特許第5872661号(P5872661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872661
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】可撓性弾性針
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/04 20060101AFI20160216BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   G04B19/04 Z
   G04B45/00 T
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-210480(P2014-210480)
(22)【出願日】2014年10月15日
(65)【公開番号】特開2015-78983(P2015-78983A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2014年10月15日
(31)【優先権主張番号】13189231.7
(32)【優先日】2013年10月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ストランツル
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−239080(JP,A)
【文献】 実開昭62−104115(JP,U)
【文献】 仏国特許出願公開第02868556(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/04,45/00
G01D 7/00,13/22
G12B 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性ストリップ(3)と一体化された第1の駆動用パイプ(2)を含む、時計用弾性針(1)であって、
前記弾性針(1)は単一部品であり、幾何学的形状が可変であること;
前記可撓性ストリップ(3)は、先端部において端部同士が接続された複数の可撓性セグメント(5)を含み、前記2つの可撓性セグメント(5)のうち第1のセグメント(51)は、前記第1の駆動用パイプ(2)と前記先端部との間において可撓性を有し、前記先端部が前記第1の駆動用パイプ(2)から第1の近接距離にある第1の圧縮位置と、前記先端部が前記第1の駆動用パイプ(2)から第1の離間距離にある第1の弛緩位置との間で変形可能であり、前記第1の離間距離は前記第1の近接距離よりも大きいこと;
前記弾性針(1)は、前記可撓性ストリップ(3)と一体化された第2の駆動用パイプ(4)を有し;
前記第1の駆動用パイプ(2)及び前記第2の駆動用パイプ(4)は、前記弾性針(1)が自由な状態にあるときには互いに離間しており、前記弾性針(1)が応力を印加された動作状態にあるときには共通の軸(A)に沿って互いに同軸に設けられていること;
前記可撓性ストリップ(3)は、前記第2の駆動用パイプ(4)と、前記先端部との間に、少なくとも1つの第2の可撓性セグメント(53)を含むこと;並びに
前記第2の可撓性セグメント(53)は、前記先端部が前記第2の駆動用パイプ(4)から第2の近接距離にある第2の圧迫位置と、前記先端部が前記第2の駆動用パイプ(4)から第2の離間距離にある第2の弛緩位置との間で変形可能であり、前記第2の離間距離は前記第2の近接距離よりも大きいこと
を特徴とする、時計用弾性針(1)。
【請求項2】
前記弾性針(1)は、前記先端部で互いに接続され、第1の端部(52)において前記第1の駆動用パイプを支持する前記第1のセグメント(51)、及び第2の端部(54)において前記第2の駆動用パイプ(4)を支持する前記第2のセグメント(53)のみを含むこと:並びに
前記弾性針(1)が自由な状態にあるときは、前記第1の端部(52)及び前記第2の端部(54)は互いに離間しており、前記先端部と0°ではない角度を形成すること
