(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872693
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】フレキソ印刷要素の印刷性能を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20160216BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
G03F7/11 501
G03F7/00 502
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-520184(P2014-520184)
(86)(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公表番号】特表2014-524050(P2014-524050A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】US2012040159
(87)【国際公開番号】WO2013012481
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2014年5月16日
(31)【優先権主張番号】13/183,558
(32)【優先日】2011年7月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506314391
【氏名又は名称】マクダーミッド プリンティング ソリューションズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・クック
(72)【発明者】
【氏名】デヴィッド・エー・レッチア
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ゴットシック
【審査官】
倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/041046(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/077274(WO,A1)
【文献】
特表2013−506867(JP,A)
【文献】
特表2012−511175(JP,A)
【文献】
米国特許第06731405(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/00;G03F7/004−7/18;7/26−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレリーフ網点を含むレリーフパターンを有するレリーフ像印刷要素を製造する方法であって、前記印刷要素が、その上に配置された少なくとも1つの光硬化性層と、前記少なくとも1つの光硬化性層上にレーザアブレーション可能マスキング層とを有するバッキング層を含み、
a)全体画像がその中にセルのパターンを含む副次画像を含むように、前記マスキング層を選択的にアブレーションしてマスキング層内に全体画像を作製する工程と、
b)前記マスキング層上に酸素バリア層を適用する工程と、
c)前記印刷要素を、前記酸素バリア層及び前記マスキング層を介して化学線に露光して前記少なくとも1つの光硬化性層を選択的に架橋及び硬化し、これによって印刷要素中にレリーフ像を作製する工程と、
d)前記バリア層及び前記光硬化性層の未硬化部分を除去して前記印刷要素を現像し、前記レリーフ像を露呈する工程と、を含み、
前記酸素バリア層が、6.9×10−9m2/秒未満の酸素拡散係数を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
セルのパターンが、円筒状、線状、又は多角形状の形状を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
レリーフ像が、その表面上に円筒状、線状、又は多角形状のインク担持セルを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
セルがハーフトーン網点の中心にあり、前記ハーフトーン網点内の前記セルが前記ハーフトーン網点の寸法の関数であるセル寸法を有する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
印刷要素を現像する工程が、水現像、溶剤現像、及び熱現像からなる群から選択される現像方法を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸素バリア層が、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルピロリドン、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、両性共重合体、酢酸酪酸セルロース、アルキルセルロース、ブチラール樹脂、環状ゴム、及びこれらの1以上の組合せからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
酸素バリア層が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル及びこれらの1以上の組合せからなる群から選択される透明フィルムを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
