【実施例】
【0042】
[第1実施形態]
図1、
図2は本発明の実施形態1に係るリフターの具体的構成を示し、
図1は下降状態、
図2は上昇状態を示す。
図1aは上面図、
図1bは正面断面図(
図1aのA-A断面図)である。また、
図2aは上面図、
図2bは正面断面図(
図2aのA-A断面図)である。1は上部ケース、2は下部ベース、3は螺旋体、4は螺旋体3のフロント側螺旋軸、5はリアー側螺旋軸である。リアー側螺旋軸5は、フロント側螺旋軸4に対してねじ溝が逆方向に形成されている。6はフロント側螺旋軸4と螺合するフロント側ナット、7はリアー側螺旋軸4と螺合するリアー側ナット、8はリアー側螺旋軸5と螺合する中間部ナットである。フロント側ナット6、リアー側ナット7、中間部ナット8はいずれも長方体形状で、その底面は下部ベース2に対して摺動自在の状態で螺旋体3に螺合される。9a,9bはフロント側リンク(a)、及び、フロント側リンク(b)、10a、10bはリアー側リンク(a)、及び、リアー側リンク(b)、11a、11bは中間部リンク(a)、及び、中間部リンク(b)である。12a、12bはフロント側リンク固定部材(A)、及び、フロント側リンク固定部材(B)である。13a、13bはリアー側リンク固定部材(A)、及び、リアー側リンク固定部材(B)である。前記フロント側リンク固定部材(A)(B)、及び、前記リアー側リンク固定部材(A)(B)は、上部ケース1に固定されている。14a、14bは螺旋体3を回転支持するフロント側軸受(a)、及び、リアー側軸受(b)であり、両軸受14a、14b共、下部ベース2に固定されている。
【0043】
フロント側リンク(a)9aは、一方をピン15aによりフロント側ナット6と係合し、他方をピン16aによりフロント側リンク固定部材(A)12aと係合している。フロント側リンク(b)9b、ピン15b、フロント側ナット6、ピン16b、フロント側リンク固定部材(B)12bの関係も同様である。
【0044】
中間部リンク(a)11aは、一方をピン17aにより中間部ナット8と係合し、他方をピン18aによりフロント側リンク固定部材(A)12aと係合している。中間部リンク(b)11b、ピン17b、中間部ナット8、ピン18b、フロント側リンク固定部材(B)12bの関係も同様である。
【0045】
リアー側リンク(a)10aは、一方をピン19aによりリアー側ナット7と係合し、他方をピン20aによりリアー側リンク固定部材(A)13aと係合している。リアー側リンク(b)10b、ピン19b、リアー側ナット7、ピン20b、リンクリアー側固定部材(B)13bの関係も同様である。
【0046】
21は螺旋体3のフロント側先端に形成された回転治具の嵌合部であり、フレキシブルジョイントと結合した回転治具22(想像線)をこの嵌合部21に装着して、螺旋体3を回転させることにより、上部ケース1は螺旋体3の中心線と直交方向に上下する。
【0047】
また、フロント側ナット6、リアー側ナット7、中間部ナット8は本リフターの高さの下限値を決めるストッパーの役割を担っている。
図1aにおいて、前記ナットの上面は前記上部ケース1と接触して、上部ケース1の下降を抑止している。このとき、前記フロント側リンク、前記中間部リンク、前記リアー側リンクの傾斜角度>0であるため、リンクが機能停止に陥ることはない。
【0048】
本実施例において、フロント側螺旋軸4とリアー側螺旋軸5はねじ溝の方向が逆で、前記フロント側螺旋軸に螺合するナットはフロント側ナット6が1個であるのに対して、前記リアー側螺旋軸には2個のナット、すなわち、リアー側ナット7、中間部ナット8が螺合されている。それぞれのナットはそれぞれのリンクと係合し、これらのリンクは反対側でフロント側とリアー側のリンク固定部材12,13と係合している。中間部リンク機構(部材8,11、12、及び、ピン17,18で構成)が必要な理由は、次のようである。前記中間部リンク機構が無い場合、全体は4辺形の平行リンク機構となるが、この場合、リンク機構の自由度が多すぎて、上部ケース1の下部ベース2に対する平行状態を維持できないからである。強度アップを図るために、前記フロント側螺旋軸に螺合するナットをさらに追加して、このナットと係合するリンク機構を増やしてもよい。また、実施例の全体のリンク構造を上下逆方向で配置しても、機能上の大きな差は無い。
