洋化成工業(株)製、重量平均分子量:4800、水酸基数:3、水酸基価:35
・ポリイソシアネート(ウレタン発泡体原料);TDI(2,4−TDI:2,6−TDI
=80:20):クルードMDI=80:20、商品名:コロネート1306、日本ポリウレタン工業(株)
・触媒(ウレタン発泡体原料);ジプロピレングリコール:トリエチレンジアミン=67:33、商品名:33LX、エアープロダクツジャパン(株)
・発泡剤;水
・整泡剤;シリコーン整泡剤、商品名:B8738LF2、エポニックデグサジャパン(株)
・ポリイソシアネート(ウレタンゲル原料);ポリイソシアネートプレポリマー、イソシアネート基含有率:23%、商品名:F−1180B、BASF INOAC ポリウレタン(株)
・触媒(ウレタンゲル原料);スターナスオクトエート、商品名:MRH−110、城北化学工業(株)
・可塑剤;ジイソノニルアジペート、商品名:DINA、大八化学工業(株)
【0028】
全ての実施例において、ウレタンゲル原料のイソシアネートインデックスは同じとされているが、実施例1,2と実施例3〜8と実施例9〜11とは、ウレタン発泡体原料のイソシアネートインデックスを異ならせた例となっている。
【0029】
全ての実施例の各々における製造方法を説明する。まず、金型の内部に、ワックス系離型剤を塗布しておく。そして、その金型を55〜65℃に加温しておく。この工程が、金型加温工程の一例となる。次に、ウレタン発泡体原料のポリオール、触媒、発泡剤、整泡剤を別の容器で混合しておき、その混合されたものを金型に投入する。続いて、金型にウレタン発泡体原料のイソシアネートを投入し、ウレタン発泡体原料の全ての原料をミキシングによる混合攪拌を行なう。具体的には、ミキサーを用いて、1500rpmで10秒間、混合攪拌する。この工程が、発泡体原料混合工程の一例となる。
【0030】
金型に投入されるウレタンゲル原料は、予め混合攪拌しておくか、ウレタン発泡体原料の混合攪拌時と並行または前後して混合攪拌される。具体的には、ウレタンゲル原料のポリオール(65重量部)と触媒(1重量部)と可塑剤(35重量部)とを混合攪拌し、混合液Aを作り、ウレタンゲル原料のイソシアネート(3.57重量部)と可塑剤(25重量部)とを混合攪拌し、混合液Bを作る。そして、混合液Aと混合液Bとを混合攪拌することで、ウレタンゲル原料全てが混合攪拌されたものが用意される。そのウレタンゲル原料全てが混合攪拌されたものを、金型内で泡化反応が生じている間に、金型内に投入する。この工程が、ゲル原料混入工程の一例となる。
【0031】
そのゲル原料混入工程においてウレタンゲル原料を金型内に投入するタイミングを、発泡体原料混合工程において全てのウレタン発泡体原料の混合が開始されてからの経過時間によって示し、その経過時間を
図3での「投入タイム」の欄に示す。つまり、「投入タイム」は、発泡体原料混合工程において全てのウレタン発泡体原料の混合が開始されてから、ゲル原料混入工程においてウレタンゲル原料が金型内に投入されるまでの時間を示すものである。
【0032】
また、泡化反応中において、どのようなタイミングでウレタンゲル原料を投入するかを解り易くするため、ウレタンゲル原料の投入タイミングを示すものとして、ライズタイム、および、ライズタイムに対するウレタンゲル原料の投入タイムの百分率を、
図3に示しておく。ちなみに、ライズタイムは、発泡体原料混合工程において全てのウレタン発泡体原料の混合が開始されてから、発泡体原料混合工程において生じる泡化反応が終了するまでの時間であり、泡化反応時間に相当するものである。
【0033】
ウレタン発泡体原料およびウレタンゲル原料の全てを金型内に投入した後に、金型を密閉する。そして、ウレタン発泡体原料の混合が開始されてから10分経過した後に、金型からクッション体を脱型する。脱型されたクッション体に対して、以下の方法によって物性評価を行なった。
【0034】
まず、クッション体の表面にウレタンゲルが露出していないか否かを評価した。つまり、ウレタンゲルがウレタン発泡体に内包されているか否かを評価した。ウレタン発泡体は、通常、表層に形成されるスキン層と、そのスキン層の内部に形成される発泡部とから構成されており、上記方法によってクッション体を製造すると、ウレタンゲルの表面が、ウレタン発泡体のスキン層と発泡部とによって覆われる。詳しく言えば、上記方法によって製造されたクッション体の断面図である