を特徴とする、請求項1に記載の弾性針(1)。
【請求項3】
前記第1の駆動用パイプ(2)及び前記第2の駆動用パイプ(4)が互いに対して可動であり、かつ前記共通の軸(A)に沿って同軸であり、前記弾性針(1)の応力を印加された動作状態において、前記先端部と前記共通の軸(A)との間の距離は、前記第1の駆動用パイプ(2)の前記第1の角度位置と、前記第2の駆動用パイプ(4)の前記第2の角度位置との間の角度差(θ)の関数であることを特徴とする、請求項1に記載の弾性針(1)。
【請求項4】
前記先端部は、カムの経路に沿って移動するよう設けられたスタイラス(7)を有することを特徴とする、請求項1に記載の弾性針(1)。
【請求項5】
請求項1に記載の弾性針(1)を少なくとも1つ含む時計用表示機構(10)であって、
前記少なくとも1つの弾性針(1)の前記第1の駆動用パイプ(2)を枢軸(D)の周りで駆動する第1の駆動手段(11)、及び前記少なくとも1つの弾性針(1)の前記先端部の位置を前記枢軸(D)に対して変化させるために前記少なくとも1つの弾性針(1)に応力を印加する第2の応力印加手段(12)を含むことを特徴とする、時計用表示機構(10)。
【請求項6】
前記第2の応力印加手段(12)は、前記先端部又は前記先端部の伸長部分のための少なくとも1つのガイド用経路(13)又はカム(14)を含むことを特徴とする、請求項5に記載の機構(10)。
【請求項7】
前記第2の応力印加手段(12)は、前記第2の駆動用パイプ(4)を駆動する第2の駆動手段(13)を含むことを特徴とする、請求項5に記載の機構(10)。
【請求項8】
前記第2の駆動用パイプ(4)を駆動する前記第2の駆動手段(13)は、前記第1の駆動用パイプ(2)を駆動する前記第1の駆動手段(11)と同軸であることを特徴とする、請求項7に記載の機構(10)。
【請求項9】
前記応力を印加された動作状態において、前記弾性針(1)は、前記第1の駆動手段(11)及び前記第2の駆動手段(13)に、前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段との間の動作遊びを補償するトルクを常に印加するように設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の機構(10)。
【請求項10】
前記第1の駆動手段(11)及び前記第2の駆動手段(13)の枢動速度は異なること;並びに
前記第1の駆動用パイプ(2)の所定の移動における偏差は、前記第1の駆動手段(11)と前記第2の駆動手段(13)との間のジャンプによって補償されること
を特徴とする、請求項8に記載の機構(10)。
【請求項11】
前記第1の駆動手段(11)及び前記第2の駆動手段(13)の前記枢動速度は互いに異なること;並びに
前記第1の駆動用パイプ(2)の整数回の回転における偏差は、前記第1の駆動手段(11)と前記第2の駆動手段(13)との間のジャンプによって補償されること
を特徴とする、請求項10に記載の機構(10)。
【請求項12】
前記機構は、前記第1の駆動手段(11)及び前記第2の駆動手段(13)の前記枢動速度並びに少なくとも前記第1の駆動用パイプ(2)の前記角度位置を制御するための制御手段(15)を有し、
前記制御手段(15)は、前記少なくとも1つの弾性針(1)の前記先端部に特定の軌跡を与えるように設けられている
ことを特徴とする、請求項7に記載の機構(10)。
【請求項13】
請求項5〜12のいずれか1項に記載の表示機構(10)を少なくとも1つ含む、時計ムーブメント(20)。
【請求項14】
請求項13に記載の時計ムーブメント(20)を少なくとも1つ含み、及び/又は請求項5に記載の表示機構(10)を含む少なくとも1つの時報機構若しくはオルゴールを含む、時計(30)。
【請求項15】
前記時計は腕時計であることを特徴とする、請求項14に記載の時計(30)。
【請求項16】
