特許第5872706号(P5872706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5872706脈動発生用電磁ポンプ及びこれを用いた脈動水吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872706
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】脈動発生用電磁ポンプ及びこれを用いた脈動水吐出装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 17/04 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   F04B17/04
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-537208(P2014-537208)
(86)(22)【出願日】2014年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2014059126
(87)【国際公開番号】WO2014163000
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2014年8月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-78914(P2013-78914)
(32)【優先日】2013年4月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107055
【氏名又は名称】シルバー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100121692
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】西岡 義彰
(72)【発明者】
【氏名】川西 惠治
(72)【発明者】
【氏名】赤井 隆志
【審査官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−058206(JP,A)
【文献】 特開昭52−001504(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第03442325(DE,A1)
【文献】 特開2008−38674(JP,A)
【文献】 特開2001−81837(JP,A)
【文献】 特許第3647356(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管と脈動水吐出口との間に取り付けられて使用され、前記給水管からの給水時に所定のパターンのパルス電圧を周期的に給電する制御部によって制御される脈動発生用電磁ポンプにおいて、
電磁コイルが外周に設けられ、内部に前記給水管からの給水が流通する管状のシリンダと、
前記シリンダ内の下流側に設けられ、前記電磁コイルの作用により磁化される磁気ヘッドと、
前記シリンダ内の上流側において、前記磁気ヘッドに当接する吐出位置と該吐出位置から離れた所定の復帰位置との間を往復動自在に設けられた電磁プランジャーピストンと、
前記電磁プランジャーピストンを前記復帰位置に移動させるように付勢するばねと、を備えており、
前記電磁プランジャーピストンは、前記シリンダ内の通路の下流側と上流側とを連通する貫通孔を有し、
前記制御部からパルス電圧が印加されていない停止状態において給水管からの給水圧だけが作用する時の前記電磁プランジャーピストンの下流側吐出圧力を停止圧力としたとき、
前記貫通孔の孔径寸法は、(a)前記給水管からの給水状態において前記制御部からのパルス電圧の給電に応じて前記電磁プランジャーピストンが前記吐出位置にまで動いた時にシリンダ下流側へと水を動かす吐出圧力の最大値が前記停止圧力の略1.5倍以上となり、(b)前記最大値と、前記パルス電圧の印加停止後に前記電磁プランジャーピストンが前記ばねの力で復帰位置に戻る際の前記吐出圧力の最小値との差が、前記停止圧力と同等以上となるように設定されており、前記貫通孔に逆止弁を設けていないことを特徴とする脈動発生用電磁ポンプ。
