(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ダムからの維持流量分の給水を受けて回転するポンプ逆転水車、前記ポンプ逆転水車の回転軸に連結された発電機、および、前記ポンプ逆転水車の回転速度を調節する制御装置と、
前記ダムの水位と、該当水位で運転中の当該維持流量発電設備における放流量が、規定の維持流量値に、前記ポンプ逆転水車における使用水量の時間変動幅を上乗せした値である所定基準値になる場合の前記ポンプ逆転水車の回転速度との関係を定めた制御用データを記憶する記憶装置と、前記ダムの水位計での計測値を前記制御用データに照合して、該当水位において放流量が前記所定基準値となる前記回転速度を特定し、当該特定した回転速度での運転を前記ポンプ逆転水車の制御装置に指示する演算装置とを備える維持流量発電制御システムと、
を含むことを特徴とする維持流量発電設備。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したポンプ逆転水車型発電機は、通常の水力発電機における水車のように流入量を制御するガイドベーンを持たず、一定出力で運転されるのが一般的である。こうしたポンプ逆転水車型発電機を、ダムの放流経路(発電設備で用いた水を取水河川に戻す経路)に設置して維持流量発電を行う場合、ダム水位の変動によって流入量が大きく変化し、発電効率が低下しやすい上、発電機のゆらぎ特性のために使用水量が変動し間欠的に維持流量が不足する事態も生じうる。
【0006】
そこで本発明は、ダムでの水位変動に対応して一定流量での運転を行い、効率的な発電と維持流量の確保を可能とする維持流量発電技術の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の維持流量発電制御システムは、維持流量発電設備における発電用水が取水されるダムの水位と、該当水位で運転中の維持流量発電設備における放流量が、
規定の維持流量値に、前記ポンプ逆転水車における使用水量の時間変動幅を上乗せした値である所定基準値になる場合のポンプ逆転水車の回転速度との関係を定めた制御用データを記憶する記憶装置と、前記ダムの水位計での計測値を前記制御用データに照合して、該当水位において放流量が
前記所定基準値となる前記回転速度を特定し、当該特定した回転速度での運転を前記ポンプ逆転水車の制御装置に指示する演算装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、ダム水位に応じた低落差から高落差に至る広範囲な落差、すなわち供給水量に対応して、ポンプ逆転水車の回転速度を制御することで、ポンプ逆転水車を備える維持流量発電設備からの放流量を所定値(維持流量の規定値以上)に維持することが可能となる。こうした効果は、ポンプ逆転水車への流量調整弁(一般的な水車におけるガイドベーン等と同機能)の設置を要することなく実現され、ポンプ逆転水車を低落差では低速回転で、高落差では高速回転で運転することで効率的な運転が可能となる。したがって、ダムでの水位変動に対応して一定流量での運転を行って、効率的な発電と維持流量の確保が可能となる。
【0009】
また、前記制御用データにおける、放流量の所定基準値は、規定の維持流量値に、前記ポンプ逆転水車における使用水量の時間変動幅を上乗せした値であ
ることにより、いわゆる発電機のゆらぎ特性のために使用水量が変動しても、ポンプ逆転水車における使用水量は維持流量と上述の基準値との間に収まることなり、従来の如く間欠的に維持流量が不足する事態の発生を回避出来ることになる。
【0012】
また、本発明の維持流量発電制御方法は、維持流量発電設備における発電用水が取水されるダムの水位と、該当水位で運転中の維持流量発電設備における放流量が、
規定の維持流量値に、前記ポンプ逆転水車における使用水量の時間変動幅を上乗せした値である所定基準値になる場合のポンプ逆転水車の回転速度との関係を定めた制御用データを記憶する記憶装置を備えた情報処理装置が、前記ダムの水位計での計測値を前記制御用データに照合して、該当水位において放流量が
前記所定基準値となる前記回転速度を特定し、当該特定した回転速度での運転を前記ポンプ逆転水車の制御装置に指示する処理を実行する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の維持流量発電制御プログラムは、維持流量発電設備における発電用水が取水されるダムの水位と、該当水位で運転中の維持流量発電設備における放流量が
