特許第5872690号(P5872690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5872690タイヤインナーライナ用フィルムおよびその製造方法
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  • 特許5872690-タイヤインナーライナ用フィルムおよびその製造方法 図000012
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872690
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】タイヤインナーライナ用フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/14 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   B60C5/14 Z
   B60C5/14 A
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-516926(P2014-516926)
(86)(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公表番号】特表2014-520037(P2014-520037A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】KR2012005189
(87)【国際公開番号】WO2013002604
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2013年12月20日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0064936
(32)【優先日】2011年6月30日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0070632
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チョン,イル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギ−ウン
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン−モク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,オク−ファ
【審査官】 八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−132553(JP,A)
【文献】 特開平07−149108(JP,A)
【文献】 特表2002−544357(JP,A)
【文献】 特開2010−013617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系セグメントおよびポリエーテル系セグメントを含む共重合体と、ポリアミド系樹脂とを、4:6〜7:3の質量比で含む基材フィルム層と、
前記基材フィルム層の少なくとも一面に形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス系接着剤を含む接着層とを含み、
前記共重合体のポリエーテル系セグメントの含有量が、前記基材フィルム層の全質量に対して15〜50質量%であり、
下記の一般式1による前記基材フィルム層の引張回復率が30%〜80%であることを特徴とするタイヤインナーライナ用フィルム。
[一般式1]
引張回復率(%)=(L−L)*100/(L−L
前記一般式1において、Lは、前記基材フィルム層を常温で100%引張した時の長さであり、Lは、前記基材フィルム層が常温で100%引張された後、収縮してなる最終長さであり、Lは、引張前の元の試料の長さである。
【請求項2】
前記ポリアミド系樹脂の相対粘度(硫酸96%溶液)が3.0〜3.5である請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項3】
前記ポリアミド系セグメントとポリエーテル系セグメントとを含む共重合体の絶対質量平均分子量が50,000〜300,000である請求項1または2に記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項4】
前記共重合体のポリアミド系セグメントは、下記の化学式1または化学式2の繰り返し単位を含む請求項1から3のいずれか1つに記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
[化学式1]
前記化学式1において、Rは、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基、または炭素数7〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアリールアルキレン基であり、
[化学式2]
前記化学式2において、Rは、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基であり、Rは、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基、または炭素数7〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアリールアルキレン基である。
【請求項5】
前記共重合体のポリエーテル系セグメントは、下記の化学式3の繰り返し単位を含む請求項1から4のいずれか1つに記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
[化学式3]
前記化学式3において、
は、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基であり、nは、1〜100の整数であり、
およびRは、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ直接結合、−O−、−NH−、−COO−または−CONH−である。
【請求項6】
前記共重合体は、ポリアミド系セグメントおよびポリエーテル系セグメントを6:4〜3:7の質量比で含む請求項1から5のいずれか1つに記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項7】
前記基材フィルム層の厚さが30〜300μmであり、
前記接着層の厚さが0.1〜20μmである請求項1から6のいずれか1つに記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項8】
前記基材フィルム層が未延伸フィルムである請求項1から7のいずれか1つに記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項9】
前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス系接着剤が、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物2〜30質量%;およびラテックス68〜98質量%を含む請求項1から8のいずれか1つに記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項10】
ポリアミド系セグメントおよびポリエーテル系セグメントを含む共重合体と、ポリアミド系樹脂とを、4:6〜7:3の質量比で、かつ前記共重合体のポリエーテル系セグメントの含有量を、得ようとする基材フィルム層の全質量に対して15〜50質量%となるように混合し、230〜300℃で溶融および押出して基材フィルム層を形成する段階と、
前記基材フィルム層の少なくとも一表面上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス系接着剤を含む接着層を形成する段階とを含むことを特徴とするタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記共重合体を、ポリアミド系セグメントおよびポリエーテル系セグメントを6:4〜3:7の質量比で含むものとする請求項10に記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項12】
前記基材フィルム層を形成する段階は、前記混合物を30〜300μmの厚さのフィルムとして押出する段階を含む請求項10または11に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記接着層を形成する段階は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物2〜30質量%およびラテックス68〜98質量%を含む接着剤を前記基材フィルム層の少なくとも一表面上に0.1〜20μmの厚さ塗布する段階を含む請求項10から12のいずれか1つに記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤインナーライナ用フィルムに関するものであって、より詳細には、薄い厚さでも優れた気密性を実現することができ、タイヤの軽量化および自動車の燃費向上を可能にするだけでなく、タイヤ製造工程でより容易な成形を可能にし、優れた成形性と共に、高い耐久性および耐疲労性などの機械的物性を有するタイヤインナーライナ用フィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、自動車の荷重を支え、路面から受ける衝撃を緩和し、自動車の駆動力または制動力を地面に伝達する役割を果たす。一般に、タイヤは、繊維/鋼鉄/ゴムの複合体であって、図1のような構造を有することが一般的である。