酸素バリア層が、ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムを含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
酸素バリア層が、10μm〜200μmの厚みを有する請求項6、または7に記載の方法。
【請求項10】
酸素バリア層が、1μm〜20μmの厚みを有する請求項6、または7に記載の方法。
【請求項11】
酸素バリア層が、少なくとも50%の光透過性を有する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
酸素バリア層が、少なくとも75%の光透過性を有する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
酸素バリア層が、6.9×10−10m2/秒未満の酸素拡散係数を有する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
酸素バリア層が、6.9×10−11m2/秒未満の酸素拡散係数を有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
印刷要素を印刷シリンダに装着して該印刷要素により基材を印刷する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、最適な印刷及び高ベタインク濃度のためにレリーフ像印刷要素の印刷性能を向上させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ刷版は、開口領域の上方に隆起した画像要素を備えたレリーフ版である。一般的に、前記版は、若干柔らかく、印刷シリンダに巻き付けるのに十分な可撓性を有し、百万部を超えて印刷するのに十分な耐久性がある。そのような版は、主にそれらの耐久性、及びそれらの作製容易性により、多くの利点をプリンタに提供する。
【0003】
フレキソ印刷は、一般的に大量印刷に使用される。フレキソ印刷は、紙、板紙材料、段ボール、フィルム、箔、及び積層品等の種々の基材に印刷するために採用される。新聞及び買い物袋は顕著な例である。粗い表面や伸縮性フィルムは、フレキソ印刷の手段によってのみ経済的に印刷することができる。更に、製品競争によって、パッケージ上の画像の印刷品質に対する市場の要求は、非常に厳しくなり得る。
【0004】
製造業者が提供するような典型的なフレキソ刷版は、順番に、バッキング層又は支持層、1以上の未露光の光硬化性層、任意的に保護層又はスリップフィルム、及び多くの場合に保護カバーシートからなる多層物品である。
【0005】
支持シート又はバッキング層は、版を支持する。支持シート又はバッキング層は、紙、セルロースフィルム、プラスチック、又は金属等の透明又は不透明な材料から形成することができる。好ましい材料としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、及びポリアミド等の合成ポリマー材料から作られたシートが挙げられる。広く使用されている支持層の1つは、ポリエチレンテレフタレートの可撓性フィルムである。
【0006】
光硬化性層は、既知のフォトポリマー、モノマー、開始剤、反応性又は非反応性希釈剤、フィラー、及び染料のいずれかを含むことができる。「光硬化性」との用語は、化学線に反応して重合、架橋、又は任意の他の硬化(curing)反応若しくは硬化(hardening)反応を受ける組成物を指し、その結果として、材料の未露光部分を露光(硬化)部分から選択的に分離及び除去して、硬化材料の三次元パターン、即ちレリーフパターンを形成することができる。例示的な光硬化性材料としては、それぞれの主題の全体が参照することにより本願明細書中に援用される特許文献1〜特許文献15に開示されている。1を超える光硬化性層を用いてもよい。
【0007】
光硬化性材料は、一般的に、少なくとも何らかの化学線波長域でのラジカル重合によって、架橋(硬化(cure))及び硬化(harden)する。本願明細書で使用される化学線は、光硬化性層を重合、架橋又は硬化させることができる放射線である。化学線としては、例えば、特にUV及び紫色波長域における増幅(例えば、レーザ)光及び非増幅光が挙げられる。一般的に用いられる化学線源の1つは、水銀アークランプであるが、他の光源も当業者に一般的に知られている。
【0008】
スリップフィルムは、埃からフォトポリマーを保護してその取扱容易性を高める薄層である。従来の(「アナログ」)製版工程においては、スリップフィルムは、UV光を透過し、プリンタが刷版ブランクからカバーシートを剥離し、スリップフィルム層上にネガを配置する。版及びネガが次いで、ネガを介してUV光によって大露光される。光に露光された領域は、硬化(cure)又は硬化(harden)し、未露光領域を除去して(現像して)刷版にレリーフ像を作製する。
【0009】