、規定の維持流量値に、前記ポンプ逆転水車における使用水量の時間変動幅を上乗せした値である所定基準値になる場合のポンプ逆転水車の回転速度との関係を定めた制御用データを記憶する記憶装置を備えた情報処理装置に、前記ダムの水位計での計測値を前記制御用データに照合して、該当水位において放流量が
前記所定基準値となる前記回転速度を特定し、当該特定した回転速度での運転を前記ポンプ逆転水車の制御装置に指示する処理を実行させる、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の維持流量発電設備は、ダムからの維持流量分の給水を受けて回転するポンプ逆転水車、前記ポンプ逆転水車の回転軸に連結された発電機、および、前記ポンプ逆転水車の回転速度を調節する制御装置と、前記ダムの水位と、該当水位で運転中の当該維持流量発電設備における放流量が
、規定の維持流量値に、前記ポンプ逆転水車における使用水量の時間変動幅を上乗せした値である所定基準値になる場合の前記ポンプ逆転水車の回転速度との関係を定めた制御用データを記憶する記憶装置と、前記ダムの水位計での計測値を前記制御用データに照合して、該当水位において放流量が
前記所定基準値となる前記回転速度を特定し、当該特定した回転速度での運転を前記ポンプ逆転水車の制御装置に指示する演算装置とを備える維持流量発電制御システムと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の維持流量発電制御システムによれば、ダムでの水位変動に対応して一定流量での運転を行って、効率的な発電と維持流量の確保が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の維持流量発電制御システムの概念を示す図である。
【
図2】本実施形態の維持流量発電制御システムのハードウェア構成例を示す図である。
【
図3A】本実施形態の制御用データの構成例1を示す図である。
【
図3B】本実施形態の制御用データの構成例2を示す図である。
【
図3C】本実施形態の制御用データの構成例3を示す図である。
【
図3D】本実施形態の制御用データの構成例4を示す図である。
【
図4】本実施形態の維持流量発電制御方法の手順例を示すフロー図である。
【
図5】本実施形態の維持流量発電制御方法における運用手順例1を示すタイミングチャートである。
【
図6】本実施形態の維持流量発電制御方法における運用手順例2を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
−−−維持流量発電制御システム−−−
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の維持流量発電制御システム100の概念を示す図である。維持流量発電制御システム100が制御対象とする維持流量発電設備1は、ダム2から河川20に放流する維持流量分の水を利用して発電を行う設備となる。ダム2において河川20等から得た水のうち、規定された維持流量分については、動植物等の生態系や、漁労、水運、観光など人間活動を維持するために最小限必要な流量として河川20に戻す必要がある。そこで本実施形態における維持流量発電制御システム100は、上述の維持流量発電設備1を制御して、効率的な発電を行いつつも、規定の維持流量を確保して河川20に放流することとなる。
【0018】
なお、維持流量発電設備1は、ポンプ逆転水車3と、このポンプ逆転水車3の回転軸に連結された発電機4とが含まれている。ポンプ逆転水車3は、ダム2の貯水域から伸びる水圧管路7と吸水口8を介して連結され、水圧管路7からの給水を受ける。水圧管路7からポンプ逆転水車3に給水された水は、ケーシング内に充満してランナベーンを押圧し、これを回転させる。ランナベーンの回転動作により回転軸は回転し、この回転軸に連結された発電機4での発電が行われることになる。発電機4で発電された電気は、コンバーター14およびインバーター15を介して電力系統16へ送電される。コンバーター14およびインバーター15による系統連系で、電力系統16への影響を軽減することが可能となる。
【0019】
また、ポンプ逆転水車3は、制御装置6によってその回転速度が制御される。制御装置6は、ポンプ逆転水車3に連結された発電機4に対し、その固定子が備える出力発生用の巻線、ないし回転子が備える磁界発生用の巻線に供給する電流の周波数をコントロールすることで、発電機4の回転速度ひいてはポンプ逆転水車3の回転速度を制御する。