【0049】
実施例では、螺旋体3に対して左右対象(たとえば、
図1a参照)に、2セットの上下移動できるリンク機構を設けたが、各リンク機構に加わる荷重負担分を軽減するめに、螺旋体3に対して並行に、もっと多くのリンク機構を配置してもよい。ちなみに、自動車用に多用される小型ジャッキ(パンタグラフジャッキ)は、螺旋体の上下に設けられた台形の平行リンク機構により構成される。この場合、床面に対して平行状態を維持する上部ケース1に相当する平板部材を設けられない。また、螺旋体を挟み上下2段の平行リンク機構であるため、オーディオ機器を適用対象にした場合、リフターの薄型化は困難である。
【0050】
[インシュレータの設置方法]
以下、本実施例のリフターを用いて、スピーカーにフローティング方式インシュレータを設置する手順について説明する。詳細は後述するが、本実施例に適用するインシュレータは、円筒形状の上部スリーブと下部スリーブが、スプリングコイルと粘弾性ゴムを介して非接触で嵌合する構成になっている。スプリングのばね剛性と搭載物(オーディオ機器)の質量できまる固有振動数以上は振動遮断効果が得られるため、本明細書ではフローティング方式インシュレータと呼ぶことにする。実施例に適用したインシュレータの前記上下スリーブの嵌合部の隙間は狭いために、前記上下スリーブの軸芯を合わせながら、スピーカーを搭載する必要がある。この点はスパイクとスパイク受けでスピーカーを支持する場合(実施形態2で後述)も同様である。
図3において、50はスピーカー、51は実施形態1におけるリフター、52は床面である。
【0051】
Step1:
図3aにおいて、通常、部屋の壁面近傍に配置されているスピーカー50を背後の壁面から手前に引き離し, 傾斜させた状態でリフター51の上に載せる。重量級のスピーカーであっても、床面を滑らせ、かつ傾斜させることは、てこの原理により、大きな力を必要とせず比較的容易であった。
【0052】
Step2:
図3bにおいて、傾斜させた前記スピーカーをリフター51の上に搭載して、前記スピーカーの真下にリフター51全体が配置されるように、前記スピーカーをリフター51上で滑らせる。このとき、作業者はリフター51のフロント側の側面(嵌合部21近傍)を片足で軽く押さえておけばよい。リフター51の厚みが薄い程、この作業は容易であり、
図1のリンク機構を用いた本実施例のリフターの最小値H
min=35mmであった。実験では、リフター51の最小値H
min<50mmならば、 80Kg級の大型スピーカーの場合でも、一人の作業者で比較的無難にリフター51の上に搭載できた。また、リフターの最小高さH
minはフローティング方式インシュレータの高さ、あるいはスパイクとスパイク受けを重ねた高さよりも小さくする必要がある。H
min<50mmならば、スパイク方式インシュレータの多くの商品に適用可能であり、H
min<40mmならば、フローティング方式を含む大部分の商品に適用できる。
【0053】
前記スピーカー底面と滑らせるリフター51の上面は、適度に摺動性のある材料(摩擦係数μ
A)を用いればよい。
【0054】
Step3:
図3cにおいて、リフター51上に前記スピーカーを搭載した状態で、前記スピーカーが本来設置すべき部屋の位置(2点鎖線)へ、床面を滑らせて移動する。この段階で、前記スピーカーの適確な位置と角度を調整する。実施例ではリフター51の下面は、上面以上に自己潤滑性の良い材料(摩擦係数μ
B)で構成した。摩擦係数μ
B<μ
Aであるため、リフター51を床面上で滑らせることは容易であった。
【0055】
Step4:
図4aにおいて、リフター51に回転治具53を装着する。実施例では、この回転治具53にラチェット式(フレキシブルジョイントは図示せず)を用いた。ラチェット式治具の回転方向を選択すれば、ハンドル54を揺動運動させることでリフター51の螺旋体55(
図1の3相当)を上昇方向だけに回転できる。
【0056】
Step5:
図4bにおいて、リフター51が所定の高さまで上昇した段階で、インシュレータ56a〜56d(56c、56dは図示せず)を前記スピーカーの底面の4隅に設置する。
