特許第5872622号(P5872622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5872622球体研削における球体支持方法、球体支持装置および球体研削装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872622
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】球体研削における球体支持方法、球体支持装置および球体研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 11/04 20060101AFI20160216BHJP
   F16C 33/32 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B24B11/04
   F16C33/32
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-97699(P2014-97699)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-213981(P2015-213981A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】596066024
【氏名又は名称】西部自動機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 儀三郎
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−136764(JP,A)
【文献】 特開平3−245917(JP,A)
【文献】 特開2012−71413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 11/02−11/10
F16C 33/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体であるワークを回転させながらその表面を研削するときに前記ワークを下方から支持する球体支持方法であって、
球である主ボールの略下半分と凹状の略半球湾曲面である保持面との間に球である保持ボール複数を一層で介在させ、前記主ボールの球心よりも上方の一部をカバーに設けられた円形の保持孔から露出させた状態で、前記主ボールの大部分、前記保持面および前記保持ボールを前記カバーにより覆って前記主ボールを回転自在とし、
前記保持孔から露出する前記主ボールに前記ワークの下方を支持させ、
前記カバーに覆われた前記主ボールと前記保持面との間にクーラントを供給して前記主ボールと前記保持孔との間から前記クーラントを外部に排出する
ことを特徴とする球体研削における球体支持方法。
【請求項2】
球体であるワークを回転させながらその表面を研削するときに前記ワークを下方から支持する球体支持装置であって、
ボールユニットと、
クーラント導入手段と、を有し、
前記ボールユニットは、
前記ワークの下方に接してこれを直接に支持する球状の主ボールと、
凹状の略半球湾曲面である保持面を備えたケースと、
前記主ボールの直径よりも小さな直径の円形貫通孔である保持孔を備えたカバーと、
前記主ボールよりも直径が小さな複数の保持ボールと、を有し、
前記主ボールが、前記保持面に一層に並ぶ複数の前記保持ボールに保持され、その一部を前記保持孔から露出させて前記保持面および前記保持ボールとともに回転自在に前記カバーに覆われており、
前記クーラント導入手段は、
前記ボールユニットにおける前記主ボールの前記カバーに覆われた部分と前記保持面との間にクーラントを供給可能に形成されており、
前記主ボールにおける前記保持孔から露出する部分に前記ワークを支持させて前記ワークの表面を研削するとき、供給される前記クーラントが前記主ボールと前記保持孔との間から外部に排出されるように形成された
ことを特徴とする球体支持装置。
【請求項3】
前記クーラント導入手段は、
前記半球湾曲面である保持面の最深部に、前記クーラントを供給するために開口する孔を備えた
請求項2に記載の球体支持装置。
【請求項4】
球体であるワークを回転させながらその表面を研削する球体研削装置であって、
前記ワークを回転可能にその下方から支持する装置として請求項2または請求項3に記載の球体支持装置を備えた
球体研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球体を回転させながら研削または研磨するときの球体支持方法、球体研削装置、および球体研削装置に使用される球体支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
