(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光学部品のベースフィルムに使用されるシートを形成する、フィルム基材表面への、該フィルム基材を構成するポリマーの三量体を主成分とするオリゴマーの析出を防止する方法であって、
前記フィルム基材に、高圧水銀灯または無電極ランプにより発生させた、350〜450nmの波長域にピーク出力特性を持つ紫外線を複数回に分け、かつ12秒以上120秒以下の積算時間で照射し、前記フィルム基材の少なくとも一部を改質させ、被膜を形成させることにより行うことを特徴とするオリゴマーの析出防止方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、上記発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
《シート》
図1に示すように、本実施形態に係るシート10は、例えば透明ポリエステルフィルムなどのフィルム基材11を有する。本実施形態では、フィルム基材11表面の少なくとも一部が改質されており、ここに被膜12が形成されている。この被膜12が、本実施形態ではフィルム基材11の内部からフィルム基材11表面へのオリゴマーの析出を防止する機能を司る。
【0023】
本実施形態の被膜12は、第1に、その表面硬度が適切に調整されている。具体的には、マルテンス硬さ(HM)が特定の値より大きく、押し込み弾性率(EIT)が特定の値より小さく調整されている。
【0024】
マルテンス硬さ(HM)は、ビッカース圧子により被膜12の表面を押し込んだときの試験荷重と押し込み表面積から求められる被膜12の硬さ(凹み難さ)を表し、被膜12の表面の硬さの指標となる。本実施形態では、被膜12のHMの値は、フィルム基材の材質によって異なってくるので一概には言えないが、好ましくは200N/mm
2 以上、より好ましくは210N/mm
2 以上に調整されている。本発明者らは、被膜12のHMを所定値以上に調整することで、傷付き難くなると共に、フィルム基材11の内部から外部へのオリゴマーの析出を効果的に防止することができることを見出した。一方で、フィルム基材11が劣化することによるシート10の平面性を考慮すると、被膜12のHMは、好ましくは350N/mm
2 以下、より好ましくは300N/mm
2 以下に調整されることが望ましい。
【0025】
なお、本実施形態においてHMの値は、温度20度及び相対湿度60%の雰囲気下で、超微小硬さ試験装置(フィッシャー・インストルメンツ社、商品名:フィッシャー・スコープ・HM2000)により、ISO−14577−1に準拠した方法で被膜12の表面の硬さを測定した値である。ただし、最大試験荷重:1mNで測定した値である。
【0026】
押し込み弾性率(EIT)は、ヤング率に相当し、被膜12の撓み易さ(柔軟性)を表し、被膜12の脆さの指標となる。本実施形態では、被膜12のEITが、好ましくは4300MPa以下、より好ましくは4200MPa以下、さらに好ましくは4100MPa以下に調整されている。被膜12のEITを所定値以下に調整することで、折り曲げてもクラックなどを生じない柔軟性に優れたシート10とすることができる。一方で、被膜12のEITが小さすぎると、上述したHMの適正範囲と両立させることが難しくなるとともに、オリゴマーの析出防止性も低下する傾向にある。このため、被膜12のEITは、好ましくは3400MPa以上、より好ましくは3500MPa以上に調整されることが望ましい。
【0027】
なお、EITの値は、上述したHMの場合と同じ装置を用い、ISO−14577−1に準拠して測定されるヤング率に相当する値であり、被膜12に対して圧子を押し込んだときの圧痕の戻りやすさ(弾性率)を測定することで算出される、被膜12そのもののヤング率のことである。ただし、HMと同様に、最大試験荷重:1mNで測定した値である。
【0028】
本実施形態の被膜12は、第2に、その厚み(t)が適切に調整されている。具体的には、その厚み(t)は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上である。厚みが薄すぎると、オリゴマーの析出防止効果を発揮することができないからである。その一方で厚みが厚すぎると、シート10の平面性が損なわれることもある。このため、被膜12の厚みtは、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.2μm以下とする。
【0029】
シート10の耐屈曲試験の値(耐クラック性1)は、被膜12の厚みtやフィルム基材11の種類や厚みによって異なってくるが、好ましくは2mm以下に調整されていることが望ましい。耐屈曲試験の値が所定値以下に調整されることにより、被膜12の耐クラック性を向上させることができる。なお、耐屈曲試験の値は、JIS−K5600−5−1(1999)に準拠した円筒形マンドレル法で測定した値である。
【0030】
シート10の折曲試験による状態(耐クラック性2)は、被膜12の厚みtやフィルム基材11の種類や厚みによって異なるが、シート10の任意箇所を被膜12が外側になるよう2つに折り曲げたときに、その折り曲げた箇所にクラックが生じない程度の柔軟性を備えていることが望ましい。
