特許第5872709号(P5872709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5872709バッチ様式で操作する第1の予備処理反応器と、その次の、ピストンタイプの第2の予備処理反応器とを含む、硫黄含有化合物を抽出するための改
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872709
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】バッチ様式で操作する第1の予備処理反応器と、その次の、ピストンタイプの第2の予備処理反応器とを含む、硫黄含有化合物を抽出するための改
(51)【国際特許分類】
   C10G 19/02 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   C10G19/02
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-542910(P2014-542910)
(86)(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公表番号】特表2015-501861(P2015-501861A)
(43)【公表日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】FR2012000417
(87)【国際公開番号】WO2013076383
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2014年9月16日
(31)【優先権主張番号】11/03593
(32)【優先日】2011年11月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】オジエ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ボード アルノー
(72)【発明者】
【氏名】ガザリアン ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ラインクーゲル ル コック ダミアン
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−523163(JP,A)
【文献】 特開2009−067990(JP,A)
【文献】 米国特許第03474027(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーダ溶液による液−液抽出によりガソリンまたはLPGタイプの炭化水素留分から硫黄含有化合物を抽出する方法であって、処理されるべき供給原料の予備処理のための装置を用い、該予備処理のための装置は、ソーダによる抽出のための装置(4)の上流に位置し、前記予備処理のための装置は、バッチ様式で操作する第1の予備処理反応器(2)と、これに続く、第2の連続的な反応器(16)とからなり、該第2の連続的な反応器(16)にソーダ相が供給され、該第2の連続的な反応器(16)は、ピストン様式で操作するピストンタイプの反応器であり、3〜10のペクレ数
【数1】

を有し、ここで、Uは、反応器中の炭化水素相の流れの線速度を示し、Lは、反応器の長さを示し、Daxは、反応器中の炭化水素相の軸分散の係数を示す、方法。
【請求項2】
該第2の連続的な反応器(16)の体積は、第1の予備処理反応器(2)の体積の0.5〜1.5倍である、請求項1に記載のソー溶液による液−液抽出によりガソリンまたはLPGタイプの炭化水素留分から硫黄含有化合物を抽出する方法。
【請求項3】
該第2の連続的な反応器(16)を出る流出物は、ソーダ流(18)を回収するための沈降タンク(17)に入り、ソーダ流(18)は、該第2の連続的な反応器(16)の長さのほぼ中央に位置する該反応器のポイントで再導入される、請求項1に記載のソーダ溶液による液−液抽出によりガソリンまたはLPGタイプの炭化水素留分から硫黄含有化合物を抽出する方法。
【請求項4】
第2の連続的な反応器(16)において用いられるソーダは、該抽出のための装置(4)からのソーダ再生のためのループから得られる、請求項1に記載のソーダ溶液による液−液抽出によりガソリンまたはLPGタイプの炭化水素留分から硫黄含有化合物を抽出する方法。
【請求項5】