【0057】
Step6:
図4cにおいて、前記スピーカーの底面が前記インシュレータの上面に接触し、かつ前記スピーカーの質量を前記インシュレータだけで支持できるようになるまで、リフター51を下降させる。このとき、前記スピーカー底面と前記リフター上面の間に僅かな隙間δを保つように設定しておけば、前記スピーカーに地震などの衝撃的外乱が加わった場合に、スピーカーの転倒防止対策として有効である。
【0058】
以上、本実施例のリフターの特徴を要約すれば、次の様である。
(1)薄型構造にできる。
特に80Kg以上の重量級スピーカーを扱う場合は、リフターの最小厚みH
min<40mmにできる実施例のメカニズムの効用は大きい。上記Step1において、僅かな人手でかつ安全にスピーカーをリフターの上に搭載できる。また、多くのスパイク式インシュレータ、フローティング方式インンシュレータに対して、本発明のリフターを適用できる。
(2)オーディオ機器を搭載した状態で移動できる
リフターの上下動が簡便で、インシュレータの着脱が容易である。また、リフター上面の摩擦係数μ
A、リフター下面の摩擦係数μ
Bとしたとき、μ
B<μ
Aにすれば、スピーカーを搭載した状態でリフターを床面上で滑らせて、スピーカーを所定に位置に配置することができる。
(3)シンプル構造である。
簡素な構造であるため。ローコストである。
(4)地震対策が容易に施せる。
インシュレータ(スパイク方式も含む)を設置した状態で、スピーカー底面と床面の間にリフターを常時配置する。リフター上面とスピーカー底面の間に僅かなギャップ(たとえば、δ<5mm)を保つ状態に設定しておけば、弾性変形するフローティング方式インシュレータの場合でも、スピーカーに衝撃的外乱荷重が加わったときに、スピーカーの転倒防止が図れる。
(5)美観を損なわない
上記(4)において、常時リフターを配置する場合、薄型構造のリフターはスピーカー底面に隠れるため、インテリア家具としてのオーディオ・システムの美観を損なわない。
(6)インシュレータの試聴実験に有効
インシュレータの着脱、あるいは品種の異なるインシュレータの交換などの作業を速やかに出来るため、リスナーの心理的影響を受けやすい音響効果の評価を正確にできる。後述するが、リフターを電動式にすれば、この効用はさらに卓抜となる。
【0059】
本実施例では、本発明のリフターをスピーカーに適用する場合について説明したが、CDプレイヤー、アナログプレイヤー、アンプなどに適用する場合でも、上記実施例と同様な効果が得られる。また、各種オーディオ機器が搭載されるオーディオラックはスパイク支持が多用されている。オーディオ機器としてのオーディオラックの設置作業、あるいは、音響特性の評価にも本発明のリフターが適用できる。
【0060】
[第2実施形態]
図5は本発明の実施形態2を示すもので、スパイク構造で支持されたスピーカーに本発明を適用した場合を示す。
図5aはリフター上昇状態、
図5bはリフター下降状態を示す。
【0061】
100はスピーカーであり、上部ボックス100aと下部ベース100bから構成される。上部ボックス100aと下部ベース100bは一体化されており分離できない。101は実施形態1におけるリフター、102は床面である。103a〜103d(103c、103dは図示せず)は前記スピーカーの下部ベース100bに装着されたスパイク、104a〜104d(104c、104d)は図示せず)は床面102に配置されたスパイク受けである。
【0062】
図5aにおいて、リフター101を上昇させた状態で、スパイク受け104a〜104dを床面102に配置する。次にリフター101に回転治具105を装着して、リフター101を除々に下降させ、前記スパイクと前記スパイク受けの軸芯が一致するように、前記スパイク受けの位置を調整する。
図5bは、スピーカーの自重をスパイクだけで支持した状態を示す。スパイク支持方式の場合も、前述したシンシュレータの場合と同様に、前記スピーカー底面と前記リフター上面の間に僅かな隙間を保つように設定しておけば、前記スピーカーに地震などの衝撃的外乱が加わった場合に、スピーカーの転倒防止対策として有効である。
【0063】
[第3実施形態]
