(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5872724
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】水中の仮締切構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 19/04 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
E02D19/04
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-119941(P2015-119941)
(22)【出願日】2015年6月15日
【審査請求日】2015年6月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595065150
【氏名又は名称】株式会社日本海洋サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100180541
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 只一郎
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一郎
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−207314(JP,A)
【文献】
特許第4625532(JP,B1)
【文献】
特開2015−052214(JP,A)
【文献】
特開2006−125055(JP,A)
【文献】
特開平07−011862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 19/00−19/22、23/00
E01D 19/00−22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中既設構造物の周囲を囲繞する全体形状を複数枚に分割した湾曲形状や直線状の平面形状を成し、下端面には高圧水の噴射口を多数備えたノズル体が取り付けられている最下段の仮締切用ライナープレートをリング状に連結し、該最下段の仮締切用ライナープレートの上端面に市販の仮締切用ライナープレートをH型鋼を介して任意の段数連結し、水面上から露呈する最上段に位置する市販の仮締切用ライナープレートの上端面数カ所に人力で設置できる打撃器又は振動機を取り付け、前記ノズル体に備え付けた多数の高圧水噴射口から高圧水を噴射して水中地盤の堆積土砂を吹き飛ばすか軟弱化させ、その状態で前記打撃器又は振動機で振動を与えながらリング状に連結した複数段の仮締切用ライナープレートの全体を水中地盤内へ打ち込み、最上段の仮締切用ライナープレートが水面へ沈まないうちに、打撃器又は振動機を一旦取り外し、H型鋼を介して仮締切用ライナープレートを継ぎ足し、さらに継ぎ足した当該ライナープレートの上端に再度打撃器又は振動機を取り付けて高圧水噴射口から高圧水を噴射して水中地盤の堆積土砂を吹き飛ばすか軟弱化させ、その状態で前記打撃器又は振動機で振動を与えながらリング状に連結した複数段の仮締切用ライナープレートの全体を水中地盤内へ打ち込み、これらの作業を繰り返して仮締切用ライナープレートを目的とする深さまで打ち込み、これらの作業を水中の環境下で行った後、複数段の仮締切用ライナープレートの内部の堆積土砂をエジェクター方式のジェットポンプを利用して排出し、水中既設構造物の周囲にドライな作業空間を形成するようにし、全ての作業を人力による作業で行うようにしたことを特徴とする水中の仮締切構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚やケーソン等の水中構築物の調査、補修・耐震補強工事を施す場合等において、市販品であるライナープレート等を用いて人力での作業により必要最小限の土留め工事を行い、大型建設機械の省略、工期の短縮化、掘削排除する土砂の量の大幅な削減並びに費用の大幅な削減を実現することのできる
水中の仮締切構造の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、巨大地震に対する備えとしてあらゆる構築物に対する耐震補強工事が施されている。例えば、水中の橋脚への耐震補強工事は、橋脚部分に対して鉄筋コンクリートの巻き立て、鋼板の巻き立て、炭素繊維やアラミド繊維の巻き立て等が行われており、これらの工事はすべて乾式(ドライな作業空間内)で行われる。
【0003】