請求項13に記載の時計ムーブメント(20)を少なくとも1つ、及び/又は請求項5に記載の表示機構(10)を少なくとも1つ含む、科学装置(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性ストリップと一体化された第1の駆動用パイプを含む時計用弾性針に関する。
【0002】
本発明は、少なくとも1つのこのタイプの弾性針を含む時計の表示機構にも関する。
【0003】
本発明は、また少なくとも1つのこのタイプの表示機構を含む時計ムーブメントにも関する。
【0004】
本発明は、少なくとも1つのこのタイプの時計ムーブメント及び/又は少なくとも1つのこのタイプの表示機構を含む時計にも関する。
【0005】
本発明は、少なくとも1つのこのタイプの時計ムーブメント及び/又は少なくとも1つのこのタイプの表示機構を含む、科学装置にも関する。
【0006】
本発明は、時計又は科学装置のための、可動機械構成部品を用いたアナログ式表示機構の分野に関する。
【背景技術】
【0007】
文字盤又は目盛り刻印の方向を向いた1つ又は複数のインジケータによる特定の量のアナログ式表示に関しては、表示される量の値の複数の特定の範囲を区別する必要がある場合がある。例えば、針が12時間に1回転することによって通常実現される現行の時刻表示に関しては、午前と午後とを区別できると有利である。
【0008】
針の角度位置に応じて可変である径方向伸長部分を針に設けるパンタグラフ式システムを介して針を配置することは公知である。しかしながら、その製造の困難さ及び製造コストに加えて、このタイプの機構は壊れやすく、本質的に静止状態での使用に適したものであり、腕時計、又は測定機器等の科学装置といった衝撃を受ける場合がある対象物には適していない。
【0009】
CITIZENによる特許文献1は、アンテナを覆う中空の針を含む無線制御式の時計を開示している。
【0010】
MATSUMOTOによる特許文献2もまた、中空の針を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開第2011−163914号
【特許文献2】公開実用新案第S62−104115号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、インジケータの位置及び制御に応じて可変である径方向伸長部分を有するインジケータを提供するという問題に対して、信頼性が高く、かつ極めて堅牢な解決策を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このために本発明は、可撓性ストリップと一体化された第1の駆動用パイプを含む時計用弾性針であって:上記弾性針は単一部品であり、幾何学的形状が可変であること;上記可撓性ストリップは、少なくとも1つの先端部において端部同士が接続された複数の可撓性セグメントを含み、これらのうち第1のセグメントは上記第1のパイプと第1の先端部との間において可撓性を有し、また上記第1の先端部が上記第1のパイプから第1の近接距離にある第1の圧縮位置と、上記第1の先端部が上記第1のパイプから第1の離間距離にある第1の弛緩位置との間で変形可能であり、上記第1の離間距離は上記第1の近接距離よりも大きいこと;上記弾性針は、これもまた上記可撓性ストリップと一体化された第2の駆動用パイプを含むこと;上記第1のパイプ及び上記第2のパイプは、上記弾性針が自由な状態にある場合には互いに離間しており、上記弾性針が応力を印加された動作状態(上記第1のパイプ及び上記第2のパイプがそれぞれ異なる角度位置を取ることができる応力印加状態)にある場合には共通の軸に沿って互いに同軸に設けられていること;上記可撓性ストリップは、上記第2のパイプと、上記複数の先端部のうちの1つである中間先端部との間に、少なくとも1つの第2の可撓性セグメントを含むこと;並びに上記第2の可撓性セグメントは、上記中間先端部が上記第2のパイプから第2の近接距離にある第2の圧迫位置と、上記中間先端部が上記第2のパイプから第2の離間距離にある第2の弛緩位置との間で変形可能であり、上記第2の離間距離は上記第2の近接距離よりも大きいことを特徴とする、時計用弾性針に関する。
