特許第5872768号(P5872768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872768
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】糖鎖試料調製方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20160216BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20160216BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   G01N30/88 N
   G01N30/88 101K
   G01N30/88 201G
   G01N30/06 E
   G01N30/06 Z
   G01N30/26 A
   G01N30/26 Q
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-516759(P2010-516759)
(86)(22)【出願日】2009年6月10日
(86)【国際出願番号】JP2009002611
(87)【国際公開番号】WO2009150834
(87)【国際公開日】20091217
【審査請求日】2012年4月23日
【審判番号】不服2014-11959(P2014-11959/J1)
【審判請求日】2014年6月24日
(31)【優先権主張番号】特願2008-154649(P2008-154649)
(32)【優先日】2008年6月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】島岡 秀行
(72)【発明者】
【氏名】阿部 碧
【合議体】
【審判長】 三崎 仁
【審判官】 松本 隆彦
【審判官】 ▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−38130(JP,A)
【文献】 特開2005−345379(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/114663(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/018170(WO,A1)
【文献】 特開平6−265534(JP,A)
【文献】 特開平8−228795(JP,A)
【文献】 Erika Lattova et al.,Matrix−Assisted Laser Desorption/Ionization Tandem Mass Spectrometry and Post−Source Decay Fragmentation Study of Phenylhydrazones of N−Linked Oligosaccharides from Ovalbumin, Journal of the American Society for Mass Spectrometry, 2004, Volume 15, Issue 5, Pages 725−735
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/88
G01N 27/447
G01N 27/62
G01N 30/06
G01N 30/26
G01N 30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベル化糖鎖を含む試料溶液中の未反応のラベル化試薬を低減させるための糖鎖試料調製方法であって、
(工程1)ラベル化糖鎖を含む前記試料溶液をモノリスシリカ(3次元網目構造をもつフィルター状の多孔質連続体をなすシリカであって、シリカに有機物を含有するものを除く。)と接触させることにより、前記モノリスシリカに糖鎖成分を吸着させる工程、
(工程2)前記モノリスシリカを洗浄液で洗浄する工程、
(工程3)前記モノリスシリカに溶出液を接触させ、吸着した糖鎖成分を溶出させる工程、
を含み、
前記工程1において、前記試料溶液が90体積%以上のアセトニトリルを含むことを特徴とする糖鎖試料調製方法。
【請求項2】
前記工程1が、流路内に前記モノリスシリカを充填したカラム状の容器に前記試料溶液を注入する工程、自然落下、吸引、加圧、又は遠心の方法により前記試料溶液をモノリスシリカ部に通過させる工程、を含む請求項1に記載の糖鎖試料調製方法。
【請求項3】
前記工程1において、前記試料溶液が95体積%以上のアセトニトリルを含む請求項1または2に記載の糖鎖試料調製方法。
【請求項4】
前記工程2において、前記洗浄液が有機溶媒および水を含む溶液である請求項1ないしのいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
【請求項5】
前記工程2において、前記洗浄液が90体積%以上の有機溶媒および10体積%以下の水を含む溶液である請求項に記載の糖鎖試料調製方法。
【請求項6】
前記工程2において、前記洗浄液が95体積%以上の有機溶媒および5体積%以下の水を含む溶液である請求項に記載の糖鎖試料調製方法。
【請求項7】
前記洗浄液に含まれる前記有機溶媒がアセトニトリルである請求項ないしのいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
【請求項8】
前記工程3において、前記溶出液が10体積%以上の水を含む溶液である請求項1ないしのいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