「デジタル」即ち「直接刷版」製版工程においては、レーザは、電子データファイルに格納された画像によって導かれ、一般的には放射線不透過性材料を含むように改変されたスリップフィルムであるデジタル(即ち、レーザアブレーション可能な)マスキング層にその場ネガ(in situ negative)を作製するために使用される。レーザアブレーション可能層の部分は次いで、マスキング層を選択された波長及びパワーのレーザでレーザ放射線に暴露することによってアブレーションされる。レーザアブレーション可能層の例は、例えば、それぞれの主題の全体が参照することにより本願明細書中に援用される特許文献16〜特許文献18に記載されている。
【0010】
画像形成後、感光性印刷要素を現像して、光硬化性材料の層の未重合部分を除去し、硬化した感光性印刷要素中の架橋されたレリーフ像を露呈する。典型的な現像方法としては、種々の溶媒又は水での洗浄が挙げられ、多くの場合ブラシが用いられる。現像の他の選択肢としては、エアナイフの使用、又は熱とブロッターとの使用(即ち、熱現像)が挙げられる。熱現像工程は、熱を使用してフォトポリマーの刷版を処理することによって機能し、潜像を現像するために硬化フォトポリマーと未硬化フォトポリマーとの融解温度差が利用される。
【0011】
現像後に得られる表面は、印刷される画像を再現するレリーフパターンを有しており、典型的には、ベタ領域と複数のレリーフ網点を含むパターン化領域との双方を含む。レリーフ像を現像した後、レリーフ像印刷要素を印刷機に取り付けて印刷を開始してもよい。
【0012】
フレキソ刷版を印刷シリンダに装着し、典型的には連続ウェブとして補給される印刷される材料を、印刷ロールとバッキングロールとの間に配置する。フレキソ刷版は、版上のレリーフ像と印刷される材料との間の接触を可能にする十分な圧力で、材料に対して移動させられる。典型的な工程においては、インク噴出パン(ink fountain pan)が計量ロールにインクを供給する。計量ロールから余分なインクを拭き取って計量ロール上のインク量の制御を補助するために、ドクターブレードを使用してもよい。
【0013】
フレキソ印刷において良好な画像を生成するためには、インクが均一かつ予測可能な態様で印刷面に塗布される必要がある。これは同様に、フレキソ版のレリーフ領域が、均一な層かつ予測可能な量でインクを担持する必要がある。
【0014】
刷版に塗布されるインクの量を制御する1つの手段は、その表面に複数のインク計量セルを有する、「アニロックス」ロールとして知られる特殊なインク計量ロールを使用する。これらのセルは、典型的には、機械的工程を使用して、又はレーザによりシリンダ表面を彫り込むことによって作製された、所定の頻度、及び均一な深度及び形状の規則的なパターンに配列された小さな凹みであり、アニロックスロールによって供給されるインクの量は、セルのスクリーンの寸法によって制御される。動作中、インクがインク源からアニロックス計量ロールへと転写されてセルを充填する。任意的なワイパーブレードが、充填されたセルのみを残して過剰なインクをロール表面から拭き取る。アニロックスロール及びフレキソ版が互いに接触して回転すると、セルからのインクが、次いでフレキソ版のレリーフ領域に転写される。
【0015】
フレキソ版により典型的に再現された画像は、殆どの場合、ベタ画像領域と種々のグレー色調領域との双方を含む。「ベタ領域」は、インクが与えられた材料上で作ることが可能な最高濃度を有する、インクにより完全に被覆された領域として定義される一方で、「グレー領域」は、印刷画像の外観が、純粋な白(インクの完全欠損)とベタ部との中間濃度である画像領域として定義される、グレー領域は、表面積が漸進的に大きくなる単位面積あたりの複数のレリーフ表面領域を用いて異なる濃度印刷の錯覚を生成する、本願明細書に記載のハーフトーニング(half−toning)中間調工程によって生成される。これらのレリーフ領域は、一般的に「ハーフトーン網点」と呼ばれる。
【0016】
加えて、フレキソ印刷は、印刷するか又は印刷しないことを意味する「バイナリシステム」として知られるものである。レリーフ領域が印刷面に接触すると、1は、実質的にベタ一色の領域を取得する。フレキソ印刷でグレースケールを作製するためには「ハーフトーニング」と呼ばれる工程が使用され、ここで、グレー色調は、単位面積あたりの複数の微小ベタ網点を印刷すること、及び、単位面積あたりの網点の頻度又は単位面積あたりの網点の寸法のいずれか、或いはその双方を変化させることによって再現される。
【0017】
フレキソ版では、これらのハーフトーン網点は、版の上面にそれらの表面を有するレリーフ領域である。網点を取り囲む領域における版は、最も暗い領域を除き、床に達する深さまでエッチングされている。ハーフトーン網点の高さは、網点の表面(及び同様に版表面)から床までの距離であり、これは「ハーフトーンレリーフ」と呼ぶことができる。このレリーフは、%網点被覆率が増加するにつれて減少し、また網点表面にインクを留めるのに十分である。
【0018】
ハーフトーンレリーフは、網点間から材料を除去するために使用されるエッチング工程を含む多くの要因によって制御される。フォトポリマーのフレキソ刷版において、最大のレリーフ深度は、フォトポリマーを所望の深度まで硬化させて床を構築する版の裏面露光により制御される。
【0019】
「典型的な」ハーフトーニングでは、直線インチあたりの網点数Xの規則的な反復パターンでハーフトーン網点を生成するために、振幅変調(AM)スクリーニングが使用される。これらのパターンは、1%網点、5%網点、95%網点、98%網点等の所定領域内の網点表面積による、所定領域の被覆率によって識別される。98%網点は、所定領域の98%が、網点表面の寸法で占められていることを意味する。2%網点は、同じ所定領域の2%が、その中の網点表面積で占められていることを意味する。