【0031】
《シートの製造方法》
本実施形態の被膜12は、フィルム基材11の表面に電離放射線を所定の露光量で照射し、フィルム基材11表面の少なくとも一部を改質させることによって形成することができる。以下では、電離放射線として紫外線を用いる場合を例示し、シート10の製造方法の一例を説明する。
【0032】
まず、フィルム基材11の準備する。フィルム基材11としては、例えば透明ポリエステルフィルムなどが用いられる。フィルム基材11は、その表面に易接着処理が施されていてもよい。フィルム基材11の厚みは特に限定されない。
【0033】
次に、準備したフィルム基材11に紫外線を照射する。フィルム基材11として、その表面に易接着処理が施されているものを用いる場合、紫外線照射面はフィルム基材11の易接着処理面でもよいし、非易接着処理面でもよい。
【0034】
本発明者らは、フィルム基材11に紫外線を所定露光量以上で照射することにより、フィルム基材11の紫外線照射部分の少なくとも一部が表面改質し、その結果、フィルム基材11の内部から外部へのオリゴマーの析出を防止する被膜12を、フィルム基材11とは別被膜として形成することができることを見出した。
【0035】
なお、本実施形態において「オリゴマー」とは、加熱処理後、結晶化してフィルム基材11の表面に析出する低分子量物のうちフィルム基材11を構成するポリマーの三量体成分を主とするものと定義する。「オリゴマーの析出を防止する」とは、フィルム基材11を150℃の温度で1時間、加熱処理した後、フィルム基材11の被膜12形成面側を200倍の顕微鏡で観察した際に10視野当たり(面積0.5mm
2 )、円相当径で2μmφ以上の析出物が50個未満、好ましくは20個以下、さらに好ましくは10個以下であることをいう。
【0036】
紫外線を照射するには、紫外線ランプを用い、例えば100〜500nm、好ましくは200〜450nmの発光波長域で紫外線を発生させ、これを所定露光量で照射することにより行われる。紫外線ランプとしては、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、無電極ランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどが挙げられる。
本実施形態では、発光波長域が上述した範囲にあり、少なくとも360〜370nmにピーク出力(ピーク強度)を発生させる紫外線ランプを用いることが望ましい。また、発光波長域が上述した範囲にあり、360〜370nmに加えて、さらに250〜320nmにもピーク出力を発生させる紫外線ランプ(例えば高圧水銀灯、無電極ランプなど)を用いることもできる。360〜370nmに、上述した発光波長域内でのランプ出力(w/10nm)が最大となるピーク(最大ピーク)を有することとなるものが望ましいが、250〜320nmに最大ピークを有するものであってもよい。360〜370nmや250〜320nmには存在すべきピークは1つに限らず、2つ以上の場合も含まれる。こうした特定の波長域にピーク(最大ピークを含む)を持つ光線を用いることにより、形成される被膜12に対して付与されるオリゴマーの析出防止効果が一層向上する。
【0037】
紫外線の積算照射量は、露光量で、例えば1500mJ/cm
2 以上、好ましくは2000mJ/cm
2 以上、より好ましくは2500mJ/cm
2 以上である。ただし、照射露光量があまりに大きいとフィルム基材11が劣化しシート10の平面性が損なわれるおそれがあるため、好ましくは30000mJ/cm
2 以下、より好ましくは25000mJ/cm
2 以下の露光量で照射することができる。一度にこの量で照射する必要はなく、小さな露光量を数度に分けて照射することもできる。所定露光量を数回に分けて照射することにより、大きな露光量を一度に照射する場合と比較して、積算照射量が同じでも、フィルム基材11が受けるダメージを低減することができる。
【0038】
なお、本実施形態では紫外線の照射は、フィルム基材11の一方の面にのみ行ってもよいし、あるいは両面に行ってもよい。紫外線をフィルム基材11の両面に照射する場合、各面ごとに照射露光量を変えてもよい。
【0039】
本実施形態では、フィルム基材11に紫外線を所定露光量以上で照射する。これにより、フィルム基材11の紫外線照射部分の少なくとも一部が改質され、ここに被膜12が形成される。形成された被膜12は、上述したように、適切な表面硬度と厚みを有するので、フィルム基材11の内部からフィルム基材11表面へのオリゴマーの析出が効果的に防止される。従って、本実施形態によれば、別途の塗料の調合、塗布その他の工程など生産性を悪化させる要因を含む従来手法と比較して、簡易な方法でフィルム基材11表面へのオリゴマーの析出を防止することができる。
【0040】
また、形成される被膜12は、その表面硬度と厚みtが適切に調整されているので、本実施形態のシート10を光学用途のベースフィルムに使用する場合に必要な耐クラック性、耐ブロッキング性、耐溶剤性、ぬれ性改良などの諸性能をも充足することができる。
【0041】
《積層体》
図2及び
図3に示す積層体20は、何れも、上述した
図1に示すシート10を有する。以下の説明では、シート10として、フィルム基材11の一方の面に被膜12を有する場合を例示する。