【請求項9】
前記工程3において、前記溶出液が50体積%以上の水を含む溶液である請求項1ないしのいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
【請求項10】
前記工程3において、前記溶出液が水である請求項1ないしのいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
【請求項11】
前記ラベル化糖鎖が、糖鎖の還元末端にアミノ基、ヒドラジド基、又はアミノオキシ基を含む化合物を結合したものである請求項1ないし10のいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
【請求項12】
前記ラベル化糖鎖が、下記から選ばれる少なくとも一つのアミノ基含有化合物を、糖鎖の還元末端に結合したものである請求項1ないし10のいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
2-aminopyridine; 2-aminobenzamide; 2-aminoanthranilic acid; 7-amino-1-naphthol; 3-(acetylamino)-6-aminoacridine; 9-aminopyrene-1,4,6-trisulfonic acid; 8-aminonaphtalene-1,3,6-trisulfonic acid; 7-amino-1,3-naphtalenedisulfonic acid: 2-amino-9(10H)-acridone; 5-aminofluorescein; Dansylethylenediamine; 7-amino-4-methylcoumarine; benzylamine
【請求項13】
前記ラベル化糖鎖が、下記から選ばれる少なくとも一つのヒドラジド基含有化合物を、糖鎖の還元末端に結合したものである請求項1ないし10のいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
2-aminobenzhydrazide; 2-hydrazinobenzoic acid; benzylhydrazine; 5-Dimethylaminonaphthalene-1-sulfonyl hydrazine (Dansylhydrazine); 2-hydrazinopyridine; 9-fluorenylmethyl carbazate (Fmoc hydrazine); 4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene-3-propionoc acid, hydrazide; 2-(6,8-difluoro-7-hydroxy-4-methylcoumarin)acetohydrazide; 7-diethylaminocoumarin-3-carboxylic acid, hydrazide (DCCH); phenylhydrazine;1-Naphthaleneacethydrazide; phenylacetic hydrazide
【請求項14】
前記ラベル化糖鎖が、下記から選ばれる少なくとも一つのアミノオキシ基含有化合物を、糖鎖の還元末端に結合したものである請求項1ないし10のいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
N-aminooxyacetyl(tryptophyl)arginine methyl ester; O-benzylhydroxylamine; O-phenylhydroxylamine; O-(2,3,4,5,6-pentafluorobenzyl)hydroxylamine; O-(4-nitrobenzyl)hydroxylamine; 2-aminooxypyridine; 2-aminooxymethylpyridine; 4-[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid methyl ester; 4-[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid ethyl ester; 4-[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid n-butyl ester; aminooxy-biotin
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル化した糖鎖の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖鎖とは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸などの単糖およびこれらの誘導体がグリコシド結合によって鎖状に結合した分子の総称である。
糖鎖は非常に多様性に富んでおり、天然に存在する生物が有する様々な機能に関与する物質である。糖鎖は生体内でタンパク質や脂質などに結合した複合糖質として存在することが多く、生体内の重要な構成成分の一つである。生体内の糖鎖は細胞間情報伝達、タンパク質の機能や相互作用の調整などに深く関わっていることが明らかになりつつある。
【0003】