【0020】
上述のようにポンプ逆転水車3で使用された水は、放水路12に流入し、この放水路12を介して河川20に放流される。また、前述の吸水口8には、常開の開閉弁機構11が備わっており、維持流量発電制御システム100から開閉弁機構11への指示による、開閉弁の開閉により、全開状態から閉塞状態の間の任意の状態に遷移可能である。
【0021】
また、水圧管路7は、上述の吸水口8より上流、すなわちポンプ逆転水車3とダム2との間において分岐箇所を備えており、この分岐箇所から、上述の放水路12に合流し最終的に河川20に至るバイパス放流路9が設けられている。上述した分岐箇所には、常閉の開閉弁機構10が備わっており、維持流量発電制御システム100から開閉弁機構10への指示による、開閉弁の開閉により、閉塞状態から全開状態の間の任意の状態に遷移可能である。バイパス放流路9は、例えば、ダム水位がポンプ逆転水車3の運転範囲外の水位まで低下した場合や、架線の断線などにより維持流量発電設備1への発電負荷が急減した場合等において、水圧管路7の水流が、ポンプ逆転水車3を迂回して放水路12に直接流入するよう図るバイパス経路となる。
【0022】
なお、開閉弁機構10、11は、例えば、水圧管路7などの管体内空で可動する組み合わさった複数の弁体と、各弁体を可動させて管体内空を閉塞ないし全開とする弁体の駆動機構とが一体となった既存技術を採用すればよい。この開閉弁機構10、11は、維持流量発電制御システム100と適宜な配線ないしネットワークで結ばれ、開閉動作の指示を維持流量発電制御システム100から受けることが可能である。
【0023】
一方、ダム2の貯水域には水位計5が設置されており、適宜なネットワークを介して、維持流量発電制御システム100と通信可能に結ばれている。また、少なくとも、ポンプ逆転水車3下流の放水路12には流量計13が設置されており、適宜なネットワークを介して、維持流量発電制御システム100と通信可能に結ばれている。
【0024】
続いて、上述の維持流量発電制御システム100のハードウェア構成について説明する。
図2は本実施形態の維持流量発電制御システム100のハードウェア構成例を示す図である。維持流量発電制御システム100は、ハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶装置で構成される記憶装置101、RAMなど揮発性記憶装置で構成されるメモリ103、記憶装置101に保持されるプログラム102をメモリ103に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPUなどの演算装置104、適宜なネットワークを介してダム2の水位計4や放水路12の流量計13といった他装置との通信処理を担う通信装置105を備える。
【0025】
なお、記憶装置101内には、本実施形態の維持流量発電制御システム100として必要な機能を実装する為のプログラム102の他に、制御用データ125が少なくとも記憶されている。この制御用データ125は、維持流量発電設備1における発電用水が取水されるダム2の水位と、該当水位で運転中の維持流量発電設備1における放流量が所定基準値になる場合のポンプ逆転水車3の回転速度との関係を定めたテーブルとなる。この制御用データ125の具体例については後述する。また、記憶装置101には、ポンプ逆転水車3の運転範囲を示す運転範囲データ126が更に格納されている。この運転範囲データ126は、例えば、ポンプ逆転水車3を運転可能なダム水位値の範囲、或いは、ポンプ逆転水車3を運転可能な回転速度の範囲、を示すデータとなる。
【0026】
続いて、本実施形態の維持流量発電制御システム100が備える機能について説明する。上述したように、以下に説明する機能は、維持流量発電制御システム100が備えるプログラム102を実行することで実装される機能と言えるが、同機能を適宜な電子回路で実現し用いるとしてもよい。本実施形態の維持流量発電制御システム100は、ダム2の水位計5での計測値を制御用データ125に照合して、該当水位において放流量が所定基準値となる回転速度を特定し、当該特定した回転速度での運転をポンプ逆転水車3の制御装置6に指示する機能を備えている。
【0027】