【0014】
本発明は、少なくとも1つのこのタイプの弾性針を含む時計用表示機構であって、上記機構は、上記少なくとも1つの弾性針の上記第1のパイプを枢軸の周りで駆動する第1の手段、及び上記少なくとも1つの弾性針の少なくとも1つの上記先端部の位置を上記枢軸に対して変化させるために上記少なくとも1つの弾性パイプに応力を印加する第2の手段を含むことを特徴とする、時計用表示機構にも関する。
【0015】
本発明は、少なくとも1つのこのタイプの表示機構を含む時計ムーブメントにも関する。
【0016】
本発明は、少なくとも1つのこのタイプの時計ムーブメントを含み、及び/又はこのタイプの表示機構を含む少なくとも1つの時報機構若しくはオルゴールを含む、時計にも関する。
【0017】
本発明は、少なくとも1つのこのタイプの時計ムーブメント及び/又は少なくとも1つのこのタイプの表示機構を含む、科学装置にも関する。
【0018】
本発明の他の特徴及び利点は、添付した図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明による可変長弾性針を含む例示的な表示機構の概略平面図であり、上記針の遠位端は非円形の軌跡、特に駆動アーバが2回転する間に渦巻き状の軌跡を描き、上記2回転の後に最大伸長状態へと軸方向に瞬間的に復帰する。
図2図2は、可変径方向伸長部分を有する本発明による単一部品の弾性針の概略平面図である。図2Aは、先端部で互いに接続された2つの弾性セグメントを有する可撓性ストリップを含むこの弾性針の静止状態の図であり、上記ストリップの両端は、第1のパイプ及び第2のパイプと一体化されている。図2Bは、図2Aの弾性針の応力印加状態の図であり、2つの端部パイプは、特定の角度ズレを有して同軸で互いに重なっており、これによって弾性針は細く、長くなる。図2Cは、図2A、2Bと同一の弾性針の、別の応力印加状態の図であり、2つの端部パイプは、図2Bよりも大きな角度ズレを有して同軸で互いに重なっており、この新たな角度ズレによって弾性針は太く短くなる。
図3図3は、横軸上の回転角度に応じて、角度ズレによる変形例を縦軸に示したグラフである。
図4図4は、このタイプの弾性針を含む表示機構の概略部分斜視図であり、上記弾性針は第1の駆動手段に取り付けられ、針の径方向伸長部分を変化させるために第2の応力印加手段によって応力を印加される。
図5図5は、可変径方向伸長部分を有する本発明による単一部品の弾性針の概略平面図である。図5Aは、2つのパイプが重なっている弾性針の静止状態の図である。図5Bは、図5Aの弾性針の、長位置の図であり、トルクによって上記2つのパイプが近接するように移動している。図5Cは、図5A、5Bと同一の弾性針の、短位置の図であり、トルクによって上記2つのパイプが近接するように移動している。
図6図6Aは、可撓性ストリップでパイプに取り付けられる中実部分を有する針の変形例の平面図である。図6Bは、可撓性ストリップでパイプに取り付けられる中実部分を有する針の変形例の斜視図である。
図7図7Aは、本発明による弾性針の先端部の可能な様々な軌跡の一例である。図7Bは、本発明による弾性針の先端部の可能な様々な軌跡の一例である。図7Cは、本発明による弾性針の先端部の可能な様々な軌跡の一例である。図7Dは、本発明による弾性針の先端部の可能な様々な軌跡の一例である。
図8図8Aは、弾性針の長さを変化させるための一定でない比率の様々な伝動装置の一例である。図8Bは、弾性針の長さを変化させるための一定でない比率の様々な伝動装置の一例である。図8Cは、弾性針の長さを変化させるための一定でない比率の様々な伝動装置の一例である。
図9図9は、本発明による弾性針の変形例であり、その先端部は、経路内及び/又はカム上で案内されるスタイラスを含む。