【請求項2】
前記給水管と前記シリンダとの間の通路に、所定長の弾性体チューブの両端開口が連結されていることを特徴とする請求項1に記載の脈動発生用電磁ポンプ。
【請求項3】
前記シリンダには、前記電磁プランジャーピストンを前記磁気ヘッドへと押す力を強めるように、前記電磁コイルの隣接位置に磁気リングが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脈動発生用電磁ポンプ。
【請求項4】
給水管と脈動水吐出口との間に取り付けられて使用される脈動発生用電磁ポンプと、前記給水管からの給水時に、前記脈動水吐出口から脈動水を吐出させるように前記脈動発生用電磁ポンプに所定のパターンのパルス電圧を周期的に給電する制御部と、で構成され、
前記脈動発生用電磁ポンプは、電磁コイルが外周に設けられ、内部に前記給水管からの給水が流通する管状のシリンダと、
前記シリンダ内の下流側に設けられ、前記電磁コイルの作用により磁化される磁気ヘッドと、
前記シリンダ内の上流側において、前記磁気ヘッドに当接する吐出位置と該吐出位置から離れた所定の復帰位置との間を往復動自在に設けられた電磁プランジャーピストンと、
前記電磁プランジャーピストンを前記復帰位置に移動させるように付勢するばねと、を備えており、
前記電磁プランジャーピストンは、前記シリンダ内の通路の下流側と上流側とを連通する貫通孔を有し、
前記制御部からパルス電圧が印加されていない停止状態において給水管からの給水圧だけが作用する時の前記電磁プランジャーピストンの下流側吐出圧力を停止圧力としたとき、
前記貫通孔の孔径寸法は、(a)前記給水管からの給水状態において前記制御部からのパルス電圧の給電に応じて前記電磁プランジャーピストンが前記吐出位置にまで動いた時にシリンダ下流側へと水を動かす吐出圧力の最大値が前記停止圧力の略1.5倍以上となり、(b)前記最大値と、前記パルス電圧の印加停止後に前記電磁プランジャーピストンが前記ばねの力で復帰位置に戻る際の前記吐出圧力の最小値との差が、前記停止圧力と同等以上となるように設定されており、前記貫通孔に逆止弁を設けていないことを特徴とする脈動水吐出装置。
【請求項5】
前記制御部は、一周期内において、(c)前記電磁プランジャーピストンが吐出位置に到達し得る時間だけパルス電圧を印加して前記吐出圧基準値以上の吐出圧力の主脈動水を吐出させ、(d)前記パルス電圧印加後、前記ばねの力で前記復帰位置に復帰した前記電磁プランジャーピストンの前記吐出圧力が、前記電磁ポンプの停止状態において前記電磁プランジャーピストンが復帰位置に停止している時の停止圧力と同じになる予め定めた停止圧力タイミングに、前記時間よりも短い時間だけパルス電圧を印加して前記主脈動水より低い吐出圧力の副脈動水を吐出させる制御を行い、
前記短い時間は、該短い時間のパルス電圧印加後に前記ばねの力で前記復帰位置に復帰した前記電磁プランジャーピストンの前記吐出圧力が前記停止圧力と同じになるタイミングが、次の周期の主脈動水吐出用のパルス電圧印加タイミングとなるような時間であることを特徴とする請求項4に記載の脈動水吐出装置。
【請求項6】
前記給水管と前記シリンダとの間の通路に、所定長の弾性体チューブの両端開口が連結されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の脈動水吐出装置。
【請求項7】
前記シリンダには、前記電磁プランジャーピストンを前記磁気ヘッドへと押す力を強めるように、前記電磁コイルの隣接位置に磁気リングが設けられていることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の脈動水吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば洗浄機能付きの便座において給水管からの水道水に脈動を加え、脈動水吐出口である洗浄水ノズルの吐出口から勢いよく脈動水を射出することができる脈動発生用電磁ポンプ及びこれを用いた脈動水吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給水管と脈動水吐出口との間に取り付けられて使用され、給水管からの給水時に所定のパターンのパルス電圧を周期的に給電する制御部によって制御される脈動発生用電磁ポンプが知られている。