【0020】
代替的には、網点の出現頻度を増加させて更に高い表面積被覆率を生成するために、典型的には「確率論的」ハーフトーニングと呼ばれる周波数変調(FM)スクリーニングが使用され、網点の寸法は一定に保持される。加えて、その主題の全体が参照することにより本願明細書中に援用される特許文献19に記載されているように、印刷画像の視覚的外観を向上させるために2つの技術の組合せを使用してもよい。
【0021】
網点の形状やレリーフの深度は、他の因子の中でも特に印刷画像の品質に影響を及ぼす。白抜き文字(open reverse text)や陰影を維持しながら、フレキソ刷版を使用して微細な網点、線、更にはテキスト等の小さな図形要素を印刷することは、非常に困難である。画像の最も明るい領域(一般的にハイライトと呼ばれる)においては、画像の濃度は、連続階調画像のハーフトーンスクリーン表示における網点の総面積で表される。AMスクリーニングでは、これが一定間隔の格子上に位置する複数のハーフトーン網点の非常に小さな寸法への縮小を含み、ハイライトの濃度が網点の面積で表される。周波数変調(FM)スクリーニングでは、ハーフトーン網点の寸法を一般的に何等かの固定値に維持し、ランダム又は疑似ランダムに配置された網点の数が画像の濃度を表す。いずれの場合も、適切にハイライト領域を表すためには、非常に小さな網点寸法を印刷する必要がある。
【0022】
また、ベタ領域(即ち、ハーフトーン網点が存在しない画像の領域)の印刷が、暗い画像領域を表すハーフトーン領域よりも彩度が低く、やや不均一となることは、フレキソ印刷における既知の問題である。従って、95%〜98%の網点被覆率の領域は、ベタ領域(100%)よりも暗く表示されることがある。フレキソ印刷でのベタ領域の印刷における問題は、ベタ画像領域全体への不均一なインクの転写であり、これは、濃度不足及びベタ画像領域の縁部に沿ったハロー効果(即ち、より暗い境界線)の原因となる。
【0023】
フレキソ印刷中に達成可能な色の彩度のレベルは多くの因子に依存し、中でも顕著な因子は、特にベタ領域において印刷基材に塗布することができるインクの量及び均一性である。これは一般に「ベタインク濃度」(SID)と呼ばれる。SIDは、時には100%未満の色調レベルにおいてより高く、例えば、97%の色調レベルで達成された光学印刷濃度は、100%(ベタ)色調で達成されたものよりも僅かに高い。
【0024】
この所見は、特に達成可能なSIDを高める目的で、フレキソ版のベタ部の中に微細な反転パターンを導入するための多くの技術の開発に繋がった。顕著な例としては、DigiCap(Kodakから入手可能)及びGroovey Screens(Esko−Graphicsから入手可能)が挙げられる。フィルム又はコート紙材料等の高抵抗基材上に印刷する場合は特に、DigiCapは、フレキソ刷版の表面にユーザが定義可能なテクスチャパターンを適用してインク転写及びベタ領域の外観を改善する。ハイブリッドスクリーニング技術であるGroovy Screensは、画像の大部分で従来のAMスクリーニングを使用するが、暗い陰影の領域及びベタ部に、線状パターン(又は「溝」)を追加する。通常のスクリーンパターンと線状パターンとの間の遷移は段階的であり、非溝印刷(ハイライト及び中間色調)の低濃度と溝印刷の高濃度(陰影)との間の印刷における滑らかなグラデーションをもたらす。ある程度有効ではあるが、これらの技術は、多くの場合、一貫した成功を収めるためには相当の実験と微調整とを必要とし、印刷されたグラフィック画像においてはネガティブな相互作用(例えば、モアレ)を有し得ることもある。
【0025】
フレキソ版上に小網点を維持することは、製版工程の性質上、非常に困難となり得る。これらの網点の最小のものは、処理中に除去される傾向にあるが、これは、印刷中、これらの領域にはインクが全く転写されないことを意味する(網点が、版及び印刷機の少なくともいずれかに「保持」されない)。或いは、網点が処理に耐えた場合は、それらは、印刷機の損傷の影響を受け易い。例えば、小網点は、印刷中に、折り重なり及び折り取りの少なくともいずれかを起こすことが多く、過剰のインクが転写されたりインクが全く転写されなかったりする原因となる。
【0026】
光硬化性樹脂組成物は、典型的には、化学線に曝露されるとラジカル重合により硬化する。しかしながら、酸素はラジカル捕捉剤として機能するので、硬化反応は、典型的には樹脂組成物中に溶解した酸素分子によって抑制され得る。それ故、光硬化性樹脂組成物をより迅速かつ均一に硬化させることができるようにし、全体的な版構造を改善するために、像様露光前に樹脂組成物から溶存酸素を除去することが望ましい。
【0027】
それ故、刷版の品質を向上するための様々な方法が提案されてきたが、特にフレキソ印刷要素の達成可能なベタインク濃度の向上において、従来技術においては、所望の結果を提供することができる従来技術における付加的な改良の必要性が、依然として残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 456 336 A2号明細書(Goss等)
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 640 878 A1号明細書(Goss等)