第2の連続的な反応器(16)において用いられるソーダは、該抽出のための装置(4)からのソーダ出口と酸化器(9)との間に位置するポイント(7)において取られる、請求項4に記載のソーダ溶液による液−液抽出によりガソリンまたはLPGタイプの炭化水素留分から硫黄含有化合物を抽出する方法。
【請求項6】
該ペクレ数が3〜5である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のソーダ溶液による液−液抽出によりガソリンまたはLPGタイプの炭化水素留分から硫黄含有化合物を抽出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素留分から硫黄含有化合物、例えば、チオール、COSおよびHSを抽出する分野に関する。この選択的抽出は、炭化水素供給原料を液相においてソーダ溶液と接触させることによって行われる。
【背景技術】
【0002】
ソーダ溶液を用いた液−液抽出による炭化水素留分(ガソリン、LPG等)からの硫黄含有化合物の抽出は、従来技術において周知である。硫黄含有種の大部分がメルカプタン(またはチオール)である場合、非常に広範に用いられる方法のタイプは、特許文献1において記載されるように、方法においてループ中を流通するソーダ溶液によって硫黄含有種の抽出を行うことからなる。チオールタイプの硫黄含有種は、ソーダ中でナトリウムチオラートに解離する。抽出の後、ナトリウムチオラートを多く含むソーダは、空気中、溶解した触媒、例えば、コバルトフタロシアニンをベースとする触媒の存在下に酸化される。この方法で、ナトリウムチオラートタイプの種は、ジスルフィドに転化される。ジスルフィドを豊富に含むソーダ溶液は、炭化水素相と接触させられ、これは、ジスルフィドを抽出すること、それ故に、ソーダを再生することを可能にし、このソーダは、液−液抽出カラムの頂部に再循環させられ得る。酸化と関連するパラメータは、ソーダ中に存在するナトリウムチオラートのほぼすべてを酸化するように選択される。この方法は、したがって、炭化水素留分の部分的なまたは完全な脱硫を可能にし、硫黄含有種を大量に含む別の有機流出物を生じさせる。
【0003】
このタイプの方法に固有の課題は、所定の化学的種、例えば、COSまたはHSが、ソーダの存在下に不可逆的に塩を形成し、これらの塩は、ソーダループ中に蓄積するという事実にある。ソーダループ中の過剰量の塩は、最終的に、その性能を制限する。この理由のために、定期的なパージおよび補充がループ上で行われる。非常に広範に用いられている別の実行は、抽出カラムの上流で、ソーダ溶液を含有する容器において、炭化水素を予備処理することからなる。この予備処理の効果は、硫黄含有種、特に、塩を形成する種の一部を消費することにある。予備処理において用いられるソーダ溶液は再生されない。この予備処理段階は、別個の容器において、または、特許文献2に記載されるように抽出カラムが2つの別個の容器に区画されるならば抽出カラムと同一の容器において行われ得る。
【0004】
それ故に、硫黄含有種の抽出は、一般的には、2段階:
・ 予備処理段階:COSおよび残留HSの抽出;
・ チオールの向流中の連続的抽出の段階:予備処理段階の下流に位置する段階
において行われる。
【0005】
予備処理は、一般的には、バッチ様式で操作され、供給原料を、ソーダ溶液で満たされた容器に注入することからなり、このソーダ溶液は、周期的に交換される。バッチ操作様式の予備処理のために、ソーダ濃度は、経時的に減少し、それにしたがって、それの抽出性能も低減する。予備処理における性能が低過ぎる場合、ソーダを含有する水相は、再び新しくされ、これは、方法および予備処理のために用いられる容器のサイズに応じて、例えば、月当たり1〜10回行われ得る。最初のソーダ濃度は、一般的に、2〜10重量%の含有率に一定に固定される。
【0006】
予備処理を出る炭化水素相は、ソーダにより向流で種々のタイプの抽出カラムにおいて抽出され得る。非常に多くの技術が知られており、例えば、非特許文献1において記載されたものがある。これらのカラムは、一般的に、少なくとも2個の理論抽出段を生じさせるために設計される。しばしば遭遇される抽出カラムの技術が下降管を有する多孔板を有するものであるのは、ソーダによる向流抽出は、しばしば、炭化水素流量よりはるかに少ないソーダ流量により行われるからである。炭化水素の体積流量とソーダの体積流量との間の比は、5〜40で変動し得る。ループにおけるソーダ含有率は、一般的に、15〜25重量%の含有率に一定に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4081354号明細書