例えば、糖鎖を有する生体高分子としては、細胞の安定化に寄与する植物細胞の細胞壁のプロテオグリカン、細胞の分化、増殖、接着、移動等に影響を与える糖脂質、及び細胞間相互作用や細胞認識に関与している糖タンパク質等が挙げられるが、これらの高分子の糖鎖が、互いに機能を代行、補助、増幅、調節、あるいは阻害しあいながら高度で精密な生体反応を制御する機構が次第に明らかにされつつある。さらに、このような糖鎖と細胞の分化増殖、細胞接着、免疫、及び細胞の癌化との関係が明確にされれば、この糖鎖工学と、医学、細胞工学、あるいは臓器工学とを密接に関連させて新たな展開を図ることが期待できる。
【0004】
病気を早期発見して生活の質(QOL)を高く保つためには、病気の発症の予防や推移を診断できるバイオマーカーが必要である。糖鎖生合成にかかわる糖転移酵素の遺伝子破壊マウスの解析から、糖鎖はさまざまな組織・器官の機能維持に必須であることが明らかにされている(非特許文献1,2)。また、糖鎖修飾に異常がみられるとさまざまな疾病が引き起こされることも知られている(非特許文献3)。糖鎖の構造は細胞の癌化やさまざまな疾病によって著しく変化するので、疾病の推移を調べるためのバイオマーカーとしての利用が期待されている。
【0005】
糖鎖自体は蛍光性、紫外吸収性をもたないため、糖鎖を分析する際には予め修飾(ラベル化)を施すことが多い。糖鎖をHPLCあるいはHPLC−MSで分析する場合は、2−aminobenzamide誘導体化(2AB化)、2−aminopyridine誘導体化(PA化)などの蛍光ラベル化が一般的である(非特許文献4)。また、糖鎖をMALDI−TOF MSで分析する場合にも、ラベル化を施すことにより測定感度の向上を図ることが行われる(非特許文献5、6)。
【0006】
糖鎖をラベル化する際には、ラベル化効率を高めるため糖鎖に対して過剰量のラベル化試薬を作用させる場合が多い。試料溶液中に過剰のラベル化試薬が存在すると、HPLC測定や質量分析に支障をきたすため、あらかじめ除去する必要がある。試薬の除去にはゲルろ過(例えばSephadex G−15を使用、非特許文献6)、固相抽出(例えばシリカゲル、グラファイトカーボン等を使用)などの方法が利用される。従来、これらの分離を行う場合には、適当な容器(カラム、カートリッジなど)に固相(充填材)を充填したものが主に使用されてきた。これらのカラム(カートリッジ)の分離性能を上げるためには、固相の充填密度を上げる、充填剤の数平均直径を小さくする、のいずれかの方法が通常用いられる。しかし、前者では、充填剤の形状や直径のばらつきが原因となって充填密度が思うように上がらず、後者では、カラムや装置への圧力負荷が大きくなるため、処理速度に限界を生じやすい。また、小スケールのカラム(カートリッジ)では、充填剤を保持するために必要なフリット(ビーズ塞き止め用の部材)のデッド・ボリュームが分離性能、回収率を下げる要因となりやすい。これらの問題を解決し、効率よくラベル化糖鎖を精製する手段が求められていた。
【0007】
【非特許文献1】Ioffe E., Stanley P., Proc. Natl. Acad. Sci., 91, pp.728-732 (1994)
【非特許文献2】Metzler M., Gertz A., Sarker M., Schachter H., Schrader J.W., Marth J.D., EMBO J., 13, pp.2056-2065 (1994)
【非特許文献3】Powell L.D., Paneerselvam K., Vij R., Diaz S., Manzi A., Buist N., Freeze H., Varki A., J. Clin. Invest., 94, pp.1901-1909 (1994)
【非特許文献4】Shilova N.V., Bovin N.V., Russian Journal of Bioorganic Chemistry, 29, pp.309-324 (2003)
【非特許文献5】Shinohara Y., Furukawa J.-i., Niikura K., Miura Y., Nishimura S.-I., Anal. Chem., 76, pp.6989-6997 (2004)
【非特許文献6】Furukawa J.-i., Shinohara Y., Kuramoto H., Miura Y., Shimaoka H., Kurogochi M., Nakano M., Nishimura S.-I., Anal. Chem., 80, pp.1094-1101 (2008)
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、糖鎖ラベル化反応後、過剰のラベル化試薬を効率よく除去する手段を提供することである。
【0009】
本発明は以下の通りである。
(1) ラベル化糖鎖を含む試料溶液中の未反応のラベル化試薬を低減させるための糖鎖試料調製方法であって、
(工程1)ラベル化糖鎖を含む前記試料溶液をモノリスシリカ(3次元網目構造をもつフィルター状の多孔質連続体をなすシリカであって、シリカに有機物を含有するものを除く。)と接触させることにより、前記モノリスシリカに糖鎖成分を吸着させる工程、
(工程2)前記モノリスシリカを洗浄液で洗浄する工程、
(工程3)前記モノリスシリカに溶出液を接触させ、吸着した糖鎖成分を溶出させる工程、
を含み、
前記工程1において、前記試料溶液が90体積%以上のアセトニトリルを含むことを特徴とする糖鎖試料調製方法。
(2) 前記工程1が、流路内に前記モノリスシリカを充填したカラム状の容器に前記試料溶液を注入する工程、自然落下、吸引、加圧、又は遠心の方法により前記試料溶液をモノリスシリカ部に通過させる工程、を含む(1)に記載の糖鎖試料調製方法。