ドライな作業空間を形成する方法として、最もオーソドックスな施工方法は、先ず、作業船のクレーンにクラムシェル又はバックホーを取り付けて水中における水中地盤を掘削排除し、地中に埋もれていた橋脚の地中基礎構造物(フーチング)を露出させている。その後、フーチング上の橋脚の周囲をライナープレートで囲繞し、ライナープレート内の水を排除してドライな作業空間を形成している。そして、このドライ作業空間内で足場を構築しながら前記鉄筋コンクリートの巻き立てや鋼板の巻き立て、炭素繊維又はアラミド繊維の巻き立て等の耐震補強工事を行っている。
【0004】
ところが、この方法では水中地盤を掘削排除する場合に、崩れてこないように、広範囲に大量の水中地盤を排除しなければならず、工期が長期化し、また排除した土砂を一時的に保管しておくための台船の数が多くなるという欠点があった。しかも、耐震補強工事が完了した後は、排除した土砂を埋め戻すことが必要であり、埋め戻す土砂の量も膨大となり、全体の工期が更に長期化し、費用が大幅に増大する原因となっていた。更に、水中地盤の掘削排除は、クレーンを備えた作業船を準備する必要があり、大型の設備が必要であった。この大型の設備は、更なるコストの増大をもたらすものであった。
【0005】
このような問題を解決する方法の一つとして、特許文献1に示す技術がある。この特許文献1に示す技術は、バックホー台船等により橋脚のフーチングの上面が露出するまで床掘りを行ない、このフーチングの上面に仮締切構造を構築するものである。仮締切構造の構築は、床掘りで露呈したフーチングの上面に穿孔してアンカー筋を植設している。そして、複数に分割したH型鋼等の補強リングを橋脚の周囲に環状に組立て、その全体を吊り降ろして、前記フーチン上に植設したアンカー筋に水中溶接等を行なって固着している。
【0006】
次に、補強リングの上面に締切体の一段目を設置すると共に、環状に形成した補強リング外周側のフーチングの上面に土のう等を積上げて外型枠を設置している。そして、外型枠の外周側を掘削除去した水中地盤で埋め戻している。然る後に、土のう等の外型枠内方のフーチングの上面に水中コンクリートを打設し、一段目の締切体の下端部とフーチングの上面との間の間隙を水中コンクリートとにより封鎖している。次に、一段目の締切体の上位に二段目以降の各締切体を順次組み上げて、橋脚を囲繞するように組立て、仮締切構造としている。
【0007】
最後に、締切体で囲った内部の水を排水して締切体の内側にドライな作業空間を構築している。このドライ作業空間で、水中既設構造物である橋脚等の調査・補修・補強工事等を行うものである。
【0008】
また従来の別な仮締切構造として特許文献2に示す技術がある。この特許文献2の仮締切構造は、水底地盤の天端から橋脚等のフーチング部の上端よりも更に深い所まで補強リング体を圧入している。補強リング体は、フーチング部の外周を囲繞するものである。補強リング体は、水底地盤の天端を圧入開始点とし、更にフーチング部の上端より下方の所定深さまで圧入されるため、深さ方向に複数段連結して圧入される。最下段の補強リング体は下端に圧入刃を備えている。
【0009】
補強リング体を水底地盤中に圧入するための圧入反力手段として、水底地盤中に設置されたグラウンドアンカーや橋脚に固定したリング体等を利用するようにしている。補強リング体の水底地盤中への圧入は、補強リング体上に圧入桁を設置し、圧入桁上に圧入ジャッキを設置し、圧入ジャッキと圧入反力手段としてのグラウンドアンカーを連結して行っている。
【0010】
次に、補強リング体の上端から水面上まで伸びるように、複数段のリング状ライナープレートを設置している。補強リング体とリング状ライナープレートにより構成される仮締切り構造で橋脚の外周が囲繞された後は、水底地盤の天端からフーチング部の上端までを掘削する。掘削は仮締切り構造で囲繞された空間内で行われるため、河川等を汚濁することがなく、浚渫・掘削量も少なくて済む。
最後に、補強リング体とフーチング部の上端との間に止水コンクリート等を打設し、補強リング体とリング状ライナープレートからなる仮締切り構造で囲繞される作業空間を止水し、内部の水を汲み出し、ドライな作業空間を形成している。このドライな作業空間内で、橋脚等の調査・補修・補強工事等を行うのは、前記特許文献1の場合と同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−019449号公報
