(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5872729
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】車両用エアカーテン装置
(51)【国際特許分類】
B60J 9/04 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
B60J9/04
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-190944(P2015-190944)
(22)【出願日】2015年9月29日
【審査請求日】2015年10月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506376218
【氏名又は名称】ケイ・アンド・アイ有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】深澤 篤
(72)【発明者】
【氏名】早田 智
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和幸
【審査官】
岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−058929(JP,A)
【文献】
実開昭63−167496(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 9/04
F24F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降の際に雨に濡れないようにする車両用エアカーテン装置であって、この車両用エアカーテン装置は乗降者に雨滴がかからないようにするためのメインノズルと前記メインノズルから噴出したエアによって歩行者に雨滴がかからないようにするためのサブノズルから構成され、メインノズルは窓枠から車体中央に寄ったルーフに設けられ、サブノズルはドアの上縁部に設けられ、前記メインノズルからは車体の側方外側で斜め上方に向かってエアが噴出し、前記サブノズルからは前記メインノズルからの噴出エアの向きを上方に変えるべく略垂直面内で扇状に広がる方向にエアが噴出することを特徴とする車両用エアカーテン装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用エアカーテン装置において、前記メインノズル及びサブノズルの少なくとも一方は、複数のノズルユニットから構成され、各ノズルユニットからのエアの噴出角度が車体の前後方向を基準として異なる角度であることを特徴とする車両用エアカーテン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降の際に雨に濡れないようにする車両用エアカーテン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗降の際に雨に濡れないようにする車両用エアカーテン装置として、特許文献1及び特許文献2に開示される装置が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されるエアカーテン装置は、車体の窓枠部分にエアカーテン形成用のノズルを設け、このノズルに圧縮空気を供給することで、車体側方外側に向けてエアを噴出してエアカーテンを形成するようにしている。
【0004】
特許文献2に開示されるエアカーテン装置は、ドアの上縁部にエアカーテン形成用のノズルを設け、このノズルに圧縮空気を供給することで、車体側方内側に向けてエアを噴出してエアカーテンを形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−349979号公報
【特許文献2】特開2004−58929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されるエアカーテン装置にあっては、車体側方外側に向けてエアを噴出するため、歩行者に雨滴がかかってしまうおそれがある。
またノズルを設けている箇所が、窓枠部分であるため、乗降の際に頭部や体の一部がエアの噴出経路を遮ってしまい、エアカーテンが形成されず、雨にぬれてしまうケースが考えられる。
更に頭部がエアの噴出経路を遮らないまでも、ノズルに頭部が近づくことで、髪が乱れてしまうおそれがある。
【0007】
特許文献2に開示されるエアカーテン装置にあっては、特許文献1の問題点である歩行者に雨滴がかかる不利は解消できるが、乗降の際に頭部や体の一部がエアの噴出経路を遮る不利を確実に解消することはできず、更に最大の問題は開けたドアから車体側方内側に向けてエアを噴出するため、エアの噴出方向を高くしないと乗降する人に雨滴がかかってしまい、一方エアの噴出方向を高くすると背面側(車体中央側)からの雨滴を除去できないというトレードオフの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため本発明に係る車両用エアカーテン装置は、メインノズルとサブノズルから構成され、メインノズルは窓枠から車体中央に寄ったルーフに設けられ、サブノズルはドアの上縁部に設けられ、前記メインノズルからは車体の側方外側で斜め上方に向かってエアが噴出し、前記サブノズルからは前記メインノズルからの噴出エアの向きを上方に変えるべく略垂直面内で扇状に広がる方向にエアが噴出する構成とした。
【0009】
また、前記メインノズル及びサブノズルの少なくとも一方を、複数のノズルユニットから構成してもよい。このようにすることで、各ノズルユニットからのエアの噴出角度が車体の前後方向を基準として異なる角度にすれば、効果的に雨滴を飛散させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両用エアカーテン装置によれば、車体のルーフから歩道に向かってエアを噴出しても、ドアから噴出するエアにより上方に向きが変更されるため、歩行者に雨滴が降りかかることがない。