【0003】
トレッド(Tread)1:路面と接触する部分であり、制動、駆動に必要な摩擦力を与え、耐摩耗性が良好でなければならず、外部衝撃に耐えられなければならず、発熱が少なくなければならない。
【0004】
ボディプライ(Body Ply、またはカーカス/Carcass)6:タイヤ内部のコード層であり、荷重を支持し、衝撃に耐え、走行中の屈伸運動に対する耐疲労性が強くなければならない。
【0005】
ベルト(Belt)5:ボディプライの間に位置しており、ほとんどの場合に鋼線(Steel Wire)で構成され、外部の衝撃を緩和させることはもちろん、トレッドの接地面を広く維持して走行安定性を優れるようにする。
【0006】
サイドウォール(Side Wall)3:ショルダー2の下部からビード9の間のゴム層をいい、内部のボディプライ6を保護する役割を果たす。
【0007】
インナーライナ(Inner Liner)7:チューブの代わりにタイヤの内側に位置しているものであり、空気漏れを防止して空気入りタイヤを可能にする。
【0008】
ビード(BEAD)9:鋼線にゴムを被覆した四角または六角形態のワイヤバンドル(Wire Bundle)であり、タイヤをリム(Rim)に載置し固定させる役割を果たす。
【0009】
キャッププライ(CAP PLY)4:一部の乗用車用ラジアルタイヤのベルト上に位置した特殊コード紙であり、走行時、ベルトの動きを最小化する。
【0010】
アペックス(APEX)8:ビードの分散を最少化し、外部の衝撃を緩和してビードを保護し、成形時、空気の流入を防止するために用いる三角形態のゴム充填材である。
【0011】
特に、最近は、チューブを用いることなく、内部には30〜40psi程度の高圧空気が注入されたチューブレス(tube−less)タイヤが通常用いられるが、車両の運行過程で内側の空気が外部に流出するのを防止するために、カーカス内層に気密性の高いインナーライナが配置される。
【0012】
以前には、比較的空気透過性が低いブチルゴムまたはハロブチルゴムなどのゴム成分を主要成分とするタイヤインナーライナが用いられていたが、このようなインナーライナでは、十分な気密性を得るためにゴムの含有量またはインナーライナの厚さを増加させなければならなかった。これにより、タイヤ総重量が増加して自動車の燃費が低下し、タイヤの加硫過程または自動車の運行過程でカコス層の内面ゴムとインナーライナとの間に空気ポケットができたり、インナーライナの形態や物性が変化する現象も現れた。
【0013】
これにより、インナーライナの厚さおよび重量を減少させて燃費を節減させ、タイヤの加硫または運行過程などで発生するインナーライナの形態や物性の変化を低減させるために多様な方法が提案された。
【0014】
しかし、以前に知られているいかなる方法もインナーライナの厚さおよび重量を十分に減少させながら、優れた空気透過性およびタイヤの成形性を維持するのに限界があった。また、以前に知られている方法で得られたインナーライナは、タイヤの製造過程または運行過程などで繰り返し変形によって亀裂が発生するなど、十分な耐疲労性を有することができない場合も多かった。
【0015】
これによって、より薄い厚さでタイヤの軽量化を達成することができながらも、優れた気密性または成形性などの物性を実現することができるタイヤインナーライナ用フィルムに対する研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、薄い厚さでも優れた気密性を実現することができ、タイヤの軽量化および自動車の燃費向上を可能にするだけでなく、タイヤ製造工程でより容易な成形を可能にし、優れた成形性と共に、高い耐久性および耐疲労性などの機械的物性を有するタイヤインナーライナ用フィルムを提供する。
【0017】
また、本発明は、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む共重合体と、ポリアミド系樹脂とを含む基材フィルム層と、前記基材フィルム層の少なくとも一面に形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層とを含み、前記基材フィルム層の引張回復率が30%〜80%であるタイヤインナーライナ用フィルムを提供する。
【0019】
また、本発明は、ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む共重合体と、ポリアミド系樹脂とを混合し、230〜300℃で溶融および押出して基材フィルム層を形成する段階と、前記基材フィルム層の少なくとも一表面上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成する段階と含む前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法を提供する。
【0020】
以下、発明の具体的な実施形態にかかるタイヤインナーライナ用フィルムおよびその製造方法についてより詳細に説明する。
【0021】
発明の一実施形態によれば、ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む共重合体と、ポリアミド系樹脂とを含む基材フィルム層と、前記基材フィルム層の少なくとも一面に形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層とを含み、下記の一般式1による前記基材フィルム層の引張回復率が30%〜80%であるタイヤインナーライナ用フィルムが提供できる。
[一般式1]
引張回復率(%)=(L−L)*100/(L−L
前記一般式1において、Lは、前記基材フィルム層を常温で100%引張した時の長さであり、Lは、前記基材フィルム層が常温で100%引張された後、収縮してなる最終長さであり、Lは、引張前の元の試料の長さである。
【0022】
本発明者らの研究結果、前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む共重合体と、前記ポリアミド系樹脂を共に用いて形成された基材フィルム層を使用すると、薄い厚さでも優れた気密性を実現し、タイヤを軽量化して自動車の燃費を向上させることができ、高い耐熱特性を有しながらも、優れた成形性と共に、高い耐久性および耐疲労性などの機械的物性を示すタイヤインナーライナ用フィルムが提供できることが確認された。
【0023】
特に、前記タイヤインナーライナの基材フィルム層は、前記一般式1によって定義される引張回復率が30%〜80%、好ましくは36%〜64%であり得、これにより、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、ゴム成分を含む他のタイヤ構成部、例えば、カーカスなどと類似の弾性挙動または形態回復特性を示すことができる。
【0024】
一般に、タイヤインナーライナフィルムに使用される高分子樹脂フィルムの場合、粘弾性を有したり、弾性回復特性がさほど高くないのに対し、前記基材フィルム層は、上述した特定の引張回復率を有して優れた弾性挙動または形態回復特性を示し、これにより、自動車の走行中に発生する変形などに対して高い耐久性および優れた形態安定性を有するだけでなく、カーカスなどの他の構成部と弾性挙動の差によって生じ得る問題点、例えば、フィルム上にシワやクラックが発生する現象や、物性または接着力の低下などが現れる現象を最小化することができる。
【0025】
具体的には、前記一般式1によって定義される前記基材フィルム層の引張回復率が30%以上であれば、タイヤ成形過程や自動車の運行で発生する変形または引張に対して十分な弾性回復力を確保することができ、これにより、前記タイヤインナーライナ用フィルムが優れた形態安定性および耐久性を確保することができ、加硫されたゴムとの変形差によるシワの発生を防止することができて、インナーライナフィルムとゴムとの間の剥離を防止することができ、インナーライナフィルムの物性が低下したり、形態や外形が損傷するのを防止して、長時間使用しても高い気密性を確保することができる。
【0026】
また、前記一般式1によって定義される前記基材フィルム層の引張回復率が80%未満であれば、インナーライナフイルムとして確保すべき十分な機械的物性などを有することができ、タイヤの走行時に発生する変形によってインナーライナフィルムに応力が集中する現象を防止することができ、フィルム製造時や自動車の走行過程で過度に高い弾性または弾性回復力を示して、フィルムの均一性や製膜性が低下するのを防止することができる。
【0027】
具体的には、上述したタイヤインナーライナ用フィルムの特徴は、前記ポリアミド系樹脂と共に、ポリエーテル系セグメントおよびポリアミド系セグメントを含む共重合体を用いて製造された基材フィルム層を適用することによる。
【0028】