【特許文献2】米国特許第6749741号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Handbook of Solvent Extraction」、Krieger Publishing Company、1991年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
バッチ様式の予備処理操作は、完全に攪拌されるタイプの反応器における連続的操作に対してその性能を最大にするという利点を提供する。したがって、COSおよびHSの含有率は、平均して、予備処理段階によって相当低減させられる。対照的に、チオールタイプの主要種を含む予備処理を出る硫黄含有種の濃度は、予備処理容器において用いられたソーダ溶液の使用期間に応じて変動する。全硫黄の変動は、それ故に、例えば、向流抽出カラムの入口において一様から二様にわたって変わり得る。
【0010】
濃度変動により複数の問題が引き起こされるのは、チオールの抽出の段階、ナトリウムチオラートの酸化の段階およびソーダの再生の段階が連続的に操作されるからである。それ故に、以下の複数の問題が発生し得る。
1) 予備処理のために用いられたソーダがその耐用期間の終末にある場合、大量のナトリウムチオラートの先行蓄積および過度に低いソーダ濃度と関連するチオールの塩析のために、予備処理を出るチオールの量が予備処理の入口におけるのと同等に高いか、さらには、より高くあり得る。それ故に、高い全硫黄濃度のうねりが、向流抽出の入口において存在しているかもしれず、これは、ループにおけるソーダの流量が最高濃度を処理するために十分でないならば、カラムにおける液−液抽出の効率の喪失を潜在的に生じさせ得る。さらに、炭化水素中のチオールのうねりにより、その後に、抽出カラムの底部においてソーダ中のナトリウムチオラートのうねりが生じる。酸化器中の過度に高い濃度のナトリウムチオラートにより、ジスルフィドへの部分的な転化がもたらされ得、したがって、再生されたソーダへのナトリウムチオラートの多量の戻りが、抽出カラムの頂部においてもたらされ得る。これは、抽出カラムの性能をも低減させ得る。
2) 逆に、予備処理サイクルの開始時に、向流抽出カラムに入る炭化水素は、硫黄をほとんど含有しておらず、したがって、抽出カラムの底部におけるソーダ中のナトリウムチオラートの濃度は低い。酸化器において、空気の量は、その時、過剰にある。ソーダ中に溶解した酸素は、残留ナトリウムチオラートによって消費されず、再生されたソーダと共に抽出カラムに直接的に戻される。再生されたソーダ中に存在する酸素は、その時、抽出器内でチオールと反応し、ジスルフィドを生じさせることができる。これらのジスルフィドは、その時、抽出カラムにおいて処理されるべき炭化水素相によって直接的に抽出され、結果として、方法の全体的な性能は低減させられる。
【0011】
それ故に、処理されるべき炭化水素留分中の硫黄含有種の濃度変動は、方法の効率における降下を潜在的に生じさせ得、これは、向流抽出カラムを出る炭化水素相中の硫黄含有種の濃度増加に反映される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(図面の簡単な説明)
図1は、従来技術によるデバイスのバージョンを示す。予備処理は、単一の容器(2)において行われる。抽出カラム(4)は、予備処理を出る供給原料(3)および再生されたソーダ(6)を供給される。ソーダ再生のためのループは、酸化器(9)と、(8)において注入されかつ(14)において抜き出される空気を、(10)において注入されかつ(13)において抜き出される有機相から分離するための三相沈降タンク(12)とからなっており、三相沈降タンク(12)の目的は、酸化器において形成されたジスルフィドを抽出することにある。
【0013】
再生されたソーダは、(6)を介して抽出カラムに再注入される。
【0014】
図2は、2段階:バッチ様式での第1段階(2)およびピストンタイプの連続的な並流反応器における第2段階(16)で予備処理が行われる本発明のバージョンを示す。新鮮なソーダが、ポイント(15)において反応器(16)に供給される。ソーダと炭化水素相の混合物は、沈降タンク(17)において分離され、次いで、炭化水素相は、抽出カラム(4)の底部において注入される。ソーダ再生のためのループは、図1におけるものと同一である。