図6は本発明の実施形態3に係るオーディオ用リフターの具体的構成を示し、
図6aは上面図、
図6bは正面断面図(
図6aのB-B断面図)、
図6cは側面図である。本実施例では、リフターの螺旋体を電動モータで駆動することにより、インシュレータ設置作業をより簡便に、かつ迅速にできる。また、(1)スピーカーをインシュレータ(スパイクも含む)で支持した場合、(2)スピーカーをインシュレータで支持しない場合、上記(1)(2)を瞬時に切り替えることができるため、インシュレータがスピーカーに与える音響特性を、リスナーは正確、かつ迅速に評価することができる。
【0064】
201は上部ケース、202は下部ベース、203は螺旋体である。螺旋体203のねじ溝は、フロント側とリアー側では逆方向に形成されている。204は螺旋体203と螺合するフロント側ナット、205は螺旋体203と螺合するリアー側ナット、206は螺旋体203と螺合する中間部ナットである。フロント側ナット204、リアー側ナット205、中間部ナット206はいずれも長方体形状で、その底面は下部ベース202に対して摺動自在の状態で螺旋体203に螺合される。207はフロント側リンク、208はリアー側リンク、209は中間部リンクである。210はフロント側リンク固定部材、211はリアー側リンク固定部材である。前記フロント側リンク固定部材、及び、前記リアー側リンク固定部材は、上部ケース201に固定されている。212、213は螺旋体3を回転支持するフロント側軸受、及び、リアー側軸受であり、両軸受212、213共、下部ベース202に固定されている。フロント側リンク207は、一方をピン214によりフロント側ナット204と係合し、他方をピン215によりフロント側リンク固定部材210と係合している。中間部リンク209は、一方をピン216により中間部ナット206と係合し、他方をピン217によりフロント側リンク固定部材210と係合している。リアー側リンク208は、一方をピン218によりリアー側ナット205と係合し、他方をピン219によりリアー側リンク固定部材211と係合している。
【0065】
なお、実施形態1の場合と同様に、上記部材204〜219と同一の部材から構成されるリンク機構が、螺旋体203に対して上下対象(
図6a)に構成されている。220は螺旋体203を電動モータで駆動するモータ駆動部であり、減速機及びモータ221(想像線)、モータ制御部222(想像線)から構成される。223は螺旋体203のフロント側先端に形成された回転治具の嵌合部であり、上記電動モータを使用しない場合(マニュアルの場合)に、回転治具(図示せず)をこの嵌合部223に装着して、螺旋体203を回転させることにより、上部ケース201は螺旋体3の中心線と直交方向に上下する。この機能は、実施形態1の場合と同様である。本リフターの構成は、上部ケース201に収納される部分だけがスピーカー底面に設置できればよく、モータ駆動部220はスピーカーから前面に突出する構成でもよい。
【0066】
図7、及び、
図8は、スピーカーに設置されたインシュレータが音響効果に与える影響をリスナーが瞬時に評価できる「インシュレータ評価装置」を示す矢視図である。
図7は、スピーカーをインシュレータで支持した場合、
図8は、スピーカーはインシュレータで支持しない場合を示す。
【0067】
251、252は左右に配置された2チャンネルのステレオ用スピーカーであり、各々のスピーカーはボード253、254の上に搭載されたインシュレータによって支持されている。255a〜255d、及び、256a〜256dは左右のスピーカー251、252の底面4隅に配置されたインシュレータ(255d、256dは図示せず)である。257、258は左右のスピーカーの真下に配置された電動駆動式のリフター(
図6と同じ構成)、259は前記リフターの駆動を遠隔操作するコントローラである。このコントローラで、音楽を再生中にリフターの上昇と下降を操作することにより
(1)スピーカーをインシュレータで支持した場合(
図7)
(2)スピーカーをインシュレータで支持しない場合(
図8)
上記(1)(2)による音響効果の差を、リスナーは自らの操作により、瞬時に評価できる。最適な位置とは、通常2つのスピーカーを結ぶ直線を底辺としたとき、三角形の頂点の位置を示す。またオーディオ再生音における音響効果とは