該電磁ポンプは、一般に、電磁コイルが外周に設けられ、内部に給水管からの給水が流通する管状のシリンダと、該シリンダ内に設けられる磁気ヘッド、電磁プランジャーピストン等を備えている。磁気ヘッドは、シリンダ内の下流側に取り付けられ、電磁コイルの作用により磁化される。電磁プランジャーピストンは、シリンダ内の上流側において、磁気ヘッドに当接する吐出位置と該吐出位置から離れた所定の復帰位置との間を往復動自在に設けられている。その他シリンダ内には、給水管からの給水時に、電磁プランジャーピストンを復帰位置に静止するように付勢するばねを備えている。電磁プランジャーピストンは、シリンダ内の通路の下流側と上流側とを連通する貫通孔と、給水管から脈動水吐出口方向へのみ水を通す逆止弁と、を有している。
【0003】
特許文献1には、ノズル状のゴムチューブ製のダックビル弁を逆止弁として有する電磁ポンプが記載されており、特許文献2には、ばねの力で開閉動作する弁によって貫通孔を塞ぐ逆止弁を備えている電磁ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4169306号公報
【特許文献2】特許第3647356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電磁ポンプの逆止弁は、経年劣化によりゴムが劣化して故障する虞があり、特許文献2に記載の電磁ポンプの逆止弁は、構成が複雑なために故障しやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、逆止弁を用いない構造のインライン型の脈動発生用電磁ポンプ及びこれを用いた脈動水吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、給水管と脈動水吐出口との間に取り付けられて使用され、前記給水管からの給水時に所定のパターンのパルス電圧を周期的に給電する制御部によって制御される脈動発生用電磁ポンプにおいて、電磁コイルが外周に設けられ、内部に前記給水管からの給水が流通する管状のシリンダと、前記シリンダ内の下流側に設けられ、前記電磁コイルの作用により磁化される磁気ヘッドと、前記シリンダ内の上流側において、前記磁気ヘッドに当接する吐出位置と該吐出位置から離れた所定の復帰位置との間を往復動自在に設けられた電磁プランジャーピストンと、前記電磁プランジャーピストンを前記復帰位置に移動させるように付勢するばねと、を備えており、前記電磁プランジャーピストンは、前記シリンダ内の通路の下流側と上流側とを連通する貫通孔を有し、前記制御部からパルス電圧が印加されていない停止状態において給水管からの給水圧だけが作用する時の前記電磁プランジャーピストンの下流側吐出圧力を停止圧力としたとき、前記貫通孔の孔径寸法は、(a)前記給水管からの給水状態において前記制御部からのパルス電圧の給電に応じて前記電磁プランジャーピストンが前記吐出位置にまで動いた時にシリンダ下流側へと水を動かす吐出圧力の最大値が前記停止圧力の略1.5倍以上となり、(b)前記最大値と、前記パルス電圧の印加停止後に前記電磁プランジャーピストンが前記ばねの力で復帰位置に戻る際の前記吐出圧力の最小値との差が、前記停止圧力と同等以上となるように設定されており、前記貫通孔に逆止弁を設けていないことを特徴とする。
【0008】
前記給水管と前記シリンダとの間の通路に、所定長の弾性体チューブの両端開口が連結されていることが好ましい。
【0009】
前記シリンダには、前記電磁プランジャーピストンを前記磁気ヘッドへと押す力を強めるように、前記電磁コイルの隣接位置に磁気リングを設けてもよい。
【0010】