より詳細には、前記基材フィルム層は、ポリアミド系樹脂にエラストマー的性質を付与したポリエーテル系セグメントを含む共重合体を用いて、優れた気密性と共に、相対的に低いモジュラスを有することができる。前記基材フィルム層に含まれるポリアミド系樹脂は、固有の分子鎖特性によって優れた気密性、例えば、同一厚さにおいて、タイヤに一般に使用されるブチルゴムなどに比べて10〜20倍程度の気密性を示し、他の樹脂に比べてさほど高くないモジュラスを示す。そして、前記共重合体に含まれるポリエーテル系セグメントは、ポリアミド系セグメントまたはポリアミド系樹脂の間に結合または分散した状態で存在して、前記基材フィルム層のモジュラスをより低下させることができ、前記基材フィルム層の剛直度が上昇するのを抑制することができ、高温で結晶化されるのを防止することができる。
【0029】
前記ポリアミド系樹脂は、大体優れた気密性を示すため、前記基材フィルム層が薄い厚さを有しながらも低い空気透過性を有するようにする役割を果たす。また、このようなポリアミド系樹脂は、他の樹脂に比べて相対的に高くないモジュラスを示すため、前記特定含有量のポリエーテル系セグメントを含む共重合体と共に適用されても相対的に低いモジュラス特性を示すインナーライナ用フィルムが得られ、これにより、タイヤの成形性を向上させることができる。さらに、前記ポリアミド系樹脂は、十分な耐熱性および化学的安定性を有するため、タイヤ製造過程で適用される高温条件または添加剤などの化学物質への露出時にインナーライナフィルムが変形または変性するのを防止することができる。
【0030】
そして、前記ポリアミド系樹脂は、ポリアミド系セグメントとポリエーテル系セグメントとを含む共重合体と共に使用され、接着剤(例えば、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤)に対して相対的に高い反応性を示すことができる。これにより、前記インナーライナ用フィルムがカーカス部分に容易に接着可能であり、タイヤの製造過程または運行過程などで発生する熱または繰り返し変形による界面の破断を防止して、前記インナーライナ用フィルムが十分な耐疲労性を有することができるようにする。
【0031】
前記ポリアミド系樹脂は3.0〜3.5、好ましくは3.2〜3.4の相対粘度(硫酸96%溶液)を有することができる。このようなポリアミド系樹脂の粘度が3.0未満であれば、靭性(toughness)の低下によって十分な伸び率が確保されず、タイヤ製造時や自動車の運行時に破損が発生することがあり、基材フィルム層がタイヤインナーライナ用フイルムとして有するべき気密性または成形性などの物性を確保しにくいことがある。また、前記かかるポリアミド系樹脂の粘度が3.5を超える場合、製造される基材フィルム層のモジュラスまたは粘度が不要に高くなり得、タイヤインナーライナが適切な成形性または弾性を有しにくいことがある。
【0032】
前記ポリアミド系樹脂の相対粘度は、常温で硫酸96%溶液を用いて測定した相対粘度を意味する。具体的には、一定のポリアミド系樹脂の試片(例えば、0.025gの試片)を異なる濃度で硫酸96%溶液に溶かして2以上の測定用溶液を製造した後(例えば、ポリアミド系樹脂試片を、0.25g/dL、0.10g/dL、0.05g/dLの濃度となるように、96%硫酸に溶かして3つの測定用溶液を製作)、25℃で、粘度管を用いて前記測定用溶液の相対粘度(例えば、硫酸96%溶液の粘度管通過時間に対する前記測定用溶液の平均通過時間の割合)を求めることができる。
【0033】
前記基材フィルム層に使用可能なポリアミド系樹脂としては、ポリアミド系樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66の共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体およびナイロン66/PPS共重合体;またはこれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、6−ナイロンのメトキシメチル化物、6−610−ナイロンのメトキシメチル化物または612−ナイロンのメトキシメチル化物があり、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610またはナイロン612を使用することが好ましい。
【0034】
また、前記ポリアミド系樹脂は、樹脂自体を使用する方法だけでなく、前記ポリアミド系樹脂の単量体または前記ポリアミド系樹脂の前駆体を用いて基材フィルムを製造することにより、前記基材フィルム層に含まれてもよい。
【0035】
一方、上述のように、ポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体は、ポリアミド系樹脂の間に結合または分散した状態で存在して、前記基材フィルム層のモジュラスをより低下させることができ、前記基材フィルム層の剛直度が上昇するのを抑制することができ、高温で結晶化されるのを防止することができる。このような共重合体が前記基材フィルム層に含まれることにより、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、優れた耐久性、耐熱性および耐疲労性などの機械的物性を確保しながらも、高い弾性または弾性回復率を実現することができる。これにより、前記インナーライナ用フィルムが優れた成形性を示すことができ、これを適用したタイヤは、繰り返し変形および高い熱が継続して発生する自動車の走行過程においても、物理的に破損したり、自体の物性または性能が低下しなくて済む。
【0036】
一方、前記共重合体のポリエーテル系セグメントの含有量が、前記基材フィルム層の全体重量に対して15〜50重量%、好ましくは20〜45重量%、より好ましくは22〜40重量%の場合、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、より優れた物性および性能を発揮することができ、上述した一般式1による前記基材フィルム層の引張回復率が特性をより容易に最適化させることができる。
【0037】
前記ポリエーテル系セグメントの含有量が基材フィルム層全体中の15重量%未満であれば、前記基材フィルム層またはタイヤインナーライナ用フィルムのモジュラスが高くなってタイヤの成形性が低下したり、繰り返し変形による物性の低下が大きくなり得、前記基材フィルム層が有する引張回復率関連の特性、例えば、弾性または弾性回復率を低下させることがある。また、前記ポリエーテル系セグメントの含有量が基材フィルム層中の50重量%を超えると、タイヤインナーライナが要求される気密性(Gas Barrier)性が良くなくてタイヤ性能が低下することがあり、接着剤に対する反応性が低下してインナーライナがカーカス層に容易に接着しにくいことがあり、基材フィルム層の弾性が増加して均一なフィルムを製造するのが容易でないことがある。
【0038】
前記ポリエーテル系セグメントは、前記ポリアミド系セグメントと結合されたり、前記ポリアミド系樹脂の間に分散した状態で存在することができるが、タイヤ製造過程または自動車の運行過程で基材フィルム層内に大きな結晶が成長するのを抑制したり、前記基材フィルム層が簡単に破れるのを防止することができる。
【0039】
また、このようなポリエーテル系セグメントは、前記タイヤインナーライナ用フィルムのモジュラスをより低下させることができ、これにより、タイヤ成形時にさほど大きくない力が加えられてもタイヤの形態に合わせて伸張または変形できるようにして、タイヤを容易に成形できるようにする。そして、前記ポリエーテル系セグメントは、低温でフィルムの剛直度が上昇するのを抑制することができ、高温で結晶化されるのを防止することができ、繰り返し変形などによるインナーライナフィルムの損傷または破れを防止することができ、インナーライナの変形に対する回復力を向上させて永久変形によるフィルムのシワの発生を抑制して、タイヤまたはインナーライナの耐久性を向上させることができる。
【0040】
前記ポリアミド系セグメントは、前記共重合体が一定水準以上の機械的物性を有することができるようにしながらも、モジュラス特性が大きく増加しないようにする役割を果たすことができる。同時に、前記ポリアミド系セグメントが適用されることにより、基材フィルム層が薄い厚さを有しながらも低い空気透過性を有することができ、十分な耐熱性および化学的安定性を確保することができる。
【0041】
前記共重合体のポリアミド系セグメントは、下記の化学式1または化学式2の繰り返し単位を含むことができる。
[化学式1]
【0042】
前記化学式1において、Rは、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基、または炭素数7〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアリールアルキレン基である。
[化学式2]

【0043】
前記化学式2において、Rは、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基であり、Rは、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基、または炭素数7〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアリールアルキレン基である。
【0044】
また、前記共重合体のポリエーテル系セグメントは、下記の化学式3の繰り返し単位を含むことができる。
[化学式3]
【0045】
前記化学式3において、Rは、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基であり、nは、1〜100の整数であり、RおよびRは、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ直接結合、−O−、−NH−、−COO−または−CONH−である。