図10図10は、本発明による弾性針を有する表示機構を含むムーブメントを含む時計のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、時計又は科学装置用の表示インジケータに関する。本発明によると、この表示インジケータは形状記憶インジケータであり、その瞬間的な形状は、この表示インジケータの特定の領域に作用する少なくとも1つの駆動手段に依存する。
【0021】
ここでは、限定するものではないが特に回転式インジケータ、及び特に弾性針について本発明を説明する。しかしながら、その原理は、例えばある空間内の直線状カーソル等、非円形の運動軌跡を有するインジケータにも応用できる。
【0022】
同様に、歯車列を含む駆動手段について以下に説明するが、本発明は、電子若しくは電気装置、クオーツ式腕時計又はその他のデバイスのためのアナログ式表示手段にも同様に応用できる。
【0023】
本発明の原理は、少なくとも1つのインジケータ、特に針、例えば腕時計の時針が可変長又は可変径方向伸長部分を有する、表示機構を製造することである。
【0024】
図1は、本発明による弾性針1の先端部の軌跡を示し、この弾性針1は、以下でより詳細に説明するように12時間で1回転する従来の腕時計ムーブメントに設けられている。この軌跡は、ちょうどコイル2つ分の渦巻きを有する。この軌跡によって、外側のコイル及び内側のコイルにそれぞれ昼及び夜、午前及び午後等を文字盤上で表すことができる。従ってこの渦巻き状の軌跡は2回転で24時間をカバーする。
【0025】
よって本発明は弾性表示インジケータに関し、より詳細には、可変長を有する単一部品の可撓性かつ弾性を有する針1に関する。この時計用弾性針1は、可撓性ストリップ3と一体化された第1の駆動パイプ2を含む。このように可撓性インジケータを針として使用する応用例について、本発明をより詳細に説明するが、本発明をインジケータのその他の平面又は3次元形状に対しても応用できることは明らかである。
【0026】
本発明によると、この弾性針1は単一部品であり、その幾何学的形状は可変である。
【0027】
可撓性ストリップ3は、少なくとも1つの先端部6、61において端部同士が接続された複数の可撓性セグメント5を含む。これらの可撓性セグメント5のうち、第1のセグメント51は、第1のパイプ2と第1の先端部61との間において可撓性を有し、またこの第1のセグメント51は、第1の先端部61が第1のパイプ1から第1の近接距離にある第1の圧縮位置と、第1の先端部61が第1のパイプ2から第1の離間距離にある第1の弛緩位置との間で変形可能であり、上記第1の離間距離は上記第1の近接距離よりも大きい。
【0028】
弾性針1は、これもまた可撓性ストリップ3と一体化された第2の駆動用パイプ4を有する。
【0029】
第1のパイプ2及び第2のパイプ4は、弾性針1が自由な状態にある場合には図2Aに示すように互いに離間している。第1のパイプ2及び第2のパイプ4は、弾性針1が応力を印加された動作状態(第1のパイプ2及び第2のパイプ4がそれぞれ異なる角度位置をとることができる応力印加状態)にある場合には、共通の軸Aに沿って互いに同軸に設置される。
【0030】
可撓性ストリップ3は、第2のパイプ4と、複数の先端部6、61のうちの1つである中間先端部との間に、少なくとも1つの第2の可撓性セグメント53を有する。図示した特定の実施形態では、この中間先端部は第1の先端部と一致する。
【0031】
この第2の可撓性セグメント53は、中間先端部が第2のパイプ4から第2の近接距離にある第2の圧迫位置と、中間先端部が第2のパイプ4から第2の離間距離にある第2の弛緩位置との間で変形可能であり、第2の離間距離は第2の近接距離よりも大きい。
【0032】
各先端部6及び特に第1の先端部は、可撓性ストリップ3に印加される応力及び/又は先端部自体が受ける応力に応じて、第1のパイプ2から様々な距離にあることは明らかである。
【0033】
図6Bに示すように、いくつかの変形例では、あるセグメント5は第1の端部520において第1のパイプ2を支持し、別のセグメント5は第2の端部540において第2のパイプ4を支持し、弾性針1が自由な状態にある場合、第1の端部52及び第2の端部54は互いに離間しているか、互いに対して0°でない角度を形成する。