【0042】
図2に示すように、本実施形態の第1の観点では、シート10の被膜12とは反対面に各種機能が付与される第1機能層22が積層してある。第1機能層22としては、例えばハードコート層、反射防止層などの単層膜又は多層膜が挙げられる。
【0043】
図3に示すように、本実施形態の第2の観点では、シート10の被膜12の面に上述した粘着層や透明導電層などの第2機能層24が形成してある。この場合、シート10の被膜12とは反対面に、さらに
図2に示す第1機能層22が積層してあってもよい。
【0044】
《ハードコート層》
ハードコート層は、積層体20の表面硬度を高くし、表面に傷が発生することを防止するために設けられる。従って、第1機能層22としてハードコート層を用いる場合の当該ハードコート層の表面硬度は、好ましくはH以上、より好ましくは2H以上、さらに好ましくは3H以上である。表面硬度の値は、JIS−K5400(1990)に準拠した方法で測定した鉛筆引っかき値(鉛筆硬度)で示される。
【0045】
ハードコート層は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの樹脂で構成される。特に、電離放射線硬化性樹脂で構成した場合には、表面硬度等に代表されるハードコート性を発揮できるため好ましい。
【0046】
熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアタリレート系樹脂、ポリウレタンアタリレート系樹脂、エポキシアタリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0047】
電離放射線硬化性樹脂としては、電離放射線(紫外線または電子線)の照射によって架橋硬化する光重合性プレポリマーを用いることができる。この実施形態では、後述の光重合性プレポリマーを単独で使用してもよく、また2種以上を組合せて使用することもできる。
【0048】
光重合性プレポリマーには、カチオン重合型とラジカル重合型とがある。
【0049】
カチオン重合型光重合性プレポリマーとしては、エポキシ系樹脂やビニルエーテル系樹脂などが挙げられる。エポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
ラジカル重合型光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマー(硬質プレポリマー)が、ハードコート性の観点から特に好ましく使用される。
【0051】
アクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレート等が挙げられる。
【0052】
ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えばポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化することにより得ることができる。ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、又は、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラックエポキシ樹脂のオキシラン環と、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化することにより得ることができる。アクリル系プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性の向上や、硬化収縮の調整等、種々の性能を付与するために、光重合性モノマーを加えることが好ましい。
【0053】
光重合性モノマーとしては、単官能アクリルモノマー(例えば2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等)、2官能アクリルモノマー(例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等)、3官能以上のアクリルモノマー(例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等)が挙げられる。なお、「アクリレート」には、文字通りのアクリレートの他、メタクリレートも含む。これらの光重合性モノマーは単独で使用してもよく、また2種以上を組合せて使用することもできる。
【0054】
ハードコート層を形成する際に、紫外線照射によって硬化させて使用する場合には、上述した光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーの他に、光重合開始剤、光重合促進剤、紫外線増感剤等の添加剤を配合することが好ましい。
【0055】