【0046】
前記ポリアミド系セグメントとポリエーテル系セグメントとを含む共重合体の絶対重量平均分子量は50,000〜300,000、好ましくは70,000〜200,000であり得る。前記共重合体の絶対重量平均分子量が50,000未満であれば、製造される基材フィルム層がインナーライナ用フィルムに使用するのに十分な機械的物性を確保できないことがあり、前記タイヤインナーライナ用フィルムが十分な気密性(Gas barrier)を確保しにくいことがある。また、前記共重合体の絶対重量平均分子量が300,000超過であれば、高温での加熱時、基材フィルム層のモジュラスまたは結晶化度が過度に増加して、インナーライナ用フイルムとして有するべき弾性または弾性回復率を確保しにくいことがある。
【0047】
一方、前記共重合体は、ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを6:4〜3:7、好ましくは5:5〜4:6の重量比で含むことができる。
【0048】
上述のように、前記ポリエーテル系セグメントの含有量が小さすぎると、基材フィルム層またはタイヤインナーライナ用フィルムのモジュラスが高くなってタイヤの成形性が低下したり、繰り返し変形による物性の低下が大きくなり得る。また、前記ポリエーテル系セグメントの含有量が大きすぎると、前記タイヤインナーライナ用フィルムの気密性が低下することがあり、接着剤に対する反応性が低下してインナーライナがカーカス層に容易に接着しにくいことがあり、基材フィルム層の弾性が増加して均一なフィルムを製造するのが容易でないことがある。
【0049】
また、前記基材フィルム層において、ポリアミド系樹脂および上述した共重合体は6:4〜3:7、好ましくは5:5〜4:6の重量比で含まれるとよい。前記ポリアミド系樹脂の含有量が小さすぎると、前記基材フィルム層の密度や気密性が低下することがある。また、前記ポリアミド系樹脂の含有量が大きすぎると、前記基材フィルム層のモジュラスが過度に高くなったり、タイヤの成形性が低下することがあり、タイヤ製造過程または自動車の運行過程で現れる高温環境でポリアミド系樹脂が結晶化され得、繰り返し変形によってクラックが発生することがある。
【0050】
一方、前記基材フィルム層は、未延伸フィルムであり得る。前記基材フィルム層が未延伸フィルム形態の場合には、低いモジュラスおよび高い変形率を有して高い膨張が発生するタイヤ成形工程に適切に適用することができる。また、未延伸フィルムでは結晶化現象がほとんど発生しないため、繰り返される変形によってもクラックなどのような損傷を防止することができる。また、未延伸フィルムは、特定方向への配向および物性の偏差が大きくないため、均一な物性を有するインナーライナを得ることができる。後述するタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法に示されているように、前記基材フィルム層の配向を最大限抑制する方法、例えば、溶融押出温度の最適化による粘度調整、口金ダイ規格の変更または巻取速度の調節などの方法により、前記基材フィルムを未配向または未延伸フイルムとして製造することができる。
【0051】
前記基材フィルム層に未延伸フィルムを適用すると、タイヤ製造工程でインナーライナ用フィルムを円筒状またはシート状に容易に製造することができる。特に、前記基材フィルム層に未延伸シート状フィルムを適用する場合、タイヤのサイズごとにフィルム製造設備を別途に構築する必要がなく、移送および保管過程でフィルムに加えられる衝撃およびシワなどを最小化することができて好ましい。また、前記基材フィルムをシート状に製造する場合、後述する接着層を追加する工程をより容易に行うことができ、成形ドラムと規格差によって製造工程中に発生する損傷または歪みなどを防止することができる。
【0052】
一方、前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層は、前記基材フィルム層およびタイヤカーカス層に対しても優れた接着力および接着維持性能を有し、これにより、タイヤの製造過程または運行過程などで発生する熱または繰り返し変形によって発生するインナーライナフィルムとカーカス層との間の界面の破断を防止して、前記インナーライナ用フィルムが十分な耐疲労性を有することができるようにする。
【0053】
特に、前記基材フィルム層上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成すると、追加の加硫工程を適用しなかったり、接着層の厚さを大きく増加させなくてもタイヤに強固に結合できることが確認された。
【0054】
上述した接着層の主要特性は、特定の組成を有する特定のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含むことによると考えられる。以前のタイヤインナーライナ用接着剤としては、ゴムタイプのタイガムなどが使用され、これにより、追加の加硫工程が必要であった。これに対し、前記接着層は、特定組成のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含み、前記基材フィルムに対して高い反応性および接着力を有するだけでなく、厚さをさほど増加させなくても高温加熱条件で圧着して前記基材フィルムとタイヤカーカス層とを強固に結合させることができる。これにより、タイヤの軽量化および自動車の燃費向上を可能にし、タイヤ製造過程または自動車の運行過程での繰り返される変形などでもカーカス層とインナーライナ層または前記基材フィルムと接着層とが分離される現象を防止することができる。そして、前記接着層は、タイヤ製造過程や自動車の運行過程で加えられる物理/化学的変形に対しても高い耐疲労特性を示すことができるため、高温条件の製造過程や長期間機械的変形が加えられる自動車の運行過程中においても、接着力または他の物性の低下を最小化することができる。
【0055】
それだけでなく、前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤は、ラテックスとゴムとの間の架橋結合が可能で接着性能を発現し、物理的にラテックス重合物であるため、硬化度が低く、ゴムのように柔軟な特性を有することができ、レゾルシノール−ホルマリン重合物のメチロール末端基と基材フィルムとの間の化学結合が可能である。これにより、基材フィルムに前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を適用すると、十分な接着性能を実現することができる。
【0056】
前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物2〜32重量%、好ましくは10〜20重量%、およびラテックス68〜98重量%、好ましくは80〜90重量%を含むことができる。
【0057】
前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとを1:0.3〜1:3.0、好ましくは1:0.5〜1:2.5のモル比で混合した後、縮合反応して得られたものであり得る。また、前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物は、優れた接着力のための化学反応の面で、全体接着層の総量に対して2重量%以上で含まれるとよく、適正な耐疲労特性を確保するために、32重量%以下で含まれるとよい。
【0058】
前記ラテックスは、天然ゴムラテックス、スチレン/ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル/ブタジエンゴムテックス、クロロプレンゴムテックスおよびスチレン/ブタジエン/ビニルピリジンゴムテックスからなる群より選択された1種または2種以上の混合物になるとよい。前記ラテックスは、素材の柔軟性とゴムとの効果的な架橋反応のために、全体接着層の総量に対して68重量%以上で含まれるとよく、基材フィルムとの化学反応と接着層の剛性のために、98重量%以下で含まれる。
【0059】
また、前記接着層は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物およびラテックスと共に、表面張力調整剤、耐熱剤、消泡剤、およびフィラーなどの添加剤1種以上を追加的に含むことができる。この時、前記添加剤のうち、表面張力調整剤は、接着層の均一な塗布のために適用するが、過剰投入時、接着力低下の問題を発生させることがあるため、全体接着層の総量に対して2重量%以下または0.0001〜2重量%、好ましくは1.0重量%以下または0.0001〜0.5重量%で含まれるとよい。この時、前記表面張力調整剤は、スルホン酸塩陰イオン性界面活性剤、硫酸エステル塩陰イオン性界面活性剤、カルボン酸塩陰イオン性界面活性剤、リン酸エステル塩陰イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびポリシロキサン系界面活性剤からなる群より選択された1種以上になるとよい。
【0060】