図4に示すように、ウレタンゲル14が、ウレタン発泡体16のスキン層18と発泡部20とに挟まれた状態で、それらスキン層18と発泡部20とに密着する。つまり、上記方法によって製造されたクッション体22では、ウレタンゲル14をウレタン発泡体16に内包することが可能となり、クッション体表面においてウレタンゲルのべとつきを解消することが可能となる。そこで、ウレタンゲルがウレタン発泡体に内包されているか否かを評価するべく、上記方法によって製造されたクッション体の表面を触り、べとつきがない場合には「○」と評価し、べとつく場合には「×」と評価した。なお、この評価の結果を、
図3での「スキン層形成」の欄に示しておく。
【0035】
ちなみに、ゲル原料混入工程において、ウレタンゲル原料はウレタン発泡体原料の中に沈んでいくため、
図4でのクッション体22では、ウレタンゲル14はクッション体22の下方に位置している。ただし、クッション体22の使用時には、ウレタンゲル14が上方に位置するように使用することが望ましい。つまり、
図4でのクッション体22を上下に逆にした状態で使用することが望ましい。
【0036】
次に、上記方法によって製造されたクッション体において、ウレタン発泡体とウレタンゲルとが一体化しているか否かを評価した。ウレタン発泡体とウレタンゲルとが混ざり過ぎると、ゲル特性が低下するため、ウレタン発泡体とウレタンゲルとの境界はある程度はっきりしていることが望ましい。そこで、上記方法によって製造されたクッション体を分割し、その分割面におけるウレタン発泡体とウレタンゲルとの境界を目視することで評価を行なった。ウレタン発泡体とウレタンゲルとの境界がはっきりしている場合には「○」と評価し、境界が渾然となっている場合には「×」と評価した。なお、この評価の結果を、
図3での「分離性」の欄に示しておく。
【0037】
さらに、上記方法によって製造されたクッション体において、ウレタン発泡体の発泡部の状態を評価した。詳しくは、上記方法によって製造されたクッション体を分割し、その分割面におけるウレタン発泡体の発泡部を目視し、空洞、割れ等の有無を確認した。空洞等が無く、発泡部の状態が良好である場合には「○」と評価し、空洞等の存在、セルの合一がおきてセル径が大きくなる等、発泡部の状態が不良である場合には「×」と評価した。また、発泡部の状態がやや良好である場合には「○△」と評価し、発泡部の状態がやや不良である場合には「△×」と評価した。なお、この評価の結果を、
図3での「フォーム状態」の欄に示しておく。
【0038】
図3に示した「スキン層形成」の欄から明らかなように、実施例1〜11の全てのクッション体において、表面にウレタンゲルが露出しておらず、ウレタンゲルのべとつきが解消されている。実施例1〜11では、ライズタイムに対するウレタンゲル原料の投入タイムの百分率は15〜81%とされており、そのようなタイミングでウレタンゲル原料をウレタン発泡体原料に投入することで、ウレタンゲルがウレタン発泡体に内包されたクッション体を上記方法によって製造することが可能となっている。
【0039】
また、
図3に示した「分離性」の欄から明らかなように、実施例1、3、4、9のクッション体では、ウレタン発泡体とウレタンゲルとが混ざり過ぎており、ゲル特性が低下している。一方、実施例2、5〜8、10、11のクッション体では、ウレタン発泡体とウレタンゲルとがある程度分離しており、良好なゲル特性となっている。実施例2、5〜8、10、11では、ライズタイムに対するウレタンゲル原料の投入タイムの百分率は37〜81%とされており、そのようなタイミングでウレタンゲル原料をウレタン発泡体原料に投入することで、上記方法によって製造されるクッション体のゲル特性を良好なものとすることが可能となっている。
【0040】
さらに、
図3に示した「フォーム状態」の欄から明らかなように、実施例1、3、4、9のクッション体では、ウレタン発泡体の発泡部の状態は良くなく、実施例5、8のクッション体でも、発泡部の状態はあまり良くない。一方、実施例7、11のクッション体では、発泡部の状態は良好であり、実施例2、6、10のクッション体でも、発泡部の状態はある程度良好である。実施例2、6、7、10、11では、ライズタイムに対するウレタンゲル原料の投入タイムの百分率は37〜69%とされており、そのようなタイミングでウレタンゲル原料をウレタン発泡体原料に投入することで、上記方法によって製造されるクッション体の発泡部の状態を良好なものとすることが可能となっている。