光重合開始剤としては、ラジカル重合型光重合性プレポリマーや光重合性モノマーに対しては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。カチオン重合型光重合性プレポリマーに対する光重合開始剤としては、例えば芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオンなどのオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートなどの陰イオンとからなる化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を組合せて使用することもできる。光重合促進剤としては、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。紫外線増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィンなどが挙げられる。
【0056】
これら添加剤の配合量は、上述した光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーの合計100重量部に対して、通常0.2〜10重量部の範囲で選ばれる。
【0057】
この実施形態のハードコート層には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、必要に応じて、添加成分を適宜配合してもよい。添加成分としては、例えば、表面調整剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、蛍光増白剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤、貯蔵安定剤、架橋剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0058】
ハードコート層は、その厚みが、0.1〜30μm程度であることが好ましい。より好ましくは0.5〜15μm、さらに好ましくは2〜10μmとする。厚みを0.1μm以上とすることで、ハードコート層側にも十分な表面硬度(ハードコート性)を発揮させることができる。
【0059】
《反射防止層》
反射防止層は、ハードコート層の表面に設けられ、ハードコート層の表面部分での映り込みを減少させ、積層体20全体の全光線透過率を向上させるために設けられる。表面部分での映り込みを防止するためにハードコート層の屈折率を小さく設計することも考えられる。ところが、屈折率が小さくなるようにハードコート層を設計すると、ハードコート層のハードコート性が低下することがあるので、ハードコート層の表面に、ハードコート層の屈折率より低い屈折率を持つ反射防止層を薄い厚みで形成することが好ましい。
【0060】
反射防止層は、ハードコート層よりも屈折率の低い材料で構成されればよく、例えばケイ素系樹脂、フッ素系樹脂、金属酸化物ゾルや、これらに金属酸化物微粒子、好ましくは多孔状または中空状の金属酸化物微粒子を加えたものが挙げられる。またハードコート層の説明欄で列挙した樹脂に前記金属酸化物微粒子を加えたものも使用可能である。
【0061】
金属酸化物ゾルとしては、シリカ、アルミナゾルなどが挙げられる。これら金属酸化物ゾルの中でも、屈折率、流動性、コストの観点から、シリカゾルが好適に使用される。なお、金属酸化物ゾルとは、金属酸化物の存在によってチンダル現象を観測できない材料をいい、いわゆる均一溶液のことをいう。例えば、一般にコロイダルシリカゾルと言われる材料であっても、チンダル現象が観測されるものであれば、この実施形態では金属酸化物ゾルに含まれないものとする。
【0062】
このような金属酸化物ゾルは、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジルコニアプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタンイソプロポキシドなどの金属アルコキシドを加水分解して調整することができる。金属酸化物ゾルの溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、1,4一ジオキサンなどが挙げられる。
【0063】
金属酸化物微粒子は、上述した金属酸化物を微粉末化したものであり、シリカ微粒子、アルミナ微粒子などが挙げられる。これらの中でも屈折率、流動性、コストの観点から、シリカ微粒子が好適に使用される。また、金属酸化物微粒子の形状は特に制限されることはないが、屈折率の低い多孔状又は中空状の金属酸化物微粒子が好適に使用される。
【0064】
このような金属酸化物微粒子としては、これを分散液とした際にチンダル現象が観測されるような一定の粒子径を有するものを使用する。金属酸化物微粒子の平均粒子径は、前記条件を満たす限り特に制限されることはないが、40〜100nmの範囲であることが好ましい。平均粒子径が40nm以上の微粒子を用いることにより、反射防止層の表面に浮上する金属酸化物粒子がなくなり、表面硬度の低下を防止することができ、100nm以下の微粒子を用いることで、反射防止層から金属酸化物微粒子がはみ出すことがなくなり、表面硬度の低下を防止することができる。また、透明性を良好なものとするために、金属酸化物微粒子の平均粒子径は、さらに好ましくは40〜70nmの範囲とする。
【0065】
金属酸化物ゾルと金属酸化物微粒子の混合割合は、特に限定されるものではないが、金属酸化物ゾル中の金属酸化物成分100重量部に対し、金属酸化物微粒子が、好ましくは5重量部以上、より好ましくは20重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下である。
【0066】