前記接着層は0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.2〜7μm、さらに好ましくは0.3〜5μmの厚さを有することができ、タイヤインナーライナ用フィルムの一表面または両表面上に形成されるとよい。前記接着層の厚さが薄すぎると、タイヤ膨張時に接着層自体がより薄くなり得、カーカス層および基材フィルムの間の架橋接着力が低下することがあり、接着層の一部に応力が集中して疲労特性が低下することがある。また、前記接着層が厚すぎると、接着層での界面分離が生じて疲労特性が低下することがある。そして、タイヤのカーカス層にインナーライナフィルムを接着させるために、基材フィルムの一面に接着層を形成することが一般的であるが、多層のインナーライナフィルムを適用する場合、あるいはインナーライナフィルムがビード部を囲むなどのタイヤ成形方法および構造設計により両面にゴムと接着が必要な場合、基材フィルムの両面に接着層を形成することが好ましい。
【0061】
一方、前記基材フィルム層は30〜300μm、好ましくは40〜250μm、より好ましくは40〜200μmの厚さを有することができる。これにより、発明の一実施形態のタイヤインナーライナ用フィルムは、以前に知られているものに比べて薄い厚さを有しながらも、低い空気透過性、例えば、200cc/(m・24hr・atm)以下の酸素透過度を有することができる。
【0062】
一方、前記基材フィルム層を常温で100%引張すると、10〜35Mpa、好ましくは15〜30Mpaの応力が発生できる。同時に、前記基材フィルムは、常温で初期降伏点(Yield Point)の応力(Stress)が35Mpa以下、好ましくは30Mpa以下であり得、より好ましくは初期降伏点(yield point)が存在しなくてもよい。前記タイヤインナーライナ用フィルムは、このように低いモジュラス特性によって、タイヤ成形時にさほど大きくない力が加えられてもタイヤの形態に合わせて引張または変形できる。また、これにより、タイヤ製造工程でグリーンタイヤの歪みやフィルムの損傷などが生じることなくより容易な成形を可能にするだけでなく、前記のような低いモジュラス特性によってタイヤ製造工程または自動車の運行過程で加えられる物理的な変形に対しても高い耐疲労特性を有することができる。
【0063】
特に、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、常温で100%引張時、基材フィルムの応力(Stress)が大きすぎると、つまり、35Mpaを超える場合には、タイヤ成形機械の低い成形圧力では適切なタイヤの形状を製造しにくく、これによって、成形後、グリーンタイヤの形状が歪んだり、フィルムが破れるような工程上の問題点が発生することがある。また、このように過度の応力特性を有する場合には、成形機械または成形方法などを変更してタイヤを製造するといっても、剛直なフィルムの特性によって自動車の運行過程で発生し得る苛酷な引張および圧縮変形などの外力がフィルムの特定領域に集中し、これにより、フィルムにクラックが発生したり、フィルム自体が破れるなどの製品品質上の問題点が発生することがある。
【0064】
一方、発明の他の実施形態によれば、ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む共重合体と、ポリアミド系樹脂とを混合し、230〜300℃で溶融および押出して基材フィルム層を形成する段階と、前記基材フィルム層の少なくとも一表面上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成する段階とを含む前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法が提供できる。
【0065】
前記製造方法によって製造されるタイヤインナーライナフィルムにおいて、前記一般式1によって定義される前記基材フィルム層の引張回復率は30%〜80%、好ましくは36%〜64%であり得、これにより、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、ゴム成分を含む他のタイヤ構成部、例えば、カーカスなどと類似の弾性挙動または形態回復特性を示すことができる。
[一般式1]
引張回復率(%)=(L−L)*100/(L−L
前記一般式1において、Lは、前記基材フィルム層を常温で100%引張した時の長さであり、Lは、前記基材フィルム層が常温で100%引張された後、収縮してなる最終長さであり、Lは、引張前の元の試料の長さである。
【0066】
前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む共重合体と共に、ポリアミド系樹脂を用いて形成された基材フィルム層を使用すると、薄い厚さでも優れた気密性を実現し、タイヤを軽量化して自動車の燃費を向上させることができ、高い耐熱特性を有しながらも、優れた成形性と共に、高い耐久性および耐疲労性などの機械的物性を実現することができる。
【0067】
また、前記基材フィルム層の特性によって、接着剤(例えば、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤など)に対して高い反応性を示すことができるため、前記基材フィルム層上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成すると、追加の加硫工程を適用しなかったり、接着層の厚さを大きく増加させなくてもタイヤに強固に結合できる。
【0068】
上述のように、前記ポリアミド系樹脂は3.0〜3.5、好ましくは3.2〜3.4の相対粘度(硫酸96%溶液)を有することができる。ポリアミド系樹脂に関する具体的な内容は、上述の通りである。
【0069】
そして、前記共重合体のポリエーテル系セグメントの含有量は、前記基材フィルム層の全体重量に対して15〜50重量%、好ましくは20〜45重量%、より好ましくは22〜40重量%であり得る。このような共重合体のポリエーテル系セグメントの含有量に関する内容も、上述の通りである。
【0070】
前記ポリアミド系樹脂と、前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む共重合体に関するより具体的な内容は、上述の通りである。
【0071】
一方、前記基材フィルム層を形成する段階では、より均一な厚さを有するフィルムを押出するために、前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂が均一な大きさを有するように調節することができる。このように、前記共重合体およびポリアミド系樹脂の大きさを調節することにより、これらを混合する段階、一定の温度に維持される原料供給部に滞留する段階、または溶融および押出する段階などにおいて、前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂とがより均一に混合され、前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂それぞれがまたは互いにかたまって大きさが大きくなる現象を防止することができ、これによって、より均一な厚さを有する基材フィルム層が形成できる。
【0072】
前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂が類似の大きさを有すると、以後の混合、溶融または押出段階で原料チップが互いにかたまる現象または不均一な形状または領域が現れる現象を最小化することができ、これにより、フィルムの全体領域にわたって均一な厚さを有する基材フィルム層を形成することができる。前記製造方法で使用可能な前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂の大きさは大きく制限されるわけではない。
【0073】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法は、前記ポリアミド系樹脂と共重合体とを6:4〜3:7の重量比で混合する段階をさらに含むことができる。前記ポリアミド系樹脂の含有量が小さすぎると、前記基材フィルム層の密度や気密性が低下することがある。また、前記ポリアミド系樹脂の含有量が大きすぎると、前記基材フィルム層のモジュラスが過度に高くなったり、タイヤの成形性が低下することがあり、タイヤ製造過程または自動車の運行過程で現れる高温環境でポリアミド系樹脂が結晶化され得、繰り返し変形によってクラックが発生することがある。このような混合段階では、高分子樹脂の混合に使用可能と知られている装置または方法を特別な制限なく使用することができる。
【0074】
前記ポリアミド系樹脂と前記共重合体は、混合された後に原料供給部(feeder)に注入されるとよく、原料供給部に順次的または同時に注入されて混合されてもよい。
【0075】
上述のように、前記共重合体は、ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを6:4〜3:7の重量比で含むことができる。
【0076】
前記ポリアミド系樹脂と前記共重合体との混合物は、特定の温度、例えば50〜100℃の温度に維持される原料供給部を介して押出ダイに供給できる。前記原料供給部が50〜100℃の温度に維持されることにより、前記ポリアミド系樹脂と前記共重合体との混合物が適正な粘度などの物性を有して押出ダイまたは押出機の他の部分に容易に移動することができ、前記混合物がかたまるなどの理由で発生する原料供給(feeding)不良現象を防止することができ、以後の溶融および押出工程でより均一な基材フィルムが形成できる。前記原料供給部は、押出機から注入された原料を押出ダイまたはその他の他部分に供給する役割を果たす部分であり、その構成が大きく制限されるわけではなく、高分子樹脂の製造用押出機などに含まれる通常の原料供給部(feeder)であってもよい。