また、本発明は、給水管と脈動水吐出口との間に取り付けられて使用される脈動発生用電磁ポンプと、前記給水管からの給水時に、前記脈動水吐出口から脈動水を吐出させるように前記脈動発生用電磁ポンプに所定のパターンのパルス電圧を周期的に給電する制御部と、で構成され、前記脈動発生用電磁ポンプは、電磁コイルが外周に設けられ、内部に前記給水管からの給水が流通する管状のシリンダと、前記シリンダ内の下流側に設けられ、前記電磁コイルの作用により磁化される磁気ヘッドと、前記シリンダ内の上流側において、前記磁気ヘッドに当接する吐出位置と該吐出位置から離れた所定の復帰位置との間を往復動自在に設けられた電磁プランジャーピストンと、前記電磁プランジャーピストンを前記復帰位置に移動させるように付勢するばねと、を備えており、前記電磁プランジャーピストンは、前記シリンダ内の通路の下流側と上流側とを連通する貫通孔を有し、前記制御部からパルス電圧が印加されていない停止状態において給水管からの給水圧だけが作用する時の前記電磁プランジャーピストンの下流側吐出圧力を停止圧力としたとき、前記貫通孔の孔径寸法は、(a)前記給水管からの給水状態において前記制御部からのパルス電圧の給電に応じて前記電磁プランジャーピストンが前記吐出位置にまで動いた時にシリンダ下流側へと水を動かす吐出圧力の最大値が前記停止圧力の略1.5倍以上となり、(b)前記最大値と、前記パルス電圧の印加停止後に前記電磁プランジャーピストンが前記ばねの力で復帰位置に戻る際の前記吐出圧力の最小値との差が、前記停止圧力と同等以上となるように設定されており、前記貫通孔に逆止弁を設けていないことを特徴とする。
【0011】
前記制御部は、一周期内において、(c)前記電磁プランジャーピストンが吐出位置に到達し得る時間だけパルス電圧を印加して前記吐出圧基準値以上の吐出圧力の主脈動水を吐出させ、(d)前記パルス電圧印加後、前記ばねの力で前記復帰位置に復帰した前記電磁プランジャーピストンの前記吐出圧力が、前記電磁ポンプの停止状態において前記電磁プランジャーピストンが復帰位置に停止している時の停止圧力と同じになる予め定めた停止圧力タイミングに、前記時間よりも短い時間だけパルス電圧を印加して前記主脈動水より低い吐出圧力の副脈動水を吐出させる制御を行い、前記短い時間は、該短い時間のパルス電圧印加後に前記ばねの力で前記復帰位置に復帰した前記電磁プランジャーピストンの前記吐出圧力が前記停止圧力と同じになるタイミングが、次の周期の主脈動水吐出用のパルス電圧印加タイミングとなるような時間であることが好ましい。
【0012】
前記給水管と前記シリンダとの間の通路に、所定長の弾性体チューブの両端開口が連結されていることが好ましい。
【0013】
前記シリンダには、前記電磁プランジャーピストンを前記磁気ヘッドへと押す力を強めるように、前記電磁コイルの隣接位置に磁気リングを設けてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、制御部から給電されるパルス電圧に応じて吐出圧基準値以上の吐出圧力を得られる孔径寸法の貫通孔を有する電磁プランジャーピストンを用いることにより、電磁ポンプとして所望される出力特性を確保しつつ、故障原因の1つであった逆止弁を無くして電磁ポンプの故障原因を減らし、電磁ポンプ及びこれを用いた脈動水吐出装置の耐久性を伸ばすことができる。なお、電磁ポンプの給水管とシリンダとの間の通路に、所定長の弾性体チューブの両端開口を連結することにより、該電磁ポンプに畜圧能力の調節が容易なアキュームレータの機能を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る脈動水吐出装置の全体構成を示す斜視図。
図2】同脈動水吐出装置が備えている脈動発生用電磁ポンプの分解斜視図。
図3】同電磁ポンプの断面図。
図4A】同電磁ポンプに給電するパルス電圧の波形図。
図4B】同電磁ポンプの電磁プランジャーピストンの貫通孔の直径がφ=1.6mmの場合の電磁ポンプの吐出圧力特性を示すグラフ。
図5A】同電磁ポンプの給水部品の変形例の斜視図。
図5B】同電磁ポンプの給水部品の変形例の斜視図。
図6】上記実施形態に用いた電磁ポンプを改良した第1改良例に係る電磁ポンプの断面図。
図7】実施形態に係る電磁ポンプ及び第1改良例に係る電磁ポンプの吐出圧力特性を示すグラフ。
図8】上記実施形態に用いた電磁ポンプを改良した第2改良例に係る電磁ポンプの断面図。