【特許文献2】特開2005−264500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、特許文献1に記載された技術では、ドライな作業空間を形成するための仮締切構造の構築工程が多くなり、依然として工期が長期化するという問題があった。仮締切構造の構築工程は、台船のクラムシェルやバックホー等でフーチングを露呈させる床掘りを行う工程と、フーチング上にアンカー筋を植設する工程と、補強リングを橋脚の外周で環状に組み立てて、これをアンカー筋に溶接する工程と、補強リング上に仮締切体を設置する工程と、補強リング体の外周側に土のう等を積み上げて外型枠を設置する工程と、外型枠の更に外周側を埋め戻す工程と、補強リングとフーチングとの間に水中コンクリートを打設して止水を行う工程と、水面上まで締切体を増設する工程と、締切体の内方空間内の排水を行う工程との少なくとも九つの行程が必要であった。
【0013】
しかも、ドライな作業空間内で橋脚等の調査、補修・補強工事等を行った後は、仮締切構造を撤去しなければならないが、仮締切体はボルト連結を外すだけで行えるものの、補強リングは水中コンクリートでフーチングと一体になっているので、橋脚等の全周囲の補強リングを溶接で溶断するか、水中コンクリートをハツリ、補強リングをアンカー筋から切断して取り出す等の大掛かりな撤去作業が必要となり、工期が長期化する原因になっていた。
【0014】
また特許文献2に記載された技術では、橋脚等の周囲に環状に形成した補強リング体の上方に圧入桁を設置し、更に圧入桁の上に油圧ジャッキを設置し、この油圧ジャッキを利用して補強リング体を水中地盤中へ圧入している。補強リング体の圧入のためには、油圧ジャッキの圧入反力手段を構築しなければならない。圧入反力手段は、水底地盤中にグランドアンカーを設置するか、橋脚の上部外周面にリング体を固定するものであるが、いずれにしてもフーチングの外周側で環状に形成した補強リング体を油圧ジャッキで水中地盤中へ圧入するものであるため、かなりの圧入反力に耐えうるものでなければならない。
【0015】
このような大きな力に耐えうる圧入反力を水底地盤中にグランドアンカーを設置して行う場合は、大きなコンクリートブロック体をかなりの深さまで埋設しなければならず、コンクリートブロック体の形成及び搬入、水底地盤の掘削、コンクリートブロック体の設置、埋め戻し、グランドアンカーと油圧ジャッキとの連結、圧入後の連結部分及び圧入桁の撤去作業が必要となり、仮締切体構築前の準備工程が大掛かりであった。
また橋脚の上部外周面に圧入反力手段としてのリング体を構築する場合であっても、橋脚に大掛かりな鉄骨を取り付けて行う必要があり、同様の問題があった。
【0016】
更に、補強リング体の圧入は、補強リング体の内側数カ所に支圧柱を固定し、これらの支圧柱の上端側を、橋脚外周側で交差して枠組み形成した水平方向の圧入桁に連結し、圧入桁を油圧ジャッキで押下げて圧入するものであり、支圧柱の補強リング体への取り付け、圧入桁の設置、これらの解体作業等の煩雑な作業を伴うものであり、工期が長期化する要因の一つとなっていた。
【0017】
そこで、本発明は従来の前記問題点に鑑みてこれを改良除去したものであって、水中地盤の中へ圧入されるライナープレートの下端側に高圧水の噴射ノズルを取り付けることで、水中地盤を吹き飛ばしながら圧入を容易にし、これにより手作業で行える打撃器でライナープレートに振動を与えながら圧入できるようにすることで、ドライな作業空間の構築を全て手作業で行える技術を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項1の手段は、水中既設構造物の周囲を囲繞する全体形状を複数枚に分割した湾曲形状や直線状の平面形状を成し、下端面には高圧水の噴射口を多数備えたノズル体が取り付けられている最下段の仮締切用ライナープレートをリング状に連結し、該最下段の仮締切用ライナープレートの上端面に市販の仮締切用ライナープレートをH型鋼を介して任意の段数連結し、
水面上から露呈する最上段に位置する市販の仮締切用ライナープレートの上端面数カ所に人力で設置できる打撃器又は振動機を取り付け、前記ノズル体に備え付けた多数の高圧水噴射口から高圧水を噴射して水中地盤の堆積土砂を吹き飛ばすか軟弱化させ、その状態で前記打撃器又は振動機で振動を与えながらリング状に連結した複数段の仮締切用ライナープレートの全体を水中地盤内へ打ち込み、
最上段の仮締切用ライナープレートが水面へ沈まないうちに、打撃器又は振動機を一旦取り外し、H型鋼を介して仮締切用ライナープレートを継ぎ足し、さらに継ぎ足した当該ライナープレートの上端に再度打撃器又は振動機を取り付けて高圧水噴射口から高圧水を噴射して水中地盤の堆積土砂を吹き飛ばすか軟弱化させ、その状態で前記打撃器又は振動機で振動を与えながらリング状に連結した複数段の仮締切用ライナープレートの全体を水中地盤内へ打ち込み、これらの作業を繰り返して仮締切用ライナープレートを目的とする深さまで打ち込み、これらの作業を水中の環境下で行った後、複数段の仮締切用ライナープレートの内部の堆積土砂をエジェクター方式のジェットポンプを利用して排出し、水中既設構造物の周囲にドライな作業空間を形成するようにし、全ての作業を人力による作業で行うようにしたことを特徴とする水中の仮締切構造の施工方法である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明