【0077】
一方、前記原料供給部を介して押出ダイに供給された混合物を230〜300℃で溶融および押出することにより、基材フィルム層を形成することができる。前記混合物を溶融する温度は230〜300℃、好ましくは240〜280℃であり得る。前記溶融温度は、ポリアミド系化合物の融点よりは高くなければならないが、高すぎると、炭化または分解が生じてフィルムの物性が阻害され得、前記ポリエーテル系樹脂間の結合が生じたり、繊維配列方向に配向が発生して未延伸フィルムを製造するのに不利となり得る。
【0078】
前記押出ダイは、高分子樹脂の押出に使用可能と知られているものであれば特別な制限なく使用することができるが、前記基材フィルムの厚さをより均一にしたり、または基材フィルムに配向が発生しないようにするために、T型ダイを用いることが好ましい。
【0079】
一方、前記基材フィルム層を形成する段階は、前記ポリアミド系樹脂と、ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む共重合体との混合物を30〜300μmの厚さのフイルムとして押出する段階を含むことができる。前記製造されるフィルムの厚さの調節は、押出条件、例えば、押出機の吐出量または押出ダイのギャップを調節したり、押出物の冷却過程または回収過程の巻取速度を変更することによって行われるとよい。
【0080】
前記基材フィルム層の厚さを30〜300μmの範囲でより均一に調節するために、前記押出ダイのダイギャップ(Die Gap)を0.3〜1.5mmに調節することができる。前記基材フィルムを形成する段階において、前記ダイギャップ(Die Gap)が小さすぎると、溶融押出工程のダイ剪断圧力が過度に高くなって剪断応力が高くなり、押出されるフィルムの均一な形態の形成が難しく、生産性が低下する問題があり得、前記ダイギャップが大きすぎると、溶融押出されるフィルムの延伸が過度に高くなって配向が発生することがあり、製造される基材フィルムの縦方向および横方向間の物性の差が大きくなり得る。
【0081】
また、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法では、上述した段階によって製造された基材フィルムの厚さを連続的に測定し、測定結果をフィードバックして不均一な厚さの現れる位置に相当する押出ダイの部分、例えばT−Dieのリップギャップ(lip gap)調節ボルトを調節して製造される基材フィルムの偏差を減少させることによって、より均一な厚さを有するフィルムを得ることができる。また、このようなフィルムの厚さ測定−フィードバック−押出ダイの調節を自動化されたシステム、例えばAuto Dieシステムなどを用いることにより、自動化された工程段階を構成することができる。
【0082】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法は、前記溶融および押出して形成された基材フィルム層を、5〜40℃、好ましくは10〜30℃の温度に維持される冷却部で固化させる段階をさらに含むことができる。
【0083】
前記溶融および押出して形成された基材フィルム層が前記5〜40℃の温度に維持される冷却部で高化することによって、より均一な厚さを有するフィルム相として提供できる。溶融および押出して得られた基材フィルム層を前記適正温度に維持される冷却部に接地または密着させることにより、実質的に延伸が起こらないようにすることができ、前記基材フィルム層は未延伸フイルムとして提供できる。
【0084】
具体的には、前記固化段階は、エアナイフ、エアノズル、静電気付与装置(Pinning装置)またはこれらの組み合わせを用いて、前記溶融および押出して形成された基材フィルム層を、5〜40℃の温度に維持される冷却ロールに均一に密着させる段階を含むことができる。
【0085】
前記固化段階において、エアナイフ、エアノズル、静電気付与装置(Pinning装置)またはこれらの組み合わせを用いて、前記溶融および押出して形成された基材フィルム層を冷却ロールに密着させることにより、前記基材フィルム層が押出後に空気中で飛ばされたり、部分的に不均一に冷却されるなどの現象を防止することができ、これによって、より均一な厚さを有するフィルムが形成され得、フィルム内において周囲の部分に比べて相対的に厚かったり薄い一部領域が実質的に形成されなくて済む。
【0086】
一方、前記特定のダイギャップ条件で押出された溶融物をダイ出口から水平距離で10〜150mm、好ましくは20〜120mmに設けられた冷却ロールに付着または接地させて延伸および配向を排除することができる。前記ダイ出口から冷却ロールまでの水平距離は、ダイ出口と排出された溶融物が冷却ロールに接地する地点との間の距離であり得る。前記ダイの出口と溶融フィルムの冷却ロール付着地点との間の直線距離が小さすぎると、溶融押出樹脂の均一な流れを妨げてフィルムが不均一に冷却され得、前記距離が大きすぎると、フィルムの延伸効果の抑制を達成することができない。
【0087】
前記基材フィルムを形成する段階では、上述した特定の段階および条件を除いては、高分子フィルムの製造に通常使用されるフィルムの押出加工条件、例えば、スクリュー直径、スクリュー回転速度、またはライン速度などを適切に選択して使用することができる。
【0088】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法は、前記基材フィルム層の少なくとも一表面上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成する段階を含むことができる。
【0089】
前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層は、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を前記基材フィルム層の一表面に塗布することによって形成されるとよく、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着フィルムを前記基材フィルム層の一面にラミネートさせることによっても形成可能である。
【0090】
好ましくは、このような接着層の形成段階は、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を前記形成された基材フィルムの一表面または両表面上にコーティングした後、乾燥する方法で進行することができる。前記形成される接着層は0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μmの厚さを有することができる。前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物2〜32重量%、およびラテックス68〜98重量%、好ましくは80〜90重量%を含むことができる。
【0091】
前記特定組成のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤に関するより具体的な内容は、上述の通りである。
【0092】
前記接着剤の塗布には、通常使用される塗布またはコーティング方法または装置を特別な制限なく使用することができるが、ナイフ(Knife)コーティング法、バー(Bar)コーティング法、グラビアコーティング法またはスプレー法や、または浸漬法を用いることができる。ただし、ナイフ(Knife)コーティング法、グラビアコーティング法またはバー(Bar)コーティング法を用いることが、接着剤の均一な塗布およびコーティングの面で好ましい。
【0093】
前記基材フィルムの一表面または両表面上に前記接着層を形成した後には、乾燥および接着剤反応を同時に進行させることもできるが、接着剤の反応性の面を考慮して、乾燥段階を経た後、熱処理反応段階に分けて進行させることができ、接着層の厚さあるいは多段の接着剤を適用するために、前記接着層の形成および乾燥と反応段階を数回適用することができる。また、前記基材フィルムに接着剤を塗布した後、100〜150℃で略30秒〜3分間熱処理条件で固化および反応させる方法で熱処理反応を行うことができる。
【0094】
前記共重合体または混合物を形成する段階、または共重合体を溶融および押出する段階では、耐熱酸化防止剤または熱安定剤などの添加剤を追加的に添加することができる。前記添加剤に関する具体的な内容は、上述の通りである。
【発明の効果】
【0095】
本発明によれば、薄い厚さでも優れた気密性を実現することができ、タイヤの軽量化および自動車の燃費向上を可能にするだけでなく、タイヤ製造工程でより容易な成形を可能にし、優れた成形性と共に、高い耐久性および耐疲労性などの機械的物性を有するタイヤインナーライナ用フィルムが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1】タイヤの構造を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0097】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるのではない。
【0098】
<実施例:タイヤインナーライナ用フィルムの製造>
実施例1
(1)基材フィルムの製造