図9】実施形態に係る電磁ポンプ及び第2改良例に係る電磁ポンプの吐出圧力特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の脈動発生用電磁ポンプは、吐出圧の最大値が吐出圧基準値以上の値を示すと同時に、吐出後に元の復帰位置に戻る際の吐出圧力の最小値と前記最大値との差が圧力差基準値以上となる孔径寸法の貫通孔を有する電磁プランジャーピストンを備えている。このピストンの貫通孔には、吐出時に閉じ、前記吐出後に復帰位置に戻る際に開く逆止弁が設けられていないことを特徴とする。この構成を採用することによって、電磁ポンプとして所望される出力特性を確保しつつ、故障原因の1つであった逆止弁を無くして電磁ポンプの故障原因を減らし、電磁ポンプの耐久性を飛躍的に伸ばす。
【0017】
図1は、例えば洗浄機能付き便座に取り付けられて用いられる脈動水吐出装置1を示す。脈動水吐出装置1は、水道水の給水管2に接続されている電磁弁3と、電磁弁3の下流側で別の給水管4を介して接続されている脈動発生用電磁ポンプ5と、電磁ポンプ5の吐出口に取り付けられている洗浄用ノズル6(脈動水吐出口)と、制御部7と、を備えている。
【0018】
制御部7は、スイッチ7aを有しており、スイッチ7aが押下された時に電磁弁3を開き、電磁ポンプ5に、所定のパターンのパルス電圧を周期的に給電する。また、制御部は無線信号の受信器7bを備えており、ワイヤレスリモコン7cからスイッチ7dが押下されたことを表す無線信号を受信器7bが受信した時に電磁弁3を開き、電磁ポンプ5に前記の給電を行う。制御部7は、スイッチ7aが再度押下された時、又はスイッチ7dの押下に応じてワイヤレスリモコン7cから送られてくる無線信号を受信器7bが再度受信した時に、電磁弁3を閉じ、給電を停止する。
【0019】
電磁ポンプ5は、パルス電圧の印加に応じて動作し、均一の圧力で供給されてくる水道水に脈動する圧力を加減して脈動水を吐出する。電磁ポンプ5から吐出された脈動水は、ノズル6の吐出口から勢いよく射出される。
【0020】
図2及び図3は電磁ポンプ5の構成を示す。電磁ポンプ5は、上流側から順に、給水された水をポンプ5の内部に導くアキュームレータ機能付き給水部品8と、パルス電圧により動作して給水部品8から給水される水に脈動を与え吐出するピストン部9とを備えている。さらに、電磁ポンプ5は、ピストン部9から吐出されてくる脈動水を外部のノズル6へと送りだす吐出側部品10と、前記ピストン部9を図中実線で示す矢印20、21で示すように給水部品8及び吐出側部品10との間に挟んで固定する留め具11と、を備えている。
【0021】
給水部品8は、給水口8aと、該給水口8aに通路8bにより通じている吐出口8cと、前記通路8bから伸びている枝管8d、8eに両端開口8f、8gが連結されている所定長の弾性体チューブ8hと、で構成されている。弾性体チューブ8hは、アキュームレータとして機能する。
【0022】
一般の弾性膜を用いるアキュームレータでは膜厚、その膜強度又は膜の大きさを変えて畜圧能力を調節する必要があり、精度よく調節することが難しい。これに比べて弾性体チューブ8hは、チューブの厚み及び強度だけでなく、その長さを調節することによって、取り付けスペースを広げることなく、畜圧能力を極めて容易に精度よく調節できる利点がある。この弾性体チューブ8hにより構成されるアキュームレータは、電磁ポンプ5に限らず、ピストン9eに逆止弁を備えている従来の電磁ポンプにも用いることができる。
【0023】
ピストン部9は、留め具9aに固定される電磁コイル9bと、電磁コイル9bが外周に設けられ、内部に給水部品8の吐出口8cからの給水が流通する管状のシリンダ9cとを備える。シリンダ9c内には、その下流側に設けられ、電磁コイル9bの作用により磁化される磁気ヘッド9dと、電磁プランジャーピストン9eとを備えている。電磁プランジャーピストン9eは、シリンダ9c内の上流側において、磁気ヘッド9dに当接する吐出位置(P1)と該吐出位置から離れた所定の復帰位置(P2)との間(間隔L1)を往復動自在に設けられている。ピストン9eは、2つのばね9f、9gによって復帰位置に移動させるように付勢されている。シリンダ9cの両側には、シリンダ9cを給水部品8及び吐出側部品10との間に挟んで固定する際に用いるゴムシール9h、9iが設けられている。ばね9fは、上流側が給水部品8の吐出口8cに当接し、下流側がピストン9eに当接してピストン9eを下流側に押すように作用する。ばね9gは磁気ヘッド9dに設けられている貫通孔9jを伸縮自在の状態で通り、上流側がピストン9eに当接し、下流側が吐出側部品10に当接してピストン9eを上流側に押すように作用する。これらばね9f、9gの作用により、ピストン9eは、常に復帰位置に復帰するように付勢されている。