(i)奥域感(空間性)
スピーカーの背景に壮大なオーケストラの空間が、スピーカーから離脱して奥深く展開される。
(ii)分解能(フォーカス感)
各楽器が視覚で見えるようにその存在感が分かり、音像(sound stage)の焦点が明確に定まる。
(iii)透明感(S/N比)
複層する楽器音が混濁せず分離する。高域が繊細で歪み感が小さい。
(iv)低域の力感(ダンピング特性)
低域が引き締まり、オーケストラの弦の低域音、ジャズのベース音が明確に定位して聴こえる。
などである。現在、世の中で実に多くのタイプのオーディオ用・インシュレータが市販されている。インシュレータを設置することで音が変わる事は物理的にも説明はつくが、良い音になったかどうかは、聴取する側の主観による要素(プラセボ効果)が多いため、音質向上を謳っているインシュレータ商品でも、実際の効能としては疑わしいものも少なくない、とされる。
【0068】
ここで、心理的要因であるプラセボ効果(偽薬効果)とは、偽薬を処方しても、薬だと信じ込む事によって何らかの改善がみられる事を言う。この改善は自覚症状に留まらず、客観的に測定可能な症状の改善効果として現われる事もある。また、病気の症状自体の改善というよりは、「薬を飲んでいる」事による精神的な安心感を得る方が目的となる事もある。このような単なる精神的安楽を得る効果は偽薬効果には含まれないが、両者の区別が難しい場合もある。
【0069】
すなわち、オーディオ分野では「高価である」がゆえに、「音質も良いはず」というプラセボ効果が働くのである。特に、オーディオ用・インシュレータの場合、リスナーがプラセボ効果の呪縛から逃れにくい理由は、インシュレータ有無の条件の差、すなわち上記(1)⇔(2)へ移行するのに、多大な労力と長い待機時間を必要とするからである。すなわち、前述したように、「品種の違うテレビを左右に並べて、両者の画質を同時に評価する」ようにはいかないのが、オーディオ用・インシュレータを評価する上での最大の難題であった。
【0070】
本発明者は、プラセボ効果の呪縛から回避できる最大のポイントは、上記(1)⇔(2)への移行するまでの待機時間の短縮、すなわち、インシュレータ有無の「切り替え時間の短縮」であることに着目した。本発明のリフター(インシュレータ評価装置)を適用することにより、リスナーは、ステレオ再生による音像定位感が最適な位置で、自らのリモコン操作でリフターを上下動させることにより、瞬時にインシュレータ有無の音響特性の違いを評価できる。本発明のリフターでは、上記(1)⇔(2)への移行時間は2秒以下であった。品種の異なるインシュレータの音響特性の差を評価する場合は、インシュレータの交換に時間を要するが、左右のスピーカーのそれぞれに補助者を配置すれば、5秒程度で可能であった。
【0071】
硬質材料による各種インシュレータを相対評価する場合でも、本発明のインシュレータ評価装置を効果的に活用できる。硬質材料インシュレータとして、前述したように、木材、樹脂、金属、水晶、セラミック、石英、珊瑚等を用いたもの、及びこれらの素材を多層構造にした複合タイプが考案され商品化されている。但し、硬質材料インシュレータは高さが低い商品が多いため、オーディオ機器と床面の間にブロック材を介在させ、このブロック材とオーディオ機器の間に硬質材料インシュレータを装着する構成にすればよい。ブロック材とインシュレータを合わせた高さが、リフターの最小高さH
min以上になるように、前記ブロック材の高さH
Bを選べばよい。実験結果では、ブロック材としては、低周波数域で鋭敏な共振特性を持たない材料(音にクセの無い材料)として木質系の素材が好ましかった。
【0072】
本実施例では、本発明のリフターをスピーカーに適用する場合について説明したが、CDプレイヤー、アナログプレイヤー、アンプ、オーディオラックなどに適用する場合でも、上記実施例と同様な効果が得られる。
【0073】
[第4実施形態]
図9は本発明の実施形態4に係るオーディオ用リフターの具体的構成を示し、
図9aは滑り板を収納した状態を示す正面断面図、