(3) 前記工程1において、前記試料溶液が95体積%以上のアセトニトリルを含む(1)または(2)に記載の糖鎖試料調製方法。
(4) 前記工程2において、前記洗浄液が有機溶媒および水を含む溶液である(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
(5) 前記工程2において、前記洗浄液が90体積%以上の有機溶媒および10体積%以下の水を含む溶液である(4)に記載の糖鎖試料調製方法。
(6) 前記工程2において、前記洗浄液が95体積%以上の有機溶媒および5体積%以下の水を含む溶液である(4)に記載の糖鎖試料調製方法。
(7) 前記洗浄液に含まれる前記有機溶媒がアセトニトリルである(4)ないし(6)のいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
(8) 前記工程3において、前記溶出液が10体積%以上の水を含む溶液である(1)ないし(7)のいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
(9) 前記工程3において、前記溶出液が50体積%以上の水を含む溶液である(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
(10) 前記工程3において、前記溶出液が水である(1)ないし(7)のいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
(11) 前記ラベル化糖鎖が、糖鎖の還元末端にアミノ基、ヒドラジド基、又はアミノオキシ基を含む化合物を結合したものである(1)ないし(10)のいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
(12) 前記ラベル化糖鎖が、下記から選ばれる少なくとも一つのアミノ基含有化合物を、糖鎖の還元末端に結合したものである(1)ないし(10)のいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
2-aminopyridine; 2-aminobenzamide; 2-aminoanthranilic acid; 7-amino-1-naphthol; 3-(acetylamino)-6-aminoacridine; 9-aminopyrene-1,4,6-trisulfonic acid; 8-aminonaphtalene-1,3,6-trisulfonic acid; 7-amino-1,3-naphtalenedisulfonic acid: 2-amino-9(10H)-acridone; 5-aminofluorescein; Dansylethylenediamine; 7-amino-4-methylcoumarine; benzylamine
(13) 前記ラベル化糖鎖が、下記から選ばれる少なくとも一つのヒドラジド基含有化合物を、糖鎖の還元末端に結合したものである(1)ないし(10)のいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
2-aminobenzhydrazide; 2-hydrazinobenzoic acid; benzylhydrazine; 5-Dimethylaminonaphthalene-1-sulfonyl hydrazine (Dansylhydrazine); 2-hydrazinopyridine; 9-fluorenylmethyl carbazate (Fmoc hydrazine); 4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene-3-propionoc acid, hydrazide; 2-(6,8-difluoro-7-hydroxy-4-methylcoumarin)acetohydrazide; 7-diethylaminocoumarin-3-carboxylic acid, hydrazide (DCCH); phenylhydrazine;1-Naphthaleneacethydrazide; phenylacetic hydrazide
(14) 前記ラベル化糖鎖が、下記から選ばれる少なくとも一つのアミノオキシ基含有化合物を、糖鎖の還元末端に結合したものである(1)ないし(10)のいずれか1項に記載の糖鎖試料調製方法。
N-aminooxyacetyl(tryptophyl)arginine methyl ester; O-benzylhydroxylamine; O-phenylhydroxylamine; O-(2,3,4,5,6-pentafluorobenzyl)hydroxylamine; O-(4-nitrobenzyl)hydroxylamine; 2-aminooxypyridine; 2-aminooxymethylpyridine; 4-[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid methyl ester; 4-[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid ethyl ester; 4-[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid n-butyl ester; aminooxy-biotin
である。
【0010】