【0015】
予備処理ソーダの部分は、ライン(18)を介して抽出される。
【0016】
図3は、バッチ様式でのソーダによる予備処理のために単一の反応器を用いる従来技術による方法における、予備処理ソーダの使用の全体的継続期間の間に抽出カラムを出る炭化水素相中のチオールの形態の硫黄(太線)、COSの形態の硫黄(点線)およびHSの形態の硫黄(細線)の含有率における変化の例を示す。
【0017】
図4は、本発明による方法の予備処理システムのバッチ段階における、ソーダの使用の全体的な継続期間の間に抽出カラムを出る炭化水素相中のチオールの形態の硫黄(太線)、COSの形態の硫黄(点線)およびHSの形態の硫黄(細線)の含有率における変化の例を示す。
【0018】
(発明の概要)
本発明による方法は、予備処理段階からの流出物中の硫黄含有化合物の含有率における変動に関連する抽出方法の性能の問題を部分的に修正することを目的とする。本発明の目的は、従来技術に従って記載された予備処理におけるよりもより少ない硫黄含有化合物の変動を生じさせる予備処理を行いながら、その操作を改善することにある。
【0019】
本発明によると、炭化水素供給原料の予備処理は、2段階:
− バッチ様式で行われる段階;体積は、従来技術による予備処理段階の体積の約半分である:および
− 連続的に行われる第2の段階
で行われる。
【0020】
本明細書において連続的段階と呼ばれる第2の予備処理段階は、精製されるべき炭化水素相とソーダ相との間で、並流の上昇流または下降流で供給される反応器を含む。2つの相は、反応器内で接触し、これにより、炭化水素中に存在する種々の酸性の化学種の抽出を行うことが可能になる。
【0021】
ここで用いられるソーダは、5〜21%の新鮮なソーダ溶液であり得るが、抽出方法の主要なループから回収された、例えば、ソーダの組成を補給するために行われるパージの間に回収された使用済みのソーダ溶液であってもよい。
【0022】
予想外の効果のために、第1のバッチ反応器と、それに続く、ピストン流で作動する第2の連続的反応器とを含む予備処理による解決方法は、従来技術による、等価な全体サイズを有し同一量のソーダを消費する単一のバッチ反応器より良好な性能を与えることが見出された。
【0023】
本発明はまた、同一の全体サイズであり、同一レベルのソーダ消費でもある連続的な反応器より良好な性能を提供する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によると、連続的な段階は、ピストンタイプの反応器において行われる。反応器のピストン特性は、優先的な方向に相が移され、2相の組成が反応器の入口から反応器出口にかけて徐々に変わり、種々の反応種の間に軸混合がないことを意味する。
【0025】
当業者は、著書「Genie de la reaction chimique」[化学反応のエンジニアリング](Publ. Tec&doc)に精通しており、これは、ピストン反応器の概念を説明している。反応器のピストン特性は、以下に定義されるペクレ数と古典的に関連している。
【0026】
【数1】
【0027】
式中、Uは、反応器中を通過する炭化水素の平均通過速度であり、Lは、反応器の長さであり、Daxは、反応器中の炭化水素の軸分散の係数である。ペクレ数の通常の範囲は、1<Pe<50である。
【0028】
好ましくは、本発明との関連でペクレ範囲は、3<Pe<10であり、一層より好ましくは3<Pe<5である。
【0029】
線速度Uは、反応器断面にわたる炭化水素相の体積流量の比率として定義される。
【0030】
炭化水素相の軸分散の係数Daxは、例えば、比色分析のタイプの追跡による測定によって定義され、これは、反応器入口に着色部分を導入し、反応器出口におけるその変化をモニタリングすることからなる。出口におけるシグナルは、多少広がっていても、当業者に周知である方法による軸分散の係数と相関している。
【0031】