に用いる最下段の仮締切用ライナープレートは、下端面に高圧水の噴射口を多数備えたノズル体が取り付けられている。水中地盤への圧入に際し、多数の噴射口から高圧水を噴射することで、水中地盤の土砂を吹き飛ばしたり、柔らかくすることができる。このような状態の水中地盤であれば、人力で設置できる打撃器(エアーハンマー)等による僅かの振動を与えるだけで、ライナープレートはその自重により水中地盤へ容易に侵入することが可能である。
【0020】
また請求項
1の発明では、最下段のライナープレートを水中既設構造物の周囲にリング状に配設し、その上端面側に市販のライナープレートを取り付けている。二段目以降の市販のライナープレートの設置段数は、水深及び水中地盤の土質等により決定すればよい。そして、最上段のライナープレートの上端面複数箇所に、エアーハンマー等の打撃器を取り付けている。これらのライナープレートの水中地盤への圧入は、最下段のライナープレートの噴射口から高圧水を噴射して地盤の土砂を吹き飛ばしたり、柔らかくしながら、最上段の打撃器で振動を与えることで行う。つまり、水中地盤側を軟質状態にした上で、打撃器で振動を与え、これらのライナープレートの自重を利用して水中地盤中へ圧入するものである。
【0021】
更に、請求項
1の発明
では、
前記した工程を経て仮締切構造を構築した後、仮締切構造体の内側の水中地盤の排出及び排水を行い、ドライな作業空間を形成するようにしている。仮締切構造体内側の水中地盤の排出は、本出願人のジェットポンプを利用した技術を利用すれば、ドライな作業空間を形成するための全ての作業を、作業員の手作業で行うことが可能である。また仮締切構造の構築工程が極めて少なく、工期の短縮、大幅な工事費用の削減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る仮締切構造体を水中地盤へ打ち込む直前の状態を示す橋脚周囲の半断面正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るものであり、
図1の状態の平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る仮締切構造体の縦断側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るノズル体を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る仮締切構造体を水中地盤へ打ち込んだ状態を示す橋脚周囲の半断面正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る仮締切構造体の内側をドライ作業空間とした状態を示す橋脚周囲の半断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の仮締切用ライナープレート、仮締切構造並びに施工方法について、図面を参照して説明する。
図1は仮締切構造体1を水中地盤2へ打ち込む直前の状態を示す橋脚周囲の半断面正面図、
図2はその平面図、
図3は仮締切構造体1を示す縦断側面図、
図4はノズル体3の斜視図である。
図3に示すように、仮締切構造体1は、市販のライナープレート4を利用して形成する。市販のライナープレート4は、その四周側面に連結用のボルト孔を備えたフランジ5が設けられており、強度アップのために断面すると波板状に形成されている。この市販のライナープレート4は、各種形状及び寸法のものが製作されており、連結して組み立てたときに、円形状やトラック形状、矩形状を成したりするように、それぞれが分割されて円弧状や直線状等を呈している。図面に示す実施の形態では平面視したときに、全体がトラック形状をなすように構成されている。
【0024】
而して、最下段のライナープレート4の下端面フランジ5には、
図4に示すノズル体3がボルト6及びナット(図示せず)を利用して連結固定されている。ノズル体3は内部が高圧水のアキュームレータ室7として機能し、複数のノズル8(
図3参照)から一斉に高圧水を噴射することができるように構成されている。
また最下段のライナープレート4の上端面側には、H型鋼9を介して第二段目のライナープレート4がボルト及びナットを介して連結されている。