本発明の方法を用いると、糖鎖をラベル化した後に過剰量のラベル化試薬を簡単に除去することが可能となり、糖鎖分析の高効率化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】モノリスシリカを用いて精製した2AB化糖鎖(フェツインのN型糖鎖)のHPLCチャートである。
図2】モノリスシリカを用いて精製したPA化糖鎖(フェツインのN型糖鎖)のHPLCチャートである。
図3図2の拡大図である。
図4】粒子状シリカゲル用いて精製した2AB化糖鎖(フェツインのN型糖鎖)のHPLCチャートである
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、ラベル化糖鎖を含む試料溶液中の未反応のラベル化試薬を低減させるための糖鎖試料調製方法であって、(工程1)ラベル化糖鎖を含む試料溶液をモノリスシリカと接触させることにより、モノリスシリカに糖鎖成分を吸着させる工程、(工程2)モノリスシリカを洗浄液で洗浄する工程、(工程3)モノリスシリカに溶出液を接触させ、吸着した糖鎖成分を溶出させる工程、を含む糖鎖試料調製方法である。
(工程1)〜(工程3)において、ラベル化糖鎖と未反応ラベル化試薬とが分離されて、精製されたラベル化糖鎖が調製された糖鎖試料として得られ、更にラベル化糖鎖を各種分析方法で分析することができる。
【0013】
(糖鎖試料)
本発明において使用する糖鎖試料は、例えば全血、血清、血漿、尿、唾液、細胞、組織、ウイルス、植物組織などの生体試料から調製されたものを用いることができる。また、精製された、あるいは未精製の糖タンパク質から調製されたものを用いることができる。試料として、別途精製された純粋な糖鎖を用いてもよい。糖鎖遊離手段を用いて上記生体試料に含まれる糖タンパク質から糖鎖を遊離させる。糖鎖を遊離させる手段としては、N−グリコシダーゼあるいはO−グリコシダーゼを用いたグリコシダーゼ処理、ヒドラジン分解、アルカリ処理によるβ脱離などの方法を用いることができる。N型糖鎖の分析を行う場合は、N−グリコシダーゼを用いる方法が好ましい。グリコシダーゼ処理に先立って、トリプシンやキモトリプシンなどを用いてプロテアーゼ処理を行ってもよい。
【0014】
(糖鎖精製)
糖鎖をラベル化する前に、糖鎖以外の莢雑物(例えばタンパク質、ペプチド、核酸、脂質等)を除去することが好ましい。莢雑物の除去法としては、例えばゲルろ過精製、限外ろ過、透析、極性を利用した固相抽出、イオン交換樹脂による精製、溶解性の差を利用した沈殿などを用いることができる。糖鎖と選択的に結合する固相担体(例えば住友ベークライト(株)製 BlotGlyco BS−45601S、非特許文献6参照)による精製を用いることもできる。莢雑物の除去を行わずに糖鎖をラベル化してもよい。
【0015】
(糖鎖のラベル化)
糖鎖を含む試料を、必要に応じて乾燥させたのち、ラベル化試薬を加えて反応させラベル化することができる。ラベル化反応は、例えば、還元的アミノ化反応を用いて任意のアミノ化合物で標識化する反応であることが好ましい。ラベル化試薬としては、糖鎖の還元末端と反応性を有するアミノ基、ヒドラジド基、アミノオキシ基等の官能基を含む物質が好ましい。
【0016】
アミノ基を有する物質としては、以下に列挙した化合物群から選ぶことが好ましいが、これに限定されるものではない。
2-aminopyridine; 2-aminobenzamide; 2-aminoanthranilic acid; 7-amino-1-naphthol; 3-(acetylamino)-6-aminoacridine; 9-aminopyrene-1,4,6-trisulfonic acid; 8-aminonaphtalene-1,3,6-trisulfonic acid; 7-amino-1,3-naphtalenedisulfonic acid: 2-amino-9(10H)-acridone; 5-aminofluorescein; Dansylethylenediamine; 7-amino-4-methylcoumarine; benzylamine
これら化合物のうち、2−aminopyridine(PA化)、2−aminobenzamide(2AB化)、2−aminoanthranilic acid(2AA化)、3−(acetylamino)−6−aminoacridine(AA−Ac化)は糖鎖をHPLC分析する際のラベル化として多用されており、特に好ましい。
また、8-aminonaphtalene-1,3,6-trisulfonic acid(APTS)は糖鎖をキャピラリ電気泳動法で分析する際に多用されており、特に好ましい。
【0017】
ヒドラジド基を有する物質としては、以下に列挙した化合物群から選ぶことが好ましいが、これに限定されるものではない。
2-aminobenzhydrazide; 2-hydrazinobenzoic acid; benzylhydrazine;
5-Dimethylaminonaphthalene-1-sulfonyl hydrazine(Dansylhydrazine); 2-hydrazinopyridine; 9-fluorenylmethyl carbazate(Fmoc hydrazine); 4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene-3-propionoc acid, hydrazide; 2-(6,8-difluoro-7-hydroxy-4-methylcoumarin)acetohydrazide; 7-diethylaminocoumarin-3-carboxylic acid, hydrazide(DCCH); phenylhydrazine; 1-Naphthaleneacethydrazide; phenylacetic hydrazide