相対粘度(硫酸96%溶液)3.4のポリアミド系樹脂(ナイロン6)60重量%、および重量平均分子量100,000の共重合体樹脂(ポリアミド系繰り返し単位およびポリエーテル系繰り返し単位それぞれ50重量%ずつ含む)40重量%を混合し、260℃の温度でT型ダイに押出して、延伸および熱処理区間を経ずに、30m/minの速度で70μm厚さの未延伸基材フィルムを製造した。この時、フィルムの厚さはゲージテスタを用いて測定した。
【0099】
(2)接着層組成物の製造
レゾルシノールとホルムアルデヒドとを1:2のモル比で混合した後、縮合反応して、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物を得た。このようなレゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物12重量%と、スチレン/1,3−ブタジエン/ビニルピリジンラテックス88重量%とを混合して、濃度20%のレゾルシノール/ホルムアルデヒド−ラテックスの混合物を得た。
【0100】
(3)タイヤインナーライナフィルムの製造
前記基材フィルム(200mm×300mm)の両面にそれぞれ前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着層組成物をグラビアコータを用いて塗布した。その後、熱風オーブン150℃で60秒間乾燥および熱処理して、基材フィルムの両面にそれぞれ3.0μm厚さの接着層が形成されたタイヤインナーライナ用フィルムを製造した。
【0101】
実施例2
(1)基材フィルムの製造
相対粘度(硫酸96%溶液)3.4のポリアミド系樹脂(ナイロン6)50重量%、および重量平均分子量100,000の共重合体樹脂(ポリアミド系繰り返し単位およびポリエーテル系繰り返し単位それぞれ50重量%ずつ含む)50重量%を混合し、260℃の温度でT型ダイに押出して、延伸および熱処理区間を経ずに、30m/minの速度で70μm厚さの未延伸基材フィルムを製造した。
【0102】
(2)接着層組成物の製造
前記実施例1と同様の方法で、濃度20%のレゾルシノール/ホルムアルデヒド−ラテックスの混合物を得た。
【0103】
(3)タイヤインナーライナフィルムの製造
前記製造された基材フィルムを使用した点を除いて、実施例1と同様の方法で基材フィルムの両面にそれぞれ3.0μm厚さの接着層が形成されたタイヤインナーライナ用フィルムを製造した。
【0104】
実施例3
(1)基材フィルムの製造
基材フィルム用樹脂重合のためのε−カプロラクタム70wt%およびポリオキシエチレンジアミン(Mw1,000)30wt%の混合物に、ポリオキシエチレンジアミンと同モル(mole)数のアジピン酸を混合し、100℃の窒素雰囲気下で30分間溶融した。前記溶融液を250℃で3時間加熱し、8kg/cmまで昇圧して圧力を維持した。そして、1時間、1kg/cmで減圧した。
【0105】
前記減圧された溶融物をチップ形状に製造した後、製造されたチップを260℃の温度で環状ダイに押出して、延伸および熱処理区間を経ずに、30m/minの速度で70μm厚さの未延伸基材フィルムを得た。
【0106】
(2)接着層組成物の製造
レゾルシノールとホルムアルデヒドとを1:2のモル比で混合した後、縮合反応して、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物を得た。前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物12重量%と、スチレン/ブタジエン−1,3/ビニルピリジンラテックス88重量%とを混合して、濃度20%のレゾルシノール/ホルムアルデヒド−ラテックスの混合物を得た。
【0107】
(3)タイヤインナーライナフィルムの製造
前記基材フィルム(200×300mm)の両面にそれぞれ前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着層組成物をグラビアコータを用いて塗布した。その後、熱風オーブン150℃で60秒間乾燥および熱処理して、基材フィルムの両面にそれぞれ3.0μm厚さの接着層が形成されたタイヤインナーライナ用フィルムを製造した。
【0108】
実施例4
(1)基材フィルムの製造
基材フィルム用樹脂重合のためのε−カプロラクタム60wt%およびポリオキシエチレンジアミン(Mw1,000)40wt%の混合物に、ポリオキシエチレンジアミンと同モル(mole)数のアジピン酸を混合し、100℃の窒素雰囲気下で30分間溶融した。前記溶融液を250℃で3時間加熱し、8kg/cmまで昇圧して圧力を維持した。そして、1時間、1kg/cmで減圧した。
【0109】
前記減圧された溶融物をチップ形状に製造した後、製造されたチップを260℃の温度で環状ダイに押出して、延伸および熱処理区間を経ずに、30m/minの速度で70μm厚さの未延伸基材フィルムを得た。
【0110】
(2)接着層組成物の製造
前記実施例3と同様の方法で、濃度20%のレゾルシノール/ホルムアルデヒド−ラテックスの混合物を得た。
【0111】
(3)タイヤインナーライナフィルムの製造
前記製造された基材フィルムを使用した点を除いて、実施例1と同様の方法で基材フィルムの両面にそれぞれ3.0μm厚さの接着層が形成されたタイヤインナーライナ用フィルムを製造した。
【0112】
実施例5
(1)基材フィルムの製造
相対粘度(硫酸96%溶液)3.4のポリアミド系樹脂(ナイロン6)50重量%、および重量平均分子量100,000の共重合体樹脂(ポリアミド系繰り返し単位40%およびポリエーテル系繰り返し単位60重量%ずつ含む)50重量%を混合し、260℃の温度でT型ダイに押出して、延伸および熱処理区間を経ずに、30m/minの速度で70μm厚さの未延伸基材フィルムを製造した。
【0113】
(2)接着層組成物の製造
前記実施例1と同様の方法で、濃度20%のレゾルシノール/ホルムアルデヒド−ラテックスの混合物を得た。
【0114】
(3)タイヤインナーライナフィルムの製造
前記製造された基材フィルムを使用した点を除いて、実施例1と同様の方法で基材フィルムの両面にそれぞれ3.0μm厚さの接着層が形成されたタイヤインナーライナ用フィルムを製造した。
【0115】
<比較例:タイヤインナーライナ用フィルムの製造>
比較例1
前記ポリアミド系樹脂および重量平均分子量100,000の共重合体樹脂の含有量をそれぞれ97重量%および3重量%と異ならせたことを除いては、実施例1と同様の方法でタイヤインナーライナ用フィルムを製造した。
【0116】
比較例2
相対粘度(硫酸96%溶液)3.4のポリアミド系樹脂(ナイロン6)80重量%、および重量平均分子量100,000の共重合体樹脂(ポリアミド系繰り返し単位およびポリエーテル系繰り返し単位それぞれ50重量%ずつ含む)20重量%を混合し、260℃の温度でT型ダイに押出して、延伸および熱処理区間を経ずに、30m/minの速度で70μm厚さの未延伸基材フィルムを製造したことを除いては、実施例1と同様の方法でタイヤインナーライナ用フィルムを製造した。
【0117】
比較例3
ε−カプロラクタムおよびポリオキシエチレンジアミン(Mw1,000)の含有量をそれぞれ20重量%および80重量%と異ならせたことを除いては、実施例3と同様の方法でタイヤインナーライナ用フィルムを製造した。
【0118】
ただし、比較例2の場合には、フィルム製造時、高い弾性によって厚さの制御が非常に困難であったし、製膜中にメルトが周期的に変動する共鳴(Resonance)現象が発生する問題が現れた。
【0119】
比較例4
ブチルゴムに離型剤および加工剤を投入して混合した後、精錬して、厚さ70μmのタイヤインナーライナフィルムを得て、接着ゴム(タイガム)をインナーライナフィルム上に形成させた。
【0120】
一方、比較例3の場合には、後述する実験例1において、基材フィルムの引張回復率は加硫されたサンプルで測定し、実験例2において、フィルムの応力の測定は未加硫状態で行った。特に、比較例3のタイヤインナーライナフィルムに対する引張回復率は、ブチルゴムを混合精錬して得られた厚さ70μmの前記タイヤインナーライナフィルムを、60kg/cmの圧力、150℃で30分間加硫させた後に、このように得られる加硫されたタイヤインナーライナフィルム製品を用いて測定した。
【0121】
<実験例>
実験例1:基材フィルムの引張回復率の測定
前記実施例1〜4および比較例1〜3で得られた基材フィルムの引張回復率は、次のような方法で測定した。
【0122】
まず、前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を用いて接着層を形成する前の未延伸基材フィルムを、MD方向(machine direction)に幅10mm、長さ100mmの大きさとして試片を用意した。用意された試片を常温(25℃、60%RH)の条件下で24時間放置後、万能材料試験機を用いて、下記の条件で基材フィルムの引張回復率測定試験を行った。
【0123】
(1)測定機器:万能材料試験機(Model4204、Instron社)
(2)測定条件:
i)ヘッドスピード(Head Speed)300mm/min、
ii)グリップ距離(Grip Distance)100mm、
iii)試料の幅(Sample Width)10mm、
iv)25℃および60RH%雰囲気下で測定
v)100%引張後10秒放置後にグリップ(Grip)から解除、
vi)グリップ(Grip)から解除された試料を1時間放置後に長さ測定
(3)各5回測定し、得られた結果の平均値を求めた。
【0124】