【0024】
また、ピストン9eは、シリンダ9c内の通路の下流側と上流側とを連通する貫通孔9kを有している。貫通孔9kの孔径寸法は、(a)電磁弁3が開き、給水管2から給水されている状態において制御部7からのパルス電圧の給電に応じてピストン9eが吐出位置にまで動いた時にシリンダ下流側へと水を動かす吐出圧力の最大値が所定の吐出圧基準値以上となり、(b)最大値と、パルス電圧の印加停止後にピストン9eがばね9f、9gの力で復帰位置に戻る際の吐出圧力の最小値との差が、所定の圧力差基準値以上となるように設定されている。これにより、電磁ポンプ5は、水玉状の脈動水を吐出することができる。
【0025】
吐出側部品10は、磁気ヘッド9dの貫通孔9jと略同径の給水口10aと、給水口10aに連通している吐出口10bと、ノズル6取り付け時に用いるシール10cと、を備えている。
【0026】
上記構成の電磁ポンプ5において、ピストン9eの貫通孔9kには、吐出時に閉じ、吐出後に復帰位置に戻る際に開く逆止弁が設けられていない。ピストン5eは復帰位置に戻る際に吐出口側へと流れている水流を不必要にかき乱すことが無く、この結果、電磁ポンプ5は脈動圧のみによってきれいな水玉状の脈動水を形成することができる。このことは、少ない水量でも脈動による明確な衝撃を生じ、例えば洗浄用に用いた場合の洗浄効果を高める効果を生じる。
【0027】
以下、図3図4A図4Bを参照して電磁ポンプ5の実施例について、具体的な各部の寸法及び実験データを示しつつ、ピストン9eの貫通孔9kの孔径寸法R2の設定基準について説明する。シリンダ9c内側の直径R1は8mmで、内部を摺動可能に収められているピストン9eの外径はこれよりわずかに小さい約8mmである。ピストン9eの貫通孔9kの孔径寸法R2は1.6mmである。磁気ヘッド9dの貫通孔9jの孔径寸法R3は4.0mmである。ピストン9eの下流側にはばね9gの端が嵌る凹部9lが設けられている。ピストン9eの吐出位置P1と復帰位置P2との間の距離、即ちピストン9eのストロークL1は2.34mmである。磁気ヘッド9d及びピストン9eは、互いに向き合い接する斜面を有している。ばね9f、9gのセット荷重は、水道水の水圧(一般に100kPa前後の値)及びパルス電圧印加時のピストン9eの推進力との関係により定められ、停止時にピストン9eを復帰位置P2に置き、かつ、駆動時にはピストン9eが磁気ヘッド9dに当接する位置P1に移動して所望の吐出圧力が出力できるという条件を満たす値、例えば約400gf〜1100gfの値である。
【0028】
図4Aは、上記構成の電磁ポンプ5を使用する脈動水吐出装置1において、制御部7からコイル9bに印加するパルス電圧波形を示す。パルス電圧の出力は定電圧Vcc(例えば24V)で、その周期Tは例えば0.020secである。制御部7は、一周期T内の所定のタイミングに長い時間TL(例えば4.2msec)及び短い時間TS(例えば1.5msec)の間、パルス電圧を出力する。
【0029】
図4Bは、上記構成の電磁ポンプ5の吐出圧力の実測データである。同図において横軸は時間、縦軸は圧力であり、実線で示すデータは、図4Aに示すタイミングで制御部7から電磁ポンプ5にパルス電圧を印加した運転状態において、ピストン9eの下流側の吐出圧力DPを所定の時間間隔で実測したものである。また、点線で示すデータは、制御部7からパルス電圧が印加されていない停止状態において電磁弁3を開いて水道水の圧力だけが作用する時のピストン9eの下流側吐出圧力のグラフである。以下、この点線で示す吐出圧力を停止圧力という。停止圧力は、約99kPaである。A点は、パルス電圧を短い時間TSだけ印加した後にばね9f、9gの力で復帰位置P2に復帰した時の吐出圧力DP(=81kPa)を表す。B点は、給水管4からの水道水の圧力により停止圧力に戻ったタイミングで、パルス電圧を比較的長い時間TLだけ印加した場合に得られる吐出圧力の最大値DPmax(=156kPa)を示す。C点は、その後にばね9f、9gの力で復帰位置P2に復帰した時の吐出圧力の最小値DPmin(=34kPa)を示す。D点は、給水管4からの水道水の圧力により停止圧力に戻ったタイミングで、再びパルス電圧を短い時間TSだけ印加した場合に得られる吐出圧力DP(=126kPa)を示す。制御部7によるパルス電圧の印加に応じてA点、B点、C点、D点と吐出圧力が繰り返し変わる。