【0018】
アミノオキシ基を有する物質としては、以下に列挙した化合物群から選ぶことが好ましいが、これに限定されるものではない。
N-aminooxyacetyl(tryptophyl)arginine methyl ester; O-benzylhydroxylamine; O-phenylhydroxylamine; O-(2,3,4,5,6-pentafluorobenzyl)hydroxylamine; O-(4-nitrobenzyl)hydroxylamine; 2-aminooxypyridine; 2-aminooxymethylpyridine; 4-[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid methyl ester; 4-[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid ethyl ester; 4-[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid n-butyl ester; aminooxy-biotin
これらの化合物のうち、N-aminooxyacetyl(tryptophyl)arginine methyl ester(aoWR)は、MALDI-TOF MS測定時の感度を向上させる効果があり、特に好ましい。
【0019】
上記化合物の合成は、特に限定されないが、例えば国際公報WO2008/018170号公報等に示されるような公知法に従って行うことができる。
本発明の方法は、ラベル化反応の条件に限定されるものではないが、例えば糖鎖に対して10等量以上のラベル化試薬を添加し、還元剤の存在下で加熱反応を行うことが好ましい。反応系においてpHが酸性から中性の条件であるのが好ましく、好ましくは2〜9、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜7である。反応温度に関しては4〜90℃が好ましく、好ましくは25〜90℃で、さらに好ましくは40〜90℃である。反応時間は、10分間〜24時間、好ましくは10分間〜8時間、より好ましくは10分間〜3時間である。ヒドラジド基含有化合物、アミノオキシ基含有化合物でラベル化を行う場合には、還元剤は必ずしも添加しなくともよい。
【0020】
特に、アミノ化合物が2−aminobenzamideの場合、pHが酸性から中性の条件で、好ましくは2〜9、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜7である。反応温度に関しては4〜90℃、好ましくは30〜90℃で、さらに好ましくは40〜80℃である。アミノ化合物の濃度は1mM〜10M、好ましくは10mM〜10Mで、さらに好ましくは100mM〜1Mである。還元剤の濃度は、1mM〜10M、好ましくは10mM〜10M、さらに好ましくは100mM〜2Mである。反応時間は、10分間〜24時間、好ましくは10分間〜8時間、さらに好ましくは1時間〜3時間である。
【0021】
また、還元剤は例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、メチルアミンボラン、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ピコリンボラン、ピリジンボランなどが使用可能であるが、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを使用するのが反応性の面から考えて好ましい。
【0022】
(ラベル化糖鎖の精製)
上記の方法により調製されたラベル化糖鎖溶液には、未反応のラベル化試薬が含まれているため、直接分析に供することは困難である。このため、測定前に予め未反応のラベル化試薬を除去することが必要となる。試薬の除去にはゲル粒子、あるいはシリカゲル粒子等をカラム、カートリッジに充填したデバイスを用いることが多い。これらのカラム(カートリッジ)の分離性能を上げるためには、固相の充填密度を上げる、充填剤の数平均直径を小さくする、のいずれかの方法が通常用いられる。しかし、前者では、充填剤の形状や直径のばらつきが原因となって充填密度が思うように上がらず、後者では、カラムや装置への圧力負荷が大きくなるため、処理速度に限界を生じやすい。また、小スケールのカラム(カートリッジ)では、充填剤を保持するために必要なフリット(ビーズ塞き止め用の部材)のデッド・ボリュームが分離性能、回収率を下げる要因となりやすい。
【0023】
本発明では、これらの問題を回避するための手段として、モノリスシリカを用いる。モノリスシリカとは、3次元網目構造をもつフィルター状の多孔質連続体をなすシリカであり、従来の粒子状シリカと比較して、通液性が良好、フリットが不要、デッドボリュームが少ないなどの長所がある(特開平6−265534)。モノリスシリカはカラム状の容器、あるいは、マルチウェルプレートに固定されていることが好ましい。
【0024】
モノリスシリカのポアサイズについては、小さすぎると通液性が低下し、大きすぎると理論段数が低下し、糖鎖の回収量が低下する。そのため、モノリスシリカのポアサイズは、例えば、互いに連続した細孔(スルーポア)径が1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは1〜30μmであり、1〜20μmであることが最も好ましい。