【0025】
更に、最下段のライナープレート4及びその上にH型鋼8を介して適宜段数連結されるライナープレート4の中央部分には、上下方向に貫通して最下段のノズル体3のアキュームレータ室7へ連通する高圧水ホース11が設けられている。ノズル体3と高圧水ホース11との連結はカプラー12等を用いればワンタッチ式で行え、現場での作業が容易である。この高圧水ホース11は、各段のライナープレート4ごとに、カプラーで接続するようにしてもよく、後述する打撃器(エアハンマー)又は振動機15と干渉しない範囲において連続したものであってもよい。
【0026】
更にまた、これらのライナープレート4,4の少なくとも外側面(
図3の左側面)又は内外側面には、スリッピングプレート10が溶接により取り付けられている。これにり、ノズル体3と、ライナープレート4とH型鋼9とが面一になり、水中地盤へ打ち込むときの抵抗の大幅な低減が得られる。なお、ライナー10は、必ずしも内外の両面に取り付ける必要は無く、どちらか一方の片面であってもよい。片面に取り付ける場合は、外側面の方が好ましい(
図3では外側面にのみ設けた場合を示している)。外側面に取り付けた場合は、このライナー10で止水性を保つことができるからである。また内側面は、各ライナープレート4どうしを連結するためのボルト及びナットの締結作業をするのに開放していた方が便利だからである。内側面にライナー10を取り付ける場合は、これらのライナープレート4どうしの締結作業や前述した高圧水ホース11のカプラー12どうしの連結作業が終了した後で行う必要がある。
【0027】
図面に示す水深は、
図1に示すように、二段のライナープレート4,4を連結固定したときに、下端は水中地盤2上にあり、上端は水面上へ飛び出しているので、先ず二段のライナープレート4,4で橋脚13のフーチング14の周囲を囲繞するように、トラック形状に連結固定する。そして、水面上から露呈するライナープレート4の上端面に、打撃器又は振動機15を所定間隔で配置する。
【0028】
次に、フーチング14の周囲を囲繞するようにトラック状に連結した二段組みのライナープレート4からなる仮締切構造体1を、水中地盤2の中へ打設する。その施工手順は、先ず、台船等に搭載した高圧ポンプ(ジェットポンプ)から高圧水ホース11を介して最下段のライナープレート4の下端面に取り付けたノズル体3へ高圧水を供給する。これにより、ノズル体3の複数の噴射口に取り付けたノズル8から高圧水がジェット噴流となって噴射される。この高圧水のジェット噴流により水中の地盤の堆積土砂が吹き飛ばされたり、柔らかくなる。
この状態で、最上段のライナープレート4の上端面に取り付けた打撃器(エアーハンマー)又は振動機15を駆動させると、その振動がトラック形状に連結固定された仮締切構造体1の全体に伝わり、高圧水で吹き飛ばされたり、柔らかくなった水中地盤2の中へ仮締切構造体1の全体が自重のみで沈み込んでいくようになる。
なお、このとき外側面にのみスリッピングプレート10を設置した場合は、内側面側においては、柔らかくなった地盤をエジェクター方式のジェットポンプ等を利用して排出すればH型鋼9による打ち込み時の抵抗減を図ることが可能である。
【0029】
ある程度、水中の地盤中へ沈下したら、最上段のライナープレート4の上端面に設置した打撃器又は振動機15を一旦取り外し、ライナープレート4の上にH型鋼9を介してライナープレート4を更に連結して継ぎ足す。
図5は、二段のライナープレート4を新たに継ぎ足して合計四段にした場合を示している。この場合、水中地盤2の土質及び水深等を考慮し、水中地盤2中へ沈み込ませる深さはいくらぐらいに設定するか、水面上から飛び出すようにするにはどれだけの水中での寸法が必要か等に応じてライナープレート4の設置段数を決定すればよい。水中地盤2の土質が軟弱であれば、深く打ち込まなければ、仮締切構造体1の内側に水が浸みだす虞れがあるからである。最上段のライナープレート4の上端面は水面よりも上方に飛び出すようにしなければ、水がライナープレート4の上端から流れ落ちて、ドライな作業空間の形成はできないからである。
【0030】
なお、
図5に示す、実施例では、高圧水ホース11は、三段目のライナープレート4から内側へ導出しており、三段目及び四段目のライナープレート4の内部を貫通して配置する必要がない。これにより、水中での現場作業員の負担を軽減することが可能である。
【0031】
このようにして二段目の途中までを水中地盤2の中へ打ち込み、最上段の四段のライナープレート4の上端面が水面上から飛び出すようになったら仮締切構造体1の打設作業を終了する。高圧水ホース11は、途中からカプラー接続を取り外して仮締切構造体1の外側へ搬出し、また最上段のライナープレート4の上端面に設置した打撃器15を取り外すせばよい。