なお、維持流量発電制御システム100は、記憶装置101に保持する、上述の制御用データ125における放流量の所定基準値として、規定の維持流量値に、ポンプ逆転水車3における使用水量の時間変動幅を上乗せした値を格納しているとすれば好適である。
【0028】
また、維持流量発電制御システム100は、上述した水位計5や流量計13といった所定装置から得たデータが、予め定めたポンプ逆転水車3の運転範囲外の値に該当するか判定し、所定装置から得たデータがポンプ逆転水車3の運転範囲外にあった場合、ポンプ逆転水車3に給水する水圧管路7のうちバイパス放流路9の分岐箇所に備わる常閉の開閉弁機構10に対し、所定時間での開放動作を指示し、開閉弁機構10が全開となった際に、水圧管路7におけるポンプ逆転水車3への給水口8に備わる常開の開閉弁機構11に対し、所定時間での閉鎖動作を指示する機能を備えているとすれば好適である。
【0029】
−−−データ構造例−−−
次に、本実施形態の維持流量発電制御システム100が用いる制御用データ125のデータ構造例について説明する。
図3A〜
図3Dは本実施形態の制御用データ125の構成例1〜4を示す図である。制御用データ125は、維持流量発電設備における発電用水が取水されるダムの水位と、該当水位で運転中の維持流量発電設備における放流量が所定基準値になる場合のポンプ逆転水車の回転速度との関係を定めたデータとなる。
【0030】
制御用データ125は、
図3A〜
図3Cに例示するように、維持流量発電設備1から河川20への放流量の所定基準値である流量値毎に、ダム2の水位とポンプ逆転水車3の回転速度との対応関係を定めたテーブルとなる。
図3Aは、放流量を0.8m
3/s一定とする場合の、各ダム水位におけるポンプ逆転水車3の回転速度を示し、同様に
図3Bは、放流量を0.6m
3/s一定とした場合、また
図3Cは、放流量を0.9m
3/s一定とした場合のものとなる。また、
図3Dには、
図3A〜
図3Dが示す各制御用データ125を、グラフ化した形態を示している。なお、こうした制御用データ125における放流量は、規定の維持流量値に、ポンプ逆転水車3における使用水量の時間変動幅(いわゆる発電機のゆらぎ特性)を上乗せした値であるとすれば好適である。
【0031】
−−−維持流量発電制御方法の手順例−−−
続いて、本実施形態における維持流量発電制御システムの具体的な運用手順について説明する。以下で説明する維持流量発電制御方法に対応する各種動作は、維持流量発電制御システム100がメモリ等に読み出して実行するプログラムによって実現される。そして、このプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
図4は本実施形態の維持流量発電制御方法の手順例を示すフロー図である。維持流量発電制御システム100の演算装置101は、通信手段105を介して、ダム2の貯水域に設置された水位計5から、ダム水位の計測値を取得する(s100)。維持流量発電制御システム100の演算装置104は、この計測値を、ポンプ逆転水車3の運転範囲外を示す所定水位値(記憶装置101に予め保持する、ポンプ逆転水車3の運転範囲データ126)に照合し(s101)、ダム水位がポンプ逆転水車3の運転範囲外であるか判定する(s102)。
【0032】
ダム水位がポンプ逆転水車3の運転範囲内であった場合(s102:OK)、維持流量発電制御システム100の演算装置104は、ダム水位の計測値を制御用データ125に照合する(s103)。なお、記憶装置101に保持されている制御用データ125は、保つべき放流量別に存在するが、ダム水位の計測値の照合対象となる制御用データ125は、ユーザにより予め指定されているものとする。
【0033】
ユーザにより、放流量0.8m
3/sに対応する制御用データ125が指定されている場合、維持流量発電制御システム100の演算装置104は、ダム水位の計測値を
図3Aに例示した制御用データ125に照合することとなる。例えば、ダム水位の計測値が“9.0”であった場合、制御用データ125から、ポンプ逆転水車3の回転速度は“380”とすべきであると特定できる。
【0034】
維持流量発電制御システム100の演算装置104は、上述のステップs101における照合処理により、該当水位“9.0”において放流量が所定基準値0.8m
3/sとなる回転速度を“380”と特定し(s104)、当該特定した回転速度での運転をポンプ逆転水車3の制御装置6に指示する(s105)。
【0035】