【0034】
2つのセグメント5、即ち第1のセグメント51及び第2のセグメント53の間に単一の先端部6を含む針1の単純な変形例について、本発明を説明及び図示するが、本発明はより複雑な幾何学的形状に対して応用できる。図2Aの弾性針1は、第1の先端部61で互いに接続された、第1の端部52において第1のパイプ2を支持する上記第1のセグメント51、及び第2の端部54において第2のパイプ4を支持する上記第2のセグメント53のみを含む。弾性針1が自由な状態にある場合、第1の端部52及び第2の端部54は互いに離間しており、第1の先端部61と0°ではない角度を形成する。
【0035】
この同一の針に関する図面、特に図1に図示した特定の非限定的な応用例では、第1のパイプ2及び第2のパイプ4が互いに対して可動であり、かつ共通の軸Aに沿って同軸である弾性針1の応力を印加された動作状態において、少なくとも1つの先端部6、61と共通の軸Aとの間の距離は、第1のパイプ2の第1の角度位置と、第2のパイプ4の第2の角度位置との間の角度差θの関数である。
【0036】
第1のパイプ2又は第2のパイプ4を、接続ロッド、カム等の他の駆動手段に置き換えることにより、他の変形例も想定できる。
【0037】
このように針1が第1のパイプ2及び第2のパイプ4を有する本発明の好ましい実装形態では、第1のパイプ2及び第2のパイプ4が互いに対して可動であり、弾性針1が応力を印加された状態において、少なくとも1つの先端部6と第1のパイプ2との間の距離は、第1のパイプ2及び第2のパイプ4並びに/又は第1のパイプ2と第2のパイプ4との間の角度差θの関数である。従ってこの第1のパイプ2及び第2のパイプ4は、いずれのタイプの運動、即ち:直線運動、枢動、複合運動又は空間運動に追従でき、これにより本発明は、いずれの所望のタイプの表示を実行するための多くの可能性を備えている。特に、例えば半球体又は類似のガラスによって範囲を画定された空間内で、このタイプの針1の先端部6に3次元運動を与えることができ:第1のパイプ2を平面XYにおいて駆動する手段は、平面XYに対して垂直な軸Zを通過する平面Pを形成し、第2のパイプ4を駆動する手段は、この平面Pにおける針1の先端部6の径方向運動を形成する。このタイプの応用例は、天文腕時計又は天文置き時計において特に有利であり、ある空間内で楕円形又はその他の軌道等の軌跡を描くことができる。
【0038】
本発明は、少なくとも1つのこのタイプの弾性針1を含む時計用表示機構10にも関する。この表示機構10は、上記少なくとも1つの弾性針1の第1のパイプ2を枢軸Dの周りで駆動する第1の手段11、及び上記少なくとも1つの弾性針1の少なくとも1つの先端部6の位置を枢軸Dに対して変化させるために上記少なくとも1つの針1に応力を印加する第2の応力印加手段12を有する。
【0039】
例えば図9に示すような特定の実施形態では、第2の応力印加手段12は、上記先端部6又は上記先端部6の伸長部分のための少なくとも1つのガイド用経路又はカム14を含む。従って弾性針1は少なくとも1つの先端部6上に、カムの経路等に沿って移動するよう配設されたスタイラス7を含むと有利である。
【0040】
好ましくは図4に示すように、機構10は第2のパイプ4を有する少なくとも1つの弾性針1を含み、第2の応力印加手段12は、上記第2のパイプ4を駆動する第2の手段13を含む。
【0041】
図示した変形例では、上記第2のパイプ4を駆動する第2の駆動手段13は、第1のパイプ2を駆動する第1の駆動手段11と同軸である。
【0042】
有利には、応力を印加された動作状態において、弾性針1は、第1の駆動手段11及び第2の駆動手段13に、第1の駆動手段11と第2の駆動手段13との間のいずれの動作遊びを補償するトルクを常に印加するように設けられる。
【0043】