反射防止層の厚みは、光の反射防止理論より次式を満たすことが好ましい。
[数1] d=(a十1)λ/4n
ここで、dは反射防止層の厚み(単位は「nm」)、aは0又は正の偶数、λは反射を防止しようとする光の中心波長、nは反射防止層の屈折率である。具体的には、例えば2μm程度以下が好ましく、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.8μm以下、特に好ましくは0.5μm以下、最も好ましくは0.3μm以下である。反射防止層の厚みが厚くなると、厚みムラに起因する干渉ムラが発生し難くなる反面、下面に設けられるハードコート層のハードコート性が発揮され難くなる。
【0067】
上述したハードコート層、反射防止層の形成方法としては、各々の構成成分や必要に応じて他の成分を配合して、さらに適当な溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調製し、当該塗布液をロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法、ダイコーティング法、ブレードコーティング法、スピンコーティング法、グラビアコーティング法、フローコーティング法、スクリーン印刷法などの公知の方法によりシート10に順次塗布して乾燥させ、必要であれば適宜必要な硬化方法で硬化させることにより形成することができる。
【0068】
《粘着層》
粘着層としては、例えば、天然ゴム系、再生ゴム系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレン・ブタジエン系などのエラストマー粘着剤、アクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ウレタン系、シアノアクリレート系などの合成樹脂粘着剤のほか、エマルジョン系粘着剤などの公知の粘着剤で構成することができる。粘着層は、粘着性を発揮させるために厚み5μm以上にするのが一般的である。このような粘着層は、粘着性成分、および必要に応じて加えた架橋剤や他の添加剤を溶剤に溶解または分散して粘着層用塗布液を調製し、上述した反射防止層と同様の従来公知のコーティング方法により、シート10の被膜12上に塗布、乾燥することにより作製することができる。また、上記粘着層用塗布液をセパレーター等に塗布、乾燥した後、シート10の被膜12上にラミネートすることにより作製することもできる。
【0069】
上述した第1機能層22には、紫外線吸収性能をもたせることも可能である。特に350〜380nmの範囲の光線透過率を0.1%〜70%程度とした場合、ハードコート性を保持しながら、耐候性を付与することができる。ハードコート層に電離放射線硬化性樹脂を用いた場合には、電離放射線硬化性樹脂が硬化する紫外線領域と吸収する紫外線領域を調整することにより、ハードコート層の硬化に影響を与えることなく、紫外線吸収性の付与できる。例えば、紫外線吸収剤の吸収波長域のピークと20nm以上異なる位置に吸収波長域のピークを有する光重合開始剤を用いることが好ましい。このようにすることによりハードコート層を十分に硬化させることができ、優れたハードコート性を付与することができる。
【0070】
《透明導電層》
透明導電層としては、例えば一般的に広く知られた透明導電性材料や有機導電性材料などで構成することができる。透明導電性材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫、金、銀、パラジウムなどの透明導電性物質が挙げられる。有機導電性材料としては、例えばポリパラフェニレン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリピリジン等の導電性高分子が挙げられる。中でも、透明性と導電性に優れ、比較的低コストに得られる酸化インジウム、酸化錫又は酸化インジウム錫のいずれかを主成分とした透明導電性材料で構成されていることが好ましい。
【0071】
透明導電層は、上述した導電性材料を用いて、ドライプロセス(例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法など)やウェットプロセス(例えば溶液塗布法など)により、薄膜状態で形成することができる。
【0072】
透明導電層の厚みは、適用する材料によっても異なるため一概には言えないが、表面抵抗率で1000Ω以下、好ましくは500Ω以下になるような厚みとする。例えば、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。経済性を考慮すると、80nm以下、好ましくは70nm以下の範囲が好適である。このような薄膜においては透明導電層の厚みムラに起因する可視光の干渉縞は発生しにくい。また、全光線透過率は通常80%以上であることが好ましく、85%以上がさらに好ましく、88%以上が特に好ましい。
【0073】
本実施形態では特に、シート10の被膜12とは反対面側に、透明ハードコート層と反射防止層が順次積層された第1機能層22が形成してあり、被膜12の表面側に、透明導電層で構成される第2機能層24が形成してある構造の積層体20は、帯電防止フィルムや赤外線遮蔽フィルム、反射防止フィルム、電磁波シールドフィルム、タッチパネルなどの電極基板として使用することができる。