【特許文献3】英国特許第1,366,769号明細書(Berrier等)
【特許文献4】米国特許第5,223,375号明細書(Berrier等)
【特許文献5】米国特許第3,867,153号明細書(MacLahan)
【特許文献6】米国特許第4,264,705号明細書(Allen)
【特許文献7】米国特許第4,323,636号明細書(Chen等)
【特許文献8】米国特許第4,323,637号明細書(Chen等)
【特許文献9】米国特許第4,369,246号明細書(Chen等)
【特許文献10】米国特許第4,423,135号明細書(Chen等)
【特許文献11】米国特許第3,265,765号明細書(Holden等)
【特許文献12】米国特許第4,320,188号明細書(Heinz等)
【特許文献13】米国特許第4,427,759号明細書(Gruetzmacher等)
【特許文献14】米国特許第4,622,088号明細書(Min)
【特許文献15】米国特許第5,135,827号明細書(Bohm等)
【特許文献16】米国特許第5,925,500号明細書(Yang等)
【特許文献17】米国特許第5,262,275号明細書(Fan)
【特許文献18】米国特許第6,238,837号明細書(Fan)
【特許文献19】米国特許第5,892,588号明細書(Samworth)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、フレキソレリーフ画像印刷要素における達成可能なSIDを向上する方法を提供することにある。
【0030】
本発明の別の目的は、フレキソ印刷要素におけるインク定置(lay down)を向上することにある。
【0031】
本発明の別の目的は、印刷結果の一貫性を向上することにある。
【0032】
本発明の更に別の目的は、ベタ領域全体の不均一なインク転写及びベタ領域の縁部に沿ったハロー効果に関連する問題を軽減することにある。
【0033】
本発明の別の目的は、印刷面、エッジのシャープさ、ショルダー角、深度及び網点高さの観点で優れた網点構造を有する印刷網点を含むレリーフ像印刷要素を作製することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
この目的のために、好ましい実施形態において、本発明は、一般的に、複数のレリーフ網点を含むレリーフパターンを有するレリーフ像印刷要素を製造する方法であって、光硬化性印刷要素が、その上に配置された少なくとも1つの光硬化性層と、前記少なくとも1つの光硬化性層上にレーザアブレーション可能マスキング層とを有するバッキング層を含み、
a)全体画像がその中にセルのパターンを含む副次画像を含むように、前記マスキング層を選択的にアブレーションしてマスキング層内に全体画像を作製する工程と、
b)前記マスキング層上に酸素バリア層を適用する工程と、
c)前記印刷要素を、前記バリア層及び前記マスキング層を介して化学線に露光して前記少なくとも1つの光硬化性層を選択的に架橋及び硬化し、これによって印刷要素中にレリーフ像を作製する工程と、
d)前記バリア層及び前記光硬化性層の未硬化部分を除去して前記印刷要素を現像し、前記レリーフ像を露呈する工程と、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本願明細書に記載するように、フレキソ印刷でのベタ領域の印刷における問題は、ベタ領域全体への不均一なインクの転写、濃度不足、及びベタ領域の縁部に沿ったハロー効果である。
【0036】
本発明者らは、印刷要素上に形成された印刷網点の形状を有益に変化させる最も重要な手段の1つが、バリア膜を用いることによって化学線の露光中に光硬化性層への空気の拡散を除去又は制限することであるということを発見した。加えて、本発明者らはまた、酸素バリア膜を使用して空気の光硬化性層への拡散を制限するとともに、光重合性層上にテクスチャ面を作製するためのセルを含むパターンを有する副次画像の使用が、印刷中の達成可能なベタインク濃度において大幅な向上をもたらすことを発見した。
【0037】
好ましい実施形態において、本発明は、一般的に、複数のレリーフ網点を含むレリーフパターンを有するレリーフ像印刷要素を製造する方法であって、光硬化性印刷要素が、その上に配置された少なくとも1つの光硬化性層と、前記少なくとも1つの光硬化性層上にレーザアブレーション可能マスキング層とを有するバッキング層を含み、
a)全体画像がその中にセルのパターンを含む副次画像を含むように、前記マスキング層を選択的にアブレーションしてマスキング層内に全体画像を作製する工程と、
b)前記マスキング層上に酸素バリア層を適用する工程と、
c)前記印刷ブランクを、前記バリア層及び前記マスキング層を介して化学線に露光して前記少なくとも1つの光硬化性層を選択的に架橋及び硬化し、これによって印刷要素中にレリーフ像を作製する工程と、
d)前記バリア層及び前記光硬化性層の未硬化部分を除去して前記印刷ブランクを現像し、前記レリーフ像を露呈する工程と、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0038】
バリア層及び光硬化性層の未硬化部分を除去することにより印刷ブランクを現像する工程は、典型的には、水現像、溶剤現像、及び熱現像からなる群から選択される方法によって行われる。バリア層の構成に応じて、工程中で剥離されるか又は溶解される。