好ましくは、ピストン反応器は、スタティックミキサタイプのパッキングで満たされることになる。複数の工業的供給者は、スタティックミキサの幾何学的形状を提供する。Sulzer Chemtechによって販売されるSMX(登録商標)タイプまたはKenics社によって市場売買されるKMX(登録商標)モデルのスタティックコンタクタの形状が特に言及されてもよいが、排他的でない(P.A. Schweitzer, Handbook of separation techniques for chemical engineers, 3rd Ed., McGraw-Hill, NY, 1997; Theron, F.; Le Sauze, N.; Ricard, A., Turbulent liquid-liquid dispersion in Sulzer SMX mixer, Industrial and Engineering Chemistry Research 49 (2010) 623-632; Mahuranthakam, C.M.R.; Pan, Q.; Rempel, G.L., Residence time distribution and liquid holdup in Kenics(R)KMX static mixer with hydrogenated nitrile butadiene rubber solution and hydrogen gas system, Chemical Engineering Science 64 (2009) 3320-3328)。
【0032】
好ましくは、連続的な向流の流れ中で炭化水素相をソーダと接触させることは、膜コンタクタによっても提供され得る(Gabelman, A.; Hwang, S.T., Hollow fiber membrane contactors, Journal of Membrane Science 169 (1999) 61-106)。膜コンタクタにおいて中空繊維タイプの膜の幾何学的形状が特に適しているのは、それが、非常にコンパクトな設計であり、接触の独立性において2相の流通の独立した制御を提供するからである。
【0033】
本発明による方法の好ましい変形例によると、第2の連続的な予備処理反応器(16)において用いられるソーダは、抽出器からのソーダ再生のためのループから得られる。
【0034】
一層より好ましい別の変形例によると、第2の連続的な予備処理反応器(16)において用いられるソーダは、抽出器(4)のソーダ出口と酸化器(9)との間で取られる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(発明の詳細な説明)
本発明は、炭化水素中に存在する硫黄含有化合物を抽出する方法であって、主要な硫黄含有種がRSHで示されるチオール、例えば、メタンチオールCHSH、エタンチオールCSH、プロパンチオールCSHであり、および/または、硫化水素HSまたはカルボニルスルフィドCOS等の他の硫黄含有種も存在する場合における、方法に関する。
【0036】
図1は、従来技術による、硫黄含有種を抽出するために用いられる方法を例証する。炭化水素留分(1)は、予備処理容器(2)に入る。予備処理容器(2)は、予め、2〜10重量%の濃度に希釈されたソーダ溶液で満たされている。処理された炭化水素供給原料は、パイプライン(3)を介して予備処理を出る。容器(2)中のソーダ溶液は、3〜30日の操作サイクルに従って、および、ソーダの使用期間に応じて、再び新しくさせられ、予備処理は、チオールを含む可変量の硫黄含有種を抽出する。炭化水素は、次いで、向流抽出カラム(4)に、カラムの底部において入る。
【0037】
抽出カラム(4)はまた、再生ソーダ溶液(6)をカラムの頂部において供給される。ソーダ濃度は、その時、15〜25%である。カラム(4)の機能は、炭化水素中に依然として存在するチオールの大部分を抽出することにある。こうして精製された炭化水素は、パイプライン(5)を介してカラム(4)を出る。パイプライン(7)を介してカラム(4)を出るソーダは、使用済みのソーダと呼ばれ、このものは、ナトリウムチオラートのタイプRS−Naの種を豊富に含み、これは、抽出され、分離され、かつ、ナトリウムイオンNaと再結合されたチオールに相当する。
【0038】
流れ(7)は、酸化反応器に入り、この酸化反応器は、パイプライン(8)を介して空気も供給される。空気およびソーダ溶液中に溶解した触媒の存在は、ナトリウムチオラートの、RSSRで示されるジスルフィドへの酸化の反応を促進させる。用いられる触媒は、コバルトフタロシアニン族のものであり得る。パイプライン(11)を介して反応器を出る多相性媒体は、分離容器(12)に送られる。
【0039】