特定の応用例では、第1の駆動手段11及び第2の駆動手段13は枢動駆動手段であり、第1の駆動手段11及び第2の駆動手段13の枢動速度は互いに異なる。好ましくは、特に第1のパイプ2の整数回の回転であるがこれに限定されない第1のパイプ2の所定の移動における偏差は、第1の駆動手段11と第2の駆動手段13との間のジャンプによって補償される。
【0044】
表示機構10は有利には、第1の駆動手段11及び第2の駆動手段13の枢動速度並びに少なくとも第1のパイプ2の角度位置を制御するための制御手段15を有する。このような制御手段15は、機構10が備えている上記少なくとも1つの弾性針1の少なくとも1つの先端部6に特定の軌跡を与えるように設けられる。
【0045】
図2A〜2Cは本発明の原理を示す。図2Aは、シリコン等で作製された、又は「DRIE」若しくは「LIGA」法で製造された微細材料で作製された弾性針1を示し、大まかな構成は以下の通りである。弾性針1は、共通の先端部6で連接された2つの可撓性セグメント5で形成されている。これらのセグメント5の自由端部52、54には第1のパイプ2及び第2のパイプが存在する。セグメント5は好ましくは単一の可撓性ストリップ3を形成する。
【0046】
第1のパイプ2と第2のパイプ4を特定の角度αで重ねることにより、そのセグメント部分が中空となった弾性針1が形成される。角度αが変化すると、2つの可撓性セグメント5が変形する。その結果、弾性針1の見た目の長さが変化する。
【0047】
図1における弾性針1の渦巻き状の軌跡は、角度の変化Δαが図3のグラフに従うことを意味し、弾性針1は2回転毎に角度差Δαを蓄積して、これは瞬間的なジャンプによって必ずゼロにリセットされる。
【0048】
図4に示す表示機構10の単純な実施例はこのような機能を満たす。図4の実線の矢印は要素の枢動方向を示し、点線の矢印はトルク又は力の印加方向を示す。第1の駆動手段11は第1のパイプ2用の第1の駆動ピニオン21を含み、上記第1の駆動ピニオン21は第1の駆動ホイール22によって駆動する。第2の駆動手段13は第2のパイプ2用の第2の駆動ピニオン23を有し、上記第2の駆動ピニオン23は第2の駆動ホイール24によって駆動する。この特定の実施例における伝動比率は、第1のパイプ2が2回転する場合に、第2のパイプ4は1.8回転しかしないようなものである。この実施例における0.2回転の角度差は針に対して適合させる必要があるか、又はその逆であり、この角度差は上記2回転を通して直線的に連続して取得される。上記瞬間的なジャンプを実施するために、第2の駆動ホイール24は歯を有さないセクタ25を含み、これはノッチを形成し、これにより、2回目の回転の終点において弾性針1を、図1、3に2重の矢印で示す運動で再び締め上げることができるようになる。弾性針1によって常時印加されるトルクにより、1つ又は複数の欠歯部が、弾性針1を休止させることなく通過できる。
【0049】
弾性針に常に予応力を印加して「長」又は「短」状態としておくことが重要である。従って弾性針は、図5A〜5Cに示すように歯車列にトルクを印加する:
−静止状態の図5Aでは:第1のパイプ2及び第2のパイプ4は重なっており、このような構成は運動中には決して発生せず;
−長位置である図5Bでは:トルクによって上記2つのパイプが近接するように移動し;
−短位置である図5Cでは:トルクによって上記2つのパイプが近接するように移動する。
【0050】
弾性針1が常に応力を印加されているという事実により、渦巻き状軌跡の終点においてジャンプを実施でき(図1、3の2重矢印)、歯車列のいずれの遊びを防止でき、ジャンプが不動作時間中に実施されるようにすることもできる。実際、弾性針1のトルクは歯の間の遊び及びセクタ25内の空間を補償するため、歯車列は停止しない。図4の実施例のような特定の場合において、角度差Δαは0.2回転である。この差分Δαは弾性針1の設計に依存するか、又はその逆である。
【0051】
可撓性弾性針1は他の形状であってもよい。それぞれの場合において、単一部品の可撓性弾性針1は好ましくは2つのパイプを含み、表示機構10はこれら2つのパイプの回転方向における相対角度を変化させることにより、弾性針1の長さ又は径方向伸長部分を変化させることができる。