【0030】
一周期Tの中で、パルス電圧を短い時間TSだけ再度印加する理由は、大小の水玉部分を作るためである。短い時間TSの値は、パルス電圧を短い時間だけ印加した後に、吐出圧力が停止圧力と同じになるタイミングが、次の周期の長い時間のパルス電圧印加タイミングと一致する時間に設定する。短い時間TSを、このような値に設定することによって、一周期Tの終期の手前で吐出圧力が停止圧力となり、脈動していない部分ができること防ぐ。なお、所望の場合には、時間TSの値を更に短くして、大小の水玉部分の間に脈動していない部分を作ることもできる。
【0031】
実用上、吐出圧力の最大値DPmaxは、吐出圧基準値(DPref)(=150kPa)以上が望まれる。また、吐出圧力の最大値と最小値との差PD(=DPmax−DPmin)は、圧力差基準値(PDref)(=100kPa)以上が望まれる。本実施形態の電磁ポンプ5は、この基準を満たしている。
【0032】
このような所望の出力条件を満たす電磁ポンプ5は、従来の電磁ポンプにおいて故障原因の1つであったピストンの貫通孔の逆止弁を備えていないため故障が少なく、飛躍的に改善された優れた耐久性を有する。
【0033】
ピストン9eの貫通孔9kの孔径寸法R2の値を、φ=1.2mm、1.4mm、1.8mm、2.0mm、2.2mm、2.4mm、3.0mm、3.5mmに変えた場合において、図4Aに示したパルス電圧を印加した時のピストン9eの下流側の吐出圧力DPを所定の時間間隔で実測した。孔径寸法R2の値毎に、図4Bに示したA〜D点の吐出圧力(kPa)をまとめたのが次に示す表1である。
【0034】
【表1】
【0035】
表1は、左端から“ピストン9eの貫通孔9kの孔径寸法R2の値”、“パルス電圧を印加していない完全な停止時にピストン9eの貫通孔9kに流れる水量(ml/min)”、“停止時のピストン9e上流側の圧力及び下流側の停止圧力”、“パルス電圧印加時に検出されるA〜D点の吐出圧力”、“吐出圧力の最大値と最小値との差PD”を示す。
【0036】
表1からは、貫通孔9kの孔径寸法R2の値がφ=1.6mm乃至2.0mmの時に、B点で検出される吐出圧力の最大値DPmaxが吐出圧基準値DPref(=150kPa)以上で、かつ、吐出圧力の最大値と最小値との差PD(“B点の吐出圧力”―“C点の吐出圧力”)が圧力差基準値PDref(=100kPa)以上となることが解る。
【0037】
図5A図5Bは、アキュームレータ機能を有する給水部品8の変形例を示す。図中、給水部品8と同様の構成要素には同じ参照番号を付して重複した説明は省く。何れの変形例も給水口8aと吐出口8cとの間の通路8bの枝管に、所定長の弾性体チューブ8i、8jの両端開口が連結されている。これらの変形例においても、弾性体チューブ8i、8jの長さを換えるだけで、極めて簡単に畜圧能力を調節できるという利点を有している。
【0038】
以上に説明した構成の脈動発生用電磁ポンプ及びこれを用いた脈動水吐出装置は、所望の出力特性を確保しつつ、即ち所望の吐出圧力及び該吐出圧力の最大値及び最小値の差を有しつつ、故障原因の1つであった逆止弁を無くして電磁ポンプの故障原因を減らしたことにより、飛躍的に改善された優れた耐久性を有する。
【0039】
なお、本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、給水部品8の弾性体チューブ8hの中にコイルを挿入し、弾性体チューブ8hが折れ曲がって通路を閉塞してしまうことを防ぐ構成を採用してもよい。
【0040】
また、電磁ポンプ5の変形例として、シリンダ9cに、電磁プランジャーピストン9eを磁気ヘッド9dへと押す力を強めるように、電磁コイル9bの隣接位置、例えば吐出口8cに近い側に磁気リングを追加(図8に示す磁気リング12を参照)してもよい。当該構成によって、吐出圧力の最大値DPmaxを高くすることができる。