他方、ポンプ逆転水車3の制御装置6は、上述の回転速度“380”での運転指示を維持流量発電制御システム100から受けて、ポンプ逆転水車3に連結された発電機4に対し、その固定子が備える出力発生用の巻線、ないし回転子が備える磁界発生用の巻線に供給する電流の周波数をコントロールし、発電機4の回転速度ひいてはポンプ逆転水車3の回転速度を制御する(s106)。こうした制御手法は既存のものを採用すればよい。
【0036】
なお、こうしてポンプ逆転水車3の回転速度を制御した後、維持流量発電制御システム100の演算装置104は、ポンプ逆転水車3下流の放水路12に設置されている流量計13より、放水路12の流量に関する計測値を取得し、この計測値が、上述した放流量の所定基準値0.8m
3/sを満たしているか判定するとしてもよい。この判定により、放水路12の流量が、放流量の所定基準値を満たしていれば、維持流量発電制御システム100の演算装置104は、そのまま待機する。一方、上述の判定により、放水路12の流量が、放流量の所定基準値を満たしていなければ、維持流量発電制御システム100の演算装置104は、制御用データ125から特定したポンプ逆転水車3の回転速度を所定割合だけ低下させ、放水路12の流量を適宜増加させる。維持流量発電制御システム100の演算装置104は、こうした処理を、放水路12の流量が放流量の所定基準値を満たすようになるまで繰り返し実行する。
【0037】
一方、ステップs104の処理以降、維持流量発電設備1におけるポンプ逆転水車3は、一定の回転速度での運転状態を維持することになるが、水位計4からのダム水位の計測値取得と、ダム水位がポンプ逆転水車3の運転範囲外であるかの判定(s101、s102)の処理は一定時間毎に実行している。
【0038】
ここで、ダム水位がポンプ逆転水車3の運転範囲外であった場合(s102:NG)、維持流量発電制御システム100の演算装置104は、ポンプ逆転水車3に給水する水圧管路7のうちバイパス放流路9の分岐箇所に備わる常閉の開閉弁機構10に対し、所定時間での開放動作を指示する(s107)。この指示を受けた開閉弁機構10は、所定時間をかけて弁を全開状態に移行させる(s108)。これにより、それまで水圧管路7からポンプ逆転水車3に全て導かれていた水が、分岐箇所で分岐しバイパス放流路9にも流れるようになる。
図5において、こうした開閉弁機構10、11の運用状況に対応したタイミングチャートを示す。
【0039】
一方、維持流量発電制御システム100の演算装置104は、上述の開閉弁機構10から、当該開閉弁機構10が全開となった旨の通知を受けたタイミングで、水圧管路7における給水口8に備わる常開の開閉弁機構11に対し、所定時間での閉鎖動作を指示する(s109)。他方、この指示を受けた開閉弁機構11は、所定時間をかけて弁を全閉状態に移行させる(s110)。これにより、それまで水圧管路7からポンプ逆転水車3とバイパス放流路9に分岐して流れていた水が、バイパス放流路9によってポンプ逆転水車3を完全に迂回して放水路12に直接流入することになる。このような運用を行うことにより、水圧管路7の水流を徐々にバイパス放流路8へと移す間にはポンプ逆転水車を当初の通り運転させ、こうした処理中にあっても維持流量を確保できることとなる。
【0040】
なお、
図6のタイミングチャートに示すように、架線の断線などにより維持流量発電設備1への発電負荷が急減した場合、すなわち、維持流量発電設備1のポンプ逆転水車3の回転負荷が急減した場合にも維持流量発電制御システム100は対応可能である。そのような急減した負荷値を所定の計測装置から得た維持流量発電制御システムの演算装置104は、上述のステップs102と同様に、その負荷値が、予め定めたポンプ逆転水車3の運転範囲外を示す規定値に該当するか判定する。この判定によって、負荷値がポンプ逆転水車3の運転範囲外に該当した場合、やはり上述のステップs107〜s110と同様に、開閉弁機構10、11の操作によって水圧管路7の水流を徐々にバイパス放流路9へと移した後、ポンプ逆転水車3を停止させる。この場合も、水圧管路7の水流を徐々にバイパス放流路9へと移す間にも、放水路12の流量として、規定の維持流量を確保できることとなる。
【0041】
以上に説明したように、本実施形態の維持流量発電制御システムによれば、ダムでの水位変動に対応して一定流量での運転を行い、効率的な発電と維持流量の確保が可能となる。
【0042】
ところで、以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。