【0039】
本発明は、好ましい実施形態においては複数のセルを含むテクスチャ面をフレキソ刷版の表面に提供することによりフレキソ刷版のベタ領域のインク担持能力を改善することによって、従来技術の問題を軽減する。全体画像内の副次画像が、このテクスチャをセルのパターンで光重合性層の表面上に作製する。本発明の工程はまた、選択されたハーフトーン網点のセルを含むテクスチャ面を提供することによって、ハーフトーンを、とりわけベタ部と共存するハーフトーンを生成する。一実施形態では、ハーフトーン網点の少なくとも1つは、その表面にセルを有する。繰返しパターンを有する副次画像を介してセルを有するテクスチャ化光硬化性表面を作製する1つの好適な方法は、例えば、その主題の全体が参照することにより本願明細書中に援用される米国特許第7,580,154号(Samworth)に記載されている。
【0040】
フォトポリマーの表面上のテクスチャ及びセルを作製する副次画像は、パターンが全体画像の外観(feature)よりも小さくなり副次画像のパターンが全体画像の外観の中に完全に含まれるように、パターンを全体画像の中へアブレーションすることによって作製される。副次画像は、完全に全体画像又はその一部のみに存在してもよい。副次画像のパターンは、円、多角形又は線状等の種々の形状をとることができる。繰返しパターンを有するこの副次画像を作製することができる市販の工程は、MICROCELL(登録商標)の商標でEsko Corporation(ベルギー、ヘント)により販売されている。
【0041】
セルを生成する際に、ハーフトーン網点の縁部を切断するセルを作製しないよう注意する。好ましくは、ハーフトーン網点の縁部を超えて延びるセルが作製されることにより波型の又は不完全なハーフトーン網点を作製することを防ぐために、セルは、網点の中心にあるとともに、それらが存在するハーフトーン網点よりも小さい。ハーフトーン網点の寸法に応じて、そこに複数のセルが配置されてもよい。このような場合には、スクリーンフィルム介在物の作製時にハーフトーン網点内に配置されるセルは、ハーフトーン網点の中心を中心としてもよい。
【0042】
面積被覆率が増加すると、網点が最終的に互いに接触して混合し、50%の被覆率に達した後は、もはや網点ごとに単離したレリーフ領域を有さないが、その代わりに、版の表面から床に向けて延びる網点を分離させた、単離した孔が観察される。
【0043】
網点の被覆率が増加すると、セルは徐々に小さくなり、漸進的に深度が小さくなる。孔の深さは、網点の分離(又は孔の直径)に依存する。フレキソ刷版の上限は、孔の閉塞が生じる前の95%網点被覆率であり、場合によっては孔の閉塞が生じる前の98%網点被覆率である。この効果は、印刷品質を向上させるため、フレキソ版におけるベタ領域及びハーフトーン網点領域の表面における複数の浅いセルを作製するために、本発明において使用される。
【0044】
フレキソ版におけるハーフトーン網点のパターンは、1インチあたり約100線〜約150線(lpi)である一方で、セルは、500lpi〜1000lpiの大幅に高い周期で配列されている。セルは、版上でインクフィルムのアンカーポイントとして振る舞ってベタ面領域上の均一なインク分布を作製するようであり、その結果、押付け後の版から基材へのインクフィルムの均一な転写に役立つ。ベタ部の印刷は極めて均一であり、従来使用されていた従来の滑らかなベタ印刷面により得られた彩度及び濃度を超える、良好な彩度及び濃度を有する。
【0045】
更に、本願明細書に記載するように、本発明者らは、光硬化性層からの溶存酸素の除去が、特に本願明細書に記載の表面パターニング技術と組み合わせて使用した場合に、驚くべきことに画像忠実性までも改善し、達成可能なSIDにおいて顕著な改善を提供し得ることを見出した。
【0046】
酸素バリア膜下の露光は、良好な結果をもたらすことが実証されており、最も好ましい酸素バリア膜は、光散乱を最小限にする透明フィルムである。これらの酸素バリア膜としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルピロリドン、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、両性共重合体、酢酸酪酸セルロース、アルキルセルロース、ブチラール、環状ゴム、及びこれらの1以上の組合せを含む、従来はフレキソ印刷要素において剥離層として慣例的に使用されていた材料が挙げられる。加えて、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル及び類似の透明フィルム等のフィルムもまた、バリアフィルムとして良好に機能することができる。好ましい一実施形態では、バリア膜は、ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムを含む。
【0047】
別の種類のバリア層は、液体又は非酸素ガスバリアであり、刷版は、油の層等の液体又は非酸素ガスの層で露光工程前に被覆されてもよく、油は透明であるか又は着色されていてもよい。液体又は非酸素ガスはここで、バリア層の別の形態として機能する。固体のバリア膜と同様に、使用される液体又は非酸素ガスは、光硬化性層の露光に使用される化学線に対して光学的に透明であることが重要である。
【0048】