ガソリン留分または他の炭化水素の流れ(10)が、容器(12)の上流で、例えば、パイプライン(11)においてソーダ溶液に注入される。それはまた、パイプライン(7)に注入され得る。この流れは、ジスルフィドを抽出し、容器(12)においてデカントすることによって、硫黄含有種を非常に豊富に含む炭化水素留分(13)を回収することを可能にする。
【0040】
使い尽くされた空気は、パイプライン(14)を介して沈降タンク(12)を出る。こうして再生されたソーダは、パイプライン(6)を介して抽出カラム(4)の頂部に戻される。
【0041】
時には、分離容器がライン(6)中に含まれ、炭化水素留分とともにジスルフィドの抽出が最適とされる。この場合、ジスルフィドを抽出するために用いられる炭化水素留分(10)は、ライン(6)に注入され、それは、次いで、さらなる分離容器においてデカントされる。さらなる容器を出る炭化水素留分は、ライン(7)に送られる。
【0042】
図2は、本発明による方法のバージョンを例証する。第2の予備処理段階が、方法のフローシートに加えられた。この第2の段階は、連続的な反応器(16)からなり、この反応器(16)は、バッチ様式での予備処理の第1の段階(2)を出る炭化水素を供給される。反応器(16)はまた、ソーダ相(15)を供給され、ソーダ相(15)は、2つの段階の間で炭化水素を運ぶパイプラインに注入されるか、または、反応器に直接的に注入される。
【0043】
注入されたソーダは、水中6〜21重量%の濃度にある。
【0044】
好ましくは、導入されたソーダは、6〜15%のソーダ濃度を有し、一層より好ましくは、6〜10%の範囲である。
【0045】
好ましくは、第2のピストン反応器の体積は、第1のバッチ反応器の体積の0.1〜3倍であり、より好ましくは0.5〜1.5倍である。
【0046】
ソーダ流量は、炭化水素流量に対して低く、炭化水素供給原料とソーダとの間の体積流量の比は、10〜100000であり、好ましくは500〜3000である。
【0047】
2つの相である、ソーダと炭化水素は、反応器中を並流で流通する。
【0048】
ピストン特性は、反応器において、種々の方法で、例えば、反応器体積を、バッフルによって分けられた別々の区画に分割することによって提供され得る。
【0049】
反応器(16)を出る2相の混合物は、ソーダ相(18)を炭化水素相(3)から分離するためのデカンタ(17)に送られ、炭化水素相(3)は、向流抽出カラム(4)に運ばれる。ソーダ(18)は、前記反応器の長さのほぼ中央に置かれる第2のピストン反応器のポイントで再導入され得る。
【0050】
方法の変形例は、ソーダ流(18)の一部を連続的反応器(16)の入口に再循環させて、前記反応器中のソーダ流量を増加させることからなる。
【0051】
第2の連続的予備処理反応器(16)において用いられるソーダは、抽出器からのソーダ再生のためのループから、好ましくは、抽出器(4)からのソーダ出口と酸化器(9)との間に位置するポイント(7)で得られ得る。
【0052】
(実施例)
本発明は、以下の実施例を読んで、より良く理解されることになる。
【0053】
(実施例1(従来技術に合致する))
LPGタイプである、2、3および4個の炭素原子を有するアルカンおよびアルケンの混合物の炭化水素相中に存在するチオールの抽出のための装置を考慮する。
【0054】
方法は、全ての点において、図1において記載された方法と類似している。
【0055】
予備処理は、12mの予備洗浄容器を含み、6重量%のソーダ溶液により2/3まで満たされ、9日毎に新しくされた。
【0056】
処理されるべき炭化水素供給原料は、30m/hの流量を有し、146ppm(S重量による)のメチルチオール、10ppm(S重量による)のCOSおよび7ppm(S重量による)のHSを含有する。
【0057】
時間の関数としての予備処理出口における炭化水素の組成がシミュレーションによって得られる。RSH、COSおよびHSの含有率は、図3において示される。RSHの含有率は、ソーダの耐用期間の開始と終了との間で、この場合、9日の期間にわたって、相当変動しており、これは、方法の良好な全体的操作に有害である。
【0058】
対照的に、約60%のCOSおよび20%のHSが、予備処理において抽出されることが観察され、このことは、抽出器におけるソーダの消費を最小にすることを可能にする。
【0059】
再度シミュレーションによって、本発明者らは、方法を出る精製LPG中の含有率における平均の硫黄含有率を見出し、これは、2.05ppm(S重量による)である。