前記のように得られた基材フィルム試片の長さ測定値から、下記の一般式1により基材フィルムの引張回復率を算出した。
[一般式1]
引張回復率(%)=(L−L)*100/(L−L
前記一般式1において、Lは、前記基材フィルム層を常温で100%引張した時の長さであり、Lは、前記基材フィルム層が常温で100%引張された後、収縮してなる最終長さであり、Lは、引張前の元の試料の長さである。
【0125】
ここで、引張された基材フィルムの長さは、万能材料試験機を用いて測定した時、引張後グリップ(Grip)解除前における基材フィルム(sample)の長さを指すものであり、引張後の基材フィルムの回復した長さは、引張後グリップ(Grip)解除後に基材フィルム(sample)が弾性によって回復した長さを指すものである。
【0126】
上述のような方法で測定したタイヤインナーライナ用フィルムの基材フィルムに対する引張回復率は、下記の表1に示した通りである。
【0127】
【表1】
【0128】
実験例2:タイヤインナーライナ用フィルムの物性評価
実施例1〜4および比較例1〜3により得られたレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層が形成されたタイヤインナーライナ用フィルムに対し、次の方法でそれぞれの物性を測定した。
【0129】
2.1 フィルムの応力(ストレス)の測定
前記タイヤインナーライナ用フィルムのMD方向(machine direction)を基準として、初期降伏点(Yield Point)での応力(ストレス)および100%引張時の応力(ストレス)、200%引張時の応力(ストレス)を測定した。具体的な測定方法は、次の通りである。
【0130】
(1)測定機器:万能材料試験機(Model4204、Instron社)
(2)測定条件:
i)ヘッドスピード(Head Speed)300mm/min、
ii)グリップ距離(Grip Distance)100mm、
iii)試料の幅(Sample Width)10mm、
iv)25℃および60RH%雰囲気下で測定
(3)各5回測定し、得られた結果の平均値を求めた。
【0131】
2.2 酸素透過度の測定
米国材料試験協会規格ASTM D3895の方法で、酸素透過度測定器(Oxygen Permeation Analyzer、Model8000、Illinois Instruments社製品)を用いて、25℃および60RH%の雰囲気下でタイヤインナーライナ用フィルムの酸素透過度を測定した。
【0132】
2.3 接着性能の評価
米国材料試験協会規格ASTM D4394の方法で、前記タイヤインナーライナ用フィルムのタイヤカーカス層に対する接着性能を評価した。
【0133】
この時、1.6mmのゴムシート、コード紙、前記接着層が形成されたタイヤインナーライナ用フィルム、1.6mmのゴムシート、コード紙、1.6mmのゴムシートを順に積層した後、60kg/cmの圧力、150℃で30分間加硫させて接着試片を製造し、幅が1インチとなるように裁断して接着性能の評価に用いた。前記タイヤインナーライナ用フィルムの次に積層される1.6mmのゴムシート、コード紙、1.6mmのゴムシートはカーカス層を形成するものである。ここで、前記ゴムシートは、天然ゴム100重量%を基準として、酸化亜鉛3重量%、カーボンブラック29.8重量%、ステアリン酸2.0重量%、パインタール(Pine Tar)7.0重量%、メルカプトベンゾチアゾール1.25重量%、硫黄3.0重量%、ジフェニルグアニジン0.15重量%、フェニルベータナフタルアミン1.0重量%を含むゴム組成物を用いて製造されたものである。
【0134】
前記裁断された接着試片は、万能材料試験機(Instron)で、25℃、300mm/minの速度で剥離し、接着力(kgf)を2回評価して平均値を求めた。
【0135】
実施例1〜4および比較例1〜3により製造されたタイヤインナーライナ用フィルムに対する物性の測定および評価結果を、下記表2に示した。
【0136】
【表2】
【0137】
前記表1に示しているように、実施例1〜4のタイヤインナーライナ用フィルムは、比較例1のフィルムに比べて、初期降伏点(Yield Point)での応力(Stress)が低く、100%および200%伸張時、つまり、タイヤ成形時に発生する変形区間においても、低い応力(Stress)を有していることが分かる。このような結果から、実施例1〜4のタイヤインナーライナ用フィルムは、タイヤ成形時に過度の膨張力を付与する必要がなく、フィルムの変形力不足による破断現象がなく、未加硫ゴムとフィルムとの間の大きな物性の差によるグリーンタイヤの形態異常が発生しないことが分かる。
【0138】
また、実施例1〜4のタイヤインナーライナ用フィルムは、米国材料試験協会規格ASTM D4394方法で測定したタイヤカーカス層に対する接着力が20kgf以上となり、これにより、実施例1〜4のタイヤインナーライナ用フィルムは、タイヤカーカス層に対して非常に均一かつ強固に結合できることが確認された。このような結果から、実施例1〜4のタイヤインナーライナ用フィルムを適用すると、タイヤ製造過程で膨張圧力を加えても十分な延伸が行われ、グリーンタイヤや最終タイヤの製造状態も非常に良好に得られることを確認することができた。
【0139】
これに対し、比較例1の場合には、タイヤ製造時、フィルムの結晶化現象によって非常に高い応力(Stress)が発生し、破断現象も発生した。また、比較例2〜3の場合には、タイヤ成形性は実施例1〜4と類似しているが、酸素透過度がそれぞれ815cc/(m・24hr・atm)および725cc/(m・24hr・atm)と非常に高くなることにより、タイヤの実際適用可能な程度の空気圧維持特性を有することができないことが確認された。
【0140】
実験例3:タイヤの物性評価
実施例1〜4および比較例1〜3のタイヤインナーライナ用フィルムを用いて製造されたタイヤに対し、次の方法で物性を測定した。
【0141】
3.1 成形の容易性および外観の評価
まず、前記タイヤインナーライナ用フィルムを用いて、205R/65R16規格でグリーンタイヤ(green tire)を製造した後に、加硫工程を経て最終タイヤを製造した。
【0142】
このように製造されたタイヤに対し、グリーンタイヤの製造後、製造の容易性および外観を評価し、以降、加硫後のタイヤの最終外観を検査した。
【0143】
この時、グリーンタイヤの成形の容易性は、成形後、グリーンタイヤの歪みがなく、直径の標準偏差が5%以内であるか、インナーライナフィルムがグリーンタイヤの内部によく付着している場合を「良」と判断し、成形後、グリーンタイヤの歪みが発生したり、直径の標準偏差が5%を超えた場合、またはインナーライナフィルムがグリーンタイヤの内部に分離されたり均一に付着していない場合を「形状不良」と評価した。
【0144】
また、グリーンタイヤを加硫した後のタイヤに歪みがなく、直径の標準偏差が5%以内の場合、「良」と評価した。そして、グリーンタイヤを加硫した後のタイヤに歪みが発生してタイヤがきちんと製作されなかったり、タイヤ内部のインナーライナが溶けたり破れて破損した場合、または直径の標準偏差が5%を超えた場合、「形状不良」と評価した。
【0145】
3.2 空気圧維持性能の評価
上述のように、前記タイヤインナーライナ用フィルムを用いてタイヤを製造した後に、米国材料試験協会規格ASTM F1112−06の方法により、21℃の温度、101.3kPaの圧力下で、下記計算式2に示しているように、90日間空気圧維持率(IPR:Internal Pressure Retention)を測定して比較評価した。
[計算式2]
【0146】
実施例1〜4および比較例1〜3により製造されたタイヤインナーライナ用フィルムを適用して製造されたタイヤに対する物性の測定および評価結果を、下記表3に示した。
【0147】
【表3】
【0148】
前記表3に示されているように、本発明により基材フィルムの引張回復率を最適化した実施例1〜4のタイヤインナーライナ用フィルムを適用すると、タイヤ製造過程で膨張圧力を加えても十分な延伸が行われ、グリーンタイヤや最終タイヤの製造状態が良好であることが明らかになった。したがって、実施例1〜4のタイヤインナーライナ用フィルムは、薄い厚さでも優れた気密性を実現できるだけでなく、モジュラスが低く、グリーンタイヤまたは最終タイヤの成形性を向上させることができることが分かる。
【0149】
また、実施例1〜4のタイヤインナーライナ用フィルムを用いて製造されたタイヤは、米国材料試験協会規格ASTM F1112−06の方法により、21℃および101.3kPaの条件で90日間空気圧維持率(IPR、Internal Pressure Retention)を測定した時、空気圧維持率が97%以上と高い水準に維持され、これにより、低い空気圧によって誘発される転覆事故および燃費の低下を防止することができる。
【0150】
反面、比較例1のタイヤインナーライナ用フィルムは、高いモジュラスと低い変形性によってタイヤの成形が不可能であり、グリーンタイヤ製造時にフィルムが変形せず、グリーンタイヤが歪む現象が発生してタイヤの製造が不可能であった。また、比較例2および3の場合にはタイヤの成形は可能であったが、90日間の空気圧維持率が81.5%(減少率18.5%)および83%(減少率17%)と顕著に低いことが明らかになった。このように空気圧維持率が顕著に低い場合には、タイヤの低い空気圧によって車両転覆事故などが誘発される安定上の問題や、燃費などの性能低下の問題が発生することがある。
図1