図9bは滑り板をリフターに装着し、オーディオ機器を滑り板上で移動できる状態にした場合の正面断面図である。450はリフター本体部であり、実施形態1、2に適用されたものが適用できるため、記号の詳細は省略する。451は床面、452は滑り板であり、補強板453とこの補強板の上に張り付けられた自己潤滑性シート454から構成される。自己潤滑性シート454は、たとえば、テフロン(登録商標)、ナイロン(ポリアミド)などによるシートが適用できる。454aは蝶番(ちょうつがい)であり、その一端は補強板453に固定され、もう一方は蝶番収納部455に収納される。補強板453と蝶番454aはリフター450から着脱自在である。
【0074】
図10は、スピーカーをリフター上に搭載し、滑らせる状態を示すものである。
図10aにおいて、スピーカー456を傾斜させた状態で、リフター450の滑り板452をスピーカー456の底面に挿入する。次にスピーカー456を滑り板452上で滑らせる。このとき、補強板の上に張り付けられた自己潤滑性シート454の摩擦係数μ
Cは十分に小さいため、スピーカー456は容易にリフター上に搭載できる。滑り板452とリフター450上面の境界部における前記滑り板側の端部、あるいは、前記リフター側の端部を曲面にしておけば、記滑り板側から前記リフター側へのスピーカーの移載はより容易となる。
【0075】
次に
図10bにおいて、前記スピーカーをリフター上面457で矢印の方向へ滑らせる。実施形態1同様に、リフター上面457は、適度に摺動性のある材料(摩擦係数μ
A)が用いられている。但し、摩擦係数μ
C<μ
Aである。
【0076】
次のステップ(以下図示せず)で、リフター上面457に前記スピーカーを搭載した状態で、前記スピーカーが本来設置すべき部屋の位置へ、床面を滑らせて移動する。この場合、リフター450の下面は、上面以上に自己潤滑性の良い材料(摩擦係数μ
B)で構成すれば、すなわち、摩擦係数μ
B<μ
Aとすれば、リフター450を床面上で滑らせることは容易である。スピーカー456を部屋の所定の位置に設置後は、滑り板452をリフター450から外せばよい。
【0077】
[第5実施形態]
図11は本発明の実施形態5に係るオーディオ用用リフターの具体的構成を示し、
図11aは上面図(上部板301を取り除いた状態)、
図11bはリフターが最も下降した状態における正面断面図、
図11cはリフターが最も上昇した状態における正面断面図である。本実施例は、リフターが最も上昇した状態で、リフター側面に配置されたキャスターがリンク機構により有効に作用して、オーディオ機器が搭載されたリフターの床面上の移動を容易にしたものである。本実施例の発明により、重量級のスピーカーを摺動性が悪く、たとえば凹凸面が多いコンクリートの床面に設置される場合でも、インシュレータ(スパイクも含む)の設置が容易にできる。
【0078】
301は上部板、302はベース台、303は螺旋体である。
図11aにおいて、上部板301は想像線で示している。螺旋体303のねじ溝は、フロント側とリアー側では逆方向に形成されている。304は螺旋体303と螺合するフロント側ナット、305は螺旋体203と螺合するリアー側ナット、306は螺旋体303と螺合する中間部ナットである。フロント側ナット304、リアー側ナット305、中間部ナット306はいずれも長方体形状で、その底面はベース台302に対して摺動自在の状態で螺旋体303に螺合される。307a、307bはL字型形状のフロント側リンク、308a、308bはL字型形状のリアー側リンク、309a、309bは中間部リンクである。310a、310bはフロント側リンク固定部材、311a、311bはリアー側リンク固定部材である。前記フロント側リンク固定部材、及び、前記リアー側リンク固定部材は、上部板301に固定されている。312、313はベース台302の左右に設けられた螺旋体303を回転支持するフロント側軸受部、及び、リアー側軸受部である。
【0079】