【0074】
以下の説明では、シート10の被膜12とは反対面側に透明ハードコート層と反射防止層が順次積層された第1機能層22が形成してあり、被膜12の表面側に透明導電層で構成される第2機能層24が形成してある積層体20を、タッチパネルに使用する場合を例示する。
【0075】
《タッチパネル》
図4に示すタッチパネル5は、各種電子機器(例えば携帯電話やカーナビ等)に設けられる液晶等の表示素子9の前面に装着される抵抗膜方式のタッチパネルである。このタッチパネル5を通して背面の表示素子9に表示された文字や記号、絵柄等の視認や選択を行い、指や専用ペン等で押圧操作することによって、機器の各機能の切換えを行うことができる。
【0076】
この実施形態のタッチパネル5は、上電極基板(第1の電極基板)52と、下電極基板(第2の電極基板)54とを有する。上電極基板52は、上透明基板(第1の透明基板)522を有する。上透明基板522の下面には、上透明導電膜(第1の透明導電膜)524が形成されている。下電極基板(第2の電極基板)54は、下透明基板(第2の透明基板)542を有する。下透明基板542の上面には、下透明導電膜(第2の透明導電膜)544が形成されている。
【0077】
タッチパネル5は、上電極基板52側と下電極基板54側の何れかが可動電極であってもよいが、この実施形態では、上電極基板52を可動電極とし、下電極基板54を固定(非可動)電極とする場合を例示する。
【0078】
この実施形態では、上電極基板52の下面と下電極基板54の上面のそれぞれの外周部分は、略額縁状のスペーサ56を介して貼り合わされている。また、上電極基板52の上透明導電膜524と、下電極基板54の下透明導電膜544とが、所定の間隙を空けて対向するように配置されている。下透明導電膜544の上面には、必要に応じてドット状のスペーサ58が所定間隔で複数配置される。なお、スペーサ58は必要に応じて配置すれば良く、スペーサ58を配置しない構成にすることも可能である。
【0079】
上下透明導電膜524,544の両端には、それぞれ一対の電極(図示省略)が形成されている。この実施形態では、上透明導電膜524に形成される一対の上電極(図示省略)と、下透明導電膜544に形成される一対の下電極(図示省略)とは、互いに交差する方向に配置されている。
【0080】
なお、この実施形態では、下電極基板54の下面には、接着層7を介してセパレータ(図示省略)が貼付してあってもよい。
【0081】
この実施形態のタッチパネル5を、例えばカラー液晶等の表示素子9の前面に搭載するには、まずこの実施形態のタッチパネル5のセパレータ(図示省略)を剥がして接着層7を露出させ、表示素子9の前面に対向するように接触させる。これにより、タッチパネル付きカラー液晶表示素子を形成することができる。
【0082】
このタッチパネル付き液晶表示素子では、ユーザがタッチパネル5の背面に配置される表示素子9の表示を視認しながら、指やペン等で上電極基板52の上面を押圧操作すると、上電極基板52が撓み、押圧された箇所の上透明導電膜524が下透明導電膜544に接触する。この接触を上述した一対の上下電極を介して電気的に検出することにより、押圧された位置が検出される。
【0083】
この実施形態では、可動電極としての上電極基板52を、上述した積層体20(=下から上へ向けて順次、第2機能層24(透明導電層)、被膜12、フィルム基材11、第1機能層22(透明ハードコート層及び反射防止層)が積層してある構造)で構成してある。積層体20の第2機能層24(透明導電層)が上透明導電膜524に相当する。
【0084】
この実施形態では、固定電極としての下電極基板54の下透明基板542は、例えばガラスなどで構成される。
【0085】
なお、この実施形態では、可動電極に加えて、固定電極(下電極基板54)にも、上述した積層体20を用いることもできる。これにより、より軽く、より薄型で、割れにくいタッチパネルとすることができる。
【0086】
以上説明した実施形態は、上記発明の理解を容易にするために記載されたものであって、上記発明を限定するために記載されたものではない。従って、上記の実施形態に開示された各要素は、上記発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0087】
次に、上記発明の実施形態をより具体化した実施例を挙げ、さらに詳細に説明する。
【0088】
《実験例1〜6》
まず、フィルム基材11として、厚さ125μmのPETフィルム(U34、東レ社製、易接着層あり。以下「フィルムa」とする)を準備する。
【0089】
次に、準備したフィルムaを2m/分の速度で送り出すとともに、この送り出されているフィルムaの易接着層面に対し、高圧水銀灯を用いて120W/cm
2 の出力で発生させた紫外線(発光波長域:250〜400nm、ピーク波長:360〜370nm(最大)、250〜260nm、300〜320nm)を約6秒、照射した(照射露光量=約960mJ/cm
2 )。この照射サイクルを「1pass」とし、表1に示すpass数の紫外線の照射を行い、フィルム試料を得た。
【0090】
