【発明が解決しようとする課題】
【0009】
バッチ様式の予備処理操作は、完全に攪拌されるタイプの反応器における連続的操作に対してその性能を最大にするという利点を提供する。したがって、COSおよびH
2Sの含有率は、平均して、予備処理段階によって相当低減させられる。対照的に、チオールタイプの主要種を含む予備処理を出る硫黄含有種の濃度は、予備処理容器において用いられたソーダ溶液の使用期間に応じて変動する。全硫黄の変動は、それ故に、例えば、向流抽出カラムの入口において一様から二様にわたって変わり得る。
【0010】
濃度変動により複数の問題が引き起こされるのは、チオールの抽出の段階、ナトリウムチオラートの酸化の段階およびソーダの再生の段階が連続的に操作されるからである。それ故に、以下の複数の問題が発生し得る。
1) 予備処理のために用いられたソーダがその耐用期間の終末にある場合、大量のナトリウムチオラートの先行蓄積および過度に低いソーダ濃度と関連するチオールの塩析のために、予備処理を出るチオールの量が予備処理の入口におけるのと同等に高いか、さらには、より高くあり得る。それ故に、高い全硫黄濃度のうねりが、向流抽出の入口において存在しているかもしれず、これは、ループにおけるソーダの流量が最高濃度を処理するために十分でないならば、カラムにおける液−液抽出の効率の喪失を潜在的に生じさせ得る。さらに、炭化水素中のチオールのうねりにより、その後に、抽出カラムの底部においてソーダ中のナトリウムチオラートのうねりが生じる。酸化器中の過度に高い濃度のナトリウムチオラートにより、ジスルフィドへの部分的な転化がもたらされ得、したがって、再生されたソーダへのナトリウムチオラートの多量の戻りが、抽出カラムの頂部においてもたらされ得る。これは、抽出カラムの性能をも低減させ得る。
2) 逆に、予備処理サイクルの開始時に、向流抽出カラムに入る炭化水素は、硫黄をほとんど含有しておらず、したがって、抽出カラムの底部におけるソーダ中のナトリウムチオラートの濃度は低い。酸化器において、空気の量は、その時、過剰にある。ソーダ中に溶解した酸素は、残留ナトリウムチオラートによって消費されず、再生されたソーダと共に抽出カラムに直接的に戻される。再生されたソーダ中に存在する酸素は、その時、抽出器内でチオールと反応し、ジスルフィドを生じさせることができる。これらのジスルフィドは、その時、抽出カラムにおいて処理されるべき炭化水素相によって直接的に抽出され、結果として、方法の全体的な性能は低減させられる。
【0011】
それ故に、処理されるべき炭化水素留分中の硫黄含有種の濃度変動は、方法の効率における降下を潜在的に生じさせ得、これは、向流抽出カラムを出る炭化水素相中の硫黄含有種の濃度増加に反映される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(図面の簡単な説明)
図1は、従来技術によるデバイスのバージョンを示す。予備処理は、単一の容器(2)において行われる。抽出カラム(4)は、予備処理を出る供給原料(3)および再生されたソーダ(6)を供給される。ソーダ再生のためのループは、酸化器(9)と、(8)において注入されかつ(14)において抜き出される空気を、(10)において注入されかつ(13)において抜き出される有機相から分離するための三相沈降タンク(12)とからなっており、三相沈降タンク(12)の目的は、酸化器において形成されたジスルフィドを抽出することにある。
【0013】
再生されたソーダは、(6)を介して抽出カラムに再注入される。
【0014】
図2は、2段階:バッチ様式での第1段階(2)およびピストンタイプの連続的な並流反応器における第2段階(16)で予備処理が行われる本発明のバージョンを示す。新鮮なソーダが、ポイント(15)において反応器(16)に供給される。ソーダと炭化水素相の混合物は、沈降タンク(17)において分離され、次いで、炭化水素相は、抽出カラム(4)の底部において注入される。ソーダ再生のためのループは、
図1におけるものと同一である。
【0015】
予備処理ソーダの部分は、ライン(18)を介して抽出される。
【0016】
図3は、バッチ様式でのソーダによる予備処理のために単一の反応器を用いる従来技術による方法における、予備処理ソーダの使用の全体的継続期間の間に抽出カラムを出る炭化水素相中のチオールの形態の硫黄(太線)、COSの形態の硫黄(点線)およびH
2Sの形態の硫黄(細線)の含有率における変化の例を示す。
【0017】
図4は、本発明による方法の予備処理システムのバッチ段階における、ソーダの使用の全体的な継続期間の間に抽出カラムを出る炭化水素相中のチオールの形態の硫黄(太線)、COSの形態の硫黄(点線)およびH
2Sの形態の硫黄(細線)の含有率における変化の例を示す。
【0018】
(発明の概要)
本発明による方法は、予備処理段階からの流出物中の硫黄含有化合物の含有率における変動に関連する抽出方法の性能の問題を部分的に修正することを目的とする。本発明の目的は、従来技術に従って記載された予備処理におけるよりもより少ない硫黄含有化合物の変動を生じさせる予備処理を行いながら、その操作を改善することにある。
【0019】
本発明によると、炭化水素供給原料の予備処理は、2段階:
− バッチ様式で行われる段階;体積は、従来技術による予備処理段階の体積の約半分である:および
− 連続的に行われる第2の段階
で行われる。
【0020】
本明細書において連続的段階と呼ばれる第2の予備処理段階は、精製されるべき炭化水素相とソーダ相との間で、並流の上昇流または下降流で供給される反応器を含む。2つの相は、反応器内で接触し、これにより、炭化水素中に存在する種々の酸性の化学種の抽出を行うことが可能になる。
【0021】
ここで用いられるソーダは、5〜21%の新鮮なソーダ溶液であり得るが、抽出方法の主要なループから回収された、例えば、ソーダの組成を補給するために行われるパージの間に回収された使用済みのソーダ溶液であってもよい。
【0022】
予想外の効果のために、第1のバッチ反応器と、それに続く、ピストン流で作動する第2の連続的反応器とを含む予備処理による解決方法は、従来技術による、等価な全体サイズを有し同一量のソーダを消費する単一のバッチ反応器より良好な性能を与えることが見出された。
【0023】
本発明はまた、同一の全体サイズであり、同一レベルのソーダ消費でもある連続的な反応器より良好な性能を提供する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によると、連続的な段階は、ピストンタイプの反応器において行われる。反応器のピストン特性は、優先的な方向に相が移され、2相の組成が反応器の入口から反応器出口にかけて徐々に変わり、種々の反応種の間に軸混合がないことを意味する。
【0025】
当業者は、著書「Genie de la reaction chimique」[化学反応のエンジニアリング](Publ. Tec&doc)に精通しており、これは、ピストン反応器の概念を説明している。反応器のピストン特性は、以下に定義されるペクレ数と古典的に関連している。
【0026】
【数1】
【0027】
式中、Uは、反応器中を通過する炭化水素の平均通過速度であり、Lは、反応器の長さであり、D
axは、反応器中の炭化水素の軸分散の係数である。ペクレ数の通常の範囲は、1<Pe<50である。
【0028】
好ましくは、本発明との関連でペクレ範囲は、3<Pe<10であり、一層より好ましくは3<Pe<5である。
【0029】
線速度Uは、反応器断面にわたる炭化水素相の体積流量の比率として定義される。
【0030】
炭化水素相の軸分散の係数D
axは、例えば、比色分析のタイプの追跡による測定によって定義され、これは、反応器入口に着色部分を導入し、反応器出口におけるその変化をモニタリングすることからなる。出口におけるシグナルは、多少広がっていても、当業者に周知である方法による軸分散の係数と相関している。
【0031】
好ましくは、ピストン反応器は、スタティックミキサタイプのパッキングで満たされることになる。複数の工業的供給者は、スタティックミキサの幾何学的形状を提供する。Sulzer Chemtechによって販売されるSMX(登録商標)タイプまたはKenics社によって市場売買されるKMX(登録商標)モデルのスタティックコンタクタの形状が特に言及されてもよいが、排他的でない(P.A. Schweitzer, Handbook of separation techniques for chemical engineers, 3rd Ed., McGraw-Hill, NY, 1997; Theron, F.; Le Sauze, N.; Ricard, A., Turbulent liquid-liquid dispersion in Sulzer SMX mixer, Industrial and Engineering Chemistry Research 49 (2010) 623-632; Mahuranthakam, C.M.R.; Pan, Q.; Rempel, G.L., Residence time distribution and liquid holdup in Kenics(R)KMX static mixer with hydrogenated nitrile butadiene rubber solution and hydrogen gas system, Chemical Engineering Science 64 (2009) 3320-3328)。
【0032】
好ましくは、連続的な向流の流れ中で炭化水素相をソーダと接触させることは、膜コンタクタによっても提供され得る(Gabelman, A.; Hwang, S.T., Hollow fiber membrane contactors, Journal of Membrane Science 169 (1999) 61-106)。膜コンタクタにおいて中空繊維タイプの膜の幾何学的形状が特に適しているのは、それが、非常にコンパクトな設計であり、接触の独立性において2相の流通の独立した制御を提供するからである。
【0033】
本発明による方法の好ましい変形例によると、第2の連続的な予備処理反応器(16)において用いられるソーダは、抽出器からのソーダ再生のためのループから得られる。
【0034】
一層より好ましい別の変形例によると、第2の連続的な予備処理反応器(16)において用いられるソーダは、抽出器(4)のソーダ出口と酸化器(9)との間で取られる。