【0060】
(実施例2(従来技術に合致する))
この実施例は、従来技術に合致する連続的なバージョンを構成する。それは、並流反応器において、バッチ様式での予備処理の段階を連続的な段階と置換するという問題である。
【0061】
予備処理反応器の体積は、実施例1において用いられた容器と同一であり、すなわち、12mである。
【0062】
ソーダの量(これも変更されていない)は、ここで、反応器に連続的に、一定の流量の注入および抜出しをもって導入される。
【0063】
注入される6%ソーダの流量は、3.7×10−2/hである。予備処理反応器におけるこの実施の利点は、明らかに、安定状態の条件下での操作である。すなわち、予備処理出口における濃度を安定化させることである。この意味において、この解決方法が適切であるのは、それが、方法を出る精製LPG中の平均硫黄含有率における著しい減少を可能にするからである。シミュレーションによって、本発明者らは、精製LPG中の平均硫黄含有率1.27ppm(S重量による)を見出した。
【0064】
しかしながら、この解決方法は、予備処理の効率に関して問題を提示し、これは、シミュレーションによって得られた、予備処理出口における炭化水素相中のCOS含有率によって例証される通りである。実際に、この操作様式は、COS化合物の加水分解に関して低い効率のものであることが分かる。これは、入ってくるCOS化合物の50重量%のみが、この段階において転化されるからであり、すなわち、バッチ法の予備処理を用いる場合(実施例1)より明らかに少ない。
【0065】
これにより、抽出器におけるソーダの増加した消費がもたらされる。
【0066】
連続的に操作する単一の予備処理反応器によるこの解決方法は、したがって、バッチ様式における予備処理のための有効な置換ではない。
【0067】
(実施例3(本発明に合致する))
同一の方法が、ここで、さらなる予備処理段階を含み、これは、図2において記載されたような、ピストン流を用いる連続的な並流反応器のタイプのものであり、バッチ様式での予備処理のための反応器の下流に配置される。
【0068】
バッチ反応器の体積は、6mであり、連続的反応器の体積は、6mであり、その結果、全体の予備処理体積は、実施例1と同一である。
【0069】
バッチ予備処理のための反応器は、2/3まで、6%(重量)のソーダで満たされ、4.5日ごとに再び新しくされる。
【0070】
供給原料の組成およびその流量は、実施例1に対して変更されていない。
【0071】
連続的なピストン反応器は、18%(重量)にあるソーダを2L/hの流量で供給され、その結果、2つの予備処理段階におけるソーダの全量は、実施例1における単一の予備処理段階の量と同一である。
【0072】
シミュレーションによって得られる、予備処理を出る炭化水素相の組成は、図4において、時間の関数として示される。
【0073】
それは、従来技術に対して低減した大きさで変動している。
【0074】
これは、抽出器におけるソーダ消費を最小にすることを可能にしつつ、抽出器においてRSH化合物の非常に効率的な抽出が達成される。実際に、シミュレーションによって、本発明者らは、方法を出る炭化水素中の平均的な硫黄含有率を得た。すなわち、抽出カラムの頂部において、1.23ppm(S重量による)が測定された。
【0075】
これは、従来技術に従う方法(実施例1)に対して、出口おける硫黄のレベルにおいて40%の低減を示している。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1図1は、従来技術による装置のバージョンを示す。
図2図2は、2段階:バッチ様式での第1段階(2)およびピストンタイプの連続的な並流反応器における第2段階(16)で予備処理が行われる本発明のバージョンを示す。
図3図3は、バッチ様式でのソーダによる予備処理のために単一の反応器を用いた従来技術による方法における、予備処理ソーダの使用の全体的継続期間の間に抽出カラムを出る炭化水素相中のチオールの形態の硫黄(太線)、COSの形態の硫黄(点線)およびHSの形態の硫黄(細線)の含有率における変化の例を示す。
図4図4は、本発明による方法の予備処理システムのバッチ段階における、ソーダの使用の全体的な継続期間の間に抽出カラムを出る炭化水素相中のチオールの形態の硫黄(太線)、COSの形態の硫黄(点線)およびHSの形態の硫黄(細線)の含有率における変化の例を示す。
図1
図2
図3
図4