得られたフィルム試料の断面をSEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)を用いて観察した。紫外線照射前(0pass)、1pass後、2pass後、3pass後、10pass後、20pass後のSEM画像を
図5〜10に示す。
図6〜10に示すように、紫外線を照射した場合には、フィルムaの紫外線照射面に被膜が形成されていることが確認できた。なお、
図5に示すように、紫外線を照射する前では、当然にフィルムaに被膜が形成されていない。
【0091】
《実験例7〜12》
フィルム基材11として、厚さ100μmのPETフィルム(T−60、東レ社製、易接着層なし。以下「フィルムb」とする)を用いた以外は、実験例1〜6と同様の条件で紫外線照射を行い、フィルム試料を得た。
【0092】
得られたフィルム試料の断面をSEMを用いて観察した。紫外線照射前(0pass)、3pass後のSEM画像を
図11及び
図12に示す。
図12に示すように、紫外線を照射した場合には、フィルムbの紫外線照射面に被膜が形成されていることが確認できた。なお、
図11に示すように、紫外線を照射する前では、当然にフィルムbに被膜が形成されていない。
【0093】
《実験例13〜18》
フィルム基材11として、厚さ125μmのPETフィルム(A4300、東洋紡績社製、易接着層あり。以下「フィルムc」とする)を用いた以外は、実験例1〜6と同様の条件で紫外線照射を行い、フィルム試料を得た。
【0094】
《特性の評価》
上記実験例1〜18により得られたフィルム試料について、下記特性を評価した。結果を表1に示す。
【0095】
(1)マルテンス硬さ(HM)及び押し込み弾性率(EIT)
いずれも超微小硬さ試験装置(フィッシャー・インストルメンツ社、商品名:フィッシャー・スコープ・HM2000)を用い、ISO−14577−1に準拠した方法により後述の測定条件で、得られたフィルム試料に形成された被膜の表面(紫外線照射をしていない試料の場合はフィルム面)の硬さやヤング率を測定した。HM及びEITの何れも測定条件を、圧子形状:ビッカース圧子(a=136°)、測定環境:温度20℃・相対湿度60%、最大試験荷重:1mN、荷重速度:1mN/20秒、最大荷重クリープ時間:5秒、除荷速度:1mN/20秒、とした。
【0096】
(2)耐熱性(オリゴマー析出防止性、顕微鏡)
まず、得られたフィルム試料の紫外線照射面とは反対面に、厚さ6μmの紫外線硬化型アクリル系ハードコート層を形成した。次に、ハードコート層を形成したフィルム試料を150℃のオーブンに投入し、1時間後に取り出した。次に、取り出したフィルム試料の紫外線照射面(紫外線照射をしていない試料の場合はフィルム面)を顕微鏡(200倍)で観察し、10視野当たり(面積0.5mm
2 )に、円相当径で2μmφ以上の析出物が10個以下であった(オリゴマーの析出が全く認められなかった)ものを「○」、上記析出物が20個を超え50個未満であった(オリゴマーの析出がやや認められたが問題なしと考えられる)ものを「△」、上記析出物が50個を超えた(オリゴマーの析出が認められた)ものを「×」として評価した。
【0097】
(3)耐熱性(オリゴマー析出防止性、ヘーズ)
まず、上記(2)と同様に、得られたフィルム試料にハードコート層を形成した。次に、ハードコート層を形成したフィルム試料に対し、ヘーズメーター(NDH2000、日本電色社)を用いてヘーズ値「%」(JIS−K7136:2000)を測定した。その後、ヘーズ値測定後のフィルム試料を上記(2)と同様に150℃のオーブンに投入して1時間後に取り出した。次に、取り出したフィルム試料に対して上記同様にヘーズ値を測定した。
【0098】
(4)耐クラック性
(4−1)マンドレル
JIS−K5600−5−1(1999)に準拠した耐屈曲性(円筒形マンドレル法)に基づき、直径が2mmの鉄棒に、フィルム試料を被膜が外側になるように巻き付け、その巻き付けた部分の被膜にクラックを生じるか否かを目視で観察する。その結果、クラックが確認できなかったものを「○」、クラックを確認できたものを「×」として評価した。
(4−2)折り曲げ
フィルム試料を被膜が外側になるように2つに折り曲げ、その折り曲げた部分の被膜にクラックを生じるか否かを目視で観察する。その結果、クラックが確認できなかったものを「○」、クラックを確認できたものを「×」として評価した。
【0099】
(5)耐ブロッキング性
まず、上記(2)と同様に、フィルム試料にハードコート層を形成した。次に、ハードコート層を形成したフィルム試料のハードコート層面に、別途用意したフィルム試料の紫外線照射面を重ね合わせた。次に、両フィルム試料をガラス板で挟み込み、約2kgの重りを載せて50℃の雰囲気下に24時間放置した。次に、重ね合わせ面を目視により観察しニュートンリングの発生状況を確認した後、両者を剥離した。その結果、剥離前はニュートンリングが発生しておらず、剥離時には剥離音を立てずに軽く剥離されるものを「○」、剥離前は一部ニュートンリングが発生しており、剥離時には小さな剥離音を立てながら剥離されるものを「△」、剥離前は全面にニュートンリングが発生しており、剥離時には大きな剥離音を立てて剥離されるものを「×」として評価した。
【0100】
(6)屈折率の測定
フィルム試料の紫外線照射面に対し、自動波長走査型エリプソメーター(M−150、日本分光社製)を用い、25℃における633nmでの屈折率を測定した。