球体(ボール)は、他の部材の面等に点で接するため転がり抵抗が小さく、回転する機器の軸受け等のボールベアリングに使用される。
回転軸等を支持するボールベアリングで生ずる運動エネルギーのロスは、内輪、外輪および保持器と球体との摩擦の程度に相関し、球体表面の平滑性が高いほど摩擦によるエネルギーのロスが低下する。
【0003】
大型のボールベアリングに使用される大きな球体の表面平滑化は、例えば、1つの球体を保持装置に保持させ、球体を回転させながらその表面を砥石等により研削(研磨)することにより行われる。そして、球体表面の研削を均等化し高い真球度を得るために、球体の回転軸を予め設定された条件に従い傾斜させ砥石が研削する表面を絶えず更新させる、球体の研削装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−71413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に提案された球体の研削装置は、研削対象である球体が、球体の下方に位置するサポートローラ(ボールベアリング)により支えられる。特許文献1に記載された球体の研削では、研削の多くの時間で、サポートローラの回転軸に対して球体の回転軸が平行ではなく傾斜する。このように両回転軸が平行ではないとき、球体が接して回転させるベアリングの回転方向が球体の回転方向に対して傾斜しているので、球体とこれに接するベアリング(の外輪の)外周面との間に、両回転軸が平行な場合に比べて大きな摩擦が生ずる。
【0006】
また、特許文献1に提案された球体の研削装置では、研削により発生する砥石および球体由来の粉塵がベアリングの内部に進入し、ベアリングボール、内輪等の表面を傷つけるおそれがあり、ベアリングボール等の表面の損傷は、ベアリングの円滑な回転を妨げる。
特許文献1記載の研削装置における球体とベアリング外周面との摩擦、および生ずるおそれがあるベアリングの回転不良は、極端な場合には、球体の回転軸の傾斜を設定から狂わせ、研削後のボール表面に研削ムラを生じさせるおそれがある。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、球体表面全体の均等研削において球体との間の摩擦が軽減されかつ粉塵による動作不良が発生しにくい、球体支持方法、球体支持装置、および球体支持装置を使用する球体研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る球体支持方法は、球体であるワークを回転させながらその表面を研削するときにワークを下方から支持する際の方法である。
その方法は、以下のようなものである。
すなわち、球である主ボールの略下半分と凹状の略半球湾曲面である保持面との間に球である保持ボール複数を一層で介在させる。そして、主ボールの球心よりも上方の一部をカバーに設けられた円形の保持孔から露出させた状態で、主ボールの大部分、保持面および保持ボールを、カバーにより覆って主ボールを回転自在とする。
【0009】
保持孔から露出する主ボールにワークの下方を支持させ、カバーに覆われた主ボールと保持面との間にクーラントを供給して、主ボールと保持孔との間からクーラントを外部に排出する。
本発明に係る球体支持装置は、球体であるワークを回転させながらその表面を研削するときにワークを下方から支持する装置である。
【0010】
球体支持装置は、ボールユニットと、クーラント導入手段とを有する。
ボールユニットは、ワークの下方に接してこれを直接に支持する球状の主ボールと、凹状の略半球湾曲面である保持面を備えたケースと、主ボールの直径よりも小さな直径の円形貫通孔である保持孔を備えたカバーと、主ボールよりも直径が小さな複数の保持ボールと、を有する。
【0011】
主ボールは、保持面に一層に並ぶ複数の保持ボールに保持され、その一部を保持孔から露出させて保持面および保持ボールとともに回転自在に前記カバーに覆われている。
クーラント導入手段は、ボールユニットにおける主ボールのカバーに覆われた部分と保持面との間にクーラントを供給可能に形成されている。
球体支持装置は、主ボールにおける保持孔から露出する部分にワークを支持させてワークの表面を研削するとき、供給されるクーラントが主ボールと保持孔との間から外部に排出されるように形成されている。
【0012】
クーラント導入手段は、半球湾曲面である保持面の最深部に、クーラントを供給するために開口する孔を備えるのが好ましい。
本発明に係る球体研削装置は、ワークを回転可能にその下方から支持する装置として前述の球体支持装置を備えた、球体であるワークを回転させながらその表面を研削する球体研削装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、球体表面全体の均等研削において球体との間の摩擦が軽減されかつ粉塵による動作不良が発生しにくい、球体支持方法、球体支持装置、および球体支持装置を使用する球体研削装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は球体支持装置の正面図である。