前記フロント側リンク、前記フロント側ナット、前記フロント側リンク固定部材、前記中間部リンク、前記中間部ナット、前記リアー側リンク、前記リアー側リンク固定部材、前記リアー側ナットのそれぞれはピン314a〜319a、及び、ピン314b〜319bにより係合している。(ピン314b〜319bは矢印で記載せず)320a、320bはフロント側キャスター、321a、321bは車輪、322a、322bは車輪軸、323a、323bは車輪支持体、324a、324bは前記車輪支持体を前記フロント側リンクに回転自在に係合するための支持ピンである。325a、325bはリアー側キャスターであるが、フロント側キャスターと同様に車輪、車輪軸、車輪支持体、支持ピンで構成される。326は螺旋体303のフロント側先端に形成された回転治具の嵌合部であり、回転治具(図示せず)をこの嵌合部326に装着して、螺旋体303を回転させることにより、上部板301は螺旋体303の中心線と直交方向に上下する点は、実施形態1の場合と同様である。327はリフターを設置する床面である。本実施例では、螺旋体303を回転により、上部板301が上昇すると同時に、L字型形状の前記フロント側リンクと前記リアー側リンクが水平状態から徐々に立ち上がっていく。この2つのリンクが所定の角度まで傾斜したとき、前記フロント側とリアー側リンクの設けられた前記キャスターの前記車輪が床面327に接触し、前記キャスターを有効に機能させる。本実施例のリフターは、凹凸面を有するコンクリートの床面上で重量級スピーカーを移動させ、スピーカーの角度を設定し、インシュレータを設置するのに極めて有用である。インシュレータをスピーカーの底面に設置した後は、上部板301の下降と共に、前記キャスターの前記車輪は床面から離れ、キャスターの機能は無効となる。ちなみに、本実施例で示したキャスター付きリフター、及び前述した実施例のリフターは、オーディオ機器以外の重量物の搭載・移載作業などにも適用できる。
【0080】
[第6実施形態]
図12は本発明の実施形態6に係るオーディオ機器用リフターの具体的構成を示し、
図12aは上面図、
図12bはリフターが最も上昇した状態における正面断面図、
図12cはリフターが最も下降した状態における正面断面図である。本実施例は、リフターを上下動させる駆動源にエアーを用いた場合を示す。
【0081】
401は上部板、402はベース台、403は前記上部板と前記ベース台の間に挟持されたベロフラム式エアーシリンダ、404はこのエアーシリンダの吸気孔である。405a、405b、405cはガイド軸(ガイド部)であり、スリーブ形状のガイド軸405bは405aに収納され、ガイド軸405cは405bに収納される。ガイド軸405aはボルト406によりベース台402に締結され、またガイド軸405cはその端部407で上部板401に締結される。ガイド軸408a、408b、408c、及び、ガイド軸409a、409b、409cの構成と、上部板401、ベース台402への締結方法は同様である。
【0082】
本実施例では、駆動源にエアーを用いることにより、リフターの全体構成をおおいに簡素化できる。また前記ガイド軸を前記エアーシリンダの周囲に配置することで、ベース台402に対する上部板401の半径方向の移動、及び、上部板401の傾斜を規制できる。前記ガイド軸をスリーブ多重構造にして伸縮自在にすることで、リフターの最下降時の高さHを十分に低くできと共に、リフターの上限値を規制できる。前記ガイド軸の構成により、たとえば、重量級のスピーカーが本リフターに搭載された状態で、前記エアーシリンダの突然の破損により空気漏れが発生した場合でも、スピーカーは傾斜することなく下降するため、その転倒を防止できる。
【0083】
また本リフターの最小高さと押し上げ距離の調節は次のようにして行う。複数のスリーブから構成されるガイド軸を着脱容易にして、高さの上限値と下限値が異なる組み合わせのものを、高さの異なるインシュレータの種類に合わせて選択すればよい。また、エアーシリンダの空気漏れ対策として、複数の膜による多重構造にしておけば、長期の信頼性が確保できる。
【0084】
エアー駆動式リフターを用いて、実施形態3で示した「インシュレータ評価装置」を構成できる。この場合、シリンダに供給するエアーは、エアーポンプの駆動を制御してもよく、あるいはバルブを用いて圧力源とシリンダに繋がる流路の開閉を制御してもよい。
【0085】
[補足]フローティング方式インシュレータの構成
さて、上述した実施形態に適用したフローティング方式インシュレータをスピーカーに設置する際に、本発明のリフターが有効な理由を、