【0052】
図6A、6Bは、可撓性ストリップ520、540によってパイプ2、4に2つの高さに取り付けられた中実部分60を有する針1の変形例を示し、これら可撓性ストリップ520、540はそれぞれパイプ2、4に巻きつけられている。
【0053】
可変長を有するこのタイプの弾性針1により、形状の自由度を大幅に向上させることができ、これにより図7A〜7Dに示すように、先端部6の軌跡を、渦巻き、同心円、正方形、楕円形、交差する突起又はその他の形状(これらの軌跡は限定的なものではない)に形成できる。
【0054】
駆動手段に関して、特定の軌跡を機械的に得るために特定の歯アセンブリを定義できる。非円形軌跡は、2つのパイプの伝動比率によって形成される。非円筒形の歯付きホイール、例えば2つの卵型カムは、一定でない伝動比率を有し、これは弾性針1の長さを周期的に変化させる。図8A〜8Cは、このような複雑機構に応用できる特定の駆動手段の非限定的な例を示す。図8で得られる可変伝動比率は革新的なものであり、これによって極めて自由な軌跡の設計が可能になる。
【0055】
本発明は、少なくとも1つのこのタイプの表示機構10を含む時計ムーブメント20にも適用できる。
【0056】
本発明は、少なくとも1つのこのタイプの時計ムーブメント20を含み、及び/又はこのタイプの表示機構10を含む少なくとも1つの時報機構若しくはオルゴールを含む時計30にも適用できる。有利な応用では、時計30は腕時計である。
【0057】
本発明は、少なくとも1つのこのタイプの時計ムーブメント20及び/又は少なくとも1つのこのタイプの表示機構10を含む科学装置30にも適用できる。
【0058】
本発明による可撓性弾性針1は、「DRIE」若しくは「LIGA」又は同様の方法を用いて、シリコン又は同様の種類の材料で容易に作製でき、組み立てを必要としない。このような技術は多層式の製造を可能とするため有利であり、例えば図6Bによる針は、第1のパイプ2及び隣接する第1のセグメント520を用いた第1の高さを有していてもよく、中実部分60はこの第1の高さの伸長部分によって第2の高さに形成され、第2のセグメント540及び第2のパイプ4はこの第2の高さに作製される。
【0059】
このタイプのインジケータを含む表示機構10により、より広い値の範囲に亘るより正確な表示科学装置又は時計30のムーブメント20又は機構を開発できる可能性が広がる。
【0060】
本発明は、ユーザの注意を特定の状況に惹きつけるための、形状記憶インジケータの製作に適している。従って、外観上ヒンジ留めで構成された針について言及してもよく、この針は、その移動の一部分において、針を構成するセグメントが実質的に整列した位置へと変化し、範囲の変化中又は例えば目覚まし時計又は危険閾値等を検知した場合の警報といった時計若しくは科学装置の機構若しくは回路の動作中に、完全に変形して破線状の特定の形状をとる。別の応用例は、同様の状況における、開口内の人物又は物体の影絵のアニメーションである。
【符号の説明】
【0061】
1 弾性針
2 第1の駆動パイプ
3 可撓性ストリップ
4 第2の駆動用パイプ
5 可撓性セグメント
6 先端部
7 スタイラス
10 表示機構
11 第1の駆動手段
12 第2の応力印加手段
13 ガイド用経路、第2の駆動手段
14 カム
15 制御手段
20 時計ムーブメント
21 第1の駆動ピニオン
22 第1の駆動ホイール
23 第2の駆動ピニオン
24 第2の駆動ホイール
25 セクタ
30 時計、科学装置
51 第1のセグメント
52 第1の端部、自由端部
53 第2の可撓性セグメント
54 第2の端部、自由端部
60 中実部分
61 第1の先端部
520 可撓性ストリップ、第1のセグメント
540 可撓性ストリップ、第2のセグメント
A 共通の軸
D 枢軸
α 角度
Δα 角度の変化、角度差
θ 角度差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10