効果的なバリア層の製造において本発明者らが同定した3つの品質として、光透過性、薄い厚み、及び酸素輸送の阻害が挙げられる。バリア膜は、バリアが感光性印刷ブランクの露光に使用される化学線を有害に吸収したり屈折したりしないように、十分な光透過性を有する必要がある。そのため、バリア膜は、少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%の光透過性を有することが好ましい。低酸素拡散係数が、酸素輸送阻害に関する尺度である。知られているように、膜(又は液体層)の酸素拡散係数は、6.9×10
−9m
2/秒未満、好ましくは6.9×10
−10m
2/秒未満、最も好ましくは6.9×10
−11m
2/秒未満でなければならない。
【0049】
酸素バリア膜の場合、バリア膜の厚みは、フィルム、及びフィルム/フォトポリマー版の組合せの取扱いのための構造上の要求に一致すべきである。バリア膜は、約5μm〜300μmの厚みが好ましく、約10μm〜200μmの厚みがより好ましく、約1μm〜20μmの厚みが最も好ましい。バリア膜は、化学線への露光中に光硬化性層への酸素の拡散を効果的に制限することができるように、酸素拡散に対して十分に不透過性である必要がある。本発明者らは、上記の厚みの上記バリア膜材料が、本願明細書に記述するように使用した場合に、光硬化性層への酸素の拡散を大幅に制限することを見い出した。
【0050】
バリア層は、典型的な積層工程における圧力及び熱の少なくともいずれかを用いて刷版の表面に積層されてもよい。
【0051】
液体バリア層の場合には、パラフィン系又はナフテン系炭化水素油、シリコーン油、及び植物系油等の任意の油を含む、厚みが1μm〜100μmの液体層が、前述の基準を満たす。好ましい実施形態では、印刷ブランクを化学線に露光する前に、液体を印刷要素の表面上に展開すべきである。液体はまた、処理中に所定の位置に留まるためには十分に粘性でなければならない。
【0052】
最後に、レリーフ像印刷要素が印刷機の印刷シリンダに装着されて印刷が開始される。
【0053】
版露光時の酸素阻害の影響を低減する別の利点は、優れた印刷性能に更に寄与する幾何学的特徴の特定の組合せを有する印字網点を製造することができる点である。本願明細書に記載するように酸素バリア層を使用することにより、酸素阻害の制限効果がなく網点が形成され、平坦な頂上及び急峻なショルダー角をもたらし、硬化速度は、最適な反転部の深度が維持されて角度が過度に広がらないように制御され、得られた膜の積層体は、熱加工中の過剰な表面粗さの生成を最小限に抑える。これらの幾何学的パラメータは、それぞれの主題の全体が参照することにより本願明細書中に援用される、関連する米国特許出願第12/571,523号(Recchia)及び米国特許出願第12/660,451号(Recchia等)により詳細に記載されている。
【0054】
一実施形態では、レリーフ印刷網点は、次のa)からe)のうちの1種以上の特性を有することが望ましい。
a)複数の網点の各々のショルダー角において全体的なショルダー角が約50°よりも大きい急峻なショルダー角を有する、
b)網点の上面の曲率半径r
tが光硬化性材料の少なくとも1層の総厚みよりも大きいという網点表面の平坦性を有する、
c)網点レリーフが、全体的な版レリーフの約9%よりも大きい網点間のレリーフの十分な深度を有する、及び
d)網点の頂上から網点のショルダーへと移行する点におけるエッジのシャープさにおいて、r
e:pの比が5%未満である。
【0055】
上述のように、スクリーンフィルム介在物は、一旦形成されると、光重合性の印版の上部の酸素バリア層上に配置されるか、又は光重合性の版の上部の酸素バリア層と接触させられ、スクリーンフィルム介在物を介して版が露光され、酸素バリア層がUV放射に暴露される。フィルムの網点の下のポリマー材料は、未重合のままとなる。
【0056】
露光に続いて、版の中の未重合領域を除去するために、版が現像される。処理が終了した結果、版表面は、典型的には約15μmの深度を有する複数の浅いセルをベタ画像領域に有する。同様に、選択された%網点サイズの多くのハーフトーン網点は、その表面上に浅いセルを同様に有する。一実施形態では、これらのセルはハーフトーン網点の中心にある。ハーフトーン網点内のインクセルの深度は、ベタ部内のインクセルの深度と同様の方法で制御される。一方、ハーフトーン網点自体は、理想的には版の床に近づく深度まで加工される。あらゆる場合において、ハーフトーン網点のレリーフは、アニロックスロールでの版のインキングに際して、インクセルが存在する場所の、ハーフトーン網点及びインクの上部表面領域のみがインクを保持するのに十分である。
【0057】
このように形成された版を位置合せして印刷シリンダに装着し、該シリンダが印刷機に装着される。印刷は、通常の方法で行われる。
【0058】
本発明者らは、本願明細書に記載の方法を用いることによって、以前にスクリーンフィルム介在物又は酸素バリア層を別々に使用することによって可能であったよりも高い、最大の達成可能なベタインク濃度(SID)を実現可能であることを見出した。
【実施例】
【0059】