モノリスシリカの性状については、順相モード、あるいは、HILIC(Hydrophilic interaction chromatography)モードが好ましい。
【0025】
モノリスシリカの使用形態としては、モノリスシリカが固定されたカラムあるいはマルチウェルプレートにラベル化糖鎖を含む試料溶液を注入し、自然落下、吸引、加圧、遠心などの方法により試料溶液をモノリスシリカ部を通過させたのち、洗浄液で洗浄し、溶出液を添加し糖鎖成分を溶出させることが好ましい。
【0026】
モノリスシリカにアプライする試料溶液は、90体積%以上の有機溶媒を含むことが好ましく、95体積%以上の有機溶媒を含むことがさらに好ましい。有機溶媒はアセトニトリル、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘキサン、酢酸エチル、塩化メチレン、テトラヒドロフランなどを用いることができるが、アセトニトリルが最も好ましい。
【0027】
糖鎖試料をアプライしたのち、モノリスシリカを洗浄液で洗浄することが好ましい。洗浄液は90体積%以上の有機溶媒と10体積%以下の水を含むことが好ましく、95体積%以上の有機溶媒と5体積%以下の水を含むことがさらに好ましい。有機溶媒はアセトニトリル、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘキサン、酢酸エチル、塩化メチレン、テトラヒドロフランなどを用いることができるが、アセトニトリルが最も好ましい。組成の異なる洗浄液、たとえば100%アセトニトリルと、アセトニトリル/水(95:5,v/v)混合溶媒で順次洗浄することも好ましい。
【0028】
洗浄操作後、モノリスシリカに溶出液を添加し、吸着したラベル化糖鎖を溶出することが好ましい。溶出液は10体積%以上の水を含むことが好ましく、50体積%以上の水を含むことがより好ましく、水が最も好ましい。水以外の成分は、例えば、アセトニトリル、および、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールに代表されるアルコールから選ばれる有機溶媒であることが好ましい。
回収した糖鎖溶液は、必要に応じて濃縮、乾燥、あるいは希釈して各種測定に供することができる。
【0029】
(MALDI−TOF MSを用いた糖鎖分析)
得られたラベル化糖鎖は、MALDI−TOF MSに代表される質量分析法で分析することができる。特に糖鎖がN−aminooxyacetyl−tryptophanyl(arginine methyl ester)でラベル化されている場合、MALDI−TOF MSを用いて高感度分析を行うことができる。
【0030】
(HPLCを用いた糖鎖分析)
得られたラベル化糖鎖は、HPLCを用いて分析することができる。特に糖鎖がPA化、2AB化、2AA化、AA−Ac化されている場合、特に好適に分析可能である。
【0031】
(その他の糖鎖分析)
得られたラベル化糖鎖は、LC−MS、HPLC−MS、キャピラリ電気泳動など各種分析に供することができる。
【実施例】
【0032】
以下の実施例にて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。
(糖鎖試料の調製)
モデル糖タンパク質としてフェツイン(ウシ胎児血清由来)を用いた。フェツイン1mgを容器に取り、100mM重炭酸アンモニウム溶液50μLに溶解させた。120mMジチオスレイトール溶液5μLを加えて60℃で30分インキュベートしたのち、123mMヨードアセトアミド溶液10μLを加え、室温で1時間静置した。さらにトリプシン400unitを加え、37℃で16時間静置した。90℃で5分間処理してトリプシンを失活させたのち、N−glycosidase F(Roche Diagnostics社製)1unitを添加し、37℃で16時間インキュベートすることで糖鎖を遊離させた。純水を加えて液量を100μLに調整した。
【0033】
(糖鎖精製)
糖鎖捕捉性を有するポリマービーズを用いて糖鎖精製を行った。上記で得られたフェツイン糖鎖溶液20μL(フェツイン200μg相当)を、ヒドラジド基含有ポリマービーズ(住友ベークライト株式会社製、BS−45601S)5mgに添加し、2%酢酸を含むアセトニトリル180μLを加えたのち、80℃で1時間反応させ、乾固させた。2Mグアニジン塩酸塩溶液、水、メタノール、1%トリエチルアミン溶液にてポリマービーズを洗浄後、10%無水酢酸/メタノール溶液を添加し、室温で30分間反応させヒドラジド基をキャッピングした。キャッピング後、メタノールおよび水でポリマービーズを洗浄した。ビーズに純水20μLおよび2%酢酸を含むアセトニトリル180μLを加え、80℃で1時間加熱・乾固させることにより、ビーズから糖鎖を遊離させた。
【0034】
(糖鎖のラベル化)
糖鎖のラベル化を以下の2通りのいずれかで行なった。
(2ABラベル化)
2−aminobenzamideを350mMの濃度で30%(v/v)酢酸/DMSO混合溶媒に溶解した。さらに、還元剤としてシアノ水素化ホウ素ナトリウムを1Mの濃度で上記溶液に溶解した。この溶液50μLを上述のビーズに添加し、80℃で2時間反応させることにより糖鎖を2ABラベル化した。上清を回収し、2ABラベル化糖鎖溶液(未反応の2ABを含む)を得た。
【0035】
(PAラベル化)
2−aminopyridine 552mgを酢酸200μgに溶解した(PA溶液)。dimethylamine−borane 200mgを酢酸水溶液(純水50μLと酢酸80μLを混合)に溶解した(還元剤溶液)。