【0032】
然る後は、
図6に示すように、仮締切構造体1で囲まれた内部の水をポンプで排水し、また仮締切構造体1の内部の水中地盤の堆積土砂等を排出する。土砂等の排出は、クラムシェルやバックホー、又はエジェクター方式のジェットポンプ等を利用して行うことが可能である。本出願人は、エジェクター方式のジェットポンプを利用して水中地盤を排除することを得意としている。
【0033】
エジェクター方式のジェットポンプは、直角方向に向きを変えた管路の湾曲部分において、下流側へ向けて駆動高圧水を噴射する高圧水供給管路を設け、その途中に絞りを設けて高圧水をジェット噴射できるようにし、前記絞りに臨んで空気吸入管路を設け、ジェット噴射水による負圧により空気を吸引させ、気泡を混ぜて搬送するようにしたものである。当初から気泡を均等に混入させて搬送する方式であるので、キャビテーションを起こすということがなく、また目詰まりの発生もない。高圧水のジェット噴射により、管路の吸入口側に負圧が発生し、砂、砂利、小石等の砂利類の搬送が可能である。搬送できる砂利類の大きさは、ポンプ口径(管路の直径)の90%のものまで可能であり、12cmの口径のものでは、10.8cm程度の大きさの小石をも搬送することが可能である。
図6は、仮締切構造体1で囲まれた領域内の水中地盤を、フーチング14の上端面の高さまで排除した状態を示している。
【0034】
なお、フーチング14の外周面と仮締切構造体1の内周面との間の水中地盤2を、フーチング14の上端面の高さよりも低くすれば、水中地盤2から湧き出した水がこの部分に溜まるので、排水ポンプでの汲み出しが容易であり、多少湧き水があったとしても、常にドライな作業空間を確保することが可能である。
【0035】
図6に示すように、フーチング14の上端面が露出するようになるまで、水中地盤2の排出と排水とが行われた後は、このドライな作業空間内において、橋脚13の周囲に足場を組み、乾式にて橋脚13の調査、補修・耐震補強工事等を行えばよい。
【0036】
このように、本発明によれば高圧水の噴射による水中地盤2の吹き飛ばし及び軟弱化と、ライナープレート上端面の打撃器又は振動機15による振動とにより、仮締切構造体1の自重を利用して当該仮締切構造体1をフーチング14周囲の水中地盤2へ打ち込み、仮締切構造体1内部にドライな作業空間を形成するようにしたから、排除する土砂の量が極めて少なく、排除した土砂を一時的に貯留しておくための台船の数の軽減、工期の短縮、経費の大幅な削減が行え、大型の設備も不要とすることができる。しかも、ドライな作業空間を形成するまでに大型の建設機械等は不要であり、すべて人力による作業が可能で、経費の削減効果は絶大である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上の説明は、水中における橋脚に対して耐震補強工事を施す場合の土留め工法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、最下段のライナープレート4の下端面に取り付けられるノズル体3は、一本の高圧水ホース11の先端に噴射ノズルを取り付けたものを、所定間隔ごとに配置して構成するものであってもよい。またライナープレート4の水中地盤2への打ち込み作業は、その途中の段階では水中で打撃器又は振動機15を使用して行ってもよく、最終段階で最上段のライナープレート4が水中より上方へ突出するようにすればよい。
【符号の説明】
【0038】
1…仮締切構造体
2…水中地盤
3…ノズル体
4…ライナープレート
5…ライナープレートのフランジ
7…アキュームレータ室
8…ノズル
9…H型鋼
10…ライナー
11…高圧水ホース
12…カプラー
13…橋脚
14…フーチング
15…打撃器(エアハンマー)又は振動機
【要約】
【課題】水中地盤の中へ圧入されるライナープレートの下端側に高圧水の噴射ノズルを取り付けることで、水中地盤を吹き飛ばしながら圧入を容易にし、これにより手作業で行える打撃器でライナープレートに振動を与えながら圧入できるようにすることで、ドライな作業空間の構築を全て手作業で行える技術を提供せんとするものである。
【解決手段】水中地盤への仮締切構造体の打ち込みに際し、多数の噴射口から高圧水を噴射することで、水中地盤の土砂を吹き飛ばしたり、柔らかくすることができる。このような状態の水中地盤であれば、人力で設置できる打撃器(エアーハンマー)等による僅かの振動を与えるだけで、ライナープレートはその自重により水中地盤へ容易に侵入することが可能であり、ドライな作業空間の形成が大型の建設機械等を必要とせず、容易である。
【選択図】
図1