デジタルMAX0.067”/1.70mm版(MacDermid Printing Solutionsから入手可能)を、Esko Advance imager(EskoArtworksから入手可能)上でHIghRes optics及びHDフレキソ2.0ソフトウェアパッケージ(EskoArtworksから入手可能)により画像形成する印刷試験を行った。酸素バリア膜(MacDermid Printing Solutionsから入手可能なMembrane 100)を、MacDermid Printing SolutionのLUXラミネータを使用してデジタルMAX版に積層した。
【0060】
試験画像は、スクリーニングが適用されていない対照群ベタパッチと共に、4×5cmのパッチ内に32の別々のMicroCellのパターンを組み込んだ。硬質のデジタル版の標準的な選択である1320 stickybackで版を印刷した。
【0061】
Sun Chemicalの溶剤系シアンインクを使用してAvanti 8 color CI press(PCMCから入手可能)上で印刷した基材は、不透明な白色のポリエチレンであった。1インチあたり800線(lpi)で2.0bcm(1平方インチあたり10億立方μm)のセル容積を有するアニロックスロール(ノースカロライナ州シャーロットのHarper Corp.から入手可能)を使用した(セル容量は、ロール表面の所定の平方インチ内のセル数を乗じた、セルのインク担持能力を指す)。
【0062】
各々のスクリーニング状態の読取りは、各々の版についてX分間の運転時間後に収集した、3回の別々の繰返し印刷の平均値とした。
【0063】
種々のMicroCellのパターンのベタインク濃度に対する効果を評価するために、酸素バリア膜で被覆された版を所定のMicroCellのバリアント(variants、変形)の標準的な性能と対比した双方の比較を許容するため、及びどのバリアントが全体的に最大限の全SIDを示すのか決定するため、32の別々のMicroCellのパターンを印刷試験した。
【0064】
標準的なデジタルMAX版のベタ部は、1.26のSIDを生成した一方で、酸素バリア膜で被覆したデジタルMAX版は、1.30の読取値を示した。0.04の濃度差は、統計学的に有意ではなく、視覚的に検出するのに十分に大きくもない。このことから、酸素バリア膜は、それ自体ではデジタルMAX版のベタ印刷性能のSIDを改善しなかったと結論付けられた。
【0065】
多くのMicroCellのバリアントがSIDに大きな影響を与えることが判明したが、MicroCellの32パターンのうちの11パターンは、対照群のベタ部よりも低いSIDを有していた。
【0066】
残りの21パターンのうち6パターンのSIDは、対照群からは統計学的に区別できなかった。残りの15パターンは、対照群よりもSIDが有意に高く、それらのうちの4パターンは、20%を超えるSIDの増加を表す1.50を超えるSIDを有していた。得られた最大SIDは、パターンMC16の1.61であり、これは対照群のベタ部より28%の増加となる。これは、裸眼で視覚的に著しいであろう。
【0067】
次に、MicroCellの性能に対する酸素バリア膜の効果を評価した。効果は、劇的であり均一にポジティブであった。対照群のベタ部よりも有意に高いSIDを示した、22の酸素バリア膜及びMicroCellのバリアントがあった。対照群よりも低いSIDを有する、7の酸素バリア膜及びMicroCellのバリアントがあった。最終的に、MicroCellとLUXとの組合せが対照群から統計学的に有意でなかったバリアントは3つのみであり、酸素バリア膜が標準的なデジタルMicroCellに対してSIDを改善しなかった酸素バリア膜及びMicroCellのバリアントは1つ(MC15)のみであり、この場合、標準のものと酸素バリア膜の型とは、統計学的に区別できなかった。
【0068】
更に見事なことに、酸素バリア膜は、達成可能な最大SIDを1.61から1.76に上昇させ、これは、酸素バリア膜なしで達成された最高のSIDより9%の増加、及び対照群のベタ部と比較して35%のSIDの増加を示す。MicroCell−酸素バリア膜のバリアントの9つ全てが、標準的なデジタル版の形式における最高のMicroCellバリアントにより達成された最大のSIDよりも高いSIDを与えた。加えて、標準的なデジタル版における対照群よりも低いSIDを与えた4つのMicroCellのバリアントは大幅に改善し、酸素バリア膜で一度処理した対照群よりも遙かに高いSIDを生じた。
【0069】
従って、酸素バリア膜が最大の可能なSIDを改善しただけでなく、MicroCellの機能窓をも拡大させ、標準的なデジタル形式よりも更なるバリアントを機能させたことが分かる。実際には、これは、最高のMicroCellのパターンを見出し、かつMicroCellがフレキソプリンタに提供するSIDの改善を維持するために必要とされる試験はより少なくてすむことを意味し得る。
【0070】
【表1】
【0071】
本発明に従い製造された版で印刷された印刷画像におけるベタ領域及びハーフトーン領域の双方は、従来の平坦な(インクセルの無い)領域表面で印刷された版よりも、高濃度、良好な色彩均一性、及びベタ部の縁部の周囲のハローの減少を示す。加えて、スクリーン化されたマイクロセルと酸素バリア膜の使用との組合せは、インク定置(lay down)を改善し、最終的な印刷物のインク濃度を増加させた。
【0072】
また、以下の特許請求の範囲は、本願明細書に記載の本発明の一般的及び具体的な特徴の全て、並びに文言上その間に収まる可能性のある本発明の範囲の全ての記載を網羅することが意図されることを理解されたい。