【0101】
(7)耐溶剤性
まず、上記(2)と同様に、フィルム試料にハードコート層を形成した。次に、ハードコート層を形成したフィルム試料の紫外線照射面を、メチルエチルケトンをしみ込ませた綿布で往復30回擦った。次に、上記(2)と同様にフィルム試料の紫外線照射面を顕微鏡で観察し、オリゴマーの析出が、上記(2)の評価と同程度であったものを「○」、上記(2)の評価よりも悪くなったものを「×」として評価した。なお、各フィルム基材の0pass、1passについては、後述するように、上記(2)の評価が「×」であったため、ここでは評価しなかった。
(8)耐熱耐湿性(オリゴマー析出防止性、顕微鏡)
まず、実験例13〜18で得られたフィルム試料に、上記(2)と同様にしてハードコート層を形成した。
次に、ポリエステルフィルムの一方の面にハードコート層、もう一方の面にアンチブロッキング層を有するハードコートフィルム(KBフィルムGSAB:きもと社)のアンチブロッキング層上に、乾燥厚み約20μmとなるようにアクリル系粘着剤層を設けた。次いで、当該粘着剤層とハードコート層を形成した実験例13〜18のフィルム試料の被膜面とを貼り合わせ、150℃の環境に2時間放置した後、60℃、95%RHの環境(恒温恒湿器)に240時間放置し、取り出した。そして、ハードコートフィルム側から、上記(2)と同様にして顕微鏡で観察し同様の評価を行った。
【0102】
【表1】
【0103】
表1に示すように、易接着層の有無にかかわらず何れのフィルム基材を用いた場合でも、少なくとも1passの紫外線照射を行うことで(実験例2〜6,8〜12,14〜18,
図6〜10及び
図12)、紫外線照射を行わない場合(実験例1,7,13,
図5及び
図11)と比較して、フィルム基材の表面の一部が改質され、ここに被膜が形成されることが確認できた。フィルム基材の表面の一部が改質されて形成された被膜は、紫外線を2pass以上照射した場合(紫外線の積算露光量が1500mJ/cm
2 以上)、高温環境においてもオリゴマーの析出を防止するなど、種々の特性向上が見られることが確認できた。
なお、被膜の上層に、粘着層を有する場合でも、紫外線を2pass以上照射した場合には、高温高湿環境においてもオリゴマーの析出を防止する効果が確認された。
【0104】
なお、フィルム基材11として、厚さ125μmのPETフィルム(A4350、東洋紡社製、易接着層あり)、厚さ125μmのPETフィルム(O300E、三菱化学ポリエステルフィルム社製、易接着層あり)、厚さ125μmのPETフィルム(OFW、帝人社製、易接着層あり)についても、上述した実験例1〜18と同様に紫外線照射を行い、同様の評価を行ったところ、同様の傾向があることが確認できた。
また、紫外線照射源として、高圧水銀灯に代え、無電極ランプA〜Dを用い、上述した実験例1〜18と同条件で紫外線照射を行い、同様の評価を行ったところ、高圧水銀灯を用いた場合と同様の傾向があることが確認できた。
各ランプを用いて発生させた紫外線は以下のとおりであった。ランプA(発光波長域:220〜440nm、ピーク波長:360〜370nm(最大)、250〜270nm、310〜320nm)、ランプB(発光波長域:200〜440nm、ピーク波長:360〜370nm(最大)、250〜260nm、310〜320nm)、ランプC(発光波長域:250〜450nm、ピーク波長:350〜390nm(最大)、390〜450nm)、ランプD(発光波長域:250〜450nm、ピーク波長:360〜370nm(最大)、400〜410nm(最大))。
【0105】
《実験例19》
まず、実験例4(紫外線3pass照射)で得られたフィルム試料の紫外線照射面とは反対面に、厚さ6μmの紫外線硬化型アクリル系ハードコート層を形成した。次に、ハードコート層の上に、波長550nmの付近で最小反射率となるように厚さ約0.1μmの反射防止層(屈折率:1.36)を形成した。次に、フィルム試料の紫外線照射面に、厚み約20nmのITO膜をスパッタリング法で形成した。
【0106】
このようにして得られた第1積層体試料で、
図4に示す上電極基板52を構成した。
【0107】
次に、
図4に示す下電極基板54としての第2積層体試料を、厚み1mm強化ガラス板の一方の面に、厚み約20nmのITO膜をスパッタリング法で形成した後、これを4型の大きさ(縦87.3mm×横64.0mmの長方形)に切り取ることにより作製した。
【0108】
次に、第2積層体試料のITO膜を有する面に、スペーサー用塗布液として電離放射線硬化性樹脂(DotCureTR5903:太陽インキ社)をスクリーン印刷法によりドット状に印刷した後、高圧水銀灯で紫外線を照射して、直径50μm、高さ8μmのスペーサ58を1mmの間隔で配列させた。
【0109】
次に、両試料のITO膜が所定のギャップを隔てて対向するように、第1積層体試料と、スペーサ58を配列させた第2積層体試料とを配置し、厚み30μm、幅3mm両面接着テープで縁を接着し、
図4に示すタッチパネル5に相当するタッチパネル試料を作製した。なお、この実験例では、両試料の接着部分がタッチパネル試料の表示面の領域外となるようにした。
【0110】
作製したタッチパネル試料では、干渉ムラが目立たず、その結果、良好に操作をすることができることが確認できた。