図2図2は球体支持装置の平面図である。
図3図3は球体支持装置の左側面図である。
図4図4図3におけるA−A断面図である。
図5図5は球体研削装置における球体支持装置周辺の側面図である。
図6図6図5におけるB−B矢視図である。
図7図7は球体研削装置における球体支持装置の機能を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は球体支持装置1の正面図、図2は球体支持装置1の平面図、図3は球体支持装置1の左側面図、図4図3におけるA−A断面図である。
球体支持装置1は、ワークである球体Wの表面を研削または研磨するとき、球体Wの自由な回転を許容しながら球体Wからの荷重の大半を支える。
球体支持装置1は、ボールユニット2およびクーラント導入部3からなる。
【0016】
ボールユニット2は、ケース11、カバー12、球である複数の保持ボール13,…,13、球である主ボール14等で構成される。
ケース11は、外観が略円柱状であり、その一方の底面の大部分が、凹状に湾曲する保持面21となっている。保持面21は、半球の表面に類似し、中心を含むすべての平面に対して面対称である。保持面21の端縁と最深部との間には、その曲率半径が、保持ボール13の直径に主ボール14の半径を加えた値の、端縁と平行に一巡する帯である遷移帯22を有する
保持面21における遷移帯22に対して端縁側の部分23および最深部の側部分24の曲率は、いずれも遷移帯22の曲率よりも大きい。
【0017】
ケース11における保持面21の反対側の端面(円柱の他方の底面)の中央部分には、断面が円形の浅い有底の孔(「凹状孔」という)25が設けられている。
ケース11は、保持面21の最深部近傍から凹状孔25に貫通する複数の連通孔26,…,26を有する。
カバー12は、形状が全体として円筒であり、一方の開口にはフランジ27が設けられている。円筒の他方の端は主ボール14の直径よりも小さな径の円形の開口(以下「保持
孔28」)を備える。カバー12における円筒軸方向の長さは、ケース11における円柱形状の高さよりも大きい。カバー12のフランジ27側の内周は、略円柱状のケース11の外周と凹凸関係を有する形状である。カバー12の内周における保持孔28側は、段が形成されて内径が小さくなっている。この部分の内径は、ケース11の保持面21における開口部分の内径より僅かに大きい。
【0018】
保持ボール13は、金属で形成された球体である。保持ボール13は、セラミックスまたはポリアセタールもしくはポリカーボネートのような硬質の樹脂で形成してもよい。
主ボール14は、保持ボール13よりも大きな球であり(例えば、その直径が保持ボール13の直径の10倍弱)、金属、セラミックスまたは硬質の樹脂等で形成される。
ボールユニット2には、ケース11の保持面21に保持ボール13,…,13が一層に並ぶ。一層に並ぶ保持ボール13,…,13の上に、主ボール14が載せられている。保持ボール13,…,13は、主ボール14の略下半分の周りに配される。
【0019】
カバー12は、保持面21、保持ボール13,…,13を覆い、主ボール14の上部を保持孔28に貫通させて、主ボール14側から、ケース11に被せられる。ケース11はカバー12に嵌め合わされ、ケース11とカバー12とはスナップリング等により一体化される。主ボール14は、その上方の一部が保持孔28から外部に露出した状態で、ケース11およびカバー12の内部に回転自在に保持される。主ボール14は、連通孔26側(=保持面21の最深部側)への移動が保持ボール13,…,13に妨げられ、この反対側への移動が保持孔28により妨げられる。これらに直交する方向への移動は、保持ボール13,…,13により妨げられる。ケース11およびカバー12に対する主ボール14が相対移動可能な範囲は小さく、すなわち、主ボール14の球心の位置の変化が小さい。
【0020】
嵌め合わされたケース11およびカバー12における主ボール14が露出する側の反対側は、面一の(同一平面に)端面である。
ボールユニット2は、その内部と外部とが、主ボール14と保持孔28との隙間、および連通孔26,…,26によってのみ連通する。
クーラント導入部3は、外観が直方体の金属塊である。クーラント導入部3は、直方体の1つの面の中央に、ケース11の凹状孔25と断面形状が同一で凹凸の関係となる、外方に突出する凸部31を備える。凸部31の端面は平面であり、その高さは凹状孔25の深さよりも小さい。クーラント導入部3は、凸部31の端面の開口から奥に延び、内方で直角に折れて他の端面32に達する、クーラントを流すための導入路33を備える。他の端面32における導入路33の開口部分には、雌ネジが設けられてチューブ継手34が取り付けられている。導入路33の開口部分およびチューブ継手34の取り付けは、他の端面に行ってもよい。