【0011】
また、メインノズルの位置を窓枠よりも車体の中央に寄った位置に設けているため、乗降する人との間隔が十分にとれ、メインノズルからの噴出角度を若干上向きにするだけで、人体によってエアの噴出経路が遮られることがなくなり、確実にエアカーテン効果を発揮できる。
更に、エアカーテンと頭部との間にも十分な間隔を形成することができるので、髪が乱れるなどの不利もない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る車両用エアカーテン装置を適用した自動車の斜視図
【
図2】本発明に係る車両用エアカーテン装置の作用を説明した図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好適な実施例を図面に従って説明する。
図1に示すように実施例では、本発明に係る車両用エアカーテン装置を後部左側座席に適用し、この 車両用エアカーテン装置はメインノズル1とサブノズル2から構成されている。
【0014】
メインノズル1は2つのノズルユニット1a、1bからなり、これらノズルユニット1a、1bは窓枠3から車体の中心に寄った位置のルーフ4上面に設けられ、車体前後方向に離間している。ノズルユニット1a、1bの窓枠3から距離は10cm〜30cmが適当である。
【0015】
各ノズルユニット1a、1bへの圧縮空気の供給は、エンジンによってコンプレッサを駆動し、このコンプレッサから配管を介して各ノズルユニットへ圧縮空気を供給するか、専用の圧力ボンベを用意しておき、ドライバの操作によって弁をオンオフすることで各ノズルユニットへ圧縮空気を供給する。
【0016】
メインノズル1を2つのノズルユニット1a、1bで構成した場合には、各ノズルユニット1a、1bからのエアの噴出方向と角度を異ならせ、より効果的に雨滴を排除することができる。
【0017】
例えば、ノズルユニット1aから噴出される圧縮エアによって形成されるエアカーテン5aは、
図3に示すように、真横ではなく若干後方部分をカバーし、ノズルユニット1bから噴出される圧縮エアによって形成されるエアカーテン5bは、真横ではなく若干前方部分をカバーする。更に各ノズルユニットからの圧縮エアの噴出高さを異ならせることで、
図2に示すように、二重のエアカーテン5a、5bによって乗降者の上方を覆うことで雨滴の侵入を効果的に防止している。
【0018】
一方、サブノズル2は2つのノズルユニット2a、2bからなり、これらノズルユニット2a、2bはドア6を開けた際に外側となる上縁部7に設けられている。
【0019】
サブノズルを構成するノズルユニット2a、2bへの圧縮空気の供給もメインノズルと同様であり、各ノズルユニット2a、2bからのエアの噴出方向と角度も異ならせている。
【0020】
具体的には、ドア6を半開または全開した状態で、各ノズルユニット2a、2bからの噴出エアによって扇状エアカーテン8a、8bが形成され、且つその扇状エアカーテン8a、8bが垂直で車体前後方向と平行になるように、ノズルユニット2a、2bには方向調整板が設けられている。
【0021】
但し、ノズルユニット2a、2bからのエアが衝突しないように噴出角度に差をつけているので、各ノズルユニット2a、2bからのエアによって形成される扇状カーテン8a、8bは、正確には垂直にはならない。尚、エアカーテン8aは前部座席の後端から後部座席全体をカバーし、エアカーテン8bは後部座席全体と更にその後方をカバーしている。
【0022】
以上において、雨が降っている時に人が乗降する場合、先ず後部座席のドア6を開くと、
図2に示すようにドア6の上縁部7に設けたサブノズル2を構成するノズルユニット2a、2bからエアが上方に向かって噴出し、垂直方向のエアカーテン8a、8bを形成する。
【0023】
垂直方向のエアカーテン8a、8bを形成した後に、メインノズル1を構成するノズルユニット1a、1bからエアが斜め上方外側に向かって噴出し、エアカーテン5a、5bを形成する。
【0024】
このエアカーテン5a、5bを形成する圧縮エアはサブノズル2を構成するノズルユニット2a、2bからのエアカーテンに衝突して、向きが更に上方になり、歩道にエアカーテン5a、5bを形成する圧縮エアによって雨滴が飛散することがない。
【0025】
図示例にあっては、メインノズル及びサブノズルを2つのノズルユニットで構成したが1つのノズルユニットとしてもよいし、3つ以上のノズルユニットを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
実施例にあっては、本発明に係るエアカーテン装置を後部座席の乗降に適用した例を示したが、運転席或いは助手席に適用することもできる。
【符号の説明】
【0027】
1…メインノズル、1a、1b…メインノズルを構成するノズルユニット、2…サブノズル、2a、2b…サブノズルを構成するノズルユニット、3…窓枠、4…ルーフ、5a、5b…メインノズルを構成するノズルユニットによって形成されるエアカーテン、6…ドア、7…ドア上縁部、8a、8b…サブノズルを構成するノズルユニットによって形成されるエアカーテン。
【要約】
【課題】乗降の際に雨に濡れないようにする車両用エアカーテン装置を提供する。
【解決手段】
雨が降っている時に人が乗降する場合、先ず後部座席のドア6を開くと、ドア6の上縁部7に設けたサブノズル2を構成するノズルユニット2a、2bからエアが上方に向かって噴出し、垂直方向のエアカーテン8a、8bを形成する。次いで、メインノズル1を構成するノズルユニット1a、1bからエアが斜め上方外側に向かって噴出し、エアカーテン5a、5bを形成する。このエアカーテン5a、5bを形成する圧縮エアはサブノズル2を構成するノズルユニット2a、2bからのエアカーテンに衝突して、向きが更に上方になり、歩道にエアカーテン5a、5bを形成する圧縮エアによって雨滴が飛散することがない。
【選択図】
図2