PA溶液30μLを上述のビーズに添加し、90℃で1時間反応させた。その後、還元剤溶液110μLを加え、80℃で35分間反応させた。
【0036】
(ラベル化糖鎖の精製)
未反応のラベル化試薬を除去するため、以下の方法で固相抽出を行った。
(実施例1)
2ABラベル化した試料溶液から、モノリスシリカを用いて未反応2ABの除去を行った。モノリスシリカとして、ジーエルサイエンス株式会社製「MonoFasスピンカラム」を用いた。本カラムは、スルーポア径15μmのディスク状モノリスシリカフィルターが容量約1mLのチューブの底部に固定されたものであり、試料溶液をチューブ内に注入して遠心することにより、試料溶液をモノリスシリカの細孔内を通過させる仕組みになっている。
上記で得た2ABラベル化糖鎖溶液をアセトニトリルで希釈し、アセトニトリル含量が95%(v/v)となるように調製した。この試料溶液の全量を、モノリスシリカスピンカラムに注入し、卓上遠心機で遠心して通過させてラベル化糖鎖を吸着させた。アセトニトリル、アセトニトリル/水(95:5,v/v)でカラムを順次洗浄したのち、純水50μLを加えて吸着成分を溶出させ、回収した。
【0037】
(実施例2)
PAラベル化した試料溶液から、モノリスシリカを用いて未反応PAの除去を行った。操作は実施例1と同様に行った。
【0038】
(比較例1)
2ABラベル化した試料溶液から、粒子状シリカゲルを用いて未反応2ABの除去を行った。シリカゲルは三菱化学ヤトロン製「イアトロビーズ6RS−8060」を用いた。シリカゲル約30mgをディスポーザブルカラム(ポリプロピレン製のカラムにポリエチレン製のフリットを装着したもの)に充填し、これに実施例1と同様に調製した試料溶液を添加し、溶液をカラム内で自然落下させてラベル化糖鎖を吸着させた。アセトニトリル、アセトニトリル/水(95:5,v/v)でカラムを順次洗浄したのち、純水50μLを加えて吸着成分を溶出させ、回収した。
【0039】
(HPLC測定)
上記実施例および比較例の方法で得た糖鎖溶液をHPLCで測定した。HPLC装置は日立ハイテクノロジーズ製LaChrom ELITE(L−2130ポンプ、L−2200オートサンプラー、L−2350カラムオーブン、L−2485蛍光検出器)を用い、分析用カラムは昭和電工製Shodex Asahipak NH2P−50 4Eを用いた。分析はグラジエントモードで行い、移動相は(A)2%(v/v)酢酸/アセトニトリル溶液、(B)3%(v/v)酢酸、5%(v/v)トリエチルアミン/水溶液を用い、90分間で(A)の比率を70%から5%に変化させた。カラム温度は40℃に保った。検出は蛍光検出で行い、実施例1および比較例(2AB化糖鎖)の場合は励起波長330nm、蛍光波長420nmで検出し、実施例2(PA化糖鎖)の場合は励起波長320nm、蛍光波長400nmで検出した。サンプル溶液の注入量は、実施例、比較例とも、全サンプル溶液の1/20、すなわち、フェツインに換算して10μgとなるように調整した。
【0040】
図1には実施例1(モノリスシリカ)の方法で精製した2AB化糖鎖のHPLCチャートを示す。図2には実施例2(モノリスシリカ)の方法で精製したPA化糖鎖のHPLCチャートを示し、図3には図2の拡大図を示す。また、図4には比較例(粒子状シリカゲル)の方法で精製した2AB化糖鎖のHPLCチャートを示す。
横軸は保持時間(分)、縦軸は蛍光強度(a.u.)である。図中、(a)は未反応ラベル化試薬由来のピーク、(b)はシアル酸を1つ含む糖鎖由来のピーク、(c)はシアル酸を2つ含む糖鎖由来のピーク、(d)はシアル酸を3つ含む糖鎖由来のピーク、(e)はシアル酸を4つ含む糖鎖由来のピークを示す。
又、表1に実施例1、比較例1のHPLCチャートの各ピーク(a)〜(e)の面積値を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例、比較例ともに未反応のラベル化試薬由来のピーク(図中、a)は、糖鎖由来のピーク(図中、(b)〜(e))の検出を阻害しない程度に小さく、いずれの方法でも未反応試薬の除去は十分に行われていることが示された。実施例1および比較例1に着目すると、2AB化糖鎖フェツイン糖鎖由来のピーク (図中、(b)〜(e))については、実施例1の方が比較例1よりも明らかに面積が大きく、モノリスシリカを使用した方がラベル化糖鎖の回収量が多いことが分かった。いずれの方法でも、ピークのパターンは文献(J. Proteome Res., , pp.146−152(2005)など)で報告されているものと良好な一致を示した。
本発明において利用されるモノリスシリカは、従来、核酸の精製等に利用されていた(WO2005−078088、特開2006−296220)。一方、ラベル化糖鎖の精製には、従来、粒子状のシリカ、グラファイトカーボン、ゲルろ過ビーズ等が利用されていた。本発明においては、ラベル化糖鎖と未反応ラベル化試薬の分離へのモノリスシリカの応用を試みた。結果、モノリスシリカを用いることにより、従来の糖鎖の精製方法と比較して、操作をより簡便化し、糖鎖精製の効率を向上させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の方法を用いると、糖鎖のラベル化反応後におこなう未反応試薬の除去工程の簡便化および高収率化が可能であり、糖鎖研究はもとより、天然物からの糖鎖回収、糖鎖標準物質の製造、さらには、糖鎖分析による疾患マーカーの探索、糖鎖分析による診断など医療の分野での利用可能性がある。
図1
図2
図3
図4