【0021】
クーラント導入部3は、凸部31がボールユニット2の凹状孔25に嵌め合わされ、フランジ27を貫通する2つのボルト35,35により、ボールユニット2と一体化される。凸部31の高さは凹状孔25の深さよりも小さいので、凸部31と凹状孔25との嵌め合わせ部分では、凸部31の突出端面と凹状孔25の底面との間に、高さが低い円柱状の空間が形成される。
【0022】
次に、球体支持装置1が組み込まれた球体研削装置7の概略を説明する。
図5は球体研削装置7における球体支持装置1周辺の側面図、図6図5におけるB−B矢視図である。
球体研削装置7は、球体の表面研削等に使用される装置である。球体研削装置7は、研削対象の球体Wの下方を支える下方支持装置15、球体Wを回転させる一対のテーパローラ16,16、および球体Wをテーパローラ16,16に押しつける押圧装置17等を有する。
【0023】
下方支持装置15は、基台41および球体支持装置1で形成される。基台41は、球体支持装置1を球体Wの研削に適切な位置(高さ)、姿勢に維持するものである。基台41は、その下端が球体研削装置7の共通架台に固定される。
球体支持装置1は、その中心軸を垂直方向に対し傾斜させて、下方支持装置15の上端に固定されている。球体支持装置1の「中心軸」とは、円柱状であるケース11の軸であ
り、これに一致する円筒状のカバー12の軸である。「中心軸」は、主ボール14の中心および保持面21の中心(すべての対称面に含まれる)を含む。
【0024】
基台41の高さおよび球体支持装置1の垂直方向からの傾斜の程度は、研削する球体Wの大きさ等により適宜変更される。
球体支持装置1のチューブ継手34は、樹脂チューブ36によってクーラント供給装置に連結される。
一対のテーパローラ16,16は、それぞれの回転軸の軸心が一致するようにかつ互いに間隔を有して配され、個別に回転駆動装置に連結されて異なる回転数での制御が可能である。テーパローラ16,16は、いずれも回転軸方向の一方の側が端に向かって徐々に径が小さくなった台形の回転体形状である。一対のテーパローラ16,16は、同一の形状であって、径が小さい側の端面を対向させ、距離をおいて面対称に配されている。
【0025】
一対のテーパローラ16,16は、中心軸が傾斜する球体支持装置1に対して、主ボール14が偏る側に位置する。また、一対のテーパローラ16,16は、これらの対称面が球体支持装置1の中心軸を含むように配される。
押圧装置17は、プレッシャローラ42、およびプレッシャローラ42を回転自在に保持する保持装置43を有する。プレッシャローラ42は、外観が径に比べて高さが小さな円柱状であり、ボールベアリングが用いられている。プレッシャローラ42は、球体支持装置1を挟んでテーパローラ16,16の反対側に配される。
【0026】
保持装置43は、プレッシャローラ42のテーパローラ16,16からの距離、およびプレッシャローラ42の高さが変更可能なように形成されている。
球体Wを研削するための砥石44は、真上から球体Wに押しつけられる。砥石44の押しつけは、エアシリンダにより行われ、作動流体である空気の圧力制御によってその押圧力が調整される。
【0027】
図7は球体研削装置7における球体支持装置1の機能を説明する図である。
図5,6をも参照して、球体研削装置7による球体Wの研削では、初めに球体Wが、球体支持装置1の主ボール14および2つのテーパローラ16,16の3点(「支持点」という)P1,P2,PCに支持させて球体研削装置7に取り付けられる。球体Wの球心(重心)C1は、平面視において、支持点P1,P2,PCで形成される三角形の中に存在する(図5)。
【0028】
押圧装置17のプレッシャローラ42を、球体Wの球心C1よりも高い位置で球体Wに押圧させる。外観が円柱状の砥石44は、その軸心が鉛直になり、かつその延長が球体Wの球心C1を通るように、球体Wの上方に所定の押圧力で押しつけられる。
一対のテーパローラ16,16は、それぞれが設定された回転数で、回転軸AR1周りに回転する。テーパローラ16,16の回転に伴い、点P1,P2でテーパローラ16,16に接する球体Wが回転する。球体Wの回転は、例えば、図7における左側のテーパローラ16が右側のテーパローラ16よりも速く回転する場合、図7において、球体Wは左側が速く回転し、見掛け上、球体Wの回転軸AR2は、右側に比べて左側がテーパローラ16,16の回転軸AR1から遠くなる。
【0029】
球体研削装置7では、一対のテーパローラ16,16の回転軸AR1に対して球体Wの回転軸AR2が傾斜することにより、砥石44が当たる球体Wの表面が連続的に変化し、表面が均等に研削される。