【0041】
図6は、上記実施形態に用いた電磁ポンプ5を改良した第1改良例に係る電磁ポンプ5Aを示す。図中、電磁ポンプ5と同様の構成要素には同じ参照番号を付して重複した説明は省く。この電磁ポンプ5Aは、上述の電磁ポンプ5のピストン9eを復帰位置に戻すばね9gのセット荷重を小さくし、磁気ヘッド9dを短くすることによってピストン9eのストロークを長くしている。例えば、脈動水吐出装置1を洗浄機能付きの便座に使用する場合、吐出圧力の最大値DPmaxと最小値DPminとの差PDがあまりに大きいと、使用者によっては好ましく思わない場合がある。この場合、前述したばね9f、9gのセット荷重についての条件を満たす限りにおいて、電磁ポンプ5Aは、電磁ポンプ5のばね9gのセット荷重を小さくし、吐出圧力の最小値DPminを少し高めに設定する。ばね9gのセット荷重を小さくすると、ピストン9eを磁気ヘッド9dへと押し出す力が強くなり、ピストン9eが磁気ヘッド9dに強く当たって音鳴りがする場合がある。このような音鳴りを無くすため、電磁ポンプ5Aは、磁気ヘッド9dを短くすることによってピストン9eのストロークを、電磁ポンプ5の場合のL1よりも長いL2にしている。
【0042】
図7は、実施例としての電磁ポンプ5及び上記第1改良例に係る電磁ポンプ5Aの吐出圧力特性を示す。実線は、ピストン9eの貫通孔9kの直径がφ=1.6mmの場合の電磁ポンプ5Aの吐出圧力特性を示し、点線は、ピストン9eの貫通孔9kの直径がφ=1.6mmの場合の電磁ポンプ5の吐出圧力特性を示す。同図より、電磁ポンプ5Aは、電磁ポンプ5と比べて吐出圧力の最大値が若干低い値で、吐出圧力の最小値DPminが高くなり、差PDが小さくなっていることが分かる。
【0043】
第1改良例の電磁ポンプ5Aにおいては、磁気ヘッド9dの長さが短くなることに起因する電磁プランジャーピストン9eを磁気ヘッド9d側へ押す力が減少する。このため、吐出圧力の最大値DPmaxの値が、電磁ポンプ5よりも小さくなった。この値によっては、吐出圧力の最大値DPmaxが吐出圧基準値DPref以上で、かつ、差PDが圧力差基準値PDref以上とするため、最大吐出圧力DPmaxを補う必要がある。
【0044】
図8は、上記第1改良例に係る電磁ポンプ5Aをさらに改良した第2改良例に係る電磁ポンプ5Bを示す。図中、電磁ポンプ5と同様の構成要素には同じ参照番号を付して重複した説明は省く。電磁ポンプ5Bは、電磁ポンプ5Aのシリンダ9cの電磁コイル9bの隣接位置、例えば給水部品8に近い側に磁気リング12を追加した構成とされている。
【0045】
図9は、実施例としての電磁ポンプ5及び上記第2改良例に係る電磁ポンプ5Bの吐出圧力特性を示す。実線は、ピストン9eの貫通孔9kの直径がφ=1.6mmの場合の電磁ポンプ5Bの吐出圧力特性を示し、点線は、ピストン9eの貫通孔9kの直径がφ=1.6mmの場合の電磁ポンプ5の吐出圧力特性を示す。電磁ポンプ5Bは、電磁ポンプ5と比べて吐出圧力の最大値DPmaxが高くなっている。また、図7と比べれば明確なように、電磁ポンプ5Bは、第1改良例に係る電磁ポンプ5Aと比べて吐出圧力の最大値DPmaxが高くなっている。このように、必要に応じて磁気リング12を使用することによって吐出圧力の最大値DPmaxを増加できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の脈動発生用電磁ポンプ及びこれを用いた脈動水吐出装置は、洗浄機能付きの便座に使用できる他、例えば、ジェットバス、手洗い用のハンドシャワー、脈動水を歯に当てて歯磨きを行うバブルジェット式の歯磨き装置等、脈動する水流が望まれる個所に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 脈動水吐出装置
4 給水管
5、5A、5B 脈動発生用電磁ポンプ
6 ノズル(脈動水吐出口)
7 制御部
8h 弾性体チューブ
9c シリンダ
9d 磁気ヘッド
9e 電磁プランジャーピストン
9k 貫通孔
12 磁気リング
DPmax 吐出圧力の最大値
DPmin 吐出圧力の最小値
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9