【0041】
上述した物性評価の結果から、ライズタイムに対するウレタンゲル原料の投入タイムの百分率は、15〜85%であることが好ましく、さらに言えば、35〜70%であることが好ましい。そして、さらに限定的に言えば、ライズタイムに対するウレタンゲル原料の投入タイムの百分率が65〜70%であれば、「スキン層形成」、「分離性」、「フォーム状態」の全ての評価を良好なものとすることが可能である。
【0042】
以下、本発明の諸態様について列記する。
【0043】
(1)ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、整泡剤、触媒を含むウレタン発泡体原料を混合する発泡体原料混合工程と、
その発泡体原料混合工程において生じる泡化反応中に、ポリオール、ポリイソシアネート、可塑剤、触媒を含むウレタンゲル原料を混合した状態で、前記発泡体原料混合工程において混合されている前記ウレタン発泡体原料に混入するゲル原料混入工程と
を含み、ウレタン発泡体にウレタンゲルが内包されたクッション体の製造方法。
【0044】
(2)前記発泡体原料混合工程において前記ウレタン発泡体原料の全ての混合が開始されてから、前記発泡体原料混合工程において生じる泡化反応が終了するまでの時間を泡化反応時間と定義した場合において、
前記ゲル原料混入工程が、
前記発泡体原料混合工程において前記ウレタン発泡体原料の全ての混合が開始されてから、前記泡化反応時間の15〜85%に相当する時間経過したときに、前記ウレタンゲル原料を混入する工程である(1)項に記載のクッション体の製造方法。
【0045】
(3)前記ゲル原料混入工程が、
前記発泡体原料混合工程において前記ウレタン発泡体原料の全ての混合が開始されてから、前記泡化反応時間の35〜70%に相当する時間経過したときに、前記ウレタンゲル原料を混入する工程である(2)項に記載のクッション体の製造方法。
【0046】
(4)前記クッション体が、金型の内部で製造される(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のクッション体の製造方法。
【0047】
(5)前記ポリウレタン発泡体原料が投入される前に、前記金型を加温しておく金型加温工程を含む(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載のクッション体の製造方法。
【0048】
(6)ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、整泡剤、触媒を含むウレタン発泡体原料を混合するとともに、その混合において生じる泡化反応中に、ポリオール、ポリイソシアネート、可塑剤、触媒を含むウレタンゲル原料を、混合されている前記ウレタン発泡体原料に混入することで製造され、ウレタン発泡体にウレタンゲルが内包されたクッション体。
【0049】
(7)前記ウレタン発泡体が、
表層に形成されるスキン層と、そのスキン層の内部に形成される発泡部とを有し、
前記ウレタンゲルが、
前記スキン層と前記発泡部とのいずれかに挟まれてそれらスキン層または発泡部に密着した状態で前記ウレタン発泡体に内包される(6)項に記載のクッション体。
【0050】
(8)前記ウレタンゲルが、
前記スキン層と前記発泡部とに挟まれてそれらスキン層と発泡部とに密着した状態で前記ウレタン発泡体に内包される(7)項に記載のクッション体。
【0051】
(9)表層に形成されるスキン層と、そのスキン層の内部に形成される発泡部とを有するウレタン発泡体と、
前記スキン層と前記発泡部とのいずれかに挟まれてそれらスキン層または発泡部に密着した状態で前記ウレタン発泡体に内包されるウレタンゲルとを備えたクッション体。
【0052】
(10)前記ウレタンゲルが、
前記スキン層と前記発泡部とに挟まれてそれらスキン層と発泡部とに密着した状態で前記ウレタン発泡体に内包される(9)項に記載のクッション体。
【0053】
(11)前記ウレタン発泡体が、
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、整泡剤、触媒を含むウレタン発泡体原料によって製造され、
前記ウレタンゲルが、
ポリオール、ポリイソシアネート、可塑剤、触媒を含むウレタンゲル原料によって製造される(9)項または(10)項に記載のクッション体。