球体支持装置1における主ボール14は、その球心C2と球体Wの球心C1とを結ぶ線上の支持点PCで球体Wを支持する。一方、主ボール14は、構造上任意な回転軸周りに回転可能であるので、球体Wの回転軸AR2に平行な回転軸AR3周りに、球体Wの回転に伴って受動的に回転する。
【0030】
主ボール14の回転軸AR3が常に球体Wの回転軸AR2に平行となる球体支持装置1による球体Wの支持では、主ボール14の回転軸AR3に直交し球体Wの支持点PCを含む平面が、常に球体Wの回転軸AR2に直交する。つまり、球体支持装置1は、主ボール14の回転方向と球体Wの回転方向とを常に一致させることができるので、球体Wの回転により効率的に主ボール14が回転し、球体Wの表面と主ボール14表面との摩擦が最小
限に抑えられる。
【0031】
球体支持装置1が組み入れられた球体研削装置7は、球体Wの回転軸AR1を設定通りに実現し維持することができるので、砥石44に当たる球体Wの表面が予定通り変更され、表面を均等に平滑化することができる。
一般に、研削処理では、研削環境に冷却液(「クーラント」)が供給され、発熱によるワークWの昇温を防ぐことがなされる。これに倣い、球体研削装置7においても、球体Wの砥石44に当たる部分近傍に、ノズル45からクーラントCLが供給される。ノズル45から供給されるクーラントCLは、球体Wの過熱を防止するとともに、同時に、研削により発生する砥石および球体W由来の粉塵を研削環境から除去する役割を有する。
【0032】
球体支持装置1では、これとは別に、樹脂チューブ36およびチューブ継手34を経由させて、ボールユニット2内部にもクーラントCLが供給される。クーラントCLは、導入路33を通り、凸部31と凹状孔25との嵌め合わせ部分に形成された円柱状の空間に流入する。クーラントCLは、この円柱状の空間で連通孔26,…,26に分配され、ボールユニット2内部の空間に供給される。クーラントCLは、この空間で保持ボール13,…,13および主ボール14を冷却し、主ボール14と保持孔28との間隙から外部に排出される。
【0033】
さらに、球体支持装置1に供給されたクーラントCLは、主ボール14と保持孔28との間隙から外部に排出されることにより、ノズル45から供給されたクーラントCLに同伴される粉塵が、主ボール14と保持孔28との間隙からボールユニット2内部に進入するのを妨げる。ボールユニット2内部への粉塵の進入が妨げられることにより、保持ボール13,…,13および保持面21の粉塵による損傷が防止され、かつ少なくともボールユニット2内部での主ボール14の損傷も防止される。
【0034】
球体支持装置1が使用された球体研削装置7による球体Wの研削では、主ボール14と球体Wとの摩擦が軽減でき、かつ主ボール14の円滑な回転を妨げるボールユニット2内部の摩耗等が防止されるので、球体Wの回転方向の変更を設定通りに行うことができる。その結果、球体研削装置7は、安定して球体W表面を均等に研削することができる。
球体支持装置1に供給されるクーラントCLの量は、実際に研削処理を行って粉塵の進入が防止される供給量を見極めて決定するのが好ましい。この他に、例えば、砥石および球体W由来の粉塵の真比重、大きさおよび供給されるクーラントCLの比重、粘度を用いて、ストークスの式により導出することができる。すなわち、静止状態のクーラント中を沈降する代表粉塵の終末速度をストークスの式を用いて求め、これに、主ボール14に荷重が加わったとき(主ボール14が保持面21側に押し込まれたとき)の主ボール14と保持孔28との間隙の面積を掛け合わせた数値が、クーラントCLの最少供給量または供給量の目安となる。「代表粉塵」とは、一例として、研削により生じた粉塵のうち、砥石44由来の最大粒子径を有する粉塵または球体W由来の最大粒子径を有する粉塵のいずれかである。
【0035】
上述の実施形態において、球体支持装置1、および球体支持装置1の各構成、全体の構造、形状、寸法、個数、材質、ならびに研削時における球体Wの支持方法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、球体を回転させながら研削または研磨する球体研削方法および装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 球体支持装置
2 ボールユニット
3 クーラント導入部(クーラント導入手段)
7 球体研削装置
11 ケース
12 カバー
13 複数の保持ボール
14 主ボール
21 保持面
26 連通孔(最深部に開口する孔)
28 保持孔
33 導入路(クーラント導入手段)
W 球体(ワーク)
CL クーラント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7