図13を用いて説明する。
図13aは上面断面図(
図13bのA-A断面図)、
図13bは正面断面図である。
【0086】
500は上部スリーブ(荷重支持部)、501は下部スリーブ(固定部)、502は前記下部スリーブの中央部に突設して形成された筒部、503は前記筒部の外周部に装着されたサージング防止部材(振動発生防止手段)である。前記上部スリーブと前記下部スリーブの内部にスプリングコイル504が設けられている。スプリングコイル504の下端外周部は前記下部スリーブ底面に形成された位置決め部505に、スプリングコイル504の上端外周部は前記上部支持部底面に形成された位置決め部506に嵌まり込むようになっている。そのため、本インシュレータはスプリングコイル504を装着した状態で、両部材500,501の軸芯が一致した状態を保つことができる。
【0087】
本インシュレータは、長い筒形形状の上部スリーブ500が下部スリーブ501(固定部)を、スプリングコイル504を介在して、収納する構造になっている。この構造により、次の役割を担うことができる。
【0088】
(1)オーディオ機器の荷重を支持する。
(2)フローティング方式と硬質材料方式の2つのインシュレータの長所を「同時に併せ持つ」ことができる。
(3)オーディオ機器(スピーカー)に衝撃的外乱荷重が加わったとき、転倒防止が図れる。
【0089】
上記(1)についての説明は省略し、上記(2)の理由について、少し詳しく述べる。上部スリーブ500の上面から床面(図示せず)に至る振動の経路を振動伝播経路Φ
Zとする。太い線径を有するスプリングコイル504は、オーディオ機器が発生する振動を床面に伝播する「音響管」(Sound tube)としての役割を担う。さらに、この振動伝播経路Φ
Zから分岐した振動伝播経路Φ
Rを筒型形状部材で構成すると、「風鈴効果」(Wind bell effect)ともいうべき以下述べる顕著な音響特性の改善が図れる。本実施例において、上部スリーブ500内部はスプリングコイル504を収納する空洞を有し、一方の端部を密閉構造、もう一方の端部を大気解放端とする筒型形状、すなわち、「風鈴」に近い形状となっている。すなわち、前記振動伝播経路Φ
Zに風鈴の振動系Φ
Rを組み合わせることにより、良質な音響素材がもたらす効果が一層増強される。振動系Φ
Rは上部スリーブ500の端部を振動伝播経路Φ
Rの解放端として、前記振動伝播経路Φ
Zに対して並列配置された分布定数系の質量とバネで決まる振動系として振動伝播経路Φ
Zに影響を与える。風鈴が糸で吊り下げられて妙なる音色を奏でることができるように、上部スリーブ500の上端部は剛性の小さなスプリングコイル504で柔らかく支持されている。すなわち、前記上部スリーブの材料に、高周波域での響きの親和性を考慮した良質な音響素材(たとえば、固有音響インピーダンスが10
7Ns/m
3以上)を用いることにより、効果的に音響特性の改善が図れる。
【0090】
上記(3)の理由は次のようである。本インシュレータでは、前述した「風鈴効果」を得るために設けた長い筒状のスリーブを利用して、インシュレータに搭載されたオーディオ機器に地震などによる衝撃的な水平方向外乱荷重が加わった場合、オーディオ機器の傾斜を最小限に抑えて、転倒を防止することができる。たとえば、スピーカーに水平方向外乱荷重が加わったとき、本インシュレータの上部スリーブ500は荷重Fにより
図13b中の想像線で示すように傾斜する。このとき、上部スリーブ500と下部スリ−ブ501の半径方向の狭い間隙δが、上部スリーブ500のある値以上の傾斜を抑止することができる。
【0091】
したがって、上記構成からなるフローティング方式インシュレータの特徴を活かすためには、インシュレータにオーディオ機器が搭載された状態で、上部スリーブ500と下部スリーブ501の軸芯が一致、すなわち、前記間隙δが円周上で均一な状態に保たれている必要がある。本発明のリフターを適用すれば、実施形態1で説明したように、Step5(
図4b)からStep6(
図4c)に移行する過程では、上部スリーブ500には鉛直方向だけに力が加わるために、両スリーブ500、501の軸芯を確実に合せた設置作業ができる。